沙那と朱姫は、指定された城郭の居酒屋で荷を持って待っていた。
ちょっと高級感のある居酒屋で、椅子ではなく座敷のような場所で座って酒や食事 をとるかたちの場所だ。
隣の席とは衝立で仕切られていて、距離も少し離れている。
それで、ある程度の個室性が保たれるようになっている。
もっとも、衝立があるだけだから会話は聞こえる。
座れば身を隠せるというだけのことだ。
まだ、午後になったばかりの時間だというのに、もうかなりの酔客で溢れていた。
それなりの格式のようだ。
なんとなく、沙那や朱姫にとっては、場違いな場所のような気持ちになった。
しかし、宝玄仙からの伝言にあった“
とりあえずちょっとした食事と果実水を注文する。
「それにしても、ご主人様と孫姉さんは、昨夜はどこに泊ったんでしょうね?」
朱姫が言った。
「さあ……?」
沙那もそう答えるしかない。
そもそも、この居酒屋に入るために使った“金水蓮”というのはどういう存在だろう?
昨日の夜、ついに宝玄仙と孫空女は、宿に戻って来なかった。
孫空女がついているのだから、滅多なことは起こらないとは思ったが、城郭に国境越えの手続きを行っただけのふたりが、なかなか戻ってこないとなると、やはり心配になる。
以前もあのふたりの組み合わせで、
探しに行くべきか、待っているべきか迷っていると、最初の伝言が宝玄仙から届いた。
伝言を持ってきたのは、ひとりの女性兵であり、それにも沙那は驚いた。
その女性兵に事情を訊くと、宝玄仙と孫空女は、金水蓮というこの城郭軍の副長の客となり、その屋敷にいるらしい。
どういう経緯でそうなったかについては、その女性兵は知らなかった。
彼女も首を傾げているくらいだ。
しかし、事情を訊く限り、意気投合した様子で屋敷にやってきたということのようだったので、心配のほとんどは消えた。
その女性兵が持ってきたのは簡単な手紙だった。
今日はその上級将校の屋敷に宿泊するという趣旨の言葉が書いてあり、ほかには伝言はなかった。
二度目の伝言が届いたのは、そのまま夜がすぎた今朝のことだ。
やはり、昨日やってきた女性兵が、沙那と朱姫の泊る宿屋にやってきて、手紙を残していった。
女性兵によれば、宝玄仙と孫空女は、やはり、そのまま金水蓮という将校の屋敷で一夜をすごしたらしい。
手紙には、沙那と朱姫に、城郭までやってきて指定の居酒屋で待つようにという指示があり、店の名と金水蓮の名で席が取ってある旨のことが書かれていた。
それで、ここにやってきたのだ。
指示の時刻は、午後の始まりから三刻(約三時間)をすぎた時刻であったので、まだ一刻(約一時間)ほどの時間がある。
宝玄仙たちは、まだいないようだった。
「……まあ、もっとも、なにをしているかは予想がつくけどね、朱姫」
沙那は、宝玄仙の指示で運んできた葛籠に視線を送りながら言った。
宝玄仙の指示は、この居酒屋で待つようにというもののほかに、宝玄仙の荷の中から指定された
「この中身って、あたしたちには、あまり見せないけど、あれですよね……」
「そうね。あれね、朱姫」
沙那は応じた。
そして、嘆息する。
どうせ、また面倒なことをやり出したに違いない。
宝玄仙が持ってくるように指示をしてきた葛籠には、沙那たちには開けられないように宝玄仙は、『道術錠』をかけている。
だが、その中身を沙那は知っていた。もちろん、朱姫も知っているし、孫空女も知っているだろう。
その中身は、おびただしい数の性具だ。沙那たちを苛むありとあらゆる霊具が入っている。つまりは、宝玄仙の調教道具一式だ。
なんで、こんなものを持ってくるように指示をしてきたかの細部の状況は不明だが、おおよその見当はつく。
なにかの新しい愉しみを宝玄仙は見つけたに違いない。
宝玄仙の愉しみといえば、嗜虐に決まっている。
