気がついたのは、床の上だった。
最初は意味をなさなかった話し声が、頭が回ってくるにつれて、ゆっくりと意味のある言葉になって、孫空女の頭の中に入ってくる。
素早く頭を巡らせた。
すぐに、檻車の中で
あまりにも媚薬を続けて吸わされ続けたために、身体が完全に弛緩して、両脚で身体をまったく支えられなくなったのだ。
そのために、嵌まっていた首輪で首が絞まり、杜遷に犯されている最中に意識を失ったということを覚えている。
最後の記憶は、「しまった」という杜遷が舌打ちととも発した言葉だ。
どうやら、ここは、どこかの建物の中のようだ。
杜遷が馬車の中で、陽明崔の屋敷に向かうと言っていた気もするから、ここがそうなのだろう。
また、身体の痺れは続いていた。
身体の燃えるような熱さもそのままだ。
少し時間が経ったので、媚薬の効き目が多少は薄くなったかもしれないが、だんだんと意識がはっきりとするにつれて、じっとしていられないほどの疼きが局部を中心に駆け巡りだしてもいた。
孫空女は滲んでくる汗に耐えて、じっとしていた。
馬車の中では目隠しをされていたが、いまは外されている。
孫空女は薄っすらと目を開いた。
部屋の中には少なくとも五人以上の人間がいた。ほとんどは軍兵の服装をしている。
孫空女は、部屋の真ん中にうつ伏せに寝かされていたので見えないが、顔の後ろ側にも兵はいる。
おそらく、十人くらい者がこの部屋にいると思う。
馬車の中で頭の後ろで拘束されていた両手は、いまは背中であり、両手を横に重ねられて革帯のようなもので腕を包まれているのがわかる。
そして、はっとした。
孫空女は上半身こそ上衣を着けているが、下半身はまったくの素裸だ。
おそらく、杜遷に犯されるときに脱がされて、そのままここまで運ばれたに違いない。
「どうやら、目覚めたようですぜ、
杜遷の声がした。
だが、孫空女は動かないでいた。
少しでも勝機を増やすためだ。
せっかく、身体の疼きに耐えて、気を失っているふりをして機会を伺っているのだ。
わずかな希望であっても、無意味に反応することで、それを失いたくない。
足音が近づいてきた。
男だ。
「おい、起きたのか、女?」
男の太い声がして、孫空女の顔を覗き込むように、身体を沈めて、頭を孫空女の顔に近づけてきた。
「こな、くそっ」
次の瞬間、孫空女は仰向けに身体を反転させると、上体の力だけで、男の顔面に頭突きを叩きつけた。
「うがあっ」
その男が尻もちをついてひっくり返った。
だが、孫空女は自分が驚くほどに、力が入らないことに気がついた。
本当なら、頭突きでも一発で、男のひとりくらい倒せただろう。
しかし、目の前で倒れている男はひっくり返っただけだ。
孫空女は、拘束されている両腕の一方の手首に、なにかが嵌まっていることがやっとわかった。
そういえば、馬車に乗せられる前に、霊具封じの腕輪と称するものを右手首に嵌められた。その直後、身体から力が抜けたようになったことを覚えている。
それが続いているのだとわかった。
孫空女は立ちあがりながら舌打ちした。
「
後ろ側からからかうような口調の声が響いた。
孫空女は振り返った。
陽明崔だ。
豪華そうな椅子にひとりだけ腰かけて、横に置いた台に置いた果実のようなものを口にしている。
酒も飲んでいるようだ。
こいつを人質にできれば……。
「俺ひとりで十分です、楊明崔様」
怒声がして、ひっくり返った男が起きあがって突進してきた。
この男は孫定という名らしい。
