※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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195 口惜しい尻調教

 木桶に三回目の排便をさせられた後で、布でしっかりと身体を拭かれた頃には、琵琶子(びわこ)には、もう抵抗の意思も、理不尽な扱いに対する宝玄仙への怒りもすっかりと消えていた。

 宝玄仙が琵琶子の身体を拭くのに、これ見よがしに、琵琶子から脱がせた下着や胸当てを使うことも気にならなかった。

 木桶にさせられた琵琶子の排便は、そのまま道術でどこかに放出されたようだ。

 当然あるはずの臭気は、どこからも匂ってこなかった。

 

 いずれにしても、宝玄仙が琵琶子を人格のない奴隷同様に扱おうとしていることは琵琶子にもわかった。

 あの沙那や孫空女や朱姫の三人も同じような仕打ちを受けて、この悪女の奴隷にされているのだろうか──。

 そんなことも思ったりした。

 

 自分がこれほどの屈辱を受けることになるとは、昨日までには夢にも思わなかった。

 薬師としての腕を頼りに、旅をしようと決めたときに、命の危険は覚悟したはずだが、このような恥辱は、琵琶子には想像もしていないことだった。

 

「すっかりと大人しくなったね、琵琶子。出すものを出して、気持ちがいいかい?」

 

 なにも言う気が起きない。

 琵琶子は、排便をさせられたときと同じ格好で、ただ、宝玄仙に尻を向けたままでいる。

 

「口が効けなくなったのかい? わたしの機嫌を損ねたら、その瞬間にくろをけしかけるという言葉を忘れたかい?」

 

 宝玄仙が言った。

 

「気持ちなど……、全然よくねえ」

 

 琵琶子は言った。

 

「いいだろう。じゃあ、琵琶子、それよりも、このわたしに、なにか頼むことがあるだろう? それを口にしな。くろがこっちを見ているのを忘れないようにね」

 

 宝玄仙は意地の悪い笑い声をあげた。

 

「お、お尻の穴の拡張を……してけれ」

 

 琵琶子は言った。

 お尻を宝玄仙に向けているので、顔を向けなくて済むのがせめてものことだった。

 とても面と向かってそんなことを頼むのは耐えられない。

 

「こんなものしかなかったけど、これでいいかい?」

 

 宝玄仙は、なにかを琵琶子の顔に近づけた。

 琵琶子ははっとした。

 

「そ、それは……薬草を潰すための、おらのすりこぎじゃねえか──」

 

 思わず叫ぶ。

 薬草を薬にするために使う大切な道具だ。

 そんなものを自分の尻をなぶるために使わせるなんてとんでもなかった。

 

「仕方ないだろう。ここには手頃なものはほかにないんだ。心配しなくても、霊具に変えてやるよ。最初からこの太さはつらいだろうから、ちゃんと細いやつから使ってやるよ。だけど、さすがに薬師じゃないか。すりこぎひとつにしたって、いろいろな太さのものが揃っているんだねえ。尻の調教用にちょうどいいよ。潤滑用の薬剤も使ってやるし、なんの心配もいらないさ」

 

「そ、そんな問題じゃねえだ。それは、おらの大切な……」

 

「大切なものならなんなんだい、琵琶子。別に犬の陰茎をそのまま使ってもいいんだけど、そっちにするかい?」

 

 宝玄仙が言った。

 犬を使うと脅されればそれに逆らうことはできない。

 琵琶子は唇を噛んだ。

 

「おまえのすりこぎを尻の調教に使っていいのかい? それとも駄目なのかい? どっちだよ?」

 

「すりこぎを使ってけれ……」

 

 そう言うしかない。

 

「そうだよ。無駄な抵抗をするんじゃないよ。まったく……」

 

 宝玄仙がどこかに行く。

 そして、また戻ってくる。

 今度は、すりこぎを三本持っている。

 大、中、小の太さのもので、大は最初に薬草を荒く削るときに使い、だんだんと細くしていき、最後は一番小さいもので粉のようにするのだ。

 だが、いまそれは、琵琶子自身の尻をなぶるために使われようとしている。こんな屈辱と悔しさはない。

 

