「目が覚めたかい、
声がした。
はっとした。
眼を開けた。宿屋の琵琶子の部屋だ。
寝台の上にうつぶせになっている。
どうやら、気を失ってしまったようだ。
そうだ……。あの黒犬に犯されそうになって……。
琵琶子は、手を股間にやった。
それで、気がついた。いつの間にか、下半身だけじゃなくて、上半身も含めて全部服を脱がされている。
股間は、びっくりするくらいにびしょびしょだ。
そういえば、気を失う寸前に失禁をしたような気がする。
いずれにしても、触った感じだけでは、あの犬に犯されたのかどうかわからない。
とりあえず手足の自由は戻ったようだが……。
「大丈夫だよ。まだ、くろに犯されちゃいないよ」
琵琶子は、身体を起こして、身体を腕で隠しながら、宝玄仙の声がする方向に視線を向けた。
宝玄仙は、椅子に座ってにやにやしながらこっちを見ている。
「お、おめえ、なして、こんなことを――」
琵琶子は声をあげた。
「大きな声を出すんじゃないよ、琵琶子。別に外に声は漏れはしなけど、くろがびっくりして、お前に飛びかかって来るじゃないか」
宝玄仙はくっくっと喉の奥で笑った。
琵琶子は、はっとした。
そして、なんとなく、廊下に出る戸に視線を向けた。
「ひっ」
そこにあの黒犬が座っている。まるでこっちを威嚇するかのように―――。
琵琶子は叫びそうになった口を押さえて、悲鳴を押さえた。
「……いい心掛けだよ、琵琶子。抵抗したり、騒いだりすると、あの犬をけしかけるよ。人間の女の股ぐらに陰茎を突き挿して射精するように躾けてある犬だ。わたしの命令ひとつで、お前に襲いかかるよ」
宝玄仙が椅子に座って脚を組んだまま、こっちを見て言った。
「ゆ、許してけれ……」
全身に恐怖が走る。
背中にどっと冷や汗が流れるのがわかった。
「……まあ、犬に犯させるのも面白いかもねえ。わたしは、面白ければどっちでもいいんだけど……」
「そ、それだけは……。あ、あんたに飲ませろと、毒薬を供の人に渡そうとしたことは悪いと思っているだ……」
やっと頭が回り始めてきた。
そう言えば、そういうことだった。
沙那に変身して謝罪にやってきた宝玄仙に、それとは知らずに、この宝玄仙に毒を飲ませろと、強烈な毒薬を渡そうとしたのだ。
それで、宝玄仙が怒って、琵琶子に道術をかけ……。
「もう、そんなことはどうでもいいよ、琵琶子。それよりも、お前が小便をした床をこの宝玄仙が拭いてやったんだ。礼を言って欲しいものだね……」
宝玄仙が言った。
「そ、それは……。あ、ありがとうございま――……あっ」
とにかく刺激しないことだ。
そう思って、寝台の下の床の部分に視線を向けて、愕然とした。
床にさっきまで琵琶子が身に着けていた服がぐしゃぐしゃになって丸まっている。
どうやら、この宝玄仙は、琵琶子の身に着けていたものを脱がせて、それで床の汚れを拭いたのだ。
「なんか文句あるのかい、琵琶子。お前の汚したものを、お前のもので拭く。当たり前の話だろう」
「なっ」
言葉が出ない。
もういい。とにかく、刺激をしないように……。
「それよりも、お前には、宝玄仙を
「な、なんだ?」
琵琶子はびくりとして宝玄仙を凝視する。
「別に嫌ならいいよ。くろに命令を与えるよ。“犯せ”とひと言叫べば、あいつは、お前に飛びかかって来るからね」
宝玄仙が“犯せ”という単語を口にしたとき、座っていた犬が、がばりと起きた。
琵琶子は、悲鳴をあげたが、宝玄仙が手を犬に伸ばすと、すっと座り直す。
あまりの怖さに息がうまくできない。
琵琶子の喉からおかしな音が漏れる。
「くくく……。犬に命令して欲しいのかい、琵琶子。わたしは、お前になんと言った?」
宝玄仙が急に大きな声をあげた。
琵琶子は、思い出して、慌てて、手を背中に回して手を組む。
「そうだよ。その手をちょっとでも離したら、犬に犯されると思いな……。いや、考えてみれば、女人国の女は、性に放胆な女が多いから、犬だって大切な性愛の相手かもしれないね。犬の肉棒というのを味わってみるかい?」
