※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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199 女同士の求婚

「いくよ、孫空女、覚悟はいいかい?」

 

 金水蓮(きんすいれん)が言った。

 

「も、もう、どうにでもして……」

 

 舌が痺れるほど、張形を舐めさせられた孫空女は、多少の苛立ちを込めてそう言った。

 相変わらず、宝玄仙の道術により、右手首と右足首、左手首と左足首をそれぞれ『緊箍具(きんこぐ)』で接続されて、大股開きにさせられている。

 言葉のとおり、本当に、もうどうにでもしてという格好だ。

 心境も同じだ。

 

「遠慮なく抱き潰しておくれ、金水蓮」

 

 宝玄仙が言った。

 宝玄仙は、いまは寝台から降りて、再び寝台の横の椅子に裸で脚を組んで座っている。

 金水蓮の股間に装着された張形が、孫空女の無毛の女陰にあてがわれる。

 

「じゃあ、いくよ、孫空女──。わたしの責めはちょっとばかり乱暴かもしれないよ」

 

 金水蓮の顔に酷薄な笑みが浮かぶ。

 孫空女は嫌な予感がした。

 なにか言おうとしたが、次の瞬間、ずんといきなり勢いよく、孫空女の女陰に張形が打ちこまれた。

 

「んふおあああっ──」

 

 孫空女は身体を仰け反らせて叫んだ。

 巨大な快感が孫空女の全身で弾ける。

 いきなり始まった激しい交合に孫空女は、身体を限界まで仰け反らせた。

 動こうとした孫空女の身体を金水蓮の強い力が阻む。

 

「こ、こんな──」

 

 孫空女は怯えた。

 何度か達した軽い絶頂で、孫空女の身体はこれ以上ないというくらいに高まっていたようだ。

 たった一撃で孫空女の中の防波堤はすべて吹き飛んだ。

 あとは、ただ、いかされるだけの人形に成り下がるだけだ。

 これまでに宝玄仙から教え込まれた調教の記憶で、もう自分の身体がどうなったかを悟ってしまった。

 

 もう、あっという間に絶頂するのだろう。

 ものの数瞬──。

 そして、それが繰り返す──。

 孫空女は、これから始まる絶頂地獄の予感に身体を震わせた。

 

「ま、待って……、金水蓮……」

 

「どうしたのさ、孫空女? どこか痛いかい?」

 

 金水蓮はそう言いながらも腰を大きく振っている。

 口調は優しいくせに、腰の動きは荒々しさそのものだ。

 

「も……もっと優しく……」

 

 怖い──。

 怖いのだ。

 このままではすぐにいかされる。

 そして、歯止めが利かなくなる。

 

「贅沢言うんじゃないよ、奴隷のくせに」

 

 横で見ている宝玄仙が叱咤した。

 

「だ、だって……」

 

「だってじゃない、孫空女──。金水蓮、もっと激しくやってやりな」

 

「ああ、任せておくれ」

 

 性交というよりは、腰の張形を使った孫空女への打擲だ。

 まるで大槌で杭を打ち込むかのように、もの凄い力と速さで孫空女の女陰に張形が叩きこまれる。

 それが繰り返す。

 

「ひゃあ、ひゃん、ひゃあ、ひゃあ──は、弾ける──弾け……飛ぶ──飛ぶ──ひゃああ──」

 

 孫空女は激しく喘いだ。

 金水蓮の渾身の力が、孫空女の子宮にぶつかる。

 

 ぶつかり──、当たる。

 打つ。

 打つ──。

 打つ──。

 すごい──。

 息が止まる──。

 考えることのできない激しい突き──。

 

「い、いくうっ──」

 

 孫空女は絶叫した。

 真っ白なものが孫空女の頭で弾けた。

 全身ががくがくと震えて、拘束されている身体を弓なりにする。

 そして、その白い光が孫空女を包む……。呆気なく絶頂した。

 

「まだまだだよ、孫空女──。まだ、始まったばかりだよ」

 

 しかし、ずんという衝撃で、飛びかけていた意識が戻る。

 また、突かれる──。

 すぐに次の絶頂が……。

 

「駄目……また、いく……ああっ……あ、あ、ああっ──いくよ──」

 

