229 女三蔵、調教開始
なにが起きて、そして、どういう状況であるのか、さっぱりとわからなかった。
とりあえず、宝玄仙は床の上で四肢を上下左右に引き伸ばされている裸身を懸命に揺さぶったり、鎖によって開脚に開かされている二肢をくねらせるように悶えさせたりした。
とにかく、訳がわからない。
気がついたらこうやって、素裸で手足を鎖で拡げられて拘束されていたのだ。
四肢の手首と足首には金属の枷がつけられていて、枷に繋がった鎖が部屋の四隅の柱に向かって引っ張られているために、ほとんど身動きすることができない。
また、仰向けになった視界に見えるのは天井だけで、高い位置に太い梁がある普通の天井だ。
床は板張りのようだが薄地の絨毯のようなものが敷いてあり、裸身の宝玄仙にもひんやりとした感覚はない。
首を捻って見える限りは、狭い庵の一室のような気がする。
部屋の壁側は襖になっていて鍵がかかっている様子はない。外は庭のような感じだ。
いったいここはどこなのだろう?
少なくとも、金光院ではないことだけは確かだ。
どこかの別の建物のようだが、
窓は閉じられているので外の景色はわからない。
ただ、夜の闇がうっすらと明るくなってきた頃から、外から鳥の声なども聞こえはじめた。
それ以外については、どんなに大声を出しても現れる者もおらず、自分がこんな状況になっている理由を悟ることのできる情報がなにもない。
どうしてこんなことになったかがわからない。
記憶にあるのは、
相手にしたのは、女みたいな顔をした若い男であり、
童貞だといっていた割には性技に長け、あっという間に宝玄仙もいかされてしまい驚いた。
その奔破児はすぐに帰っていったが、宝玄仙はそのまま部屋で眠っていた。
それからなにか騒動があった気がするが、眠いので放っておいた。
だが、そのうちに部屋の中に白い煙のようなものが流れてきて、慌てて飛び起きた。
その煙が「仙薬」であり、おそらく睡眠効果のある薬草が燃やされていることがわかったからだ。
道術でその効果をうち消そうと思ったが、なぜか道術が遣えなかった。
その理由を考える余裕はなかった。
そのときには、大量にその煙を吸ってしまっていて、襲ってきた睡霊に意識を失ったのだ。
そして、眼が覚めると、この部屋の中に鎖で縛られていた。
まったくわけがわからない。
なによりも、わからないのはまったく道術が遣えなくなっているこの状況だ。
身体の中の霊力が、なにかに張りつけられたかのように動かないのだ。
やっと、朝を迎えることで、少しずつ霊力を動かせるようになった気がするが、実際に道術を発揮するほどになるにはまだ数刻かかりそうだ。
この鎖は霊具ではない。霊具ではない鎖を道術で外すには、まずは、道術を集中して拘束している枷を霊具にする。
そして、霊具になった枷に改めて霊力を送り込んで枷を外すのだ。
そこまでやるには、大量の霊力が必要だし、時間もかかる。
不意に外から誰かがやってくる気配がした。
宝玄仙は身体に緊張を走らせた。
襖戸が開いた。
「これは
「お、お前は──」
宝玄仙は部屋に入ってきた人間を見上げて、驚きの声をあげた。
そこにいるのは、昨夜、宝玄仙と床をともにした奔破児だったのだ。
あのときは、若い青年のような姿だったが、いまは軍服を着ている。
軍装に疎い宝玄仙にも、奔破児が身に着けている軍装が将校用のもので、しかもかなりの上級将校だということはわかる。
「これは、お前の仕業かい、奔破児? ど、どういうことだい。説明しな」
宝玄仙は身体を揺すって叫んだ。
しかし、がちゃがちゃと四肢を拘束している鎖が揺れるだけで、ほとんど身動きできない。