つまりは、宝玄仙は、この城郭で新しい嗜虐の獲物か、嗜虐の材料を見つけたということだ。
特にすることもなく、朱姫とふたりで簡単なものを腹に入れながら待っていた。
宝玄仙がやってきたのは、沙那たちが到着して一刻(約一時間)後だった。
ほぼ、宝玄仙が手紙で指示をしてきた時刻ぴったりだ。
宝玄仙と孫空女のほかに、軍服を着た女がいる。
歳は三十くらいだろうか。
美人だが風格があり、軍人らしい威厳もある。
この国の軍章には国都で接する機会があったから沙那にもわかる。
その女軍人が装着している軍章は、準将軍級のもののはずだ。
女中の案内により、三人は連れだってこっちにやってくる。
孫空女、その高級軍人、宝玄仙の順だ。
高級軍人は、彼女が金水蓮なのだろう。どことなく顔が赤い。
孫空女はなにか清々した表情をしている。
宝玄仙は愉悦に浸りきった表情だ。
ふたりに挟まれている金水蓮だけが暗い表情をしている。
沙那の頭に、直感的に金水蓮はなにか淫靡な悪戯をされているに違いないと思った。
沙那にも経験はあるからだ。
それに、あの宝玄仙の表情は、彼女が嗜虐に酔っているときのものだ。
どうやら宝玄仙の嗜虐の相手は、あの金水蓮のようだ。
それにしても、相手は準将軍級の高級軍人ではないか。宝玄仙も面倒な相手を見つけてきたものだ。
「沙那──、朱姫──」
孫空女がこっちを見て手を振った。
こっちも手を振り返す。
三人が座敷の前に着いた。
座敷に上がる前に履物を脱ぐ形式の場所だ。
宝玄仙と金水蓮が並んで上り框に座り、履物を脱ぐ態勢になった。
驚いたことに、孫空女が金水蓮と思われる軍人の前にしゃがみ込み、まるで従者のように軍靴を脱がしている。
高級軍人の女は、ただ、されるがままだ。
それに対して、宝玄仙は自分で履物を脱いでいる。
おかしな感じだ。
いつもなら、孫空女は宝玄仙の世話をするだろう。
もうひとりが、貴族であろうと将軍であろうと、孫空女には関係はない。
そんな貴賓を気にする孫空女ではないのだ。まるで、孫空女が金水蓮の従者のようだ。
考えてみれば、準将軍級の軍人であるのに、軍人としての従者を連れていない。
沙那と朱姫は、居住まいを正して三人を迎えた。
宝玄仙は躊躇いなく一番の上座に腰を降ろした。
その横に金水蓮。沙那たちは、孫空女を含めて、その宝玄仙と金水蓮に向かい合うように座った。
「こいつは、金水蓮だよ。この城郭軍の新任の副長だそうだ」
やっぱり、彼女が金水蓮なのだ。
それにしても、副長というのは驚いた。
事実上のこの城郭総軍を直接指揮する立場の女性だ。
かなりの権力を握っている女性といっていい。
そんな高級軍人と、なぜ、宝玄仙が知り合ったのか……。
「金水蓮よ」
金水蓮が小さく頭を下げた。
やっぱり、顔が少し上気している。
よく見れば、額にはかなりの脂汗が浮かんでいる。
絶対になにかを宝玄仙にさせられている。
沙那は少し不安になってきた。
宝玄仙の悪戯は見境がない。
こんな権力者を自分の嗜虐趣味の対象にしたりして、後で面倒なことにならなければいいのだが。
「こいつらは、沙那と朱姫だ、金水蓮。孫空女とともに、このわたしの旅の供にしている奴隷だ。性奴隷だよ」
宝玄仙が言った。
「あ、あの……、よろしくお願いします、金水蓮さん」
いきなり、性奴隷というような紹介をした宝玄仙に少したじろぎを覚えながら沙那は言った。
「朱姫です」
朱姫もまた、戸惑った表情をしている。
その時、数名の女中が料理と飲み物を運んできた。
卓の上に、所狭しと料理や飲み物、それから菓子や果実などが並んでいく。
「遠慮しなくてもいいよ、こいつの奢りだ。ねえ、金水蓮?」
宝玄仙が言った。
「うっ」
金水蓮がなにかを言おうとしたときに、急に小さな声をあげて、身体を震わせた。
なにかに耐えるような表情だ。