 全身ががくんがくんと揺れた。今度も深い絶頂だ。

 しかし、脱力する暇もない。

 痙攣が続いている身体に、金水蓮の腰の張形が容赦なく叩きつけられる。

 

「ひぎいっ──ちょ、ちょっと待って──。ちょっとで……いいから──」

 

 孫空女は心の底から叫んだ。

 さすがにこれは堪らない。

 深い絶頂で身体が脱力状態になりかけているところに、激しく女陰を擦られて、またいくのだ。

 息をする暇さえない。

 

「ああ……こ、壊れる……。き、金水蓮──、ま、また、くる──。ほう──ほわっ──」

 

 突きつけられる衝撃と衝撃の間の束の間の時間を探して、懸命に空気を探す。

 しかし、それが吸えないうちに、また、激しい波がやってくる。

 

 絶頂──。

 溺れる。

 快楽の洪水だ。

 孫空女は、官能の大波に沈み、水面を探すかのようにもがき続ける。

 しかし、次々に被さる波にどうしても上にあがれない。

 

 助けて……。

 また、絶頂──。

 

「いぎい──そ、そんなに──」

 

 もう自分でもなにを言っているかわからない。

 孫空女は拘束された全身を仰け反らせて、ただ喚いた。

 

 息が……。

 息がもたない……。

 

「すごいよ、宝玄仙さん──。孫空女の身体──。敏感すぎて、可愛すぎるよ。五、六回突くだけで……がくがくと……次々に……気をやり続ける……女なんて、初めて接したよ」

 

 金水蓮が孫空女に女陰を叩きつけながら叫んだ。

 

「ああ……わたしのお気に入りさ」

 

 宝玄仙の声──。

 

「ほら、孫空女、もっとよがるんだよ。もっと速度あげるよ」

 

 金水蓮が言った。

 

「そ、そんな──」

 

 全身が壊れたかのように跳ねる。

 骨が砕けるような衝撃の連鎖だ。

 孫空女は唯一動く顔を左右に振りたてて、悲鳴を迸らせた。

 

「ああっ……だ、だめ──。こ、壊れる……」

 

 だんだんと金水蓮の声も顔もわからなくなる。

 すべてはぼんやりとしたもやの中に埋没していく……。

 

「また、いぐううう──」

 

 孫空女はまた叫んで、全身を揺すった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頬を張られた。

 かなりの痛みだ。

 一瞬、気を失っていたらしい。

 

 眼を開ける。

 頬を張ったのは金水蓮のようだ。

 ただ、金水蓮の顔には、残酷なものはない。

優しげな微笑がそこにあるだけだ。

 

「お、お願い……だよ……。も、もう……や、めて……」

 

 孫空女はやっとのこと言った。

 

「さすがは、孫空女だよ……。これだけ耐え続けるなんて凄いよ」

 

 金水蓮はそう言いながら、寝台の横の椅子に戻った。

 そして、酒と肉を口にしながら、孫空女と宝玄仙の性交を眺める態勢に戻った。

 明るい時間にはじまった性愛は、すっかりと外が夜になっても続いていた。

 いまが、どのくらいの時間で、孫空女が責められ始めてからどのくらいの時間が過ぎたのか孫空女には見当もつかない。

 

 最初に金水蓮に張形で女陰を突かれまくり、狂ったように連続絶頂したあと、休む時間を与えられずに、責め手は宝玄仙に代わった。

 始める前は、孫空女の次には、宝玄仙と金水蓮の組み合わせでも、愛し合うようなことを言っていたが、結局、責められるのは孫空女ひとりであり、しかも、ふたりがかりで責められている。

 

 金水蓮の後は、今度は宝玄仙がいつもの道術で股間に生やした怒張で孫空女の尻孔を犯して、孫空女はいき狂った。

 

 そして、十回ほど絶頂させられると、また、金水蓮と交代し、金水蓮が疲れると、宝玄仙に交代する……。

 孫空女ひとりだけが、食事抜きで犯され続ける。

 

 それを数刻続けられ、もう、なにがなんだかわからなくなった。

 どのくらい絶頂したのか……。

 二十や三十じゃきかない。

 

 最初に金水蓮に犯されたときにされていた『緊箍具』による拘束はもうない。

 ただ、手も足も全身が鉛にでもなったかのように動かない。

 ただ、されるがままにされるだけだ。

 