「ゆ、許してけれ……」
全身に震えが走る。
逆らえば、本当にやるに違いない。
この宝玄仙という道術遣いは、ただの愉しみのためだけに、躊躇なくあの犬を琵琶子にけしかけるだろう。
「別にお前を拘束したりしないし、道術はかけないでおいてやる。だから、逆らいたければ、逆らいな。逃げたければ逃げればいい。だけど、ちょっとでも逆らえば、犬に襲わせる。犬がいやなら、わたしの命令の通りに動くんだ。口答えはおろか、哀願さえも容赦しない―――。人形にでもなったように、命令のまま、身体を動かすんだ。わかったね、琵琶子」
「あ……は――」
返事をしようと思ったが、すぐには口が動かなかった。
恐怖で言葉が喋れないということが本当にあるのだと思った。
「返事は――?」
宝玄仙が不快な表情をした。
「わ、わかっただ」
琵琶子は慌てて叫んだ。
「膝を立てて、股ぐらを開くんだ。これ以上、開けないというくらいまで限界までね」
恥ずかしいとかいう感覚はなかった。
あったのはただの恐怖だけだ。
寝台の上の琵琶子は、宝玄仙に向かって立膝をして股を開く。
「やっぱり、あまり使いこんでいないようだねえ。その女陰になにかを入れたことはあるかい?」
宝玄仙が琵琶子の股を覗き込みながら言った。
同性とはいえ、ここまで羞恥の源を曝け出して観察されるのは恥ずかしい。
しかし、少しでも逆らえば、犬をけしかけると言われている琵琶子は、脚を閉じることができない。
自分の意思でこんな破廉恥な恰好をしなければならないというのは、道術で手足を操られて、恥ずかしい姿勢をとらされるよりも遥かに屈辱だ。
「返事は――?」
宝玄仙が声をあげた。
「そっただこと……」
「本当に、ないのかい?」
「ない」
琵琶子は言った。
すると宝玄仙が笑った。
「性に対して放胆な女人国の女のくせに、その歳になるまで、未通女かい。城郭の商家通りに行けば、女同士を慰める張形が普通に店に並んでいるような国じゃないかい」
なにがおかしいのか、宝玄仙はしばらくのあいだ、笑い続けた。
女人国の女の全員が性に解放的であるわけじゃない。それは単なる噂だ。
「……いいだろう。なら、犬に犯されるのが気を失うくらいに嫌だったというのは理解できるね。だったら、お前に選ばせてやるよ、琵琶子――。これがなにかわかるかい?」
宝玄仙は、手元から小さな道具を取り出した。
琵琶子は、それがよく洗濯物を留める時に使う、小さな木の留め具ということに気がついた。
洗濯物を押さえる部分が平らになっていて、反対側を操作して強くそこで挟むものだ。
「これを乳首につけるのと、くろに犯されるのとどっちがいい?」
「そ、そっただこと」
冗談じゃない。
思わず逃げようとして、慌てて思い留まる。
動けば、宝玄仙は笑いながら、あの犬に、琵琶子を犯せと命令するだろう。
琵琶子は、思わず戸口に視線を向けた。
あの黒犬は、宝玄仙が琵琶子を襲えと命令するのを、いまや遅しと待つかのように、じっとこっちに視線を送り続けている。
「どっちがいいかと訊いているんだよ、琵琶子。もちろん、こんなもので乳首を挟まれば痛いよ。だから、選ばせてやっているんだよ。犬に犯されるのがいいのか、それとも、痛いのがいいのかとね……」
笑いを浮かべているものの宝玄仙の眼の奥には、途方もなく残忍な光がある。
琵琶子は返事をすることができずに、震えながら首を横に振り続けた。
「早く答えるんだよ。乳首責めかい――。それとも、犬かい――」
「ど、どっちも嫌だ――。お、お願いだ……」
「どっちかって、訊いてるんだよ。答えなければ勝手に決めるよ」
「いやっ」
「犬かい」
「そ、それだけは……」
「じゃあ、乳首だね」
「そ、そっただもの――」
「どっちだい? 乳首かい、犬かい――。もう、いい。面倒になったよ。両方だ……」
「ひいっ。乳首を――。乳首にしてけれ」
慌てて叫んだ。
宝玄仙は、残虐な微笑みを浮かべると、右の乳首に洗濯留めを挟んだ。
「あひいっ」
琵琶子は悲鳴を迸らせた。
千切れる……。
痛い――。
