「宝玉──」
宝玄仙は、全身を真っ赤に染めて震えはじめた宝玉を抱きしめた。
宝玉が身体の内側から発する官能の暴風で一気に欲情させられていることは明白だ。
あっという間に全身に脂汗をかいて淫らな匂いを股間から発し始めた宝玉の裸身を抱きながら、宝玄仙は十八公に視線を向けた。
「お前、なにしたんだい──? なんでもいいけど、すぐにやめるんだよ。承知しないよ」
宝玄仙は叫んだ。
「ほう、さっきまで、衆人の中で泣きながら、客たちの口の中から出した食べ物を食べようとしていた女と同じとは思えんな。あまり、生意気だともう一度、さっきの場面に戻すぞ」
「ふざけるんじゃないよ。お前の道術だとわかっていれば、いくらでも吹き飛ばせるんだよ」
「だったら、お前の膝に抱いているもうひとりのお前を助けてやればいいんじゃないか。大変なことになっているようだぞ」
十八公が言った。
「ひぎゃああぁぁ──」
その瞬間、宝玄仙の膝の上にいた宝玉の身体が跳びはねた。
そして、宝玄仙の膝の上から転げ落ちると、股間を両手で押さえてうずくまる。
しかし、うつ伏せで股間を押さえたまま、宝玉は狂ったような悲鳴をあげ続ける。
「宝玉──」
宝玄仙はうろたえて叫んだ。
「股間に電撃を打ちこんでいる。早く、道術で消してやれ、宝玄仙。さもなければ、だんだんと電撃を上げるぞ」
その間も宝玉は、なおも絶叫している。
宝玉は、いまだ闘勝仙と交わした魔法契約に拘束されていて、攻撃道術に対して一切の道術による抵抗ができない。
それはどんなに相手が霊気の低い存在であってもである。
つまり、本来であればほとんどの攻撃道術を撥ね返してしまう宝玄仙の道術封じの血が、宝玉からは消滅させられているのだ。
「ちっ」
宝玄仙は、宝玉に加えられている道術を弾き返すための道術を込めた。
「ひううっ」
しかし、突然、勝手に震えはじめた乳首の刺激によって、精神の集中を途切れさせてしまった。
「な、なに?」
道術の印が途切れた途端に、乳首の刺激もとまった。
宝玄仙は再び、まだ苦しがっている宝玉を助けるために道術を込めようとする。
「はひいっ」
またも同じだ。道術を込めようとすると得体の知れない強い刺激が加わって、宝玄仙の集中を邪魔する。
わかっていてやっているに違いない。
「わ、わかった──。とにかく、宝玉を苦しめるのをやめておくれ。お願いだよ」
宝玄仙は、床に手と頭をつけて叫んだ。
すると宝玉の狂ったような悲鳴がやっと止む。
宝玄仙が顔をあげると、全身に水を被ったような汗をかいてまだ悄然としている宝玉が、のろのろと身体を起こそうとしていた。
宝玄仙は慌てて、宝玉に駆け寄って助け起こした。
「お前たちの弱点など、俺にはお見通しなのだ。しかも、ここは、俺の意思ひとつですべてを支配できる俺の意識下だ。いかにお前たちが大きな霊気を持つ人間の女であろうとも、この俺にはなにひとつ抵抗はできん」
宝玄仙は舌打ちした。
しかし、それが正しいということは悟るしかない。
夢魔の夢の中では、夢魔には絶対に勝てない。夢魔は自分の作る意識下でしか存在しえない妖魔だ。
つまり、夢魔は自分自身が造った世界の中で生きている。
その中に囚われたということは、いわば、創世者──つまり、神に囚われたということだ。
この中にいる限り、神の力に勝てる道術がなければ勝てないだろう。
夢魔の支配から脱するのはふたつの方法しかない。
支配から脱するというのは、夢から覚める、つまり、目覚めるということだ。
こうやって、十八公に相対しているのは、宝玄仙の現実の身体ではなく、宝玄仙の意識だ。
現実の身体は、おそらく、まだ、あの森林の中で野宿をしている態勢で寝ているに違いない。
だから、現実に戻るひとつ目の方法は、夢魔自身の意思で獲物を手放すことだ。
そうすれば、夢から覚めて、現実の世界に戻ることはできる。
だが、この十八公が、せっかく手に入れた獲物を自分の意思で手放すとは思えない。
