「わたしの道術は、そこらの自白剤よりも余程効くよ」
宝玄仙が嬉しそうに笑いながら言った。
どういうわけか、手足はまったく動かない。
自分の身体の中の霊気が動きまわっている。眼の前の宝玄仙が霊気を注いでいるのだ。
部屋の中にいるのは、道術で楊恋を動けなくした宝玄仙──。
宝玄仙の供で、やはり道術遣いのようである朱姫──。
そして、金水蓮だ。
いまのところ、この三人以外にいない。
だが、いまの楊恋には、この三人から逃げ出すのは不可能だということを悟っていた。
どうやら、宝玄仙は孫空女よりも、そして、朱姫よりも遥かに力のある道術遣いのようだ。
楊恋を捕えたのは、朱姫の道術による黒い手だが、それを凌駕する圧倒的な力が楊恋を襲っている。
これが宝玄仙の力なのだ。
宝玄仙は、単なる金水蓮の性愛の相手というわけではなかったのだ。
おそらく、楊恋をはじめとして、楊鬼女が城郭軍に紛れ込ませた手の者を狩るために金水蓮が連れ込んだに違いない。
そして、宝玄仙の道術遣いとしての力は楊恋よりも上だ。
圧倒的な力の差──。
それを宝玄仙から注ぎ込まれる霊気から感じる。
「なにもかも喋って貰うよ。言っておくけど、お前がしていいのは、わたしらの質問に答えることだけだ。間違っても、反抗的な態度をとるんじゃないよ。奴隷狩りなんてやるような連中には、もっと残酷に拷問して自白させてもいいと思っているんだけど、特別に、この宝玄仙の道術で訊問してやっているんだからね。この世のものとは思えないほどの苦しみのあげくに自白させてもいいんだよ」
顔から血の気がひくのがわかった。
秘密を守り抜くことは不可能……。
そんな気がしたからだ。
黒賊の本拠地の場所──。
軍営に紛れ込んでいるほかの手の者の存在──。
そういうものを洗いざらい喋らされてしまうのかもしれない。
「宝玄仙さん、本当に楊恋が手の者なのかい?」
部屋の隅の椅子に座って、こっちを見守っている金水蓮が言った。
軍人としては優秀だが、単純でおめでたい女……。それが金水蓮だ。
だが、自分の性愛の相手を軍営に連れ込んで愉しむ呆け者だと思っていたが、もっと警戒すべきだった。
あるいは、殺してしまうとか……。
これまでの上級将校とはうって変わって、賄賂には手を出さず、火の出るような調練で軍改革を始め出したときには、危険だから暗殺することも考えた。
だが、この宝玄仙という自分の性愛の相手を軍営に連れ込んだことで、楊恋の考えは変わった。
欲の対象が違うだけで、こいつもこれまでの上級将校と同じだと思った。
いまは、任務に燃えて軍人をやっているようだが、やがて、堕落した軍人に染まっていくだろう。
実際のところ、屋敷でも、そして、この軍営の中でも、夜な夜なこの宝玄仙たちと痴情に耽っているのは確認していた。
そんな将校など、恐れる必要はないとも思った。
しかし、もしかしたら、それらのすべてが、楊恋たちのような手の者を油断させるために手段だったのかもしれない。
実際、楊恋は、自分が捕えられるまで、これ程に自分たちが追い詰められていたという実感を持っていなかった。
「こいつが奴隷狩り団の手の者かどうかは、こいつが喋ってくれるよ」
宝玄仙はそう言いながら、新しい霊気を楊恋の身体に注いだのがわかった。
はっきりと身体の変調を感じたのだ。
身体中の血が熱くなる。
痛みとも痒みともつかない感覚がやってくる。
無数の蟻が、皮膚の下でうごめきはじめた。そんなぞわぞわした感覚だった。
楊恋は悲鳴をあげた。
しかし、声が出ていない。
喉の奥から空気が漏れただけだ。それだけじゃない。
さっきは、手足だけだった身体が、もう、指も動かせなくなっている。
