「あっ、ああっ……く、くううっ」
眼の前の宝玄仙が、四肢を拡げた裸身に脂汗を滲ませながら、激しく暴れはじめた。
まだ、わずかな時間しか経っていないが、すでに宝玄仙はかなり追い詰められた状態になっているというのが、千代にはよくわかった。
「どうだね、この千代婆の泣き油の味は? 結構な美味だろう、宝殿?」
「こ、こんな……。あ、ああ……か、痒い──」
宝玄仙が呻き声をあげる。
あれだけの泣き油を女の穴の奥深くまでたっぷりと塗り込めたのだ。
普通の女ならもう発狂したような声をあげている。
だが、懸命に歯を食い縛って、自制心を保とうとしているのは、屈服した態度を絶対に見せたくないという自負心によるもののようだろう。
その強い精神力を一枚一枚壊しながら剥いでいく。
それで、
「もう、降参かい、宝殿? お坊ちゃまに女陰をほじってくれと頼むかい?」
「だ、誰が──。だ、だけど……、こ、これは──。か、痒い、ひいっ──」
「まあ、まだ塗ったばかりだしね。この泣き油が本来の効果を発揮するのは、これからだよ。いまは序の口さ。そのうち、痛みにも感じるような痒みに変わるよ。それこそ、骨まで響く痒みにね。愉しみにしてな」
「ち、畜生──。お、覚えてなよ──、こ、このくそばばあ。ああ、か、痒い──」
宝玄仙は、美しい顔をしかめ、白い歯をかちかちを鳴らして身をよじる。
そして、左右に激しく首を振って、浅ましく割り裂かれた二肢を切なげにくねらせながら、荒々しい喘ぎを繰り返す。
それにしても美しい女だと千代は思った。
これまでに何人もの女を調教したことがあるが、これほどの美女に出遭ったのは初めてだ。
幼い頃から知っていて、特定の女に執着することなどなかった奔破児がひと目で気に入ったというのもよくわかる。
奔破児が女に興味を持つということは珍しいことだった。
いや、もしかしたら、この奔破児が特定の女をものにしたいなどという気持ちになったのは初めてではないだろうかと千代は思った。
千代が奔破児の両親に雇われて働いていたのは、奔破児が産まれる直前から十二歳になるまでの十数年だ。
千代は奴隷の娘だった……。
奴隷の娘は奴隷……。
そんなこの国の仕来たりに関わらず、幸いにも奴隷にならずに済んだ千代だったが、決して裕福な生活をしてきたとは言えない。
社会の底辺で、奴隷にも等しい生活だった。
あらゆることをやった。
若い頃は身体を売り、身体が売り物にならなくなると、調教した若い女を買いたがる男に売るというようなこともやった。
箔をつけるために売り子の娘に性技を教えたりするようなこともやった。
生きてきた……。
……というよりは、死なないでいた──。
そんな人生だった。
結婚したことはない。
子は二十歳の頃に子を産めない身体になった。
およそ人の情には無縁な人生を送ってきた千代だったが、それに転機が訪れたのは、千代が五十歳のときだった。
縁があり、ある貴族の家に子守り女中として働く仕事が見つかったのだ。
もちろん、千代が奴隷の娘だったなどということは隠していた。
借金で家財を失った名家の末裔──。
そう偽って雇われたのだ。
子供が生まれるということで、急遽集められた子守り女中として、貴族の屋敷で住み込みで働く生活が始まった。
そして、産まれたその屋敷のひとり息子が奔破児だ。
奔破児は男らしさとは無縁な女のように美しい顔をした子供だった。
これまでの人生で、千代はその子供ほど綺麗な顔立ちの子供を見たことがなかった。
しかし、とても泣き虫で、それが父親には不満のようだった。
同世代の友達に泣かされてばかりでいつも苛められてた。
男の子なのに、女の子以上に顔がきれいで色が白いということで、馬鹿にされていたようだ。
そんな奔破児のことを父親も疎ましく思っていたのか、女中にすぎない千代の眼にも、奔破児はとても愛情を籠めて育てられたとはいえなかった。
男のくせに、女の子のような息子──。
