※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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176 恥辱の解放条件

 朱姫の悲鳴のような声で目を覚ました。

 顔をあげると、朱姫が手紙を握りしめて泣いていた。

 

「どうしたの、朱姫?」

 

 沙那は声をかけた。

 孫空女も起きあがった。

 

 朝だった。しかし、外は薄暗い。

 相変わらずの長雨は、まだ続いているようだ。

 

「七星姉さんが……」

 

 朱姫はそれだけ言って、沙那に手紙を渡した。

 朱姫は肩を震わせて泣いている。

 沙那は、その朱姫を抱き寄せて、さっと手紙に目を通した。

 

「どうしたのさ、沙那? ところで、七星は、いないみたいだけど……」

 

 孫空女も手紙を覗き込んでいるが、孫空女は字が読めない。

 涙を流している朱姫と手紙を読んで深く嘆息した沙那を不安そうに眺めている。

 

「七星は、立ち去ったわ。ここに書かれているのは、別れの言葉よ」

 

 沙那は言った。

 孫空女の顔がこわばった。

 しかし、すぐに沙那と同じように嘆息した。

 

「無理もないよね。昨日は、あんなことがあったし……。逃げたくもなるよ……」

 

 孫空女は言った。

 昨日はいつになく、宝玄仙が酷く七星を責めたてた。

 責めに耐えきれなかったというよりは、七星には、限度を越えた調教の責めが、体質として受け付けなかったのだろう。

 それで、七星は宝玄仙や沙那たちから離れる決心をしたのかもしれない。

 別に、七星は術で旅に加わることを強制されているわけではない。

 あってないような「契約」という約束でついてきているだけだ。

 そして、三箇月で別れることになっていた。

 三箇月には、まだ十日ほど残っているはずだが、別れは唐突にやってきた。

 

「だけど、ただ、逃げ出したというのとは違うかも……」

 

 沙那は呟くように言った。

 昨夜、宝玉がやって来て、七星を術で隣の部屋に運んでいったのを沙那は知っている。

 『調教下着』と共鳴の責めで酷い目に遭い、一度、道術で回復してもらったものの、あまりにも身体がだるかったので起きあがらなかったが、あれは夢などではない。

 見た目だけでは、宝玄仙と宝玉の見分けはつかないが、あの七星に対する態度や雰囲気は、宝玉だと思う。

 

 七星の責めを中断した宝玄仙は、罰の悪そうな表情で、七星を含めた沙那たち四人をこっちの狭い側の部屋に残して、ひとりで隣の三人部屋に行った。

 その後、宝玄仙と宝玉の人格は入れ替わったのだろう。

 そして、宝玉の人格となった宝玄仙の身体が、七星を連れていった。

 そのとき、宝玉は七星の衣服や荷物、それから、一行の路銀まで持っていった。

 だから、七星が出ていったとすれば、宝玉と七星が話し合い、それで、別れを決めたに違いないと沙那は思った。

 

 朱姫は、まだ泣きじゃくっている。

 沙那は、その朱姫が、もう一通の封書を持っていることに沙那は気がついた。

 朱姫は二通の封書を持っていて、ひとつは開かれていて沙那に渡されている。

 もうひとつは、まだ朱姫の手の中だ。

 

「朱姫、それは?」

 

 沙那は言った。

 

「ひぐっ――。ひん……。あっ、そ、そうでした……」

 

 朱姫は涙を拭った。

 

「なにかの術がかかってる?」

 

 孫空女が朱姫の持っているもうひとつの手紙を見て言った。

 術がかかってる?

