209 寸刻みの処刑と反抗的な供
「ひぎゃあああ──」
孫空女は絶叫した。
もはや、痛みなのか快楽なのか判別がつかなくなっている。
ただ、限界を遥かに超える痛覚に孫空女は悲鳴をあげるだけだ。
孫空女の手足は、いまや膝から下、肘から上がなくなっている。
この洞窟に監禁されてから数刻置きに、指先から寸刻みに切断されてそうなったのだ。
いまは、膝と肘の剝き出しになった骨に金具を打ちこまれて、その金具に繋げた丸い金属の輪により、洞窟の地面に置いて鉄の大きな板にやはり、金具で繋げられている。
前歯もすべて折られた。
ここにあの偽者の宝玄仙に連れて来られてから、どのくらいの時間が経ったのだろうか?
この
戦闘の最中に、『移動術』でこの岩山に作られた空間に連れ込まれたのだ。
それから、何日経ったのか……。
あれ以来、ずっと拷問されている。
拷問をしているのは御影と、御影が“お宝”と呼んでいる宝玄仙の偽者だ。
どこからどう見ても、孫空女には宝玄仙としか思えないくらいにそっくりで、同じ道術を遣う。
孫空女を戦闘の最中に拘束したのも、もともとは本物の宝玄仙が孫空女を嗜虐するために装着させていた『
宝玄仙の身体を支配するのも、性感の感覚を操るのも自在で、まさに宝玄仙のようだ。
違うのはその残酷さだ。
嗜虐をしても愛情を感じることのできる宝玄仙の責めとは違って、この“お宝”が与えるのは、純粋な苦痛だ。
それを御影の命じるままに、淡々と術で孫空女を痛めつける。
最初に身体を道術で動けなくされて、口に棍棒を御影に突っ込まれて、前歯を全部折られた。
そして、次に指を一寸ずつ切断された。
おそらく、それまでに数日をかけたに違いない。
指が終われば、手首を切断され、手首がなくなると、腕を少しずつ刃物で抉り斬られた。
孫空女が苦痛にのたうち、ひと通りの苦しみを味わうと、また、さらに手足を短くされていった。
殺すつもりだけはないのか、術により止血だけはされている。
舌を噛んで自殺をすることも無意味だろう。
舌を噛みきっても人はすぐには死ねないのは知っているし、いずれにしても、このお宝があっという間に蘇生させるに違いない。
だが、孫空女が苦しいのは、いまや、身体の要所に突き差されている『魔針』の存在だ。
これは、孫空女の身体に激痛を与えるためだけに刺されているもので、いまは、二十本ほどの数が、突き差されている。
骨に取り付けられた金具で身体を拘束された孫空女には、それを抜く方法はない。
剝き出しにされた骨に金具をねじ込まれたときもこの世のものとは思えない激痛だと思ったが、時間が経つにつれて、その痛みはだんだんと麻痺を感じてきた。
そんなときに、遣われ始めたのが、この『魔針』であり、孫空女の肉芽、女陰、乳首に刺された。刺されるだけで、狂おしい痒痛を与えるこの霊具は、ほんの少し動かすだけで、怖ろしいほどの激痛を孫空女に与えるのだ。
「ほら、数をかぞえるのよ、孫空女。十を数えれば、やめてあげるわよ」
御影が笑いながら言った。
相変わらずの、女みたいな喋り方で気持ち悪い男だ。
「く、糞が……」
孫空女は呻いた。
「おや、また悪態をついたわね。仕方がないわね。水を被って貰おうかしら」
御影は言った。
「ひいっ」
孫空女は、水と聞いて、慌てて叫んだ。
「遅いわよ。それにしても、なかなか、躾を忘れる女よねえ──。よくも、あの宝玄仙は、お前みたいなじゃじゃ馬を手なずけているものね」
孫空女の顔の上に、絹の布が被される。
顔を振って暴れるが、布が外れることはない。
孫空女が監禁されているこの洞窟にいる間、この御影とお宝がずっといるわけではない。
やってくるのは、時々であり、御影だけがやってくることもあるし、お宝と一緒に来ることもある。
ただ、偽宝玄仙のお宝だけがひとりでくることはない。
御影が来れば、必ず、孫空女に対する拷問が始まる。
なにかを聞きだそうというわけでも、なにかを要求されることもない。
ただ、孫空女を苦しめるためだけにやってくるのだ。
いまは、お宝は来ていない。
御影は、容器に入れた水を布を被せた孫空女の顔の上にかけた。
「いつもの通りよ、孫空女。悲鳴をあげるのを我慢できれば、布を取ってあげるわ」
