※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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227 道術殺しの精液

 『移動術』で金光院の地下の部屋に戻った瞬間に、朱姫は異変に気がついた。

 五、六人の黒い影──。

 確かめようと振り返った瞬間に背後から抱きしめられた。

 

「うわっ」

 

 悲鳴をあげるとともに、周りが城郭兵だらけだということを悟った。なぜ、ここに兵がいるのかということを思う余裕はなかった。考えたのは、結界から続いてやってくる沙那と孫空女のことだ。

 

「だ、駄目です──」

 

 警告を送るとともに、咄嗟に結界を閉じた。

 次の瞬間、力強い数本の腕が朱姫を押さえつける。

 床にねじ伏せられながら大きく眼を見開いた。

 なにが起こっているがわからない。

 

「道術遣いだ──。奔破児(ほんはじ)殿に知らせを──」

 

 誰かが叫ぶとともに、数名が部屋を出ていく気配がした。

 同時にさらに多くの人間が部屋に入り込んでくる。

 

「いたああっ、な、なによ、あんたたち――」

 

 強引に膝立ちに立たされて、後ろ手に革紐で縛られる。

 周囲は武装している城郭兵だらけだ。よくわからないが、金光院の娼館が王軍によって制圧されたのだ。

 ならば宝玄仙は──?

 そして、九頭女たちはどうしたのか──。

 

「あんたたち──」

 

 思い出したように身をもがいた。

 容赦のない蹴りが朱姫の腹に喰い込んだ。

 

「あぐっ」

 

 一瞬、視界がなくなる。

 金属の塊りを腹にぶち当てられた感じだ。

 息が詰まって、眼から涙が溢れた。

 

「いぎっ──」

 

 再び兵のつま先が鳩尾を突き上げた。

 口から胃液のようなものがこぼれる。

 

「んぎいいいっ」

 

 さらに拳──。

 今度は頬だ。

 耳鳴りがしてわけがわからなくなる。

 反対側からも顔を殴られた。視界が消える。

 倒れかけるのを無理矢理に起こされる。

 

 ぼんやりとした視界が戻ると、眼の前に誰かがいた。

 顔をあげる。

 そこにいたのは女と見まがうような美しい顔立ちをした将校だ。

 将校であることは軍装からわかった。

 だが、男──?

 女ではないのか?

 

「道術遣いに間違いないか?」

 

 その男が周囲の兵に言った。

 男の声だ。

 やはり、男なのか──?

 それにしても美しい顔だ。

 喋っているとそうでもないが、口を開かなければ少年のようにしか見えない。

 

「突然、この部屋に道術で現れました、奔破児殿。間違いありません」

 

 誰かが報告する。

 

「ふむ」

 

 奔破児という将校が値踏みをするような視線で朱姫を見下ろす。

 

「……霊力がほとんどない……。本当に『移動術』を?」

 

 よくわからないという表情をしている。

 そう言えば、道術をかけようとしてないときの朱姫は、霊力が探知できないくらいに小さくなるらしい。

 そして、道術をかけようとすると、身体の中の霊気が増幅し、道術を遣えるようになる。

 半妖である朱姫の特性のようだが、それについて宝玄仙が常に驚愕したようなことを言っているのを思い出した。

 

 いずれにしても、霊力を探知できるということは、この奔破児も道術遣いに違いない。

 もっとも、朱姫にもそれはわからない。

 おそらく、眼の前の男は自分の霊力を外部から探知できないように遮断している。

 

「こいつが閻(えん)魔女でしょうか?」

 

 奔破児の横の肥った男が言った。

 そいつは軍服を着ていない。

 でっぷりと太っていて、どこかの分限者のようにしか見えない。

 

「わからんな。すでに連行したふたりの女も含めて、誰かが閻魔女に間違いないだろう。奇襲した我々にあれだけ抵抗してみせたのだ。ここが、ただの妓楼ではないことだけは確かだ」

 

 奔破児が言った。

 その言葉で、宝玄仙と九頭女(くずじょ)はすでに連行されたということが予想ついた。

 おそらく、沙那たちとともに、堂人君(どうじんくん)とかいう女焼酎業者を襲っている間に、この金光院が城郭兵に急襲されたのだ。

 それで、宝玄仙、九頭女は連行されたに違いない。

 いくらかは抵抗したらしいが、すでにここは城郭兵により制圧されているようだ。

 そこに朱姫は、『移動術』で、のこのこと戻ってきてしまったのだ。

 

