2 鬼畜巫女
「退屈だねえ。沙那、なんか、愉快なことないかい?」
山街道が三脚に差し掛かって勾配が急峻になってくると、
「ありません。なんにも、あるわけありません」
沙那は急いで言った。
「だって、ずっと同じ景色じゃないかい。茶屋のひとつだってありやしない。ほとんど行き交う旅人だっていないし、どうなっているんだい。なんで、こんな寂しい道を歩いているんだよ。とにかく、退屈だ。なにかしな」
宝玄仙が不機嫌そうに言った。
沙那は嘆息した。
この頭のおかしな女法師は、これでも帝都では有名な天教の高位の法師であり、れっきとした貴族巫女なのだそうだ。
天教というのは、この帝国を中心に広まっている信仰であり、その最高峰が八仙と呼ばれる人智を越えた道術を駆使するという集団である。
この宝玄仙は、その八仙のひとりであり、爵位こそないが、その地位は、この帝国では皇族に匹敵するほど高い。
だが、旅慣れており、武道で鍛えた健脚を持つ沙那に引けを取らないほどに立派に歩く。
ただ、とんでもない変態であり、ちょっと退屈になると、すぐに沙那の身体を玩具にして、淫靡な悪戯を仕掛けてくる。
しきも、この声は、その退屈の虫が沸き起こったときの声だ。
沙那はぞっとした。
「この辺りは、
沙那は早口で言った。
言外に、ここでは、おかしな悪戯は封印してくれと頼んだつもりだ。
五行山の盗賊団といえば、この界隈では有名な存在らしく、峠を挟んで、ふたつの大きな盗賊団が縄張りを作っているということだった。
旅の行程を管理するのは沙那の役目であり、昨夜宿泊した宿屋を出立する前に、沙那はしっかりとその情報を仕入れていた。
それによれば、本当に五行山の盗賊は危険な存在であり、この辺りを支配する地方軍も手を焼いているようだ。
沙那としては、危険を避けるために、できるだけ早く出発して、十分に明るいうちに五行山を通過してしまいたかったのだが、またしても、宝玄仙はいつもの嗜虐癖を発揮して、朝から性愛の相手をさせられ、結局出発したのは、十分に陽が中天近くにあがってからだった。
それで、かなり急いでいるが、このままでは、五行山を越えるどころか、峠に辿り着くのかも怪しい。
とにかく、できるだけ先に進もうと、沙那は足を速めていた。
「五行山の盗賊? なんで、そんなところを進んでいるだい? 旅程を管理するのはお前の仕事だろう。おかしな道を進むんじゃないよ。そもそも、野宿? この八仙の地位を持つ宝玄仙に野宿をしろを言うのかい、沙那──。はっ、いい根性じゃないかい。だったら、それ相応の罰があると思いな。どんな罰がいいんだい……? そうだねえ……。だったら、陰核に糸を繋いで、一晩中木の枝に繋げて吊りあげてやろうか。お前は体力だけはありそうだからね。根性入れて、ずっと立ち続けてみな」
宝玄仙が歩きながら鬼畜に笑った。
沙那は竦みあがった。
この宝玄仙なら、本当にやりかねない……。
「そ、そんな……。この五行山のことについては、昨夜もちゃんとお話ししましたよ。それに、早朝に出発すれば、楽に山を通り抜けられたんです……。とにかく、急ぎましょう。陽が暮れれば、この五行山は歩けません。本当に野宿するしかなくなります。だいたい、そもそも、ご主人様が朝から悪戯なさるから……」
沙那は、背中に旅の荷物を背負ったまま振り返った。
そもそも、こんなに微妙な時間になったのは、宝玄仙のせいだ。
「ひっ」
だが、宝玄仙の顔を見て、沙那は恐怖の声をあげてしまった。
宝玄仙は顔に満面の笑みを浮かべていたのだ。
この鬼畜巫女が、この顔をしたときは碌なことはない。
沙那は、それを知っている。
「よくぞ言ったね、沙那。なかなか、頼もしいじゃないかい……。とりあえず、女淫輪を動かしてやろうか……。いや、自慰にしよう。『服従の首輪』に命令してやるよ。下袴を脱いで、下半身は股布一枚になりな。布の隙間から指が入るだろう。ここで自慰をするんだ。一番感じるように指を動かすんだよ」
宝玄仙が笑った。
沙那はぞっとした。
冗談じゃない。
ほとんど人の通過することのない五行山の山街道とはいえ、街道には違いないのだ。
そこで股布一枚になるなど……。
ましてや、自慰をする……?