御影は嬉しそうに今度は、乳首に刺されている『魔針』を弾く。
「んんんぐぐぐぐぐ──」
悲鳴など耐えられるわけがない。
痛みは外から与えられるのではないのだ。
痛覚の神経そのものが砕かれるような痛みだ。
孫空女が食いしばった口からは、悲鳴が迸っていた。
絹の布の上に水が足される。
孫空女は、懸命に空気を吸うために鼻と口から空気を吸おうとする。
しかし、張りついた布からは、水滴が入って来るだけで、空気はやってこない。
苦しい──。
空気が──。
「んんんん──」
また『魔針』が弾かれる。
今度は、女陰の『魔針』だ。
激痛によって、孫空女の股間から尿が流れ出したのがわかった。
「また、洩らしたのねえ。本当に堪え性のない身体ねえ──。もう一度よ」
孫空女は口を閉じた。
意識が遠くなる。
息が……。
「いくわよ」
予告されることで、今度は構えることができた。
『魔針』を弾かれるが、なんとか呻き声だけで耐えた。
「まあ、声は出ていたけど、許してあげるわ」
御影が言い、布を取り去ろうとした。
孫空女の口は空気を求めて、懸命に口を開く。
「なんてね……」
半分だけ取り去られかけた布が被せ直される。
「んんん」
孫空女は声をあげた。口と鼻の上から布が外れる直前だったのだ。
まだ、空気が吸えていない。
「やっぱり、死んでよ。屍体を送りつけた方が、宝玄仙も嘆くと思うからさあ」
御影は言った。
その御影が立ち去る気配を失いかけた意識の中で孫空女は微かに感じていた。
*
雨は土砂降りになってきた。
些かの逡巡の後、果物を入れた籠を雨衣の中に隠しながら、大回りして城郭の広場に向かった。
自分にはその残酷な姿を見る責任もある。
そんな風にも考えた。
広場に立てられた二十本の木杭の一本一本に黒賊の首脳たちが全裸にされて鎖で拘束されている。
彼女たちは、この数箇月、女人国の南域を荒らし回って、町や村から若い女を浚っては南の
七日前の城郭軍の隠し砦への奇襲に、沙那は孫空女とともに、金水蓮率いる討伐軍に加わった。
沙那と孫空女が加わったのは、正面から責める主力ではなく、裏手から迫った少数の別働隊だったが、結局のところ、その別働隊がもっとも早く砦内部へ侵入することに成功した。
その結果、呆気ないくらいに簡単に数百人もいた賊徒の砦は落ち、頭領の楊鬼女以下、数百名の賊徒はことごとく殺されるか、捕えられるかした。
三重に準備された重厚な護りからは、苦戦も予想されたが、終わってみれば、信じられないくらいの圧勝だった。
城郭軍側にほとんど被害らしい被害もなく、夜明けとともに始まった戦いも陽が中天に上がりきる前に終了していた。
戦いの最中に、孫空女が敵に捕らえられるという一幕もあったが、監禁されていた三人の女とともに、砦の中に道術で作った岩の中の小部屋で発見された。
まあ、それは、討伐が終わった後の惨劇に対するひとつの愛嬌のある出来事だった。
討伐軍を指揮した金水蓮は果断だった。
黒賊は最初から皆殺しにするつもりらしかったらしく、情報をとるための首脳陣だけを拘束すると、訊問するに値しない数百人の黒賊の女兵のすべての首を刎ねることを命じたのだ。
刎ねられた首は、城郭の外に並べて見せしめにするために運び出されて、首のなくなった屍体はその場に放置された。
血の匂いが谷間中に蔓延して、さすがの沙那も些か吐気をもよおすほどだった。
城郭軍が捕虜と兵の首を運んで大元府に戻ると、その日のうちに、大元府の城郭の内外を始め、周辺の町や村に一斉に布告が流され、黒賊が捕えられて、その賊徒が大元府に晒されていることが告げられた。
そして、賊徒の兵の生首は、城郭の城門の外から街道沿いに並べられ、訊問のために連れてこられた首脳陣たちの身柄は、その訊問の終了した三日後から城郭内の広場にこうやって生きたまま晒されている。
余程、酷い拷問を受けたらしく、全員の首脳陣の五体のどこかしらは失われていて、指がなかったり、焼け金具で顔をはじめとする身体のあちこちを焼かれたような痕でいっぱいだった。
頭領の隻眼の楊鬼女は、もうひとつの目玉もくり抜かれて、両方の眼がただの孔になっていた。
