「まあ、面白いですね。もう一度、詳しく教えてください」
「そうだね。その後は、こっちの丸い霊具について教えてよ。これはまだ説明してもらっていないよ」
沙那と孫空女が愉しそうな表情で、
観禅蔡は、自慢の霊具に、若いふたりが興味を持ってくれたのが余程嬉しいのか、身を乗り出して、いっそう熱心に語り始める。
宝玄仙は閉口した。
ふたりの魂胆は明らかだ。
夕食が終わって、部屋に戻れば、今夜は孫空女の股の毛を剃りあげる「儀式」をすると申し渡している。
それで、どうせなら、可能な限り、その開始を遅らせてやれと、ふたりで目論んだに違いない。
こいつらが、こんなに霊具に興味があるわけなどないのだ。
帝国の西側の山道沿いにある小さな神殿だ。
神殿の名は観院といい、神殿長は目の前の観禅蔡という老人である。
宝玄仙としては、この西方行脚の道中で、あまり天教には関わりたくないのだが、一応は命を受けての旅なので、少しは居場所を天教本部に知らせておく必要もある。
それで、この小さな田舎神殿であればと判断して、宿泊をすることにした。
観院は、観禅蔡という老神官のほかひとりの上士と十数名の居士がいるだけの小さな神殿だ。
煩わしさはないし、宝玄仙の居場所が天教本部にあがる頃には、間違いなく、宝玄仙は別の場所にいる。
だが、夕食会とやらが終わって始まった、この観禅蔡の霊具自慢には、宝玄仙は参ってしまった。
さっさと立ち去って部屋に戻ろうとする宝玄仙を押しとめて、この老人がいきなり、蒐集している霊具自慢を始めたのだ。どうやら、この老人の趣味は霊具集めのようであり、居士に霊具を持ってこさせると、それをひとつひとつ、宝玄仙たちに説明し始めたというわけだ。
霊具というのは、あらかじめ霊気を込めて作った道術の道具のことであり、術者が扱うことで、道術の技を道具を使って発揮できるというものである。
しかし、宝玄仙は、帝都では、霊具作りの天才と称されたほどの、霊具作りの才人だ。その宝玄仙を相手に、霊具を自慢するなど厚かましいにもほどがあるが、当人は気にした様子もない。
「……へえ、そんなことができるのですか。素晴らしいです」
「確かにねえ……。じゃあ、これは?」
沙那と孫空女が、その霊具自慢をはやし立てる。
なかなか話が終わりそうにないのも、観禅蔡の話が途切れそうになると、巧みにこいつらが口を挟んで、霊具自慢を続けさせるだ。
それにしても……。
宝玄仙は、わざとらしく、観禅蔡の霊具話に相槌を打つふたりにちらりと視線を向けた。
名目だけは、沙那と孫空女は、それぞれ、沙宝蔡、孫玉蔡をいう戒名を与え、天教の幹部ということになっているが、実際のところ天教のことなど、なにも知らない。
だから、騙して、上着でしかない神官服を裸に直接に着させただけの破廉恥な姿で、ここまで連れてきた。
上衣の合わせ目からは、ふたりの乳房の半分が出ており、なにも身に着けていない股は、本来は上着の裾が辛うじて隠しているだけなので、いまのように椅子に腰かけると、お尻の亀裂が背後から、ちらちらと見え隠れするほどだ。
目の前の観禅蔡は、色気など枯れ果てているのか、沙那たちの恰好を目の当たりにしても、まったく無関心の様子を示したが、食事の世話をする居士たちなど、目のやりように困ったように、そわそわしている。
当人たちも、いつもは男っぽいが、しっかりと股を閉じ、両手で股に手を固く押さえた仕草をしていて、珍しくも女らしい。
しかも、恥ずかしがっているせいか、妙に色っぽくもある。
いずれにしても、このままじゃあ、本当にかなりの夜更けまで話が続きそうだ。
そろそろ、終わりにしようと思った。
「……なかなか、興味深かったが、そろそろ、わしの霊具も見てもらおうかのう……」