「結構なものだろう、琵琶子。特別に挟む力を強くするように改良しているからね」
宝玄仙は、そう言いながら、乳首を挟んでいる洗濯留めを指で弾いた。
「あぎゃあっ」
身体に走った激痛に琵琶子は絶叫した。
全身から汗が吹き出す。
首から滴る汗が、胸に吸い込まれていく。
「痛い――。は、外して」
「外したきゃ、自分で外せばいいだろう、琵琶子。もちろん、勝手に手を背中から解いたら、くろに命令するけどね」
なんという残忍な女なのだろう。自分で外すことのできる手段を与えておきながら、それを琵琶子の意思でさせないようにしているのだ。意地の悪いやり方だ。
「……片方じゃあ、釣り合いがとれないね」
宝玄仙は容赦なかった。左の乳首にも洗濯留めをつけた。
「ひぎいっ」
大きく口を開けた琵琶子は、大きく開いた脚に力を入れて、襲った激痛に耐えた。
「ほらっ――。痛けりゃ、自分で外しな。外していいんだよ。くろは、お前を犯したくて、犯したくて、涎を垂らしているじゃないか。お前の女陰をくろに使わせてやっておくれよ」
宝玄仙は、両方の乳首の洗濯留めを代わる代わる弾く。
琵琶子はどうすることもできずに、ただ悲鳴をあげ続けた。
「いい顔だねえ……。あまり、陽に焼けているんでわからないけど、よく見れば、なかなかの気量じゃないか。その気量も、苦痛で顔を歪めると、もっとそそる顔になるねえ。お前が苦しむ顔は好きだよ、琵琶子。きっと、くろも好きさ」
全身に水を浴びたような汗が噴き出る。
「許してけれ……。許してけれ……。い、痛い……。もう、駄目だ――。お願いだ。許してけれ」
琵琶子はうわ言のように口にし続けた。
「別に痛けりゃあ、外せばいいだろう。それに、お前の意思で乳首責めを受けているんだろう? だいたい、許して以外に言えないのかい。女陰を掘られて気持ちいいことよりも、乳首を痛めつけられる方がいいんだろう? それが証拠に、自分の手で外せるのに、外さないじゃないか――。そんなに、涙を流すほど、痛いなら自分で外せばいいだろう」
宝玄仙は強い力で洗濯留めを弾き続ける。その度に全身を裂くような痛みが走る。
だが、自分で留め具を外したり、身体を避けて逃げたりすれば、犬に襲われるのだ。
抵抗することはできない。
「だったら尻責めに変えてやってもいいよ。尻だったら、犬じゃなくて、この宝玄仙がやってやるよ。乳首責めに変えて、尻を責めてくれといいな。そうしたら、外してやるよ」
「は、外してけれ……」
琵琶子は言っていた。
「じゃあ、尻がいいんだね?」
尻とはなんだ。
そんなところを弄られるというのは想像することもできない。だが、乳首の痛みはもう限界だ。
これ以上は耐えられそうもない。
「お、お尻を……」
そこまで言って、悔しくて涙がどっと出た。
なんで、そんなことを言わなければならないのだ。
琵琶子がなにをしたというのだ。
「尻がどうしたんだい、琵琶子。弄り回してくれと頼むならそうするよ。だったら、ちゃんと口にするんだ。尻を弄ってくれってね――。さもなきゃあ、いつまでも外すことは許さないよ」
また洗濯留めを弾く。
それだけじゃない。宝玄仙の手が洗濯留めで乳首を挟んでいる部分に伸びて、ぎゅっと力を加えた。
「はぎゃああ――」
これまでの痛みの数倍の痛みが走る。
「悲鳴をあげるよりも、言うべきことがあるんじゃないかい?」
「お尻……尻をなぶってけれ――。お願いだ」
そう叫んでいた。
「いいよ。そこまで必死に頼まれちゃあ、してやらなくちゃね。身体を動かしていい……。乳首のものを外して、今度は、うつ伏せになって、尻をこっちに向けるんだ。肩を寝台につけてね」
宝玄仙は言った。
*
今度は縄で拘束された。
うつ伏せになった状態で、左手首と左足首、右手首と右足首をそれぞれ縄で拘束された。
琵琶子は、みっともなく開いた股間を宝玄仙につき上げた状態で動けなくなった。
排泄器官を他人から凝視されるという羞恥に、思わず腰を引こうとする。
「尻を降ろすんじゃないよ――」