 

「……はい……。もうひとつは、なにかの術で封印されてて……多分、あの『道術錠』だと思いますけど、封鎖されています。破ることができません」

 

「それは、『道術錠』の術により、開封に条件付がされているということ、朱姫?」

 

 沙那は訊ねた。

 

「そこまでは、あたしの術ではわかりません。だけど、そうだと思います」

 

「とにかく、ご主人様のところに行ってみようよ」

 

 孫空女が言った。

 三人で部屋を出て、隣の部屋に向かう。

 

「ご主人様、入ります」

 

 沙那が声をかけてから戸を開いた。

 ぎょっとした。

 慌てて、孫空女と朱姫を部屋に引き入れてから戸を閉じる。

 そこには、部屋の真ん中で全裸になり、四つん這いになっている宝玄仙がいた。

 

 苦しそうな表情で、こっちを見る。

 よく見れば、宝玄仙の身体から一本の糸が寝台に伸びている。その糸は限界まで張りつめられているが、もしかしたら、宝玄仙の股間に結ばれているのかもしれない。

 

 そして、宝玄仙の顔の下にはひとつの木桶――。

 一体全体、これはどういう状況なのか?

 少なくともここに七星がいないことは確かだ。

 

「ご、ご主人様、これは一体……?」

 

 さすがに沙那も気が動転して、そう言った。

 しかし、怒ったような宝玄仙の顔が、震えながら口を開く。

 

「さ、沙那……お姉ちゃん……。そ、そんなことよりも、ほ、宝玄ちゃんの、お、お尻、たたいてちょうだい……。ち、力一杯、三回よ。他のお姉ちゃんも……。は、早く――は、早くしてくだちゃい」

 

 宝玄仙が真っ赤な顔で言った。

 その表情は恥辱で染まっている。

 

「ご、ご主人様……?」

 

「あ、あのう……」

 

 孫空女と朱姫が呆然としている。

 

「も、漏れちゃうの……。ほ、宝玄ちゃんは、もれちゃう。早く、してくだちゃい。お尻を叩かれる前に、う、うんちしちゃうと、糸が外れないの。はやく、ちて」

 

 引きつったような顔の宝玄仙が、それに似つかわしくない必死の声で言った。

 しかし、その甘ったるしい幼児のような喋り方は、これ以上ないというくらいに滑稽だ。

 

 それで、沙那は悟った。

 なにかの術に違いない。

 よくわからないが、宝玄仙の身体から寝台に向かって引っ張られている糸は、力一杯、三回ずつ、宝玄仙の尻が叩かれなければ外れないに違いない。

 あのおかしな喋り方は、それも条件付のひとつなのだろう。

 つまり、『道術錠』だ。

 

 もしかしたら、七星の置き土産だろうか。

 しかし、七星は道術は遣えないはずだ。

 

「は、早く、叩いてちょうだい。ほ、宝玄ちゃんのお尻、叩いて。さ、三人とも三回……力一杯ね。と、とにかく、早く――」

 

 宝玄仙は悲痛な表情だ。

 その肌には、鳥肌が立っている。

 おそらく、便意が限界に違いない。

 

「た、叩きます、ご主人様――。朱姫と、孫空女も準備して」

 

 沙那は、慌てて宝玄仙に駆け寄る。

 

「おかしいよ、ご主人様――。なんで、そんな喋り方なのさ?」

 

 沙那が平手を振り上げたとき、そう言って孫空女が笑った。

 

「そ、孫お姉ちゃん――」

 

 宝玄仙がそう言いながら、怖ろしい表情で孫空女を睨んだ。

 その表情で、孫空女の顔が凍りつく。

 

「いきますよ、ご主人様」

 

 沙那は、連続で三回、宝玄仙のお尻を叩いた。

 宝玄仙は苦痛の声をあげたが構わなかった。

 

「次は、朱姫よ」

 

 沙那は朱姫と交替した。

 朱姫は、これまでのことであらかた悟ったのか、沙那と同じように、続けて三回宝玄仙のお尻を打擲する。

 

「あ、あたしもやるの?」

 

 孫空女は首を傾げている。

 

「そうよ。早くやってあげて、孫空女」

 

「だけど、あたしが思い切りやったら、ご主人様のお尻がとんでもないことになるよ」

 