「どれを使うか……。これでいいかい?」

 

 宝玄仙がわざと一番太いものを琵琶子の顔にかざす。

 だが、なにも言わなければ、面白がって、そのまま太いものを挿しこむかもしれない。

 琵琶子は思わず恐怖に眼を見開く。

 しかし、これは大切な道具なのだ。

 道具に対する愛着もある。

 しかし、いまは、その先端が丸みを帯びたその棒がとんでもない凶器に見える。

 

「細いのを……」

 

 それだけを言った。

 

「ふん、じゃあ、望みどおりにしてやるよ。さあ、尻をあげた、あげた。頭と肩は寝台につけて、尻だけをあげるんだよ。その姿勢を崩したら、黒に命令するよ」

 

 琵琶子は、躊躇いつつも、言われたとおりに尻を上にあげる。

 

「もっとだよ」

 

「ひぐっ」

 

 宝玄仙の指が琵琶子の尻穴にぐいを突き刺さり、上にあげたのだ。

 

「あ、あげるだ……。あげるから……」

 

 琵琶子は恥ずかしさに耐えて、限界まで尻をあげる。

 

「お前のはしたない女陰が丸見えになるように、脚を少し拡げな、琵琶子」

 

「くっ」

 

 悔しさに涙が流れる。

 宝玄仙はしつこく琵琶子の嫌がることをさせたいし、言いたいのだ。

 そして、逆らったり抵抗したりしようとするのを愉しんでいるのだ。

 逆らうことのできない琵琶子は、言いなりになるしかない。

 

「まあ、そんなところかね……。これ見てごらん」

 

 宝玄仙は、どろりとした粘性のものが入っている小さな容器を琵琶子の顔の前に持ってきて見せた。

 

「な、なんだ、それは?」

 

 つんとする刺激臭に思わず琵琶子は訊ねた。

 

「これはずいき油という粘性の薬剤だよ。わたしの精製したものだけど、精製に使った薬草を教えてやるよ。東帝国の南部で栽培される赤芋の茎を干したときに出る成分を使ったものでね。ほかに……」

 

 宝玄仙は、ひとつひとつ説明しながら、宝玄仙がずいき油と呼んだ薬剤の成分を説明し始めた。

 聞きながら琵琶子は総毛立った。

 その内容のものを混ぜて加工すれば、どんなものができあがるか簡単に想像がついたからだ。

 

「じょ、冗談じゃねえ、そっただものをなんに……」

 

「もちろん、お前の尻に入れるすりこぎに塗るのさ。後ろの穴からはおつゆが出ないから、こういう潤滑油を塗らないと入らないからね」

 

 琵琶子の全身から冷や汗がどっと流れる。

 初心な琵琶子でも何度か耳にしたことがある強烈な媚薬の原料ばかりだ。

 しかも、琵琶子の想像が当たっていれば、宝玄仙の説明したものを混ぜ合わせてできあがった薬剤は、猛烈な痒みが発生するはずだ。

 

「や、やだ……。そ、それだけはやめてけれ──」

 

 琵琶子は言った。

 

「いいから、力を抜くんだよ。それとも、犬に掘られるのがよければ言いな。すぐに予定を変更してやるよ。それから、このずいき油の効き目は、わたしの道術で本来の数倍に高めてあるからね。どうやら、このずいき油の恐ろしさが想像できたようだけど、これは、お前の考える数倍の効き目だからね」

 

 宝玄仙は愉しそうに笑った。

 冗談ではない。本当にこの女は狂っている。

 そんなものを作るなんて。しかも、それを琵琶子に使つもりなのだ。

 