 だが、これによりかなり悪い状況になったということも悟れる。

 さっきの活動で、女奴隷の肉芽を切断して殺そうとしていた堂人君とその部下の銀婆たちを閻魔女の名で殺した。

 その堂人君と銀婆の生首は、国都の辻に閻魔女の象徴でもある奴隷歌の貼り紙とともに晒している。

 まだ、その情報は入っていないようだが、その報告と、朱姫が『移動術』で戻った時間を突き合わせれば、閻魔女の仕事が、朱姫が『移動術』で戻った時刻と合致することは容易にわかる。

 そうすれば、すでに連行されているに違いない宝玄仙と九頭女も身が危険だ。

 

 どうすべきか──。

 一度だけなら『獣人』の道術が遣えるかもしれない。

 だが、一度だけだ。

 それからはしばらく遣えないし、眼の前の兵からは脱出できるが、あの道術は長く続けることができない。

 霊力が切れれば、それで終わりであり、さらに一階にいるであろう城郭兵の囲みを突破できる見込みはないような気がした。

 

「念のために、こいつにも道術封じをしておくか」

 

 奔破児が言った。

 すると周りの兵が歓声のような声をあげた。

 なんだかおかしな雰囲気だ。嫌な予感とともに、朱姫の背に冷たい汗が流れる。

 朱姫の胸元にひとりの兵の手がかかった。

 

「いやあっ」

 

 思い切り叫んだ。

 

「へぶっ、んぐわっ」

 

 その途端に、眼に火花が走った気がした。

 顔を殴られたのだ。

 しかも、両側から……。

 口の中に血の味が拡がる。

 息ができなくなる。

 

「んぐわっ」

 

 また、無防備な腹に蹴り。

 全身が脱力する。

 しかし、倒れることはできない。

 膝立ちのまま身体を押さえつけられている。

 

「それっ、服を脱ぎな」

 

「ひいいっ」

 

 服が胸元から下まで一気に破り取られた。

 数名の兵が寄ってたかって切れ端になった服を朱姫から取り去る。

 腰から下も奪い去られて、身体にまとっているのは下着のほかには、破り残った腕の部分と靴のみだ。

 次に胸当てが奪い去られる。

 汗ばんでいる胸が露わになる。

 そして、腰の下着に手もかかる。

 あっという間にそれも引き千切られる。

 再び身をよじる。

 

「いやあっ、んぶっ」

 

 抵抗の素振りをした途端に殴られた。全身が脱力する。

 犯される──。

 

 その恐怖が朱姫に走る。

 身体を覆うものはもうなにもない。

 股間に直接当たるひんやりとした外気が自分の哀れな姿を実感させる。

 

 嫌だ──。

 両親を殺されてから、何度も人間の男から繰り返された強姦の恐怖──。

 それが蘇る。

 

「霊力が拡大したぞ」

 

 奔破児が大きな声をあげた。

 無意識のうちに霊力が体内に溜められたらしい。

 いや、そもそも、朱姫はまだ意図的に自分の中の霊力を拡大したり縮小したりということはできない。

 もともと、そういう体質ではない宝玄仙は、霊力の拡大を制御する方法だけは、どうやればいいのか教えてやれないと言っていた。

 ただ、朱姫が嗜虐癖に酔うときには霊力がどんどんあがる──。

 そんなことを言っていた気がする。

 

 だから、宝玄仙は、このところ、よく嗜虐の際に、朱姫に手伝わせて道術を遣わせることが多い。

 宝玄仙なりの朱姫に対する道術指導でもあるようだ。だが、いま、強姦の危機に陥ることで霊力があがった。

 恐怖によっても、朱姫の魔力は大きくなるようだ。

 

「股を開かせろ──」

 

 奔破児が叫んだ。

 両側から手が伸びる。

 反射的に朱姫は下肢に力を入れた。

 しかし、すると蹴りが腹に突き刺さる。背中からも蹴られる。

 

 『獣人』の道術──。

 

 頭に浮かぶ──。

 いや、まだだ。機会を待つべきだ……。

 宝玄仙がどうなっているのか……。

 朱姫の道術が最後の手段という状況もあるかもしれない。

 それに、沙那と孫空女もきっと助けにきてくれる。

 いまはまだ──。

 