宝玄仙はいつもの天教の八仙としての口調で口を挟んだ。
すると、沙那がすかさず口を開き聞ける。聡い沙那だけに、宝玄仙が話を終わらせようとしていることに気がついたのだろう。
邪魔できないように、沙那の肉芽に嵌まっている『
「んふうっ」
沙那が真っ赤な顔になって、身体をびくりとさせた。
加減はしてあるので、沙那が声を我慢できるか、できないかのぎりぎりの刺激のはずだ。
沙那は必死に股間の振動に耐える表情になって黙りこくる。
これで、ひとり……。
「沙那?」
孫空女が沙那の様子に気がついたようだ。
怪訝な顔になって、沙那を見た。
宝玄仙は、孫空女には、
「ひやっ」
孫空女が悲鳴をあげて、びくりと身体を伸ばした。
そして、慌てたように、口を閉じて、沙那と同じように真っ赤な顔になって黙りこくる。
これでいい……。
「どうしたのじゃ?」
観禅蔡が沙那と孫空女の様子に首を傾げた。
「なんでもない……。じゃあ、沙那、部屋に戻って、わしの霊具箱を持って来い。二番目の
宝玄仙は沙那に命じた。
手っ取り早く目の前の老神官の話を終らせるには、宝玄仙の所有する「本物」の霊具を見せて、自慢の蒐集品が、それに比べて、玩具のようなものだということを教えてやればいい。
そうすれば、いくらなんでも黙り込むだろう。
「……で、でも、ご、ご主人様……」
沙那が股間を押さえながら、躊躇するような物言いをした。
その表情は、股間を苛んでいる女淫輪のことよりも、宝玄仙が霊具を観禅蔡に見せようとしていることを危ぶんでいるようにも感じた。
宝玄仙は返事の代わりに、ほんの少し女淫輪の振動を強めてやった。
「あっ」
沙那が激しく反応させて、椅子から滑り落ちそうになった。
「それは愉しみだ。名高き宝玄仙殿の所有の霊具じゃ。是非、わしの蒐集品と競わせて欲しいのう」
観禅蔡が言った。
沙那は、それ以上はなにも口を挟まずに、腰をもじつかせながら部屋を出ていく。
「……ご、ご主人様……」
待っているあいだに、一度だけ孫空女が音をあげたように、ささやいてきた。
孫空女のお尻の穴は、ずっと誰かに舐められるような刺激が続いているはずだ。
「なにか用かい、孫空女?」
宝玄仙は孫空女の股間を責める刺激の場所を股間にも増やしてやった。
孫空女が小さな悲鳴をあげて、上体を前に倒す。
宝玄仙はその様子ににんまりした。
「……も、持って来ました」
しばらくすると、沙那が戻ってきた。
手には霊具の入った竹編みの箱がある。
宝玄仙はそれを置かせて、ひとつひとつ中の霊具を説明し始めた。
最初こそ、目を輝かせていた観禅蔡だったが、すぐに顔色が変わった。
その表情には、驚愕と苦悶の色が滲み出ている。
観禅蔡の心情は明白だ。
これでも、霊具の蒐集家として、この辺りでは一線を画してきたのだろう。だが、宝玄仙の持ち物を見て、自分の所有物の粗末さをやっと理解したに違いない。
すっかりと顔色が悪くなって、大人しくなった。
宝玄仙はほくそ笑んだ。
「では、そろそろ休ませてもらおうかのう」
宝玄仙は立ちあがった。
横のふたりについても、道術による悪戯を解放してやる。
沙那と孫空女が、ほっとしたように大きく息を吐いて、宝玄仙に続いて腰をあげた。
だが、ふたりとも、まだ少し息が荒い。
感じやすい沙那など、しっかりと閉じ合わされた内腿を伝って、膝辺りまで蜜が垂れ落ちしている。
宝玄仙はにんまりしてしまった。
「い、いや、待ってくれ、宝玄仙殿……。こ、これらをどこで手に入れたのかを教えてくれ……。例えば、これなど……。この中では、一番の霊力がこもっているのはわかる。こういうものはどこで手に入るのだ?」
すると、観禅蔡が焦ったような声をあげた。
