239 性奴隷になって
「『影手』を解いてあげるわ。だから、服を脱ぐのよ、九頭女。」
女</rb><rp>(</rp><rt>くずじょ</rt><rp>)</rp></ruby>」
部屋に入るなり、腰に手を当てがった朱姫がこちらを向いて命じた。
その途端、拘束されていた九頭女の両腕が自由になった。
「はい」
九頭女は袴の紐を解いて、腰から下ろす。
ついで、上衣の合わせを開いて身体から脱いだ。
さらに、胸当てを外し、腰を覆う下着も脱ぐ。
すでに履物は脱いでいた。
これで、九頭女の肢体を覆うものはひとつもない。
昼ごろまでは、肛門や股間の筋を切断していて、布を当ててないと糞尿が垂れ流れるほどに壊されていた身体だった。
ほかにも、すべての爪を剥がされて、顔も原型がわからないほどに殴られた。
前歯もすべて金具で抜かれた。
全身が痣どころか、あちこちの骨が折れ、乳房も釘でずたずたに潰されていた。
それほどの身体だったのに、夜を迎えたいまは、宝玄仙の道術で完全に回復し、どこを負傷したのかまったくわからないほどだ。
拷問を受ける前に戻ったどころか、古傷さえも消えてしまい、九頭女の身体は完全に健康な肉体を取り戻していた。
九頭女自身も道術遣いであるし、これまでに多くの道術遣いに出遭ったが、これほどの道術に接するのは初めてだった。
九頭女は驚嘆するとともに、もう女としても、人としても終わりだと思っていただけに、嬉しくて涙をこぼした。
北安の城郭の北側の小さな宿町の宿屋だ。
城郭の軍営からの脱獄に成功した九頭女は、そのお礼と朱姫に迷惑をかけたお詫びのつもりで、女同士で愛し合いたがった朱姫の嗜虐をひと晩受けることに同意した。
だから、朱姫の態度は演技だ。
そして、それに唯々諾々と従う九頭女の態度も演技だ。
しかし、演技をすることで、次第に酔いのようなものを感じていた。
服を着ている朱姫の前で素っ裸で立っていると、自分が人格のない家畜にでもなった気がする。
「九頭女、お前は、あたしの性奴隷よ。言ってごらん。お前はなに?」
朱姫は九頭女の裸身を見回しながら、冷たい声で言った。
演技のはずなのだが、朱姫の表情には少しの笑みもないし、むしろ、九頭女を蔑むような冷酷さがある。
「ひっ」
次の瞬間、九頭女の頬にいきなり平手が飛んだ。
強い力ではなかったが、そんなことをされるとは思っていなかっただけに、九頭女はびっくりした。
「奴隷のくせに、なにぼさっとしているの? あたしはなんと言った?」
朱姫が目を吊り上げて怒鳴った。
本当に演技なのだろうか。
九頭女は戸惑った。
「痛いっ」
鋭い痛みを乳房に感じて、九頭女は思わず胸を押さえた。
一瞬、なにが起きたのかわからなかったが、朱姫の『影手』が九頭女の乳房を張ったのだとわかった。
そんなこともできるのだと改めて朱姫の道術に驚く。
「勝手に身体を隠すんじゃない。手は横よ」
隠している乳房に、今度は反対側から痛みが走る。
それほど激痛というわけでもないが、敏感な乳房を張られるのは衝撃的だし屈辱だ。
しかも、実際の手で叩かれるのと違い、胸を隠しているのに、『影手』は九頭女のその腕をすり抜けて叩いてくる。
また肌が叩かれる音と痛み──。
「ひいっ──た、叩かないで、朱姫──」
今度は、また反対側──。
九頭女が抱いている胸が叩かれた振動で揺れる。
「手を身体の前から除けなさい──。そして、奴隷の言葉──。ぐずぐずずるんじゃないのよ」
慌てて、九頭女は手を横に移動する。
「ほらっ、お前は、あたしのなに?」
「ど、奴隷です。九頭女は、ご主人様の性奴隷です」
九頭女は言った。
奴隷だと言ったとき、なぜか股間が熱くなった気がした。
九頭女は当惑した。
「もう一度、言いなさい、奴隷。あたしの眼を見るのよ」
「九頭女は、ご主人様の性奴隷です──」
「もう一度──。あたしから、眼を離さないで言いなさい」
「九頭女は、ご主人様の性奴隷です」
「もう一度」
「九頭女はご主人様の性奴隷です」
「もう一度」
何度も言ううちに、本当にそんな気がしてくる。
不思議な感覚だ。
