※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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220 ふたなり遊び

 失神から冷めていた沙那は、痺れたように重い身体を寝台で横たえたまま、拷問のような孫空女への仕打ちを眺めていた。

 沙那が、眼を覚ましたときには、すでに孫空女は股間で筆の柄を咥えさせられて、床の上に文字を書かされている最中だった。

 

 沙那が見たところ、どうやら、孫空女は股間と肛門に痒みの発生する油剤をたっぷりと塗られているようだ。

 そんな孫空女に、宝玄仙と朱姫は、股間で字を書いているときは股に咥えさせた筆を道術で振動させ、孫空女が止まると振動もとめるということをしていた。

 振動をとめられると、発狂するような痒みに襲われる孫空女は、振動による官能に耐えながら、恥辱的な行為をするしかない。えげつないふたりの責めに沙那はぞっとする思いでそれを見ていた。

 

 繰り返しそれをやらされるうちに、やがて孫空女は、次第に短い間隔で絶頂するようになった。

 女陰ではなく、肛門に筆を入れられて文字を書かされたときには、一字を書くあいだに一回から二回の絶頂をしていた。孫空女は、汗と淫液を床にまき散らしながら卑猥な方法で字を書き続けた。

 

 宝玄仙と朱姫が、封印を解くということを口実に、沙那と孫空女を嗜虐して遊んでいるのは明らかだ。

 封印を解く条件かどうかを試すだけなら、字を書くのは一度だけでいいのだ。

 孫空女がやらされたように、何度もやる必要はない。

 それに、痒み剤を塗ったり、股間に挿入した筆の柄を振動させるなど、本当にあの書物に書かれているのだろうか。

 宝玄仙の思いつきで付け加えたのではないだろうか。

 やっと許されて肛門から筆を抜かれた可哀そうな孫空女は、激しく息をしながら床に身体を横たえている。

 

「ほう、ほう、ほう」

 

 寿黒がおかしな声をあげて孫空女の痴態を悦んでいる。

 沙那は、宝玄仙と朱姫の悪戯とは別に、寿黒の態度の変わりようにも驚いていた。

 暴漢から孫空女から命を救われた寿黒は、最初は明らかな敬意をもって孫空女に接していた。

 しかし、寿黒に遺された財が、書物のどこかに隠されていて、それが封印を解除することで出現するかもしれないということがわかり、しかも、その書物が古今東西の嗜虐の技が書かれていたことから、沙那と孫空女が、そこに書かれている嗜虐を受けさせられ始めたときに、寿黒の態度は変わった。

 

 沙那だけではなく、孫空女にも、蔑みのような態度で接し出したのだ。

 宝玄仙が手を出すことを禁じているのでなにもしないが、許されれば朱姫と一緒になって嗜虐を行う気配さえある。

 事実、沙那は、宝玄仙にけしかけられた寿黒によって胸を責められた。

 その変化は、宝玄仙が沙那や孫空女を自分の奴隷だと呼んだときに起こったような気がする。

 沙那は思い出さざるを得なかった……。

 

 この祭賽(さいさい)国は、東方帝国と同じように奴隷制度のある国なのだということを──。

 東方帝国の奴隷制度は、所有が帝都の大貴族に限られており、世間的にはほとんど知られていないが、この祭賽国は、城郭の中で普通に奴隷が売買される国らしい。

 しかも、奴隷は女に限られる。奴隷の地位は異常に低く、売買される女奴隷は家畜と同じ扱いだともいう。

 奴隷としての売買が認められるくらいだから、もともと、女の地位が低いのだ。

 そんな伝統もあるから、隣国に男の存在を認めない不思議な女人国というものも生まれたのかもしれない。

 

「ねえ、ご主人様……。次は、これなんてどうですか? 男性器に洗濯物を干すときに使う留め具を挟むんです。沙那姉さんは、いま、男性のものもありますからできますよ」

 

 朱姫が書物をめくりながら言った。

 