そんな彼女たちは、全裸のまま、ひとりにつき、一頭の騎馬に、その身体を引き摺られてここに連れて来られ、群衆の罵声の中、ひとりひとり杭に繋がれていった。
まずは、杭に金具で装着された手枷と足枷を嵌められて立たされ、首が垂れないように、首を押さえる金具もその場でつけられたのだ。
沙那が見るところ、この最初の段階で、二十人のうちの五人ほどが、すでに死んでいるようだった。
生死に関わりなく、屍体についても、まだ息をしている賊徒と同じように杭に拘束された。
おそらく、そのときに死んでいた者のほうが幸せだったに違いない。
金水蓮は、そうやって杭に立ったまま拘束した賊徒の首脳陣を柵で囲ませて、群衆が手を出すのを禁じ、完全に屍体が腐りきるまで、そこに放置することを命じたのだ。
糞尿さえも垂れ流しで、食べ物も水も与えられず、彼女たちは、こうやって、長い時間をかけた死刑を受けることになったのだ。
最初の一日こそ、彼女たちは悲鳴をあげていたが、それも二日目にはただの呻き声になった。
四日も経つと、死んだ者が多くなり、その頃には、たくさんいた群衆も、もう数える程しかいなくなった。
いま、生きているのは頭領の楊鬼女ただひとりだ。
ほかの賊徒は、もう完全に屍体になっている。
それは沙那が見ればわかる。
そして、いまは、十人ほどの城郭兵が警備のための囲んでいるほかに、五、六人の野次馬がいるだけだ。
雨脚が激しくなってきた。
両眼を失った楊鬼女が、懸命に口を開けて雨水を飲もうとしている。
雨が降ったことが、彼女にとって運がいいということはないだろう。
この雨水を飲んだことで、楊鬼女の寿命はまた延びるに違いない。
それだけ、楊鬼女の苦しみは続くということだ。
もっとも、もう七日も経つのに、楊鬼女だけが生きていることには秘密がある。
楊鬼女の拘束されている杭だけには、宝玄仙の道術が加わっているのだ。
つまり、あれは霊具なのだ。
楊鬼女を縛りつけている杭だけは霊気を放出しており、道術が効いている。
しかも、それは、拘束された対象に、『治療術』を少しずつ注ぎ込むという道術だ。
楊鬼女は、そうやって、少しずつ身体を回復させられながら、苦しみの時間を果てしなく長く延長されている。
最初に、この城郭軍の副長であり、宝玄仙の性友達の金水蓮が、宝玄仙にそれを頼みに来たとき、横で聞いていた沙那は、その残酷さに眉をひそめた。
食べ物も水も与えられず放置されるという苦痛を受けながら、宝玄仙の術により、身体を回復させられて、死ぬことや弱ることを許さないというのだ。それこそ、究極の極刑かもしれない。
宝玄仙はよく考えもせずに、言われるままに処刑用の杭に道術を注ぎ込んだが、宝玄仙自身が、この処刑場となった広場にやってきたことはない。
沙那もそれをさせたくはない。
それは残酷な光景だったからだ。
霊具になった杭に拘束された楊鬼女は、霊具に込められた宝玄仙の道術により、身体を回復させられながら、少しずつ弱まっていった。
酷い情景だ。
しかし、苦しみが続くその光景ももうすぐ終わりかけていた。
沙那の見たところ、残り数日で楊鬼女もやっと死ねるのではないか。
そう思っていた。
だが、この雨だ──。
楊鬼女は、生きたいという人間の本能のまま、懸命に水を飲んでいる。
水を飲むことで、楊鬼女はまた元気さをかなり取り戻すに違いない。
それにより、どのくらいの寿命が延びるのかは、沙那にも見当はつかない。
ただ、楊鬼女の寿命が延びることは、彼女の極刑がまだまだ伸びるということだ。
沙那は、雨に濡れながら、広場を後にした。
金水蓮の屋敷に向かう。
沙那が屋敷の前にやってくると、金水蓮にあてがわれている従兵の女兵が詰所の小屋から出てきて手を振った。
本来ならば、彼女たちの役目は、城郭軍の副長の金水蓮について、副長が伴っているはずの召使たちとともに、身の周りの一切の面倒を看ることだ。
だが、高級軍人としては、型破りの金水蓮は、従兵による世話を必要とせず、従兵の彼女たちが屋敷の中に入ることを歓ばない。
だから、部屋の掃除や洗濯、そして、食事の支度、あるいは、買い物などの行為は、宝玄仙とともに居候をしているかたちの沙那たち供が引き受けている。