平手が飛んで、大きな肉を叩く音がした。
「あうっ」
仕方なく琵琶子は、できるだけ高く尻をあげる。
「そうだよ……。だけど、そうやって、雌犬のように尻を出しているのを眺めていると、やっぱり、くろを使いたくなるねえ……。気が変わったよ。尻責めはやめだ。くろに犯させることにするよ」
宝玄仙が笑った。
「そ、そんな……。お願いだ――。お尻を責めてけれ。尻を――」
琵琶子は叫んだ。
宝玄仙が笑う。
「わかったよ、琵琶子。じゃあ、最初に浣腸をするよ。いいね。尻責めのときは、まずは尻を洗わなければならないんだ。宿に戻れば、浣腸をしなくても尻の汚れをなくしてくれる霊具もあるんだけど、ここには持ってきていないからね」
「か、浣腸?」
ぞっとした。
「この宝玄仙の道術で、空中の水分で薬剤を合成して、お前の尻に送ってやるよ……。まあ、宝玄仙に任せな。しっかりと感じる尻にしてやるからね。わたしの供三人もいまじゃあ、尻が一番の性愛の場所でね」
まだ、普通の性行為も自慰さえも経験が少ないのだ。
それなのに、尻で性の悦びを感じる身体にするという宝玄仙の言葉に、琵琶子は怯えた。総身が一瞬で冷え切る。
「ひうっ」
いきなりだった。
宝玄仙の指がねっとりと琵琶子の菊門を弄りはじめた。
「ああっ……や、やだ……」
尻をあげて肛門を曝け出すという格好だけでも耐えられないのに、これまでに誰にも見られたことすらない場所を無遠慮に指でいじくられる仕打ちに、琵琶子はじっとしていることができない。
「そんなにお尻を振るんじゃないよ。それとも、我慢できないくらいに気持ちがいいのかい、琵琶子。もしかしたら、尻で快感を覚える素質があるんじゃないかい? まだまだ蕾が固いようだけど、すぐになんでも受け入れられるようになるさ」
菊門を触っていた指がゆっくりと入っていく。
なにかを塗っているのか、特に抵抗もなくするすると宝玄仙の指が琵琶子の肛門の奥に、奥にとすべり入ってくる。
「う、うん――。や、やんだ……」
気持ち悪い。
あるのは嫌悪感だけだ。だが、信じたくはないが、同時に妖しい感覚も拡がってくる。
触られているのに後ろなのに、前の肉芽が疼き、女陰にじわりとした蜜が溢れるのを感じていた。
「感じてきたようだね……。じゃあ、こんなのはどうだい?」
宝玄仙は、琵琶子の股間が疼き始めていることに気がついている。
琵琶子は歯噛みした。
そんなことを知られたくない。
お尻なんかをいじくられても気色が悪いだけだ。
それを宝玄仙に示さなければならない……。
しかし、琵琶子の肛門の内側がくすぐられるように触られる。
「ひゃ……ひゃん」
「可愛い声で鳴くじゃないか、琵琶子。そんなに腰を動かすほど宝玄仙の指がいいのかい?」
そんなことはない。
琵琶子は言い返したかった。
しかし、どうしてもお尻を動かすのをやめることができない。
気持ちいいのだ。
股間に痺れるような快感が走っている。
ただ、お尻をなぶられているだけなのに……。
「さて、そろそろ、いくよ」
指が抜かれた。
ほっとしたが、宝玄仙の指がなにかを押さえるかのように、ぎゅっと、琵琶子の肛門に入口に力を入れた。
「な、なんだ――?」
なにかが入ってきた。
水のようなものが大量に琵琶子の肛門から身体の中に流し込まれている。
宝玄仙はさっきまでなにも持っていなかったから、多分、道術で薬剤を合成して抽入しているのだと悟った。
つまり、琵琶子は浣腸されているのだ。
浣腸すると言われて、本当は冗談じゃないかと思っていたのだが、本当にやられている。口先だけの女じゃないのだ。
気持ち悪い。
なにかが腸の中に満たされていく。
浣腸を受けるとどうなるかということくらいは、琵琶子にもわかる。
なにしろ、琵琶子は薬師なのだ。
液体を肛門から入れれば、腸はあっという間にそれを逆流させるように反応し、便と一緒にそれを肛門に押し返す。もちろん強烈な便意を伴って……。
「これはなにかに使う木桶かい? これを借りるよ、琵琶子」
宝玄仙の指が琵琶子から離れた。
もう、腹部の痛みは始まっている。