奴隷だという言葉が九頭女の心に擦りこまれるようだ。
「そうよ、九頭女……。だから、性奴隷のお前は、奴隷だと言われると感じるでしょう? 奴隷──。お前は、奴隷と呼ばれるたびに感じるはずよ。変態だからね」
朱姫がささやくように言った。
その直後、どっと股間に愛液が溢れたのがわかった。
九頭女は驚愕した。
「どうしたの、奴隷?」
「な、なんでもない……。い、いえ、なんでもありません、ご主人様」
九頭女は言った。
なんなのだろう。
どうやら、自分は本当に奴隷と言われることで感じているのだ……。
九頭女は愕然とした。
「もしかしたら、お前は、本当に奴隷と言われることで感じたの、九頭女? こんなことで感じたら変態よ。お前は変態?」
「そ、そんなことは……」
九頭女は股間を締める腿に力を入れて言った。
力を緩めると、染み出てきた愛液が内腿を垂れそうなのだ。
こんなに淫情を覚えるなどありえない。
自分の身体はどうしたのか……。
不意に朱姫の手が九頭女の股間に伸びた。
「い、いやっ」
九頭女は思わず腰を引く。
その九頭女の尻が思い切り叩かれた。
今度はかなりの力だ。
大きな音が九頭女の尻で鳴り響く。
また、『影手』だ。
「性奴隷の癖に、なにを避けているのよ、九頭女。ご主人様がお前の股を触ってあげているのよ。脚を開いて、前に突き出しなさい、奴隷」
朱姫が怒鳴った。
九頭女の身体は、朱姫の命じるとおりに、脚をやや開いて股間を前に出す姿勢をとる。
まるで、自分の身体ではないようだ。
勝手に自分の身体が動く気さえする。
「あっ……」
朱姫の指が九頭女の股間に触れた。
甘美な衝撃が九頭女を突きあげる。
朱姫の指は的確に九頭女の敏感な肉芽を触っていく。
痺れるような快感が股間から走り、九頭女は嬌声を迸らされた。
この娘は本当に指遣いがうまい──。
しかし、なぜ、これほどまでに感じるのか……。
なにかがおかしい。
朱姫の指が執拗に九頭女の股間をなぶる。
だんだんと熱くなる。
「どうしたの、奴隷? 気持ちよくて、腰を振っているの?」
「い、いえ……」
その直後、さっと朱姫の指が九頭女の股間から離れた。
そして、鋭い痛みが頬を走る。
「奴隷のくせに、ご主人様に嘘をつくの、奴隷? 見てごらん。お前の淫汁よ。これを見ても感じていないと言うの?」
九頭女の眼の前に、朱姫の指がかざされる。
確かに、九頭女の股間から溢れ出た淫汁で朱姫の指と指の間は糸を引いている。
「す、すみません」
「嘘をついたわね、奴隷」
「くっ──」
思わず腰が砕けるような淫情が走る。
もしかしたら、さっきから“奴隷”と言われるたびに感じているのではないかと思った。
『縛心術』という単語が九頭女の頭によぎる。
ふと見ると、朱姫の眼が九頭女の顔を覗き込んでいる。
「……いま、なにを思ったの? 正直に答えなさい、奴隷」
またなにかが股間に込みあがる。
これ以上は……。
だが、やっぱり、そうに違いない。
九頭女は、なおも発生する妖しい痺れに耐えながら口を開く。
「ご主人様が『縛心術』を遣っているのではないかと……」
ご主人様と呼ぶというのは、朱姫との約束だからそうしているのだが、だんだんとそう呼ぶのが当然のような気持ちになるので不思議だ。
いずれにしても、朱姫の『縛心術』にいつのまにかかけられているのは間違いない。
いくら命令とはいえ、さっきから九頭女の腰は前に突き出したままだ。
まるで自分の身体ではないかのように、それを戻す気になれない。
「そう──。そう思ったのね……。でも、残念ながら違うわ。お前が感じているのは、お前が被虐で濡れる淫乱で変態だからであって、『縛心術』ではないわ。そもそも、『縛心術』なんてものは存在しないわ。わかったわね」
朱姫が言った。
その途端、一瞬だけ、九頭女の頭が白くなる。
「『縛心術』ってわかる、九頭女?」
朱姫が言った。
「ば、『縛心術』?」
朱姫の喋っていることが理解できずに、思わず聞き返した。
それにしても、この股間の疼きはなんだろう。
なぜ、ほとんどなにもされていないのに、これほどに淫情に襲われるのか……?
