※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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204 女主人の提案

「や、やだっ──は、放してよ──いやだぁ──」

 

 金水蓮(きんすいれん)は、屋敷の外の従兵の詰所まで聞こえるのではないかと思うような大声を出した。

 

「うるさいねえ、悲鳴で従兵を呼ぶつもりかい、金水蓮──。沙那、こいつの口に猿ぐつわを噛ませな」

 

 宝玄仙は声をあげた。

 金水蓮の屋敷だ。

 ここに三人の供とともに逗留するようになって十日余りが経っている。

 

 金水蓮は、毎日出仕して、副長として兵を錬成する日々を続けている。金水蓮によれば、大元府の兵はどうしようもないくらいの軟弱な兵らしい。

 それを精鋭に変えるべく、火の出るような調練を金水蓮は兵に課している。

 これまでのぬるま湯のような軍人生活を一変させ、いきなり激しい調練をやり出した金水蓮を恨む怨嗟の声が軍の中に蔓延しているのは金水蓮も知っているようだ。

 それでも、金水蓮は、兵を絞る手を緩めるつもりはないらしい。

 

 そのような鬼の調練を続ける城郭軍の副長としての顔の一方、夜に屋敷に戻れば、いまのように宝玄仙の調教を受ける日々が続いている。

 宝玄仙の性奴隷としての調教に泣き喚く日々も、兵に厳しい調練を要求する金水蓮と同じように、金水蓮のもうひとつの真実の顔だ。

 沙那が慌てて駆け寄って口の中に布を押し込む。

 

「ごめんなさい、金水蓮さん」

 

 金水蓮の口の上から、沙那が紐状にした布を噛ませて後頭部で結ぶ。

 

「余計なことを言うんじゃないよ、沙那」

 

 宝玄仙は怒鳴った。

 猿ぐつわを終えた沙那が慌てたように寝台から降りる。

 いま寝台に乗っているのは、金水蓮と宝玄仙だ。

 この寝台は、すでに宝玄仙の手により霊具に変えられていた。

 つまり、寝台の上は、宝玄仙が自由自在に操作できる力場になっている。

 宝玄仙の道術により、この上に載せられた者は、宝玄仙の手でなければ姿勢を変えることができない。

 いまの金水蓮は、寝台で全裸にされてうつ伏せになり、膝を立てて尻を高くあげた格好で固定されている。

 両手は寝台につけた頭の横に置かれていて離すことはできない。

 

 そういう格好で、やはり裸の宝玄仙に尻を調教されているのだ。

 宝玄仙の手には、尻穴調教用の霊具である『尻棒』がある。

 

 そして、沙那と孫空女と朱姫は、寝台の下の床に正座で待機させている。

 宝玄仙が金水蓮を犯すのを見物させているのだ。

 三人とも全裸であり、宝玄仙が激しく金水蓮を責めるのを悄然として見ている。

 

「んぐ、ぐぐ……」

 

 宝玄仙は、尻穴用の張形を挿れている金水蓮の菊門の内側を荒々しく抉った。

 金水蓮の顔に苦悶の表情が浮かぶとともに、眼に涙がこぼれた。

 

「もう少し、開かせるかね」

 

 宝玄仙は跪いている金水蓮の片脚を外側めがけて思い切り蹴った。

 金水蓮の脚は大きく開き、そして、寝台の発する道術の力により、その開脚した状態で固定される。

 

「たかだが、このくらいの太さの張形に音をあげてどうするんだよ、金水蓮──。こいつら、三人には、以前、この宝玄仙の腕を入れてやったこともあるんだよ。もっとも、そのときには、さすがに尻の穴が裂けてしまって、道術で再生してやらなければならなかったけどね」

 

 宝玄仙は笑った。

 組み伏せている金水蓮の身体から新しい汗が噴き出した。

 それが張形による刺激によるものか、宝玄仙の言葉が与える恐怖によるものかはわからない。

 

「さて、じゃあ、もう少し太くするかね」

 