咄嗟に、淫靡な悪戯だと思った。
宝玄仙が金水蓮の身体になにかをしているに違いない。
あれは、望まない官能を与えられたときに、苦痛と淫情の表情だ。
しかし、眼の前には、まだ数名の女中たちが卓の支度をしている。
そこで、宝玄仙は金水蓮を苛んでいるのだ。
「ほ、宝玄仙さん……。こ、ここでは……」
金水蓮が苦しそうに言った。
「賭けに負けたお前が、なにか言う権利があると思っているのかい、金水蓮?」
宝玄仙がにやついている。
賭けとはなんだろう。
金水蓮はしばらくのあいだ、歯を食い縛ってなにかに耐える表情をしていた。
やがて、女中たちが卓の準備を終えると、宝玄仙が、給仕はいらないから声をかけるまで近づくなと、女中たちを追い払った。
それと同時に、金水蓮は、急に脱力したようにぐったりとなるとともに、ほっとした表情になった。
宝玄仙の責めが中断されたのに違いない。
「ご主人様……あ、あのう、金水蓮様は、どうして……?」
朱姫だ。朱姫もまた、金水蓮の不自然さに気がついたのだろう。
「金水蓮に訊いてみな」
宝玄仙がにやにやしたまま言った。
「わ、わたしに説明させるのかい、宝玄仙さん?」
金水蓮が抗議をするような表情をした。
すると、宝玄仙がかすかに手元を動かした気がした。
「あっ……。くっ……つ、強いよ……。わ、わかったから……。説明……ああっ……する……から……」
金水蓮は身悶えしながら言った。
「早く、説明するんだよ。さっさと言い終わらないと、振動を強くするよ」
宝玄仙が言った。
「し、『振動片』という布を張られている……」
「『振動片』──」
沙那は思わず声をあげてしまった。
『振動片』というのは、薄い小さな一寸四方の四角い布で、身体の敏感な部分を包み込み、道術ひとつで好きなように振動させることができるという霊具だ。
霊具の性具としては一般的なものだ。
「くっ──。も、もうやめて……」
金水蓮が小さな悲鳴をあげて、卓に突っ伏した。
かなりの刺激を受けているようだが、懸命に口から声が漏れるのを耐えている感じだ。
「やめて欲しければ、ちゃんと説明するんだよ。どこと、どこに『振動片』を付けられているんだい、金水蓮?」
宝玄仙が言った。
「ち、乳首……と……に、肉芽──はあっ……」
最後の嘆息は、おそらく振動がとめられてほっとしたときの声だ。
しかし、さっきから見ていると、宝玄仙は金水蓮に与える『振動片』の刺激を動かしてはとめ、とめては動かしというようにやっているようだ。
沙那の経験だと、あれは苦しい。
どんどん官能が蓄積されて、爆発しそうになる。
それを繰り返されると、思考力が失われ、自分が自分でなくなる淫乱な雌になってしまうのだ。
金水蓮も、ここまで来るまでにかなりその洗礼を受け続けているのだろう。
もう、溜まった快感で呆けたような表情をしている。
「ご主人様、説明してもらえますか?」
沙那は言った。
「ああ、わかっているよ、沙那。ただし、この五人で固めの杯をしてからね」
宝玄仙はそう言うと、卓の上を見回し、小さなお猪口をとった。
「盃って、あたしらは飲めないよ、ご主人様」
孫空女だ。
「ねえ、孫空女、この状況はどういうことなの?」
沙那は隣の孫空女に言った。
「う、うん、あのね……」
「話は後だよ、お前たち。固めの盃と言ったろう。ただし、宝玄仙流のね──。まずは、わたしから見本を見せるよ」
宝玄仙は、お猪口を床に置くと、周囲を見回して、自分が衝立の影に隠れているのを確認してから、驚いたことに両手を
そして、腰を浮かして足先から下着を外した。
沙那は眼を見開いた。
「ほら、しまっておいておくれ、朱姫」
宝玄仙がその下着を卓越しに、朱姫に放り投げた。
朱姫が慌てて、それを空中で受け取り、さっと丸めて隠した。