「お前は、変態の奴隷よ。次は、そうね……。“変態”……。お前が変態と呼ばれるたびに、どんどん、身体が熱くなるわ。だって、お前は変態だから、そうでしょう? 変態の奴隷……」
「はあっ」
思わず大声が出た。
熱い──。
身体が熱い──。
そして、痺れるような股間の疼き──。
「変態……」
「いや……」
九頭女は、やってきた快感の波に耐えきれずに、大きな声をあげた。
腰が落ちそうになり、朱姫にまた頬を弾かれて我に返る。
「まだ、なにも始まっていないのよ、変態。まさか、言葉だけで、いこうとしているんじゃないでしょうねえ。軍営で拷問されたみたいだけど、それで変態になってしまったんじゃないの、奴隷?」
「う、うっ」
まただ……。
快感が衝きぬけていく。
今度こそ、耐えられずに自然に腰が沈む。
「変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態、変態──」
朱姫が耳元で続けて言った。
なにかによって、脳髄そのものが打たれたような気持ちになり、
九頭女は身体を仰け反らせて迸る快感に身体を委ねた。
しかし、そこから爆発するものはなにもない。
ただ、絶頂するような激しい快楽の波に襲われただけだ。
発散できないのに快感だけが襲ってくる。
気がつくと九頭女は、汗びっしょりになって、その場に腰を落としかけていた。
腰と脚の力が抜けて、真っ直ぐに立っていられなくなったのだ。
「も、もう……」
「もうなんなの? 触って欲しいの? それとも、放っておいてほしいの? お前が変態の奴隷だから、勝手に感じているだけでしょう? それなのにあたしのせいみたいに思っているんじゃないでしょうね?」
「そ、そんなことは……ありません……。ご、ご主人様」
真っ直ぐに立ちあがろうとして、自分がかなりの淫情に犯されているのを知った。
全身がただれたように疼く。
もしかしたら、本当に自分はこんな変態だったのか……。
しかし、そうとしか考えられない。
だから、言葉だけで、これほどに感じるのだろう……。
「いかせて欲しい、奴隷?」
朱姫が九頭女に言った。
「は、はい、ご主人様」
“ご主人様”という言葉が自然に出てくる。
気持ちよくして欲しい……。
心の底からそう思う。疼く──。
いや、疼くというような生易しいものじゃない。
九頭女の身体は、燃えあがるだけ燃えあがり、それなのに、出口のないままの快感の波が九頭女の中で暴れ回っている。
「じゃあ、奴隷の躾をしてやるわ。あたしの命令に従いなさい。うまくできなければ罰で、うまくいけばご褒美よ。ご褒美は天にも抜けるような絶頂よ。いい?」
「は、はい、ご主人様」
「ふふふ、どっちにしても、そろそろいいわね。じゃあ、奴隷、自慰をしなさい」
朱姫は言った。
九頭女は驚いて、思わず朱姫を見る。
お尻で大きな音が鳴った。
『影手』だ。
九頭女は悲鳴をあげた。
「奴隷で変態のくせに、ご主人様に二度も同じことを言わせるんじゃないわよ」
朱姫の低い声になぜかすくみあがってしまう。
「変態の九頭女だから、誰かに抱かれない日は、いつも自慰をしているんでしょう。同じようにやりなさい」
「自慰なんてしません」
思わず言った。
「嘘ね」
じっと朱姫の眼が覗く。
なぜか、心が金縛りになった気がする。
「最初に自慰をしたのはいつ? 正直に言いなさい」
「じゅ、十七……」
ふと、口に出た。
九頭女は自分でも驚いた。
なんで、そんなことを言うのだろう。
いくら、奴隷の真似事とはいえ、自分の性癖を口にするなんて……。
「わりと遅めね。じゃあ、いまは、どのくらいの頻度で自慰をするの?」
「ほとんど……。多分、多くても月に一度か、二度……。しない月も……。どうしても火照って仕方がないときだけ……」
自分が信じられない。
こんな明け透けな告白は、親しい
それなのに、べらべらと訊かれるまま喋っている自分がいる……。
「じゃあ、そのときのようにやりなさい、奴隷。一番感じる場所を触りなさい」
「は、はい」
九頭女は眼を閉じて、立ったまま、張り出している乳房を片手で揉み、もう一方の手で恥毛を掻き分けて、その奥の肉芽をなぞりはじめる。
「へえ、お前は、女の孔には指は入れないのね。中に指を入れるよりも、その肉芽がいいの?」