孫定は上半身が裸であり、身体にぴったりとした薄い下袴をしていた。性器の盛りあがりまではっきりとしている。
随分と背の高い男だ。
胸の厚さも尋常ではない。
立ちあがることで、孫空女の股間は上衣の裾が辛うじて届いているだけの、腰から下になにも身に着けていない恥ずかしい恰好になる。
しかし、恥ずかしいとか言っていられない。
足首には、肩幅ほどの鎖が繋がった革枷がまだ嵌まっている。
これではほとんど動けないが、孫空女は襲ってきた男をひらりとかわすと、鳩尾を狙って頭を突き出した。
男が再び腰から落ちた。
周囲から揶揄するような歓声があがった。
「それでも、拷問士か。拘束された女ひとりにやられるとはな」
再び、楊明崔の面白がる声がした。
孫空女は、素早く周囲を見渡す。
やはり、部屋の中には十人──。
楊明崔と杜遷ともうひとりを除けば、全員が軍装だ。しかも、今朝、宿屋にやって来た正式の軍の兵だ。
「あっ」
そのとき、孫定の身体が目の前にあった。
周囲の観察に気をとられて、孫定への注意が散漫になっていた。
次の瞬間、孫定の太い腕を横殴りに頭の横に叩きつけられた。
「んぐうっ」
孫空女は二回、三回と部屋の端まで弾き飛ばされた。
立ちあがろうとしたが、頭が揺れてうまく姿勢をとれなかった。
それに、両手も足首も拘束されている。
そんなに素早くは動けない。
やっと腰をあげたところに、孫定の足が下から腹を蹴りあげる。
「ぐえっ」
激しい嘔吐感が襲って、孫空女はその場にうずくまった。
髪の毛を掴まれて、部屋の中心に投げ出される。
「舐めやがって──。俺が本気を出せば、お前なんかすぐに殺せるんだ」
激しく咳をする。
その顔面に孫定が拳を振り下ろしてくるのがわかった。
孫空女は、素早くうずくまると、孫定の脚のあいだに両足を差し込んで捻る。
孫定が再び腰から落ちる。
「ははは、孫空女が拘束されていて、よかったな」
猿みたいな笑い声をあげたのは杜遷だ。
孫定が顔を真っ赤にして起きあがった。
孫空女は注意深く、何気ない動作で後ずさって、椅子に座っている陽明崔との距離を詰める。
まだ、遠い……。
「この女」
孫定が駆けてくる。
孫空女はひらりと身体を捻って、もう一度足を払った。
やっぱり、力が入らない……。
孫空女は、体重を使って、ひっくり返った孫定の膝に足首を絡ませて捻った。
「うがああっ」
孫定の口から悲鳴が絞り出された。
孫空女が力技だけだと思えば大間違いだ。
こんな関節技だって使える。
「素晴らしいな。殺すのはやはり惜しい。なにがなんでも、
陽明崔が感嘆した声をあげた。
そのときには、孫定が唸り声をあげて立ちあがっていた。
脚が飛んでくる。
孫空女は当たる直前に後ろに飛んだ。
「おっ?」
陽明崔が自分に向かって転がって来る孫空女に面白がるような声を出した。
だが、すぐにそれが余裕のないものに変化するのがわかった。
陽明崔は、孫空女が孫定に蹴られて転がったのではなく、自分の意思でやって来たことに気がついたのだ。
「うわっ」
陽明崔が悲鳴をあげた。
孫空女が椅子に座ったままの陽明崔に体当たりしたのだ。
「陽明崔様」
「坊ちゃま──」
悲鳴が飛び交った。
そのときには、孫空女はふたりで倒れ込んだまま、仰向けに倒れた状態で、足首の鎖を陽明崔の首に巻きつけている。
「動くんじゃない。こいつの首をへし折るよ──」
叫んだ。
孫空女を引きはがそうとした軍兵たちの動きがぴたりと停止する。