 強烈な掻痒剤を尻に塗られる──。

 琵琶子はもう、どうしていいかわからない。

 だが、逃げれば犬が襲ってくるだろう。

 獰猛そうな犬が、はあはあと息をする声が嫌でも琵琶子の耳に入る。

 その音が、琵琶子の抵抗心を根こそぎ奪ってしまう。

 宝玄仙が琵琶子に見えるように、たっぷりと指ですくった薬剤を一番小さなすりこぎに塗りつけた。

 

「力を抜きな、琵琶子。最初に棒を尻に入れるときは怪我をしやすいんだ。力を入れると、すりこぎが腸の襞にくっついて、抜くときに尻側に裏返ってしまう。そうなると、尻が二度と使いものにならなくなって大変なことになるよ。無様な尻になりたくなかったら、入れられるときには息を吐き、出る時に息を吸うんだ。それもゆっくりとね」

 

「ひっ」

 

 ひんやりとした感触が肛門に伝わったのだ。

 しかし、まだすりこぎではない。

 宝玄仙の指だ。

 だが、ひんやりとした感触は、さっきのずいき油を指にも塗っているのだろう。

 その宝玄仙の指が、薬剤を塗り拡げるように動く。

 

「んん……ふんん──」

 

 鼻息とともにどうしても声が出てしまう。

 気持ちいいのだ。

 なんだかわからないが、じっとしていることのできない刺激が、宝玄仙の指から琵琶子の身体に伝わってくる。

 

 汗が顔を伝い落ちる。

 顔だけじゃない。

 全身に汗が噴き出している。

 こんなにも気持ちが悪く、震えるほど怖えているのに、どんどんと汗が全身から流れるのだ。

 

「まだまだ、開発のしていない尻穴というのは、久しぶりだねえ。こうやって、あいつらの尻を一から調教してやった頃が懐かしいよ。いまじゃあ、この尻が一番の性感帯だというんだからね」

 

 宝玄仙が喉で笑った。

 きっとあの沙那や孫空女や朱姫のことを言っているのだと思った。

 あの気の毒な三人……。

 いま、琵琶子がそうであるように、この宝玄仙という悪女に捕えられて逃げることができないで、毎日こんな恥辱を与えられているに違いない。

 

「浣腸をした直後なんで、だいぶほぐれてはいるようだね」

 

 そう言いながら、宝玄仙は丹念に薬剤を尻穴の内側に塗りこめていく。

 指が動くたびに、琵琶子はどうしてもはしたない声をあげてしまう。

 

「さて、じゃあ、そろそろいくよ」

 

 宝玄仙がそう言い、琵琶子の尻の内側に入っている指が琵琶子の中で折れ曲がって跳ねはじめた。

 

「んんん──んん……くわぁ──」

 

 一気にやってきた甘美な感覚がどっと琵琶子の全身に拡がり、暴れはじめた。

 信じたくはないが、琵琶子の女陰から溢れた淫液が太腿に伝うのを感じた。

 

「ああ……あん……ああっ──」

 

 自分が出しているとは信じられないような甘い声が口から漏れ出る。

 宝玄仙の指が跳ね動く。疼きのようだったなにかが、はっきりとした快感に変化して、それが琵琶子を襲っている。

 琵琶子の中でなにかが起きている。

 それがなにかわかからない。

 だが、それが全身に拡がり、頭の中のなにかが弾ける──。

 

「そろそろいいね……」

 

 琵琶子の中でなにかが爆発しそうになったとき、宝玄仙の指がすっと尻穴から逃げていった。焦燥感のようなものが琵琶子を襲う。

 

 それではっとした。

 自分はなにを考えているのか──。

 いま、指が離れたとき、それを残念だと考えなかったか……。

 琵琶子は自分の感情に愕然とした。

 

「随分と名残惜しかったようだけど、心配しなくても、すぐにすりこぎの出番さ。宝玄仙の尻穴調教を愉しみにしておくれ」

 

 心を読まれている……。

 琵琶子に恐怖とともに、快感を覚えたことを否定したくてもできないくらいに反応を示してしまった自分に対する悔しさが込みあがる。

 

「息を抜くんだよ」

 

 すりこぎの先端が当たった。

 心臓がどきりと鳴った気がした。

 

「息を抜くんだ、琵琶子」

 

 大きな声を出された。

 しかし、琵琶子はそれを実行することができない。

 息を吐きたくても、恐怖が身体を覆い、息をすることができないのだ。

 宝玄仙の強い舌打ちが聞こえた。

 

「そんなに尻穴をすぼめられたら入らないじゃないか。息を抜くんだよ、琵琶子」

 

「許して……許してけれ──もう、許して……」

 

 琵琶子はもう、それしか喋れなかった。

 全身が激しく震えるのを感じる。

 もう、嫌だ──。

 誰か助けて──。

 

「わかったよ、じゃあ、くろをけしかけるよ。今まで頑張ったけど、全部帳消しだ。犬にお前の穴を掘らせて終わりにしてやる」

 

「ひゃあ──。そ、それだけは勘忍してけれ。お、尻を……お尻を緩める。が、頑張るから──」

 

 琵琶子は懸命に息を吐く。

 それに応じるように、宝玄仙の扱うすりこぎがゆっくりと尻穴に入ってくる。

 

「くうう……」

 

 排泄器官であるはずの場所に、異物が入ってくる。

 しかも、それは薬師である琵琶子の大切な道具のひとつだ。

 それがゆっくりと尻穴に沈まされている。

 

「あ、ああ……」

 

 かなり深く入ったと思ったところから、こんどはゆっくりと引き戻されていく。

 押し込まれたときにも気持ち悪かったが、出されるときの不快感はそれを遥かに上回る。

 しかし、その不快であるはずの刺激に、琵琶子の身体はいやらしく反応してしまう。

 

 声があがる。

 ぞくぞくという得体の知れないものが全身を蝕むのだ。

 それがすりこぎが入ってきたときに生まれて、出ていくときに倍増する。

 

 そして、また入ってくる。

 あのぞくぞく感がさらに拡大する。

 

 出る……。

 さらに大きくなる。

 

 また入る──。

 この感覚が快感というものだと悟った。

 快感が拡がっている。尻穴で快感を覚えるという信じられない感覚が琵琶子を襲い、そして、拡がっている。

 

 皮膚は粟立っている。

 しかし、熱い。

 

 いままでの人生で知らなかった感覚だ。

 それを覚え込まされようとしている。

 あの疼き……いや、快感が子宮に拡がる。

 

 後ろをなぶられるというのは嫌悪感でしかない。

 だが、確実にそれ以外のものも琵琶子ははっきりと感じている。

 

 しばらくは、宝玄仙によるすりこぎの責めが続いた。

 どれくらい続いたのか……。

 

 やがて、ついに怖れていたものがやって来た。

 痒い……。

 

 ずいき油の効き目が琵琶子を襲ってきている。

 一度、知覚してしまうと、もうどうしていいかわからなかった。

 

 尻穴が痒い。

 いや、内側も……。

 お尻全体が焼けるように熱い。

 そして、痒い──。

 

 痒い。

 痒い。

 痒い──。

 痒い……。

 

「ひ、ひいぃ……ひんっ──ひいぃ──」

 

 琵琶子は悲鳴をあげた。

 その痒さが、すりこぎの動きですっと消えて癒される。

 気持ちいい。信じられないくらいに気持ちよくて、すりこぎが動くのが嬉しい……。

 

「あは──はあんっ……はん、はあん──はん、はん……」

 

「尻をそんなに振るほど気持ちいいのかい、琵琶子。だんだんと雌犬らしくなってきたじゃないか」

 

 宝玄仙が笑いながらすりこぎを動かし続ける。

 もう、我慢できない。

 あまりの快感に琵琶子は、耐えて続けていた声を張りあげた。

 

 琵琶子の身体に閃光のようなものが走った。

 それがぱあっと拡がり、琵琶子の中で激しく弾け砕けようとした。

 

「さて、じゃあ、お休みだよ」

 

 だが、まさに最後の瞬間に、宝玄仙がすっと尻穴からすりこぎを抜いたのだ。

 燃えあがるだけ、燃えあがらせておいてから、突然、お尻を責めるのをやめられてしまって、琵琶子は愕然とした。

 

「そ、そんな……」

 

「そんな、なんなんだよ、琵琶子? それとも、もっと尻をほじくって欲しいのかい。そう言えば、考えてやるよ」

 

 宝玄仙は笑った。

 どこまで心が汚いのだと思った。

 琵琶子が達する寸前だったのは知っているはずなのだ。

 それなにの、わざとぎりぎりまで責めておいて、それで寸前でやめて放置する。

 あとは、琵琶子に屈辱的な言葉を言わせるまで再開はしないのだろう。

 そのあまりの悪辣なやり口に琵琶子は震える。激しい怒りを感じる──。

 そして、それに屈服しなければならない自分自身に対しても……。

 

「お、お願いだ……。お尻を……お尻をもっと責めてけれ」

 

 琵琶子は言った。

 自分で頼むなんて屈辱だ。

 だが、発狂するような痒みは、琵琶子の尻穴を襲っている。

 もう、いまの琵琶子には、それを癒してもらうことしか考えられない。

 

「堕ちてきたじゃないか、琵琶子」

 

 宝玄仙が心から嬉しそうに笑う。その笑いに腹が立つ。

 

「……だけど、お情けはお預けだ。このまま一刻はそのままだ。言っておくけど、ちょっとでも動いてごらん。その瞬間に、くろをお前に襲わせるからね」

 

 宝玄仙は言った。

 

「ぐううっ──」

 

 琵琶子は、告げられた言葉とこんなにも宝玄仙の責めを渇望してしまっている自分が情けなくて恥辱の呻き声をあげた。

 

「どうしたんだい、琵琶子──。そんなに一刻も待つのが嫌なら、お尻が気持ちいいから、尻をほじってくれと喚き続けな。そうしたら、もしかしたら、気が変わるかもしれないよ」

 

 どこまで心がねじけているのだろう。

 だが、この痒さには耐えることはできない。

 このまま一刻も放置されれば、自分は発狂する。

 

「お尻が気持ちいいだ。どうか、おらの尻をほじってください」

 

 琵琶子は言った。

 

「もう一度」

 

「お尻が気持ちいい──。尻をほじってくけれ」

 

「もう一度」

 

「お尻が気持ちいい──。尻をほじってくけれ」

 

「もう一度」

 

「お尻が気持ちいい──。尻をほじってくけれ」

 

「もう一度」

 

「お尻が気持ちいい──。尻をほじってくけれ」

 

「もう一度」

 

 何度同じことをさせるつもりだろう。

 もう、尻穴の痒さは限界を超えていた。

 

「か、痒い、痒いだ──。ああ、なんとかしてけれ──」

 

 琵琶子は絶叫した。

 

「関係のない言葉を喋るんじゃないよ──。もう一度、やり直しだ。尻をほじってくれと、百回言いな」

 

 宝玄仙が怒鳴った。

 

「痒い………痒いだ……痒い……」

 

 だが、もう琵琶子はそれしか喋れなかった。

 呻くように痒いと言い続けた。

 

「尻をほじってくれだろ──」

 

 宝玄仙の声──。

 はっとして、尻をほじってくれと叫ぶ。

 

 お尻が気持ちいい……。

 尻をほじってくれ──。

 ただ、その言葉だけど言い続けた。

 

 もう頭が朦朧とする。

 だんだんとなぜ、その言葉を喋っているのかもわからなくなる。

 頭にあるのは、お尻が気持ちいいということと、尻をほじって欲しいということだけだ。

 

 何度同じことを叫んだだろう。

 おそらく、百回……。

 いや、その倍は叫んだかもしれない。

 

「わかったよ、琵琶子……。そんなに頼むなら、尻をほじってやるよ」

 

 宝玄仙がついに言った。

 琵琶子は安堵の涙が流れるのを感じた。

 

「あ、ありがとう……ございますだ……」

 

 感謝の言葉が躊躇なく出る。

 

「だけど、すりこぎを使うのはやめだよ。やっぱり、くろにやらせることにするよ」

 

 宝玄仙がそう言った。

 言われた瞬間は、すぐには意味がわからなかった。

 だが、その意味を悟ったとき、琵琶子は縄で縛られたまま逃げようとした。

 しかし、宝玄仙の道術で身体を硬直させられてしまった。

 身体が凍りつき、ぴくりとも動かない。

 

「くろ、おいで──」

 

 宝玄仙が戸口に座っていたあの犬を呼んだ。

 大きな犬の身体が床を軋ませてやってくる気配を感じた。

 

「そっただこと……──い、犬だけはしねえと約束してくれたじゃないだか──」

 

 琵琶子は叫んだ。

 

「そうだね。犬に犯されるのが嫌で、乳首責めを受け、浣腸されるのも合意し、尻穴をいたぶられるのも耐えたんだったね……。確かに、約束はしたね。うん、覚えているよ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「だったら……」

 

「だけど、わたしは約束を破るのが大好きなのさ……」

 

 宝玄仙は酷薄な響きを込めて、そう言った。

 

「か、勘忍してけれ──。犬だけは勘忍してけれ。お願いします。なんでもするだ。どんなことされてもいいだ──。だ、だから、犬だけは……」

 

 琵琶子は叫んだ。心の底から悲鳴をあげた。

 

「くろ、尻だよ」

 

 宝玄仙がそれだけを言った。

 どんと犬の肢が琵琶子の肩に乗り、荒々しい犬の息遣いが琵琶子のうなじにかかる。

 

「ひいっ──」

 

 琵琶子は声をあげた。

 

「……そんなに嫌かい、琵琶子?」

 

 宝玄仙の声。

 

「嫌だ。本当に、ほかのことならなんでもするだ。ほ、本当になんでもするだ。だから、犬だけは……」

 

 琵琶子は一縷の望みを求めて言った。

 

「この宝玄仙の奴隷になるかい?」

 

 宝玄仙は言った。

 

「なる。なるだ。だから、犬は堪忍してけれ──」

 

 琵琶子は懸命に言った。

 

「だったら、また、選ばせてやるよ。犬に尻をほじられるのがいいか……それとも、さっきのずいき油を塗って丸一日放置されるかだ。ずいき油の痒みに丸一日耐えられたら奴隷にしてやる。もっとも、多分、耐えきれずに狂い死ぬと思うけどね──。さあ、犬に尻を犯されるのと、痒み責めで狂い死ぬのとどちらかを選びな」

 

 そんなものを選べるわけがない。

 選べることができないのをわかって言っているのだ。

 だが、琵琶子は選んでいた。

 犬に犯されるくらいなら、痒み死んでもいい。

 

「ずいき油を……」

 

 それだけ言った。琵琶子は、はっきりと自分の声が泣き声なのがわかった。

 

「おまえの望みはわかったよ、琵琶子。じゃあ、望みどおりに、ずいき油を塗ったままここに放置してやるよ……。ただし、犬にお前の尻を犯させた後でね」

 

 琵琶子は抗議の声をあげた。

 

「……さっきも言ったろう? わたしは、約束を破るのが好きなのさ──。くろ──」

 

 その琵琶子の尻に、犬の肉棒が突き刺さった。

 

「ぎゃあああぁぁぁ──」

 

 琵琶子は狂ったように叫んだ。

 だが、道術で拘束された身体はぴくりともしない。

 その琵琶子の尻穴に入り込んだ犬の男根から精液が激しく迸る感触を感じた。

 

「犬の性交は半刻は続くからね。せいぜい、愉しんでおくれ──。わたしは、その間、食事をしてくる。戻って来たら続きをやろうね、琵琶子」

 

 犬に尻穴を犯されるという衝撃に気が遠くなっていく琵琶子に、そんな宝玄仙の言葉が放たれた。

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