※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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241 狂うまで調教して

「うっ」

 

 最初に感じたのは、膣に得体の知れない異物が触れる気色の悪さだ。

 朱姫が九頭女の膣に挿そうとしている張形は、表面がねばねばした潤滑油で覆われていて、小さな突起のようなものが全面についている。

 その突起の先端のひとつひとつから粘っこい油のようなものを染み出させいて、それが張形全体を覆っているらしい。

 挿入する前に嫌がらせなのか、この張形の性質をさんざんに朱姫に説明された。

 その朱姫の持った妖しい張形が九頭女の股間の付け根にめり込まされていく。

 

「はっ……はあっ──はっ、はっ、はっ──」

 

 たちまちに大きな愉悦がやってきた。

 外側からも内側からも燃えあがるだけ、燃えさせられて一度も発散させてもらっていない身体だ。息が止まるような快感が身体全体に込みあがる。

 自分の溢れるような愛液と張形から染み出る油剤が混じり合う。

 そこから、熱いものが拡がる。

 

「朱姫がいっぱい九頭女さんを感じさせてあげますね。気持ちいいですか、九頭女さん?」

 

 朱姫が深々と張形を挿した。

 するとうねうねと張形が九頭女の膣の中で動きはじめた。

 

「うはっ──い、いいっ……おほうっ──」

 

 自分の腰が跳ねあがったのがわかった。

 一気に強い快感が脳天を突き刺した。

 痒みが一瞬で消失する気持ちよさに加えて、全身に溜まった性感が一挙に燃えあがる。九頭女は堪らず大声で吠えた。

 

「九頭女さんが、淫乱な奴隷だということを認めますね」

 

 朱姫がすっと張形を抜いていく。

 たちまちに気持ちよさが小さくなり、圧倒的な痒みが襲ってくる。

 九頭女は恐怖した。

 

「い、いかないで──。そのまま挿していて、挿して。お願いよ、朱姫──」

 

 九頭女は懸命に腰で張形を追いながら叫んだ。

 恥とか見栄とかいうものは、もはや存在しない。

 朱姫の奴隷の演技をするというような余裕もない。

 ただ、あの気持ちよさがなくなり、また痒みが襲ってくるという怯えだけがある。

 

「じゃあ、奴隷ですよ、九頭女さん。次にいつ会えるかどうかわからないけど、朱姫の前では、九頭女さんは朱姫の性奴隷なんです。いいですね?」

 

「ど、奴隷でいい……。奴隷にして、朱姫……。だ、だから……ああ、あうっ──いいわあぁ──」

 

 思わず叫んだ。

 逃げかけた張形が再び深く抉ってきてくれたのだ。

 九頭女は沸き起こる快感に陶酔する。

 しかし、また、朱姫が張形を抜く。九頭女は泣き叫ぶ。すると入ってくる。

 

「もっと脚を開いてください、九頭女さん」

 

 九頭女はさっと脚を開いた。

 あられもない恰好になった九頭女の股間に、朱姫の持つ張形が突いては抜かれ、抜かれては突かれる。

 そのたびに、峻烈な甘美感と、怖ろしいほどの掻痒感が交互に襲ってくる。

 九頭女は、もうなにも考えることができなくなり、ただ、激しく裸身をのたうたせて、ひたすらに悲鳴のような嬌声をあげ続けた。

 

「もう、いきますか、九頭女さん?」

 

 朱姫が激しく張形を九頭女の膣から出し入れしながら言った。

 張形はただ抜き挿しされるだけではない。

 張形そのものが、根元を軸に全体が円運動をしていて、それが九頭女の女陰の内襞を抉って擦るのだ。

 しかも、張形の表面はごつごつと感じるようなたくさんの突起があって、そのひとつひとつが大きな刺激を九頭女に与えている、

 

 それが連続で襲いかかる。

 さらに、九頭女の淫液をびちゃびちゃと鳴らす音に混じって、ぷしゅぷしゅという張形の表面から得体の知れない油剤が噴き出ている音も聞こえる。

 その音とともに、発狂するような掻痒剤が発生しているのだと思うと、九頭女の頭は状況を知覚することを放棄してしまい、なにも考えられなくなる。

 