ふと見ると、観禅蔡が掴んでいるのは、『
見た目は、片手で持てるほどの小さな人形であり、人間の手足と頭のようなものが胴体についているだけの布製ののっぺらぼうの人形である。
だが、観禅蔡も道術遣いの端くれではあるので、これに詰まっている霊気の大きさに、さすがに気がついたようだ。
宝玄仙の霊具の大部分は、沙那と孫空女を調教するための淫具だが、淫具とそうではない霊具は、ちゃんと区分をしてしまっているつもりだった。
沙那に持って来させた白い竹編みの箱には、見せても大丈夫な霊具だけを入れている。
だが、さっき操人形のひとつを三黒坊に使ったので、こっちに紛れてしまったようだ。
実は操人形は、淫具そのものではないが、目的は嗜虐のための操り具だ。
宝玄仙は思わず、小さく舌打ちした。
「これは……」
どこで手に入るものだという質問に、宝玄仙はすぐに、これは自分で作ったのだと口にしようとしたが、直前でそれを躊躇った。
こんな場末の古神殿の神官といえども、宝玄仙がこの手の霊具を扱うことは、あまり知られたくない。
「……まあ、いいじゃろう。忘れたわい」
宝玄仙は誤魔化した。
そして、沙那に箱を回収するように指示した。
沙那が宝玄仙の霊具が入っている箱に手を伸ばす。
「いやいや、頼むから、もう少し話を……。この人形はどのように扱うものなのじゃ?」
観禅蔡が沙那を阻むように、操人形をさっと手に取った。
沙那が困ったように、箱に手を出しかけた動きをやめて、宝玄仙を見る。
宝玄仙は嘆息した。
早く、この場を終らせて、こいつらと部屋に行きたい。
今夜は、色々と趣向を凝らしている。
こんな老人の話に、いつまでも付き合いたくない。
「……これは、操人形といって、一種の支配具じゃな」
宝玄仙は仕方なく言った。
「支配具? 素晴らしい……。霊具の中でも、支配具というのは、真に作成が難しいとされる……。もう少し、見せてくだされ」
観禅蔡が操人形を掴んで、しげしげと眺め続けている。
どうも、すぐに返しそうにない気配だ。
宝玄仙は苛ついてきた。
「そんなに興味があるのであれば、ひと晩中見てるがいい。明日の朝まで渡しておくから、いつまでも見ておれ。譲るわけにはいかんが、貸すくらいはよかろう」
宝玄仙は言った。
「ま、まことか?」
観禅蔡が目を見開いた。
その表情は、まるで操人形に憑りつかれたかのようだった。
「ご、ご主人様──」
そのとき、沙那が強い口調で声をかけた。
振り返ると、小さく首を横に振っている。
どうやら、操人形を観禅蔡に貸すことが気に入らない気配だ。
宝玄仙は、小生意気な沙那の女陰輪を再び振動させてやった。
しかも、今度は我慢できないくらいに振動を強くする。
「んふうっ」
沙那ががくりと膝を割った。
「沙那?」
孫空女が沙那の腰を掴んだ。
「どうしたのじゃ、沙宝蔡? 具合が悪そうじゃな。これはいかん──。旅の疲れでも出たか? 早く休ませねばな」
宝玄仙が笑いを堪えながら言った。
沙那はがくがくと膝を震わせて、必死になって声を我慢している。
孫空女が心配そうに、沙那の腰を支えた。
「……では、本当に休ませてもらう。素晴らしい夕食会だった」
宝玄仙は軽く頭をさげて、沙那と孫空女を促す。孫空女が片手で沙那を支えたまま、竹編みの箱を持つ。
女淫輪の激しい振動を受けている沙那は、自分では歩けないようだ。
その沙那を孫空女が支えながら進ませようとした。
「もうひとつだけ──。この操人形はどのようにして、他人を支配するのだ?」
観禅蔡が言った。
「支配したい者の身体の一部を操人形に込めるのだ」
「ほほう……」
そのとき、じっと操人形を見ている観禅蔡の目が輝いた気がした。