「そうだねえ。ついでに、孫空女にも生やさせて、こいつらに引っぱり合いをさせてみるかい。負けた方には、これをやらせようじゃないか。片脚だけを吊りあげて、男の性器で小便させるんだ」

 

 宝玄仙がさらに書物を開いてそう言った。

 沙那は総毛立った。

 

「な、なんだよ、それ、酷いよ」

 

 叫んだのは横になって倒れている孫空女だ。

 

「そ、そうですよ。冗談じゃありませんよ。そんなの酷いじゃないですか」

 

 沙那は思わず叫んでいた。

 

「おや、気がついてたのかい、沙那。じゃあ、腕を背中に回しな。朱姫に後手に拘束させるんだ──。それから、孫空女、お前は、奴隷の分際でうるさいよ。ほら、沙那と同じものを生やしてやるよ」

 

 宝玄仙が、丸くなって横たわる孫空女のところにいき、道術をかける仕草をした。こっちには背を向けているのでよく見えないが、孫空女が悲鳴をあげたので、おそらく、沙那と同じように男性器を生やされたのだろう。

 

「そういうわけだから、沙那姉さん、起きて背中をこっちに向けてください」

 

 朱姫が『魔縄』を持ってやってきた。

 

「あ、あんた、調子に乗って──」

 

 沙那は朱姫を睨んだ。

 

「後ろを向くんですよ、沙那姉さん」

 

 朱姫は、高圧的な表情で沙那を見下ろす。

 沙那は、沸騰しそうな怒りに耐えながら、朱姫に背を向けた。朱姫をやり込めるのは簡単だが、宝玄仙が命令している以上、絶対に逆らうことはできない。

 仕方なく背中に腕を回す。力一杯握った拳だけがせめてもの抵抗だ。

 背中で手首が縛られる。さらに二の腕がひと巻きされて胸の上下を挟むように縄が巻かれる。

 

「寝台を降りて、孫姉さんと同じように、しゃがんでください」

 

 朱姫は言った。

 沙那は無言で膝を折ってしゃがんだ。

 その沙那の太腿にふた巻ほど縄が巻かれて、ふくらはぎと足首にしっかりと繋がれる。反対の脚も同じように拘束されると、もう、膝を折った状態で身体を揺すりながらでなければ前には進めない。

 

「それにしても、考えてみれば、この男の性も面白いですよね。沙那姉さんがどんな責めが好きなのか、よくわかりますものね」

 

 朱姫が沙那の股間に生やされている男性器を手でこねる。

 

「ちょ、ちょっと、朱姫、や、やめなさいよ」

 

 沙那は身悶えた。

 

「沙那姉さんは、こうやって、身動きできなくなって、責められると、それだけで興奮するんですよね。ほら、もうこんなに元気になってきましたよ」

 

 朱姫が男性器の下側を擦りながら笑った。朱姫の言うとおり、沙那に生やされている肉棒は、すっかりと勢いを取り戻して股間でそそり勃つ。

 

「でも、凄いですね。完全に男性のものそのものですね。ちゃんと、玉袋もあるんですね。しかし、こうやって、完全な男性器があって、女性器も当たり前にあるというのは、なんだか人間じゃなくて、妖魔みたいです」

 

 朱姫は、今度は、肉棒の下にぶらさがっている玉袋を握る。

 

「い、痛い──」

 

 朱姫の力が強い。沙那は悲鳴をあげた。

 

「じゃあ、こっちに来てください、沙那姉さん」

 

 いつの間に手に持っていたのか、朱姫は長い紐糸を取り出して、沙那の股間の男性器の根元に巻いた。そして、結ばれた紐を引っ張り始める。

 

「ひぎっ──。い、痛い──。や、やめなさい、朱姫」

 

 沙那は男性器が引っ張られる痛みに悲鳴をあげながら、懸命に拘束された脚を前に出す。

 

