※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

188 / 819
188 友情と恋愛-沙那の部屋

 疼く……。

 疼くのだ……。

 

 そして、寝台に脚を伸ばしていた沙那は、知らず股間に手をやっていた自分に気がついてはっとした。

 股間に手を伸ばして、自分は一体なにをしようとしていたというのか……。

 慌ててわざと首を振る。

 

 折角、珍しくも宝玄仙がひとりひとり休もうと言ってくれたのだ。

 それなのに……。

 だが、今夜はなにもない……。

 なにもいやらしいことをされずに寝るのだと思うと、なぜか、身体に淫らに疼いてしょうがない……。

 

 宝玄仙と旅をするようになって、二年に近い歳月が経った。

 毎日のように宝玄仙にいたぶられて、はしたなくも絶頂するのが当たり前のようになっていた。

 あの途方もない快楽を際限なく与え続けられ、沙那の身体はほかの誰よりも欲情に敏感になり、淫靡な反応を示す肉体になってしまった。

 

 この淫乱な身体は、もう元には戻らないだろう。

 なんという浅ましい身体になってしまったのか……。

 淫靡な女にされてしまったのだと思うほかない……。

 

 あの故郷の愛陽の城郭での日々―――。

 市民を相手に剣術を教える父が突然に他界したのは十五歳のときだった。

 母親を早逝により失っていた沙那にとっては、父親はたったひとりの家族だったが、親というよりは武術の師匠だった。教えてもらったのは武術のことだけで、男女の身体のことを含めたほかのことなどなにひとつ知ることなく沙那は育った。

 性愛という言葉は知っていたが、文字通り知っていただけだ。結婚をすれば、そういうことをするとは思っていたが、結婚をしていない男女が快楽を得るためだけに愛し合うということは知らなかった。

 本当に初心だったのだ。

 

 十五歳にしてすでに師範代だった沙那は、その武芸の腕を頼りに城郭軍に入った。

 武術だけでなく、指揮をする能力があると認められ、盗賊退治などでも功績を積み重ねて、あれよあれよと出世した。

 力を認められて、地位があがるのは純粋に愉しかった。

 そして、十八歳にして、城郭軍の千人隊長にまで出世し、『愛陽の鬼娘』という二つ名まで持っていた。

 慕ってくれる部下もいたし、仲間もいた。

 それは足を引っ張ろうとする者もいたが、総じて順風満帆の軍人生活だったと思う。

 

 「鬼娘」という綽名で畏怖されてもいた将校の沙那に近づいて、性の欲望のことを教える男などおらず、ましてや、この世に女と女で愛し合うという性愛があることは想像もしていなかった。

 当時のそういう知識のなさに、いまの沙那は笑いそうになる。

 “自慰”という言葉さえ知らなかったのだ。

 『服従の首輪』を嵌められて、“自慰をしろ”という宝玄仙の命令が理解できなくて、命令に従わない沙那に宝玄仙が卒倒するくらいに驚いていたことが懐かしい……。

 

 その沙那の運命が変わったのが宝玄仙との出会いだ。

 十八歳のときだった。

 愛陽の城郭に、まだ天教の最高神官の称号を持っていた宝玄仙がやってきたのだ。

 八仙と呼ばれる最高神官である貴族巫女は、なぜかたったひとりで従者もつけない巡礼の旅をしていた。いまはその理由を知っているが、当時は不思議に思ったものだった。

 ともかく、数日間、城郭内に滞在して祭事を引き受けることになった宝玄仙に、愛陽の行政府は護衛をつけることにした。それに選ばれたのが沙那だ。

 同じ女であり、美貌の貴族巫女の宝玄仙のそばに侍って身辺を防護するのに、女将校で武芸者の沙那はうってつけだったのだ。

 

 そして、幸か不幸か、その沙那を、隠れた嗜虐癖を抱いていた宝玄仙は気に入ってしまった。

 おそらく、不幸なことだったのだろう。

 しかし、これも、いまとなっては、本当に不幸だったのかわからない。

 まあ、運命の転機と思うしかない。

 