すっかりと操人形に見入った感じであり、もう宝玄仙たちには注意を払っていない。
宝玄仙は安堵した。
「じゃあ、いくぞ、お前たち」
宝玄仙は歩き出す。
「んんんっ」
そのとき、沙那の切羽詰まった声が響いた。
どうやら、達してしまったようだ。
「おや、どうしたのじゃ、沙宝蔡?」
宝玄仙はわざとらしく言った。
*
「あ、ああっ……。も、もういい加減に……や、やめさせて……く、ください……」
沙那は自慰をしながら、もう十数回目になるかもしれない哀願をした。
だが、ふたつの寝具の真ん中に胡坐で座っている宝玄仙は、沙那が苦しそうな反応をするのが心の底から愉しいのか、せせら笑うだけだ。
こうやって、宝玄仙に自慰を命じられてから、かなりの時間が経っている。
秘肉や肉芽には、ただれるような疼きの痺れが襲いかかり続けていた。
観院という山の中にある小さな古神殿だ。
そこで一夜を求めた沙那たちは、あてがわれた寝所で、またもや宝玄仙の理不尽な嗜虐と戦っていた。
三人がいるのは、神殿に住み込みで修行をしている三黒坊という若い神官に案内された部屋であり、ここで生活をしている神官たちの居室とは、少し離れた場所にある一室だ。
寝具は、寝台ではなく、“布団”と称する床に直接に敷物を敷いて、その上に掛け布を被って寝る形式のものだ。
それが並べて三組準備されている。
天教の最高位神官のひとりである宝玄仙は、もともと、ひとりだけ別室が準備されていたのだが、宝玄仙が断ったのだ。
もちろん、それは、いまやっているように、沙那と孫空女を寝る前に「調教」して愉しむためだ。
ここの神官長である観禅蔡という老人との夕食会が終わると、沙那と孫空女は、すぐに素っ裸にされて、さっそく理不尽な仕打ちを命じられた。
すなわち、沙那は寝台に膝を曲げて腰をおろし、両脚を左右に大きく開いて、宝玄仙に見えるように性器を晒しながら、自慰をしろという命令だ。
ただし、いきそうになったら、できるだけぎりぎりで、自慰を寸止めしなければならない。
そう命令されたのだ。
拘束はされていないが、『服従の首輪』を嵌められていて、どんな命令にも逆らうことができない沙那は、その首輪の力でなにかを命令されてしまえば、まったく抵抗できない。
いまも、煌々と燭台が照らす部屋の中で、宝玄仙に向かって股ぐらを開いて、片手で乳房を揉み、もう一方の手でねちゃねちゃと股間をまさぐり続けるということから、自由になることができない。
なにしろ、沙那の身体を一番よく知っている沙那自身が、「一番感じるように自慰」をしているのだ。
宝玄仙の『服従の首輪』で命じられていることであり、沙那には逆らいようがない。
「ああ、うくう……、い、いきそうです……。ほ、本当に……も、もう……」
沙那は泣きそうな声をあげた。
これを何十回続けたことだろう。
しかし、気紛れの宝玄仙が「命令」を解除してくれる言葉を告げてもらわない限り、沙那は何万回であろうとも、この理不尽な自慰を続けるしかない。
「いけるものなら、いってごらんよ。命令はまだ取り消さないよ」
宝玄仙がせせら笑った。
「ああ……」
沙那は今度こそ、泣き声をあげた。
すでに股間は、沙那がこれまでに感じたことがないほどに、熱く疼いていた。
駆け昇る快感も、上限知らずのようにせりあがってくる。
「んぐうっ、はううううっ」
沙那は大きな声をあげてしまった。
宝玄仙の結界により、どんな声も部屋の外には漏れないようになっているのだが、さすがに嬌声を響かせるのは恥ずかしい。
だが、そんなことには頓着していられない激しい快感が全身を貫くのだ。
「あ、あああっ……ああっ、あっ──。ま、また……」
だが、沙那はまさに絶頂をしようとする直前で、愕然とした思いを味わわなければならなかった。