「沙那姉さんは、痛いことは好きじゃないみたいですね。あんまり、ここが大きくなりませんね。やっぱり、女の部分を弄られる方がいいですか?」

 

 孫空女の横まで歩かされると、朱姫は今度は沙那の女陰をいじくりはじめる。

 やりたい放題とはこのことだろう。はしたなく声をあげさせられながらも、絶対に後で朱姫をとっちめてやろうと沙那は心に決めた。

 

「こっちは、痛いのも満更ではないようさ」

 

「ひぎいっ」

 

 宝玄仙が笑いながらそう言い、沙那と向かい合うように身体を起こされた孫空女の股間の玉袋を握り揺らした。宝玄仙の言うとおりに、孫空女の股間に生やされた男根がぐいと勢いを強くしてそそり勃った。

 

「お前が痛いのがいいとは知らなかったよ、孫空女。五行山を騒がせた盗賊団の女頭領が哀れな変態に成り果てたものさ」

 

 宝玄仙が玉袋を握ったり、引っ張ったりして孫空女をからかっている。孫空女は泣くような声で悲鳴をあげている。

 

「痛い──痛いってばあ、ご主人様──いぎっ──」

 

 本当に宝玄仙は力一杯に握っている。

 孫空女の一物は興奮をしているようだが、沙那は逆に鳥肌が立ってくる。沙那は自分の顔が引きつるのがわかった。

 

「痛いのが感じるんですか? それは変態すぎるんじゃないですか?」

 

 朱姫が孫空女の怒張を指で弾いた。

 

「はがっ──。しゅ、朱姫、お前まで調子に乗るんじゃないよ」

 

 孫空女が朱姫を恐ろしい表情で叫ぶ。

 

「そんな怖い顔したらいやですよ、孫姉さん。いつもの遊びじゃないですか」

 

「しかし、単に痛いのが好きというわけじゃなさそうだね。お前がやったら、少し勢いがなくなったよ」

 

 宝玄仙が孫空女の股間をしげしげと見ながら言った。

 

「きっと、ご主人様が責めるからですよ。孫姉さんは、ご主人様が好きですから、痛くても反応しちゃうんですよ、きっと──」

 

「う、うるさいよ、朱姫」

 

 孫空女が真っ赤な顔をして朱姫に怒鳴った。

 

「じゃあ、朱姫が孫姉さんのここを大きくしてさしあげますから」

 

 朱姫はしゃがみ込んで、孫空女の男根の先を口に含んだ。孫空女が真っ赤な顔をしてよがり始める。沙那にやった舌責めをしているのだろう。孫空女はあっという間に全身を真っ赤に染めて汗を滲ませ始めた。朱姫の口の中の男性器がこれ以上ないというくらいに大きくなる。

 

「しかし、お前が沙那につけた紐はいいねえ。こっちにもおくれ。こいつにもつけさせるよ」

 

 宝玄仙が言った、

 

「はい、どうぞ」

 

 朱姫は、孫空女の一物から口を離して、着ていた貫頭衣の内隠しから沙那の男根の根元に巻いているのと同じ細い紐糸を出して宝玄仙に手渡した。宝玄仙がそれを受けとり、孫空女の股間にそそり立っている男根にも結ぶ。

「じゃあ、お前の犬とわたしの犬を競争させるかい? 負けた方は、寿黒の前で裸を晒すことにしようじゃないか。ついでに、男性器も生やすんだ。男の性器をつけると、なにに対して興奮しているか丸わかりになるから、かなり恥ずかしいことになるけどね」

 

「受けて立ちますよ、ご主人様。ご主人様が負けても、約束は守ってくださいね」

 

 ふたりが勝手なことを言い始めた。いつもの調子で、どんどん責めが変わっていく。それにしても、沙那と孫空女の意思を無視したふたりの会話に、沙那は強い憤りを感じずにはいられなかった。

 

「ご主人様、朱姫──。な、なにを言っているんですか」

 

「そ、そうだよ、酷いよ」

 

 沙那と孫空女はふたりで叫んだ。

 