「朱姫の奴隷ですよね、九頭女さん?」

 

 朱姫が九頭女を責めながら言った。

 

「奴隷です。奴隷よ──。九頭女は、朱姫の奴隷よ──」

 

 九頭女は自分が腰を大きく振っていることに気がついた。

 そして、肉が解けるような愉悦に我を忘れて声をあげ続けている。

 朱姫がごつごつと子宮の入り口を突きあげる。

 腹が押しあげられるような感触──。

 そこから信じられない快感が駆けあがる。

 

「ひいいいぃぃぃ──。いくうぅぅぅぅ──いくうっ──」

 

 強烈な衝撃に九頭女は叫んだ。

 

「いくとはっきり言いなさい、奴隷」

 

「うぐううぅぅ──。い、いきまふっ──」

 

 押しあげられるままに、九頭女は苛烈な快感のうねりに身を委ねた。

 そして、一気に快感の昇天まで駆けのぼった。

 

 あがったものがいつまでもさがってこない。

 果てしない絶頂の末に、九頭女は天にも昇る気持ちを味わい続けていた。

 

「いきましたね、九頭女さん。気持ちよかったですか?」

 

 張形を九頭女の中から抜いた朱姫が言った。

 しかし、九頭女は荒い息をするのがやっとで、それに答えることができないでいた。こんなに深くて長い絶頂は生まれて初めての経験だ。

 

 たった一度の絶頂が、こんなにも気持ちよくさせるとは知らなかった。

 九頭女は身体を吊られている腕に預けながら、恍惚の世界に浸っていた。

 だが、そうやって、絶頂の余韻の中にいられたのは、長い時間ではなかった。

 張形の染み出る油剤に冒された九頭女の膣の中から、もの凄い掻痒感が沸き起こってきたのだ。

 

「いぎいっ……。か、痒い──。朱姫、続けて。もっと、掻いて──。張形で掻いて──」

 

 九頭女は脂汗を撒き散らせて、大きく身体を前後左右に振りたてて叫んだ。

 そして、はっとした。

 開いた脚が閉じないのだ。

 叫びながらも足元を見る。爪先立ちの両脚の先の床に白い丸が描かれている。

 

 『道術錠』だと思った。

 朱姫が開いた脚先の周りに白い線を浮き立たせて、そこから足先を離すことができなくしたのだ。

 とにかく、九頭女は、大きく股を開いたまま、腰を激しく振りたてた。

 

「朱姫──、い、いえ、朱姫様──ご主人様、お願いします。入れて──。それを入れてください」

 

 とにかく九頭女は股間に張形を挿入してもらいたくて,ひたすら哀願を繰り返す。

 

「まったく、呆れた淫乱ですね。普段は、碧波潭の戦士のひとりとして、頼もしく人を指図する身分なのに、実は、こんなにも淫乱で浅ましいんですよ、九頭女さんは──。これが欲しいですか?」

 

 朱姫が粘性の油剤をべとつかせている張形を九頭女の前にかざす。

 

「欲しい。欲しいの──。朱姫、それを挿して。お願いします。挿して、挿して、挿して」

 

 九頭女は狂ったように喚いた。

 いまこの瞬間も激しい掻痒感が襲っている。

 それを癒してもらう以外ことを考えられない。

 朱姫が張形を深々とまた突き挿した。

 

「あああぁぁぁ──。き、気持ちいいぃぃぃぃ──」

 

 九頭女はやってきた恍惚感に身を委ねた。朱姫が押しつけるように張形を動かす。今度は数回の抽出で九頭女は昇天した。

 もう恥じらいも理性もない。

 あるのは、張形が与えてくれる快感のことだけだ。

 朱姫がくれる絶頂の素晴らしさだけが九頭女の頭を支配しようとしている。

 

「ぬ、抜かないで──。まだ、してください。お願い、朱姫──」

 