「ひひひ、奔破児お坊ちゃま──。こいつが、お坊ちゃまが気に入られた女でございますか? それにしても、確かに、なかなかに美人だし、いい身体をしていますな。性器についても、遊妓だと聞いてましたから、使い込んだような黒い色をしているかと思ったら、若々しい桃色の色をしてございますなあ」
しわがれ声でしたので、慌てて顔を懸命に動かして奔破児の背中側を覗いた。
すると、背の低い老婆が奔破児の背中からそっと出現した。
その老婆が、宝玄仙が大きく開脚させられている股の間にしゃがみ込んで、横になにかの荷を置く。
「お前なんだい──? ちょ、ちょっと、このくたばり損ないは誰なんだい、奔破児? い、いや、そもそも、これはどういうことなんだい。説明しな」
宝玄仙は声をあげた、
「くたばり損ないは酷いじゃないかい」
老婆が空気の漏れたような笑い声をあげた。
「じゃあ、死にかけの
宝玄仙は腹が立って怒鳴った。
そして、かろうじて顔をあげ、顔を宝玄仙の性器にくっつけるようにして覗き込んでいる老婆の顔を見た。
歳は何歳だがわからないが、七十よりも下ということはないだろう。
宝玄仙の性器を値踏みするように凝視している。
さすがにこれだけ間近に観察されると、内腿まで曝け出している腿を隠したくなる。
しかし、鎖で引っ張られた四肢は、身体をよじらせることができるだけで、羞恥の源を隠すことなどできない。
「玉鈴だったかねえ。これから、長い付き合いになるんだから、名前くらい知っておいておくれ。あたしは、
また例の耳障りな笑いをする。
「玉鈴じゃないよ。わたしは宝玄仙だよ──。それよりも、さっさと鎖を解きな、奔破児。こんなことをしてただで済むと思っているんじゃないだろうねえ。わたしは、道術遣いだよ。娼婦でもなんでもない」
「娼婦じゃない? じゃあ、あそこでなにしてたんだ?」
「娼婦のふりをして遊んだだけさ。娼婦だと思って、こんなことしているんなら、すぐにこれを外すんだよ。さもないと酷いことになるよ」
宝玄仙は懸命に首を動かして、宝玄仙の裸身をにやにやしながら見下ろしている奔破児に向かって叫んだ。
「そうか。とにかく、宝玄仙というのが本当の名なのだな。じゃあ、そんなな格好でなにができて、この俺にどんな酷いことができるのか教えてもらいたいものさ、宝玄仙──」
「なんだと? ふざけんじゃないよ。お前なんて、道術一発てみ……」
「その道術が遣えないのだろう?」
奔破児がせせら笑った。
その余裕のある雰囲気に嫌な予感がした。
もしかして、道術の遣えない状況は、奔破児の仕業?
「ところで、お前の仲間は、軍営に連れていかれて拷問の真っ最中だ。しかし、お前については、この奔破児が気に入ったから、その身柄を俺が預かることにした。つまり、特別にお前だけは、俺が特別に借りている家で囲ってやることにしたということだ。感謝されことすれ、そうやって、罵られるとは心外だな」
奔破児がそう言って千代婆の後ろに胡坐でしゃがみ込む。
拷問という言葉に宝玄仙は驚いた。そういえば、この奔破児は高級将校の軍装をしている。そして、あの騒動……。煙で気を失う寸前に、軍がどうのこうのと誰かが叫んでいた気がする。あれは、国軍が金光院を襲ったときの騒動だったのか……? そして、拷問と言った。軍営に連れていかれた者が拷問にかけられていると……。
「ねえ、拷問と言ったかい?」
宝玄仙は訊ねた。
「ああ、お前を含めて金光院にいた三人の道術遣いの女をはじめ、二十人ほどの女は軍営に連行して、閻霊女のことやその背景について取り調べをしている。三日もすれば、あることないこと話すだろう。そうすれば、全員処刑だ。だけど、お前だけはこうやって、俺の個人的な所有物して匿ってやることにした。感謝して欲しいものさ」
