「女道士はどうしておる?」
「離れの客室だ。向こうで結界を張っているので、部屋の中の様子を伺うこともできん。まあ、もう休んでおると思うがな……」
いつものように、観禅蔡は完全に人払いしている。
この観院という古神殿の神殿長である観禅蔡の私室だ。
黒風怪は、この観院を含む
亜人とは妖魔だ。
人間族とは出自が違うというだけの同じ人族なのだが、魔術を駆使し、頭部に一本から二本の角があるのが特徴だ。
だが、この帝国では、亜人族を「妖魔」と呼び、迫害と抹殺の対象にしている。
特に、天教がこの国の国教となってからはそうだ。
天教は、この東方帝国を事実上支配する宗教集団であり、これが妖魔族、すなわち、亜人の抹殺命令を出しているのだ。それで、この数十年、罪のない亜人族があちこちで集団で根絶やしにされるということがはびこっていた。
人間族の亜人狩りは残酷だ。
まずは、里全体を密かに封鎖し、軍に混じっている道士たちが亜人側が魔術を使えないように地域一帯の霊気を乱してしまう措置をする。
それからは、一方的な虐殺だ。
男の亜人は残酷に殺され、女や子供は人間族の兵に強姦されてから、やはり殺される。
財は奪われ、里は焼かれてから二度と作物が育てられぬように土に大量の塩をまかれる。
そうやって、この帝国から亜人族が消滅されていった。
だが、この黒風山一帯については例外だ。
この古神殿は、天教の出先機関であるが、この古神殿の神官長である観禅蔡とはいい関係が続いており、天教本部に黒風山が亜人の巣になっていることを報告しない代わりに、霊具蒐集を趣味とするこの観禅蔡に、定期的に亜人族の珍しい霊具を提供するということをしていた。
それで、黒風怪は、なんとかこの黒風山に隠し里を拓き、ほかの地域から逃げてきた亜人を匿って、生活の手段を整えさせるということができていた。
この国の人間族は、亜人族を妖魔と呼称して、まるで魑魅魍魎のように称するが、実際には亜人族は、角があるということと、人間族よりも魔術に長けているという点を除けば、人間族と大差はない。
親から産まれ、農耕や狩猟や採集をして食物を確保して生き、そして、男女の交合により子を産み、子孫を作る。
同じだ──。
そもそも、この帝国でこそ、黒風怪のような者たちを「妖魔」といって蔑むが、ずっと西に行けば、妖魔は、「魔族」「亜族」などとも称されて、人間族と共同して社会生活をしていたりする。
さらに西に向かえば、人間族のいない「魔域」という地域もあるそうだ。
すべての亜人族、あるいは、魔族は、その魔域が出自ともいわれているが、黒風怪をはじめとして、黒風山に集まる亜人の故郷はこの国だ。
生きる場所が必要であるし、頭に角が生えているというだけで、妖魔と蔑称して殺戮の対象とするのは許せない。
だが、個々の人間族はともかく、集まれば人間族ほどに集団の戦いに長ける種族はいないし、なによりも天教は、人間族では珍しい道術遣いの集団だ。
魔術を駆使する亜人族といえども、人間族の道術遣いの集団には歯が立たず、あちらこちらで、残酷に「妖魔狩り」をされていった。
いまでは、この国の中の亜人の里は、黒風山をはじめとして、数えるほどしかないはずだ。
「それで、その女道士が、天教の最高神官というのは本当なのだな? それがお忍びでやって来たと?」
黒風怪は言った。
この観禅蔡には、天教本部に黒風山のことを黙っている代わりに、定期的に貢物をするという関係を保っていたが、今夜は、決まった訪問日でもないのに、観禅蔡に渡している霊具によって呼び出された。
そして、いま、この観院に、天教の最高神官が泊まっているということを教えてもらったところだ。