もうひとつの方法は、ある意味ではもっと簡単な方法だ。
現実側の世界で誰かが、肉体を起こすことだ。
そうすれば、意識は現実の肉体側に引き戻されて、夢魔から脱することができる。
しかし、あの
だからこそ、十八公は、こんな人里離れた場所で罠の網を張っているのだ。
これが普通の街中の宿屋などだったら、折角獲物を夢に捕らえても、誰かが肉体を起こしてしまい、逃げられる可能性が高い。
「の、望みはなに……?」
やっと落ち着きを取り戻した宝玉が、宝玄仙の腕から起きあがって言った。
「夢魔族が人間の女を襲う理由はただひとつだ。お前たちの身体に備わっている男の精を殺す作用を消せ。そして、俺の精を受けろ。望みはそれだけだ」
十八公は言った。
夢魔の望みが、人間の女に夢魔の精を送り、夢魔の子孫を宿させることにあるということは、宝玉も知っているはずだ。
あえて、質問をするというのは、宝玉も夢魔から脱する方法について懸命に思念を巡らせているということだろう。
こうなれば、時間はできるだけ稼ぐことだ。
それしかない。
宝玄仙が捕えられたということは、三人の供も囚われている可能性が高いが、もしかしたら、誰か眠っていなかった者がいて、朝になり起こしてくれるかもしれない。
随分と時間が経った感覚があるが、夢魔の世界において時間は無意味だ。
夢魔は、その気になれば、たった数刻の時間にすぎないのに、何十年もの歳月が経ったように思わせることもできる。
「精を殺す作用は、わたしたちの意思では消せないわ。それは備わったものであり、わたしたちの大きな霊気の代償のようなものよ。わたしたちは、子をつくることはできないの」
宝玉だ。
「嘘をつけ」
「本当だよ、十八公」
宝玄仙も言った。
すると十八公が見るからに失望した表情になった。
「……ならば、供たちについてはどうだ?」
「供?」
「連中についても、子宮が精を受けつけない作用があるな。それを無力化しろ」
十八公が手を振った。
すると、真っ白でなにもなかった空間に巨大な三枚の窓が出現した。
「沙那、孫空女──」
「あっ」
宝玉と宝玄仙の口から同時に声が出た。三枚の窓には、三個の情景が映っている。
右端は、孫空女がいて三人の男によってかたって犯されている光景だった。
そこに映っている孫空女は、全裸で泥まみれであり、男たちから懸命に逃げようとしていた。
だが、もう、腰が抜けているのか、ほとんど這っているような状態だ。
孫空女が手で土を掴んで男たちに投げつけた。
三人の裸身の男は笑いながら追いつき、孫空女を仰向けにひっくり返した。
両側からふたりが押さえつけて孫空女の股を抱えあげて開かせる。
いったいどのくらいの精を受けたのか、孫空女の女陰は孫空女自身と男たちの淫液と精液で凄いことになっていた。
その女陰にもうひとりの男が怒張を挿し、律動をはじめる。
孫空女が首を振って、口を開けている。
こちらには声は聞こえないが孫空女の悲鳴が聞こえるようだった。
真ん中の窓には、沙那がいた。
どこかの城郭の路地のような場所のようだ。
沙那は下半身を丸出しにして、首輪と手錠で拘束された身体を犯されていた。
しかし、なんと犯しているのは、十歳くらいの男の子三人だ。
だが、それが子供ではない証拠に、いま沙那を犯している子供の男根は、まったく大人のものだった。
また、沙那は、なにか薬のようなものを使われているのか、常軌の逸した淫情の表情で、涎を垂らしながら淫行に耽っている。
左端の窓には、十歳くらいの女の子が映っている。その子はかなり衰弱しているようであり、どこかの山の中を彷徨い歩いているように見える。見たことのない子供だが……。
「あれが朱姫?」
宝玉が呟いた。
「そうなのかねえ……?」
十八公が見知らぬ子供の姿を見せるとは思えないから、あの十歳くらいの女の子は朱姫なのだろう。
それにしても、なぜ、子供の姿なのだろうか……?