沙那は、顔が引きつるのがわかった。
「め、い、れ、い……だよ……」
宝玄仙はにやつきながら言った。
「ああ、そんなあ」
沙那は悲鳴をあげた。
“命令”という言葉を言われれば、もう終わりなのだ。
その単語が合言葉になり、どんな理不尽な命令であろうと、沙那の身体は首輪に刻まれた道術により、勝手に“命令”に従うために動き出す。
いまもそうだ。
沙那は、宝玄仙の破廉恥な命令に服従し、いったん歩くのをやめて、下袴を脱ぐために、背負っている荷をおろし始める。
「や、やめて、やめて、お、お願いします。なんでもします。なんでもしますから、外で辱めるのだけはやめてください。お願いします、ご主人様」
沙那は悲鳴をあげた。
しかし、宝玄仙は笑うだけだ。
沙那の手は、下袴の腰紐を解いて、呆気なく足首から抜いてしまう。
しかも、沙那は護衛のために、腰に革帯で剣を吊っていたが、それについては、ご丁寧にも股布一枚の腰にぶら下げ直している。
「じゃあ、荷を背負い直しな。命令さ」
宝玄仙が沙那が脱いだ下袴を取りあげた。
「ああ、そんな……」
沙那は泣き声をあげた。
だが、沙那にはなんの抵抗もできない。
沙那は、上着は身につけているものの、小さな股布以外には腰から下にはなにも着ていないという破廉恥な姿のまま、再び荷を背負った。
そして、さっきの「命令」により、股布の隙間から指を入れて、股間に触れる。
「んふうっ」
沙那は声をあげた。
宝玄仙の命令は、「一番に感じるように自慰をしろ」だ。
だから、沙那の指は懸命に、沙那がもっとも感じる場所である肉芽をくすぐるように動かし始めた。自分の身体がどんな風に感じるかは、沙那が一番よく知っている。
自分の手から逃れることなど不可能だ。
「んふうっ、はううっ、あふう」
沙那は、すぐに腰から下が痺れたようになってがくりと膝を折ってしまった。
そのあいだも、沙那の指は快感を少しでも拡大しようと、股布中で動き回る。
「相変わらず、感じやすい身体で愉しくなるねえ。それから、恥ずかしかったら、そんなに大きな声を出すんじゃないよ」
宝玄仙が沙那の痴態を見て、笑い続ける。
「も、もう……や、やめて……。ご、ご主人様、こんなことをしている……ば、場合じゃ……。陽、陽が暮れます……。ここは、五行山ですから……」
沙那は懸命に訴えた。
「五行山がどうしたんだい? やっぱり、女淫輪も動かしてやるよ。だけど、こうやって見ていると、一箇月間、調教しまくっているのに、やはり肉芽が一番感じるのかい? じゃあ、肉芽はいいや。そこは女淫輪に任せて、お前は尻に指を入れな。尻で自慰だ。命令だよ」
沙那の股間で女淫輪が振動を開始する。
それとともに、沙那の指は一度抜かれて、今度は後ろからお尻の穴を探して、股布に入っていく。
「お、お尻は堪忍を……。ほ、本当に急ぎましょう──。ここは本当に物騒なんで……」
しかし、沙那の意思とは無関係に、勝手に指がお尻に挿し込まれて、うねうねと動き始める。
女淫輪の刺激と相まって、沙那は完全にその場にうずくまってしまう。
宝玄仙は手を叩いて笑った。
本当にこの変態巫女め……。
沙那は唇を噛んだ。
これで口さえ開かなければ、絶世の美女の巫女として、誰からも尊敬と羨望の眼差しを向けられるほどの外見の地位を持つ天教の巫女なのに……。
沙那は思った。
いや、そうじゃない……。
この巫女は、道術を駆使して女を苛めて喜ぶ変態だが、それは沙那といるときだけのものだ。
天下のど変態だが、猫を被るのは超一級であり、沙那を罠に嵌めた愛陽の城郭でも、この鬼畜巫女は、県知事に頼まれて立派に敬虔な天教の巫女としての役割を演じてみせた。
だからこそ、沙那も騙されたのだ。