「本当じゃ。女戦士をふたり連れておる。おかしな三人だが、その三人がとんでもない女傑だということは確かじゃな」
観禅蔡が意味ありげに言った。
黒風怪は腕を組んだ。
もしも、彼女たちが黒風山のことを探るためにやってきた天教の一行だとすれば、黒風山にとっては死活問題だ。
天教による妖魔狩りが行われる前に、大勢の亜人が集まっている黒風山の里を捨てて、新たなねぐらを確保しなければならない。
だが、やっと手に入れた安住の地だ。
帝国各地で迫害されて黒風怪を頼って集まった亜人族は、老若男女を合わせて、すでに千人は超えている。
亜人族の隠し里を別名「
「……あいつらを殺せ、黒風怪。それですべては収まる。お前は天教狩りから逃れることができ、わしは、霊具を手に入れることができる。お互いに希望のものを得ることができるというわけじゃ」
観禅蔡が笑った。
「霊具?」
黒風怪は訝しんだ。
この人間族の老人は、異常なほどに霊具集めを趣味とする。
霊具とは、人間族の物言いであるが、道術の源である「霊気」をあらかじめ込めた道具のことであり、それがあれば、道術師でなくとも、道術を利用することができるというものだ。ただ、込められた霊気によっては、道術師でなけれな扱えない物も多く、人間族のあいだでは、宝物のように扱われていたりする。
観禅蔡は、人間族の中では、中級程度の道術師だが、その霊具を蒐集を趣味をしていた。
黒風怪は、亜人族であるので、人間族が「道術」と呼ぶ力を「魔術」と呼び、「霊具」を「魔具」というが、つまりは同じものだ。
亜人族の力で作った魔具を定期的に観禅蔡に差し出すことが、黒風山のことを見逃す条件になっている。
いずれにしても、観禅蔡の霊具好きは、常軌を逸したところがある。
あるいは、今夜、黒風怪を呼び出したのは、天教の幹部がここにやって来たことを知らせることよりも、その天教の幹部が持っていた霊具を横取りさせることが目的ではないか……?
おそらく、そうなのだろう……。
「宝玄仙の持っていた霊具じゃ。わしは、それが欲しい。なんとしても欲しい。いいから、あいつらを殺せ、黒風怪」
観禅蔡は言った。
しかし、黒風怪は驚いた。
「宝玄仙? 今夜やって来た天教の幹部というのは、宝玄仙なのか? あの八仙の巫女か」
黒風怪は声をあげた。
「宝玄仙を知っておるのか?」
観禅蔡はきょとんとしている。
「お前は、それだけの霊具好きでありながら、宝玄仙のことをよく知らんのか? ならば、宝玄仙を殺しても、霊具は手に入らんぞ。宝玄仙は、別名“霊具作りの神女”という二つ名があるくらいの霊具作りの名人だ。宝玄仙の作った霊具であれば、込めた霊気が大きすぎて、宝玄仙の手物から離れれば、霊気が発散し、霊具としての機能を失ってしまう。有名な話ではないか」
黒風怪は説明した。
おそらく、観禅蔡の言うとおりに宝玄仙を殺せば、持っていた霊具というものは、霊気が消滅して、霊気を込める前の状態に返ってしまう。
観禅蔡はがっかりした仕草をした。
「なんじゃ。だめか……。だが、なんとしても欲しいのう……」
観禅蔡が唸った。
だが、すぐに、なにかを閃いたように眼を大きくした。
「そうじゃ。これだ。この『
観禅蔡が小さな布人形を取り出した。
八仙のひとりでもある宝玄仙を監禁するなど、その無謀さには、阿呆ではないかと思ったが、黒風怪は黙っていた。
それよりも、操人形という目の前の霊具に興味があった。
とりあえず、黒風怪はそれを手に取る。
外観はなんでもないようなのっぺらぼうの人形だが、凄まじい霊気に溢れていた。
さすがは、宝玄仙の霊具だけある。
黒風怪は感嘆した。
