242 夜明けの襲撃者たち
「いく、いく、いく、いきます──。沙那姉さん、孫姉さん──、朱姫はいきます──いくうううっ」
半狂乱の朱姫の裸身が孫空女の身体の裸身の上で暴れ回る。
「ひいっ──。そ、そんなに暴れないでえぇぇぇ──」
孫空女もまた、朱姫の動きによって、女陰に挿入している双頭の張形に責められてしまい、激しく追い詰められていた。
孫空女は、大きな松の立木に身体を委ねる体勢になり、股間に双頭の張形を挿して、外に出ている部分に朱姫の肛門を受け入れさせている。
そして、朱姫を背中から抱えるようにして、性交をさせられているのだ。
一応は責めているのは孫空女の方のはずなのだが、快感に酔った朱姫が暴れ回るので、孫空女の女陰深くに喰い込んでいる張形が、孫空女の女陰の中を抉り回る。
そのため、孫空女には、腰といい、背筋といい、そして、脳天といい、とにかく、全身を途切れることのない愉悦の感覚が駆け抜けている。
朱姫は、肛門深くに張形を受け入れさせられただけで、ほとんど正体を失う程の快感に襲われているようだが、それは孫空女も同じだった。
あまりにも気持ちよすぎて、朱姫を責めろと命令されているのだが、なにをどうしていいかわからない。
お互いに身体を合わせながら、ふたりで、余裕のない嬌声をあげ続けている。
「これは、どっちが責めで、どっちが受けかわかりゃしないね。ほら、沙那、加勢してきな」
宝玄仙の揶揄がどこか遠い世界からの声のように聞こえる。
そして、孫空女と同じように、双頭の張形を股間に挿入させられた沙那が、身体をもじつかせながら這い寄ってくるのが微かにわかった。
九頭女たちとも別れ、いまは祭賽国の大きな街道を避けて、人目を避けるように南に向かって旅をしている。
九頭女たちは、一度、梁山泊に来てくれれば歓迎すると言ってくれたが、それは、しがらみを嫌った宝玄仙が断わった。
いまや梁山泊の一員となった七星とも二度目の別れを済ませた。
その後、梁山泊の勢力近くも、国軍や各地の地方軍の検問の厳しい街道沿いも避け、東側の山中道を南に向かって進んでいた。
山中道といっても、ほとんど人の通わない道であり、界隈には農村もなく、ましてや、宿町もない。
そのため、久しぶりに野宿ばかりの旅を続けている。
そして、今日はあまりにも霧深いために、早めに野宿の準備をすることになったのだが、例によって、宝玄仙の気まぐれにより、三人で双頭の張形で数珠繋ぎになって愛し合えと命令されて、まずは、孫空女と朱姫がそれに励んでいるというところだ。
「ひん、ひん、ひん──いく、いくうっ──」
肛門を張形に貫かれている朱姫が、叫びながら身体を仰け反らせて震えた。
朱姫が暴れるたびに、快感に襲われて孫空女は身体を弾かせてしまう。
すると、その孫空女の身体の動きで、今度は、朱姫が肛門に刺激を受けて暴れる。
ただその繰り返しだったのだが、異常なほどに肛門が弱い朱姫は、それで先に絶頂に達したのだ。
「あ、あたしも駄目だよおお──」
しかし、孫空女も限界だった。
少し遅れただけで、孫空女も大きな快感の波に身を任せられる。
朱姫が大きく身体を動かしたことにより、孫空女の女陰に挿入されている側の張形も大きく動き、孫空女もまた愉悦の頂点に達してしまったのだ。
「い、いくわよ……」
沙那だ。
孫空女は眼を開けた。
沙那が朱姫の身体に重なろうとしていた。
「ひいいいっ──。も、もう、駄目です、沙那姉さん──」
孫空女の腰に乗っている朱姫が身体を跳ねた。
後ろでて達したばかりの朱姫に、今度は前からも沙那が女陰に張形を挿そうとしていることで、朱姫は悲鳴をあげている。