指だけじゃない。顔も動かせない。
楊恋が唯一動かせるのは、瞬きをする瞼だけだ。それ以外の身体の筋肉のすべてが完全に弛緩されている。
「朱姫、こっちに来て、手伝いな。まず、この女を素っ裸にするんだ」
宝玄仙が言うと、金水蓮の横に座っていた朱姫という娘が小走りにやってきた。
まだ、二十にもなっていない小娘だろう。
だが、この娘さえも、楊恋を上回る道術遣いだった。
この部屋に金水蓮に踏み込まれたときに遣われたあの黒い手の道術は、完全に楊恋の身体の動きを封じたからだ。
この朱姫の道術に楊恋は抵抗することができなかった。
「服を脱がされるのが嫌だったら、そう言ってください、楊恋さん。その方が愉しいですから」
朱姫がそう言ったときには、すでに朱姫が手に持ってきた鋏で軍装の
次第に感じさせられる肌に直接触れる空気に楊恋は恐怖を感じていた。
こうなったら、少しでも長く自白を耐えて、本拠地にいる楊鬼女たちが逃げる時間を確保することを考えるしかない。
『伝声術』が中断されたことで、本拠地にいるあの道術遣いは、なんらかの異変を感じたはずだ。
あるいは、楊恋が捕えられたことに、この軍に紛れ込んでいる他の手の者が気がつけば、軍を抜けて本拠地に変異を報せに行けるだろう。
せめて、数日──。
その時間さえ確保できれば、なんとか黒賊の主力を逃がすことができる。
「きれいな肌をしていますね。とてもおいしそう。ご主人様、後であたしも味見してもいいですか?」
朱姫が妖しい笑みを浮かべながら言った。
その時には、もうすでに、楊恋は下着だけの姿にされている。
胸当ての布が切られて剥ぎ取られる。
露わになった胸が震える。
その露わになった楊恋の胸の頂点に、朱姫がちょんと指を伸ばした。
「ひいっ」
込みあがった得体の知れない官能の爆発に楊恋は声をあげた。ただのひと触りだけで、両方の乳首が勃起し、全身から一斉に汗が噴き出たのだ。
初めて、想像以上の身体の変質が自分に襲っているのがわかった。
もの凄い感度まで全身を敏感にされている。
それを知覚した。さっきの宝玄仙の道術に違いない。
「ふふふ……。待つんだよ、朱姫。まずは仕事さ。金水蓮に世話になっているんだ。金水蓮が知りたがっていることをなにもかの喋らせるんだよ。軍営に集めて、沙那と孫空女が見張っているいる兵たちも早く居室に戻してやらないといけないしね。ほかの手の者の名をこいつが喋るまで待ってな」
「わかりました、ご主人様」
朱姫が楊恋から下着を取り去り、楊恋は素っ裸になった。
「さてと──。じゃあ、始めるかね」
宝玄仙は言った。
そして、胸の間から臍にかけて、宝玄仙の指がすっと撫ぜた。
「ひふうっ──」
楊恋は声をあげていた。
柔らかくて軟体動物のような指だった。
朱姫が乳首に触ったときのような……。
いや、それ以上の快感が楊恋を襲った。
だが、宝玄仙の指はすぐに遠のいた。
去っていった指を追うと、そこには、にやにやしながら楊恋を見下ろしている宝玄仙と朱姫の顔がある。
楊恋は愕然とした。
いま、自分はさっきの指をもっと欲しいと思っている。
宝玄仙の指が身体から離れたとき、広大な原野の真ん中に裸で放置された気分を味わった。それは、まだ続いている。
触って欲しい──。
楊恋の肌にさっきの愛撫が欲しい──。
楊恋の心は叫んでいた。
壊れていく……。
楊恋は恐怖した。
欲情によって、心と身体が離される。
宝玄仙がしようとしているのはそういうことだ。
わかっているが、どうにもならない。
すでに、楊恋の身体は、楊恋の心を裏切り始めている。
「お股が真っ赤になっていますよ、楊恋さん。おつゆもこんなに……ふふ」