また、確かに、操り具であるようだ。
黒風怪には、それがわかった。
ただ、その機能は限定されてもいるようだ。
この操人形で、思考を操ることもできそうだが、これを使って本人を殺すということはできそうにない。そういう安全機能もついている。
黒風怪は、物の価値を知ることができる『鑑定術』の力がある。
それを駆使することで、ある程度のことを知ることができた。
「なるほど、操人形か……」
しかし、黒風怪は、術で知り得たことを隠して、それだけを言った。
「操りたい者の身体の一部を人形に刻むのだそうだ。それで操人形で宝玄仙を操れる。だが、わしがやってもだめじゃった。おそらく、霊気が足りんのだと思う」
観禅蔡が言った。
黒風怪は、観禅蔡の手元にある皿に目をやった。
そこには、大量の「
仙丸薬というのは、一時的に体内の霊気を増幅する薬剤であり、これ自体に霊気が込められた珍しいものだ。
どうやら、黒風怪を呼び出す前に、観禅蔡は仙丸薬を使って、自分の霊気を増幅して試していたようだ。
しかし、操人形を扱うだけの霊気を得るというところまではいかなかったに違いない。
「宝玄仙の身体の一部はあるか、観禅蔡?」
「髪の毛だ。湯浴びをした後でこっそりと採集した。三人の中で黒髪は宝玄仙だけじゃ。これが宝玄仙の髪であることは間違いない」
観禅蔡が布に乗せた数本の黒髪を差し出す。
黒風怪はそれを受け取って人形に密着させて、まずは念を込めた。
しかし、だめだった。
黒風怪は、この辺りの亜人族を束ねる者として、それなりの魔力を自負していた。
その黒風怪をしても、宝玄仙の作った霊具を使いこなせないのだ。
このことだけでも、宝玄仙の霊力の強さを悟ることができる。
「仙丸薬をもらうぞ」
黒風怪は皿の仙丸薬を無造作に掴んで、口に放り込んだ。
仙丸薬のおかげで、身体に力がみなぎってくる。
念を込めた。
今度は、操人形の中に宝玄仙の髪が溶けるように入り込んだ。
「できた」
黒風怪はほっとした。
「おう、いいぞ。じゃあ、宝玄仙を操れ。まずは、ほかの霊具を持って、ここに連れて来い」
観禅蔡は大喜びした。
だが、黒風怪は、とてもじゃないが、宝玄仙を操るというところまではいかないということには気づいていた。
とにかく、魔力が足りないのだ。
おそらく、操ろうとしている宝玄仙の霊力が巨大すぎるためだと思う。
これでは、宝玄仙を操ることは無理だ。
せいぜい、人形を通して五感に影響を与えるくらいだろう。
思考や感情を制御することはできそうにない。
それをするためには、操る側の黒風怪の力をさらに増幅するか、あるいは、宝玄仙の霊力をもっと弱らせるかが必要そうだ……。
黒風怪の霊力を増幅するには、この仙丸薬をさらに大量に手に入れればいい……。
あるいは、部下の亜人たちに手伝わせるかだ。
宝玄仙の霊力を弱らせるには……。
「わかった……。そうしよう」
黒風怪は観禅蔡を見た。
こいつを利用してやろうと思った。
宝玄仙を殺すことができれば御の字だし、それができなくても、負傷くらいをさせることができれば、霊力は弱まる。
体力が不足すれば、霊気もまた減少する。
そういうものなのだ。
「……宝玄仙たち一行は、この神殿の離れにいるのだろう? 俺が『
黒風怪は、さっと魔術で『紅蓮の火付け石』を出した。
観禅蔡が相好を崩して、それを受け取った。
これ自体が貴重な黒風怪の魔具だ。
霊具好きの観禅蔡が興味を示さぬわけがない。
「おうおう、これは紅蓮の石というのか……」
観禅蔡は、その石に見入っている。