沙那の上気した顔がすぐ眼の前になった。
そして、朱姫が身体を弾けさせる。
「ひゃああぁぁ──。動かないででぇぇ、朱姫──」
朱姫が暴れるたびに、堪えようのない淫情の刺激に襲われる孫空女は、抗議の声をあげた。
「孫空女、朱姫、お前らは、それでも性交のつもりかい。ただ、張形を挟んでもみ合っているだけじゃないか──。沙那、さっさと、ぶっ挿すんだよ」
宝玄仙の呆れたような叱咤が飛んでくる。
「は、はい、ご主人様……」
軽い酔いのような表情をした沙那が朱姫に覆いかぶさっていく。
「あひいいぃぃぃ──」
身体の小さな朱姫が沙那と孫空女に挟まれて、苦悶の叫びを放つ。
なおも暴れる朱姫を沙那と一緒に挟むように押さえつける。
「挿したままじっとしてどうするんだよ、沙那。始めるんだよ」
「は、はい」
宝玄仙に怒鳴られて、沙那が身体を前後に動かし始める。
たちまちに、朱姫が悲鳴のような声をあげる。
朱姫は前後に張形を受けているのだ。
前後から責められて、朱姫の少女の身体が、あっという間に絶頂に向かって身体を暴れさせる。
「ひん、ひいっ──。しゅ、朱姫、そ、そんなに暴れちゃいやっ」
沙那が真っ赤な顔を左右に振っている。
快感に弱い沙那が、張形を通して戻ってくる刺激にもう我を忘れたような声をあげた。
沙那がなにかをすがろうとするかのように手を伸ばした。
孫空女も手を伸ばす。
「ああ、孫女──」
すでに愛欲にどっぷりとつかったようになっている沙那が、がっしりと孫空女の腕を浮かんだ。
孫空女も沙那を掴む。
朱姫を挟んで、孫空女は沙那と抱き合った。
孫空女は、沙那に合わせて腰を動かす。
沙那もまた、孫空女に合わせて動こうとしている。
それに挟まれた朱姫が総身を震わせて暴れる。
「いきます、沙那姉さん、孫姉さん──」
朱姫が断末魔のような声をあげて全身を震わせた。
そして、孫空女もまた、朱姫の弾むような動きに、女陰のもっとも深い部分を抉られて、もの凄い速度で絶頂へと昇っていく。
「わ、わたしも──」
「あたしも──」
朱姫の身体の震えが合図であるかのように、とどめのような快感が身体を襲った。
絶頂の震えに全身を真っ赤にしている朱姫を押し潰しようにして、孫空女は沙那と一緒に達した。
「しゅ、朱姫……。沙那……」
「はあ、はあ、はあ……」
「孫女、朱姫……はあ、はあ……」
三人で達したことにより、やっと落ち着いた感じになり、快感に余韻に三人で浸っていた。三人の汗と汗、そして、愛液と愛液が混じり合う。
「それぞれがそれなりの女傑のくせに、お前たちは、快感だけには異常に弱いよねえ」
宝玄仙だ。
孫空女は顔をあげた。
いつのまにか裸身になり、股間に道術で出現した男根を生やして、こっちにやってくる。
沙那のすぐ背後に立ち、まさに、沙那の腰を掴もうとしていた。
「さ、沙那──」
気がついていないみたいだった沙那に孫空女は声をかけた。
しかし、もう宝玄仙が沙那の腰を背後からがっしりと掴んでいる。
「えっ……? あ、あひいいいっ──、ご、ご主人様──、ひぎいっ」
後ろから肛門に宝玄仙の怒張を挿入されようとしている沙那が錯乱した声をあげた。
「身体を千切られるような声を出すんじゃないよ、沙那──。ほら、挿し終わったよ」
宝玄仙の裸身もまた、沙那に重なる。
四人の裸身が孫空女が背もたれている松の木に押し付けるように見事に串刺しに重なった。
「ひい、ひい、ひい──」
沙那が切れ切れの悲鳴をあげる。そして、いきんで全身を振る。
すると、その振動が朱姫と孫空女にも伝わり、さっきの激しい快感が戻ってくる。
「そら、動くよ。わたしが動くと、三人が繋がっている張形も連動して動くからね」