こんな変態だと知っていれば、絶対に宝玄仙の供になることなど承知しなかった……。
「そんなに気持ちがいいかい、沙那? 本当に、お前は全身が性感帯みたいに感じやすくて面白いよ。とにかく、早く行こうじゃないかい。そろそろ、進みな。お前の言い草じゃないけど、陽が暮れてしまうよ」
宝玄仙が言った。
沙那は歯噛みした。
「……あ、ああっ、あっ、だ、だったら、や、やめさせて……。め、命令の解除を……んはああ」
沙那はしゃがみ込んだまま、宝玄仙を見あげて訴えた。
しかし、その沙那に宝玄仙がさらに鬼畜な笑みを浮かべる。
「歩けるさ。“命令”してやればね。さあ、沙那、命令だ。自慰をしながら歩くんだ」
宝玄仙が鬼畜に言った。
沙那は悶え泣いた。
「いやあ、いや、いやあ」
沙那は指で尻を自慰をしながらという屈辱の姿で立ちあがった。
本来であれば、とても歩くことのできないような疼きの中、一歩一歩と沙那の脚は前に進みだす。
「このまま歩きながら、達し続けな……。そうだね。五回ほど絶頂すれば、許してやるよ」
宝玄仙が沙那の下袴をぽんと投げ寄越しながら、すたすたと前を歩きだす。
沙那は、肛門に入っていない側の手で下袴を受け取るも、それをはくことはできない。
脱げというのがさっきの命令なので、それを解除しなければ、このままで歩くしかないのだ。
「ま、待って……」
先に進むと危ない……。
沙那は、そう訴えようとしながらも、さっそく最初の絶頂を迎えてしまい、その言葉は口から出る嬌声によってかき消されてしまった。
*
夜は完全に更け、わずかに月明かりがあり、しかも、「獲物」まではかなりの距離があったが、夜目の利く孫空女には十分な明るさだ。
どうやら、旅の巫女のようだ。
おそらく、もうひとりは護衛だろう。
身体の横には、腰から外した剣を置いている。
いずれにしても、あの巫女が天教の神官というのは間違いない。
しかも、それなりの身分だというのもわかる。遠目だが、孫空女の眼は、しっかりと巫女が髪留めに使っている青色の宝石を捉えていた。
あれ一個だけでも、この盗賊団には、十分な実入りだ。
このところ、五行山の盗賊団のことが完全に知れ渡ってしまい、「獲物」になる旅人もすっかりと少なくなっていた。
実入りがなければ、大勢いる盗賊たちを養っていけないし、養っていけなければ、こいつらは、またどこかで勝手に悪さをして、そこら中に迷惑をかけまくることになるだろう。
孫空女としては、この連中をしっかりと押さえておくためにも、あの久しぶりの獲物についてはちゃんとものにしたい。
「どうですか、姐御?」
子分のひとりが孫空女を見上げてささやいた。
孫空女は女だが背が高く、ここに集めている十数人の男たちよりも首が上にある。
彼らにとっては、目の前に拡がる景色は、ただの夜の闇らしい。
自分が人並み外れた視力を持つというのは、この盗賊団を乗っ取って、五行山の盗賊団の女頭領になってから気がついたことだ。
「若い女ふたりだよ……。巫女がひとり、護衛がひとりだ。剣を持っているのは護衛だけのようだね。ただ金子はそれなりに持っていそうだ。巫女はいい身なりをしているね」
孫空女はささやいた。
若い女という孫空女の言葉に、周囲の盗賊たちが舌なめずりをするようにざわめいた。
孫空女は大きな舌打ちした。
すると、慌てたように賊たちが静かになる。
まったく……。
この連中は、放っておくと、なにをするか本当にわからない。
孫空女が半年前に、以前の頭領を叩き出して頭領になる前は、本当に悪事の限り尽していたらしい。
旅人を奪って荷を奪うということだけじゃ飽き足らず、女とみれば、若かろうが年寄りだろうが犯し、男とみれば殺して、鍋の具にして食っていたという……。