従って、従兵の彼女たちは、金水蓮が軍営に通うのを交替でついていく以外にすることがない。
だから、四六時中、こうやって詰所であるこの小屋にいる。
最初は、宝玄仙一行が、軍営の副長の金水蓮の屋敷に出入りすることに戸惑っていた彼女たちも、もう馴れたものだ。
宝玄仙が金水蓮の性友達だということには、気がついているだろうが、元来、性に解放的な女人国の慣例に従い、彼女たちもそれほど気にしたりはしない。
「お帰りなさい、沙那さん。副長殿が戻っていますよ」
従兵が声をかけた。
沙那についても、孫空女についても、先日の黒賊討伐戦で軍とともに活躍したことは知られている。
最初こそ、武術師範として軍営に入ったときに余所者扱いだった沙那たちも、いまや、大元府軍の中では、それなりの人気者でもある。
「金水蓮さんが?」
沙那は、雨衣の下から果実をふたつ出して、声をかけた従兵の女兵に渡す。
彼女が礼を言って、ふたつのうちのひとつを奥にいた同僚に放った。
中から、沙那に対する感謝の言葉が聞こえてきた。
「異動の準備ということです。三日ほど、休暇を取られたようです」
「異動の準備ねえ……」
沙那は苦笑した。
黒賊を討伐するために大元府軍に派遣された金水蓮も、その任務が終わり、中央の軍に戻ることが決まっている。
もともと、地方軍で勤務をするような軍人ではなく、有能だということで、黒賊という奴隷狩り団を討伐するためだけに派遣されてきていたらしい。
いま、その仕事も終わり、残りの事後措置が済めば、中央軍に呼び戻されて、この大元府の城郭を去るようだ。
随分と長い滞在になったが、金水蓮が再び中央軍に戻るのに合わせて、旅の再開も決まっている。
いよいよ、女人国を越えて、南の
祭賽国は、海に面している国でもあり、一連の沿岸国と合わせて南域を呼ばれる地域に属する国のひとつだ。
海を見たことのない沙那も、少しばかり愉しみにしている。
大元府を去るにあたり、金水蓮は、宝玄仙に自分と一緒に国都に向かわないかと提案してきた。
金水蓮の本来の赴任地は、中央軍のある国都らしい。
金水蓮としては、宝玄仙に教えられた嗜虐の悦びと離れるのが惜しくてそう言ったのだろうが、前女王の壱都にまつわる因縁で、この女人国の国都から逃亡してきたようなかたちである宝玄仙がそれを承知するわけがない。
その代わり、最後の最後まで痴情に耽けようと、宝玄仙は、金水蓮に、この城郭にいるあいだは可能な限り休暇を取れと言ったのだ。
文字通り、朝から晩まで性愛を交えようというのだ。
金水蓮は承知し、さっそく休暇を取ったのだろう。
荷物らしい荷物もなく、家人も連れていない金水蓮が異動の準備などあるわけがない。
それこそ、身ひとつでここにやってきて、身ひとつで去るだけのはずだ。
沙那は、従兵のいる詰所を通り過ぎて、屋敷の中に入った。
濡れた雨衣を玄関に置き、奥に進む。
なにかの気配がする。
「ご主人様、戻りました……」
沙那は寝室とひと繋ぎになっている居間だ。
入っていきなり、女の淫液特有の淫靡な香りが沙那の鼻についた。
ぎょっとした。
四肢を寝台の四隅に伸ばして拘束された孫空女が、金水蓮と朱姫に裸身を舐め回されている。孫空女は半狂乱だ。
「戻ったのかい。お前も服を脱ぎな」
やはり全裸の宝玄仙が椅子に座ってそう言った。
「ど、どうしたのです、これは?」
沙那は居間の卓の盆に果物を置きながら言った。
そして、命令のまま、身に着けているものを脱ぎ始める。
「なに、このところ、孫空女が生意気だろう? それで、原点に戻って懲らしめてやろうと思ってね。最近、甘やかすことが多かったから、調教をやり直すのさ」
宝玄仙は、沙那が置いたばかりの果実に手を伸ばして、皮のままかぶりついた。
「はあ……」
沙那はちらりと気の毒な孫空女を見る。
確かに、この数日、孫空女は、妙なくらいに宝玄仙との性愛を嫌がる。
もともと、快楽責めの度合いの激しい宝玄仙との性行為は沙那も嫌だが、こうなったのもひとつの定めだと観念して、命じられれば服も脱ぐし、身体も開く。
それが、宝玄仙の供の宿命というようなものだ。