「また、霊力がしぼんだ。どうなっているのだ、こいつは?」

 

 奔破児が首を傾げているのがぼんやりとした視線に映る。

 

「まあいい……。とにかく、寝かせろ」

 

 奔破児が言った。そして、下袴をあろしはじめる。

 朱姫の身体にたくさんの腕がかかる。

 無防備な裸身に男の手がかかると無意識に抵抗してしまう。

 

「や、やだよおっ、へぶっ」

 

 すると、また暴力が襲ってくる。

 腹──。

 背中──。

 顔──。

 滅茶苦茶に殴られて蹴られる。

 

 力を失った朱姫の身体が床に倒された。

 左右から別々の兵に両脚を引っ張られる。

 股の間に奔破児が立った。

 朱姫は顔をあげる。

 逞しい怒張が奔破児の股間にそそり勃っている。

 開いた両脚がさらに立て膝の形をとらされる。

 

「少し、ほぐせ。抵抗したら、また殴れ」

 

 奔破児が笑いながら言った。

 

「ひいっ」

 

 その瞬間、五、六の手が朱姫の股間に伸びてきた。

 朱姫の無毛の恥丘がたくさんの手で荒らされる。

 恥唇の両側を引っ張られてくつろげられて、女陰の中に別の指が入り込む。

 肉芽には別々の手が両側から──。

 ばらばらの手が一斉に女陰を愛撫する。

 それがしばらく続く……。

 

「ひ、ひゃあ──」

 

 歯を食い縛っていた口から嬌声が漏れたのは、さらに別の指が肛門に伸びたときだ。

 

「こいつ、異常に尻が弱いぞ」

 

 誰かが愉しそうに言った。

 その言葉を合図のように、肛門をなぶる手もさらに増える。

 まるで虫がたかるように、朱姫の下腹部が大勢の兵の手により責められる。

 

「あひいっ──」

 無理矢理に官能を引き出さされる恥辱──。

 しかし、淫情が朱姫を襲い、官能の酔いが朱姫を包んでいく。

 ひとりが人差し指を女陰の中央に挿し込み、内部の感触を確かめるように抽送する。

 両側の粘膜の部分をそれぞれに擦られる。

 その上端の敏感な突起をすくい出されて摘まんだり、はねられたりして刺激される。

 そして、肛門にも指が──。

 朱姫は泣き声をあげた。

 

 すべての人格を否定されて、ただ、よがるだけの獣にされていく気分だ。

 殴られ続けた全身の筋肉は弛緩している。

 そして、性器をいじくられて感じしまう性感だけがどんどん膨らんでいく。

 

「そろそろ、いいと思いますよ、隊長」

 

 誰かが言った。

 奔破児が動いた。

 露出した下半身が朱姫の股間に迫る。

 

 犯される──。

 どうしようもない恐怖が走る──。

 

「ふぐっ」

 

 朱姫は押さえつけられている身体を激しく揺すった。

 その顔面に拳が食い込む。

 視界が消える。

 鼻から血が噴き出すのがわかった。

 その血が口の中に入ってくる。

 口の中で噴き出している血と混じる。

 朱姫は口から溜まった血を吐いた。

 

「まだ、殴られ足りないのか?」

 

 奔破児の声──。

 眼を開ける。

 奔破児の拳に血がついている。

 顔面を正面から殴ったのは、この奔破児のようだ。

 朱姫は首を横に振った。

 次の瞬間、かなりの容積をもった怒張の先端が体内に押し入ってきた。

 

「あがぁ──」

 

 裂けるような痛み──。

 身体の力が入り過ぎているのだとわかった。

 諦めて力を抜く。

 痛みがなくなり、すっと快感が拡がる。

 

 奔破児の肉棒が朱姫の女陰の最深部に達した。

 さんざんになぶられて淫液を出さされたとはいえ、まだ十分でないのか痛みがある。

 それでも、気持ちよさはある。

 宝玄仙に調教され尽くした身体だ。

 どんな愛撫であろうと、そこから快感を搾り取ってしまう。

 

「よがってますよ、こいつ」

 

 押さえつけている兵のひとりが声をあげる。周りの兵がどっと沸く。

 朱姫の身体に屈辱が走る。

 それとともに、眼から涙がぼろぼろとこぼれる。

 そして、朱姫の股間の奥で膨れあがった怒張の先端から精が迸るのがわかった。

 

 熱い劣情の液──。

 しかも、朱姫を感じさせるとか、奔破児が気持ちよくなるとかいうような性交ではない。

 ただの作業のような感じで、朱姫の股間に精を注ぎ込んだのだ。

 それが激しい恥辱を朱姫に与える。

 しかし、体内に拡がる違和感を朱姫は覚えた。

 

 なんで、霊力が?