それで、ふと、あることが頭に浮かんだ。
夢魔が虜にできるのは人間だけだ。
夢魔は人間しか自分の意識下に取り込めない。
なるほど、だから半分なのだ……。
「ならば、お前たちの代わりに、この女たちの子宮を解放しろ。精を受けつけるようにしろ」
十八公が言った。
「あいつらも、わたしらも同じだよ。勝手に霊気が副作用的に、精を殺す効果を発揮させているだけで、わたしの意思では解けないよ」
宝玄仙は叫んだ。
「そんなはずはない」
「老いない身体の代償なんだ。わたしの道術紋は、男の精を殺すんだよ。あいつらの身体に、うっすらだけど、道術紋が刻んであるのは見たんだろう? 道術紋が勝手に霊気を作ってその効果を作り出しているのさ。道術紋を消す方法なんてないよ。そのくらい知っているんだろう?」
すると、十八公が先程以上にがっかりした表情になる。
「なにか、方法があるだろう。供を解放すれば、お前たち自身はもういい。子の苗床として、あいつらを提供しろ」
「無理だと言っているだろう、十八公」
宝玄仙は叫んだ。
「……できるだけ時間を稼ぎましょう。なにか、打開の機会があるはずよ」
宝玉が耳元でささやいた。
宝玄仙は、十八公に悟られないよう頷く。
しかし、どんな方法があるというのだろうか。
道術が封じられて、三人の供の意識も捕えられているということはわかった。
外の身体がなにかの偶然によって眼が覚めるということも難しい。
現実の身体は、宝玄仙の刻んだ強力な結界の中だ。
たとえ、雷が落ちても、結界の中については影響がない。
どんな侵入者も獣も結界の中には入れない。
「やっぱり、男の精を殺す作用を消せないなど、嘘を言っているに違いない。拷問にかけるぞ。痛い目に遭いたくなければそれを消せ」
「しつこいねえ。できないと言っているだろう、十八公」
宝玄仙は怒鳴った。
嘘ではないのだ。
宝玄仙の身体にある女を護る血は、宝玄仙の霊気に備わる道術封じの能力の副作用だ。
どういう仕組みになっているかなど、宝玄仙にも説明できないし、生まれつきそうなっているとしか言いようがない。
男の精は、精として受け付けないし、それは意図的に打ち消せない。
道術封じが弱められることはあるから、気力が萎えたときに、女の身体を護るその効果も減じることが考えられるが、多分、というだけでわからない。
闘勝仙の奴隷時代の二年間も結局、その作用がなくなることはなかった。
しかし、宝玄仙は、たったひとつだけ、宝玄仙が精を受けつける方法があると思っていた。
現実ではあり得ないのだが、ここには、宝玉と宝玄仙のふたりが存在している。
だから、可能なのだ……。
同じ身体のふたり……。
つまり、もしも、どちらかが道術で生やした男根で精を放てば、おそらく、宝玄仙の血の霊気は、それを拒否することはない。
宝玄仙が宝玉に精を放てば、それは他人ではなく、自分自身のものだからだ。
宝玄仙が道術で生やした男根から放つ精を本当の男の精そのものにすることは簡単だ。
だが、それを教えてやる気はもちろんまったくない──。
『なるほど、その方法があったか』
不意に、宝玄仙の心にその声が響いた。
『身体を借りるぞ──宝玄仙。お前の身体を通じて、お前自身の精に俺の精を混ぜて送り込む。それで宝玉に子を宿せるな。教えてくれて感謝する』
宝玄仙は愕然とした。
しまった……。
十八公は、さっきから宝玄仙と宝玉の心を読んでいたに違いない。
それで、いまの宝玄仙の考えを知られてしまったのだ。
そして、夢を操るという能力を使って、宝玄仙の心に入り込んだ。
身体を乗っ取られてしまった。
宝玄仙は、慌てて宝玉に警告を発しようとした。
しかし、宝玄仙の心は、憑依してきた十八公の意思に押しのけられて、心の隅に追いやられている。
いまや、この宝玄仙の意識の中でも、宝玄仙の身体を支配しているのは十八公だ。
「ならば、ふたりで愛し合え。宝玄仙が男根を生やして男になれ。宝玉は、それを受け入れろ。果てしなく、自分自身で性交を続けるのだ。休むことは許さん。これは拷問だと思え。自分自身に犯されるという恥辱を味わえば、心が折れるだろう」
十八公の身体が喋った。
だが、本当の十八公の意思は、宝玄仙の中に入り込んでいるから、あれは十八公の影だろう。
十八公の狙いが、もはや心を折らせることにないことは明らかだ。
宝玉に宝玄仙の身体から発する精を受けさせて、子を宿させるつもりだ。
恥辱だの、拷問といったのは、それを宝玉に悟られないためのごまかしだ。
さすがに、影を作ることくらいはできても、宝玄仙に憑依しながら、宝玉にまで憑依することはできないに違いない。
しかし、どうやって宝玉に危機を教えればいいのか……。
「断ったら?」
宝玉が言った。
宝玉の表情には余裕がある。