「おい、陽明崔、あたしを解放するように命令するんだ。すぐだよ」
孫空女は鎖で首を締めながら叫んだ。
そのとき、呻き声をあげている陽明崔の手が、無防備な孫空女の股に伸びた。
「んぎいいっ」
孫空女は絶叫した。
陽明崔の手が孫空女の陰毛を掴んで、思い切り毛を引き千切ったのだ。
さすがに、孫空女は足を緩めてひっくり返った。
周囲の兵がわっと孫空女と楊明崔に飛びついて、孫空女を楊明崔から引き離す。
「こいつ──」
孫定が飛びかかって、孫空女の髪を掴んで、床に後頭部を叩きつけた。
「んぎいっ」
一打目は耐えて、打ちつけられてから、すぐに身体を起こしたが、力任せに頭を床に二度目に打ちつけられて、力が抜けた。
「なんて、女だ」
馬乗りになった孫定が、凄まじい平手打ちを加える。
右……。
左……。
また、右……。
視界が朦朧とすると、また髪の毛を掴まれて、頭を床に打ちつけられた。
連続でだ。
五回までは数えた。
だが、それから先は何度、頭を床にぶつけられたのかわからなくなる。
「この女──。この女──」
孫定が狂ったように、続けざまに孫空女の頭を床に叩きつける。
孫空女は完全に脱力した。
「やめんか」
やがて、陽明崔の声がした。
やっと、孫定が孫空女を痛めつけるのをやめた。
「……孫空女を殺すつもりか、孫定? 殺すだけなら、お前じゃなくても誰でもいい。お前の役目は、孫空女に罪の告白をさせて、それを自白紙に刻まさせることだろうが」
陽明崔は何人かの男たちに助け起こされながら、椅子に座り直している最中だった。
孫定が舌打ちして、馬乗りになっていた孫空女の身体から下りた。
だが、孫空女はもう起きあがれなかった。
頭を打ちつけられて、いまだにぐるぐると視界が回っている。
その孫空女に、一斉に五、六人の兵が群がる。
後手に拘束されていた革帯に鎖が繋がれ、さらに胴体にも鎖が巻きついた。
その鎖が天井から伸びる滑車から伸びる鎖に結ばれて、孫空女は宙に吊りあげられた。
あっという間に、孫空女の両足が床から離れる。
「う、ううっ……」
まだ、頭を何度も床に打った衝撃が孫空女の身体を痺れさせている。
宙吊りになった孫空女の前に、ひとりの初老の男が一枚の紙を持って進み出てきた。
孫定はいまだに不満顔で孫空女を睨んでいるが、その横に並ぶようにやってきた。
はっとした。
霊具の紙だ。
そういえば、自白書に罪の告白を刻ませるとか言っていたのを思い出した。
おそらく、あれに向かって孫空女が罪を告白すれば、道術であの紙に刻まれるのだと思う。それが、あとで動かぬ証拠となり、孫空女の罪が裁きで確定するということに違いない。
そういう霊具の紙が取り調べで使われるというのは、耳にしたことがある。
「さて、孫空女、これからやることを教えてやろう。お前は、そこにいる杜遷から馬を奪ったことを告白するのだ。お前の罪は、たったいまの大暴れだけで十分なのだが、それでは、お前の主人から、お前を奪ってやるには不十分だからな。とにかく、なにも考えず自白しろ。あとはこっちの話だ。心配せずとも、命は奪わん。ただ、奴隷であるお前の主人が、いまの女主人から、俺に変わるだけだ」
陽明崔が言った。
孫空女は驚いてしまった。
よくわからないが、どうやら、この陽明崔は孫空女の身柄を宝玄仙から取りあげて、自分のものにしようと企てている気配だ。
もしかしたら、孫空女が馬を奪ったということになれば、それを口実に、馬の代金代わりに孫空女を取りあげてやろうとしているということだろうか……?