 そうやって、ふたりがかりで犯され続けている間に、金水蓮が屋敷の外の詰所にいる女兵に命じて、照明用の油と食料を準備させたようだ。

 金水蓮は、女兵は屋敷には入れずに、ものを玄関から受け取ると、自分でこの部屋に照明を入れ、酒と肉を部屋に運んできたのだ。

 そう宝玄仙に説明していた。

 

 金水蓮が準備した飲み物と食べ物は部屋の隅にある卓の上にある。

 しかし、それを口にするのは金水蓮と宝玄仙だけだ。

 孫空女はずっと犯され続けている。

 

 金水蓮が孫空女を責めている間に宝玄仙が食事をし、宝玄仙が責めている間に金水蓮が食べるという具合にやっているのだ。

 その間、孫空女はただの少しも休ませてもらえない。

 

 犯し続けられて、孫空女が意識を失いかけると、身体を抱きしめられて、あちこちを触られる愛撫に変え、孫空女がほんの少し体力が回復するのを待つ。

 休息といえば、それが休息だが、連続絶頂で息も絶え絶えになった呼吸を元に戻すことを許されるだけで、快感が休ませてもらえるわけじゃない。

 身体中を触られまくって、どんどん敏感さが増すばかりにされるのだ。

 

 孫空女の息が少し戻れば、また、孫空女の女陰か尻に張形か怒張が突き挿されて、また犯される。

 それが果てしなく繰り返されている。

 

 いまは、宝玄仙に背中側から抱かれて、全身をくすぐるように愛撫をされている。

 その間、意識を孫空女が落としかけたので、金水蓮が近づいて、孫空女の頬を張ったのだ。

 

「ちょっと、交代しておくれ、金水蓮。わたしも、もう少し、腹にものを入れるよ」

 

 宝玄仙が言って、孫空女から離れた。

 

「ああ」

 

 金水蓮が立ちあがって、寝台にあがってくる。

 

「お、お願いだよ……」

 

 孫空女も寝台から降りようとするが、簡単に金水蓮に押し倒される。

 普通なら、簡単に跳ね除けられる金水蓮程度の力が、いまの孫空女には逆らうことのできない圧倒的な力に思える。

 もう、完全に力が入らない。

 かろうじて、意識を保っているだけの状態だ。

 

 この一日で、もう何十回の絶頂をしたのか……。

 一回いくごとに、孫空女の身体は敏感になっていく。もともと感じやすい孫空女の全身は、いまや敏感な性感帯の塊りのようになっている。

 

 女陰や尻を犯されるどころか、脇やわき腹に爪を立てられるだけでいきそうになるのだ。

 金水蓮や宝玄仙に肌のどこかを擦られるだけで、絶叫して肌に粟を立ててしまう。

 ちょんと乳首や、ましてや肉芽などに触られようものなら、それこそ、それだけで達しそうになる。

 

 宝玄仙と出遭うまでは、こんな身体じゃなかった。宝玄仙に覚え込まされた快感が、ここまでの淫乱な身体を作ってしまったのだ。

 もちろん、女同士の性愛など知らなかった。

 男は知っていた。

 しかし、男を受け入れるときは、男が射精すればそれで終わりだ。

 孫空女が達するとか、達しないとか関係ない。

 性愛とはそういうものだと思っていたし、それほど気持ちがいいという思いもなかった。

 

 だが、宝玄仙が教えてくれた性愛は、孫空女が知っていたものとまったく違うものだった。

 果てしなく深い絶頂──。

 一度どころか、永遠に続くのかと思うような連続のいき狂い──。

 女同士のときには、男と愛し合うときとは違うのだ。

 

 女と女の性愛には、終わりがない。

 まさに体力が尽きるまで続く。

 いまもそうだ。

 ふたりが何度孫空女を犯したかはわからない。

 これが男だったら、そう射精はできないから、とっくに終わっている。

 しかし、孫空女を犯しているのは、ただの張形であり、道術で作った男とは違う女の肉棒だ。射精のない性交に終わりはない。

 ふたりが飽きるまで続くだけだ。

 

「また、これでいこうか」

 