「奴隷のお前らには、口答えの権利などありはしないよ。それっ、部屋の壁から壁まで、十往復だ。それいけ──」

 

 宝玄仙が孫空女の一物の根元に結んだ紐糸を引っ張って歩かせ始める。

 

「あぎっ」

 

 孫空女が声をあげる。そして、前によちよちと進み始める。

 

「あたしたちもいきますよ。負けないでくださいね、沙那姉さん」

 

 朱姫も沙那の男根に巻きつけた紐糸を引く。股間に激痛が走った。

 

「ひいっ」

 

 沙那は悲鳴をあげて、さっきのように、後手にされた身体で、膝を曲げて拘束されている両脚を一歩、一歩と前に出す。

 

「そ、そんなに引っ張らないで、朱姫」

 

 沙那は哀願の声をあげざるを得なかった。

 孫空女とふたりで、部屋の壁から壁まで一物を紐で引っ張られて歩かされ、壁まで行けば反転して、反対側の壁に向かわせられる。

 歩くあいだに、ときどき、身体の敏感な部分を愛撫されて刺激される。

 一物が勢いを失くさないようにということらしい。

 

 さらに、八往復目からは、宝玄仙が最後の三往復は、一往復ごとに肉棒から精を出してから進まなければならないという決まりを付け足し、沙那も孫空女も、男と女の性器をいじくられて、無理矢理に精を放出させられた。

 

 理不尽な競争をさせられて、やっと宝玄仙が言った十往復が終わった頃には、全身にびっしょりと汗をかいていた。

 この間、寿黒は、耳障りな歓声をあげながら、沙那と孫空女の恥辱的な競争を見物していた。

 結局、競争をして勝ったのは沙那だ。

 体力は孫空女が勝るが、宝玄仙は孫空女の身体に対する悪戯を激しくやりすぎて、最後の一往復は、孫空女の腰が抜けた状態になったのだ。

 なにせ、一度でいい射精を孫空女は三回くらいずつさせられていた。

 

「しょうがないねえ。じゃあ、脱ぐよ」

 

 宝玄仙は苦笑しながら、服を脱ぎ始めた。

 寿黒は、宝玄仙まで裸になったことに目を丸くしていたが、宝玄仙はまるで寿黒などここには存在していないかのような振舞いだ。

 素っ裸になった宝玄仙の身体には、沙那や孫空女と同じような男性器がついている。

 

「ご主人様のここも元気ですね」

 

 朱姫が宝玄仙の股間を眺めながら言う。朱姫の言うとおりに、宝玄仙の股間の一物はそそり勃っている。

 

「わたしは、お前たちを嗜虐しているときが、一番興奮するからね。いまは、興奮の頂点をいうわけさ──。それにしても、そろそろ、わたしも精を抜きたいねえ。孫空女、お前の尻で受け入れてくれるかい?」

 

 宝玄仙が言った。

 

「も、もう、なんでもしてよ」

 

 不自由な拘束された身体でくだらない競争をやらされて、息も絶え絶えの孫空女がやけくそのように言った。

 宝玄仙は、孫空女の身体を前倒しにして、肩を床につけさせると、お尻を高く上げさせて、そこに股間のものをゆっくりと突っ込んでいった。

 お尻に宝玄仙の男根を受け入れると、孫空女はすぐによがり始める。そして、吠えるように嬌声をあげ、身体を何度もそり返らせて、短い間隔で続けて気をやった。やっと、宝玄仙が孫空女のお尻の中に精を放った仕草をみせたときには、もうほとんど口もきけないくらいになって、身体中の力が抜けたような状況になった。

 

「ご、ご主人様、いま、なんのためにわたしたちが、こんなことをしているか覚えていますか?」

 

 今度は沙那を犯そうという気配を漂わせている宝玄仙に沙那は怒鳴った。

 完全に最初の目的を逸脱しているとしか思えない。ここで、孫空女を犯すことは書物の封印を解錠することと関係ない。

 