 孫空女が途方に暮れた表情をした。

 そうだった。

 孫空女は馬鹿力だ。

 並みの男の十人並みの力がある。

 その力でまともに叩けば、間違いなく、宝玄仙のお尻の骨は砕けてしまう。

 

「と、とにかく、わたしと同じくらいの力で……」

 

 沙那は言った。

 景気のいい音が三度鳴り響いた。

 宝玄仙の股間と寝台を結んでいた糸がぱらりと落ちる。

 

「お、お前たち、早く、桶を当てて――」

 

 普通の喋り方に戻った宝玄仙が叫んだ。

 沙那は、宝玄仙の顔の前の木桶を宝玄仙の四つん這いの股間の下に置く。

 木桶があてがわれるのと、宝玄仙のお尻から液体の混じった大便が噴出するのは、ほぼ同時だった。

 

「ち、畜生……」

 

 大便が終わると、宝玄仙は呻くように言った。

 まだ、四つん這いの姿勢は外せないようだ。

 床に白い線のようなものがあり、そこに宝玄仙の手足は置かれている。

 どうやったら、宝玄仙の手足が床から離れるのか沙那には見当もつかない。

 

「いったい、どういうことなのですか、ご主人様?」

 

 三人がかりで、宝玄仙の身体を拭き、木桶の便も外に片付けた。

 再び四人揃ったところで、沙那が三人の疑念を代表するようなかたちで、宝玄仙に訊ねた。

 

「……こ、これは、宝玉と七星の仕業だよ。わ、わたしに対する罰と仕返しだそうだ」

 

 宝玄仙は語りはじめた。

 

 昨夜、気がついたら、七星が眼の前にいたこと――。

 七星は、宝玉により幾つかの術が遣えるようになっていたこと――。

 おそらく、宝玉が宝玄仙の術を封印し、七星の術で宝玄仙の背中に術を封じる紋章を刻むとともに、床に宝玄仙の身体を床にくっつけたこと――。

 それは、七星の刻んだ『道術錠』の解錠の条件を満たさない限り、解けないことを説明した。

 

「まあ、七星を恨んじゃ駄目だよ、ご主人様。これは仕方ないよ。昨日、酷いことしたからさあ。いつか、謝る機会があったら、謝るといいよ」

 

 孫空女だ。

 

「ふ、ふざけるな、孫空女――。なにが、仕方ないんだよ。術が戻ったら、お前に逆恨みをぶつけてやるからね――。覚えておいで」

 

 宝玄仙が怒鳴りつけた。

 孫空女の顔が蒼くなり引きつる。

 

「とにかく、どうすれば、『道術錠』が解けるのですか?」

 

 沙那は言った。

 

「し、知るものかい――。お、お前らに手紙を残すとか言っていたよ。渡されてないのかい――?」

 

 宝玄仙は、吐き捨てるように言った。

 

「ああ、そう言えば」

 

 沙那は声をあげた。そして、朱姫から、朱姫がまだ持っていた七星からのもうひとつの封書を取りあげた。

 さっきは、術がかかっていて破れなかった。

 沙那は、その封書に手をかけた。簡単に手で封書が破ることができる。

 やっぱり、宝玄仙の糸が外れるとか、木桶に排泄をするとか、そういうことが、手紙側の『道錠錠』の解錠の条件になっていたのだろう。

 その中身に眼を通して、沙那は思わず噴き出した。

 

「沙那、お前も、逆恨みの対象だからね」

 

 四つん這いの宝玄仙がじろりと睨んだ。

 沙那はすくみあがった。

 

「条件とは、なんですか、沙那姉さん?」

 

 朱姫が、沙那の持っていた手紙を横から覗いた。

 すると、朱姫もぷっと噴いた。

 

「朱姫もだよ……」

 

 宝玄仙の冷たい声――。

 朱姫も真顔に戻り、黙り込んだ。

 

「それで、解錠の条件はなんだよ?」

 

 宝玄仙がこっちを睨んだ。

 

