気だるさに耐えて、なんとか身体を起きあがらせる。
宿屋から買った水で洗顔をして髪の手入れをする。
今日の商売はどうしよう……。
ふと考えた。
本当だったら、昨日むしろを出した場所にとっくに座っている時間だ。
旅の薬屋が品を出しているという噂はそろそろ拡まっているはずだろう。
昨夜の店じまいの前に歯痛の薬を買っていった老婆もその効き目に驚いて、別の薬を購いにくるかもしれないし、その評判を耳にした知り合いがやってくるかもしれない。
とにかく、琵琶子の薬は効く。
一度使ってさえくれれば、絶対に評判になってくれるのは間違いないのだ。
だが、昨日あんなことがあったのだ。また、あの場所に座ることは気が引けた。
昨日……。
沙那というきれいな栗毛の女性に会った。
彼女は、道術で便意をもよおされ、おしめをして外に出されている最中であり、腹痛で苦しんでいた。
それは、意地の悪い彼女の女主人である、道術遣いの宝玄仙という女にやられたことであり、沙那が外でおしめに大便をしてしまうようにという陰湿な悪戯だった。
だが、たまたま琵琶子の前にやってきたその沙那に、琵琶子は腹痛を押さえる薬を与えた。
その結果、道術による便意がなくなって、沙那は喜んで戻っていった。
次にやってきたのは、やはり、同じ宝玄仙に仕えている孫空女という赤毛の女だ。
沙那と同じように便意をもよおされておしめをつけて外に出されたところだった。
孫空女は、沙那から聞いたのか、琵琶子の腹痛を押さえる薬を求めにやってきた。
編上げの靴に金粒を隠して持ってきたから、あれは、あの宝玄仙という女主人に見つからないようにこっそりと持ってきたに違いない。
そして、琵琶子の薬で宝玄仙の道術を取消しにして、孫空女も喜んで去っていった。
三番目にやってきたのは、朱姫という娘だった。
最初にやってきた沙那と、次にやってきた孫空女──。そして、その朱姫は、三人で宝玄仙という悪女に仕えているようなのだ。
なんの理由なのかはいまだに理解できないが、彼女たちの女主人の宝玄仙は、ただの遊びのために、自分の三人の供に限界までの便意を与えて、おしめをさせて外出をさせたのだ。
しかも、厠で用をたせないように、おしめが脱げないように道術をかけてだ。
だが、朱姫を尾行して四番目に現れたのが、その宝玄仙だった。
宝玄仙は、おしめを汚すことなく戻って来た沙那と孫空女に不審を抱き、こっそりと朱姫の後を追ってきたのだ。
その結果、琵琶子の存在を知り、自分の「遊び」(宝玄仙は、「調教」と言っていたが)の邪魔をしたと怒り、琵琶子を自分たちが泊っている宿屋に連れ込み、「仕返し」として、淫らに琵琶子の身体を苛んだ。
即ち、琵琶子は道術で身体の自由を奪われ、手足を宝玄仙に操られて、宝玄仙に従って部屋に連れ込まれ、そこで下半身の
最初に宝玄仙、途中で戻って来た朱姫に股間をいじくられて、連続で二十回も絶頂させられた。
朱姫は、琵琶子の薬を飲んで宝玄仙の道術を取り消そうとしていたのを見つかり、その場でおしめに大便をさせられていて、その身体を洗うために部屋から出ていたが、琵琶子がその部屋に連れ込まれてから合流したのだ。
ほとんど性行為らしい性行為の経験のない琵琶子にとっては、ひと晩で二十回というのは信じられない数だった。
その間、あの沙那と孫空女は、ふたりの肉芽を一本の糸で結ばれ、天井から爪先立ちになるように吊りあげられて、その身体をずっと愛撫されるという苦痛を受け続けていた。
ふたりは汗びっしょりになりながらも、そんな不自由な姿勢で受ける愛撫に数刻も耐え続けた。
琵琶子が二十回目の気をやったとき、やっと沙那と孫空女は道術の拘束と肉芽の天井吊りを許された。
そして、糸を消滅してもらったふたりはその場に座り込んでいた。
もう、動くことのできそうのないふたりを、さらに宝玄仙は縄で拘束し直しながら、琵琶子については、もう邪魔だからと言い、その宝玄仙によって、部屋の外に放り出された。
荷物とともに、脱がされた下着と下袍を廊下に放り投げられ、部屋から文字通り、蹴り出されたのだ。
琵琶子は、手足がばらばらになりそうな疲労感に耐えて、なんとか廊下で服を整えると、ほとんどつたい歩きのような感じで、夜道の中、この自分の部屋がある宿屋まで戻って来た。
幸いにもまだ、夜中というような時間ではなかったのがよかった。
とにかく、買い置きしておいた干し餅を水で薄めた酒で流し込んだ。そして、そのまま死んだようにいままで眠っていた。
そして、いま起きたところというわけだ。
それにしても、本当にあれはなんだったのか──?