とにかく、そんなことになるわけにはいかない。
孫空女は、ぐっと唇を噛んだ。
「……こうなったら、観念して馬泥棒の罪を告白せい。これに向かって、“私がやりました”と一言喋るだけでいい。それが終われば楽になるだろう」
陽明崔に続けて話しかけてきたのは、自白書といかいう霊紙を持っている初老の男だ。
孫空女は返事の代わりに、そいつの顔に向かって唾を吐いた。
「うわっ」
初老の男が悲鳴をあげて、その場に尻もちをついた。
その無様な姿に、孫空女は思い切り笑ってやった。
「とことん、生意気な女だな」
孫定が拳を孫空女の腹部に振りあげた。
「あぐうっ」
まるで腹を棍棒が突き刺さったような衝撃だった。
吊られた身体が大きく揺れて、戻ってきたところをさらに強く殴られた。
「あがっ、はがあっ」
孫空女は吐くような声とともに、身体を曲げて咳込んだ。
そこに容赦のない殴打が貫く。
しかも、寸分違わずに同じ場所だ。
孫空女は全身から力が抜けるのがわかった。
「女の腹を叩くというのはいつやってもいいぜ。じゃあ、本格的にいくか……。まずは鞭を十発だ。そのとき、自白する気になったかどうか、訊ねてやる。だが、そのときに自白をしなければ、倍の十発まで自白の機会はねえ。容赦なくいくぜ」
孫定がすっと腕を横に出した。
若い兵が駆けてきて、その手に丸まっている鞭を乗せる。
孫定が鞭を伸ばして、慣れた手つきで鞭先で床をぴしゃりと一度叩く。
「か、勝手にしな。あたしが鞭で音をあげるかどうか、やってみるんだね」
孫空女は啖呵を切った。
余程に鞭に自信があるのだろう。
孫定はにやりと笑うと、さっと鞭を振るった。
「んふうっ」
鞭がさっと孫空女の横を掠めたかと思うと、返って来るときに、布越しの背中に鞭が叩きつけられた。
孫空女は身体を揺すって、背を逸らせていた。
殴られたときよりも、ずっと強い衝撃が全身を襲う。
「二発目だ」
孫定が鞭を振る。
鎖が上下に巻きついている乳房の上に、鞭が威勢よく鳴った。
孫空女は、唇を固く結んで悲鳴が出るのを耐えた。
三発目──。
今度は腿──。
布のない場所に当たる鞭は、そうでない場合とは比較にもならなかった。
皮膚が炎に当てられたような衝撃が駆け抜ける。
しかし、孫空女は声を出さなかった。
「おいおい、声を出さないつもりか? だったら、やってみな」
孫定が鞭を一度おろして、孫空女につかつかと寄って来る。
そして、鎖が巻きついている上衣の襟を両手で掴むと、いきなり左右に引き千切った。
孫空女は服の下に胸当てもしていたが、それも掴み奪われる。
ふたつの乳房を剥き出しにされた。
「じゃあ、勝負と行くか? あと十発、そのでかい乳房に鞭を打ってやる。本当に声を出さなかったら、褒めてやるぜ」
孫定が鞭を持ちなおして、孫空女の乳房に鞭を叩きつけた。
限界を遥かに超えた痛みが胸に弾け飛び、まるで失禁をしたかと思うような熱さが全身に襲い掛かった。
「くっ……」
孫空女は辛うじて、口からこぼれそうになる悲鳴を堪えた。
剥き出しにされた乳房に叩きつけられた鞭は、まるで炎をあげている松明であるかのように、熱くて凄まじい激痛だった。
なぜ、この孫定という男があれほどまでに鞭に自信満々なのかがわかった。
これを十発?
孫空女は気が遠くなりそうだった。
「そらよ」
鞭が飛ぶ。
逃れようとしても、鞭先が正確に乳首を追いかけてきて、凄まじい激痛を乳首に引き起こす。
それが繰り返す。
彼の鞭の一発一発が、孫空女を打ち砕く苛酷な責め苦となって襲い掛かる。
数が五発を超えたとき、孫空女の身体は完全に力を失って、だらりと身体を吊っている鎖に体重を預けるだけになった。
しかし、声だけは出さなかった。
洩れたのは苦痛の溜息だけだ。
「ち、畜生……」
焦ったような孫定の声は七発目の後に漏れた。
八発目の鞭が続けざまに飛んでくる。
孫空女は朦朧とした視線でそれを捕らえていたが、乳房に激突する直前に鞭の先端が床に向かって角度をつけて曲がり、一度床を弾いてから、孫空女の股間をものの見事に跳ねあげた。