宝玄仙がそう言って、前後に動き始めた。
道術なのだろう。
宝玄仙の腰の動きに合わせて、張形が激しい動きを始める。
沙那が吠える。
朱姫が泣き叫ぶ。
そして、孫空女もたちまちに襲ってきた官能の暴風に、我を忘れて叫んだ。
やがて、閃光のような快感の爆発が孫空女の全身を襲った。
*
焚火が燃えていた。
いい匂いが漂ってくる。
孫空女は眼を開いた。
ふと見ると、宝玄仙がなにかを鍋で煮ていた。
まだ、沙那も朱姫も脚に長靴を履いただけの裸身で地面に横になっている。
孫空女も同じ格好だ。
どうやら、宝玄仙に責められて三人揃って気を失ってしまったようだ。
ふたりを揺り動かして起こしから、慌てて衣服を身に着ける。
「ご主人様、やるよ」
なんとか身支度を終えると、火のそばに寄って、宝玄仙から混ぜ棒を取りあげる。
鍋の中身は、米と豚の乾し肉となにかの香草を煮ているようだ。
「お前たちがやるようにはいかないねえ。どうも、肉の臭みが消えなくてね」
宝玄仙が孫空女に場所を譲りながら言った。
宝玄仙に命じられて三人で愛し合い始めたのは夕方だったが、いまは完全に夜だ。
だが、異常なほどに霧が立ち込めているのは相変わらずで、周囲は完全な闇夜になっていた。
結界の真ん中で鍋を煮ている焚火の明かりだけが一帯を照らしているが、あまりにも深い霧のために、炎の灯りが途切れる先まったく見えない。
「肉の臭みを消すのは、この香草じゃないよ、ご主人様」
孫空女は香料入れの中から、肉消しに適する種類を三種ほど選んで足した。
しばらく煮込むとすっかりと肉の匂いが消えて、いい香りが漂ってくる。
「見た目と違って、なかなか料理がうまいよねえ、お前は」
宝玄仙が孫空女の手つきを眺めながら言う。
「あたしは、料理なんかしないように見えるのかい、ご主人様?」
鍋の底に焦げ付かないように巻き混ぜら孫空女は応じた。この鍋は、孫空女がこの一行に加わる前から使っている土鍋らしい。
それほど大きくはないが、女が四人で食事をする分量の料理を作るには十分な大きさだ。
「ああ、お前は、料理なんて女らしいことをするようには見えないね。朱姫はそれなりに作るけど、お前に比べれば、沙那はいま少しだねえ。沙那しかいないときには、酷いものだったよ。こいつは料理しないんだよ。兎や鳥を捕まえて血抜きをしてただ焼くとか、そんなのばっかしでさあ。まあ、獲物を捕らえるのは上手だったけどね」
やってきた沙那に向かって、宝玄仙が言った。
「わたしが孫女や朱姫に比べれば、料理をできないのは認めます。わたしは、幼い頃に母を亡くしたし、父からは武術以外には習わなかったので、誰も教えてくれる人がいなかったんです」
沙那もまた、身支度を終えている。
そこ横には朱姫もいて、孫空女もそうだが、ふたりとも身体がだるそうだ。気を失う程の情交をしたのだ。
当然といえば、当然だろう。ふたりは、荷から出した食器を持っている。
「いや、あたしも、ちゃんとした料理なんてできないよ、沙那。ただ、あたしは、沙那に比べれば、ずっと旅の経験が長いんだ。それで野宿で作るこういう料理については、知識があるのさ。でも、朱姫は、こういう野宿で作る料理も得意だし、台所で支度するような料理もそれなりにできるよねえ」
鍋はもうすっかりいいようだ。
孫空女は、沙那と朱姫が持ってきた椀に鍋の中身をとり分けながら言った。
「あたしも、孫姉さんと負けず劣らずで、幼い頃から旅ばかりですから──。それに、大きな屋敷で台所仕事の下働きも何度かやったことがあります。それでひと通りのことはできます」