 行政府から護衛を命じられて宝玄仙のそばにいるようになると、貴族とは名ばかりで、宝玄仙は随分と気さくで、優しい人だとわかった。

 もちろん、それは、すでに沙那を獲物にしようと企んでいた宝玄仙の演技だったのだが、その宝玄仙に一緒に巡礼の旅にいかないかと誘われて沙那は迷ってしまった。

 

 愛陽の城郭を一度も出たことのない沙那にとっては、旅は憧れだったし、なによりも、道術が遣えるとはいえ、なんの腕に覚えのない宝玄仙が危険な西域への旅をするには、沙那という剣が必要だと思った。

 だが、せっかく千人隊長にまでなった軍人の地位を捨てることにも、躊躇いはあった。

 その日は返事はしなかった。

 

 しかし、旅に誘われた日の夜、祭事のための銀細工の道具が神殿から盗まれるという事件があった。

 その盗難品が沙那の荷物から発見され、沙那は疑われた。

 無論、宝玄仙の仕組んだことだったのだが、そんなこととは夢には思わない沙那は、嫌疑を晴らすためには、『服従の首輪』を首に装着すればいいと宝玄仙に言われ、それを承知した。

 『服従の首輪』を嵌めれば、絶対に嘘が言えないので、沙那の潔白が証明できると言われたのだ。

 そして、『服従の首輪』を宝玄仙に嵌められた沙那は、その瞬間に宝玄仙の奴隷になった。

 

 かくして、宝玄仙の罠に嵌り、性奴隷として調教される日々が始まった。

 『服従の首輪』の効果により、「命令」によって、やっていない盗みの自白をさせられた沙那は、流刑の代わりに宝玄仙に預けられた。つまり、城郭を追放されたのだ。

 媚薬と淫靡な道術により発狂するような欲情をさせられ、宝玄仙から破瓜をされたのは、旅の初日の夜のことだった。

 

 それ以来、今日のいままで、ほとんどただの一日も休むことのない被虐と淫欲の日々が続いている。

 なにも知らなかった沙那の身体は、ありとあらゆる性の実験台になった。

 いまは、知らない性などない。

 排泄器官としか思わなかった肛門で途方もない愉悦を覚えるようにもなったし、性感などなにもないはずの口の中でさえ、刺激を受ければだらだらと愛液を垂れ流して欲望してしまう。

 自分は淫乱になったのだ……。

 

 だから、ひとりでに股間に手をやるようないやらしい振舞いをしてしまうのに違いない。

 沙那は、疼く股間を慰めようとして動く自分の手をぎゅっと握った。

 

 だけど……疼く。

 だめだ……。

 我慢できない……。

 ほんの少しだけ――。

 ちょっと触るだけ――。

 

 沙那は、下袴(かこ)の紐を緩めて、掛け布の下の自分の下半身を包む下袴と下着を腿のところまでおろすと、疼きの頂点の肉芽をそっと押した。

 

「はうっ」

 

 思わず出た声にはっとして、口をつぐむ。

 心臓が激しく動悸している。

 

 だが、肉芽に自分の手が触れた途端に身体に流れ込んだ快感に、沙那は泣きなくなるくらいの欲望を感じてしまった。

 

 慌てて手を股間から離した。

 自分でもびっくりしている。

 沙那は生まれて初めていま、自分の意思で自慰をしようとした。

 

 宝玄仙に命令されたわけでもない。

 霊具で操られているわけでもない。

 強制されていないのに……。

 本当の意味での「自慰」をしようとした……。

 

 こんなことはいやらしくもはしたないことだ。

 それはわかっている……。

 

 沙那は、掛け布でしっかりと自分の腰から下を覆いなおした。

 どきどきしている。

 自分の心臓の音がはっきりと聞こえる。

 

 沙那は、もう一度おそるおそる自分の股間に手を伸ばした……。

 

「あっ……」

 

 衝撃が走る。

 気持ちいい――。

 身体全体が肉芽になったようだ。すでに女陰はどろどろに溶けたように濡れている。快感が全身に走る。

 