「ど、どういうことだい?」
宝玄仙は言った。
この奔破児の言っていることが本当だとすれば、奴隷制度に反対し、北安の城郭を利用してで不穏な活動をしていた九頭女の部下は全員が捕縛されたということになる。
閻霊女というのは、確か、九頭女が沙那たちにやらせていた、女奴隷の主人を次々に暗殺してしまうという荒仕事のことだったろう。
そんな騒ぎを国都で起こそうとした理由は知らないが、随分と派手にやっていたようだったから、それが仇となって摘発を受けてしまったということのようだ。
それにしても、この奔破児は、妓楼で宝玄仙と性交したときとは、まるで態度も口調も違う。
やっぱり、あのときは、初心な青年を装っていたのだろう。
昨夜は、十代のなにも知らないような青年にしか見えなかったが、いまはしっかりと二十代後半に見える。
もっとも、女のように綺麗な顔立ちと白い顔の肌は変わらない。
「金光院は俺が摘発したということだ。あの連中が閻霊女と呼ばれていた活動をしていたことは明白だ。どんな罪になるかは裁判で決まるが、実際には俺が決める。少なくとも軍営に連れていった者は間違いなく全員処刑だ。金光院に隔離している者まで罪が及ぶかどうかは俺次第だな」
「……そう言えば、道術遣いを三人捕えたと言ったかい?」
金光院にいた道術遣いは、九頭女と宝玄仙と朱姫だ。沙那や孫空女も霊具は使えるが、あのふたりを道術遣いとはみなさないだろう。
金光院が軍に制圧されたのなら、九頭女が捕えられたのは確実だ。
しかし、昨夜、朱姫は、沙那たちとともに、閻霊女の活動をするために外に出ていたはずだ。
道術遣いが三人拘束されたとすれば、その中には朱姫も含まれるのか?
だが、その朱姫が捕えられたとすれば、一緒にいた沙那や孫空女も軍営にいるのだろうか。
「半月ばかり国都を騒がせた閻霊女という暗殺者が、道術遣いであることは明白だ。神出鬼没の活動は、『移動術』を遣っているに違いないからな。そもそも、たかが妓楼に道術遣いが隠れていたというのは不自然だ」
「に、二十人……、連行した二十人というのは、全員が娼婦なのかい?」
「誰か気になる人間がいるのか、宝玄仙?」
「い、いや……」
奔破児の口調が研ぎ澄まされたものに変わった気がした。
この男にはうっかりとなにかを喋ってはならない──。
宝玄仙の心に警告が鳴る。
沙那と孫空女は娼婦ではないから、ほかの全員が娼婦であればそのふたりだけは含まれないと思ったのだが、もしも、まだふたりが自由であった場合は、下手な訊き方をすれば、閻霊女だったふたりがまだ残っていることを教えることになる。
沙那と孫空女まで捕えられたかどうかは、いまは訊けない。
「とにかく、あんたのことは、お坊ちゃまが気にいったようだよ。だから、本来ならそいつらと一緒に殺されるところなのに、こうやって囲い者にしてもらえるんだ。よかったじゃないかい」
千代婆がそう言いながら、さっき置いた荷を解いてなにかを拡げはじめた。
残念ながら、仰向けに寝かされている宝玄仙には、股の間でなにかをしている千代婆の手元までは見えない。
「ちょ、ちょっとなにを始める気だよ、千代?」
なにか嫌な予感がする。がそごそと音がして、いろんなものを宝玄仙の股の間で拡げている。
「この千代婆に任せておきな──。ところで、お坊ちゃま、この女のことをなんとお呼びすればいいのです?」
「いずれは妾にするつもりだが、いまは宝とでも呼べ」
「へえ、お坊ちゃま、この女を愛人になさる気ですか。たった一度なのでしょう? それほど、お気にいられたのですか?」