「んんっ」
孫空女は気を失いそうになりながらも、なんとか口をつぐんで声が出るのを抑えた。
こうなったら、孫空女にあるのは、十発だけはなんとか声を出すまいという意地だけだ。
「なんだい、文句あるのか。別に乳房だけ打つと言った覚えはねえぞ」
孫定が言った。
そうだったかなと思ったが、よく考えればどうでもいいことだった。
いずれにしても、孫定はなんとしても、孫空女に十発鞭を打ち終わるまでに、自らの宣言通りに、孫空女に悲鳴をあげさせたいようだ。
「す、好きなだけ打ちな……。あんたの鞭は生ぬるいよ……」
孫空女は荒い息をしながら言った。
「な、生意気な女だぜ」
孫定の震えている声には、はからずも洩れてしまった屈辱感が滲んでいるような気がした。
孫空女はちょっとだけ、満足した。
九発目──。
もう一度股間──。
「んぐうっ」
孫空女は歯を食い縛って耐えた。
「それっ」
間髪入れずに十発目が飛んできた。
乳房──。
しかも、尖った乳首を鞭が浴びせられて、血が迸った。
だが、孫空女はぶるりと身体を震わせただけだ。
孫定が怒りを剥き出しにた表情になり、鞭をさらに振る。
十一発目──。
十二発──。
孫定が真っ赤な顔になって、滅茶苦茶に打ってきた。
しかし、孫定が怒りで興奮状態になるにつれ、孫定の振りだす鞭は正確性を失ってきたような感じになってもいった。
局部だけでなく、手や足、あるいは、孫空女の身体そのものを鞭先が外れることもあるようになる。
ただ、力だけはすごい。
不正確ながらも、当たれば孫空女の肌が破けて、血がそこから噴き出す。
おそらく、二十発を超えたときだったと思うが、肩を弾いた鞭が跳ねて、孫空女の口の横を破いた。
「ひいっ」
さすがに口が開いて悲鳴が迸った。
だが、それは孫空女の意思とは別のものである。
「悲鳴をあげたな、お前」
孫定が嬉しそうに言った。
「く、口が……開いたから……息が……も、漏れたんだよ……。お、お前の鞭……の……せいじゃない……」
孫空女は息も絶え絶えに言った。
口の中が切れて、かなりの血が漏れ出たのがわかった。
孫空女は口の中のものを吐きだす。
それは、ほとんど血の塊そのものだった。
「な、生意気な──」
孫定が鞭を振りかぶった。
「やめろよ、この気の強い女が鞭で参るかよ。これでわかっただろう。今度は俺に任せな」
後ろから声がした。
それが杜遷の声だとわかるのに、多少の時間が必要だった。
孫空女の意識は、この拷問士ひとりに集中しすぎていて、この部屋に、孫定以外の男が大勢いたということさえ失念していた。
「どけっ、馬商人──。お前の出る幕じゃねえ──」
孫定が激昂して声をあげる。
だが、それを陽明崔が遮った。
「面白い……。では、杜遷のやり方を見せてもらうか。この孫空女から“許してくれ”という言葉を引き出してみせろ」
陽明崔が面白がるように言った。
孫定が抗議するように不満を漏らしたが、陽明崔に叱られて、すごすごと下がっていく、
孫空女は、ちょっとだけ溜飲が下がった。
「さて、前戯はどうだった、孫空女。これからが本番だぜ」
孫空女ははっとした。
二本の腕が背後からふたつの乳房をぎゅっと握ってきたのだ。
「んふうっ」
孫空女が上体を弾ませて、露わな声を放ってしまっていた。
杜遷の柔らかく包むような優しい手管は、限界を超える鞭打ちを浴びてきた孫空女には凄まじすぎた。
「あ、ああっ」
孫空女は狼狽した。
今度も声を出すまいと歯を食い縛ろうとしていた。
だが、呆気ないほどにもろく、孫空女は声を口から放ってしまった。
孫定の鞭打ちで、感覚がどうかしてしまったのかもしれない。
「ほら、お前があんなに出させようとした孫空女の悲鳴がこれだぜ、孫定? こいつは、気が強いが、身体はとても敏感でな」
孫定がからかうような口調で、壁際までさがったらしい孫定に言った。
周りからどっと笑い声がした。
しかし、孫空女はそれどころではない。