沙那が達しようとした一歩手前、いや、半歩手前で、沙那の両手がぴたりと静止し、沙那から絶頂の感覚をとりあげてしまったのだ。
いまはもどかしく腰を振っても、沙那の指は快感を与えまいと逃げてしまう。
自慰をして絶頂寸前まで感じて、達する寸前でやめる──。
それを延々と繰り返す──。
服従の首輪で強要されていることであり、沙那にはどうしようもない。
しかも、沙那には、自分が絶頂しようとする感覚が、当然自分でわかってしまう。
だから、必ず自慰は昇天寸前の一番もどかしいところで静止してしまうし、間違って達するということもあり得ない。
沙那は、寸止め責めという性の拷問を続けるしかなかった。
「あ、ああ、もうおかしくなりそうです。ご主人様、犯してください。お願いします」
沙那はもう恥も外聞も捨てて、宝玄仙に哀願した。
この果てしない寸止めを前にしては、沙那の自尊心など、すでに完全に砕け散ってしまっている。
「いいから、続けな。今日は特別な客人を呼んでいるんだ。お前を犯すのはその人だよ」
宝玄仙が笑った。
なにを言っているのか、ちっとも頭に入って来ない。
とにかく、達したい。
沙那の頭にあるのはそれだけだ。
「ああ、ご主人様、いく、いくよ──。あ、あああつ、ひぎいいっ」
一方で宝玄仙の向こう側にいる孫空女が、あられもない声をあげたかと思うと、次に絶叫して苦痛の声をあげた。
孫空女が受けているのは、沙那以上に理不尽な拷問だ。
孫空女は、左右の手首と足首をそれぞれに縄で縛られて、大きく股間を上にあげた状態で身動きできないようにされていた。
いわゆる“まんぐり返し”という恰好らしい。
宝玄仙がそう言っていた。
その状態で、孫空女は上を向いている股間の肉芽を宝玄仙に勃起させられ、固い糸で根元を縛られて、天井から吊るされたのだ。
しかも、その糸は宝玄仙の道術で激しく振動をして、孫空女に快感を強要している。
だが、ちょっとでも動けば激痛が走る孫空女は、悶えて身体を動かすことも許されないというわけだ。
さらに残酷なのは、宝玄仙が孫空女が絶頂しようとすれば、思い切り糸が引きあげられる仕掛けにしたことだ。
これによって、孫空女また、絶頂しようとすれば、激痛により、それが中断されるということが繰り返すことになり、沙那同様に寸止め地獄に遭っているということだ。
「ああ──。あんまりだよ、ご主人様。もう、解放して。ねえ、なんでもするよ。ご主人様の足を舐める。股も舐める。お尻だって舐める。犬になる。お尻だって調教していい──。だから、もう許して」
孫空女が叫びだした。
わけのわからないことを言っているのは、それだけ孫空女の頭が追い詰められているということだろう。
だが、一度引きあがった糸がまた緩み、またも振動を再開した。
孫空女の悲鳴は、奇声のような嬌声に置き変わった。
「うるさい女だねえ……。お前のやることは、お客さんが来るまで、その股を愛液でびしょびしょにすることだ。お前の股間から出る蜜が油剤代わりだ。たっぷりと出しておきな。さもないと、毛を剃るときに痛いよ」
宝玄仙が笑った。
今夜、孫空女はついに、股間の剃毛をすることになっている。
そして、沙那は、はっとした。
自分自身が股間の毛を剃られたときのことを思い出したのだ。
確か、故郷の愛陽の城郭を出立して、二晩目だったと思うが、いまの孫空女とまさに同じ恰好に拘束された沙那は、宝玄仙の連れてきた宿屋の亭主によって、股毛を剃られたのだ。
わざわざ他人を連れてくるのは、宝玄仙特有の嫌がらせであり、沙那はその見知らぬ男に股間を剃られた挙句に、宝玄仙の目の前で犯された。
思い出すのも苦痛の恥辱だ。
それと同じことをしようとしている?