「ご主人様をお尻で一回ずつ絶頂させることです」

 

 沙那は、七星の手紙を宝玄仙の顔の前にかざした。

 

「そういうことなら、さっそくやってあげるよ。それくらいで、外れるならいいじゃないか」

 

 孫空女が立ちあがった。

 宝玄仙の後ろに回る。

 

「くうっ――。し、仕方ない……。じゃあ、た、頼むよ……」

 

 宝玄仙が顔を悔しそうにしかめた。

 

「いくよ、ご主人様」

 

 孫空女が宝玄仙のお尻に指を挿す。

 そして、くちゅくちゅと動かし始めると、例によって、宝玄仙はあっという間に乱れ始める。

 

「ご主人様、もう、いきそうかい?」

 

 孫空女が指で宝玄仙のお尻を何度か抜いたり挿したりしているうちに、宝玄仙の身体が小さく震えはじめた。

 

「う、うん……。い、いくよ……いくっ――」

 

 宝玄仙が声をあげた。身体が仰け反り、宝玄仙は達した。

 

「次はあたしが」

 

 朱姫が孫空女と交替した。

 朱姫の手管により、宝玄仙が二度目の絶頂に達するのに、それほどの時間はかからなかった。

 

「沙那姉さんの番です」

 

 朱姫が言った。

 沙那は、朱姫と交替して、宝玄仙の肛門に指を挿しこむ。

 もう、二度達している宝玄仙の身体が、すぐに震えだす。

 

「ああ……」

 

 宝玄仙が甘い声を出す。

 よくわからない感情が沙那の中に走る。

 宝玄仙を指でいたぶっている。―錠

そして、それで宝玄仙が感じている。不思議な倒錯の想いが、沙那を酔わせる。

 沙那の指が動くたびに、宝玄仙が甘い声と熱い息をこぼす。

 

「ああ……だ、駄目……駄目だよ……ああ……」

 

 沙那が指の速度をあげると、宝玄仙の乱れが大きくなった。

 さらに、大きく口を開けた宝玄仙が、閉じていた眼を開けて、首を震わせて打ち震えた。

 

「背中の紋章が消えました」

 

 朱姫が声をあげた。

 

「な、七星め……」

 

 汗にまみれた宝玄仙が、身体を起こそうとした。

 そして、怪訝な顔をする。

 

「な、なんで……? なんで、まだ、離れないんだい?」

 

 宝玄仙が呆然とした声をあげた。

 

「術はどうですか、ご主人様?」

 

 沙那は言った。

 紋章は消えているのだ。

 身体の拘束が解けないとしても、術は戻ったのではないだろうか。

 

 宝玄仙が一瞬、押し黙った。

 突如、沙那の股間がなにかに掻きまわされた。秘肉が蠢動し、閃光のような快感が衝きあがる。

 

「ひぎいっ――」

 

 理解できない快感に沙那は、全身を反りかえらせた。

 

「いくうっ――」

 

 腰の砕けた沙那は、その場にへたり込んだ。

 

「術は戻ったよ。だけど、手足が床から離れないんだ。それについては、術も効かない」

 

 宝玄仙は、沙那にやったことなどなにもないかのように、平然と言った。

 沙那は、宝玄仙に恨みの視線を送りながら、まだ、気だるい身体を整える。

 股間がびしょびしょだ。

 一気にあげられた快感により、沙那は潮のようなものを股間から放出させてしまったのだ。

 

「あっ――、さっきの手紙に別の字が浮かんできました」

 

 朱姫が声をあげた。

 

「なんと書いているんだい、朱姫?」

 

 宝玄仙が声を張りあげた。

 

「そ、その……。ご主人様の術で、あたしたちの股間に男のものを生やしてもらって、今度も一度ずつ、ご主人様のお尻を犯せと、書いてあります。そうすれば、手と足は床から離れると……」

 

 朱姫が申し訳なさそうに言う。

 