 宝玄仙は、金水蓮の肛門から張形を一度抜き、それに道術を込めた。

 霊具である『尻棒』が二寸(約六センチ)の太さになる。

 さらにその表面にじわっと潤滑油が滲み出る。

 

「次は、これだよ──。尻の力を抜くんだよ」

 

 宝玄仙は、顔を伏せている金水蓮の髪を掴むと、思い切り引きあげた。

 そして、金水蓮に見えるように、これまでの倍の太さに変わった『尻棒』を翳す。

 

「んぐ、んぐっ……」

 

 金水蓮が髪で引きあげられている首を横に振った。

 拒絶をしているのだろう。しかし、猿ぐつわに阻まれた口は、その哀願の言葉をただの呻き声に変える。

 これからさらに過酷になる責めに震えはじめた金水蓮に満足した宝玄仙は、金水蓮の髪を離した。金水蓮の顔が、再び床に伏せられる。

 

「ご、ご主人様……、あ、あのう……。勘弁してあげたら……」

 

 沙那が寝台の下からおずおずと言ってきた。

 

「なに言ってんだよ、沙那。わたしは、まだ、ほとんど、なにもしていないよ。ただ、『尻棒』で少しばかり、こいつの尻を擦ってやっただけさ。それに、結構、こいつも素質があるようだよ。嫌がっているようだけど、尻穴も満更でもないようさ。いたぶっているのは尻だけなのに、しっかりと前の穴はお汁でびしょびしょになっているよ」

 

 宝玄仙は、そう言うと、手を伸ばして、びっしょりとなっている金水蓮の股間から淫液をすくい取った。

 

「んぐうっ──」

 

 いきなり股間の刺激を受けた金水蓮が身体を仰け反らせる。

 宝玄仙は、二本の指についた金水蓮の愛液の粘りを寝台の下の三人に見せた。

 三人が小さく声をあげるのがわかった。

 

「さて、いくよ、金水蓮。さっき見せた太さだからね。力を入れると怪我をするよ」

 

 宝玄仙は、太さを増した『尻棒』の先で、金水蓮の無防備な菊口の周囲を揉みしだいていく。

 

「くうっ──んぐう──」

 

 この十日、従順として宝玄仙の調教を受け続けた金水蓮だったが、さっきの太さは金水蓮の想像を超えていたのだろう。

 張形から逃れようと、汗にまみれた双臀が左右に動く。

 身体の下の乳房が波打つ。

 金水蓮の菊蕾はしっかりとしぼんだままだ。

 肛門を抉っている張形に、ほんの少しだけ力を入れる。

 

「んぐうっ──」

 

 金水蓮が苦痛の声をあげたが、宝玄仙には、その声に快感の響きが混じるがわかった。

 宝玄仙は、『尻棒』を持つ反対の手を金水蓮の股間に移動させた。

 

「んんんんんん──」

 

 肉芽をころころと転がすと、金水蓮の身体が真っ赤になり激しく震えだす。

 あっという間に、金水蓮は、股間から淫液がしたたり落ちるくらいに蜜を溢れさせた。

 それとともに、すぼんでいた肛門がわずかに緩んで、小さな花のように開く。

 宝玄仙は、さらに『尻棒』に力を込め、奥に向かい入れる。

 

「んぐうっ」

 

 金水蓮の肛門がまた緊張を取り戻す。

 十日も尻を調教したのだ。もう、すっかりと妖しい快感を尻で感じるようになっているはずだ。

 金水蓮が、尻から受ける身体の火照りをもうどうすることもできなくなっているのも知っている。

 しかし、それでも排泄行為にしか使わない場所に、あの張形を受け入れるのは抵抗があるのか、しっかりと意識が覚醒している状態で、尻を責められるのを受け入れることは難しいようだ。

 

「何度も言わせるんじゃないよ、金水蓮。張形を受け入れるときには、息を吐くんだよ。尻が壊れてもいいのかい」

 

 宝玄仙は罵声を浴びせる。

 その瞬間は金水蓮も息を吐くのだが、すぐに緊張で息が止まり、肛門が縮まる。宝玄仙は、何度も怒鳴らなければならなかった。

 