あの宝玄仙という女道術遣いと、虐げられているあの可哀そうな三人の女は何者なのか──?
なにか琵琶子の心に釈然としないものが沸き起こっている。
特に、沙那と孫空女と朱姫の三人……。
雰囲気では、琵琶子が部屋を追い出されてからも、さらに酷い仕打ちを受け続けそうな気配だった。
宝玄仙は、“当然の酬い”というような言い方をしていたが、琵琶子には、彼女たちのとった行為のどれが、「罰」に値する行為なのか理解できない。
なんとか、あの可哀そうな境遇の三人をあの悪女から救ってやることはできないだろうか。
そんなことを考えていた。
薬を売りながら旅をする琵琶子には、身を護るために遣う毒薬がたくさんある。それを利用することはできないだろうか……。
そのとき、部屋の戸が叩かれた。
戸を開くと、驚いたことに、そこに沙那が立っていた。
「沙那──。大丈夫だったのけ? まあ、座ってけれ」
琵琶子は言った。
沙那は寝台に座る琵琶子の前の椅子に、琵琶子と向かい合うように座った。
「昨日は、わたしのご主人様がごめんなさい。わたしからも謝ります──」
「そっただこと……。おらのことよりも、おめえさんたちのことが……」
だが、琵琶子の言葉を遮るように、沙那が深く頭を下げた。
「沙那……。頭をあげてくれ、沙那。おめえさんが頭を下げる必要はないだろうが……」
「いいえ、元はといえば、わたしがあなたの薬を飲んで、ご主人様の道術を取り消そうなんて馬鹿なことをしたから……」
「それのなにが悪いことだ? わざわざと外に出て、おしめにもよおせということの方が、馬鹿げた仕打ちとは思うが……」
「あなたにはわからないと思うけど……。まあ、いいわ。とにかく、話はやめましょう。これを受け取ってくれない?」
沙那は、琵琶子の前に小さな布の塊りを差し出した。
「なんだ、これは……?」
琵琶子は袋を受け取って開いた。中には、まとまった量の金粒が入っていた。
「こ、これは?」
琵琶子は眼を見開いた。
その金粒をこの女人国の貨幣に換算すれば、琵琶子が道端で薬を売って稼げる額の十年分に匹敵するだろう。
「こんなものを受け取る理由はねえ──」
琵琶子は驚いて袋を包み治して突っ返した。
「いいのよ、理由はあるでしょう。昨日の詫び代よ──。それに、それは、わたしからじゃないわ。ご主人様からよ──。だから、遠慮しないで」
「ご主人様って……。あの宝玄仙という道術遣いからか?」
「そ、そうよ……。そのう……。ご主人様は……反省しているわ」
「反省? あの悪い道術遣いがか?」
あの宝玄仙が反省するなど信じられない。
琵琶子が恥辱で泣くのを心から愉しそうに笑っていたのだ。
それに、供に対する人を人とも思わないような仕打ちと辱め……。
あの悪い女は反省などしない。
おそらく、この沙那が間に入って、取り持ちをしているのだろう。
だが、琵琶子が“悪い道術遣い”と言ったとき、ほんの少し、沙那の顔が歪んだ気がした。
「悪い道術遣いって……。まあ、そう思うのも無理はないとは思うけど……。確かに、ちょっとばかり、羽目を外すというか……調子に乗るというのか……。でも悪気はないのよ。少しだけ、性癖が極端なだけで……」
「性癖? あれが性癖なのけ? あんたらに外でおしめに大便をさせるのがか?」
「まあね……。そういうことをして愉しむのよ。そういう性癖もあるのよ」