「ちっ――。次から次へと……。こうなったら、さっさとやりな、お前たち。わたしのお尻を順番に犯すんだ」

 

 宝玄仙がやけくそのように声をあげる。

 沙那の股間に男性の怒張が生えた。

 いつものこととはいえ、やっぱり、自分の身体を術でいじくられて、男性器を生やされるというのは、気味が悪い。

 

「じゃあ、今度は、あたしが最初でいいですか、ご主人様?」

 

 朱姫が言った。

 どこか嬉しそうだ。

 宝玄仙を堂々と犯せるということが、朱姫を興奮させているに違いない。

 朱姫の上気した顔には、はっきりとした嗜虐の悦びが浮かんでいる。

 

「指よりも太いから、少しご主人様の愛液を借りますね」

 

 朱姫がそう言って、宝玄仙の股間に指を伸ばして、溢れている淫液を自分の股間の怒張にまぶす。

 

「あ、ああ……な、なんでもいいよ……ひ、ひいっ」

 

 朱姫の指に翻弄されて、宝玄仙が身体を震わせはじめる。

 不必要なくらいに、何度も何度も宝玄仙の股間に指を伸ばしては、愛液を宝玄仙の肛門と自分の男根に伸ばす。

 

「も、もういいだろう、朱姫? いい加減に……」

 

 声を洩らすまいと耐えている宝玄仙が真っ赤な顔を後ろに向けて、朱姫に強い視線を向けた。

 

「は、はい……。も、もう、始めます」

 

 朱姫が慌てて言った。

 いつもの悪い癖で、調子に乗りかけていたのだろうが、相手が宝玄仙では、大変なことになる。

 それに、いまの宝玄仙は、七星の『道術錠』で身体が拘束されているだけで、魔術は遣えるのだ。

 

「はひっ――」

 

 宝玄仙が快楽に声をあげた。

 三度も達している宝玄仙だから、すぐに達するだろう。

 朱姫の腰が律動を開始すると、宝玄仙は、官能の昂ぶりに呻き声をあげ始めた。

 

「うはっ……ひいっ……ほうっ……はううっ……ひんっ……」

 

 可愛らしい声を出しながら、宝玄仙は身体を激しく揺すって痙攣しはじめる。

 

「い、いくよう……」

 

 宝玄仙が大きな声で叫んだ。

 

「あ、あたしもいきます」

 

 朱姫は叫んだ。

 ひと際大きく、宝玄仙の白いお尻が震える。

 束の間の余韻の後、朱姫の腰が引き抜かれた。

 どろりとした精が、宝玄仙の肛門からこぼれる。

 

「うふっ……、ご主人様、可愛いです」

 

 朱姫が言った。

 

「よ、余計なことを言わなくていいんだよ、朱姫――。そらっ、孫空女、次は、お前だ――」

 

 宝玄仙が真っ赤な顔をして言った。

 

「う、うん」

 

 呆然と眺めていた孫空女が、弾かれるように立ちあがった。

 孫空女が、力強く宝玄仙に男根を突き挿す。

 すぐに、孫空女は、宝玄仙のお尻を犯し始める。

 

 宝玄仙が喘ぎ声を出し始めた。

 また、宝玄仙はあっという間に達するに違いない。

 

 次は、沙那の番だ。

 沙那は宝玄仙のお尻を犯して、泣かすことができるということが、なんだか、七星からの素敵な贈り物のような気がしてならなかった。

 

「い、いくよ、孫空女――」

 

 宝玄仙が泣くような声で吠えて身体を仰け反らせた。

 

「う、うん……。で、でも、あたし、まだ……」

 

 宝玄仙が達しても、孫空女はなかなか精を放つことはできなかった。

 結局、孫空女が精を出すまでに、宝玄仙は三回達しなければならなかった。

 

 孫空女が、上気した顔を沙那に向けて頷く。

 沙那の番だ。

 