沙那は愕然とした。
「ご、ご主人様、ま、まさか、誰かを呼んで来ようとしているんじゃあ……」
沙那は宝玄仙に声をあげた。
だが、沙那の両手が自慰を再開してしまったために、またもや思考ができなくなるくらいの快感が迸った。
「あああ、んんんっ」
どんどんと絶頂までの間隔が短くなる。
それだけ、沙那の身体が繰り返す寸止めにより、敏感になっているのだろう。
だが、どんなに頑張っても、自慰は最後までいかない。
また、寸前で止まるのだろう。
沙那は大きな絶望とともに、逃げることのない快楽に身を任せた。
「いいんだよ。お前たちは、ただよがってな」
宝玄仙が白い歯を見せた。
それで、沙那は自分の勘が正しいということを悟った。
これは、なんとしてもやめさせなければ──。
沙那は気力を振り絞って、込みあがる快感から思考を取り戻そうとした。
なんとか、宝玄仙の気が変わるようななにかを……。
必死で頭を絞る──。
「あ、ああ、そ、そうだ……。ご、ご主人様、き、危険です。ご、ご主人様の霊具……。あの操りの人形を渡したままです……。も、もしも、悪用されたら……」
沙那は言った。
夕食会の最後に、宝玄仙が観禅蔡に渡した「操人形」という霊具……。
あれは、沙那も知っているが、非常に危険なものだ。
あの操人形に操りたい対象の身体の一部……。例えば、爪や髪の毛を術を遣える者が込めると、たちまちに、その相手が術者の操り状態になるというものだ。
沙那が剃毛をされたときの宿屋の主人も、宝玄仙はそれで連れてきたのだ。
「なにを言うかと思ったら、また、その話かい──。それはさっき説明しただろう。あの観禅蔡は道術者としては低級の能力しかない。相手がどのくらいの霊気を操れるかということは、わたしのような上級道術者となれば、会っただけでわかる。あの操人形を観禅蔡が使いこなすことは無理だ。安心しな」
宝玄仙は笑った。
「で、でも、なんらかの方法で……」
沙那はさらに食い下がった。
「うるさいねえ。寸止め自慰だけじゃあ、責めが不足かい? だったら、これをしてやるよ、沙那」
宝玄仙が横の霊具入れからなにかを取り出した。
今夜、観禅蔡に披露した白い籠ではなく、淫具としての霊具がびっしりと詰まっている黒い色の籠だ。
宝玄仙が沙那の前に持って来たのは、筆で紋様が書いてある小さな紙片だ。
「な、なんです、それ?」
沙那は思わず身震いした。
見たことのないものだが、宝玄仙の霊具など、得体の知れない凄まじい効果があるに決まっている。
「『繰り返しの護符』という霊具だよ。もういい。寸止め自慰の命令は解除する。その代わり、両手を背中に回しな。右手で左手首を掴んで握るんだ。足はそのまま開いてな。命令だよ」
乳房と股間をまさぐっていた両手がさっと背中に回った。
ほっとしたが、さっきの『繰り返しの護符』という紙が、ぴたりと乳房と乳房のあいだに貼りつけられる。
紙片はまるで沙那の肌に吸い付くように取れなくなった。
「な、なんです、これ?」
沙那は恐怖で竦みあがった。
「まあ、味わいな。これを貼られると、剥がしてもらうまで、一度受けた刺激が果てしなく繰り返す。それでいて、どんなに繰り返されても、その刺激が発散することもない。ただ溜めるだけだ。快楽だって、絶頂することなく、風船のように膨張するだけになるんだ。まあ、究極の寸止め具だね。ほらっ」
宝玄仙が沙那の股間に手を伸ばして、くるりと肉芽を回す。
「ひやっ──。えっ、ああっ、な、なに──? ああ、やあああっ」
沙那は嬌声交じりの悲鳴をあげた。
宝玄仙に加えられた刺激はただ一度だけだ。