沙那の説明していることがまったく理解できない。
なんで、外で大便をさせるというのが性癖に通じるのか──。
それは琵琶子の理解を遥かに越えている。
そんなことを沙那が言うのも信じられない。
「じゃあ、聞くが、あんたらはあんなことをさせられて気持ちいいか?」
琵琶子は訊ねた。
「……それは……。まあ、まるっきり、嫌だというわけじゃないわ。被虐の悦びというか……。とにかく、ご主人様が愉しければそれでいいのよ。それがわたしたちの役目だから」
「股間の敏感なところを糸で吊りあげられて何刻も放っておかれるのがか? しかも、吊りあげられた窮屈な姿勢で、乳やお尻や股をいじくられて悲鳴をあげさせられてもか?」
「そうよ。気持ちいいのよ、琵琶子。ああいうことは、わたしたちが気持ちいいからやってもらっているの」
沙那ははっきりと言った。
琵琶子は呆然とした。
これはきっとあの宝玄仙という悪女が、沙那にそう言わせているのに違いない。
そして、沙那は、それには逆らえないのだ。
言われた通りにしなければ、罰が与えられるのだ。
絶対にそうだ。
「わかっただ、沙那」
琵琶子は言った。
「わかってくれた? じゃあ、ご主人様のお詫びを受け入れてくれるのね?」
「いいや……。おめえさんのことはわかった──。だから、いいものをやる」
琵琶子は立ちあがり、荷物から丸薬の袋を取り出した。
そこから、三粒ほどを出して別の薬袋に入れて、沙那に差し出した。
「これは?」
沙那は薬を受け取りながら首を傾げた。
「毒薬だ」
「毒?」
沙那は声をあげた。
「……そうだ、毒だ。多分、道術遣いだろうと見破れねえ。簡単に水に溶けるし、味もしねえ。それを飲めば、三日は息をする以外はなにもできねえ。それをあの宝玄仙という悪女に飲ませるといい。そして、逃げるだ。あんたらが、あの悪女に囚われているのはわかるだ。だから──」
「そ、そう……。これを宝玄仙……ご主人様に飲ませろというのね……」
沙那の声は震えている。
感謝しているという雰囲気はない。
それよりは、込みあがった怒りに耐えているという感じだ。なんで、そんなに怒るのだろう。
「毒の効き目を疑っているなら、心配ねえ。おらの薬は絶対だ。おめえも腹痛を一発で治したおらの薬の力を味わったべ? なにも、絶対に使えとは言ってねえ。だども、どうしても耐えられなくなったとき、逃亡できる手段もあるというのも悪いことじゃないはずだ──。とにかく、あの悪い道術遣いは……」
「そうかい──。よく、わかったよ、琵琶子」
沙那が怒りの表情で立ちあがった。
琵琶子は呆気にとられた。
その直後、琵琶子の身体が不意に立ちあがり、直立不動の姿勢になった。
咄嗟に、昨日かけられた身体の自由が奪われる道術だと悟った。
しかし、なぜ、沙那が道術をかけたのか。
沙那もまた、道術遣いだったのだろうか──。
「な、なんで……」
「宝玄仙に毒薬を飲ませようとは、いい度胸じゃないか……。ちょっと、待ってな。この部屋に結界を張るからね。お前が泣き叫んでも、誰にも助けに来れないようにしてやるよ。それまで、お前の手足をまたわたしの『分身』にしてやるから、準備してな」
これまでの口調と打って変わった喋り方に琵琶子はたじろいだ。
しかし、次の瞬間、琵琶子はもっと驚愕した。琵琶子の手が勝手に