 朱姫の中の霊力がなにかに覆われている。

 そんな感じだ。

 そう言えば、道術を封じるとかいうような意味のことを発言していた気がする。

 

 精を放つことで道術封じ──?

 朱姫は驚いた。

 奔破児の怒張が朱姫の中から出た。

 

「もういいぞ、お前たち、勝手にやれ」

 

 奔破児がそう言って離れていく。

 

「俺が先だ──」

 

 大きな兵が周囲の男を押し避けるように朱姫の脚を抱える。

 すでに下半身を露出していて、腰をぶつけるように奔破児が精を放ったばかりの朱姫の股間の谷間に怒張を埋めてくる。

 

「い、いやあぁ──」

 

 朱姫は泣き叫んだ。

 激しい律動が股間を襲う。

 

「早くしろよ、たくさんいるんだからな」

 

 周りの誰かが言う。

 

「わかっているよ。さっさと出せばいいんだろう」

 

 律動がさらに激しくなる。

 十回ほどでぶるりと身体を震わせて兵が身体を硬直させた。

 そして、朱姫の中に新しい精が最深部に注がれる。

 

「どけっ」

 

 その兵が押し避けられて別の兵が朱姫に乗ってくる。

 挿し込まれる怒張──。

 もう早く終わって欲しい──。

 思うのはそれだけだ。

 

 しかし、何人の兵に犯されたら終わるのだろう──。

 繰り返される凌辱──。

 次々に男が交代して、精が注がれる。

 なにも考えない。ただの作業だと思い定める。

 

 何人目かのときに、姿勢を反対にされた。

 背後から犯される態勢だ。

 少しでも抵抗の素振りを見せると滅茶苦茶に殴られる。

 もう諦めた。

 好きなようにやればいいのだ。

 

「ほら、咥えな」

 

 誰かが強引に肉の幹を朱姫の口に含ませた。

 

「歯を当てたら、歯を全部を折るぞ。しっかりとしゃぶりな」

 

 これ以上、殴られたくなかった。

 大人しく顔を前後に揺すって舌を動かす。

 その間も後ろから激しく股間を突かれるのは続けている。

 

「けっ、こいつうまいぜ」

 

 しばらくすると、前側の男が嬉しそうに身体を震わせた。

 早く終わらせたくて、技を使う。口の中の幹を縫い目に沿って舌先を動かし、さらに先端をすすりあげるようにした。

 男がさらに震え、口の中に粘性の液体が迸る。

 口から男の肉棒が出ていく。

 それにあわせて朱姫は舌で口中に拡がった精液を外に出す。

 今度は後ろの男が朱姫の女陰に精を放った。

 前後の男たちが代わる。

 次は、口の中に二本入ってきた。

 

「はうっ」

 

 背後から股間を貫かれて思わず声を出してしまう。

 女陰を突かれたことではなく、背後から貫くために後ろの男が尻たぶをぐいと持って肛門の周りを刺激したのだ。

 それで激しい快感が朱姫を襲った。

 しかし、とりあえず、後ろの穴を犯すということはなさそうだ。

 それだけはほっとする。

 ただ、朱姫が反応したことに周りが沸く。

 口惜しさが全身を駆け巡る。

 律動が開始された。

 

「先に連れていった道術遣いの女たちはやらせてくれなかったし、店の女も地下室組はなしだ。地下の探索なんてつまらない役割を当てられたと思ってけれど、むしろ運がよかったぜ」

 

 背中越しの朱姫を犯す男がそんなことを言いながら腰を回しながら突いてくる。

 

「ほら、気を抜くんじゃねえよ」

 

 口の中に肉棒を突っ込んでいる兵のひとりによって髪の毛が引っ張られた。慌てて舌を動かす。

 

「乳房は小さめだが、それもいいな」

 

 後ろの男が朱姫の胸の下で揺れる膨らみの片側を手のひらですくうように揉みしだく。

 もうひとつの乳房は別の手が握りしめてくる。

 胸を責めるふたつの手管の違いが、朱姫の官能を呼び起こす。

 