 沙那は、興奮で震える身体を立ちあがらせて、つらそうな宝玄仙の白いお尻を両脇から掴んだ。

 そして、朱姫と孫空女と宝玄仙自身の精でびしょびしょになっている宝玄仙の肛門に、ゆっくりと股間のものを突き挿していった……。

 

 

 *

 

 

 そろそろ、夕方だ。

 

 しばらくの間、宝玄仙はずっと元気がなかった。

 七星の企みで、孫空女たちからお尻を犯された衝撃によるものではないことを孫空女は知っている。

 

 昼過ぎにやっと雨が止んで、急にいい天気になった。

 それでも、じっと宝玄仙は窓際に座って、所在無げに外にぼんやりと視線を向けていた。

 

 こういう旅をしない日というのは、孫空女や沙那や朱姫の身体を責めて、なにかしらの淫靡な悪戯をするのが常だったので、なにもない一日というのは、本当に珍しかった。

 

 宝玄仙はなんにも喋らないが、宝玄仙が誰のことを考えているのかは、丸わかりだった。

 宿の部屋には結界が張ってあって、外からは余所の者が中に入ることはできないし、音も漏れないのだが、逆に、廊下の物音は内側からはよく聞こえる。

 

 宿の廊下を誰かが歩く音がするたびに、宝玄仙は反応して、廊下の気配を探るような仕草を見せた。

 そして、足音が部屋の前を通り過ぎて、小さくなると、再び、視線を窓の外に向けて、じっと押し黙る。

 その繰り返しだ。

 宝玄仙が、今朝、立ち去った七星のことを思っているのは明白だった。

 

「前から七星は、三箇月経ったら、立ち去るって言っていたから、予定の行動だったんだよ、ご主人様」

 

 孫空女は、何気なく宝玄仙の背中に声をかけた。

 部屋の中にいるのは、宝玄仙と孫空女のふたりだけだった。

 

 沙那と朱姫は、日差しが出始めたので、汚れ物を洗って乾すために、宿町の共同洗濯場に出掛けて行ったのだ。

 孫空女は、宝玄仙とともに留守番だ。

 宝玄仙になにかがあったときに、その身を護るのが孫空女の役割だからだ。

 

「……あいつは、根性なしだよ。ちょっと、責めを強くしたくらいで音をあげてさ」

 

 宝玄仙は、外に視線をやったまま言った。

 その声には、かすかに溜息が混じっていた。

 

「いや、あいつは根性あるよ。智淵城のときだって、身体が操られているのに、あの虎力に逆らって跳びかかったじゃないか。ほら、沙那が最初の救出に来たときだよ。あのとき、七星の捨て身の体当たりがなければ、ご主人様は、虎力に捕まってしまって、沙那がご主人様の手足首を切断して、逃がすということはできなかったかもよ」

 

 孫空女は言った。

 

「まあ……あのときはね……。だけど、あいつは根性なしだ」

 

 宝玄仙はまた言った。

 視線を外に向けたままだ。

 

「ご主人様は、七星をずっと旅に連れていきたかったのかい?」

 

 孫空女は言った。

 

「わたしというよりは、宝玉がね……」

 

「宝玉様?」

 

「七星は、宝玉のお気に入りだったのさ。だから、ちょっとばかり調教して、わたしから離れられないようにしてやろうと思ったのにさあ」

 

 宝玄仙は、なにか苦いものを口にしたような表情をした。

 どうやら、宝玄仙は、宝玉の気に入った七星を旅の仲間に留めようと、本格的な調教をしようとしたということのようだ。

 しかし、結局は、七星はそれを肉体的なものはともかく、心理的に受け入れることができずに、責めの途中で嘔吐した。

 

 宝玄仙には、あのとき、珍しいことにそれで七星への責めを中断した。次いで、宝玉は、七星がこの一行から立ち去ることを認めた。

 立ち去る七星が、宝玉と組んで、宝玄仙を『道術錠』で仕返しをしたのは、愛嬌のようなものだ。

 責めるのも責められるのも、この四人の日常であり、遊びだ。

 もっとも、宝玄仙が被虐側に回るのは滅多にあることじゃないから、あれは貴重な出来事だった。

 