顔を引きつらせて、孫空女は力を股間に力を入れる。
しかし、まるで力が入らない。
つまりは、この杜遷の愛撫に対して、孫空女はなにも備えることができないということだ。
杜遷の舌が、孫空女の耳の中にそっと伸びる。
しかも、杜遷の片手が、孫空女の股間にすっと伸びてもきた。
「や、やめてよ……。そ、そこは許して……」
孫空女は思わず口走った。
「言ったな」
陽明崔が笑った。
「どうです、陽明崔様……。この孫空女を落とすのは、鞭じゃなくて、この好きものの身体を責めてやればいいんですよ。それで落ちます……。実は、面白い薬を準備してるんです。それを飲ませてから、全員で繰り返し犯せば、あることないことなんでも喋るようになりますって」
杜遷が言った。
そして、孫空女拘束されている肢を膝の後ろから抱えるように持ちあげた。
「や、やめろ」
孫空女は叫んだ。
杜遷がいつの間にかズボンをおろしていて、直立している男性器の先を孫空女の女陰に触れさせたのだ。
「鎖をおろせよ」
杜遷が兵に向かって言った。
すぐに身体を吊っていた鎖がゆっくりと下がっていく。
「う、ううっ、ああっ」
孫空女は激しく暴れたつもりだったが、実際にはかすかに孫空女の身体は左右に動いただけにすぎない。
もうどこにも抗う力は残っていないのだ。
鎖が降りていき、剥き出しの杜遷の怒張が孫空女の花唇の中心にすっと擦りつけられる
杜遷が孫空女の膝を抱えて、ぴったりの位置に修正した。
「ああっ」
孫空女は身体を仰け反らせた。
不思議なくらいに身体に力が入らない。
杜遷の傘が奥まで収まる前に、孫空女はこれまでに経験のない愉悦に苛まれた。
「さっき抱いたときにも思ったが、お前は苛められれば、苛められるほどに、感じてしまう変態だぜ。その証拠に、さっきの鞭打ちが前戯代わりに、股ぐらに蜜を溢れさせているじゃねえか」
杜遷がぱっと抱えていた膝から力を緩めて、孫空女の身体を落とした。
「はううっ」
すとんと腰がさがり、膣の奥にずどんと杜遷の怒張が貫く。
その衝撃の大きさに、孫空女はあられもなく叫んでいた。
口惜しいけど、孫空女の身体が感じすぎるくらいに感じていることは事実だ。
しかし、こんな下衆男にからかわれることだけには我慢できない。
「こ、これは、お前が馬車の中で得体の知れない薬剤を飲ませたからだろうが」
叫んだ。
「そうだったかな、変態女……。じゃあ、いくぜ」
杜遷が笑いながら孫空女の身体を上下に動かして犯し始める。
孫空女は声を出した。
腰を……。
背筋を……。
脳天を……。
律動が繰り返すたびに、孫空女は喜悦の感覚が沸騰するような感触を味わった。
孫空女は天を仰いで、ぶるぶると孫空女は身体をおののかせた。
もう、達しそうなのだ。
しかし、こんな男に馬鹿にされされながら犯され、そして、衆人の中で絶頂してしまうなど、死んでも嫌だった。
必死で抵抗しようとする。
だが、孫空女は知らず、気がつくと、腰を自分で動かし、杜遷の一物をぐいぐいと締めあげていた。
それが自分でもわかると、どうしようもない恥ずかしさが身体を席巻する。
「う、ううっ……。し、締めつけが……」
そのときだった。
杜遷が恨めしそうな声を洩らしたかと思うと、ぶるりと身体を震わせた。
その直後、膣の中に生温かい白濁液が噴き出されるのがわかった。
どうやら、この男が先に孫空女の中で達してしまったようだ。
こんな男に何度も犯されて、股に精を放たれるなど口惜しい限りだが、このときばかりは、ほっとした。
杜遷が孫空女の股間から怒張を抜いて、孫空女から身体を離す。
さっきは足が床についていなかったが、犯されいている途中で下げられた分だけ、孫空女のつま先が床に届くようになっていた。
杜遷が後ろで袋からなにかを取り出す気配がした。
孫空女は懸命に息を整えながら、後ろを振り返った。
「んぐうっ」
次の瞬間、杜遷から顔を羽交い絞めにされて、小瓶を口の中に突っ込まれた。
どろりとした得体の知れない液体が口の中に入って来る。