そして、宝玄仙は、今度はお猪口を手に取るとそれを手で持って、下袍の下に入れた。さらに、もう一方の手も下袍の下に差し入れて、動かし始める。
沙那は驚愕した。
宝玄仙は、いまここで自慰をしているのだ。宝玄仙の美しい顔がすぐに真っ赤になり、鼻孔が膨らんだ。
やがて、喘ぎ声に近いように小さな呼吸音が起こり、すぐに、身体を縮めるような仕草をしてぶるぶると震えた。
両手を下袍から出す。
お猪口の中には、粘性の白濁液が少しだけ溜まっている。
宝玄仙の愛液だ。
沙那は唾を飲んだ。
ほかの者も驚愕の表情で黙って宝玄仙のやったことを見ていた。
宝玄仙は、自分の淫液の入ったお猪口を卓の上に置くと、右手を朱姫にぐいと伸ばした。
二本の指にべっとりと宝玄仙の愛液がついている。
「きれいにしな、朱姫」
宝玄仙が言った。
「は、はい、ご主人様」
朱姫が慌てて、口を伸ばし、宝玄仙の汚れた指を舐める。
「終わりました……」
口できれいにした後で、朱姫は自分の服の袖で舐めることで宝玄仙の指についた自分の唾液を拭いた。
「……ほら、やり方はわかったろう? このお猪口に順番にお前たち四人の淫液を入れな。それが終わったら、混ぜ合わせて、五人で分けて、それを飲むんだ。それが、宝玄仙流の固めの杯さ」
宝玄仙は笑った。
沙那は呆れた。
なんという悪趣味な行為だろう。
だが、宝玄仙自ら、こんな場所で自慰をやってみせたのだ。
沙那たち供ができませんで済ませられるわけがない。
沙那は諦めた。
朱姫も孫空女も同じ表情だ。
ふたりとも小さく嘆息した。
金水蓮だけが、信じられないというように眼を大きく開けて驚いている。
まあ、金水蓮の反応が常人の反応だろう。
宝玄仙の思いつきの悪戯には、時々ついていけないと思うことがある。
「最初は朱姫だ。お前も下袍だから簡単だろう。このお猪口に、お前の淫液を足しな」
宝玄仙が朱姫に、さっきのお猪口を渡した。
朱姫は黙ってそれを受け取り、すぐに自慰を始める支度を始めた。
「どこから、話せばいいかね……。わたしと孫空女がこいつと会ったのは、昨日の昼間さ。手形の手続きが終わって、お前たちの待つ宿屋に戻る途中でね……」
朱姫が自慰をしているのを余所目に、宝玄仙がこれまでの成り行きを語り出した。
つまりは、宝玄仙と孫空女は、役所からの宿屋に向かう帰路で、賄賂をせびろうとした腐った軍の一隊に脅迫をされたようだ。
放っておけば、孫空女が数十名程度の軍くらい圧倒したに違いないが、賄賂を求めた指揮官をその場で処断し、隊の撤収を命じたのが、たったひとりで赴任先の
彼女は、偶然、その現場に遭遇し、副長の権限で、その不良将校を処断したようだ。
その後、なぜか、金水蓮と孫空女が一騎打ちということになり、しかも、宝玄仙の説明によれば、孫空女が負ければ、宝玄仙と揃って金水蓮に抱かれるために身体を提供するという馬鹿げた条件にしたらしい。
そして、孫空女が負け、沙那たちの待つ宿屋には向かわずに、そこから、再び城郭に戻り、ふたりで金水蓮の屋敷に向かったというわけなのだ。
沙那は呆れてしまった。
「本当は、あたしが勝ったんだよ。とどめを刺そうとしたときに、ご主人様が淫靡な術であたしを動けなくしたんだ」
孫空女が言った。
「なるほどね」
そんなことだろうと思った。
身のこなしだけである程度の実力はわかる。
金水蓮の場合は、宝玄仙に陰湿な魔具を敏感な場所につけられているので、はっきりとはわからないが、少なくとも孫空女が負けるような相手とは思えない。
さっき、聞いたような条件であれば、面白い方を好む宝玄仙が強引に孫空女を負けさせたのは間違いない。
「まあ……そうだよ」
金水蓮が孫空女に笑みを浮かべた。
「ああ……」
不意に朱姫が甘い声をあげた。
視線を向けると、朱姫がお猪口を下袍から出そうとしているところだった。