「仕方ないねえ……。誰にしようか……」

 

 宝玄仙は、全裸で正座している朱姫、沙那、孫空女に視線を送る。

 そして、孫空女に目を留めた。

 

「孫空女──。あがっておいで」

 

 宝玄仙は言った。

 

「あ、あたし?」

 

 突然の指名を受けて、戸惑いの表情をしながらも、孫空女は寝台にあがってきた。

 その孫空女の両手を『拘束環』を使って背中で拘束する。

 

「な、なにさ、これ、ご主人様?」

 

 いきなり、後ろ手にされた孫空女が戸惑っている。

 

「金水蓮の緊張をほぐしてやりな、孫空女」

 

「ほ、ほぐすって……」

 

 孫空女はなにをしていいのかわからないようだ。

 

「なんでもいいから、金水蓮の身体を責めて気をやらせるんだよ。気をやれば、身体もほぐれる。このくらいの『尻棒』もすっと受け入れるさ」

 

「わ、わかった……。でも、だ、だったら、これを外してよ、ご主人様」

 

 孫空女は背中で拘束された腕を揺らせた。

 

「なんでだよ?」

 

 宝玄仙は込みあがる愉悦に思わず微笑みを洩らしてしまう。

 

「手が使えなきゃ、なにもできないよ」

 孫空女は言った。

「達者な口があるじゃないか、孫空女──」

 

 宝玄仙は笑った。

 孫空女を拘束していたのも、孫空女を指名したのも、別になにか魂胆があったわけじゃない。

 単に気紛れだ。

 しかし、そういえば、金水蓮が宝玄仙の調教を受けるきっかけとなったのは、この金水蓮が孫空女の武術と性愛に弱い敏感な身体を気にいって、宝玄仙に身請けさせて欲しいと頼んだことから始まっているのだと思い出した。

 孫空女に手ではなく、舌で責めさせようと決めたのも、孫空女が寝台にあがる寸前のことだ。

 

「わ、わかったよ」

 

 孫空女は、金水蓮の開いている股の下に潜り込んだ。

 そして、上半身を後ろ手の腕で起こして、金水蓮の股間を舐めはじめる。

 

「んふんんっ──」

 

 金水蓮の身体が跳ねる。

 孫空女の舌が、金水蓮の股間を動きまわっている。ぐちょぐちょという孫空女の唾液と金水蓮の噴き出す愛液の混じり合う破廉恥な音がだんだんと大きな音を立てる。

 金水蓮の欲情の度合いが上がるにつれて、菊皺がしっとりと濡れ、次第に開いてきた。

 宝玄仙は、『尻棒』で菊蕾を突きながら、そこが十分な柔らかさを得はじめたのを悟った。

 

 宝玄仙は、しばらくそのままで待った。

 孫空女は一生懸命に舌を動かして、金水蓮の股間への奉仕を続けている。

 その懸命さが健気で本当に可愛く感じてしまう。

 寝台に張りついている金水蓮の足指が反り返っては曲がり、曲がっては反り返る。

 孫空女の顔の上の金水蓮の股間が発する水の音はだんだんと激しくなる。

 

「んふっ、んふっ、んふっ──」

 

 金水蓮は猿ぐつわの奥から激しく声を出し始める。

 孫空女が金水蓮の女陰に口づけをするように吸い始めたのがわかった。

 

「んぐうっ──」

 

 ひと際大きな声で呻くと、金水蓮は身体を限界まで仰け反らせた。

 それでも、孫空女は舌で責めるのをやめない。

 やがて、金水蓮の身体の痙攣が波のように小さく繰り返すようになった。

 

「んふうう、んぐううううっ」

 

 宝玄仙は、『尻棒』を金水蓮の肛門にずぶずぶと突き挿した。

 金水蓮は声をあげ続けているが、それは苦痛による悲鳴だけのものではない。

 快感に吠えているのだ。

 やがて、すっかりと根元近くまで『尻棒』は埋まった。

 