父親はそう思っていて出来の悪い息子と思っていた気配があるし、母親はまったく家庭のことを顧みるような女ではなかった。
少年時代のある時期まで、奔破児は本当に孤独な幼年時代を送っていたと思う。
そんな奔破児が泣いて戻るたびに、子守り女中の千代は菓子を与えて慰めたものだったが、もしかしたら、あの幼年時代に奔破児が唯一心を開いていたのが自分だったかもしれない。
そのうちに、奔破児はこれ以上馬鹿にされたくないと思ったのか、自ら望んで武術を学ぶようになった。
奔破児が十歳のときだ。
武術に打ち込むことについては父親も悦び、父親はたくさんの武術の師匠を呼んで奔破児に教授を受けさせた。
その中でも、一番奔破児が熱心だったのは体術だ。
体術というのは武器を遣わずに戦う技術のことらしく、千代が屋敷から追い出されてからもずっと体術だけはやり続けたようだ。
千代が屋敷を追い出されたのは、奔破児が十二歳のときだったと思う。
もともと、屋敷に入る前に、女衒のような仕事をしていた千代は、その前身がばれて追い出されたのだ。
仕方なく千代は、もとの女衒ような仕事に戻り、小さな宿町の場末の裏通りなどで女を調教するような仕事を転々としながら続けていた。
再び社会の底辺の生活に戻ったのだ。
そんな千代を突然、大人になった奔破児が訪ねて来たのは、千代が屋敷を追い出されてから十年後だった。
奔破児は国軍の優秀な軍人となっていて、あの泣き虫だった幼少時代とはまったく違っていた。
だが、色白で女のような綺麗な顔立ちはそのままで、確かにあの奔破児だった。
-奔破児は、千代のことをよく覚えていて、あちこちに手を回して探し出したのだ。
その日から千代は、奔破児の身の回りを世話する老女として雇われることになった。
顔立ちが綺麗なだけあり、奔破児はよく女にもてた。
女には不自由しなかったといっていいだろう。
千代が培った手管を教えもした。
しかし、女にもてた分だけ、女には淡泊だった。
自分から女を口説こうとしたことはなかったようだし、素人女であろうと、娼婦であろうと、あるいは、貴族女であろうと、奔破児はまったく興味を抱かなかった。
求められれば肉体関係に応じ、終われば捨てる。
それだけだ。
その奔破児が初めて、女をものにしたいから手を貸してくれと言ってきた。
商売女だというが、気が強く簡単にはものにできそうにないので、千代の能力で調教をして、陥してくれというのだ。
千代は驚いた。
とにかく、奔破児がその女を監禁させたという家にいった。
そこにいたのがこの宝玄仙だ。
商売女ではなかったが、娼婦の真似事をして暇をつぶすほど、随分と性に解放的な女のようだ。
そして、ひと目見て、なぜ奔破児がこの女に執着したのかがわかった。
ここに拘束されていた宝玄仙は、どことなく奔破児の母親に面影が似ていたのだ。
話し方──。
気の強そうな口調──。
なんとなく相手を馬鹿にしているような態度──。
それもあの家庭を顧みず、奔破児になんの愛情を示さなかった母親に似ていると思った。
いずれにしても、奔破児は、千代を場末の生活から救い出してくれた恩人だ。
なんとしても、この宝玄仙を奔破児のものにしてやりたい。
「さて、じゃあ、そろそろ、勝負といこうかねえ、宝殿──。みっともなく、お前が気をやったらあたしの勝ち。見事に耐えきったら、お前は無罪放免──。そういうことだったね。気をやってしまったら約束だよ。お坊ちゃまの道具を味あわせてくださいと、お前の口からお願いするんだ、宝殿。いいね」
千代は言った。
「わ、わかったよ──。そ、その代わり、わ、わたしが……あ、ああっ──わ、あたしが勝ったら──くうっ……。や、約束だよ──。わ、わたしを……か、解放するんだ──。い、いいね、奔破児──」
宝玄仙は、歯をがちがちと鳴らしながら苦しそうに叫んだ。
馬鹿な女だ。
これだけ、追い詰められれば、この宝玄仙から絶頂を引き出すなど、千代にかかれば数瞬で済む。
もちろん、たっぷりと一刻(約一時間)弄んでから、最後の最後に派手な絶頂をさせるつもりだが、宝玄仙が耐えれば耐えるほど、宝玄仙は自分をのっぴきならない状況に追い込んでしまい、その時には強制されなくても、自ら奔破児に犯して欲しいと喚くことになるに違いないのだ。
「俺も男だ。約束しよう──。見事に耐えきってみろ、宝玄仙。そうすれば、無罪放免で解放してやる。しかし、その代わり、千代婆に負けたら、これから一箇月、お前には、この家で果てしない調教を受けてもらう」
千代の後ろに座っている奔破児が嬉しそうに言った。
「わ、わたしを……ば、馬鹿にすんじゃないよ──」
宝玄仙は呻くように言った。
「じゃあ、まずは、これくらいからいってみるかい?」
千代は真っ赤になって震えている宝玄仙の肉芽を鳥の羽毛でさらさらとくすぐった。
「ひひゃああぁぁ──」
宝玄仙が仰け反って絶叫した。
「おやおや、このくらいの責めでそんなに反応してどうするんだい、宝? 本当に勝負するつもりがあるのかい」
千代は笑った。
そして、今度は、宝玄仙の内腿と太腿の表皮を微妙な強さで、さらにくすぐってやった。
あのまま肉芽を責め続けていればそれで終わりだから、責める場所は泣き油を塗りたくられた場所のぎりぎり外の部分にしてやったのだ。
ここならなんとか気をやることは耐えることができるだろう。
しかし、それでも、宝玄仙は、もう悲痛な悶えを示してはじめている。
「ほらっ、ほらっ、いきそうかい?」
宝玄仙は歯を食い縛って耐えている。
まだいかないはずだ。
それはわかる。
だが、微妙な場所をくすぐられるだけで、痒みにただれる場所を刺激してもらえない苦しさは、だんだんと恐ろしいほどの疼きを宝玄仙を与えていくはずだ。
「……ひぎいっ──い、い、い、い──。ち、畜生……か、必ず、お前らに仕返しを……」
宝玄仙は狼狽と悔しさが一緒になったひきつった声で口走った。
「愉しみにしているよ、宝──。じゃあ、さっそく、その仕返しとやらをやってもらおうじゃないか。あたしは、ここ責めてやろうかねえ。お前も遠慮なくかかっておいで」
千代は、再び鳥の羽毛を女陰の頂点の勃起している肉核を擦りあげた。
「あがあっ──」
宝玄仙は真っ赤になった頬を限界まで横にずらせて全身を震わせた。そして、肉の頂点を繰り返し擦られて、悲鳴をあげてのたうつ。
「ほれ、仕返ししな、宝──。口惜しくないのかい?」
「ち、畜生──」
「ほら、仕返しするんだ。ほら、これはどうだい? これは?」
執拗に肉芽を羽毛で擦りあげる。
宝玄仙の反応がおかしなものになっていく。
「ああ……も、もう、やめておくれ──ひいいぃぃっぃ──」
宝玄仙が開脚に拘束された両腿を苦しそうに悶えさせた。
千代は、ひとしきり肉芽を中心に責めたてると、また、責めの部分を外して女陰の外側に移動させた。
「なるほど、さすがに宝玄仙だな。下の口の開けっぷりも見事なものだ」
千代の背中越しに宝玄仙の痴態を覗いている奔破児が、宝玄仙の泣きそうな表情を見て笑った。
発狂するような痒み責めに遭いながらも、柔らかい鳥の羽毛で、繰り返し微妙な刺激を与え続けられる宝玄仙には、いまや抵抗の手段もなく、ただ、ひたすらに身体をひねり、捩じり、なんとか襲ってくる官能を少しでも逃がそうと懸命になっている。
もう、全身は真っ赤に火照り、頭の上から脚の先までびっしょりと脂汗でまみれている。
「まだまだだよ、宝──。もう少し、頑張ってくれるんだろうねえ?」
千代は揶揄しながら、女陰の淵に沿って、こちょこちょと羽毛を動かす。
素っ裸で手足の自由を奪われている宝玄仙は、激しく身体を震わせながら、だんだんと声が女っぽくなり、次第にその声も悶え泣きに近いものになった。
「だ、駄目えぇ──」
顔を左右に振りたてる宝玄仙は強く叫んだかと思うと、いよいよ限界まで腰を上に突きあげた。
おそらくいきそうなのだろう。
腰が浮きあがったまま、一瞬、宝玄仙の身体が硬直した。
千代は、さっと宝玄仙の股間をなぶる羽毛をどける。
宝玄仙は四肢をがっくりと床に投げ出した。
そして、しばらくの間、わなわなと震えていた。
だが、直前で絶頂を取りあげられ、しかも、発狂するような痒きに襲われている宝玄仙の身体には、すぐに激しい悶えと震えが戻ってきた。
「いまのはお情けだよ、宝──。それとも、もう降参したくなったかい? 耐えられなくなくなったら、お坊ちゃまに女陰をほじってくれと言いな──。言っておくけど、もしも、お坊ちゃまが軍営に戻ってしまったら、次にここに戻られるで、泣き油を塗ったまま放っておくからね」
千代は言った。
「そ、そのときには、ま、道術が戻って──、お、お前たちなんか、ぺ、ぺしゃんこにしてやるよ……」
宝玄仙が息も切れ切れの声で呻くように言った。
「そうこなくっちゃな、宝玄仙──。さあ、千代婆、そろそろ、さっきの随喜巻きの張形を使ってはどうだ? 宝玄仙もまだまだ痒みが足りないようだしな」
奔破児がからかうような声を出した。
いつも冷静で自分というものを出さない奔破児の心を開いたような愉しそうな口調に、内心では千代は驚いていた。
「な、なんでもしな──。し、死んだって気をやらないよ。耐えきってみせるさ──」
宝玄仙が自分を鼓舞するような大声をあげた。
「そうかい、じゃあ──勝負を続けようね、宝。今度は、これが随喜巻きの張形だよ。もっと痒くなること、請け合いさ」
千代が、羽毛から持ち替えた次の責め具であるたっぷり湯でほぐした随喜の紐を巻きつけた張形を宝玄仙の顔の前にかざして見せた。
宝玄仙の眼が大きく見開いて、その表情にさらに悲痛さが増す。どうやら、この淫具の効果をよく知っているようだ。
「満更知らないわけでもないようだね。だったら、この効果も知ってるんだろう? さて、じゃあ、宝におねだりをしてもらおうかね。そのただれそうな女陰にこれを入れて欲しいだろう? これを女の穴に入れておくれと、お坊ちゃまにお願いしな」
千代は言った。
「だ、誰が──。そ、そんなことを……言うわけがない……だろう」
宝玄仙は歯をがちがちと鳴らしながら叫んだ。
「遠慮なく言ってくれ、宝玄仙──。悦んで張形責めをしてやろう。昨夜は、童貞の初心な青年のふりなどしてすまなかったな。そのお詫びにたっぷりと俺がお前の女陰を責めてやる」
あまりにも感情を剝き出しにした奔破児の口調に、千代は思わず後ろを振り返った。
これまでに接したことのないくらいの崩れた相好だ。
本当に奔破児が宝玄仙を気にいっているのだということを千代は悟った。
「き……え……な」
宝玄仙はびっしょりと汗をかいた顔をひきつらせながら言った。
「ひひひ、じゃあ、お坊ちゃまにお願いする気になるまで、幾らでも油を足してやろうかねえ。まだまだ、一刻(約一時間)が終わるには時間もあるようだしね」
千代は鉢に残っている泣き油を再びたっぷりと指ですくった。
「ひ、ひい──。わ、わかった、頼むよ。お願いするから、これ以上足すのは待っておくれ」
全身が汗まみれの宝玄仙が、さらに油を足すという言葉に悲鳴をあげた。
「遠慮するんじゃないよ。だけど、あたしも、鬼じゃないんだ。腰から背骨まで痺れるような激しい痒みに襲われているお坊ちゃまの将来の女房殿の女陰に、これ以上の泣き油を足すことだけはやめてやるよ」
千代は言った。
一瞬だけ、宝玄仙が当惑した表情になった。
「その代わり、その真っ赤に熟れている下側で、物欲しそうにしている菊の蕾に塗ってあげようかね」
「そ、それだけはやめておくれ──。お、お願いだよ」
宝玄仙が悲鳴をあげた。
千代は大声で笑いたてた。
「この千代には、色事にかけては少しも隠し事はできないと最初に申し渡したはずだよ。お前が女陰よりも後ろの孔が弱点なことは最初からわかっていたさ。それとも、ばれてないと思ったかい?」
「ほう、宝玄仙は尻が弱点か──?」
奔破児が意表を突かれたような口調で言った。
「あたしに見たところ、異常に尻が弱いようですよ。あたしにはわかるんですよ、お坊ちゃま」
千代は、ひくひくと疼くような収縮をしはじめた肛口に容赦なく泣き油を追加した。
「あぐうぅぅぅ──」
宝玄仙はらに悲痛な声を出して、絶望的な表情になった。
そして激しく震えながら、その新しい泣き油を肛門の中に受け入れていく。
千代の指を肛門に受けた宝玄仙は、途端に悲鳴をあげて、炎に炙られたかのように身体を真っ赤にして暴れはじめた。
そして、今度は狂気のように首を振る。
「も、もう耐えられない──。わ、悪かった。わたしが悪かったから、もう、勘弁しておくれ」
そして、ついに昂ぶった声で屈服の言葉を張りあげた。
「じゃあ、お坊ちゃまに張形責めをお願いするね、宝? 多分、あっという間に気をやれるよ」
千代は言った。
「す、する。お、お願いするよ」
宝玄仙はもう意思を失ったかのように頷く。
「なら、言いな」
千代はそう言って、激しく喘いでいる宝玄仙の汗びっしょりの頬をついた。
「ち、畜生──。み、惨めだよ──。く、悔しいっ──」
宝玄仙はそう喚いたが、なかなか、張形責めを願う言葉を口にしようとはしない。
おそらく、これが最後の抵抗なのだろう。
もうかなり追い詰められていることはわかっている。
それでも、言いたくないのに違いない。
「泣き油のお代わりが欲しそうだね。今度も尻の穴でいいかい?」
千代は宝玄仙にささやいた。
「ほ、奔破児──様……ど、どうか、ほ、宝玄仙に……張形責めを──」
慌てたように宝玄仙は叫んだ。そして、宝玄仙は張りつめていたものが切れたかのように、急に涙をこぼし始めた。
千代は驚いた。
不意に、宝玄仙が、眠ったように身体をがくりと脱力させたのだ。
泣き油責めの間に気を失うというのも容易なことじゃない。
それに、まだそこまで責めてはいないはずだ。
その辺りの限界については、千代も百戦錬磨だ。
さまざまな女体責めで、女がどれだけ耐えられるかということは知り抜いている。
気を失わせるのも、させないのも思いのままなのだ。
だから、気絶したように意識を失った宝玄仙にびっくりした。
しかし、その宝玄仙は、すぐに眼を開いた。千代はほっとした。
だが、なにかおかしい。
よくはわからないが、宝玄仙の表情がさっきと微妙に変化している。
宝玄仙の顔にあった傍若無人の強気の性格が表情から消えた気がするのだ。
いまの宝玄仙には明らかな怯え……。
そして被虐の酔いのようなものがそこに現れている。
「ああ……、な、なんてことなの……。か、痒い──。痒いもんなんてもんじゃないわ。苦しい。苦しいのよ──」
宝玄仙がそう声をあげた。
なんだか、さっきと口調が変わった気がする。
そして、さらに驚いたことに、次の瞬間、宝玄仙がしくしくと泣きはじめたのだ。
千代は、さっきまで悪態をつきながらよがっていた宝玄仙と、眼の前で泣きはじめた宝玄仙が同一人物とは思えなかった。
「さすがは、千代婆の泣き油だ。こんなにも早く、宝玄仙を泣かせるとはな」
奔破児は感心したように、随喜巻きの張形を手にした。
「い、いや、お坊ちゃま……」
千代は奔破児に、千代が覚えた違和感を説明しようとした。
しかし、思い直す。
説明のしようがない。
それに、眼の前の宝玄仙は、やはり、宝玄仙だ。
千代は身体を動かして、奔破児を宝玄仙の股の間に座らせる。
そして、耳元であることをささやいた。
奔破児がにんまりと微笑む。
「それじゃあ、宝玄仙、これを咥えてもらおうか」
奔破児は、千代がささやいたとおりに、随喜巻きの張形を宝玄仙の穴に押し当てた。
「ひいっ──。そ、そこは──」
宝玄仙は眼を大きく開いて抵抗のそぶりを見せる。
奔破児が張形を押し当てたのは、穴は穴でも、さっき泣き油を塗ったばかりの後ろの穴だ。
時間をかけてさんざんに責められた女陰の側ではない。
たったいま、新たに泣き油を足されて、ついに宝玄仙が屈服の言葉を口にした場所であり、おそらく、この気の強い道術遣いの禁断の性感帯に違いない。
奔破児は、磔になっている宝玄仙の尻の穴を探り当てるように股間の背後から太い張形をこじ入れていく。
かなりの太さもあり、尻を責めるにしては不自然な態勢にも関わらす、宝玄仙の肛門は随喜巻きの張形をずぶずぶと受け入れていく。
「やっぱり、尻は完全に開発されているようだね」
あっという間に張形を受け入れたのを見て、千代は言った。
「お、お願い……動かさないで……動かさないで──」
まだ尻の穴に張形が挿さっているだけだが、それだけで息をするのもつらそうに宝玄仙は、そう言いながら胸を上下させて喘いでいる。
「そうはいかんだろう。まだ、約束の一刻(約一時間)には少しある。しっかりと戦って、気をやるのを耐えてくれ」
奔破児はそう言って、肛門に突き入れた張形をゆっくりと回しながら前後に動かし始めた。
宝玄仙は、つんざくような悲鳴をあげてうなじを仰け反らせた。
そして、顔をしかめて絶息するような呻きをあげる。
「ほううっ」
開脚に開かれている両腿の筋肉が断末魔のような痙攣を起こした。
そろそろいくだろう──。
もう少し、焦らせてもいいが、嬉々として張形で宝玄仙を責めている奔破児を見ていると、このまま、奔破児に宝玄仙を責め切らせてやろうと千代は思った。
そして、宝玄仙はおこりにでもかかったかのように全身を痙攣させると、拘束された腰を大きく突き上げ、そして、がっくりと脱力させた。
「いったようだな、宝玄仙」
奔破児が満足気に言った。
「い、いったわ……」
宝玄仙は上気した頬を横に伏せて、ぽたぽたと床を涙で汚し始めた。
「じゃあ、約束通りにお坊ちゃまの精を受け入れるね」
「も、もう……、もう、女の……女の穴がただれそう……。痒くて……か、痒い……。あ、ああ──お、お願い──」
宝玄仙はまだ激しく震えている。
気をやったとはいえ、狂うような女陰の痒みはそのままだし、随喜の縄を巻いた張形はまだ、
後ろの穴に挿さったままだ。
泣き油の痒みが発狂するような激しい痒みであれば、随喜の痒みは痺れるような悩ましさを伴うじわじわと拡がっていく重い痒みだ。
それを前後から受ける状態になっている宝玄仙は、いよいよ進退窮まっているに違いない。
前後の穴からやってくるそれぞれのおぞましい痒みをなんとか紛らせたいのか、宝玄仙は、吠えるような声をあげながら呼吸をしている。
「それでは、お坊ちゃま、お好きなようになさいませ。もう、前戯は不要でしょう」
千代は言った。
前戯が不要どころではない。
宝玄仙の女陰はただれたように充血し、下腹部からは滴り落ちるように淫液が床まで垂れている。
千代は壁に向かっていき、羽目板を外して宝玄仙を繋いでいる鎖を操作するための操作桿を動かした。
がちゃんと音が鳴り、宝玄仙の四肢に拘束している鎖が緩む。
奔破児は懐から鍵を取り出すと、宝玄仙の両手の手枷だけを外した。
宝玄仙がすぐに身体を丸めて、動くことができるようになった両手を股間に持っていこうとした。
「おっと、そうはいかんな、宝玄仙」
すかさず奔破児が宝玄仙の両手を掴むと、強引に背中に持っていく。
宝玄仙が怒りの声をあげる。
そうやって、宝玄仙の腕を固定していたまま、奔破児は、千代の包みの中にあった金属の首輪を宝玄仙の細い首に嵌める。
そして、その首輪の後ろ側に装着してあるふたつの手枷に宝玄仙の両手首を嵌めた。
「これで勝手なことはできんな」
今度は両手を頭の後ろから動かせなくなった宝玄仙を見下ろしながら奔破児が笑った。
宝玄仙は恨みのこもった視線で、身体を震わせながら、眼の前の奔破児を睨んでいる。
「脚を開け、宝玄仙──。俺の精をやろう。言っておくが、お前の道術を封じるためには、なにも精を女陰に注ぐ必要はないのだ。口でも尻でも、要は、俺の精液をお前の身体の中になんらかの方法で入れればいいだけだ」
「えっ?」
宝玄仙が愕然となったのがわかった。
もしかしたら、性交さえこばめば、なんとかなるとでも思っていたのだろうか。
「いま、自ら脚を開かなければ、そこにまだ残っている泣き油に俺の精を混ぜて、千代婆にお前の前後に穴に詰めさせるぞ。それでも効果は同じなのだ。お前にとっては、それで一日放っておくことになるから、もっとつらいことになると思うがな」
その言葉で終わりだった。
奔破児がそう言うと、宝玄仙は真っ赤な顔を今度は真っ蒼にして、諦めたように身体を横たえ、そして、両足を立て膝にして股を開いた。
「お、お情けをお願いします」
宝玄仙が、まるで奴隷が使うような物の言い方をして眼を閉じた。
奔破児は優越感に浸った表情をしながら下半身に履いているものを脱ぐ。そして、脂汗を流して苦しそうにしている宝玄仙の裸身に覆い被さった。
「あうううっ──」
奔破児の一物が宝玄仙の股間に挿さる。その腰が動き出し、女陰に挿さった一物が宝玄仙の中で前後運動を開始する。
宝玄仙はあられもない声をあげて全身を痙攣させはじめた。
「いく、いくっ、いくうっ──」
「いくらでもいけ、宝玄仙。最後には、道術を封じる精をたっぷり注いでやるぞ」
奔破児が本格的に腰を使いだした。宝玄仙は狂ったように嬌声をあげる。
ふたりの激しい性交はいつまでも続くかのようだった。
宝玄仙が責められてから一刻(約一時間)であることを告げる鐘はとっくに鳴り終わった。
それでも、ふたりの性交は終わらない。
宝玄仙は何度も何度も絶頂の仕草をして奔破児の腕の中で果てた。
それに比べて、奔破児は、腰の動きを自重し、なかなか精を放とうとはしない。
宝玄仙はもう半分気が触れたような状態になってあがき続ける。
千代は、我を忘れたかのように宝玄仙を抱き続ける奔破児を隅でじっと見守っていた。
やがて、奔破児は尻餅をついた自分の腰の上に、頭の後ろに両手を置いた宝玄仙の裸身を載せるようにした。
奔破児のそそり上がった一物は宝玄仙の女陰を貫いたままだ。宝玄仙は獣のように吠えた。
「ほおおおっ、んほおおお」
奔破児が、宝玄仙を抱きながら、激しく腰を上下すると、上に下にと揺さぶられて、宝玄仙は髪を振り乱して官能の声をあげた。
宝玄仙の身体が上下に揺れる。
奔破児の腰が宝玄仙の股間を打つたびに肌と肌がぶつかる音と、ねちゃねちゃという宝玄仙の淫液が奔破児の肉棒を擦る音がする。
「ひいっ──、ま、また──」
「ああ、俺も、そろそろ、いくぞ……」
奔破児が声をあげた。宝玄仙は喉を絞るような甲高い声を放って、奔破児の上で、ぐんと身体を反りかえらせた。
その宝玄仙を抱きながら、奔破児も数度大きく身体を震わせて、呻き声をあげた。
精を放ったのだ──。
奔破児は、ぐったりとなった宝玄仙を手放す。
宝玄仙は、身体がだるいのかそのまま横になったままでいる。
「千代婆、宝玄仙を頼むぞ──。しっかりと調教しておいてくれ」
服を整えながら奔破児は、千代に言った。
「お任せください、お坊ちゃま。では、いってらっしゃいませ」
千代は頭を下げた。
ふと見ると、宝玄仙が横たわったままで険しい視線で奔破児を睨んでいる。
さっきまでの狂態が嘘のように冷たい表情をしている。
「なんだい、その眼は?」
なんとなく千代は言った。
「奔破児、お前、わたしを犯したのかい?」
宝玄仙が奔破児を睨んだまま言った。
「は?」
奔破児がその意外な言葉に宝玄仙の顔をじっと見た。
「犯したのかい? 質問に答えな──」
「犯していないと思いたいのか、宝玄仙?」
奔破児が口元に笑みを浮かべた。
「ち、畜生……あいつ……。余計なことを……。負けやしないのに……」
今度は、宝玄仙が悔しそうに歯を食い縛ってそう呻いた。
「さあ、坊ちゃま、そろそろ軍営にお戻りください。宝殿の調教はしっかりとやっておきますから」
千代は、宝玄仙の様子に不審なものを感じながらそう言った。
奔破児は満足気に宝玄仙を一瞥し、そして、部屋を出ていった。