「そうだな。気にいった。いい身体だった。味わいも抜群だ。それで、性行為が初めての初心な若者を演じているはずなのに、うっかりと本気を出してしまった」
「情がうつりなさったかい?」
「まあな。とにかく、どうせ、こいつは、閻霊女の活動にも、叛乱にも深くは関わっていないだろう。そういう裏の顔など持てない女だ。こういうことに関する俺の勘は働く──。特に、身体を合わせた女に関しては間違うことはない」
奔破児が笑って言った。
「お、お前ら、わたしの質問に答えるんだよ。なにを始める気かって、訊いているじゃないか──。それに、妾とはなんだい、奔破児。この宝玄仙が、お前のような男の妾になるわけがないだろう。冗談もほどほどにしな──」
宝玄仙は苛つきを爆発させた。
しかし、やっぱり、鎖はほとんど動かないし、霊力もなかなか回復しない。
いや、霊力はあるのだ。
しかし、動かして道術を発生させる部分がほんの少ししかないのだ。
「へえ、なかなか気の強い女じゃないですかい、お坊ちゃま。こんな女の赤貝まで晒して、奥の奥まで見られているというのに、これだけの跳ね返り──。本当にお坊ちゃまの妾などになりますかねえ?」
千代婆が笑いながら言った。
「だから、お前に手伝ってもらうのだろう、千代婆──。金光院の一件が片付くまで、俺もなかなかこっちには来れんし、道術遣いの道術を封じるために、この宝玄仙だけではなく、軍営にいるふたりにも一日に一回ずつ精を放たねばならん。だから、任せたい」
「つまり、この宝とやらを、大人しい女にするということですね?」
「お前の色責めにかかれば、そんな女でも一箇月もすれば従順になるだろう。とにかく、調教をしてくれ。頼むぞ」
「ふ、ふざけるんじゃないよ、奔破児──。ちょ、調教だって──」
宝玄仙は叫んだ。
調教をするとか、妾にするとか、こいつら頭がおかしいに決まっている。
絶対に逃げなければ──。
このままでは、なにをされるかわかったものじゃない。
しかし、道術が……。
「おや、お坊ちゃま──。この宝殿の女陰は、調教という言葉に反応しましたよ」
千代婆がわざとらしい大声をあげた。
「な、な、な──。う、嘘をいうんじゃないよ、千代」
宝玄仙は激しく狼狽した。
そんなことがあるわけがない。
「そんなに股ぐらを拡げておいて、なにを言ってるんだよ。この千代婆にかかれば、こと性に関しては、隠し事は無理だよ。さしずめ、お前、調教というのがどういうものか、身体で知っているね。そうだね、宝殿?」
「へえ、宝玄仙は、調教を受けたことがあるのか? 確かに、少し濡れてきたな」
奔破児が宝玄仙の股間を覗き込みながら言った。
全身がかっと羞恥で熱くなる。
そして、もしかしたら、このふたりが言っていることは本当ではないかと考えてしまう自分がいる。
かつて闘勝仙たちから受けた二年間の調教の日々……。
それは、確かにいまいましい記憶として、身体に染みついてしまっている。
感じたくないのに無理矢理引き起こされる官能──。
血がなくなるかと思うような恥辱に襲われているのに、なぜか疼く股間──。
ただ笑い者にするためだけに、開発されていった肛門──。
あの歳月のことは、封印しても、封印しても、なくならない恥辱の日々……。宝玉とともに耐えた闘勝仙から嗜虐を受ける日々……。
もう、あんな月日を送るのは嫌だ──。
「ち、違う。もういい──。とにかく、これを外すんだよ」
宝玄仙は暴れた。
しかし、やはり、四肢を開かされている身体は、反り返ることすら満足にできない。
「とにかく、お前には、ここで千代婆の調教を受けてもらう。千代婆の果てしのない色責めを受ければ、お前もいつか屈服するだろう──。千代婆、頼むぞ。この宝玄仙が、俺の囲い者になることを歓んで承知するように屈服させてくれ」