朱姫が楊恋の股間の一番敏感な頂点をつんと突く。
「おごうっ──」
もの凄いものが肉芽から突きあがる。
楊恋は絶叫していた。
身体を根こそぎ、どこかに運び去ってしまうような快楽の暴発だ。
しかし、その朱姫の指もすぐに離れる。
また、淫靡に微笑みながら楊恋の痴態を見守るふたりの視線──。
駄目だ──。
理性を保たなければ……。
楊恋は、懸命に自分を保とうとした。
数日どころではない。いま、自分はあっという間に知っていることを喋ろうとしている。
ほんの少しの快楽と引き換えに、仲間のことを売ろうとしている。
でも、身体が熱い。
全身が炎で炙られでもしているようだ。
かすかな部屋の中の風の流れでさえも、抗しがたい刺激として楊恋を襲う。
空気だけでいく──。
そう思ったとき、楊恋の理性の部分が、淫乱な女体に取り替わる。
「もう一度、いくよ、楊恋。この刺激だよ。これが欲しいかい?」
宝玄仙がさっきと同じように、胸の谷間から臍にかけてすっと指を這わせる。
「ひいいいいいいっ」
なにかを浴びたように楊恋の身体は硬直した。
全身の神経という神経が宝玄仙の指が触れる部分に集中する。
もっと欲しい。
もっと……。
しかし、宝玄仙の指はそれだけで終わりだ。
楊恋は泣きそうになった。
「もう少し触って欲しいのかい、楊恋?」
宝玄仙の指がまた伸びて、腰の横の肌に移動する。
そこから、だんだんと股間に向かってくる。
楊恋の心は、やがてやってくるであろう愛撫を期待して踊りあがる。
女陰の中からどっと淫液が溢れるのがわかる。
もうすぐ……。
宝玄仙の指が楊恋が触れて欲しい蜜壺に向かう……。
ところが、そこですっと宝玄仙は指を引いた。
楊恋は、すぐにはそれが信じられなかった。
宝玄仙を見る。
そして、絶望的な気持ちになった。
宝玄仙も朱姫も、とても冷ややかな表情で楊恋を見下ろしていたからだ。
楊恋が、こんなにも切なくて、愛おしく思っているのに、このふたりは、まったく楊恋に愛情を抱いていない。
もう触る気がないのかもしれない……。
それを悟ったとき、楊恋に恐怖が込みあがる。
「ど、どうして……」
それ以上言葉が出てこない。
刺激をこれ以上与えてもらえない……。
その事実を受け入れることができず、楊恋は身体を震わせた。
しかし、楊恋の身体はぴくりともしない。
できるのは、愛おしい宝玄仙と朱姫にすがる視線を向けるだけだ。
はっとした。
宝玄仙がその楊恋の瞼に手を近づけた。
あの指が来る──。
それが顔であっても嬉しかった。
だが、宝玄仙の指が楊恋の顔の肌に触れることはなかった。その代わり、楊恋の瞼はすっと閉じて、もう開かなくなった。
愕然とした。
ふたりを見ることさえ禁じられた──。
楊恋は悲鳴をあげそうになった。
宝玄仙や朱姫が楊恋に触れたときの、あの幸せが逃げる。
まったくの闇に取り残される。
欲しい──。
あの指が欲しい。
それが与えられるなら、なにを提供してもいい。
胸が張り裂ける。
心が破れる。
指を……。
刺激を……。
「そろそろ、いいだろう、楊恋? 黒賊の本拠地はどこにあるんだい?」
闇の中に、そんな宝玄仙の声が突き差した。
希望の光だ。
楊恋の心が晴れやかなものになる。
宝玄仙の声は、それ程までに楊恋の心に心地いい。
声で愛撫される。
愛おしい……。
もっと欲しい……。
声を聞かせて欲しい……。
気がつかないうちに楊恋は口を開いていた。
「
楊恋は喋っていた。
「
部屋のどこからか宝玄仙でもない、
朱姫でもない叫びがあった。
その叫びが誰の者なのか楊恋にはわからなかった。
この部屋には、宝玄仙と朱姫のほかに誰かがいるのだろうか?