 金水蓮が革の張形を腰に嵌めて言った。

 一回目のときには、下着の上から装着していたが、いまは生身の股間に直接嵌めている。

 装着帯の隙間からは、金水蓮の淫液がびっしょりと滲み出ている。

 金水蓮もまた、孫空女を犯しながら、その興奮に酔っているのだということがわかる。

 

「ま……まって、あ、あたしが奉仕する……」

 

 孫空女はやっとのこと言った。

 これ以上、犯されたくない。

 それこそ、手足がばらばらになる。

 奉仕をすれば、その間、少しは身体を休ませることができる。

 

「いいから、いいから……わたしは、あんたを抱きたいのさ。可愛い、可愛い、孫空女をね」

 

 金水蓮の唇が、押し倒しされた孫空女の唇に重なる。

 口の中を責めたてる激しい舌の愛撫だ。

 舌先で口の中を舐め回されて、股間からどっと愛液が溢れた。

 

 いく……。

 懸命にもがいて、口を振りほどく。

 

 もう、駄目だ──。

 休まないと死んでしまう……。

 

「どこいくんだい、孫空女?」

 

 金水蓮が笑って言った。

 どうでもいい……。

 逃げるのだ……。

 

 なんとか腕をすり抜けて、寝台から降りる。

 しかし、そのまま転げ落ちてしまった。

 

 腰が立たない。

 足も動かない。

 全身の筋肉という筋肉から力が抜けている。

 立てない──。

 孫空女は愕然とした。

 

「なんで、床に寝てるんだい、孫空女?」

 

 孫空女を追って寝台から降りた金水蓮が笑って言った。

 寝ているんじゃない。

 倒れているんだが状態は同じだ。

 

「こいつは、乱暴に床で犯されるのが好きなのさ」

 

 宝玄仙が笑いながら口を出す。

 

「ち、違う──」

 

 孫空女は抗議の声をあげた。

 しかし、金水蓮の腕が孫空女の身体を裏返しにして、臀部を両手で持った。

 まさか……。

 

「さっきから、宝玄仙さんが、あんたの尻を犯すのを見て、女陰とは比べものにならないくらいに悶えるのがわかったからね。前よりも後ろの孔が好物みたいじゃないか。だったら、わたしもやらせておくれよ、孫空女」

 

 金水蓮が言った。

 

「や、やめてよお──」

 

 孫空女は思わず言った。

 だが、尻が金水蓮に向かって引っ張られる。

 全身が弛緩して抵抗できない。

 孫空女の肛門に革の張形の先端が触った。

 

「ひいっ──」

 

 孫空女は懸命にすがるものを探した。

 だが、なにもない。床に爪を立てる。

 ぐりぐりと肛門に張形が突き挿さる。

 

「あ、あがが──、あがあ……」

 

 腰の中でなにかが炸裂する。

 意識が飛ぶ。

 快感だけが残る。

 すべてが消える……。

 

「ほら、もっと泣くんだよ、孫空女」

 

 激しい肛門への突きで、意識が覚醒する。

 ずんずんと突かれる。

 意識が飛んでは戻り、戻っては飛ばされる。

 

「し、死ぬ……」

 

 肛門への荒々しい凌辱が続く。

 また意識が飛んだ。

 身体が跳ねあがる。

 自分の意識とは関係ない。

 勝手に身体が反応するのだ。

 動くことのできない孫空女の身体は、金水蓮の責めで激しく動き回る。

 

「はぐううっ──。い、いくっ──」

 

 あっという間に達した。

 もちろん、それで終わらない。

 もう次の絶頂がやってきている。

 

「い、いく──」

 

 また叫ぶ。

 

「何度もでもいきな、孫空女。何度でもね──」

 

 金水蓮が酔ったように叫んだ。

 

「はぎっ──」

 

 叫びながら孫空女はまた達した。

 そして、三度目──。

 

 四度目──。

 

 五度目──。

 

 六度──。

 

 さらに、次──。

 壊れる──。

 いや、壊れている。

 

 解放して──。

 

 解放……。

 