「じゃあ、お坊ちゃまのために、ひと肌脱ぎますかねえ」
千代婆が言って、さらに宝玄仙の股間側ににじり寄った。
「お、お前、なにをすんだい……?」
「いや、こうやって、宝の凄まじい恰好を見ていると、確かに、お坊ちゃまの嫁に相応しい気もするねえ。器量もいいし、身体もいい。これで、その部分の結構なら申し分ないんだろうけどね」
「そっちの方も抜群だった。この俺がつい本気になるほどな」
奔破児が言った。
「と、とにかく、外しな」
宝玄仙は叫んだ。
「馬鹿なことを言っているんじゃないよ。そんなことしないことくらい、わかってるんだろう。ここは諦めて、この千代婆の調教を受けな、宝」
千代婆が揶揄するような声をあげた。
「くっ」
宝玄仙は歯噛みした。
こうなったら、道術が回復するまで耐えるしかない。
それから、沙那と孫空女を探して、朱姫を助け出す……。
それしかないか──。
宝玄仙がとりあえず、この場は耐えようと、諦めの境地になりかけたとき、嫌な刺激臭がつんを鼻をついた。
股の間から聞こえるがりがりという物音──。
千代婆がなにかをすり鉢のようなもので擦っているようだ。
鼻につくこの匂い……。
宝玄仙には、それで、千代婆がなにをやっているかの予想がついた。
全身がかっと熱くなり、同時に恐怖が走る。
「お、お前、まさか、千代……? まさか、おかしなものを作っているじゃないだろうねえ」
「ほう、宝殿はこの薬膳をご承知かね? まあ、最初じゃ。挨拶代りに、千代婆の特性の泣き油を馳走しようと思ってな」
「泣き油?」
訳がわからないが、とんでもないものだというのは、想像がつく。宝玄仙はぞっとした。
「詳しい伝法は秘密だが、山芋にずいきに唐辛子、その他、古今東西の淫薬をすりつぶして溶かしたものを作っておる。これを股に塗られたら最後、どんなに勝気な女でもぼろぼろと涙と流すから、人呼んで“泣き油”じゃ。これを宝殿の股ぐらにたっぷりと塗ってやろうと思う。それから、さらにさらに痒みが起きる随喜の紐巻いた張形をお前さんの女陰に咥えさせる」
「か、痒み責めだと――。ふざけんな」
宝玄仙は喚きたてだが、千代婆も奔破児も心を動かす気配もない。
「まあ、女であることのありがたみがわかって、お坊ちゃまの肉棒を頼むから味あわせてくれと、お前さんは喚き散らすだろうねえ」
宝玄仙は頭から血の気が引くのがわかった。
「そ、そんなものを塗ったら、しょ、承知しないよ──」
宝玄仙は叫んだ。
しかし、宝玄仙は、これから自分の身体になにが起きるかを知っていた。
調教だと笑われながら、何度も闘勝仙たちに同じことをやってなぶられたのだ。
最後には血を吐くような思いで、どんな恥辱的なことでも喚くことになる。
人としての尊厳も廉恥も捨てて、ひたすら犯してくれとねだり狂うことになるのだ。
「ほう、あの玉鈴……いや、宝玄仙が少女のように怖がっているようだな」
奔破児が興味深そうに言った。
「すぐに泣き出しますよ、お坊ちゃま」
千代婆が、無防備な宝玄仙の股間に、ついに、そのねっとりをした泣き油を指で塗り始めた。
「ひ、ひいっ──、い、嫌だよ──」
宝玄仙は暴れた。
しかし、ほとんど抵抗のできない股間は、なすすべもなく千代婆の薬油をどんどん受け入れてしまう。
千代婆の乾いた指先がねちっこく宝玄仙の陰部をなぶる。
そして、泣き油が肉襞の内側に外側、そして、女陰の入口から最奥まで指でしつこく押し込まれて女の穴の隅々に塗りつけられていく。
もちろん、女陰の先の敏感な突起については、とくに念入りに塗られた。