しかし、この数日、孫空女は確かに頑なに宝玄仙に抱かれるのを拒否して、理由をつけては逃げ回っている。
もちろん、激しく拒絶するくらいの方が宝玄仙は愉しいので、宝玄仙は道術で逃げるのを防止しては、孫空女をいたぶっていたが、沙那は、あまりもの孫空女の嫌がりようになにか不自然なものも感じてもいた。
やはり、宝玄仙も妙だと思っていたのかもしれない。
だから、孫空女は、「調教のやり直し」などということをさせられるはめになるのだろう。
最後に脱いだ下着を畳んで床に置いた衣類の下に隠すと、沙那は金水蓮と朱姫が責めている孫空女に向かった。
そして、孫空女がなぜ、こんなにも半狂乱なのかがわかって、身体を硬直させた。
「こ、これは、『溜め袋の護符』……」
思わず沙那は口に出す。
全身が汗まみれになり、全身に水を被ったような体液を撒き散らしている孫空女の額に、あの恐ろしい霊具が張りつけてあったのだ。
『溜め袋の護符』とは、どんなに刺激を与えられても、それが身体に溜まり続けて逃げていかないという霊具であり、しかも、絶対に絶頂することができないという効果がある。
沙那は、宝玄仙の霊具の中でもこれが一番苦しいと思っていて、沙那も何度もこれを張りつけられて責められたことがあるが、いくにいけずに、快楽だけがどんどん上昇する苦しさは、ほかには喩えようもない。
「ひぎきゅう、ひぎいいっ、がごぎいぃぃぃ──」
喚いている孫空女は、最早、人間の言葉を発していない。
寝台の上の孫空女は、全身をのたうち回らせながらも、拘束されて防ぎようのない金水蓮と朱姫の愛撫を一身を受けさせられている。
金水蓮は股間を、朱姫は胸を舐め回している。
ただでさえ巧みで、苦しいふたりの舌技なのに、いまは、霊具の影響により、発散できない快楽として、それが襲っている。
沙那も知っているが、『溜め袋の護符』の恐ろしさは、尋常ではないのだ。
いま、孫空女は股間と乳首を舐めらているが、普通なら、その舌がほかの場所に移動すれば、刺激を受ける場所も移動する。
しかし、『溜め袋の護符』の場合は、その舌が離れても、刺激だけはそこに残り続ける。
そして、ほかの場所を刺激されれば、その場所も新しい快楽の場所として残る。
その間も、前に受けた刺激の場所にずっと刺激を受けていると同じ状態だ。
さらに別の場所が加われば、そこも刺激として残る。
同じ場所に刺激を受けても、それまで以上の強い刺激として快楽の攻撃が加わることになる。
どれくらいの時間を孫空女が愛撫を受け続けているかわからないが、あの様子では、全身を愛撫されていると同じ状態だろう。
しかし、護符を張られている限り、絶頂はできない。だが、どれくらいの絶頂をもう溜めているのだろうか。
ああなってしまっては、それを剥がすのも地獄だ。
護符を剥がせば、溜まりに溜まった数十回分の絶頂が一気に孫空女を襲うだろう。
「なにしているんだよ。お前も、孫空女の身体に、快楽を溜めさせるんだよ──。そうだねえ、お前は、足の裏でも舐めてやりなよ。くすぐったさが数瞬ごとに倍になる苦しさは、快楽の気持ちよさとは別のものさ。こいつは泣き叫ぶだろうよ」
宝玄仙が突っ立ったままの沙那に言った。
「も、もう、可哀そうでは……?」
沙那は言った。
このままでは、孫空女は狂ってしまうかもしれない。
それに、なんだか様子がおかしい。
白目と黒目を交互にして、小刻みに痙攣している。
口から出る悲鳴も、常軌を逸している。
「いいから、舐めるんだよ。あと四半刻(約十五分)で解放してやるよ。その代わり、足の裏を舐め続けな、沙那。それが終わったら、四人で孫空女を犯すよ。そして、明日の朝には、このところ生意気でしたと土下座をさせるさ」
宝玄仙は笑った。
「明日の朝って、それまで続ける気ですか、ご主人様?」
沙那は驚いた。
まだ、陽は高い。
明日の朝どころか、夜になるのもまだまだ先だ。
「なにか文句があるのかい、沙那? これでも、わたしは、このところの孫空女に怒っているんだ。それとも、お前が引き受けるのかい? 『溜め袋の護符』を貼って、孫空女の横に並ぶのかい?」
沙那は身震いした。
そして、孫空女に向かい、その足裏の前にうずくまると、そこに舌を伸ばした。