 朱姫が再び張形を引き抜いた。あっという間に強い掻痒感に襲われて九頭女は叫んだ。

 

「ふ、ふ、ふ。九頭女さんのあそこ……。真っ赤ですよ。それに、開いたり、閉じたり、ぱくぱくして、まるで生き物みたい」

 

「い、言わないで──。もう一度よ、朱姫。お願いよ。もう、なんでも約束するから。もう一度、入れてぇぇ──」

 

 気が狂うような痒みに、九頭女は泣き叫んだ。

 だが、朱姫は張形を持って、九頭女の勃起した乳首に張形の側面から湧き出る油剤を擦り付ける。

 

「あぐううっ──」

 

 それだけで九頭女は、身体は甘美感に弾ませた。

 

「汗と淫乱な汁で光る九頭女さんは、とても素敵ですよ」

 

 朱姫は言いながら、さらに張形の噴き出す粘りを股間のあちこちになぞり拡げていく。

 

「はんっ」

 

 張形が肉芽をぴんと弾いた。

 甘い息を吹き出した九頭女は、それだけでいきそうになり、びくびくと身体を大きく震わせた。

 

「そんなに欲しいですか、九頭女さん? 張形の動く方向に、九頭女さんの腰がついてきますよ。面白い──」

 

 朱姫が笑った。

 自分はそんなことをしているのかと思ったが、もうどうでもいい。

 気がつくと、確かに、九頭女は大きく脚を開いた格好で、朱姫の張形の動く方向に必死になって腰を追いかけさせていた。

 

 それにしても、痒い──。

 痒いのだ。

 

 脳天を破壊するようなこの痒み──。

 もう、耐えられない──。

 

「はふぅっ──」

 

 朱姫の張形がやっと女陰に入ってくる。

 しかし、先端だけだ。意地の悪い朱姫は、ほんのちょっとだけ挿しただけで、張形の動きを止めたのだ。

 しかも、さっきまで自らも大きく動いていた張形は、九頭女の女陰の入口に挿されたままぴたりと停止している。

 しかし、それでも、全身に快感が響きわたる。

 九頭女は自分で腰を動かすことで、そこから快感を搾り取ろうとした。

 

「まるで、性をむさぼる魔獣みたいですよ」

 

「意地悪ばかりしないで、朱姫。もう、入れてったら」

 

 九頭女は声をあげた。

 もう、一刻の猶予もなかった。

 

「……九頭女は、朱姫の性奴隷だと百回言ってください」

 

 朱姫が先端だけを挿したまま言った。

 もう少し……。これで激しく突いて欲しい──。

 痒みで狂いそうだ。

 

「九頭女は朱姫様の性奴隷です……」

 

 九頭女は慌てて叫ぶ。そして、さらに続ける。

 

「九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……。九頭女は朱姫様の性奴隷です……」

 

 その間も襲ってくる嘔吐感さえ伴うような掻痒感──。九頭女の頭は次第に白くなる。その真っ白になった頭に、朱姫の奴隷だという言葉が刻み込まれる。

 

「……九頭女さんは、朱姫の性奴隷ですよね?」

 

 不意に朱姫の声がした。それで、九頭女は繰り返していた言葉を止めた。

 

「性奴隷ですよね?」

 

 朱姫がまた言った。

 

「もちろんよ。九頭女は朱姫の性奴隷よ」

 

 九頭女は言った。

 なぜ、そんな当たり前のことを改めて訊くのだろう。

 九頭女は不思議に感じた。

 

「じゃあ、入れてあげます」

 

 朱姫がやっと満足したように張形を挿してくれた。

 今度は張形はまたうねうねと動きながら、九頭女の女陰の内襞を擦り抉ってくる。

 

「あぐううう──」

 

 九頭女は烈しい興奮に獣のような声を迸らせた。

 気持ちいい──。

 

 気持ちいいなどというような生易しいものじゃない。

 全身が性器そのものになって溶けていくようだ。

 四肢に満ちてくる愉悦と欲情は、完全に九頭女の我を忘れさせていた。

 