「いいかい、金水蓮。女陰の快感が比較的短くて閃光のように弾ける快感なら、肛門で受ける本当の快感は、それがじっくりと持続する快感だ。圧倒的な強い快感がしばらくの間続くんだ。お前も病み付きになるよ」

 

 宝玄仙はそう言って、今度はゆっくりと『尻棒』を抜いていく。

 金水蓮の身体の乱れが大きくなる。

 尻への愛撫は、挿入するときよりも抜くときのほうが圧倒的に強い。

 金水蓮はえぐり取られるような快感に圧倒されているに違いない。

 

「何回目に無様にいくんだろうね」

 

 宝玄仙は先端近くまで抜いた『尻棒』を今度はまた沈ませ始める。

 孫空女の股間への舌責めは続いている。

 何度か『尻棒』を入れたり、出したりすることを繰り返した。

 もう、圧迫感はない。金水蓮の肛門は二寸(約六センチ)ほどの太さもある張形を抵抗なく受け入れている。

 やがて、金水蓮はもの凄い痙攣をしはじめたかと思うと、猿ぐつわの下で大きく叫び、がくがくと腰を大きく跳ねあげた。

 

 

 *

 

 

「しばらく軍営に寝泊りするだって?」

 

 宝玄仙は言った。

 金水蓮の屋敷の中の浴室の湯桶の中だ。

 女五人の淫行が終わって、いまは、全員で湯桶に浸かっていた。

 五人入ればさすがに窮屈で、五人の肌と肌、乳房と乳房が密着している。

 しかし、それは、それで心地いい。

 

 金水蓮の尻を責めたてて、気絶寸前まで連続絶頂させた後は、孫空女、沙那、朱姫の順番で寝台にあげて、ひとりずつ数回、昇天させた。

 最後には四人に宝玄仙を舌で奉仕させ、宝玄仙も絶頂して果てた。

 そして、あらかじめ準備してあった浴室にやって来たのだ。

 

 もう、夜も深い。

 五人で身体を擦り合って、ここでもお互いに気をやりながら、五人で代わる代わる痴態を交換した。

 そして、やっと落ち着いた状態になり、湯船に全員で入ったのだ。

 しかし、湯船の中で、金水蓮が明日からは、しばらく、軍営に留まらなければならないので、夜も屋敷には戻って来られないと語りだした。

 

「も、もちろん、その間は、この屋敷は自由に使っていいし、従兵たちにはよく言っておくから……」

 

 金水蓮は言った。

 その表情は、切なそうで、なんだか残念そうな口調だ。

 多分、その通りなのだろう。

 この十日、金水蓮には、どっぷりとした快楽浸けの生活を与えてやった。いまでは、被虐は金水蓮の新しい性癖として、すっかりと身についてしまっている。

 

「この宝玄仙との性愛が嫌になったのなら、そう言えばいいじゃないか、金水蓮。わたしらは旅の女だ。いつでも出ていって、旅を再開するよ」

 

 宝玄仙はわざと言った。

 

「そ、そんなことは言っていないよ。わたしだって、みんなとここですごしたいのだよ。だけど、そうも言っていられなくて……。わたしにも任務があるし……」

 

 金水蓮は言った。

 

「任務というのは、黒賊のことですか、金水蓮さん?」

 

 沙那だ。

 

「そうだよ、沙那」

 

 金水蓮は頷いた。

 

「そう言えば、城郭の人間によれば、また、黒賊が出たらしいね。もっとも、城郭軍はなにもできなかったようだけど……」

 

 孫空女が続けた。

 そう言えば、沙那と孫空女のふたりには、今日は外に出て、食材などの買い出しをさせていた。

 そのときに、なにかの噂話を仕入れて来たのだろう。

 

「迎(げいい)の町だよ。昨夜襲われたんだ。町全体が略奪を受けて、多くの人間が殺された。浚われた女は三十人ほど……。襲撃の情報に接したとき、このわたし自身が騎兵だけを連れて急行したのだ。今度こそ、尻尾を捕まえてやろうと思ってね……」

 

「ああ、昨夜は戻らなかったけど、お前、出動してたのかい」

 