そして、昨日信じられないくらいの数の気をやらされた快感の尖りをいじくりはじめたのだ。
「な、なにするだ、沙那──。こ、こんな」
すぐに随喜の喘ぎが沸き起こる。
鼻息が荒くなり、自然と身体が震える。
昨日の再現だ。
しかも、襲っているのは自分の手なのだ。
琵琶子には抵抗の手段がない。
じわりじわりと琵琶子は、自分の指によって、昨日の興奮状態に身体を燃えあがらせられる。
「わたしは、沙那じゃないよ──」
沙那の姿がその場で宝玄仙になった。
「うわっ」
琵琶子は叫んだ。
つまり、やってきたのは、沙那ではなくて、沙那に変身していた宝玄仙だったのだ。
自分は、その宝玄仙自身に、宝玄仙を昏睡させる強力な毒薬を渡そうとしていたのだ。
それを宝玄仙に飲ませろと言って……。
「ほ、宝玄仙……」
琵琶子は小さく呟いた。その間も琵琶子の指は、琵琶子自身を責め続けている。
心地良い戦慄がじわじわと身体をだんだん突きあげて来る。
昨日の余韻がまだ残っているのか、一度火がついた身体はどうにもとまらない。
身体を突き抜ける甘美な快感が数瞬ごとに倍増する。
琵琶子は顔をあげて、熱い淫らな吐息を充満させ始めていた。
「気安く名前を呼ぶんじゃないよ、琵琶子。沙那があんまりうるさいから、謝罪に来てやったんだけど、お前にも、そんな了見があったんなら遠慮はいらないね。宝玄仙の恐ろしさを骨身に染みこませてやるよ──」
宝玄仙は、部屋を回りながら、四隅でなにかを仰ぎ見るような仕草をしている。
多分、結界というのを張っているのだろう。
琵琶子も、昨日のことで、宝玄仙が結界という道術を張った場合には、どんな喧騒も外には伝わらなくなるということがわかっている。
琵琶子は道術により自分の股間を慰めさせられながらそれを見ていた。
「じゃあ、お前のために素敵な相手を連れて来るからね。お前の股ぐらにぬるぬるしたものをいっぱい出しておきな」
宝玄仙は言った。
「ああ、はっ、はあっ、はあ……」
一方で、琵琶子はもうかなりのところまで追い詰められていた。
いままで性愛どころか、自慰でさえも満足にやったことはない。
だから、ほかの国の人間からは、女人国の女は性に淫らだと思われているのを知っている。
だが、琵琶子はそういうことが苦手だった。
気持ちよくなるために、身体を慰めるなど悪いことをしているようで嫌だった。
十代の頃、知り合った娘に教えられて自慰をしたこともあったが、あの衝撃は強烈であるだけではなく、恐怖も感じた。
それ以来、自分の股を慰めるというようなことはなかったから、昨日だけで二十回以上も気をやるというのは、これまでの人生で達した絶頂の数の数倍の数をやったことになるのだ。
「わ、悪かっただ……ああっ……謝るだ……謝るから……ああっ」
「謝らなくてもいいよ、琵琶子。愉しみが減るじゃないか。精一杯逆らっておくれ」
宝玄仙が笑った。
その冷たい笑いに背筋がぞっとする。
それよりも、もう琵琶子には、自分の口からいやらしい吐息が出るのがとめられないでいた。
他人が責めるのではない。
敏感な場所をいじくっているのは琵琶子自身なのだ。
だから、一番気持ちのいい場所を……。
しかも、抵抗の気力が出ないように変化をさせて責めてくる。
こんなことは、人前でやる行為ではない。
しかし、そんな姿をほとんど知らない女の前で晒さなければならないのだ。