少しだけ、淫液の量が足されている。
どうやら、終わったようだ。
お猪口が沙那に回ってきた。
しかし、沙那は、宝玄仙や朱姫とは違い男がはくような
ふたりのように、隠しながら自慰をするということができない。
衝立で隠れているとはいえ、ここは人の多い居酒屋だ。
個室というわけではなく、ただ、陰になっているだけだ。
酔客の声だってたくさん聞こえてくる。
つまりは、こちらの声や物ずれの音も聞こえるだろう。
衝立だって、背の高いものではないので、上から覗き込めば、なにをしているのかは丸わかりだ。
女中だって、いつ戻るかわからない。
さすがに躊躇してしまう。
「なにやっているんだよ、沙那──。はじめないか──。女中が来たところで、どうせ女同士じゃないかい」
宝玄仙が叱咤した。
「は、はい」
沙那は慌てて膝立ちになった。
「孫空女、お願い……。見張っていて……」
それだけ言った。
「う、うん……。あたしのときもね、沙那」
孫空女が言った。
沙那は立膝になった。
下袴を下着ごと、膝まで降ろす。
今更、この四人の中で裸身が恥ずかしいということはない。
だが、今日は、金水蓮という客がいるために、大きな羞恥を感じる。
片手で股下にお猪口を構え、もう片方で肉芽を擦りはじめる。
いく必要はないのだ。
少しだけ淫液を注ぐだけだ。だが、お猪口に入るためには、膣から分泌された淫液が溢れて、外に垂れ出るくらいまでは出さないといけない。
自慰のやり方はありとあらゆる方法を教え込まれた。
沙那は、一番最初に教わったやり方でやることにした。
つまりは、二本の指で肉芽を挟み、最初はつるりと被っている皮をめくる。そして、普段は隠れている鋭敏な場所を外気に触れさせて、指で擦るのだ。
「んふっ」
たちまちにうちに快感がやってきた。
初めて宝玄仙に自慰をさせられたときには、こんな場所の皮がめくれるということは知らなかったし、めくるという感覚もよくわからなかった。
いまは、こんなに感じる場所になった。
まだ、ほんの数擦りにしかすぎないのに、もう爆発しそうな快感が全身を駆け巡っている。
「ああっ──」
沙那は声をあげた。
「さ、沙那、声が大きいよ──」
孫空女がびっくりした声で言った。
沙那は羞恥で顔が真っ赤になるのを感じた。
気持ちよさに酔ってしまって、ここがどこだか一瞬だけ忘れていたのだ。
それに、いつもは宝玄仙の結界の中でしかやらないので、声を我慢するということがない。
だから、我を忘れて、いつものように嬌声をあげてしまったのだ。
宝玄仙が笑っている。
沙那は、もう顔をあげることができずに、お猪口に淫液を注ぐという行為に没頭することにした。
やがて、震えるような快感の波が沙那を襲った。
懸命に歯を食い縛ったが、少しは声は出てしまう。
かなりの深い絶頂だ。
しかし、確実に膣から溢れ出た淫液がお猪口に足されるのは感じた。
「沙那、ひとりで、そんなに入れたら、後の二人が困るじゃないか」
宝玄仙がからかうような声をあげた。
沙那は恥ずかしくて、なにも言い返せなかった。自分は汁が多いのだろうか。
次に、孫空女が沙那からお猪口を受け取り、沙那と同じような恰好で下袴と下着を降ろして自慰を始めた。
孫空女は、一番通路側なので、沙那は孫空女の反対側の横に移動して、通路と孫空女の間に座り直した。
そして、近づく者がいないかを見張る。
しばらくして、孫空女も小さな声をあげて身体を震わせた。
お猪口が孫空女の股下から卓の上に戻される。
四人分となると、もう、かなりの量がそこに溜まっていた。
「さて、最後は客人の金水蓮だ……。もっとも、お前の場合は、もう自慰をする必要もないかもしれないね。股なんかもうぐっしょりだろう?」
宝玄仙がからかうような口調で言った。
「で、でも、わたしは……」
金水蓮が困ったような表情をした。