「も、もう、お腹が……」
全身から脂汗が吹き出す。
いったい、どれくらいの量を入れたのだ。
もの凄い圧迫感を肛門に感じる。いまにも排便が外に噴き出しそうだ。
「お、お願いだ」
琵琶子は、足の指を擦り合わせたり、足首に結びつけられている手の拳を握ったり開いたりして、なんとか気を紛らわせようとする。
「準備できる前に粗相したら、その瞬間にくろに命令するからね」
宝玄仙が言った。
「そ、そんな……。だったら、早く、早く――」
琵琶子は焦って叫んだ。
「これをあてがって欲しいのかい、琵琶子?」
宝玄仙が嬉しそうな表情で、木桶を琵琶子の顔側に置いた。
「な、縄を解いて厠に行かせてけれ」
琵琶子は叫んだ。
「そんな選択肢はないよ。このまま木桶にするか。それとも、床にぶちまけて、尻が汚れたまま、けつをくろに掘られるかだ。くろはちゃんと尻でも犯してくれるよ。ちゃんと訓練してあるからね。お前のお尻が糞まみれでもまったく気にしない。むしろ、大喜びでやるんじゃないかい」
宝玄仙は言った。
「くうっ……。き、木桶を――」
琵琶子は叫んだ。
選択の余地などなかった。
もう限界点を過ぎた排泄欲が、肛門のすぐ直前までやってきていた。
「じゃあ、また選ばせてやるよ。木桶をあてがって欲しければ、お前の肛門を拡張してくれと頼みな。お前の肛門は、まだ、なにかを受け入れるのには狭すぎるからね。排便をした後で、少し拡げてやるよ」
「そっただこと……」
琵琶子は歯を喰い縛って、便意を耐えた。
猛烈な便意が襲いかかっている。もう我慢できない。
「もちろん、拒否してもいい。だけど、そのときは、床に大便を撒き散らした後で、糞まみれの尻をくろに尻を犯される――。さあ、どっちがいい?」
宝玄仙が笑った。
あの悪意の籠った卑劣な笑いだ。
犬に尻を犯されるなど、そんな選択などできるわけがない。
それがわかっていて、わざと琵琶子の口から言わせているのだ。
「木桶を当ててけれ」
それしか言えない。
「頼むことが違うだろう、琵琶子。お前が選べるのは、肛門を拡げて欲しいと頼むことか、犬に尻を犯されるかのどちらかだけだ。早く選んでおくれ、どっちがいいんだい?」
口惜しい――。
口惜しい――。
口惜しい――。
息の止まるような恥辱に琵琶子の全身は凍りつく。
「こ、肛門を拡げてけれ」
琵琶子は言った。
「お前のけつの穴を大きくしてくれというんだね?」
「そうだ……。大きくしてけれ。肛門を拡げて……」
そこまで言って噴き出した涙に、言葉を続けることができなくなった。
「それは、嫌々頼むのかい? それとも、心からお願いしているのかい?」
宝玄仙は言った。
くそう――。
どこまでなぶる気だろう。
琵琶子は歯噛みした。
「こ、心からの……お願いだ。だ、だから、早く、木桶を――。木桶を当ててけれ」
琵琶子は叫んだ。
「どこに当てるんだい、琵琶子? 顔の前でいいかい?」
宝玄仙がそう言って大笑いした。
「お尻に当ててけれ。もう、出る。出そうなんだ―――」
琵琶子は絶叫した。
もう便意は限界だ。
そこまでやって来ている。
あと数瞬ももたない。
「木桶になにをするんだい? 言わないと、当ててやらないよ」
まだ、宝玄仙は笑い続けている。
「は、早く――」
「なにをひり出そうとしているのか、言うんだよ。言いたくなけりゃあ、床にぶちまけな」
宝玄仙が言った。
「う、うんちだ……。うんちを出させてけれ」
「もっと、でかい声で叫ぶんだよ、琵琶子」
「うんちを――。うんちさせてけれ――」
琵琶子は絶叫した。
宝玄仙が木桶を後ろにあてがったのを感じたのと、琵琶子の肛門が液体と一緒に、大便を放出するのがほとんど同時だった。
激しい嗚咽をしながら、琵琶子は自分の排便が木桶に流れ落ちる音を聞き続けていた。
琵琶子は、その音が琵琶子の心が壊れる音のような気がした。
蝕まれる……。
宝玄仙という毒女の猛毒がじわじわと琵琶子の精神を崩壊させていくのを琵琶子は他人がされていることのように感じていた。