「だったら、普通に言えばよかったんじゃない。七星は、調教とか、嗜虐とか、被虐とかじゃなくてさあ。一緒にずっと旅をしてくれって言えば、案外とあっさりと受け入れてくれたんじゃないの、あいつは」

 

「しょ、しょうがないだろう、孫空女。やってしまったことは」

 

 宝玄仙が孫空女を睨んだ。

 しかし、その宝玄仙の表情は、怒っているというよりは、激しい悔悟が含まれている気がした。

 

 孫空女がそんな宝玄仙に戸惑いを感じていると、宝玄仙は、孫空女から視線を逸らせて、元のように、窓の外を眺める姿勢に戻った。

 孫空女は苦笑した。

 

 本当に宝玄仙は、七星に対して悪いことをしたと思っているのだ。

 冷酷で残酷で容赦なく他人を責めたてるくせに、どことなく、弱い……。

 それが、孫空女が感じている宝玄仙だ。

 いまの宝玄仙は、普段の宝玄仙にはない、そういう隠れた性質が滲み出ている。

 しばらく沈黙が続いた。

 

「孫空女」

 

 やがて、宝玄仙が言った。

 身体を反転させて、まっすぐに孫空女に身体を向けている。

 その表情に明るさが戻っている気がした。

 なんだか孫空女はほっとした。

 

「なにさ、ご主人様?」

 

「悪いが、下袴を脱いでくれるかい。下半身すっぽんぽんになっておくれ」

 

「な……」

 

 孫空女は絶句するとともに、自分の顔が真っ赤になるのを感じた。

 いきなりなにを言い出すのだろう、このご主人様は――。

 

「いいだろう? ちょっとばかり、お前の身体で憂さ晴らしをさせておくれよ。なんとなく、気が晴れないんだ」

 

「ちょ、ちょっと待って――」

 

 孫空女は、思わず立ちあがった。

 しかし、その身体が凍りついたように動かなくなる。

 

 宝玄仙の道術だ。

 身体の筋肉を硬直させられた。

 宝玄仙の身体が近づく。

 

 人形のように動けない孫空女の下袴を脱がして、下着ごと、足首に落とす。

 そして、足首から抜き去られる。

 宝玄仙が触ると、簡単に動く身体が、孫空女にはどうしても自分で動かすことができない。

 

「ご、ご主人様……。お、お願いだよ。こ、こんな悪戯……」

 

 無駄だとわかっている哀願を孫空女はした。

 しかし、孫空女の憐れみのこもった口調に、逆に宝玄仙の嗜虐の火がついたのか、その顔が淫靡に微笑む。

 宝玄仙の手が孫空女の前で合わされ、それがゆっくりと開く。

 その手に合わせて、孫空女の脚はゆっくりと開いていく。

 それは、孫空女の意思とは関係ない。

 

 やがて、孫空女の下半身は、みっともないがに股姿にさせられた。

 下半身に震えが走る。

 これからなにをされるのか……。

 

「股ぐらを曝け出されたくらいで、興奮しているのかい。変態女になったものだよ。あの五行山の盗賊団の女頭領がねえ――。いまじゃあ、下半身を裸にひん剥かれて、股を開かされたくらいで、下の口で涎を流し始めるんだからね」

 

「そ、そんなことあるものかい――」

 

 孫空女は、思わず声をあげた。

 いつも濡れるのは、宝玄仙におかしな淫具や道術を遣われるからだ。

 なにもしなくて濡れてしまうわけじゃない。

 

「じゃあ、賭けをするかい、孫空女?」

 

 宝玄仙がにやりと微笑む。

 そして、懐から小さな布切れを出した。

 親指の先程のほんの小さいな白い布だ。

 

「賭け?」

 