孫空女から椀を受け取った朱姫が、箸とともに宝玄仙に手渡した。
朱姫、沙那と食事が渡り、孫空女も鍋をさらって、自分の椀に入れた。
しばらく、四人で食事をする。肉と米がうまく香草で溶け合っていて、とてもおいしかった。疲れている身体に染みわたるようだ。
「それにしても、いくら結界が張ってあるとはいえ、素っ裸で寝ころんでしまうなんて、いつの間にか、慎みというのを忘れたんじゃないのかい、お前たちは?」
しばらくして、宝玄仙が揶揄するようなことを言った。
「ひ、酷いですよ、ご主人様──。あれは、ご主人様が……」
沙那が頬を膨らませた。
「それは、お前たちが感じすぎるのがいけないのさ。五、六回、膣や尻を抉られるたびに、一度気をやるんだから、そりゃあ、最後には気を失いもするさ」
「そ、それも、ご主人様がわたしたちをそんな風にしたんじゃないですか」
沙那が真っ赤な顔で文句を言った。
宝玄仙が大笑いした。
いつもの旅の日常だ。
「……それにしても、随分と深い霧ですね。ちょっと、これじゃあ、片づけのために鍋や食器を洗いにいけませんね」
食事が終わる頃、朱姫が言った。
「そうね。とりあえず、松の木の根元の石の上にでも置いておこうよ、朱姫。明日の朝、下の沢まで洗いに行くわ」
沙那だ。寝床に選んだ大きな松の木の根元には、確かになにかの台のようにも思える小岩がある。そこに食事の終わった食器を鍋に入れて置く。
星も月も見えないので、時刻がわからないが、いまは、真夜中ではないだろうか。
夕方に、いきなり宝玄仙に三人繋がって愛し合えと宝玄仙に命じられて、仕方なくそれをした。
それから、宝玄仙にたっぷりと二刻(約二時間)は、責められ続けられたと思う。
そして、気を失ったのだ。
この辺り一帯には、宝玄仙の結界が刻んである。
宝玄仙の結界の中である限り、山を徘徊する獣も、あるいは、盗賊、それとも妖魔であろうとも、決して入ってくることができない。
だから、安心して気を失うなんてことができるのだが、それため、どこのくらいの時間だったのはよくわからない。
もっとも、宝玄仙の激しい責めの後だ。意識を失っていたのは、短い時間だったわけはないと思う。
「とにかく、今夜は、もう休みましょう。ご主人様、それでいいですよね?」
沙那が言った。
「ああ、いいよ。寝床を敷いておくれ」
宝玄仙が言った。
孫空女はほっとした。
正直に言えば、まだ、身体が重い。
まだ横になっていたい。
三人で寝る準備をする。
松の木のそばの一番場所のいいところは宝玄仙だ。まずは落ちている小石や松の葉を完全に地面からなくして、その上に厚めの毛布を二重に敷く。
そして、敷布をして、そこに掛け毛布を拡げる。それを三人で行う。
残りの三人は、敷き布と毛布に挟まれて三人でくっついて寝るだけなので、準備という程でもない。
「わたしは、もう寝るけど、お前たちは、三人だけで乳繰りあってもいいんだよ。お前たちふたりも、たまには朱姫の嗜虐を受けてみたらどうなんだい?」
宝玄仙が寝床に横になりながら、からかうような口調で言った。
「だ、だったら、あたしも、試してみたい責めが──」
弾かれたように反応して声をあげたのは朱姫だ。
しかし、それを沙那の冷たい声が遮った。
「寝るわよ、朱姫」
沙那はただ、それだけを言った。
「どうしてですか、沙那姉さん? ご主人様もおっしゃったじゃないですか。たまには、あたしの責めも受けてくださいよ。あたし、沙那姉さんとか、孫姉さんとかと、もっと愛し合いたいんです」
「はいはい、わたしもあなたのことを愛しているわ。でも、嗜虐抜きでね」
沙那だ。
沙那は、もう、拡げた毛布の端に自分の場所を確保して、身体を横にしている。
「ほら、お前も沙那の横に行きな、朱姫」
孫空女も朱姫を促して、毛布のある場所に向かった。
朱姫が不満そうな顔をしながら沙那の背中にくっつくように横になる。
さらにふたりに添って孫空女も横になる。
「ねえ、いいじゃないですか。一度、朱姫の嗜虐を受けてくださいよ。今度は調子に乗りませんから。とっても気持ちいい思いをさせてみせます」
朱姫が沙那の耳元で言った。
「わかったから、もう寝な、朱姫。お前がいい子だったら、考えてやるから、ねえ、沙那」
孫空女は言った。
「そうね。もの凄く、とっても、とってもいい子だったらね」
沙那も応じた。
「いい子って、なにをしたらいいんですか、沙那姉さん、孫姉さん? 教えてください。なんでもしますから。いい子というのはどういうことなんですか? ねえ、いい子って……」
「いいから、口を閉じなさい、朱姫」
背中越しに少し強い口調で沙那が言った。
*
朝か──。
眼を覚ましたとき、夜の闇夜が消えて、陽の明るさがやってきていた。
ただ、霧はまだ深いようだ。相変わらず、周囲の状況がわからない。
そして、横に朱姫も沙那もいないことに気がついた。
孫空女は、不審なものを感じて、周りを見回す。
「ご主人様?」
ふと見ると、松の木の根元に寝ていた宝玄仙の姿もない。
寝床も荷もそのままだが、人だけがいないのだ。
孫空女は驚いて身体を起こした。
そのとき、ずっと遠くの霧の中に、三個の台を抱えて人を運んでいる十数名の人影を見た気がした。それが、霧の中に消えていった。
「ご主人様──?」
孫空女は叫んだ。
遠目でわからなかったが、三番目の台の上で寝ていたのが、宝玄仙のように見えたのだ。
台の上の人物は確かに女であり、宝玄仙が着ていたものと同じだった。
あの寝ている女が宝玄仙だとすれば、その前のふたつの台には、沙那と朱姫が載っていたのではないか……?
{ええっ」
孫空女は飛び起きた。
「待て、孫空女──」
突然、声をかけられた。
そこには、四人の男がいた。
孫空女はぎょっとした。
そして、こんなにも近くに人がいながら、いままで気配を感じていなかったことに驚いた。
声をかけたのは、髪の毛に白いものが混じっている四十すぎの壮年の男だった。
その後ろには、肌の黒い堂々とした風采の若い男、髪の長いばさばさの髪をした少年、そして、痩せこけていて、頭に頭巾を被っている老人がいる。年齢も服装もばらばらの男たちだ。
「お前たちは、なんだよ? なんで、あたしの名を知っているんだい? それに、ご主人様たちを連れていったのは、お前の仲間か?」
孫空女は、身構えた。
「俺の名は
十八公と名乗った男が言った。
そして、後ろの男のうち、長い髪の少年が笑いながら口を開く。
「そして、お前らを見て、お前らこそ、一番の金目のものだということもわかった。お前らのような見目美しい若い女を奴隷として売り飛ばせば、ひと財産できる。だから、連れていくことにした。お前の分も準備してあるから、その台に横になれ、孫空女。そうすれば、また眠くなって、気がつけば、おれたちの根城ということだ」
確かに、三人の立っている横には、人間がひとり寝そべって載るような台がある。
四隅には持ち手もあり、担いで運べるようになっていた。
孫空女は、その台に霊力を感じた。
おそらく霊具だ。
得意そうに喋った少年の言った通りの効果があり、宝玄仙たちは、眠ったままその台に載せられて、なすすべなく運ばれていったに違いない。
宝玄仙の結界をどうやって破ったかはわからないが、この男たちの仲間が、三人を浚ったのだろう。
孫空女は、『如意棒』を構えるために、耳に手をやった。
「あれっ?」
思わず声をあげた。
いつも耳に隠している『如意棒』がないのだ。
「これを探しているのか、孫空女? 伸びろ──」
十八公の手の中から長くなった『如意棒』が出現した。そして、それを身体の前で軽々と回転させる。
孫空女は驚いた。
やっぱり十八公は道術遣いなのだろう。それに後ろの三人からも、なにがしかの霊力を帯びているのを感じる。
だがそれよりも、孫空女は、宝玄仙の道術が刻んであって他の道術遣いでは自在にできないはずの『如意棒』を道術で操り、しかも、あの重い『如意棒』を孫空女と同じように軽々と振って見せた十八公の腕力に驚愕した。
「十八公、こいつは、大人しく台に載るような女じゃないようだ。俺が大人しくさせてもいいか?」
黒い肌の男が前に出てきた。
「好きにしろ、
十八公が退がり、凌空士と呼ばれた男が前に出てきた。
「ついでに、一発くらい犯してもいいよな」
凌空士が高笑いをする。
「それも、好きにしろ」
十八公が苦笑している。
「好き勝手言いやがって、容赦しないよ、あたしは」
孫空女は身構えた。
凌空士は特段、武器を構えるということもないようだ。
どうやら、孫空女を素手でやり込めるつもりらしい。
とにかく、この四人を倒して、連中の根城がどこにあるかを白状させて、連れていかれた三人を助け出す──。
それしかないようだ。
孫空女は、凌空士に飛びかかった。
「そうれっ」
なにが起こったのかわからない。凌空士に飛びかかった途端に、地面がなくなったのだ。
脚を払われたのだと思ったのは、思い切り背中から地面に叩きつけられたときだ。
しかも、受け身ができないように、手足を捻りながら地面に落とされた。
一瞬、息が止まる。
「ほら、立て」
髪の毛を掴まれて立たされる。
「くっ……、ちっ」
かっとして、相手の身体を掴もうとすると、眼の前から凌空士の身体が消えた。
視界に空が映ったかと思うと、今度も足を払われて地面に叩きつけられた。
「んぐうっ」
また、受け身ができないように手と足を押さえて背中から地面に当たるように投げられた。
さすがに息がとまって、孫空女は、自分から起きあがることができない。
「どうした、力自慢の孫空女ではないのか?」
仰向けになっている孫空女の前に凌空士がしゃがんだ。
その手が孫空女の襟元に差し込まれて、孫空女の乳房をぐいと掴んだ。
「な、なにすんだい──」
身体を捻って腕を払う。
横に転がって、やっと凌空士を振り払って立つ。
掴まれた乳房の感触が残っている。
鳥肌が立つほど、気持ち悪い。
そして、眼の前の男の力量にも驚いていた。
しかし、ここまで歯が立たないというのは信じられない。
まるで子供でも相手にするかのように、余裕の表情で凌空士は笑っている。
「まだまだ、元気じゃないか、孫空女──。だったら、もうちょっと遊ぶか? 抵抗ができなくなったら、服を脱がせるぞ。だから、できるだけ頑張るんだぞ」
馬鹿にしたような物言いにかっとなった。
猛然と凌空士に突っ込む。そして、体当たりと見せかけて、寸前で身体を捻り、回し蹴りに切り替える。
しかし、その蹴りは宙を切る。気がつくと、頭が地面を向いている。
「あぐっ」
今度は地面ではない。凌空士の膝に背中を叩きつけられた。
全身が痺れるように弛緩し、孫空女は呻きながら地面に落ちた。
その孫空女の上衣のぼたんが上からひとつ、ふたつと外される。
「や、やだっ──」
その手を叩いて払う。
身体が持ちあげられた。
そして、再び、地面に叩きつけられた。
呻き声をあげて、地面にのたうつ孫空女の上衣に、また凌空士の手が伸びていきた。