「いい子だね、朱姫。ご褒美をあげな。だけど、ひと触りだけだよ……」
「はい」
朱姫の指が楊恋の鋭敏な股間の頂点をぎゅっと押した。
楊恋は叫んでいた。
この世のものとは思えない愉悦の嵐──。
それが全身を貫いたのだ。心臓も止まるような快感の渦が巻き起こる。
だが、それもすっとなくなる。
再び闇にたったひとりで残される。
「もっと、わたしたちが興味を持てるようなことを教えることができるかい?」
宝玄仙の声がした。
楊恋は焦った。
早く喋らなければ、宝玄仙や朱姫の機嫌を損ねてしまう。
もしも、楊恋に興味がなくなり、この闇に残されたらどうしよう。
楊恋は動転していた。
喋らなければ──。
ふたりがどこかに行ってしまう。
それだけは嫌だ。
ふたりと繋ぎとめるためには、ふたりの欲しがる知識を提供すること──。
どうやら、それを欲しているようだ。
そして、それは簡単に提供できる。
楊恋は、軍営に入り込んでいる他の仲間の名を言った。
すると、誰かが名を問い返した。
楊恋がほかの手の者である五人の女の名を言い、それをもう一度繰り返して、それ以上はいないということを言うと、部屋の中から誰かが慌てて飛び出していく気配がした。
もっとも、それはどうでもいいことだ。
それよりもご褒美だ。
五人の名を告げることで、楊恋の身体にすっと指が与えられた。楊恋は悦びに震えた。
指の刺激が去ると、またそれを取り戻すために、ほかの知識を話した。
どうやって、軍に紛れ込んだのか──。黒賊が総勢何人くらいか。浚った奴隷をどうやって、
軍に入り込んで情報を送るのが役目の楊恋が知っていることは多くはなかったが、知っていることはすべて話した。
その知識が宝玄仙と朱姫を満足させるものであると、楊恋の肌にあの刺激がもらえる。
もっと……。
もっと触って欲しい……。
ほかにふたりに提供できる知識はないか。
楊恋は懸命に考え続けた。
そして、喋り続けた。
黒賊のことについて、喋ることがなくなったら、楊恋は自分のことを喋った。
生まれのこと……。
親のこと……。
最初の自慰……。
最初の性愛……。
感じる場所……。
喋ることは幾らでもあった……。
指が欲しくて、楊恋はいつまでもいつまでも喋り続けていた。
*
身に着けているものはなにもない。
完全な素っ裸で、手首と足首を縄で縛られて、部屋の壁の金具と縄で繋がれているのだ。
その蝶子の裸身の周りには、椅子に座った黒賊の兵たちと、黒賊の女頭領の
蝶子は、そんな黒賊の悪党たちに、股間で物を挟んで締めつけるという訓練をさせられているのだ。
「お前は、歳をとっているから、妹の瞳子のように、ただ感じるだけじゃあ、客を歓ばすことはできないさ。しっかりと、道具を鍛えなきゃね。お前の武器を鍛錬して、芸のひとつでも覚えな。股で卵を割ったり、果物を潰したりするのさ。そして、妹と一緒に客の相手をするんだ。美人姉妹奴隷ということで、ひとりひとりで売るよりも、遥かに高額の性奴隷として売り捌けるさ」
楊鬼女は笑いながら部下に命じて、蝶子の膣に筒状の性具を挿し込んでいく。
十日間の調教で感じやすくなった肉体と、朝からの全身への愛撫により、すっかりと受け入れ態勢の整っている蝶子の女陰は簡単に性具を受け入れていく。
蝶子に挿入されている性具は、この黒賊の連中が浚った女を調教するために作った淫具であり、女の膣の筋肉を訓練するための器具らしい。