「いいか。すっかりと寝静まった頃を見計らって、火をつけるのだぞ。一瞬にして逃げられないくらいの巨大な炎が離れを包むだろう。俺は、一度洞府に返る。支度があるのだ。だが、お前が火を付ければ、すぐにやって来る。そして、宝玄仙を操って、離れの外に出す。しかし、残りの女戦士は、操った宝玄仙の力を使って置き去りにする。朝になって、宝玄仙に嘘の供述をさせれば、お前のやったことを疑う者はないさ」
黒風怪は言った。
聞いているのか、聞いていないのか、観禅蔡は紅蓮の石を眺めたまま、「わかった、わかった」と繰り返した。
まあいい……。
実際には、宝玄仙を操ることはできないので、脱出させることも、嘘の供述をさせることも不可能だ。
そう言わないと、この観禅蔡が協力しそうにないので、そう言っただけだ。
とにかく、これで宝玄仙を殺せれば終わりだし、そうでなくても、弱らせればいい。
「……では、今宵の月が西の山に沈んだときを刻限にしよう」
やっと顔をあげた観禅蔡が言った。
今夜の月は、確か夜中すぎに西に沈むはずだ。
黒風怪は頷いた。
「では、そのときに……」
黒風怪はさっと手を振って、移動術で黒風山めがけて跳躍した。
*
三黒坊は混乱の中にいた。
いま、三黒坊は身体の下にある
目の前にあるのは、夢のようであって夢でなく、現実のようで現実ではないようだが、しっかりとした本当の出来事なのだ。
だが、これが本当に起こっていることではないと思ってしまうのは、三黒坊の意思は三黒坊にあるのに、三黒坊の身体は三黒坊の意思とは関わりなく動いていることだ。
さもなくば、女を知らなかった三黒坊が、こんなに堂々と目の前の絶世の美女を抱けるわけがない。
「お、お願い。も、もう……、ゆ、許して……、さ、三黒坊さん……。あ、ああっ」
沙宝蔡が眉間に皺を寄せて、苦しげな息をしながら、三黒坊の背中にしがみついてくる。
かなりの力であり、おかげで三黒坊は沙宝坊の乳房にぴったりと、胸板を密着させている状態だ。
また、怒張はしっかりと沙宝蔡の女陰に深く貫いている。
「まだまだですよ、沙宝蔡さん。僕は達してませんからね。早く解放されたければ、僕を早くいかせることです。さもないと、寸止めの護符で絶頂感覚が溜まりすぎて、大変なことになりますからね」
三黒坊は沙宝蔡の股間を激しく突きおろしながら言った。
だが、三黒坊自身の口から出ている鬼畜な言葉に、三黒坊は驚愕していた。
どう考えても、三黒坊が、帝都からやってきた高位巫女の女護衛に、こんな失礼なことを言うわけがないし、第一、いくらせがまれたからといっても、躊躇なく犯すということなどありえない。
そもそも、三黒坊は女に触れるのは初めてだ。
だが、三黒坊はまるで女体を知りきっているかのように、平然と、かつ、問題なく目の前の美女を抱き、あまつさえ、腰を巧みに動かしたり、わざと沙宝蔡の快感を焦らしたりと、技巧さえ弄している。
これが夢でなくて、なんなのだというのだ。
「はあああっ」
沙宝蔡が背中を限界まで反らせて、がくがくと痙攣をした。
しかし、何度も同じ姿を眺めているので、これからが沙宝蔡の苦痛の始まりというのは知っている。
達したと思っても、沙宝蔡はいけないのだ。
それは、三黒坊の胸の下にある沙宝蔡の乳房のあいだの護符のせいらしい。
それは、宝玄仙が沙宝蔡の淫欲の修行のために貼り付けものであって、これが貼っているあいだに受けた刺激は、果てしなく繰り返し、しかも、絶頂感覚のすべてを溜めてしまうとのことだ。
それが発散されるのは、護符を剥がしたときであり、それまでは繰り返す刺激と巨大に膨れあがる寸止めに耐えなければならないという仕掛けらしい。
沙宝蔡は完全に狂乱している。
「あ、ああ……。い、いけない……。いけない……。も、もういやあ……ひがあ、あああっ」