もちろん、孫空女の代になってからは、そんな非道はさせていない。
だからこそ、この連中を大人しく従わせるためには、定期的に獲物を得て、ちゃんと分け前を与えなければならないのだ。
「いいね。勝手なことをするんじゃないよ。荷は奪うけど、命まで奪うつもりはないからね」
孫空女は念を押す。
もっとも、着ている物については脱がして奪わないとならないだろう。
若い女の身で、旅の途中で服を奪われてしまうのは恥ずかしい思いをするのかもしれないが、この界隈では、衣類は貴重品だ。
高値で売買できるし、それにあの巫女の装束は高価なものに間違いない。
可哀想だが、服は奪う。
悪名高い五行山を女ふたりで、しかも、山中の途中で野宿をしてすごそうなどというのが無茶なのだ。
それにしても……。
孫空女はさっきから続いているあの巫女と護衛の動作に首を傾げずにはいられなかった。
焚き火の後ろでは、巫女が太腿を露わに巫女服の下袍をまくり、脚を拡げている。
その巫女の股に、護衛の女が四つん這いになって顔を突っ込んでいて、ずっとなにかをやっているのだ。
こっちからでは、護衛女の顔が巫女の股間で動いているのしかわからないが、まるで巫女の股間を護衛女が口で奉仕をしているようにも見える。
だが、あのふたりは、女同士だ。
だから、孫空女の首を傾げるしかなかった。
まあいいか……。
孫空女は剣を抜いた。
それを合図に周りの十数人が一斉に剣を抜く。
「行くよ。声を出すんじゃないよ」
孫空女はゆっくりと女たちに向かって歩き出す。
ぞろぞろと、盗賊たちがついてくる。
この男たちが、若い女である孫空女を“頭領”だと認めるまでには、ひと悶着も、ふた悶着もあった。
しかし、孫空女は、武器でも素手でも、どんな男にだって武芸で負けることはない。
結局、盗賊たちは、強い孫空女を頭領と認めて、従うことになった。
それに至るまでには、孫空女を舐めて襲い掛かった者を完膚なきまでに叩き潰してやった。
やがて、焚き火の光でふたりの女の姿がはっきりと見えるまでの距離になった。
女護衛は、さっきの行為はすでに中断していて、巫女を守るように背で隠して剣を抜いている。
巫女の後ろは岩の壁だ。
盗賊たちが孫空女の合図で、ふたりの逃げ場を封じて、さっと取り囲む。
「大人しくしな。命までは奪いやしないよ……。抵抗しなければの話だけどね」
孫空女は剣をちらつかせながら言った。
それにしても、なんという美しい顔立ちのふたり連れの女たちだろう。
孫空女は思った。
剣を抜いている女護衛は、軍装を思わせる白い上下の服装をしていて、気が強そうな顔立ちをした栗毛の娘だ。
体つきは若い女としては平均的な体形だが、剣の構えから相当の手練れというのはわかる。
もうひとりの巫女は、ちょっと得体が知れない。
孫空女がこれまでに接したこともないような美人だというのは確かだが、年齢は若くも見えるし、逆にずっと年齢を重ねているようにも感じる。
服装は黒い巫女装束であり、黒くて長い髪をしていて、その髪をあの青い宝石のついた髪留めで束ねている。
「ほら、ご主人様……。言った通りじゃないですか……。出ましたよ。五行山の盗賊です……」
護衛女が巫女にささやいた。
「そのようだね。だけど、随分と可愛らしい顔をした盗賊女じゃないかい。身体が細い割には胸も大きそうだね。気も強そうだ。わたしの大好物だよ……」
巫女がにやりと笑った。
孫空女は驚いてしまった。
岩壁を背にしているふたりを囲んでいる盗賊は、二十人近くはいる。
それだけの人数に剣を向けられて、あんな風に落ち着いていられるというのは不気味だ。