「そろそろ、いくぜ」

 

 背後から突く男の肉棒の律動があがった。

 

「たまんねえや」

 

 尻が持ちあげられるように強く引っ張られる。

 精が朱姫の中で迸る。

 

「こっちもだ」

 

 続いて口の中にも精液が拡がる。

 すぐにもうひとつ──。

 口の中の血と混じった精の味が朱姫の凌辱感を呷る。

 そして、すぐに次の男──。

 背後からの動きが今度はまったく別の責めになり、朱姫の反応を愉しむようにねっとりと動かす。

 こぼれ落ちる嬌声が悔しい──。

 

「おいおい、熱くなってきたぜ」

 

 後ろの男が嬉しそうに叫んだ。

 そんなことはない。

 朱姫は叫びたかった。

 しかし、その口もすぐに別の肉棒に塞がれる。しかも、今度のは大きい。

 喉まで貫くような長さに、朱姫を嘔吐感が襲う。

 

 氷のように冷たくなる心──。

 それと矛盾するように官能の与える甘美感に熱くなる肉体──。

 犯されながら嘲られる恥辱──。

 あらゆるものが朱姫を襲う。

 

 繰り返し、繰り返し、周りの兵によってたかって膣と口を犯された。

 途中からなにも考えることができなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらいの時間が過ぎたのか……。

 朱姫の身体にたかる新しい兵がいなくなった。

 終わったのか?

 

 朱姫は鼻をすすりあげた。

 鼻水とともに血が鼻に入り、血の匂いが拡がる。

 全身はまるで力を失ったように動けない。

 その朱姫の髪を掴んで身体を引き上げられた。

 朱姫は後ろ手のまま、ずるずると立たされる。

 

「外まで歩け──」

 

 無理矢理に立たされて尻を蹴りあげられる。

 

「ひいっ──」

 

 その蹴り出される力によって、朱姫の身体は床に倒れ込んだ。

 

「ほら、立てよ。また蹴られたいか」

 

 誰かが言った。

 朱姫は懸命に立とうとする。

 しかし、どうしても脚に力が入らないのだ。

 

「歩けなきゃ、這えよ」

 

 うつぶせの横腹に兵の靴先が食い込む。

 

「ふぐっ──。あ、歩きます……。も、もう、やめて」

 

 やっと口がきけた。

 朱姫は身体を捩じって懸命に前に進ませる。

 立とうとは思うのだが、まだ力が戻らない。

 でも、少しでも前に進むという仕草を見せないと、また滅茶苦茶に殴られるに違いない。

 やっと地下室と地下室を繋ぐ廊下まで出た。

 上に通じる階段から誰かがやってくる。

 

「お前たち、まだ、この娘に関わっていたのか。もう、引き上げだ。軍営に戻るぞ。ほかの店の女はすべてもう軍営に運んだぞ」

 

 朱姫は顔をあげた。

 奔破児の横にいた肥った分限者の服装の男だ。

 

「抱えて連れて来い」

 

 その男が言った。

 

「はっ」

 

 数名の兵が朱姫の裸身を抱え上げる。

 

「待て、念のためだ。連行する前に、ここで、腕と脚の骨を折っておけ」

 

 肥った男が言った。

 朱姫の身体が再び床に降ろされる。手首の革がほどかれていく。

 

「や、やめて──」

 

 朱姫は絶叫した。

 その朱姫の右腕が数名の兵に抱えられて、関節の逆の方向に強引に捻じ曲げられた。

 

「あぎゃあああ」

 

 激痛が走る──。

 大きな音とともに、自分の肘の骨が外されたのがわかった。

 そして、棍棒のようなもので肘と手首の間を叩き潰される──。

 

 迸る口からの悲鳴が終わらないまま、今度は反対側の腕に兵たちが手をかけた。

 股間からじょろじょろと尿が垂れ流れるのがわかった。

 その朱姫の反対側の腕からも大きな音がして激痛が襲った。

 

「うぐあああっ、はぎゃあああ」

 

 けたたましい絶叫が自分の声だと気がついたのは、持ちあげられた膝に大きな兵が両脚で着地した瞬間だった。

 そして、暗くなる視界の中で、膝から下がおかしな方向に曲がっているのがかろうじて見えた。

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