「ああ、そうだったね。お前は縛られているんだったよ──。朱姫、こっちに来な。金水蓮の世話をするんだ」
宝玄仙が朱姫にそう言うと、朱姫はすぐに立ちあがって、金水蓮の横に移動していく。
「金水蓮さんは、どうかしたの、孫空女?」
沙那は言った。縛られていると宝玄仙が言った気がするが、別に拘束をされている感じはない。
「ほら、あれだよ、
孫空女が言った。
「そういうこと──」
沙那は納得いった。
『透明の糸』というのは、そもそも、女人国の国都で、女王壱都と宝玄仙が女王争いをしたときに、壱都の罠に嵌った宝玄仙が施された拘束具だ。
絶対に切れない細い糸であり、拘束を終えた後に道術でその糸を透明にしてしまうことができる。
だから、周りの人間には、その人間が拘束をされているようには見えないのだ。
しかも、例えば、両手首を『透明の糸』で縛られていると、自分では手首を離すことはできないものの、他人が動かせば、簡単に手首は離れ、他人の力がなくなれば、また、手首は元の束ねた状態に戻るという仕掛けもある。
宝玄仙は、それを壱都に装着されて、女王争いの儀に出場させられたが、壱都を無力化した後、この霊具は、相手を拘束したまま、服を脱がせたり、着させたりすることができると喜んでとりあげたのだ。
宝玄仙の頭の中は、本当に、嗜虐のことでいっぱいなのだと呆れたものだった。
「あら、本当ですね。これだったら、手で擦る必要はないかも……。下袴のお股の部分がぐっしょり……」
金水蓮の横に移動した朱姫が、卓の陰に隠れていた金水蓮の股間に視線を送り言った。
沙那もちらりと金水蓮の下袴に目をやった。
金水蓮の下袴の股間は、気の毒なくらいに濡れほそび、厚い布越しに丸い染みができている。
「じゃあ、下袴を脱がせますね」
朱姫が金水蓮の下袴に手をかけようとした。
「お、お願いだから、早くしてよ。こんなところを誰かに見られたら……」
金水蓮は不安な表情をしたが、淫液をお猪口に溜めろという宝玄仙の理不尽な命令には、逆らうつもりはないようだ。
そして、金水蓮の股間は本当にびしょびしょだった。
肉芽には、肉芽を包んで丸まっている『振動片』が半透明になって張り付いている。
淫裂から溢れ出た愛液が、秘肉も恥毛も股間の内腿もびっしょりと濡らせている。
恥毛に隠れた女陰は真っ赤に充血して、見ているだけで熱さを感じる気がした。
朱姫が金水蓮の股間の下にお猪口をあてがう。
「朱姫、お前に任せるよ。『振動片』にかけた道術は、強いものにはしてないよ。お前でも道術をかけられるはずさ」
宝玄仙が朱姫に言った。
「はい──じゃあ、金水蓮様、歯を食い縛ってください。声が漏れ出ないように」
朱姫が言った。
あれは、朱姫が嗜虐心を発散できる嬉しさに酔っているときの声だと沙那は思った。
本当は、嗜虐癖が強い朱姫は、宝玄仙によって、いつも被虐の扱いを受けている。
だから、本来の嗜虐側で性欲を発散できるときは、いまのように、妖しげな魔性の表情を浮かべる。
あの顔のときは、朱姫は、宝玄仙以上にたちの悪いことが多い。
「あふっ──」
金水蓮が震えだした。
『振動片』が動き出したのだ。
すっかり熟れきっている金水蓮の股間は、ちょっと振動片を動かしただけで、ぷたりぽたりとお猪口に淫液を追加した。
それでいいはずだ。
しかし、朱姫は、なぜかやめようとしない。
「なかなか、出ませんね。もう少し、振動を強くしていいですか?」
そんなことを言っている。
宝玄仙はにやにやしてそれを眺めている。
また、始まったと、沙那は思った。
「そ、そんな……ああ……」
「でも、いつまでもこうしているわけにも──。そろそろ、女中さんも様子を伺いに来るんじゃないですか?」
「わ、わかったよ──。つ、強く……して……」
金水蓮は言った。