 もう、叫ぶこともできない。

 連続で達した数もわからなくなり、金水蓮に犯されているということも知覚できなくなったとき、急に、孫空女を支えていた金水蓮の力が失われた。

 やっと解放されたのだと思った。

 孫空女の臀部から金水蓮が離れたのだ。

 金水蓮が手を離すと、するずると身体が床に落ちていった。

 孫空女は、そのままの状態で床に突っ伏した。

 

「はあ……はあ……はっ……はあ」

 

 呼吸を求めて、孫空女の口は大きく開けられていた。

 孫空女の身体で動いているのはそこだけだ。

 その孫空女の身体の下に金水蓮の足が入れられた。

 仰向けにひっくり返される。

 

「な、なに?」

 

 孫空女が虚ろな眼を開けると、もう、金水蓮が眼の前に覆い被さろうとしていた。

 

「もちろん、お愉しみの時間さ」

 

 金水蓮の指が孫空女の乳首を弾いた。

 

「あふっ──もう、駄目だよ……駄目──」

 

 孫空女は本当に恐怖した。

 頭はまだ霧がかかったかのようにはっきりしない。

 それだけじゃない。

 金水蓮の身体が霞んでいる。

 

「んふうううう」

 

 張形が女陰に突き挿さった。

 孫空女は泣きながら悲鳴をあげた。

 かろうじて覚えているのはそこまでだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 完全に床で気を失っている孫空女に、金水蓮はそっと薄い毛布をかけた。

 孫空女は裸身を丸めて、まるで猫が眠るかのように寝息を立てている。

 本当に可愛らしい寝顔だ。

 これが、あの無敵の女戦士なのだ。

 それがひとたび裸身を抱かれれば、何度もいき続ける可愛らしい女に変わる……。

 その違いに、金水蓮の心は孫空女になにもかも奪われてしまっていた。

 

「どうだった、孫空女は?」

 

 宝玄仙が盃に注いだ酒を飲みながら言った。

 

「最高さ……」

 

 金水蓮は言った。

 本当に心からそう思った。

 こんな相手は二度とは現れないだろう。

 孫空女と離れてはならない──。

 金水蓮の直感がそう告げていた。

 

「ねえ、宝玄仙さん」

 

 金水蓮は、腰の性具を外してから宝玄仙に向き直った。

 宝玄仙は素裸だ。金水蓮も同じである。

 

「なんだい?」

 

「孫空女を身請けさせて欲しい」

 

 金水蓮は言った。

 

「身請け?」

 

 宝玄仙が驚いている。

 

「そうだ、身請けだ。孫空女は、あんたの奴隷なんだろう? だから、身請けに必要な値を付けてくれ。わたしは、上級将校としてかなりの報酬を軍から受けているが、自分のために使わないから、かなりの蓄えになっている。これまで使うつもりないものだったけど、すべてを出してもいい。孫空女と一緒になれるなら……」

 

「一緒になるというのはどういうことだい? こいつをお前の奴隷にするということかい?」

 

 宝玄仙は言った。

 まるで金水蓮の申し出を愉しんでいるかのようだ。

 もちろん、これだけの女性だ。

 あの武力にして、寝台の上におけるこれだけの可憐さと淫乱さ……。

 最高級の存在だ。

 そう簡単に手放すつもりはないかもしれない。

 

 だが、なんとしても手に入れたい。

 この孫空女を──。

 

「奴隷になんかするものか。妻にしたい」

 

 金水蓮は言った。

 

「妻?」

 

 宝玄仙の顔から一瞬だけ、笑みが消えて驚愕の色が浮かんだ。

 そして、まだ微笑みに戻る。

 

「そうだ、妻だ。わたしは、孫空女を妻に迎えたい……。いや、一緒になってくれるなら、わたしが妻でもいい。わたしは軍人だから、女人国の法により、他人の妻になることは許されず、夫でなければならない。でも、孫空女がどうしても、自分が夫になるということを望むのであれば、わたしが妻になる。とにかく、わたしは一緒になれればいいのだ」

 

「こいつを妻にねえ……」

 

 宝玄仙が微笑みながら嘆息した。

 

「値をつけてくれ……あるいは、条件でもいい。どんなものであっても、わたしが可能なことなら提供する」

 

 金水蓮は言った。

 宝玄仙が大切にしている奴隷だ。宝玄仙はなにを代償に求めるのだろう。

 