「そう言えば、そうだったね。忘れていたよ──。さてさて、じゃあ、次はなにをするんだったかね」

 

 宝玄仙は笑って、椅子を引っ張ってきて座り直した。そして、ぱらぱらと書物をめくり出す。

 

「洗濯物を留める留め具で性器を挟む責めですよ、ご主人様」

 

 朱姫が言った。

 

「そうだったね。持っておいで、朱姫」

 

 宝玄仙が言い、朱姫は性具をしまっている葛籠に向かう。

 

「ほら、始めるよ、孫空女。身体を起こさないか」

 

 宝玄仙が横になっている孫空女の身体を起こそうとする。

 

「か、勘忍して……。す、少し、休ませて……」

 

 本当に孫空女はつらそうだ。そんな孫空女を宝玄仙は容赦なく起こして、沙那と向かい合うようにしゃがませる。

 

「持ってきました、ご主人様」

 

 朱姫が持ってきたのは、普通の洗濯物を留めるための留め具ではなく、宝玄仙が調教用に作成した大きな留め具だ。しかも、挟む力を強く改良したものだ。そして、魔具でもあるこれは、ただ挟むほかにも、えげつない動作もする。それを知っている沙那は怖気づく。

 しかも、その留め具は、沙那の股間の男性器の先に向かっている。

 

「い、いやよ、それは──」

 

 びっくりして、沙那は思わず身体を後方に退がろうとした。だが、朱姫が後ろから支えて、それを阻む。

 

「はぎいいぃぃ──」

 

 一物の先端に留め具が挟まれた。息も止まる程の激痛だ。沙那は大声をあげた。

 

「は、外して──。ちょっと、外して、朱姫、ご主人様──はぎっ──」

 

 沙那は激しく身体を暴れさせた。しかし、それを朱姫が後方から支えて阻止する。

 

「大丈夫だよ、朱姫。この宝玄仙の魔具だ。揺すっても、叩いても、絶対に外れないさ──。ほら、お前だよ、孫空女」

 

 宝玄仙は顔面が蒼白になっている孫空女の肉棒に、もうひとつの留め具を伸ばす。

 

「おやおや、また、大きくなったじゃないか。やっぱり、お前は痛いのも満更じゃないようだね」

 

 宝玄仙がぎりぎりの位置で手を止めて笑った。孫空女の顔が屈辱に歪んでいる。沙那は、孫空女への仕打ちが可哀そうになり、思わず顔を背けた。

 その孫空女がけたたましい悲鳴をあげた。

 顔をあげると、沙那と同じように肉棒の先端に留め具を付けられている。激痛に顔が歪んでいる。

 

「さあ、じゃあ、引っ張り合いを始めますよ」

 

 沙那と孫空女は、朱姫に促されて向かい合わされる。そして、朱姫が、沙那と孫空女がつけられている留め具を紐で結んだ。

 

「ほら、お互いに退がっていきな。負けた方は片脚あげて小便だよ」

 

 宝玄仙が囃し立てる。

 しかし、怖ろしいほどの激痛だ。引っ張り合いなど冗談じゃない。沙那はただ、悲鳴のような呻き声をあげることしかできなかった。

 

「引っ張り合うんだよ、お前たち」

 

 宝玄仙が苛々したような声をあげる。

 そんなことを言われても、この状態を耐えるだけで必死なのだ。引っ張り合いなどできない。

 

「しょうがないねえ」

 

 宝玄仙が呟いた。

 その直後、もの凄い衝撃が男根の先に走った。

 

「はぎゃああぁぁぁ──」

「ふがああぁぁぁぁ──」

 

 沙那も孫空女も発狂したような声をあげてしまった。

 

「ほら、お前たち、早く引っ張り合いな。だんだんと強くなるからね」

 

 沙那はじりじりと身体を後ろに退げる。孫空女も必死の形相で同じことをしている。

 