「ちっ、もったいねえことをしたぜ……。まあいい……。じゃあ、みんな、後を頼むぜ。この女を際限なく犯し続けてやってくれ。ちょっとばかり、強烈な薬剤でな……。これを飲まされて、犯され続ければ、頭の線が間違いなく切れたような状態になる。そうすれば、あることないこと、喋りまくるさ」
だめだ……。
これを飲んだら……。
本能的に、口の中の薬剤の危険さがわかった。
孫空女は顔を振って、瓶を口から離そうとする。
「お前ら、手伝え──」
杜遷が声を出した。
周りの兵たちがわっと寄って来る。
四方から腕が伸びて、暴れようとする孫空女の身体を掴んでくる。
「俺に任せな」
孫定の声もした。
太い腕が孫空女に巻きつき、孫空女はほとんど動けなくなる。
誰かが鼻を摘まんだ。
結局、孫空女は瓶の中のものをほとんど飲み干させられた。
「げほっ、げほっ、げほっ」
瓶から口を抜かれて、孫空女は激しく咳込んだ。
だが、途端に全身を異様すぎる感覚が襲いかかった。
ぐにゃりと視界が曲がった。
「な、なにこれ……。あ、ああっ……、な、なんだよ、これ……」
孫空女は呻いた。
全身の毛穴から汗がどっと噴き出す。
頭の中が焼け落ちたみたいになって、なにも考えられない。
それよりも股間が苦しい……。
熱いのだ……。
股間だけじゃない……。
胸も……
お尻も……。
全身が熱い……。
疼きというには、激しすぎる全身の血の沸騰だ。
気が狂う……。
孫空女は絶叫していた。
「もう一杯あるぜ、孫空女。遠慮せずに、飲み干してくれ」
杜遷がいやらしく笑って、さっきの小瓶を取り出す。
孫空女は慌てて、首を横に振った。
ひと瓶だけで、この状態なのだ。
これをさらにもうひと瓶飲まされれば、杜遷の言うとおり、孫空女の頭は狂ってしまうと思った。
しかし、またもや一斉に男たちの手が孫空女の身体に伸びる。
だが、いまの孫空女には、それすらも激しい愛撫のように感じた。
孫空女は男たちに身体を掴まれ、その刺激だけで軽く達してしまった。
「こりゃあ、さすがにすごい効き目だな」
杜遷が瓶を孫空女の口に突っ込む。
今度も、全部無理矢理に飲まされてしまった。
「じゃあ、順番にやってくれ」
杜遷が離れていく。
四方から孫空女の全身に手が伸びる。
「ひいっ、ひいっ、ひううっ」
孫空女はのたうち回った。
ちょっと触られるだけで、すぐに絶頂してしまうのだ。
それくらい、全身が敏感になっている。
連続する絶頂に、息が続かなくなり、孫空女は息をしようと、顔を上にあげる。
集まっている兵たちは、もはや、欲情した雄の顔をしていた。
すぐに誰かの性器が孫空女の股間を貫いてきた。
「んふううっ」
孫空女は、たったのひと突きで、早くも悶絶してしまった。
「とんでもない女傑だと思ったが、こうなればただの女だな。早く罪を認めないから、こうなるんだぞ。まあ、しばらく、兵たちを遊んでいろ。ひと周りした頃に訊ねてやる。そのときまで、理性が残っていればいいな」
陽明崔の笑い声が離れたところから聞こえた。
しかし、もうなにも考えられない。
兵たちに犯されて、ひたすらいきまくるだけだ。
最初の男は、杜遷と同じように「締めつけが……」と言いながら果てた。
すぐに、次の兵が孫空女を犯しだす。
いつの間にか足首の枷が外れて、孫空女は片脚を抱えられるように犯されていた。
またもや、急激に込みあがった絶頂感に、孫空女は吠えるような声を放つ。
「すげえな、この女、果てしなく絶頂を繰り返しているぜ」
横で待っている兵が呆れたように笑った。
「穴はまだもうひとつあるぜ。馬車の中で試したが、後ろの穴もちゃんと男を受け入れるぞ」
杜遷がからかうように言った。
すると、争うように孫空女の後ろにも、数名が集まり、前を犯しているのをそのままにして、さっそく、お尻の穴に、その中のひとりが一物をねじ入れてきた。
「あ、あああっ」
孫空女はあまりの恍惚感に、我を忘れて悲鳴をあげた。
閉じることのできない口から大量の涎が零れ落ちて、孫空女の乳房を汚すのがわかった。