器具の名は、「膣圧器」といい、女陰に限界まで挿入しても、その端が股間からはみ出すほどの長さだ。
そして、挿入された筒を締めつけると、その力に応じて、女陰からはみ出している部分の色が変化するのだ。
すなわち、なんの力も与えないと白色だが、膣で締めつけることにより、だんだんと紅くなり、限界まで締めると真っ黒になる。黒くなるまでに締めつけることができれば、それこそ、柔らかな果物どころか、固い野菜でさえも割ることができるらしい。
「ほら、締めな」
蝶子は絶叫して女陰に力を入れる。蝶子を縛った四本の縄尻が、蝶子が身悶えをすることにより、ぎしぎしと壁の金具を引っ張って音を立てる。
「もっと、締めるんだよ。せめて、赤色から黒っぽくなるくらいまで締めたら、妹に会わせてやるよ。姉妹で客を取る訓練をさせないといけないからね」
蝶子のたったひとりの肉親……。
両親が死んでからは、この蝶子が親となって、瞳子を育ててきた。
黒賊に捕らえられて一緒に性奴隷にされるということになり、蝶子は絶望を味わったが、いまは、ただ会いたい。
会って、瞳子を抱きしめたい。いまの蝶子の望みはただそれだけだ。
「股を締めるときには、尻に力を入れるんだよ。何度も教えたろう」
正面の椅子に座っている楊鬼女が笑いながら言った。
楊鬼女の腰掛ける椅子の横には小さな台があり、そこには、酒瓶と盃がある。
楊鬼女はさっきからその酒を口にしながら、部下にあれこれと指示をして、蝶子の調教を指図している。
「尻だよ、尻──」
背後にいる部下が瞳子の双臀を平手で張った。
ぱしんという景気のいい音が部屋に響き渡る。
「おお、真っ赤になるまで締めつけられたかい。もう少しだね。どれ、空気を送ってやんな」
楊鬼女言った。
ふたりほどの部下が、蝶子が挿入している筒具の先端に近づく。
いまは赤くなっているその筒具の先に短い管を繋ぐ。その管には丸い球体がついていて、それを強く押すと、管から空気が流れて、「膣圧器」が膨らむようになっているのだ。
膨張した筒具をさらに肉襞で喰い締めることにより、さらに女陰の収縮力が鍛えられるのだ。
「あああいいいっ」
蝶子は汗まみれの身体を揺らして声をあげた。
脂汗が全身に滲んで、裸身を滴っていく。
しゅうしゅうと空気が送られる。膨らむことで筒具は、微妙な振動を蝶子に与えることになる。
その刺激だけで切羽詰った状態になるくらいに感度のあがっている蝶子の身体は、たちまちに筒具の膨らみから快感を搾り取ってしまう。
「そ、そんなに大きくしちゃいや……」
蝶子は泣き声をがあげた。
「女同士の性愛とは違って、男にはそれぞれに大きさも形も違う肉棒がついているんだ。中には、想像できないくらいに大きな一物を持つ男だっているらしいよ。妹がそういう肉棒を女陰で飲みこめるようになるまでは、お前が相手をしなきゃならないだろう。その練習だと思いな」
楊鬼女はそう言って、容赦なく筒具に空気を送り込ませる。
あまりもの圧迫感に蝶子は、歯を食い縛った。腰を前に出して、懸命に膣を締めつける。
膨張した筒具に筋肉の圧迫を加えて締める。
「まだ力が入るはずだよ。もっと、力を入れな」
楊鬼女は声をあげた。
「も、もう無理です……。す、少し休ませてください……」
蝶子は女陰を締めつけながら呻いた。
「誰か、こいつの尻に指を挿し込みな」