「沙那姉さんと孫姉さんは、どうしたんですか、ご主人様?」

 

 朱姫が首を傾げている。

 

「ふ、ふ、ふ、こいつらがしている留め具の先から弱い電撃が流れているのさ。もっとも、いまは、弱いけど、だんだんと強くなるけどね」

 

 宝玄仙の言葉のとおり、男根の先から流される電撃は次第に強くなる。沙那は叫びながら身体を懸命に後方に退げる。さっきまでは、留め具で性器を挟まれるのが耐えられないと思っていたが、性器に直接電撃を流される激痛に比べれば、留め具の痛みなど大したことはないと思った。

 しばらくの間、沙那と孫空女の股間につけた留め具を繋いだ紐が引き合ったが、やがて、孫空女についていた側が外れた。

 孫空女は尻餅をついてひっくり返る。

 

「は、早く外して、朱姫──」

 

 沙那も喚いた。まだ、あの電撃が留め具から流れているのだ。

 

「そんなに焦らないでください、沙那姉さん。いま、外しますから」

 

 しかし、朱姫はなかなか沙那につけた留め具を外そうとしない。揺すったり、弾いたりして、さんざんに沙那を泣かせてから、やっと外してくれた。

 沙那もまた、その場にひっくり返った。

 

「ほら、罰だよ。牡犬のように片脚あげて小便しな。朱姫、木桶を持っておいで」

 

 孫空女が宝玄仙にお尻を叩かれて、孫空女の脚をあげさせている。孫空女は、ほとんど泣いたような顔をしながら、膝をまげたまま、片脚をあげた。

 

「次は、なにを試しますか、ご主人様? 留め具で引っ張り合うというのも、封印の鍵ではありませんでしたね」

 

 朱姫が木桶を孫空女の股の下に置きながら言った。その間、孫空女は、肩を床につけてうつ伏せになり、片脚だけを大きく掲げるという恥辱的な恰好で待たされている。

 

「そうだねえ……。だけど、あんまり、この書物には、女責めの種類がないんだよねえ。『性典、第十巻、嗜虐篇第三』と題名にあるからねえ。嗜虐篇の第三は、男責めが主体なのかもしれないねえ──。ねえ、寿黒、確か、最初に何冊か書物があるうちの一冊がこれだと言っていたろう? じゃあ、『嗜虐篇第一』と『嗜虐篇第二』も持っているんじゃないかい? そっちには、女責めの嗜虐方法がたっぷりと書かれているんだろう? そっちを持ってきな。男責めも面白いけど、そろそろ、女として責めたいんだ」

 

 宝玄仙が言った。

 

「さあのう……。わしは字が読めんし、ほかの本の題名と言われてもわからんのう。この書物が、こんなとてつもない性の遊びについて書かれているとは、今日の今日まで知らんかったしのう」

 

 寿黒が応じた。

 沙那は呆れるとともにかっとなった。さんざんの仕打ちは、曲がりなりにも、この書物の封印を解錠するためにやっているのだ。書物を変えれば、それそのものがなんの意味もない。

 だが、文字が読めないという寿黒の言葉で気がついたことがある。

 沙那は慌てて、口を開く。

 

「ま、待って、孫空女──。脚を下ろして」

 

「なにを言ってるんだい。勝手なことを言うんじゃないよ、沙那。それとも、お前がやるのかい」

 

 孫空女の片脚小便をやめるように言った沙那に対して、宝玄仙が声を荒げた。

 

「い、いえ……。でも、聞いてください。わたし、少し思ったことがあります。その書物の封印についてです。それに、財の場所が書かれている場所です──。そもそも、それが目的ですよね、ご主人様」

 

 沙那は叫んだ。

 すでに宝玄仙は忘れかけているようだが、そういう話だったのだ。

 

「ああ……そう言えば、そうだったねえ──。お前になにか考えがあるのかい? まあ、このまま、一個一個潰すように、お前と孫空女が責めを受け続ければいいんじゃないかい? そのうち、どれかが当たって解錠できるさ」