しかも、あの巫女の目線には、なんともいえない好色なものを感じる。
孫空女も自分がそれなりの女だということは自覚しているので、男があんな視線を自分に向けるのは慣れているが、女からあんな風にみられるのは不気味だ。
とにかく、孫空女は余計な考えを振り払った。
女たちに剣を指し向ける。
「お前たち、服を脱ぎな。そうすれば、綺麗な身体で逃がしてやる。ただし、峠は越えるんじゃないよ。このまま逆戻りしな。峠を越えたら、別の盗賊団がいるからね。そいつらは、あたしのように優しくはないよ」
孫空女は叫んだ。
だが、女護衛はともかく、背後の巫女もまた落ち着き払ったままだ。
それが、なぜか不安を感じさせる。
どうにも、おかしい……。
それにしても、女巫女の孫空女を舐めまわすような視線……。
やな、目つきだ……。
すると、女巫女がくすくすと笑いだした。
「……ふふふ、女ながら、これだけの数の男たちを従えているんだ。さぞや、腕っぷしもあるんだろうし、もちろん、肝も据わっているに違いないさ。そうでなければ、こんなたちの悪そうな男たちの指図はできないだろうしねえ……」
女巫女が喋り続ける。
孫空女は、予想と異なる相手の反応に当惑するしかなかった。
「……さぞや、気性の激しいだろうさ……。自尊心も強いだろう……。わたしはねえ……。お前みたいな気の強い女を苛めて泣かせるのが大好きなのさ……。お前が屈辱で恥辱で、ぼろぼろと泣きべそをかくのを想像すると、股間がぎゅっとなって、一物も固く勃起してしまうよ」
女巫女が高笑いした。
孫空女は唖然とした。
「お前、頭がおかしいのかい──」
質問ではない。
確信だ。
この巫女は絶対に頭が変なのに違いない……。
「どうかねえ……」
女巫女がにやりと笑った。
孫空女はなぜか、その笑みにぞっとしてしまった。
理由はない……。
だが、これは危険だ。
絶対になにかある──。
生まれつき、勘だけはいい。
それが孫空女をここまで生かしてくれたといえる。
「うりゃあ──」
そのとき、ずっと巫女を守るように立っていた女護衛が、不意に飛び出してきた。
凄まじい剣撃だった。
だが、殺気がない……。
孫空女はそれを剣で受けるとともに、身体を捩じって体勢を変え、女護衛の剣を持つ腕の手首をぐっと掴む。
これで動けないはずだ。
女護衛の顔が驚きで染まるのがわかった。
いずれにしても、こうなってしまえば、こっちのものだ。
孫空女は手首を掴む手に力を入れた。
「うっ」
女護衛の顔が苦痛で歪む。
「ほう……。あの沙那が手もなく、捻られるとはねえ……」
女巫女が感嘆の声をあげた。
だが、その顔にはまだ余裕がある。
とにかく、こうなったらいくところまでいくしかない。
「お前たち、いいから、女巫女の服を引きはがしな。構わないから素っ裸にしていい。その代わり、傷はつけるんじゃない」
孫空女は沙那と呼ばれた女護衛を掴んだまま叫んだ。
どっちにしても、あの巫女のすまし顔は気に入らない。
ここで素っ裸にされれば、あんなすまし顔はできないだろう。
男たちがわっと歓声をあげて、女巫女に我先に駆け寄っていく。
「……あんた、逃げなよ……。こ、これは罠だから……」
すると、不意に沙那が小声でささやいた。
罠……?
孫空女は意外な言葉に訝しんだ。
「……あいつはあんたを気に入ったのよ……。言っておくけど、とんでもない変態巫女だからね……。悪いことを言わないから……。ひぎいいっ、あがあああ──」
途中までささやいていた沙那が、いきなり悲鳴をあげて、その場に崩れ落ちた。
孫空女は呆気にとられた。
「な、なんだ?」
そして、女巫女に視線を向け、そこに拡がっている光景に、さらに度肝を抜かれて叫んでしまった。