「朱姫の奴隷だと言いながら、いってください、九頭女さん」

 

 朱姫が激しく九頭女の股間を突く。

 

「──ひぎいっ──。ど、奴隷です。九頭女は、朱姫の奴隷──ふふうっ──」

 

 懸命に叫ぶ。

 朱姫が激しく九頭女の女陰を突く。

 

 いく──。

 真っ白な光が九頭女を包む──。

 

「おあずけ──」

 

 いきなり朱姫の大きな声がした。

 九頭女ははっとした。

 

「な、なに?」

 

 張形が九頭女の中でぴたりと静止している。じわじわと痒みがまた襲いかかる。

 

「動いちゃ駄目よ、九頭女──。“おあずけ”と言われたら、腰を止めるのよ。“よし”と言う前に腰を動かしたら、張形を抜いて、朝まで放っておきます」

 

 朱姫が怒鳴った。

 九頭女は知らず動かしていた自分の腰を慌てて止める。

 

「我慢よ……我慢……。口を開いても駄目よ」

 

 じっと朱姫が九頭女の顔を見ながら言う。

 犬のように躾けられている。

 そう思った。

 

 だが、同時に、九頭女は朱姫の奴隷だという言葉が、どこからか聞こえてくる。

 九頭女は狂いそうな痒みと戦いながら、懸命に耐えた。

 

 それにしても、なんという恐ろしい油剤だろう。

 ちょっとでも気を緩めたら、自分の腰は無意識に動き出しそうになる。

 朱姫の油剤に冒されきった九頭女の股はどろどろにただれるように熱い。

 悶々とした官能のうずまきに襲われている。

 

 朱姫の与える快感に九頭女のすべてが塗り替えられている気分だ。精神や人格のなにもかもを朱姫によって、作りかえられている。

 

 身体が千切れるような痒み……。

 息が止まる……。

 

 九頭女は朱姫の性奴隷……。

 その言葉が何度も何度も頭から響いてくる……。

 

「よし」

 

 朱姫が言った。

 九頭女は狂ったように腰を動かした。

 張形もまた九頭女の膣の深くまで挿しこまれて、激しく動き出す。

 

「あひいっ──」

 

 九頭女は、獣のような声をとともに、股間から淫液と張形の擦れる大きな音をさせながら、大きく身体を仰け反らせた。

 

 突き抜ける快感──。

 ただ、ひたすらに気持ちいい。

 これがあれば、もうなにもいらない。

 この快感のために、すべてを捨てられる。

 一瞬、そう思った。

 

 梁山泊のこと……。

 戦いのこと……。

 同志のみんなと誓った約束……。

 すべて消える……。

 

「もっと、いっていいんですよ、九頭女さん」

 

 朱姫の声が聞こえた。

 しかし、それはどこか遠くからやってくるかのように九頭女は感じた。

 それよりも張形の与えてくれる甘美感に九頭女は酔っていた。

 

 また、いきそうだ。

 今度も深くて大きそうだ。

 そして、やってきた。

 全身を包む快感にだんだんと頭が白くなる。

 張り裂けそうな悲鳴をあげながら九頭女は絶頂した。

 

「いくっ、いくっ、いくっ──」

 

 九頭女は吠えるように叫んだ。

 また、絶頂の嵐に襲われた九頭女は、限界を超える強烈な愉悦に、次第に薄くなる意識を感じていた。

 

 

 *

 

 

「この馬鹿朱姫──」

 

 沙那が朱姫を怒鳴りあげた。

 孫空女は、それを苦笑しながら見ていた。

 

「もういいのよ、沙那」

 

 寝台に横になった九頭女が、まだだるそうな身体を向けながら言った。

 その隣で蔡美は笑っている。

 

「いいや、こいつには、ちゃんと言ってやらないとわからないのよ。なんで、大騒ぎになるようなことになる前にやめないのよ。調子に乗るのは、お前の悪い癖だといつも言っているでしょう」

 