朱姫がにやりと微笑む。
「んんふうっ──」
金水蓮がびっくりしたような声をあげた。
かろうじて叫ぶことだけは防いだようだ。卓越しに見ている沙那がはっきりとわかるくらいに、半透明になった『振動片』が、右に左に、上に下にと動きまわっている。それももの凄い勢いだ。
おそらく最大振動だ。
あの振動を乳首にも加えられているのだろう。
「んくううう」
金水蓮の身体が反り返る。
しかし、その瞬間に『振動片』がぴたりと停止した。
朱姫の得意の“焦らし”だ。
本当にこの半妖の娘は……。
放っておけば、これを果てしなく繰り返すだろう。
「朱姫、悪戯はやめなさい。もう、溜まったでしょう」
沙那は冷たくたしなめた。
さっきの刺激だけで、金水蓮は、もう十分な淫液をお猪口に入れていた。
朱姫が玩具を取り上げられた子供のような不満そうな表情をこちらに向けた。
「まあいいよ。後の愉しみということもあるさ。朱姫、金水蓮の服を整えてやりな」
宝玄仙が言った。
「はい」
朱姫は、金水蓮のびしょびしょの股間をそのままにして、元通りに下袴を整えさせた。
「さて、じゃあ、固めの杯だ」
宝玄仙は、お猪口に口をつけると中に溜まった五人の愛液を少しだけ飲んだ。
それを金水蓮の口に持ってくる。手の使えない金水蓮は、そうやって他人の手を使って飲食をするしかないのだが、さすがに嫌そうだ。
しかし、文句を言わずにちょっとだけ口に入れた。
そして、気持ち悪そうな表情で飲み干す。
次いで、朱姫、孫空女、最後に沙那が飲み干した。
「じゃあ、食事しようか。朱姫は、食べながら、金水蓮の給仕をしてやりな」
宝玄仙が言った。どうやら、拘束を解いてやるつもりはないようだ。
沙那は、口の周りを準備されていた手拭いで拭きながら口を開いた。
「そろそろ、教えてください、ご主人様。どうして、金水蓮さんとご主人様が、こういうことになっているのですか?」
「こいつは、賭けに負けたのさ」
宝玄仙が盃をさっと沙那に出した。
沙那は卓から酒の入った瓶をとって、それに注ぐ。
「賭けってなんですか?」
沙那は言った。
「ふたりで手管を尽くして、性の技術で相手を屈服させるという勝負さ。そいつに負けて、この金水蓮はわたしの調教を受けることになったのさ」
宝玄仙は笑った。
金水蓮は少しだけ悔しそうな表情をした。
「なんで、そんな勝負をすることになったのですか?」
沙那は何気なく訊いた。
「こいつが孫空女を嫁に欲しいと言ったのさ。だから、わたしと性の技で勝負して勝ったら、くれてやると言ったのさ。そして、負けたらわたしの調教を受けるという条件でね。まあ、このわたしが負けるわけがないからね。ちゃんと、いき狂いにしてやったよ」
宝玄仙は言った。
「き、聞いていないよ。あたしを賭けたってどういうことさ、ご主人様。負けたらどうするつもりだったのさ」
孫空女だ。
どうやら、孫空女の知らない間に、そんな勝負が行われたようだ。
孫空女はくだらない賭けの商品に自分がされたことが気にいらないようだ。
「ぐずぐず言うんじゃないよ、孫空女。わたしが負けるわけがないじゃないか」
「なに言ってんだよ、ご主人様。ご主人様なんか、ほかのところは大丈夫だけど、お尻を責められたら、このあたしが相手でも簡単に翻弄されるじゃないか。なんで、そんな危ない賭けをやったのさ──」
「お尻?」
声をあげたのは、朱姫から肉を食べさせてもらっていた金水蓮だ。
どうやら、そんな恥辱的な行為を甘んじて受けているのは、勝負に負けたという自負心によるもののようだ。
「あんたの弱点は、お尻なのかい?」
金水蓮が悔しそうに言った。
「いまさら、知っても遅いだろう」
宝玄仙がそう言いながら、少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめた。