夜が白々と明けてきた。
沙那は、宝玄仙を金光院に連れていった後で、再び城郭に出た。
物陰から城郭の様子を観察するためだ。
まだ、夜が明けたばかりだというのに、城郭軍の幾つかの隊が慌ただしく駆けていくのに接した。
馬蹄の響きについても、あちこちから聞こえてくる。
すべてが南門に向かっているようにも思える。
軍営の周りも覗いた。
内部で慌ただしく軍が動いているのを感じる。
北安の城郭軍ばかりでなく、帝都にある城郭外からも、近傍の帝都からの国軍の軍団も出動したという情報にも接した。
ほかにも、貴族の私兵までも出ていった気配だ。
この国内の軍の関係は複雑だ。
実際のところ、金光院を襲撃して、九頭女らを捕えたのは、奔破児が動かした北安の城郭軍の一部だが、ここは帝都も近く、さらに大貴族の私軍などもいる。
沙那の狙いもその複雑さにある。
いずれにしても、慌ただしく城郭軍が出ていき、明らかに城郭内は手薄になっていくのを確かめ、沙那は再び金光院に向かった。
遠くから眺めるが、外見上はまったく変化がない。
金光院の出入り口を塞いでいる警備兵もそのままだし、軍が占拠していることを示す立て札も同じだ。
だが、実際には、昨日の夕方に地下から雪崩れ込んだ蔡美以下の手の者により、彼女たちの仲間である梁山泊の息がかかった一団に制圧され直している。
金光院を探索した兵たちは、地下室の存在には気がついたが、その地下室から周囲の家屋に抜け出る地下道には気がつかなかったのだ。
もっとも、金光院を制圧していた一隊は、この数日間、ただ、中にいた遊妓を犯しまくるだけで、まともに調査などしていなかったらしい。
お陰で、金光院の再奪回は呆気なく終わった。
金光院に異変があったことが気づかれ、城郭軍がまたやってくることを想定し、金光院に監禁されていた者を地下道から別の場所に集めるためのまったく別の拠点も準備してあったのだが、いまのところその必要はなさそうだ。
軍庁府は、いまだ、昨日の夜から連続で起きている各所の騒動に気を捉われていて、金光院の異変には気がついていないようだ。
沙那は、金光院のそばの小さな長屋に入り、そこに隠している地下道から金光院の地下に戻った。
「戻りました、ご主人様──」
地下道側から地下の大部屋に戻った沙那は、正面にいた宝玄仙を認めてそう言った。
そして、周囲の状況にぎょっとした。
ここは大部屋なのだが、壁際に沿って三十人ほどの男が素っ裸で立たされている。
いずれも、この金光院を占拠していて、この数日間、我が物顔で金光院を支配していた国軍の将兵だ。
だが、沙那がびっくりしたのは、その男たちの姿だ。
軍服を剥がされて素っ裸であるのはともかくとして、全員が後ろ手に拘束されて、腰縄に繋がった縄で双臀を割られて前側で陰棒の根元を縛られている。
その肉棒の根元を縛った縄で天井に取り付けたたくさんの金具から吊られて立たされているのだ。
しかも、左右の脚は、それぞれ隣の男の足首と結ばれている。そういう格好の男たちが、ずらりと部屋の壁に沿って立ち、猿ぐつわをされて呻いている。
そして、部屋の中心に床几椅子に座った宝玄仙が、胸だけを剝き出しにしたおかしな格好で座っており、さらに、細い棒と筆を持った数名の女たちがいて、勃起力を失った男たちの肉棒を棒で突いたり、なにかの薬を塗ったりしている。
いずれの男たちも汗びっしょりで呻いているのは、なにかの淫靡な仕打ちをされているに違いない。
宝玄仙は、その周りの女たちに、指揮官のようにあれこれと指図をしているようだ。
「な、なにをしているんですか、これは、ご主人様?」
沙那はこの異様な光景に思わず言った。
金光院内から外に出る前に、孫空女と一緒に入れ替わるように戻って来た蔡美に指示したのは、軍兵たちから軍装を剥がして、それを女たちに身に着けることだ。
素っ裸にするとか、ましてや、肉棒で天井から吊るすというようなことは沙那の預かり知らぬことだ。
もっとも、眼の前にいる宝玄仙がやらせていることに違いないが……。
「なにをしているかと言われてもね……。見た通りさ。こいつらは、この金光院に残した店の女たちを監禁することが任務であることをいいことに、この数日間、やりたい放題だったらしいよ。だから仕返しだ。この宝玄仙が、酷い仕打ちを受けた女たちに代わって、男の兵たちへの復讐をしてやっているところさ」
宝玄仙は言った。
沙那は、宝玄仙の呆れた仕打ちに嘆息した。
だがすぐに、ここは、宝玄仙の好きなようにさせようと思い直した。
宝玄仙の言ったことは事実だし、宝玄仙の溜飲も、ここで男たちに毎日乱暴に犯されていた女たちの気も少しは収まるというものだろう。
「ほら、こいつ見てごらん。この皮被りの道具の粗末な肥った男が隊長の
そして、宝玄仙は、視線を沙那から周りの女たちに移した。
「ほら、お前たち、この李勝はまた怒張が下がって来たよ。そこの正面の左の胸に傷がある男もだ。その隣もだね。こりゃあ、人手が足りないよ。蔡美に言って、こっちの人数を増やしてもらうかねえ──」
女たちがきゃあきゃあ言いながら、宝玄仙の指示に従って、男たちの睾丸を触ったり、得体の知れない淫油を肉棒の先に筆で塗ったりしている。
「ねえ、宝玄仙様、どれが“泣き油”で、どれが“吠え油”で、どれが“狂い油”かわからなくなってしまいました。どうしたらいいですか?」
猿ぐつわの下から狂ったような悲鳴をあげている李勝の前で、ひとりの女が困ったような表情で三本の筆を持って、宝玄仙に顔を向けている。
「いいよ、気にすんじゃないよ。どれでも、適当に塗っておきな。勃起を継続するという効果は同じだろうさ。だけど、李勝の皮冠りは剥いてから筆で淫油を塗るんだよ。じゃないと効果がないからね」
宝玄仙だ。
「ええ──。触るんですか? 嫌ですよ」
「どうせ、さんざんにやられたんだろう。今更、文句を言うんじゃないよ、
百寿というのはあの女の名なのだろう。
「わかりました。じゃあ、手袋つけてやります」
百寿が言った。
そして、その百寿に怒張の皮を剥かれて、剝き出しにされた肉棒の先端に得体の知れない薬を塗り直された李勝は、肥った身体を揺らして、悲痛な声をあげた。
「ねえ、沙那、いくら蔡美に言っても、こっちの人数を増やしてくれないんだよ。お前からも言っておくれよ。この三十人を数名だけでは、とても追いつけやしないよ」
宝玄仙が沙那を見る。
「ご主人様、もうすぐ、この城郭をみんなで離脱します。ほとんどの人間が、その準備にかかりきりなんです。こんなことに人数は避けませんよ」
沙那は仕方なく言った。
「なに言ってんだよ。碌な仕返しもせずに、千代婆を置いてきたんだ。少しくらい憂さを晴らさせてくれてもいいだろう」
千代婆については、宝玄仙の指示で宝玄仙に
そして、猿ぐつわをして、やってくるだろう
しかも、大量の浣腸液を腸に注ぎ込み、七星の『道術錠』で肛門を封鎖してしまってだ。
その肛門の封鎖は、奔破児の精を受けたときに解除されるようにした。
さらに、七星のその『道術錠』で、奔破児の精を受けたときに、新しい『道術錠』が作動し、千代婆の女陰に挿入した奔破児の肉棒が抜けなくなるようにも道術をかけた。
それを解くのは、千代婆の中に、もう一度精を入れるという条件付にした。
つまり、宝玄仙の姿をした千代婆の女陰に、奔破児は自分の肉棒を入れて精を発する。
すると、『道術錠』がかかり、奔破児の肉棒は抜けなくなる。
同時に、その千代婆の肛門の封鎖が解けて、千代婆は汚物をぶちまける。
また、それに合わせて、宝玄仙の姿をした千代婆の姿が元に戻るようにもした。
奔破児は、肉棒を千代婆から抜くために、汚物まみれの老婆に精を放たなければならないということだ。
無論、やったのは宝玄仙で、沙那は、再会したばかりの七星に嬉々として指示して、その支度を見守っていただけだ。
それから、あの家から七星とともに、ここまで宝玄仙を連れ戻したが、その移動の途中で宝玄仙が、よく考えたら、あれでは千代婆が若い奔破児に二度も精を受けることになり、仕返しでもなんでもないと喚きはじめたりもした。
そんなことはどうでもいいと思っていた沙那は、それには閉口した。
とにかく、宝玄仙をなだめすかして、この金光院に連れて来たのだ。
「そう思ったから、蔡美も、ご主人様にここで自由にさせてくれているんですよ。いずれにしても、ここはもうすぐ離脱です。彼女たちにも準備をさせてください」
沙那はそう言うと、百寿たちをこの部屋から追い出して、蔡美に合流するように言った。彼女たちは出ていった。
「それよりも、ご主人様もご準備をお願いします──。ところで、まだ、道術力は戻りませんか?」
沙那は言った。
「いや、少しは戻って来た。だが、完全じゃないね。悪いけど、朱姫や九頭女の治療は、昼過ぎまで待ってもらうしかないね」
「それは、問題ありません。ふたりとも
沙那は説明しなが、らちらりと宝玄仙の勃起した乳首に視線をやった。
いまだに宝玄仙の乳首の屹立は収まっていないし、時折、官能に苦しむ仕草をする。
まだ、身体は酷い状況なのだろう。
それでも、こうやって嗜虐癖を発揮して、男の兵たちに仕返しをする。
それはそれで大したものだ。
だが、沙那は、ふと、宝玄仙のその乳首をちょんとついてみたいという誘惑にもかられていた。
いま、宝玄仙は道術を遣えない。
平気な顔をしているが、宝玄仙は全神経を集中して、千代婆に性感をおかしくされた乳首から受ける淫情を我慢しているに違いない。
それをここで刺激してやったらどんな顔をして悶えるのだろう……。
沙那は、慌てて、その馬鹿な考えを捨てる。
「では、ご主人様も……」
「じゃあ、いいよ。なら、琵琶子を呼んでおいで。あいつ、ここにいるんだろう? わたしのことを怖がって、やってこないんだよ。ちょっと、からかうだけだから連れておいで、沙那」
宝玄仙が言い出した。
「そういうことは全部、城郭から脱走してからのことです、ご主人様──」
ついに、沙那は大きな声をあげた。
*
「報告せよ──」
軍営に戻るなり、奔破児は言った。
奔破児の幕僚が集まっている一室だ。
その奔破児の姿を確認して、その幕僚たちが弾かれたように立ちあがった。
「奔破児様、いままで、どこへ──?」
幕僚のひとりが言った。
若いが奔破児が、この中でもっとも優秀だと思っている部下だ。
まあ、若いといっても奔破児よりもひとつ歳若なだけだが、奔破児の年齢が、諜報部隊の束ねをするには若すぎるのだが……。
「俺のことはいい。それよりも、状況を報告しろ」
千代婆の女陰から抜けなくなった後の数刻近い時間のことは考えたくなかった。
酷い目に遭ったものだ。
そして、急いで軍営に戻る途中で、城郭内に異変が起こったことはわかった。
慌ただしく動いている城郭軍の各隊とすれ違ったし、城門の方向で大きな軍の動きも確認していた。
「軍営が破られました。
童林が代表するかたちで報告した。
「なに? どういうことだ?」
奔破児は叫んだ。
軍の地下牢は、軍の営舎の地下にあるのだ。
しかも、営舎側と地下道側の両方の門を開かねば通り抜けられず、通り抜けたとしても軍の駐留しているど真ん中に出るだけだ。
さらに軍営の周りには高い塀もあり、見張りも厳重だ。
いったい、どうやって、集団脱走などやったというのだ。
童林が説明した。
つまりは、道術遣いがいたということのようだ。
向こうに道術遣いがまだ存在していて、知られている軍兵に変身し、女囚を収容するという目的で、堂々と営舎を通り抜けて、地下牢の入口までやってきた。
そして、内側から牢番に地下牢への入口の格子の門を開かせてから、あっという間に内部を制圧し、今度はその地下牢の内側から鍵を締めて、地上からの兵がやってくるのを阻止し、やはり、道術で堂々と全員を脱走させた。
固い警備が逆に仇になったということのようだ。
「奔破児様を探していたのです。しかし、どこに知らせてよいのか──」
童林が申し訳なさそうに言った。
奔破児は、自宅に戻るとは伝えてはいたが、宝玄仙を監禁していることや、その場所も彼らには伝えてはいなかった。
武芸に自信のある奔破児に警護の兵は必要ないし、金光院で捕えた女のひとりを個人的な理由で監禁して、調教していることは知らせたくなかったのだ。
金光院から宝玄仙を運んだのも、軍営からその家に向かうための偽装のために割いた人数も、奔破児の個人的な部下であり、軍人としての奔破児とは関係ない。
いずれにしても、知らせてなくてよかったと思った。
千代婆の女陰に精を放つために、汚物だらけの千代婆と格闘しているところをこいつらに見られるところだった。
「とにかく、城門を封鎖するように手配しろ」
「それはやりました、奔破児様」
奔破児は少し安心した。
ならば、連中は袋の鼠だ。
いずれ、再び捕らえられる。
「それで、連中はどこに行ったかわかるか?」
道術遣いが絡んでいるとしも、城壁を道術で通り抜けることはできない。
城壁には、あらゆる道術遣いの道術を撥ね返す道術封じが張り巡らせてある。
どんな道術封遣いがいても、国都の外には行けないはずだ。
「それが、夜明け前に城門の一部に、人ひとり分だけ抜けられる程度の穴が開けられたのが発見されました。軍営が破られた時刻のほぼ直後です」
童林が言った。
奔破児は唸った。それなら、その穴から女囚たちが抜け出した可能性がある。
「どの方向だ?」
「南です」
その言葉で、奔破児が浮かんだのは、南側に進む方向に梁山泊があるということだ。
かなりの距離はあるが、梁山泊と呼ばれている逃亡奴隷たちを含む女たちの叛乱と、九頭女たちの閻魔女についての結びつきは証明されていないが、もしも、奔破児の想像通りに、このふたつが結びつているとすれば、城壁を通り抜けた女囚たちは、城壁を抜けて南に向かった可能性が高い。
「軍を出動させろ。弱っている女囚を連れての逃亡だ。それほど、遠くに向かってはおらんぞ」
奔破児は言った。
「それも、すでに手配しています。出動できる城郭軍の隊のほかにも、帝都にも連絡して、国軍にも捜索の要請をしました。賞金もかけました。それで、貴族の私軍なども、捜索隊に参加をしています。一方で、軍以外の城門の通過を禁止して、城郭内の捜索も開始させています、奔破児様」
童林は言った。
奔破児は頷いた。
さすがは童林であろう。
城郭から梁山泊方向に脱走されたとしても、まだ朝と言っていい時間だ。
確か地下牢に監禁していた九頭女以下の女たちは、二十人はいた。それほど遠くにはいけないはずだ。
そのとき、ふと思った。
金光院に監禁しているほかの女たちは──?
女囚として地下牢に放り込んだのは、金光院で働いていた者のうち、主立つ者だけで、残りの女たちは、そのまま一隊に監視させて、金光院に監禁させている。
主立つ者だけが逃亡して、残りを残しておくはずがない気がした。
「金光院はどうなっている、童林?」
奔破児は言った。
「
童林は言った。どうやら、奔破児の懸念について、童林はなにも感じてはいないようだ。
「違う。誰か、異常の有無を確認に行ったか?」
「異常はないという報告はありました」
部下のひとりがそう応じた。
なにかとてつもなく嫌な予感だ。
「一隊を出せ。金光院に向かう──。俺が直接指揮する」
奔破児は叫ぶとともに、外に出た。
捜索隊として、軍営に編成を終えていた一隊から一個小隊を割いて、金光院にある色町に向かう。
城郭の中は軍の動きが目立っていた。賞金が効いたのかもしれない。城郭軍のほかにも私軍や傭兵隊などの様々な軍旗を掲げた隊とすれ違った。
ほとんどが南門に向かっていた。逃亡した女囚たちを捕えれば、賞金が手に入るだけではなく、女を捕えたときにおいしい思いもできる。
だから、色めき立っているようだ。
金光院の正面に着いた。
入口の前に警備の兵がふたり立っている。
「異常は?」
奔破児は声をかけた。
「異常はありません」
ひとりが応じた。だが、奔破児は、なんだかその兵の眼に道術の色があるような気がした。
だが、とりあえず、そのまま入り口を通り過ぎて、内部に入る。