護符で寸止めされた沙宝蔡が号泣し始めた。
夕方までの知的そうな沙宝蔡の面影の欠片もない、剥き出しの感情を爆発させた姿だ。
三黒坊は、その沙宝蔡を欲望のままに犯し続けた。
紛れもなく、これは三黒坊の初めての女体である。
それにも関わらず、三黒坊はまるで女の身体を知りきった男娼のように、堂々と沙宝蔡を抱いている。
わけがわからない……。
この観院の本堂から少し離れた客室である。
三黒坊は、宝玄仙の求めに応じて、今夜は孫玉蔡の股の毛を剃る道具を準備して、この離れの客間にやって来たのだ。
この言いつけ自体、とんでもないことだと思うが、なぜか三黒坊は、唯々諾々と宝玄仙の命令に従って、ほかの神官にばれないように、毛剃りの一式を準備してしまった。
そして、三黒坊は、事前の指示により、夕食会のあと、この客室を訪れた。
客室自体には、宝玄仙の道術によって、結界が張ってあり外からはなにもわからなかったが、一歩踏み込むと、そこは驚くべき状況だった。
宝玄仙こそ、肌も露わであるものの、一応は薄物を身につけていたが、沙宝蔡と
しかも、沙宝蔡はよくわからないが、寸止め自慰を道術で強要されていたらしく、三黒坊が入ってくると、すぐに性交を求めてきた。
孫玉蔡は、股間を上に向けた糸吊り責めの最中であり、三黒坊は度肝を抜かれてしまった。
だが、それから後がよくわからない
この部屋に入った瞬間に、三黒坊は、三黒坊であって三黒坊でなくなったのだ。
動揺が消滅し、まるで人が変わったように、鬼畜なことが次々に頭に思い浮かぶ。
そして、次の瞬間には、口に出し、さらに、行動に移しているのだ。
操られているといえばそうなのだが、三黒坊にとっては、ちっとも操られているという感じはしない。
しっかりと、沙宝蔡を犯している心の揺れはあるし、それに興奮している自分の感情と快感も本物だ。
だが、紛れもない事実は、目の前の沙宝蔡のような美女を圧倒している三黒坊は、たったいままで童貞だったということだ。
しかし、いまの三黒坊は、女に体してほぼ無敵の心地しかしない。
なにをして、なにを喋れば、目の前の沙宝蔡がどんな反応をするか頭にわかる。そして、その通りにすれば、沙宝蔡が思った通りの反応しかしないのだ。
愉しくて仕方がない。
「そろそろ、許してやっておくれ、坊や。これ以上、溜め込ませると、本当に狂ってしまうかもしれないからね」
横で三黒坊が沙宝蔡を犯すのを見守っていた宝玄仙が苦笑混じりに言った。
「わかりました」
三黒坊は頷くと、我慢していた快感を解放して、沙宝蔡の中に精を放った。
同時に、精を放つと同時に剥がせと言われていた護符を沙宝蔡から剥がす。
「はぎいいい、いぎいいい、んがああああ」
沙宝蔡が絶叫して、四肢を一斉に伸ばして痙攣した。
それがあまりにも激しいので、三黒坊は沙宝蔡の胴体に突き飛ばされるようになってしまった。
沙宝蔡は、かなり長いあいだ悲鳴と痙攣をしていたかと思うと、寝台の上で噴水のように尿を洩らし出す。
そのときには、完全に白眼を剥いて、口からは泡まで吹いていた。
沙宝蔡がすでに失神状態にあるのは明らかだ。
しかし、身体だけは、別の生き物であるかのように、痙攣を続けている。
やがて、やっと沙宝蔡の身体が静止した。
同時に尿もとまる。
「だ、大丈夫でしょうか……。死んだんじゃないですよね……?」
思わず言った。
それくらい激しい沙宝蔡の反応だった。
いまはぴくりとも動かない、
「心配ないさ。これでも、身体だけは丈夫なんだよ。ほら、息してるだろう?」
宝玄仙が笑いながら言った。
確かによく見ると、胸が軽く上下している。
三黒坊はほっとした。
「ほら、お前の番だよ、孫空女。いつまでも、気絶してんじゃないよ」
「ひぎゃあああ」
孫玉蔡が跳ね起き、その動きでまた、肉芽を引っ張って悲鳴をあげた。
孫玉蔡は、仰向けで寝台の頭側に手首も足首も繋げられ、女陰も肛門も天井を向いている格好……、いわゆる“まんぐり返し”の体勢であり、さらに、肉芽の根元に固い糸が食い込み、それが天井の金具ど引っ張りあげられている。
しかも、その糸は、宝玄仙の道術で延々と強い振動をしていた。 そのため、孫玉蔡もまた、半狂乱だ。
沙宝蔡のように、寸止めはされていないので、さっきから何度も絶頂し、失神と覚醒を繰り返していた。
たったいまは、失神していたようだが、宝玄仙が張っている糸を無造作に引っ張ったので、奇声をあげて起きる羽目になったのだ。
「ひっ、ひっ、ひっ」
孫玉蔡はおかしな息をしながら、顔をひきつらせている。
「お待たせしましたね、孫玉蔡さん。それにしても、綺麗なお股ですねえ。じゃあ、早速、剃りますよ」
三黒坊は準備していた刷毛で真っ赤になっている孫玉蔡の股間をすっと掃いた。
「あぐうっ」
孫玉蔡が目を剥き出しにして、身体を跳ねた。
だが、そのために、糸がぴんと伸びきり、孫玉蔡にすさまじい激痛を与えたようだ。
「な、なにすんだよ」
孫玉蔡が絶叫した。
「駄目じゃないですか、孫玉蔡さん。これも修行なんでしょう? 刷毛くらいの刺激でそんなに反応してたら、剃るものも剃れませんからね。しばらく、刷毛の刺激に慣れましょう。剃るのはそれからです」
三黒坊は刷毛をさわさわと、限界まで吊り上げられている肉芽やぱっくりと開いている女陰、つぼみのように可愛いお尻の穴など次々に掃いていく。
もちろん、内腿やへそ、横腹などを悪戯するのは忘れない。
「んぎいっ、ふ、ふざけんな、お、お前──。あぐうううっ、ふぐううっ」
孫玉蔡が悪態を突きながら、刷毛が動くたびに身体を反応させてしまい、糸で肉芽を引っ張られる痛みに泣き叫び出す。
宝玄仙が大笑いした。
「ほらほら、しっかりしないかい、孫空女。自分から糸を引っ張ってどうするんだよ。我慢するんだ、我慢」
宝玄仙が横ではしゃいでいる。
「そ、そんなこと言われても……。あがああっ」
またもや、三黒坊の刷毛のくすぐりで肉芽を引っ張ってしまい、ついに、孫玉蔡は、あまりの痛みに涙を流しだした。
一方で、三黒坊は、刷毛を動かしながら、驚愕を通り越して、いまや、恐怖していた。
やはり三黒坊は、まるで別人であるかのように、勝手に動いている。
いまのように、糸で肉芽を吊られた女体を、残酷に刷毛でいたぶり、悲鳴をあげさせて嘲笑うなど、三黒坊にできるものではない。
だが、いまの三黒坊はそれを嬉々としてやっているのだ。
一体全体、どうしたというのだろう。
「ねえ、宝玄仙様、先にこの孫玉蔡さんを犯してはいけませんか? こんな色っぽい彼女を前にして、普通ではいられませんよ」
三黒坊は笑いながら言っていた。
「おう、いいねえ。お前も文句ないね、孫空女?」
宝玄仙が笑った。
孫玉蔡は、歯を剥いて怒りを示した。
「じょ、冗談じゃ……」
「んぎいいっ」
だが、宝玄仙があっさりと孫玉蔡に繋がっている糸を摘まんで、孫玉蔡の言葉を中断させてしまう。
「じゃあ……」
三黒坊はまんぐり返しの孫玉蔡に股がるように、怒張を貫いた。
「んひいいっ、ゆ、許しててぇ、三黒坊──」
孫玉蔡が泣きながら、絶叫した。
しかし、構わず、三黒坊は欲望のままに、孫玉蔡の女陰を突き続ける。
どうして、こんなに残酷なことができるのだろうかと戸惑いつつ、三黒坊は激しく孫玉蔡を犯し続ける。