 沙那はなおも、腰に手を当てて朱姫を怒鳴っている。

 その足元で、朱姫は床に正座をさせられている。

 

 すでに外は明るいが、まだ早朝だ。

 他の部屋の宿泊客はまだ寝ている時間だろう。

 だが、すでにこの部屋には、沙那、朱姫、孫空女、九頭女、蔡美、そして、宝玄仙と七星までも起きて集まっている。

 

 すべては、朱姫が原因だ。

 

 昨夜は、この七人で三部屋に分かれて寝ることになり、宝玄仙と七星が一緒の部屋ということになった。

 そして、残りの五人で、どうやって分かれるかという話し合いになったときに、朱姫が九頭女の嗜虐をやりたがった。

 理由は知らないが、九頭女もまた、ひと晩だけなら朱姫の責めを受けてもいいと応じて、ふたりは隣の部屋に行った。

 そして、孫空女は、沙那と蔡美とともに、この部屋で休んだ。

 

 その朱姫が蒼い顔で部屋に飛び込んできたのは、いまから二刻(約二時間)前のことだ。

 半べそをかいて、なにか喚いていたが、最初はなにを言っているかわからなかった。

 やがて、どうやら九頭女が大変なことになったと言っているということがわかった。

 それで、慌てて飛び起きて、三人で隣の部屋に向かうと、泡を吹いてもの凄い痙攣をしている素っ裸の九頭女が床の上に転がっていた。

 

 なにをしたのかわからないが、どうやら責めを強くしすぎて、朱姫は九頭女をおかしくしてしまったようだ。

 沙那はかなり躊躇っていたようだったが、その九頭女が再び口から泡を吹き出すのを見て、意を決して、宝玄仙を起こしにいった。

 性愛をやっているときの宝玄仙の邪魔をすると、宝玄仙はとてつもなく不機嫌になる。

 だから、普通ならばそんなことはしない。

 しかし、それをしなければならないくらいに、九頭女の様子は目に見えておかしかった。

 

 幸いにも宝玄仙は、性愛の途中ではなく、……というよりも、部屋から出て来たのは宝玄仙ではなく、宝玉だったのだが……その宝玉が、道術を遣って九頭女を癒してくれた。

 次いで、やっと意識を取り戻した九頭女を寝台に移して身体を拭き、その間に宝玉と交替をした宝玄仙に事情を説明した。

 

 それから、ばたばたとしているうちに外が明るくなり、いまに至っている。

 いつの間にか、真ん中の部屋であるここに、全員が荷とともに集まっていた。

 

「確かに、後先考えずに嗜虐するのは感心しないね。いつも言っているだろう、朱姫。嗜虐をするときは、相手に対する奉仕だと思って、相手をよく見て嗜虐しろってね。お前には、このわたしも沙那や孫空女を激しく責めるだけだと思っているかもしれないけど、こいつらは体力があるんだ。同じように責めたりしたら、他の人間だと、とんでもないことになるとわかったろう?」

 

 宝玄仙だ。

 

「申し訳ありません、ご主人様」

 

 朱姫はうな垂れている。

 

「だいたい、お前はいつもそうなのよ。考えてもみなさい。九頭女は、昨日まで拷問を受けていて、死にかけていたのよ。それをお前は、嗜虐で殺しそうになったのよ。お前、馬鹿?」

 

 沙那がまた激しく、朱姫を罵った。

 もう、沙那の説教は半刻(約三十分)は続いている。

 その間、ずっと朱姫は正座のまま、頭を下げている。

 

「それにしても、相変わらずのあんたらだね。あたいもなんかほっとした気分になるよ」

 

 七星だ。

 沙那の説教は続いているが、その沙那に聞こえないように七星が囁いてきた。

 

「それよりも、お前も元気そうじゃないか、七星。てっきり、あたしは、あの九頭女と同じような目にご主人様に遭わされていると思ったのにさあ」

 

 孫空女は言った。

 

「いやあ、そうなりかけてたんだけどねえ……。宝玉さんが助けてくれたのさ。宝玄仙さんが、あたいのことを酷い目に遭わしかけたところで、人格が宝玉さんに変わったんだよ。お陰でまあ、こうやって、五体満足で朝を迎えることができたということさ」