「あっ」
奔破児は叫んだ。奔破児と一緒にやってきた隊の兵たちも騒然としている。
中はもぬけの空だった。
人の気配がない。
誰もいないのだ。
「おい、警備兵──。どうなっているんだ?」
奔破児の後ろにいた将校が叫んだ。
「異常はありません」
警備兵が表情を変化させずに応じた。奔破児は舌打ちした。
やはり道術だ。
おそらく、ああやって、人を操るのは『縛心術』とかいう道術のはずだ。
「店中を隈なく探せ。この金光院にいた隊がどこかにいるはずだ」
この金光院でなにかが起こったのは明らかだ。
警備兵が道術で操られているということは、道術遣いを含む一団がここを襲ったのだ。
地下牢を襲って女囚を解放した一味と同じと考えていいだろう。
奔破児は率いていた一隊に命じた。
そして、奔破児自身は、地下室に向かった。あそこなら大勢の兵を監禁していても、声も外には漏れないし、気配もしない。
奔破児なら、そこに人を隠す。
監禁するにしても、殺して屍体にするにしてもだ。
地下に向かう隠し戸は先日の捜索で発見していた。
奔破児は、そこから地下に向かう階段を降りた。
すると、それまでまったくなかった人の気配を感じた。
地下室の中で一番大きな部屋に入る戸を開く。
「な、なんだ、これは?」
思わず声をあげた。
そこには、三十人ほどの兵の全員が、素っ裸で拘束されて立たされている。
しかも、全員が一物の根元に縄を巻き、それを天井から吊られているのだ。
「李勝、大丈夫か──?」
奔破児は、その中から全身を真っ赤にして常軌を逸したような表情をしている李勝を見つけて駆け寄った。
持っていた小刀で縄を次々に切って拘束を解く。
ほかの男たちも、奔破児と一緒に来た兵たちにより解放されている。
「ふおおおっ」
李勝は自由になるや否や、自分の両手で勃起した男根を擦って自慰を始めた。
奔破児は驚愕した。
だが、ほかの者たちも同じようにうずくまって自分の男根を擦っている。
いったいなにをされていたのだ。
やがて、李勝の一物から精の塊りが飛び出して、床を汚した。
奔破児は眉をひそめた。
男の精の醜悪な匂いが立ち込み始めたこの部屋で、まだ様子のおかしい李勝の頬を打った。
李勝の眼が、ほんの少しまともさを取り戻す。
「あっ……。奔破児様……」
李勝は、脂汗でびっしょりになった顔をやっとこちらに向けた。
「李勝、女たちはどこだ?」
とにかく、それだけを言った。
ほかのことはどうでもいい。
女たちの行方を知りたい。
「女たち……? ああ、兵たちの軍装を脱がして、それを身に着けてました。ほかにも多くの軍服を準備していて、それを着てどこかに……」
李勝は、まだ半分虚ろな表情で言った。
奔破児は、愕然とした。
どうやって、ここにいた女たちを含めた女囚たちが逃亡したかわかったのだ。
城門に開いていた小さな穴は、単なる欺騙だ。
確定はできないが、そこは単に城門に穴を開けただけで誰も逃げていないと思う。
だから、その方向に捜索していった隊はなにも発見できないに違いない。
おそらく、軍営から逃亡した女囚とここに監禁していた金光院の女たちは、城郭軍の一隊に変装して出ていったのだ。
城門は閉鎖したが、女囚を捜索する軍については、今朝までに、多くの雑多な軍が城門を抜けて、外に出ていった。
その混乱に紛れて堂々と城門を抜けていったのだ。
こうなってしまっては、それを追うのは難しい。
うっかりと賞金までかけてしまったので、女囚たちを追って、あまりもの多くの軍が出動してしまった。
おそらく、どんな軍がどの程度出ていったのか誰も把握していない。
一度城門の外に出てしまえば、適当に旗を変えながら、山狩りをしている各隊を尻目に堂々と行進し、適当な場所で小さな集団に分裂して人の海に紛れてしまえば、もうわからないだろう。
とにかく外に展開していったすべての軍をひとつひとつ確認するしかない──。
だが、どうやら逃亡を許したということを悟るしかなく、奔破児は悔しさに血が沸騰しそうな気持を味わっていた。