三黒坊が怒張を押しつけるたびに、糸が動いて泣き喚く孫玉蔡を犯すのが愉しい。
今度は、あっという間に孫玉蔡に精を放った。
「あれ? 出しちゃいました」
三黒坊は言った。
宝玄仙がくすくすと笑った。
「ほら、なにか言うことないのかい、孫空女? この坊やがお前の股の髭を剃ってくれれば、糸は解放してやるよ。だけど、いつまでも、駄々を捏ねると、また、けしかけるよ」
宝玄仙が孫玉蔡に言った。
「も、もう十分……。さ、三黒坊……、な、なにも文句言わないから……は、早く剃って……」
孫玉蔡はぐったりしている。
三黒坊は、鬼畜心が満足されて、やっと股の毛を剃る気になった。
手に剃刀を持ち、ぞりぞりと孫玉蔡の毛を剃り始める。
「よかったら、記念にその赤毛の陰毛を持って返ったらどうだい? 今夜の記憶はぼんやりとだが、心に残るようにしたからね。その赤毛の陰毛を見るたびに、狂乱の一夜を思い出すさ。その代わり、誰かに語ることはできないけどね」
宝玄仙が笑った。
なぜか、その言葉の意味が頭に入ってこない。
それなのに、後になればわかるという予感もする。
三黒坊は、剃刀を動かしながら困惑した。
「いいね、孫空女──。お前の股毛は、この坊やにやるからね」
宝玄仙は大きな声で怒鳴った。
「す、好きにして……。その代わり……、も、もう糸を……動かさないで……」
孫玉蔡が弱々しく言った。
やがて、すっかりと孫玉蔡の股間は無丘のそれになった。
女っぽく成熟した女の部分と、女の亀裂を真一文字に割っている童女のような亀裂は、本当に色っぽい。
気がつくと、孫玉蔡の股間の糸は消滅していて、孫玉蔡は気を失ったように脱力して、ぐったりとなっている。
三黒坊は、またもや、むくむくと自分の怒張が頭をもたげるのがわかった。
「おう、さすがは若いね。二度や、三度じゃあ、終わらないかい。じゃあ、次はわたしの番だね。わたしについても、泣かせてくれるかい? よかったら、わたしも縛ってもいいよ。いまは、欲望を全解放している状態だろうけど、どうやら、お前には鬼畜の性癖があるようだね。お前に知識と経験は与えたけど、その欲望と度胸は本物だよ。自信持ちな」
本玄仙が言った。
だが、ますます、三黒坊の中の鬼畜の炎が燃えあがっている。
こんなもんじゃあ、収まらない。
もっともっと、鬼畜をしたい。
三黒坊は、宝玄仙の胸ぐらをつかんで、一気に左右に薄物を引き破って、その豊かな乳房を露わにしてやった。
「だったら、縄を準備してください、宝玄仙様。珍棒が破裂しそうですよ」
三黒坊は椅子に座っていた宝玄仙を床に引き倒した。
「おおう……。乱暴だねえ……。どうやら、愉しい夜になりそうだね……縄は準備したよ。いまのお前には、使いこなせるはずさ。その知識はあるからね。好きなように扱ってごらん」
いつの間にか、手元に数束の荒縄があった。
三黒坊は、それを掴むと、びしりと宝玄仙の胸を縄で打った。
「う、ううっ……。す、すごいね……。欲望を解放しすぎたかねえ……。ちょっと怖くなってきたよ……。これは、とんだ鬼を起こしてしまったようだね」
宝玄仙が自嘲気味に笑った。
「いいから、舐めろ」
三黒坊は、宝玄仙の髪を掴んで、自分の一物を口にさせた。
なんで、そんな恐ろしいことができるのか、自分でも理解できないが、どうしても、それをしたかったのだ。
やはり、三黒坊であって、三黒坊ではない。
こんなこと、三黒坊にできるわけがない……。
だが、やりたいことをやっている。
これは、操りなどではない……。
これも、三黒坊だ。
「両手は後ろだ、宝玄仙」
三黒坊は言っていた。
すると、宝玄仙はその言葉を待ち望んでいたように、細腕をさっと背中に合わせた。