 

 七星がにこにこしながら言った。

 

「宝玉さんと愛し合ったのかい?」

 

「それは、ご想像にお任せするよ。だけど、宝玉さんが、あの敏感になった自分の乳首を責められるのを結構気に入ってくれたということだけは言っておくよ、孫空女。まあ、あたいが宝玄仙にいかされた数の三倍はいっているね。あの身体は」

 

 七星がちらりと宝玄仙を見た。

 その宝玄仙は、さっきからしきりに朱姫が作ったという淫具の霊具を眺めまわしている。

 

「それにしても、よくできているねえ、この淫具は──。ほう、こんなにたくさんいぼがついて、女陰をえげつなく刺激するだけじゃなくて、掻痒剤を噴き出し続けるのかい。それにお前の作った薬剤は、わたしの痒みの毒を使っただけじゃなく、さらに改良して、しかも、混ぜる薬剤を足して、痒みを激しくしてあるんだって? この性感帯を求めて移動する油剤という発想もいいねえ」

 

 宝玄仙が感心したように言った。

 

「そ、そうですか、ご主人様──。でも、その“責め油”は、まだまだ未完成なんです。なぜか蒸発が早くて長く持たないし、もっと、痒みも調整できるようにしたいと思っているんですよねえ」

 

 宝玄仙が褒めたことに気をよくした朱姫が、顔をあげて嬉しそうに言った。

 

「いやいや、これはこれで、完成品でいいんじゃないかい? 絶頂するときの身体の変化に反応して蒸発し、後は強烈な痒みを与えるってかい。まあ、よくも“責め油”とは名付けたものさ。この効果のえげつなさは、“責め油”の名に恥じないねえ」

 

「そ、そうですか……。ありがとうございます」

 

 朱姫が照れたように笑った。

 突然、部屋に大きな音が響き渡った。

 びっくりして音の方向を見ると、沙那が力いっぱい床を踏み鳴らした音だった。

 

「この馬鹿朱姫、お前は、お説教の最中だというのに、なに他のことに気を取られているのよ──」

 

 沙那が怒りを露わに真っ赤な顔になっている。

 孫空女も久しぶりに見た沙那の激しいの形相だ。

 朱姫は顔を蒼くしている。

 

「ご、ごめんさない、沙那姉さん」

 

 朱姫が慌てて姿勢を糺す。

 

「服を脱ぎなさい……」

 

 仁王立ちのまま、沙那がぽつりと言った。

 

「えっ?」

 

 朱姫はきょとんとして、顔をあげて沙那の顔を見た。

 しかし、沙那の顔を見て、さらに顔を蒼くして服をその場で脱ぎ始める。

 

「あのう……」

 

 下着姿になった朱姫が、おそるおそるという感じで沙那を見た。

 

「ぐずぐずするんじゃない、朱姫。わたしたちの間で裸と言ったら、素っ裸に決まっているでしょう」

 

 沙那が怒鳴った。

 

「は、はいっ」

 

 朱姫が泣きそうな顔になり、胸当てと腰の下着を抜き取って、たったいま脱いだばかりの衣服の上に置いた。

 その衣類を沙那が、むんずと掴んだ。

 なにをするのか、それを持って窓のところに向かっていく。

 そして、窓を開けた。ここは二階でこちら側の窓は外の通りに面している。

 沙那は、朱姫の服を全部、窓の外に投げ捨てた。

 

「な、なにするんですか、沙那姉さん──」

 

 朱姫がびっくりして叫んだ。

 

「罰よ。その恰好で、取りに行っておいで、朱姫」

 

 沙那が朱姫を睨みつけて言った。

 

「えっ? ええっ? だって、外ですよ。あたし……え、ええっ──。だって、誰かに見られたら──。そ、そんな、勘忍してください、沙那姉さん」

 

 朱姫が、両手で裸身を隠しながら言った。

 