 宝玄仙は言った。

 

「……うん……。だけど、到着した時には、すでに賊は立ち去った後であり、誰ひとり残っていなかった。まるで、こちらの動きを完全に把握しているかのようだった。そうさせないように、騎兵だけで、しかも、精鋭だけを連れて急行したんだけどねえ……」

 

 金水蓮は無念そうだ。

 

「そりゃあ、情報が漏れていたんだろうさ、金水蓮。以前、お前自身も言っていただろう。城郭の中か、もしかしたら、軍営の中にも、連中の手の者が混じっているに決まっている。そいつらが、軍の動きを本隊に連絡しているのさ」

 

「それは、わたしも予想をしているよ、宝玄仙さん。だから、今度は情報を受けると同時に、騎兵で突っ走ったんだ。どんなにすぐに連絡しようとしても、わたしが率いた騎兵より速く駆けることはできないはずだ。手の者が、軍が動いたことを知らせようとしても、そいつが到着するよりも早く、わたしらが着くはずだったのだ」

 

「だけど、実際には、警報の方が早く賊に到着していた──。そうなんだろう、金水蓮?」

 

 宝玄仙は言った。

 

「そういうことさ。いずれにしても、わたしの面目にかけて、黒賊は捕まえたい。今度こそ、連中の尻尾を掴む。だから、わたしは、軍営に寝泊りして、すぐに出動できる態勢を作っておこうと思う。あなた方としばらく会えないのは寂しいんだけど……」

 

 金水蓮の表情がきりっと締まったものになった。

 さっきまで快楽に酔っていた雌の顔ではない。果断にして有能な軍人としての顔だ。

 

「いつも、その黒賊には、軍の動きを読まれて、してやられているのですか?」

 

 朱姫が何気ない口調で言った。

 

「そうなのだよ、朱姫。わたしにはわからない。軍の動きを見張っている者がいることはほぼ確実に違いないとは思う。だけど、どうやって、軍の出動を実際に襲撃している賊の本隊に伝えているのだろう。町や村を襲撃している連中は、どうやって距離が離れている城郭にいる政府軍が動いたことを察知し、絶好の時期に撤退していくことを可能にしているのだろうか」

 

「黒賊が出現したとわかれば、すぐに政府軍は出動するのでしょう、金水蓮さん? 政府軍が出動する時間を予想して、あらかじめ決めた時間内に撤退することを決めているのでは?」

 

 湯の中で乳房を宝玄仙に密着させている沙那が言った。

 そういえば、こいつは、故郷の東帝国では、地方軍の千人隊長だった。女人国とは異なり、男しかいないような軍の中で、若い女ながらも千人隊長を張っていたくらいだ。

 軍人としての能力は、ここで副長をしている金水蓮に、引けを取らないだろう。

 

「わたしもそうだと思っていた、沙那。だから、昨日は、騎兵だけで出動したのだ。これまでの政府軍の対応だったら、歩兵も含んでいたからもっと遅かった。政府軍の動きを予測して動いているのなら、昨夜の対応は、予想外だったはずなんだ。それに、騎兵だけで急行した昨夜の動きについては、十分に意表をついていたはずだ──。」

 

「軍の中に通報者がいると仮定して、むしろ騎兵の動きを見張っているんじゃ?」

 

「だが、軍営を見張っている者がいると思ったから、騎兵の出動だって、わざと歩兵の隊については、いつものように軍営から出動する動きをさせながら、騎兵については、城郭の郊外にある軍牧から出動させたのだ。だから、城郭の中からでは動きが察知できなかったと思う。それなのに……」

 

 金水蓮が唇を噛む。

 

「金水蓮と一緒に出動した騎兵の中に手の者がいたんじゃないのかい?」

 

 今度は孫空女が口を挟んだ。

 

「それは否定できない、孫空女。だけど、わたしと一緒に出動したのはわずか百騎だ。その百騎の中でおかしな動きをすればすぐにわかった。だから、その百騎に手の者が混じっていても、黒賊の本隊と情報をやり取りできるはずはないのだ」

 