「んくっ、んんっ、んんんっ」

 

 指が止まらない。

 沙那の手は勃起した肉芽の一番感じる場所をいじくり続けている。

 本当に気持ちいい――。

 

「んんんっ」

 

 いく――。

 

 沙那は唇をぎゅっと結んで、身体を強張らせた。

 

「沙那、ちょっといい……?」

 

 その声とともに、いきなり戸が開いた。

 沙那はびっくりして慌てて掛け布の中から手を引っこ抜いた。

 戸から入って来たのは孫空女だった。

 具足も外して下袴と上衣だけの軽装だ。

 

「ど、どうしたの?」

 

 沙那は顔面が引きつるのを感じながら、懸命に平静を装って言った。

 

「うん、ちょっと相談があって」

 

 孫空女は、沙那が座っている寝台の頭側の端に腰を降ろした。

 沙那の心臓は早鐘のように鳴っている。

 なにしろ、薄い掛布の下の沙那の下袴と下着は腿まで下げられて、下半身はすっぽんぽんのままなのだ。

 しかも、沙那の手淫で絶頂寸前だった沙那の股間は淫液でびしょびしょのはずだ。

 沙那は匂いでばれやしないかとどきどきしている。

 

「そ、相談って……?」

 

 沙那は平静を装いながら自然な感じで、掛け布を腰に載せたまま、身体の向きを変えた。

 

「この宿屋、なにかおかしくない?」

 

 孫空女は言った。

 

「おかしい?」

 

「正直に言うよ……、沙那。笑わないでよ、沙那。あたし、さっきまで部屋でひとりでいて、気がついたんだ。不自然なくらいに身体が淫靡に疼くんだ。沙那はなにも感じない?」

 

 沙那はびっくりした。

 感じないどころじゃない。

 その淫靡な欲情に耐えられなくて、沙那は文字通り生まれて初めて自分の意思で自慰をしていたのだ。

 そして、まさにその自慰で昇天する寸前だった。

 

「か、感じないって言われても……」

 

 なにをどう言えばいいのか言葉が出てこない。

 とてもじゃないが、たったいま自慰をしていましたとは言えない。

 

「……ここ、普通の宿屋じゃないよ」

 

 孫空女は真面目な顔をして言った。

 

「えっ?」

 

「どこかに、得体の知れない何者かが隠れていると思う。あたしにはわかる。これでも少しは霊気も魔力を感じることができるんだ……。多分、間違いないと思う。だけど、これは、人間でも魔族でもない。もっと得体の知れない魑魅魍魎(ちみもうりょう)のたぐい……。魔物のようなものが、かもし出す魔力だよ」

 

「魔物?」

 

 魔物とは、魔族とは異なり、もっと得体の知れないなにかのことだ。妖怪とか、怪物とかとういうものだ。

 人間とは異なる亜人種にすぎない“魔族”を東帝国では、“妖魔”と蔑む物言いは、その妖怪にひっかけているのだ。

 とにかく、それを聞いた沙那は、すぐに起きあがりそうになった。

 しかし、自分の下半身の状態を思い出してそれを自重する。

 

「それは危ないわ、ご主人様が……」

 

 宝玄仙はひとりだ。

 道術で結界を作って防護しているとは思うが、あの危うい気まぐれ女は、放っておくとどんどん自ら罠に嵌って危機に陥る。

 

「ねえ、孫女、すぐに、ご主人様のところに行ってあげて。わたしもすぐに行くから」

 

 とにかく、宝玄仙の安全を確認することだ。それから、魔物について対応を考えればいい。

 しかし、なぜか孫空女は動こうとはしない。

 

「どうしたのよ、孫女。早く、ご主人様のところに向かってよ」

 

 なぜ孫空女が動こうとしないのか沙那には理解できない。どうしたというのだろう。

 

「大丈夫だよ、ご主人様は――。結界で護られているだろうから」

 

 孫空女は言った。

 

「それは、わかっているわよ。だけど、万が一のことがあるわ。とにかく、無事を確認しなけりゃあ……」

 