 

 宝玄仙は不満げに言った。

 

「闇雲にやって封印が解錠できるわけがないじゃないですか──。少しは、効率よくやろうとか、合理的に考えようとかないんですか? そんなやり方でいつ終わるというんですか」

 

 沙那は拘束されたまた懸命に訴えた。

 

「お前になにか考えがあるのかい、沙那?」

 

「もちろんです。とにかく、縄を解いて、わたしにもその書物を見せてくれませんか?」

 

 沙那が言うと、仕方がないという感じで、宝玄仙が朱姫に沙那の縄を解くように言った。

 拘束が解かれると、沙那は卓の上にある問題の書物を手に取った。そして、すぐに、沙那の予想が正しいことを悟った。

 財の埋められている場所が書かれている場所の予測がついたのだ。

 

 それにしても──。

 

 このまま終わらせるには、あまりにも悔しい。沙那は、ぱらぱらと中身をめくった。宝玄仙の言うとおり、これは基本的には、男を嗜虐するための方法が書かれているようだ。よりにもよって、なんでこんなものに財の場所を隠したのかは知らないが、おそらく、これなら、盗んでいく者などいないとでも考えたのだろうか。

 あるいは、寿黒に遺産を遺した男もこういう倒錯の趣味の持ち主だったのかもしれない。

 

 さまざなま責めの手段が書かれているが、本当に男責めばかりだ。沙那が最初に読まされた物語も、冒頭こそ女が男になぶられているが、しばらくすると、立場が逆転して、責められていた女が自分を責めていた男に仕返しをしている。

 むしろ、そっちが物語の主体であり、長々とえげつなく男に仕返しをする描写が続いている。

 

「ご主人様、ここを読んでください。さっき、わたしが読まされた物語の続きです。責める者と責められる者の立場が逆転しています。これは、かなり複雑な情景だとお思いになりませんか?」

 

 沙那は、宝玄仙に書物の該当の部分を示しながら言った。

 

「まあ、そうだねえ──。よく読まなかったけど、あれから、女が復讐するんだねえ。凝った話じゃないか」

 

 宝玄仙は言った。

 

「確かに、書物の前段の部分は、さまざまな責めの方法が書いてありますが、これが封印の解錠の条件であれば、もしかしたら、この手の趣味の男性が、偶然にもそういう倒錯した性愛の中で行ってしまう可能性があります。そうすると、封印を第三者に解錠されたくない義兄殿としては、困るのではないでしょうか。だから、解錠の条件は、より複雑な方法にしたと予想できます」

 

 沙那はできるだけ真剣な表情で言った。内心では思い切り心の中で舌を出している。

 

「なるほど、一理あるかもしれないね。この手の書物を持っているということは、それなりの趣味の男だったということかもしれなからね。わたしが普段、こういうことを日常的にするように、そいつもやっていたのかもしれないねえ──。寿黒、お前の義兄というのは、ここに書いている男のように責められたり、あるいは、女ではなく男を責める嗜虐癖でもあったかい?」

 

 宝玄仙が寿黒に振り向く。

 

「さあのう……。さすがに、そこまでは知らんなあ。わしの家に来たときには、もう弱っておったし……。まあ、一度も結婚をせんかったのは確かのようじゃが……」

 

 寿黒が応じた。

 

「義兄殿の性癖なんてどうでもいいですよ、ご主人様。でも、もしも、書物の前段に並べられているような単純に一方の側が責める行為が解錠の手段であれば、もしかしたら、予期せず、封印の解錠の条件にある行為を書物の前で行ってしまうかもしません。しかも、さっきご主人様と朱姫が、どんどん責めを気まぐれに変えたように、嗜虐する者は、どんどん責めを変化させます。そのときにまぐれあたりで、関係のない者が封印解除の条件を満たしてしまうかもしれませんよ」

 

「んんっ? つまりどういうことだい?」

 