 孫空女は訝しんだ。孫空女の視線は、宝玄仙の持っている小さな布片に注がれている。

 淫靡な霊具に違いないのだ。

 

 急に、孫空女の身体が勝手に動く。

 そして、廊下に出る扉に向かって向きを変えて立たされる。

 腕は背中に回った。

 孫空女は、下半身を露出したまま、扉を向いて立たされた。

 

「これをお前の肉芽に貼るよ。心配しなくても、お前が女陰を濡れたりさせなければ、布はぴくりとも動かない。だけど、お前が興奮して女陰を濡らせば、この布片は振動する。お前が濡らせば濡らすほど、振動が強くなるからね。賭けてもいいけど、この布片は、わたしがなにもしなくても動き出すと思うけどね」

 

 そう言って、宝玄仙は、孫空女の肉芽のある場所に布を貼る。

 

「はうっ」

 

 指を押し付けられたちょっとした刺激で思わず声が出る。

 しかし、次に行った宝玄仙の仕打ちで、孫空女は総毛立った。

 宝玄仙は、孫空女が下半身を露出させた身体を向けている廊下への扉を全開で開け放ったのだ。

 

「ひいっ――。ご、ご主人様、や、やめてよ。こ、こんなの――。閉めて、閉めてよ」

 

 孫空女はびっくりして声をあげた。

 

「大きな声を出すんじゃないよ、孫空女。何事かと人が集まって来るじゃないか。扉を開ければ、結界で音を遮断しているのは無効になるんだよ」

 

 慌てて口を閉ざす。

 

「さて、誰がくるのかね。心配ないよ、裸を見られるだけで、結界の中には入ってこれないからね」

 

「堪忍して……」

 

 孫空女は、懸命に宝玄仙に訴えた。

 しかし、宝玄仙は愉しそうに笑うだけだ。

 しばらくすると、孫空女は鳥肌が立った。誰かがやってくる気配がする。

 

「おや?」

 

 宝玄仙が声をあげた。

 

「ご主人様、もう、閉めて、勘忍して」

 

 ここは二階だ。

 その二階に向かい、誰かが階段を昇ってくる。

 

「ああ、あの足音は、この宿屋の女亭主だね。明日出発するかどうか、訊ねにきたのかねえ? お前を見て、どんな顔するか愉しみだよ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「し、閉めて、閉めてったらあ――」

 

 孫空女は必死の声をあげた。

 足音が近づく。

 本当にこっちにやって来る。

 

「はうっ――」

 

 不意に股間の布片が動き出した。

 すぐに激しくなる。

 

「やっぱり、変態女に決定だね」

 

 宝玄仙が笑った。

 足音が二階の廊下になる。

 

「へ、変態を認める。み、認めるから……。ああっ……お、お願い――。ご主人様――あひいっ――」

 

 どんどん振動が強くなる。

 もう耐えられない。

 足音がそこまで――。

 

「ご主人様、お願い――ひぐうっ――」

 

 孫空女は叫んだ。

 それとともに凄まじい勢いで肉芽の振動が激しくなり、孫空女は、その場で絶頂してしまった。

 

「……ご主人様、戻りました――。そ、孫空女?」

 

 洗濯物を抱えた沙那が、孫空女の痴態を見て仰天している。

 その後ろには朱姫もいる。

 朱姫も口を開けて、驚いている。

 

「ひいいん――」

 

 泣き声だか嬌声だかわからない声が口から洩れる。

 ほっとした孫空女の身体から力が抜ける。

 

「早く入ってきて、戸を閉めてやりな、沙那、朱姫。本当に誰かが来ちゃうじゃないか」

 

 宝玄仙はそう言って、声をあげて笑った。

 肉芽の振動は、まだ激しく動いている。

 孫空女は、二度目の絶頂に向かって、身体を震え始めさせていた。

 

 

 

 

 

(第28話『狂い女と三行半(みくだりはん)』終わり)

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