そのたびに抉られるような鋭い甘美感に襲われた宝玄仙は、耐えようのない昂ぶった嬌声をあげさせられた。
「これだけ塗られりゃあ、もう、どうしようもありませんよ。お坊ちゃま。後は待つだけです」
千代婆は嬉しそうに言った。
「うむ……。しかし、千代婆、そうゆっくりもしておられんのだ。二刻(約二時間)の内には、軍営に戻らねばならんし、そろそろ、宝玄仙の中に精を放たねば、道術封じが切れてしまうからな」
奔破児が言った。
「ま、道術封じ?」
宝玄仙は呆気にとられて声をあげた。
「ああ、俺の精には、なぜか道術遣いの霊力を封じてしまう効果があってな。昨夜はなかなかいい思いをさせてもらったが、それだけではなく、お前の霊力を封じてしまうということもさせてもらったのだ。だが、そろそろ、その効果も薄れることだ。だから、また、お前の中で放たせてもらうぞ、宝玄仙」
奔破児が余裕の口調で言いながら立ちあがった。
そういうことだったのだと思った。
あの白煙に襲われたとき、道術が封じられてなければ、こんな風に呆気なく捕えられるということなどなかったはずだ。
そして、奔破児は軍装を解きはじめる。
宝玄仙の女陰に、その道術封じの精を送り込むつもりだろう。宝玄仙は逃亡の機会が失われつつあるということに絶望的な気持ちになった。
「まあ、待ってくださいよ、お坊ちゃま──。まだ、二刻(約二時間)は大丈夫なのでしょう?」
千代婆だ。
「まあ、そうだが」
「だったら、二刻(約二時間)……。いや、一刻(約一時間)で十分ですよ。この宝に勝負の機会を与えてやったらどうですかねえ」
「勝負?」
奔破児はよくわからないという声で応じた。
それは、宝玄仙も同じだ。
いまさら、勝負とはどういうつもりだろう?
「この宝殿と千代婆で、勝負するんですよ。これから、千代婆は、この宝殿を一刻(約一時間)を使って、あらゆる道具を使って責めたてます。それに、宝殿が耐えきって、一度も気をやらなかったら、ここは千代婆に免じて、この宝を無罪放免とするんです」
「こいつを解放するということか?」
「しかし、もしも、浅ましくも気をやってしまったら、諦めてお坊ちゃまの精を受け入れる。それはどうですかい」
千代婆はけたけたと笑った。宝玄仙は屈辱で血が引く気がした。
すでに宝玄仙は、あの淫油を股間にたっぷりと塗られてしまった後だ。
勝負もなにもない。
こいつは、ただ宝玄仙が追い詰められるのが愉しくてそんなことを言っているに違いない。
しかし、奔破児はそれを聞いて、面白そうに笑い声をあげた。
「いいだろう。ちょうど、一刻後に、城郭の広場にある高塔の鐘が鳴り響く。それはここまで聞こえるから、それが鳴るまでだ」
「鐘の音?」
宝玄仙は首を動かして、奔破児に顔を向ける。
そのあいだにも、だんだんと股間が熱くなる気がする。
これが、とてつもない痒みに変わるのはどのくらいか……。
恐怖で背中にどっと汗が流れる。
「宝玄仙、この千代婆の責めが効かぬようならお前を調教で屈服させるなど、かなうことではない。そのときは、きっぱりとお前のことは諦めて解放してやろう」
「はあ?」
「しかし、もしも、たった一刻(約一時間)ももたずに、気をやったら、俺の精を受け入れることを承知しろ」
「ちっ」
どうせ宝玄仙に選択肢はない。
要は一刻(約一時間)耐えればいいのだ。
そのときに、解放するという保証はないが、この宝玄仙が、この連中の拙い責め程度で思い通りになると勘違いしているこいつらに対する溜飲は下がる。
「や、やってやろうじゃないか。それまで、気をやらなければいいんだね――。い、一刻(約一時間)だね。約束を守りなよ」
宝玄仙ははっきりと言った。