「女と女が夫婦というのはおかしなものだね。女人国の中では普通のことなのだとは思うけど、やっぱりわたしは、異邦人だからね。不思議な感じがするよ」

 

 宝玄仙が言った。

 

「わたしたちの習慣だ。生涯の友好を誓い合った者は夫婦の契りをするのだ。夫と妻として……。それは、異国の習慣と同じでは?」

 

「いまだって、ふたりで乳繰り合ったじゃないか。なにが不満なんだい? 抱きたきゃ、叩き起こして抱けばいいじゃないか──。遠慮なく続けな」

 

「孫空女を永遠に手に入れたい。一度だけじゃない。ずっと一緒にいたいんだ。そのための契りだ」

 

「さっき、会ったばかりの女だよ。もう少し、抱いてみたらどうだい?」

 

「もう十分に抱いた。これほどの相手はいない──。お願いだから、値をつけてくれ」

 

 金水蓮は言った。

 どうやっても手に入れる。

 もう覚悟は決まっている。

 この孫空女と二度と離れるつもりはない。

 

「こいつは、物じゃないんだよ、金水蓮」

 

「それはわかっている。だけど、奴隷だろう、あんたの? あんたもそう言ったし、孫空女もそう言った」

 

「ああ、だけど、あいつは、わたしの奴隷なんだよ。お前のじゃない……。そして、こいつは自分で奴隷と言っているんだ。この意味がわかるかい、金水蓮」

 

 宝玄仙がじっと金水蓮に視線を向けた。

 

「なるほど──」

 

 金水蓮にも宝玄仙の言っている意味がわかった。

 奴隷であろうとも、孫空女は自分の意思をもって宝玄仙に仕えている。

 そう言いたいのだろう。

 宝玄仙が承知して、金水蓮に渡す──。

 そういうものではないと……。

 

「──だったら、孫空女に正式に申し込む。もしも、彼女が承知したら、わたしに欲しい。これでいいかい?」

 

 金水蓮は言った。

 この気持ちに偽りはない。

 本気の気持ちだ。

 

「そんなにこいつを手に入れたいのかい?」

 

「もちろんだよ」

 

 金水蓮は断言した。

 足の下で眠っている孫空女を見た。

 可愛らしい寝顔だ。

 金水蓮を遥かに上回る武術の腕であれば、金水蓮の対等の伴侶として申し分ないし、あれ程に金水蓮の快楽をぶつけられる者も、受け入れてくれる者もいない。まさに最高の相手だ。

 

「いいだろう……。条件を付けるよ、金水蓮」

 

 しばらく考えていた様子だった宝玄仙が言った。

 

「幾らだい?」

 

 金水蓮は言った。

 

「財と交換じゃないよ。条件って言ったろう」

 

「なんだい?」

 

 地位だろうか。それとも爵位だろうか……。

 軍人である金水蓮には、動かせる文官としての官職には限りがある。

 逆に軍人としての地位ならある程度は自由になる。

 要求が爵位だったら、金水蓮に使える伝手は限られる。

 宝玄仙の要求するものが手に入るだろうか……。

 

「賭けをしようじゃないか、金水蓮」

 

「賭け?」

 

 意外な言葉に金水蓮は戸惑った。

 

「ああ、賭けだ。お前とわたしと、性愛の勝負をしようじゃないか。対等の条件でね。それで、相手の手管に落ちた側が負けだ。わたしが負けたら、孫空女はくれてやるよ」

 

「承知した」

 

 金水蓮は即答した。

 性交に関する手管の戦いなら、まず負けるとは思わない。

 この宝玄仙がどれだけのものかはわからないが、なんとしても勝ってみせる。

 

「おやおや、お前が負けた場合の条件を聞かなくていいのかい、金水蓮?」

 

 宝玄仙が呆れた声をあげた。

 

「負けるつもりはないからね。孫空女は絶対に妻にしてみせるよ。だから、負けた場合の条件はどうでもいいんだ。すべての財を賭けるよ。あるいは、命を寄越せと言われてもいい。歓んでくれてやる」

 

 金水蓮は言った。

 

「お前の命なんかどうでもいいさ──。だけど、お前が負けたら、この宝玄仙の調教を受けるんだ」

 

 そう言って宝玄仙はにやりと笑った。

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