 宝玄仙は首を傾げた。

 

「あるいは、財のことなどまったく知らない第三者が、書物を読んで、書かれている責めを試してみたときに、偶然に財の隠し場所を見つけてしまい、財が横取りされてしまうかもしれません。だから、単純にこの書物に書かれていることを封印解除の条件にすることはないんですよ──」

 

 沙那は言った。

 

「つまり、もっと複雑な方法こそ、解錠の条件だというのかい、沙那?」

 

「そうです、ご主人様。書物の後半に書かれているような、責められていた者が責め手となり、責め手だった者が責められる。これくらいの複雑な条件であれば、うっかりと封印の解錠が発動するということはないでしょう。わたしを責めていたのは朱姫です。逆転して、朱姫をわたしが責めれば、もしかしたら封印が解錠されるかもしれません」

 

「わかった──。まあ、やってみようか──。じゃあ、朱姫、お前は裸になりな。手を後ろに組んで、沙那に縛られるんだよ」

 

 黙って話を聞いていた朱姫が蒼い顔で声をあげた。

 

「孫空女の拘束も解きます。朱姫にはたっぷりと仕返しをしたいので、孫空女にも手伝ってもらいたいし……」

 

「好きにしな。わたしは面白ければなんでもいいのさ」

 

 宝玄仙は、朱姫の困惑顔に満足そうな表情をした。

 沙那は、孫空女を縛っている脚の『魔縄』を解いた。『緊箍具(きんこぐ)』については、宝玄仙が道術で解錠してくれた。身体の自由を得た孫空女だが、まだ、つらそうに両手を床について裸身を支えている。

 その間、沙那は、何度か朱姫に怒鳴り、服を脱ぐことを促した。朱姫は、顔を引きつらせながら、一枚一枚服を脱ぐ。

 

「孫空女、悪いけど、朱姫を後手に縛ってくれる。わたしは、荷の中から責め具を持ってくるから」

 

「わ、わかった」

 

 孫空女は、まだだるそうにしながらも立ちあがった。

 朱姫はもう全裸になっていて、観念して両手を背中に回して組んでいる。

 

「そ、孫姉さん……。お願いします」

 

 責め側から一転して責められる側にさせられた朱姫は、すっかりと意気消沈しているようだ。

 

「どんな風に責めるんだい、沙那? 愉しみだよ」

 

 宝玄仙は、縛られる朱姫を眺めながら、責め具を取りに行く沙那に振り返ることなく声をかけた。

 

「お愉しみです」

 

 沙那は言った。そして、荷の中からいくつかの性具を選んで出す。そして、ほかに、自分の荷の中からもうひとつ……。

 

「ほう、浣腸器かい、沙那? 朱姫に、寿黒の前で大便をさせようということだね。まあ、面白そうじゃないか。その筆はなんだい。それを使うのかい?」

 

 宝玄仙は沙那が持っているものに眼をやって言った。

 

「浣腸をして、さらに筆でくすぐって苦しめます。浣腸はこの前、手に入れた火酒があるので、水で薄めて酒浣腸をしてみたいと思います」

 

 沙那たち供は、酒は飲まないが、まれに宝玄仙は寝酒を少しだけ飲むことがある。火酒はかなり強い酒だが、宝玄仙はそれをおいしそうに嗜む。

 

「ひいっ──。さ、沙那姉さん、そんなのは堪忍してください」

 

 沙那の言葉に、朱姫が悲鳴をあげた。

 

「うるさいよ、朱姫。さっきまであたしたちをえげつなく責めてくれたじゃないか。沙那と一緒に、たっぷりと酒をお尻に注いでやるよ」

 

 孫空女が後手縛りの縄をぎゅっと締めながら朱姫に言った。

 

「違うわ、孫空女──。酒浣腸を受けるのは、ご主人様よ」

 

 沙那は、完全に油断している宝玄仙の首に、あの如意仙女の『道術封じの首輪』をがちゃりと装着した。

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