すでに宝玄仙の指は沙那の股から離れている。
それなのに、同じ刺激がいつまでも続いているのだ。
まるで、ずっと宝玄仙に肉芽を弄りまわされている感じだ。
これは堪らない──。
「ああ、ああっ、あああっ、だ、だめええっ」
あっという間に絶頂感が襲ってきた。
沙那ががくがくと身体を震わせた。
「いきそうかい? だけど、心配入らないさ。いくら昇天しそうになっても、これを貼られている限り絶頂はできないからね。いつまでも溜まるだけだ。別名、『溜め袋の護符』ともいってね……。ほらっ、もっと溜め込みな」
宝玄仙が乳首をすっと擦る。
電撃を浴びせられたような気持ちよさが、沙那を襲う。
そして、それもまたいつまでも繰り返す。
沙那は悲鳴をあげた。
「反対もだ」
宝玄仙が笑って、すっすっと乳首を擦る。
宝玄仙の指は、それそのものが道術のような不思議な快感を生む。
沙那は身体を仰け反らせた。
「ほら、こっちも……」
完全に面白がっている宝玄仙が沙那の全身を触りまくる。
そのたびに、快感を受けている場所が増えていく。
確かに、すべての刺激が消えることなく続いている。
あっという間に沙那は絶頂するのに十分な快感に襲われた。
だが、またもやいけない。
護符の力なのだろう。
発散できない快感の衝撃が、どんどんと大きくなって、沙那の身体を焦がす。
沙那は痙攣のような震えを止められなくなり、ただひたすらに宝玄仙に許してくれと哀願した。
「まだまだ、次は尻だよ──」
宝玄仙が沙那のお尻に手を伸ばして、一度だけくちゅくちゅとお尻の穴に指を挿入して動かした。
それで恐ろしい全身の刺激の襲撃に、尻穴の快楽も加わった。
沙那は大きな声で吠えた。
そのとき、部屋の外から声がした気がした。
宝玄仙の結界は、内側の音を外に対して遮断するが、外の声が内側に防がない。普通に聞こえるのだ。
「入って来な」
宝玄仙が言うのが聞こえた、
「う、うわっ、ご主人様」
沙那には、ほとんどなにも知覚することはできなかったが、孫空女の悲鳴が聞こえた気がした。
同時に、若い男の悲鳴もだ。
沙那はかすむ視界で入って来た人物を見た。
果たして、それは三黒坊だった。
驚きはない。
そんなことだろうという予感はしていた。
それよりも、沙那は、もうこの寸止め地獄の苦しみを解放してもらうことしか考えられなかった。
「……あ、あの毛剃りの道具を……」
三黒坊がどぎまぎした口調で言った。
どうやら、三黒坊は孫空女の剃毛をするための道具を盆に抱えて持って来たようだ。
おそらく、指示したのは宝玄仙だろう。
「そこに置きな。それよりも、そこの沙宝蔡を見なよ。わたしの道術で狂ったような快楽地獄に陥っている。お前の珍棒で救ってやりな。それが神に仕える者の慈悲というわけだ」
宝玄仙がけたたましく笑った。
なにが神の慈悲だと、沙那の中に残っている一片の理性が、沙那の心の中で悪態をつかせた。
「で、でも……」
三黒坊は戸惑っている。
無理はないだろう。
突然にやって来て、この状況に接すれば、冷静でいる方が無理がある。
この三黒坊は、大きく取り乱さないだけすごい。
「沙那もお願いするんだ。そうすれば、護符を外してやるよ」
宝玄仙が言った。
それで沙那の覚悟は決まった。
ほかになにも考えられない。
いまだに、全身を襲う刺激は続いている。
気の遠くなるような快感が身体を席巻し、膨れあがっている。
「お、お願いします。後生よ──。わたしを犯して」
沙那は言った。
三黒坊が大きく目を丸くする。
だが、その股間が大きな膨らみを作ったのを沙那は見逃さなかった。