「……だったら、やっぱり、なんらかの手段で情報が漏れていたのでしょう。遠くにいる者に対する連絡手段は、なにも直接に連絡者を派遣することに限りませんよ、金水蓮さん」

 

 沙那が言った。

 

「例えば?」

 

「光による通信。あらかじめ決めておいた符号を使えば、光の発する時間の長短を組み合わせることで、かなりの複雑な伝言を送ることができます」

 

「なるほど、それは気づかなかったよ、沙那。今度は、光のようなものを使っておかしなやり取りをしている者がいないか見張らせることにするよ」

 

 金水蓮が少し喜んだような声をあげた。

 

「ただ、光のようなものは逆に目立ちます。わたしは、もっと単純に情報をやり取りしているように思います」

 

「もっと単純な方法ってなんだい、沙那?」

 

「道術ですよ、金水蓮さん」

 

「道術?」

 

 金水蓮は少し驚いた声をあげた。

 

「道術というのは、遠くにいる者に情報を送るというようなこともできるのか?」

 

 横で聞いていた宝玄仙は、金水蓮の反応に逆に驚いた。

 遠方との情報交換手段については、思いつく道術だけでも、十以上もの手段がある。

 そう言えば、金水蓮は道術には疎い。

 金水蓮に限らず、女人国の人間のほとんどは道術についてあまり知らない。

 そういえば、道術が遣えるというだけで、女王への挑戦権が得られるくらいであり、道術師が珍しい土地柄であることを思い出した。

 

「金水蓮、もしかして、お前は、自分のところの軍の中に、道術遣いが混ざっているかどうか確認していないのかい?」

 

 宝玄仙は訊ねた。

 

「道術遣い? そんなことは考えたこともなかった」

 

 金水蓮は言った。

 やっぱり、予想通りの反応だ。

 軍の副長である金水蓮でさえ、この反応なのだろうから、軍全体でも、道術遣いを探知する者などいないのだろう。

 それをいいことに、道術の遣える手の者を軍に紛れ込ませて、軍の動きを逐一知らせているに違いない。沙那の予想は正しい気がした。

 

「仕方ないねえ。まあ、この屋敷に逗留させてもらって、お前の身体も堪能させてもらっている間柄だし、少しは、お前の仕事に協力してやろうじゃないか。このわたしたちをお前と一緒に、軍営に連れていきな。お前が軍営に起居するなら、わたしたちもついていくよ」

 

「えっ? 宝玄仙さんたちが?」

 

 金水蓮が驚いたような声をあげる。

 

「ああ……。この宝玄仙が、政府軍の中に紛れている道術遣いを洗いだしてやろう。能力の高い道術遣いなら、自分の持っている道術を隠すこともできるから、すぐにはわからないかもしれないけど、霊気を隠したまま道術を遣うことはできないからね。道術で賊と連絡を取ろうとした瞬間に、このわたしが見つけてやるよ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「へえ、ご主人様もいいところあるんですね」

 

 沙那がからかうような口調で言った。

 

「まあ、わたしとしても、無辜の娘を浚っては奴隷として売るなんて連中は許せないからね」

 

 宝玄仙はうそぶいた。

 もちろん、宝玄仙には別の魂胆もある。

 これまで金水蓮の調教は、屋敷の中だけだったが、宝玄仙も軍営に一緒に赴けるなら話は違う。

 それこそ、昼も夜も、状況の許す限り金水蓮を苛むことができる。

 せっかく見つけた愉しい玩具だ。

 もう少し、堪能するまで遊びたい。

 これで別れるのは、勿体ない。

 

「よろしくお願いします、宝玄仙さん。あなた方が軍営に留まれるようにすることは、副長の権限でなんとかする」

 

 金水蓮は頭を下げた。

 

「さて、そうと決まったら、この宝玄仙の手間賃を前払いで払ってもらおうかね……。その身体でね」

 

 宝玄仙は、湯の中で金水蓮の股間をしっかりと掴む。

 

「ひゃ、ひゃん」

 

 金水蓮が急に可愛らしい顔になって、顔を赤くした。

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