「沙那、あたしが心配しているのは、ご主人様よりも、沙那のことだよ」

 

 孫空女が声を大きくした。沙那は呆気にとられた。

 

「これを見て」

 

 孫空女はそう言って、自分の両手を沙那の前にかざした。両方の親指の付け根に細い紐が巻いてある。

 

「それがどうしたの? その紐はなに?」

 

 沙那は訊ねた。

 

「多分、いまは大丈夫みたいだけど、おそらく、これをしないと沙那もどんどん魔物の魔術に蝕まれるよ――。手を出して」

 

 魔物の魔術に蝕まれる……?

 それではっとした。

 いくらなんでも、沙那が自分で股間を慰めるなど我ながら不自然だ。

 だったら、これはいつの間にか沙那自身も魔物の魔術にかかっていたに違いない。

 だから、それを心配した孫空女は来てくれたのだ。

 

 それにしても、孫空女が親指にしている紐はなんだろう?

 霊具の類いではないような気がするが……。

 沙那は言われるまま、両手を孫空女にかざす。

 

「そうじゃないよ、沙那。とにかく、背中側に回して……」

 

 孫空女の言っていることが理解できないが、とにかく親指を後ろにやって、身体をずらして孫空女に向ける。

 

「そうそう……。親指をくっつけて組むようにね……」

 

 孫空女が言った。

 次の瞬間、沙那の両方の親指は、ぎゅっと根元を紐で結ばれてしまった。

 

「あれ?」

 

 拘束された――?

 はっとした沙那は、慌てて親指を離そうとした。

 だが、根元がしっかりと結ばれていて離れない。

 

「いたっ」

 

 しかも、力を入れたために、紐で縛られた親指に痛みが走り、小さく叫んでしまった。

 

「簡単に騙されすぎだよ、沙那」

 

 孫空女が笑って、沙那の下半身を覆っている掛け布に手をかけた。

 

「わ、わ、わあ――。ちょ、ちょっと、孫女――」

 

 沙那は慌てた。

 孫空女に沙那のいまの状態を見られたくない。

 しかし、両手を後ろに縛られている沙那には、抵抗の手段がない。

 孫空女は容赦なく掛け布を引きはがした。

 

「いやあっ」

 

 沙那は思わず膝で股間を隠した。

 

「馬鹿だねえ、沙那……。あたしは鼻がいいんだよ。この部屋に入ってすぐに、沙那がいままでなにをしていたかわかったよ。だから、たまたま、持っていた細紐を自分の親指に咄嗟に巻いたんだよ。これは別に意味はないよ。ただ、沙那を縛ってしまおうと思っただけさ……」

 

 孫空女は、そう言いながらもどんどんと沙那の上衣の紐を解いて、合わせ目を開いていく。

 

「な、なにしているのよ、孫女――。ちょっと、やめてよ――」

 

 沙那は身体をくねらせて孫空女の手を避けようとするのだが、この状態では逆らいようがない。

 どんどんと服を脱がされていく。

 あっという間に、沙那の上衣は両側に開かれた。

 孫空女は沙那のしていた胸当てをずらして、ふたつの乳房を露わにした。

 

「ひっ――」

 

 やや荒っぽい仕草で孫空女が沙那の乳房を揉みあげた。沙那はたちまちに込みあがった快感に思わず声をあげてしまった。

 

「や、やめてよ、孫女――。やめてったら……」

 

 沙那は身体をくねらせて、孫空女の愛撫で溶けていく肉体をなんとか保とうとする。

 しかし、欲情に敏感なこの身体は、たったこれだけの刺激でも、腰が砕けるほどの快感を覚えてしまう。

 

「でも、あたしも身体が疼くのは本当だよ。あまりにもおかしいから、沙那に相談しに来たんだ……。そうしたら、沙那がおかしなことをやっていて……」

 

「お、おかしなことって……な、なに……、孫女―――? あっ……ああ……も、もう―――」

 

 沙那は抗議するが、孫空女の手が沙那を追いつめる。

 乳房と乳首に孫空女の指が絡まる。どんどん沙那の身体からは力が抜けていく……。

 沙那は、ついに孫空女に寝台に押し倒された。脱ぎかけの下袴と下着が、沙那の脚から抜かれる。

 

「い、いい加減にしてよ――」

 

 沙那は思わず声をあげた。

 大声で怒鳴りあげた。

 孫空女の手がとまった。

 沙那の顔を見下ろしている。

 

「……どうしたのさ、沙那?」

 

 孫空女がばつの悪そうな顔をした。

 

「や、やめて……。もう、解いて」

 

 沙那は上半身を起こそうとした。しかし、孫空女の片手がそれを阻んだ。

 

「な、なによ、孫女?」

 

 沙那は孫空女を睨んだ。

 

「ちょっと、そのままでいて、沙那」

 

 孫空女はそう言うと、その場で服を脱ぎ始めた。

 呆気にとられる沙那の前で、孫空女はどんどん服を脱ぎ、あっという間に産まれたままの姿になった。

 

「見て」

 

 孫空女は、沙那の上に膝立ちで跨って、股間を突き出すようにした。

 その股間は真っ赤に充血して、はっきりとした欲情をしているのを示すように、孫空女自身の淫液でびっしょりだった。

 

「笑うでしょう……。これ見てよ。もう、あたしの股はこんなんなんだ。今夜はご主人様になにもせずに寝ていいって言われたのに……ううん、だからかもしれない。いやらしいことや気持ちのいいことをしてもらいたくて、こんなに勝手に濡れるんだ。淫乱で変態の身体だよね。みっともないとは思うけど、もう、あたしの身体はこんなんになっちゃったんだ……」

 

「孫女……」

 

「魔物の気を感じるのは本当だよ、沙那。だけど、それよりも、身体が疼くんだよ。それで、どうしようもなくなって、困って沙那のところにきたんだ。本当は変なことをしようとしたんじゃない。ただ、話でもすれば落ち着くと思ったから……。だけど、沙那も同じだってわかったら嬉しくて……。ちょっと、はしゃいだけど……。いいよ、軽蔑しなよ。あたしのこと変態だって……」

 

 孫空女は意気消沈してしまったようだ。

 

「け、軽蔑なんてしないわよ、孫女……」

 

 軽蔑するわけがない。沙那も同じだった。

 疼く身体をどうしようもなくなり、自慰で発散しようとしていたのだ。

 

「でも……、謝るよ、沙那」

 

 孫空女は沙那の身体からおりた。

 

「ま、待って――」

 

 沙那は声をあげていた。

 孫空女が振り向いた。

 

「なにさ、沙那?」

 

「声をあげて悪かったわ、孫女。わたしも同じなのに……」

 

「えっ?」

 

「わたしこそ、ひとり遊びをしていた変態なのに……。いい子ぶって、あなたに声をあげたことを悪かったわ。多分、わたしは、わたしのことを怒鳴ったんだと思う。いやらしくて、はしたなくて、変態で淫乱のわたしに腹が立ったのだと思う……」

 

 沙那は言った。

 

「沙那……」

 

 孫空女が寝台に戻って来た。

 

「だから……」

 

「だから、なに、沙那?」

 

「しよう」

 

「沙那……」

 

「ふたりでしよう、孫女……」

 

 

「うん」

 

 孫空女がにっこりと微笑んだ。

 そして、孫空女は再び、沙那に覆いかぶさる。

 孫空女の口が沙那の裸身に近づく。

 

「そ、その前に、ちょ、ちょっと待ってったらっ」

 

 沙那は声をあげる。

 

「今度はなに、沙那?」

 

 孫空女が顔をあげた。

 

「手を……手を解いてよ。括る必要はないでしょう――」

 

 沙那は孫空女を見上げながら言った。

 

 すると孫空女が、白い歯を見せた。

 

「駄目だよ。解いてあげないよ。沙那は舌ですればいいじゃないか。あたしは、手と舌を使ってあげるよ」

 

 孫空女は言った。

 

「狡いわよ」

 

「狡くなんてないよ、ほらっ」

 

 沙那の乳首に孫空女の口が被さる。

 そして、沙那の股間に孫空女の指が触れる。

 

「はううっ」

 

 狂おしい快感に沙那は声をあげた。

 もう、考えることはやめた。

 我慢していたものを一気に取り払う。

 わだかまりを捨てた。

 すると強烈な愉悦が全身に込みあがる。

 

 孫空女は大したことをしていないはずだ。

 宝玄仙や朱姫と違って、巧みな性の技を持っているわけじゃないのだ。

 沙那と同じで、どちらかというと性には奥手で、宝玄仙から与えられる調教という快楽地獄に一緒にのたうち回っている仲だ。

 

 しかし、その孫空女の馴れてはいない手管で、沙那はもう、昇りつめようとしていた。

 孫空女の舌が沙那の身体を這いおりて、股間に近づいてくる。

 沙那は与えられる舌の刺激に耐えられずに、声をあげて拘束されている身体を大きく反り返らせた。

 

 今日はいつもと違って、結界を張っていない。

 沙那の嬌声は廊下に漏れ出ているはずだ。

 でも、もうどうでもいい。

 どうせ、ほかに客はおらず、朱姫と宝玄仙がいるだけだ。

 明日の朝、からかわれるかもしれないが孫空女とふたりなら、どうってことない。

 

「き、気持ちいいよう――孫女――」

 

 沙那は声をあげていた。

 自分でも驚くような濡れた声だ。

 そして、孫空女の舌がついに、沙那の股間にやってきた。

 最初の刺激が肉芽に伝わった。

 

「くひっ――い、いいっ――く、くうっ――」

 

 すでに天国の入口を彷徨っている状態だった沙那は、たちまちに肉悦の頂点に押しあげられる。

 

「いいっ……いい――こ、こんな……んああ――あふうっ……そ、そこは――ひいっ――」

 

 身体の震えが止まらない。

 孫空女の舌が、沙那の陰核と女陰の入口を交互に、そして、激しく刺激する。

 

 突き抜ける――。

 なにがが一気に通り抜けていく――。

 

「いくっ」

 

 灼熱の炎そのものが沙那の身体に発生して降り注いだ。

沙那は、大きな声をあげながら昇天を極めてしまった。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 激しくいった。

 身体が融ける思いだ。

 心臓が苦しい。息も絶え絶えという感じで、沙那はまだ陶酔の中にいる。

 

「沙那、脚を開いて……」

 

 孫空女が言った。

 沙那は言われるまま限界まで脚を開く。孫空女が、沙那の股間に自分の股間を重ねた。

 

 そして動かす――。

 女陰と女陰――。

 肉芽と肉芽がぶつかり合いこすれ合う。

 

「はひいっ――」

「あ、はああ……」

 

 ふたりで愉悦の声をあげ合う。

 孫空女と沙那の淫液が混ざりあい、それがびちゃびちゃと卑猥な音を出している。

 その音に合わせるように孫空女が腰を振り、沙那の敏感な場所に自分の股間を擦る。

 沙那もまた、それに負けないくらいに強く孫空女の股間に自分の股間を押しつけて、快感を搾り取っている。

 

「いく……いくよ、沙那……もう、駄目、いくよ――」

 

 孫空女が感極まった声をあげる。

 ふたりの女陰はこすれ合い、いまや、溶け合おうとしている。

 肉と肉のぶつかる激しい音――。熱い――。融ける――。

 

「わ、わたしも……いく――。孫女――緒に……一緒にいこう――」

 

 沙那も叫んだ。

 その瞬間、最後の壁が崩壊した。

 沙那に隠されていた本能そのものがついに飛び出して、沙那を別の世界に浮遊させた。

 

「ああ……ああああ――あうううう――」

 

 沙那と孫空女のどちらの声なのかわからない。

 おそらく、ふたりの声だろう。

 沙那は孫空女とともに際限なく悶えながら、無限の彼方に向かってどこまでも舞いあがっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。