楊鬼女が言った。
肛門になにかの溶剤を塗った指が挿し入れられる。
その淫靡な刺激に、蝶子は顔をしかめて、嬌声をあげた。
身体を貫く妖しい快感だ。さらに汗が出る。
気持ちいいのだ。
尻が気持ちいい……。
悔しい……。
お尻の孔で感じる身体にさせられてしまった。
お尻だけじゃない。十日余りの調教で、全身のあらゆる部分の性感帯を開発された。
四六時中媚薬を飲まされて、快感漬けにされることにより、蝶子は信じられないくらいに淫乱な身体になった。
「締めな」
肛門に入れられた指がくちゅくちゅと動いた。蝶子は悲鳴をあげた。
「ああっ」
蝶子は懸命に尻孔に力を入れる。
筒具がほんの少し黒さを増した気がした。
「やればできるじゃないか。じゃあ、もう少し、膨らませな」
楊鬼女だ。
また、空気が送られて、筒具が膨張する。
苦しさに蝶子は声をあげる。
「腰を動かすんだ。前後に振れば、まだ力が入るだろうが」
楊鬼女が酔った口調で怒鳴った。
蝶子は前後に腰を振る。確かに力も入るかもしれない。だが、それとともに快感も蝶子を襲う。
淫情の嵐が蝶子の身体を席巻する。
「そうだよ。その調子だよ、蝶子──」
筒具に空気を送り込んでいた部下のひとりがそう言って応援した。
しかし、これ以上は無理だ。
筋肉が限界なのではない。
腰を動かすことで、狂おしい淫情が蝶子を襲い、それが蝶子を追いつめている。
「い、いきそうです──。いきそうです──」
蝶子は腰を振りたてながら叫んだ。
「いけばその瞬間、股間が締めあげられるさ──。いきな」
楊鬼女が言った。
「いくっ」
蝶子は顔を仰け反らせた。
「おお」
周りの女たちが叫んだ。なんの叫びなのかわからない。
「一瞬だけど黒くなったよ。よくやったね、蝶子」
楊鬼女の嬉しそうな声がした。
蝶子は、激しく息をしながらそれを聞いていた。
「もっとも、膣圧器の訓練中に気をやるというのは、いよいよ、淫女らしくなったじゃないか」
楊鬼女の揶揄ももう気にならない。
それよりも、圧倒的な絶頂の余韻が蝶子を襲っている。
そのとき、急に部屋の外に慌ただしい混乱が沸き起こり、やがて、ひとりの女兵が調教部屋に飛び込んできた。
「お頭、軍です──。軍がいつの間にか砦を包囲しています」
その部下が叫んだ。
「なんだと──。そんな報せはなかったよ」
楊鬼女の慌てふためいたような声が響く。
蝶子は、まだ筒具を股間に挿入したまま、それをぼんやりと聞いていた。
引き続いて、ほかの部下も飛び込んでくる。
どうやら、本当に軍がここに殺到しているようだ。
すでに四周を包囲されて逃げ場のない状態らしい。
楊鬼女は、軍の動きを察知できなかったことに驚いていたが、その理由は蝶子にはわからない。それよりも、この騒動で与えられた少しの休息が嬉しかった。
楊鬼女は懸命に、
内儀というのは、あの道術遣いのはずだ。最初の十日は、その内儀と呼ばれる道術遣いが蝶子を調教した。
快感責めにされただけではなく、股間の毛も剃りあげられた。
排便でさえも調教の手段にされた。
「……内儀殿はどこにもいません」
やがて、数名の部下が交互にやってきてそう楊鬼女に報告した。
「そんなわけがあるものかい──。探すんだよ」
楊鬼女は狂ったように喚いている。
蝶子は忘れられたように放っておかれながら、その喧騒にじっと耳を傾けていた。