まさか、十八公が宝玄仙の身体に憑依しているとは思っていないだろう。
宝玄仙自身も、十八公がそんなことができるとは思ってもいなかった。
夢を通じて、心が読めるという能力を侮っていた……。
いまは、まったく自分の身体から意識を離されてしまっている。
宝玉は、十八公の身体に視線を向けている。
だが、あれは影だ。
本物は宝玄仙の中だ。
それを知らせたい。
だが、その手段がない。
宝玄仙の心に絶望が拡がる……。
「断ってもいい。無理矢理やらせるだけだ」
向き合っている側の十八公が言った。
「わかったわ。受け入れる──。そんなことで心が折れるかどうか、やってみればいいのよ……。宝玄仙、やりましょうよ」
宝玉がそう言って、口に笑みを浮かべる。
宝玉の口元には、ほんの少しの期待のようなものが籠っている。
常識では、宝玄仙と愛し合うなんて不可能だ。
しかし、いま、それがこの意識体において可能になった。
宝玉の顔には、悦びのようなものが浮かんでいる。
しかし、それどころじゃない……。
宝玉──。
宝玄仙は懸命に叫ぼうとした。
しかし、出て来たのは別の言葉だ。
「考えてみれば、お前とわたしは、一度も愛し合ったことなどないねえ。わたし自身が、どんな味がするのか、興味があるよ」
自分自身の口で勝手に十八公が喋った。
そして、十八公は宝玄仙の身体の中の霊気を操って、股間に男根を発生させた。
「わたしもよ、宝玄仙……」
宝玉が口づけを迫ってきた。
十八公に命令されたからというわけではなく、宝玉は、もうやる気十分なのだ。
宝玄仙は焦っていた。
このままでは、十八公は宝玄仙の身体を使って、自分の精を宝玉に送り込む。
そして、現実の世界で寝ている宝玄仙の身体は、夢魔の子を子宮に宿してしまう……。
宝玄仙の口が宝玉の口づけを受け入れた。
宝玉の舌が口の中に入ってくる。
宝玄仙の舌も宝玉の舌に絡み合いながら、宝玉の口から唾液をすする。宝玉が宝玄仙の唾液を吸い返す。
宝玄仙は、十八公に操られていながらも、次第に倒錯的な興奮を味わい始めている自分に気がついていた。
宝玉の口はとても柔らかくて、気持ちがいい。
これが、他人が味わう自分の口づけなのだと思った。
宝玉の舌の求めに応じて、宝玄仙の舌は宝玉の舌に絡んでいく。
やっているのは十八公だが、感じるのは宝玄仙だ。
「ああん」
宝玉の顔が口から唾液を垂らしながら仰け反った。
宝玄仙の手が宝玉の乳房に伸びたのだ。
そして、その宝玉の手が宝玄仙の乳首に触れた。雷に打たれたような官能の衝撃が宝玄仙の全身を貫いた。
たった一度触れただけで、もう、宝玄仙の股間の女の部分については、すっかりと男根を受け入れる態勢ができた。
ということは、宝玉も同じ状況だろう。
そうなったら、十八公はゆっくりと愛撫に時間をかけるということなどしないはずだ。
さっさと宝玉の女陰に、宝玄仙の股間にそそり勃っているものを突っ込んで精を放つだろう。
宝玄仙は、もうほとんど時間がないことを悟るしかなかった。
宝玄仙は、宝玉を見ることもできるし、肌を通じて宝玉を感じることもできる。
しかし、意思だけは身体と引き離されている。
宝玄仙の怒張が宝玉に精を注ぐために凛々として、精の一部を滲み出させている。
宝玄仙の身体もまた、宝玉の口づけとほんのちょっとの乳首への愛撫でできあがっている。
もう時間がない。
宝玄仙は焦った。
なんとか、阻止しなければ……。
「もういいよね、宝玉。わたしを受け入れてよ」
宝玄仙の口が言った。
「早いのね……。いいわ」
宝玉がうっとりとした表情で、床に寝そべった。
立て膝をして股を開く。
「いくよ、宝玉」
宝玄仙の怒張がずぶずぶと宝玉の中に埋まっていく。
「あっ、あふう……」
怒張が深く進んでいくと、宝玉は全身を真っ赤にして悶えだした。
我ながらうっとりとしてしまうような美しい痴態だった。
白い肌が真っ赤になり小刻みに震えだす。
宝玄仙にもたまらない甘美感が襲いかかっている。
「ひいっ──。い、いいわあ」
宝玉が身体を仰け反らせた。
宝玄仙の怒張が宝玉の子宮の入り口を突いたのだ。
宝玉が悲鳴のような嬌声をあげて、宝玄仙にしがみついた。
宝玄仙の腰が前後に動きはじめる。
宝玉の膣が宝玄仙の男根を絞りはじめる。
根元から先まで搾り取るように宝玉の肉襞が収縮をする。
まるで吸い込まれるようだ。
宝玄仙は自分で自分の膣を体感するという異常な経験に陶酔しそうだ。
それにしても、自分の膣の味わいの気持ちよさに驚いた。
あっという間に精が込みあがる。
宝玄仙は懸命にそれを耐えようとした。
しかし、それは、意思だけだ。
いま、意思は宝玄仙の身体から切り離されている。
もう、数回の律動で宝玄仙は、自分の身体が宝玉の中で精を発するのはわかった。
数回で……。
そして──。