朱姫が、九頭女が指を動かしている股間を覗き込みながら言う。羞恥に手が震える。恥ずかしさで気が遠くなるようだ。
「は、はい……あ、ああ……」
もう感じてきた。さっきから、異常に身体が疼いていたのだ。
そして、自分のことを知っている自分の手による愛撫だ。
あっという間に快感に襲われる。
朱姫に見られているという緊張感も快感を増幅している気がする。
しかし、その緊張感も大きな快感に包まれてしまい次第に消えていく。
身体の芯を甘い感覚が駆け抜ける。
そして、股間から頭に響くような甘美感が流れてきた。
「ふう……うふう……あはぁ……」
耐えていても、どうしても呼吸が荒くなる。
こんな妹のような年齢の娘の前で自慰をするというのは、相手から身体を責められるよりも恥ずかしい。
しかし、この沸き起こる愉悦はなんなのだろうか。
人の前で、自慰をするということが、こんなにも恥ずかしくて、そして、気持ちがいいとは知らなかった。
「感じて来たようね、変態……。そのまま、続けなさい。そして、いきそうになったら言うのよ」
「ひんっ」
“変態”という言葉でどっと愛液が股間から溢れる。
思わず大きな声が出て、慌てて口をつぐむ。
「あっ……はあ……」
身体が小刻みな震えをしはじめた。
もうすぐだ。自分でもわかる。
肉芽をくりくりと横に縦に動かす。
手足が痺れるような快感に包まれる。
「あふうっ」
股間を動かす指を速くする。
峻烈な感覚がどっとやってくる。
思わず腰を前に出していた。
「もっと、肢を開くのよ、奴隷。感じているお前の股をご主人様に見せなさい」
朱姫の声が響くと、九頭女の脚は勝手に大きく拡がった。
支配されている……。
不思議な感覚だ。
なにも考えず、ただ命令のとおりに動く。
いつもは、梁山泊の戦いの一端を担う者として、多くの者を従え、その命を預かっている。
ときには、その命を代償にさせて、なにかを成し遂げなければならない場合もある。
その責任とつらさ……。
それが消える。
股間をじっと見られながら自慰をするという恥辱──。
しかし、同時にそれは苛烈で妖しい衝撃でもある。
快感があがるとともに、羞恥心がさらに小さくなる。
股間はすでに愛液で溢れている。九頭女の指にねっとりとそれがまとわりつく。
恥ずかしさが麻痺する。
肉芯を指で挟む。二本の指で挟んで弾くように動かす。
「はうっ……はううん──」
恥ずかしいが気持ちいい。
九頭女は胸をこねる手にさらに力を入れた。
乳房の先端の突起を指で弄び、そして、擦りあげる。
肉芽を挟んでいる指の速度も加速する。
「本当に、孔には入れないのね……。もう、いくんじゃないの?」
九頭女の股間に鼻をつけそうなくらいに顔をくっついている朱姫が言った。
「は、はい……。も、もう少し……。あはあっ……はあっ……はっ……はっ、はっ──ああっ──」
自分で腰を動かす。
襲いかかる絶頂の波──。
もういく──。
「い、いきます、ご主人様──」
九頭女は叫んだ。
その波が脳天を突きあげる。
「すぐに、手を背中に回しなさい」
朱姫の大きな声が頭に響いた。
「えっ? ええっ──?」
九頭女が昇天しようとしていたまさにその直前に、九頭女の手は自慰をしていた股間と胸から離れて背中に回った。
火照るだけ火照り、あがるだけあがりきった快感だけが取り残される。
「そ、そんな……」
九頭女はうろたえた。九頭女は、爆発する淫情を迸らせる寸前だったのだ。
それが一瞬にして進むのをとめられたのだ。
朱姫の大きな笑い声が部屋に響いた。
「奴隷にくせに、簡単にいけると思ったら大間違いよ。奴隷が気持ちよくなれるのは、ご褒美のときだけだと言ったでしょう。まだ、なにも奉仕していないくせに、いくのは禁止よ」
「だったら……」
九頭女はほとんど無意識のうちに言っていた。
「……ご奉仕させてください、ご主人様」
そして、自分のその言葉に驚いた。
「そうよ。その心から奉仕をしたという気持ち……。それが奴隷よ」
朱姫の顔が妖しく微笑んだ。
「跪きなさい、奴隷」
弾かれるように九頭女は、ただれるように疼く身体を跪かせた。
いつの間に持っていたのか、朱姫が手にあった小さな瓶から、赤色の透明の液体を肩に注いだ。