琵琶子の指が、肉の豆を包んでいる指に力を加えた。
「お前は前の豆専門のようだね。女陰に指を入れたことはないのかい?」
「そ、そっただことは……」
言葉とともに、琵琶子の鼻から荒い息が漏れる。
自分の指が突然激しく動き出した。琵琶子の意思にまったく関わりなく──。
「あひいっ」
思わず琵琶子は叫んだ。
「どれ、どんな風になっているか見せてごらん」
宝玄仙が手を伸ばして、下袍の留め金を外して、琵琶子の脚から下袍ともに下着も取り去った。
その早業は、それこそ道術のようだった。
琵琶子は、上衣を身に着けたまま、下半身だけを素裸にされて、自分の股間を責め続けている。
「なかなか、いかないようだね。あいつらとは違って、まだまだ鈍感なんだろうねえ。あいつらに道術で自分の股間をいじくらせたら、それこそ、あっという間に連続でいき続けるけどね……。お汁はどうだい?」
宝玄仙の指が琵琶子の女陰に伸びる。
まるでそれを受け入れるかのように、琵琶子の脚が勝手に開く。
「ああ、汁については、かなりいい感じでぬるぬるしてきたね。いいよ、そのまま続けな──。すぐに、お前の相手を連れて来るからね。ちょっとの間、それを続けているんだ。いきたければいってもいいよ」
宝玄仙が琵琶子から離れて、部屋から出ていった。
こんなことはしたくない。
逃げたい。
琵琶子は泣きそうになった。
だが、琵琶子の指は、琵琶子の感情とはまったく関係なく、肉の豆をぎゅっと押しながら円を描くように動かし続ける。
なにかが下腹部からせりあがって来るのがわかる。
「あふう……ああふう……あふ……」
昇っていく。
気持ちが昂る。
もう、なにがなんだかわからなくなっていく。
宝玄仙は、誰か琵琶子の相手をさせる者を連れてくると言っていた。
誰を連れて来るのだろう?
もしかしたら、本物の沙那か孫空女……あるいは、昨日、宝玄仙に代わって、舌で何度も琵琶子をいかせた朱姫という娘だろうか──。
とにかく、いまのうちに……。
しかし、逃げるどころか、琵琶子の手足は、琵琶子の意思を裏切って、琵琶子を責め続けている。
「んんんっ──くふうっ……」
腰が震えてくる。
もう絶頂が近いのがわかる。一昨日までは絶頂の感覚なんてわからなかった。
だが、一日に二十回も達するという経験は、はっきりとその感覚を琵琶子に植え付けさせられた。
「あひいいっ」
琵琶子はついに痺れるような快感の迸りにより、立ったまま気をやった。
戸が開いた。
「おや、さっそくやったかい?」
宝玄仙がにやりと笑う。
なにか答えようとしたが、宝玄仙が連れていくものを見て、琵琶子は絶句した。
もうどうでもいいような気持ちになっていた琵琶子の心が、一度に正気を取り戻す。
宝玄仙は、どこから連れて来たのか、琵琶子の身体を同じくらいの大きさの筋骨たくましい黒犬を連れて来たのだ。
「ひいっ」
「もう、自慰はいい、琵琶子。これからは、この“くろ”に任せな」
琵琶子の手が股間から離れた。
しかし、それだけだ。身体は動かすことができない。
琵琶子の両手は体側にだらりと伸びたまま動かない。
“くろ”というその大きな犬が、赤く長い舌を出して、下半身裸体の琵琶子にのっそりと近づいていく。
その獰猛そうな口からは尖った牙がはっきりと見えていて、その間からはぼたりぼたりと涎が流れている。
一度気をやり、熱くなりかけていた琵琶子の身体が、あっという間に冷え切る。
まず、感じたのは、その鋭い牙に噛みつかれ、引き裂かれるという恐怖だ。
「あまり叫ぶんじゃないよ。これでも臆病な犬でね。怖がったら相手に噛みついて肉を引き裂くように仕込んでいる。お前なんか、あっという間に噛み殺されるよ」
琵琶子の背に冷たいものが走る。
「ひぃ……。た、助け……」
言葉が最後まで出てこない。
「喋るんじゃないよ。噛みつくよ……。ほら、くろ、この琵琶子を味わいな」
黒犬は、くんくんと琵琶子の足の指においを嗅いだ。
そして、その頭がぐいとあがると、次第に股間に向かって顔があがってくる。
はあはあと息を吐きながら、よだれをこぼしながら……。
琵琶子は気が遠くなるのを感じた──。
「い、犬を──犬をどけてけれ……」
ささやくような声だ。大きな声を出して、犬を刺激したら噛みつかれるかもしれない。
犬がぺろりと琵琶子の太腿を舐めた。
「うっ──」
悲鳴をあげるのをかろうじて堪えた。
全身に鳥肌が立つ。
「後ろを向いて、尻を出しな──」
琵琶子の身体がくるりと反転して、犬に向かって背を向ける。
そして、寝台に両手をついて、後方にお尻を突き出すような格好にされる。
「助けて……堪忍してけろ。堪忍……か──た、助けて──」
しかし、宝玄仙は嘲笑うだけだ。
黒犬が後方から、犬の息を股間に感じるくらいに近づいて琵琶子の股に顔をつけた。
そして、琵琶子の股間を後ろから舐めはじめた。
「ひぎいっ」
琵琶子は総毛だった。
「どうやら、くろはお前のことが気に入ったようだよ。いい気持ちにしてくれるから、愉しみしてな」
宝玄仙が大笑いしている。
その間も犬が琵琶子の愛液を舐めまくっている。
「ひゃ、ひゃあ──ひゃ」
世の中にこれほど怖いものがあったのだ。
犬の息が股間に噴きつけられる。
それとともに、ぺろぺろと琵琶子の敏感な場所を無遠慮に犬の舌が這い回る──。
「そろそろ、いいかねえ。じゃあ、くろをけしかけるよ、いいかい?」
宝玄仙が言った。
「な、なにするつもりだ……?」
恐怖でいっぱいになった。これで終わりではないのだ。
これ以上、なにを……。
「まさか、くろの相手がこれで終わりと思っていないだろうねえ。もちろん、最後までやってもらうからね。黒の肉棒だって、人間の男に引けは取らないよ。女人国の女は、男の経験はないだろうけど、人間よりも先に犬の肉棒を味わえるというのは、ほかの国の女でも経験することのできない貴重な体験さ」
宝玄仙が言った。
次の瞬間、犬の体重がどんと琵琶子の背中に加わった。
犯される──。
琵琶子の心が恐怖だけに包まれた。
その瞬間、じょろじょろと琵琶子の股間から小便が垂れ流れ始めた。
「おや、怖さで小便を洩らしたのかい。だけど、大丈夫さ。人間とは違うからくろは、お前の小便だって、ちっとも汚いとは思わないからね」
小便は琵琶子の脚の間から垂れ流れ続ける。
犬の激しい息が琵琶子の首に当たる。
琵琶子の股間に、なにか熱いものが当たった気がする。
それが犬の怒張だと悟ったとき、琵琶子の頭でなにかが起こった。
真っ白になる──。
ずるずると自分の身体が崩れ倒れるのがわかった。
「ちっ──。気を失って、身体を支えることができなくなったか……。犬の相手を気絶してまで拒んだのかい……」
それが意識を失う直前に聞いた宝玄仙の最後の言葉だった。