「こんな早朝に誰も来やしないわよ。それよりも、さっさと行っておいで。それとも、蹴り出されたいの?」

 

 沙那が怒鳴った。

 

「だ、だって……。そ、そんな、本気ですか? 嘘ですよね。外ですよ」

 

「だから、なんなのよ、朱姫」

 

 なおも立とうとしない朱姫の髪を沙那は掴んだ。

 そして、沙那は、その朱姫の髪の毛を引っ張って強引に立たせた。

 そのまま、扉まで引きずっていく。

 沙那は、扉を大きく開け放ち、悲鳴をあげる朱姫を廊下に放り出して、ばたんと扉を閉めた。

 ひいっ、という朱姫の泣き声が扉で遮断される。

 小走りに朱姫が階下に去っていく音もした。

 

「あんた、ときどき怖いよね、沙那」

 

 素っ裸で朱姫を廊下に放り出した沙那に呆れて孫空女は言った。

 そして、ほかの者の様子を見る。

 宝玄仙は愉快そうに笑っているだけだ。

 また、七星は苦笑している。

 九頭女と蔡美はびっくりした表情をしていた。

 

「このぐらいやらなけりゃあ、あいつはわかんないのよ」

 

 沙那はまだ憤懣を顔に浮かべたままだ。

 

「そんなにしなくてもいいのよ、沙那。朱姫の嗜虐を受けると言ったのはわたしだし……。それに、わたしは、朱姫様の性奴隷だし──」

 

 九頭女が口にした。

 孫空女は少し驚いた。

 

「いま、なんと言ったの、九頭女?」

 

 沙那が眉をひそめている。

 

「なんのこと?」

 

 九頭女はきょとんとしている。

 

「あなたが、朱姫のなんとかだと言ったことよ」

 

「性奴隷ってこと? わたしは、朱姫様の性奴隷よ」

 

 九頭女はなおも言った。

 その表情には、さも当たり前のことだというような雰囲気しかない。

 

「あいつ、まだ、なにかを隠しているわね……」

 

 沙那がぶつぶつと言った。

 

「確かにね。九頭女に『縛心術』をかけたままでいるようだね。じゃあ、おしおきの内容は沙那に任せるかい」

 

 宝玄仙が言った。

 

「『縛心術』ってなに?」

 

 九頭女だ。

 これには、さらに孫空女はびっくりした。

 道術遣いの九頭女が『縛心術』を知らないわけがない。

 朱姫がおかしな暗示を九頭女に与えているのは明白だ。

 孫空女もこれには本当に呆れた。

 

「お仕置きですか……。じゃあ、朱姫が合成した油剤を、朱姫自身に味わってもらうというのはどうですか? 朱姫のお尻にみんなでたっぷりと塗ってあげましょうよ、ご主人様。どんなに短くても、昼餉のときまで我慢させましょう」

 

 沙那が冷酷な声で言った。

 

「いいねえ。じゃあ、久しぶりに、朱姫に尻踊りと自慰をやらせて、みんなで見物するかい?」

 

 宝玄仙は、笑って同意した。

 もっとも、宝玄仙は、自分が愉しめるようになってきたこの展開が嬉しいだけだろう。

 

「戻って来たよ」

 

 扉の向こうから聞こえる階段を駆けあがる足音を耳にして孫空女は言った。

 

「じゃあ、これ」

 

 沙那が孫空女に魔縄を投げた。

 

「やれやれ」

 

 孫空女は身体をあげて、扉の横に移動する。

 沙那は扉の正面から待ち受けるような態勢──。

 

「じゃあ、あたいも協力してやるよ」

 

 面白がった七星が、扉に対して孫空女の反対側の位置に立った。

 

「も、戻りました」

 

 扉が向こうから開いて、全力で走ったためか、息切れをしている朱姫が入ってきた。真っ赤な顔をして、素っ裸の身体の前で服を抱えている。

 その朱姫に孫空女は、七星と沙那とともに襲いかかった。

 

 

 

 

(第38話『女奴隷の叛乱・後日談』終わり)

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