「服を脱ぐわ」
部屋に入ると、すぐに宝玉は服を脱ぐために、着ているものに手をかけた。
「待ってください」
遅れて部屋に入ってきた朱姫が、宝玉の名を呼んだ。
宝玉が振り返ると、朱姫の指がとんと宝玉の額を突いた。
「ひゃっ」
宝玉は小さな悲鳴をあげた。
朱姫の指が宝玉に触れた瞬間に、身体の筋肉が弛緩して、宝玉の両手は身体の両脇に落ちて動かなくなったのだ。
「これで宝玉様は、あたしの人形です。あたしの許可なく、なにも感じないし、いけませんよ」
朱姫が笑って言った。
すごい……。
宝玉は驚いてしまった。
朱姫の道術の見事さにである。
おそらく『縛心術』の応用であろうが、宝玉は、これほど簡単に朱姫の道術に陥ってしまったことに感嘆した。
宝玄仙も、最近の朱姫の道術遣いとしての成長には驚愕していたが、改めて接すると宝玉も同じ思いだ。
ついこの間までは、朱姫の遣える道術はそんなに多くなかったはずだ。
『縛心術』──。
『使徒の術』──。
『移動術』──。
そして、『獣人』だ。
いまは、『影手』という攻撃道術や宝玄仙が教えた霊具の施術もほぼ完全に修得しているようであるし、新たな道術もどんどん増えているようだ。
もっとも、『獣人』の道術は、一瞬とはいえ、宝玄仙以上の霊気を朱姫の中に膨らませることで可能である道術でもある。
それを考えると、道術遣いとしての潜在能力は、元々高かったのだろう。
「本当に、あなたの道術も上達したわね。いまや、あなたは一級道術遣いといえるわね」
宝玉は言った。
突然、乳首に激痛が走った。
「ひぎいっ」
思わず胸を抱きかけたが、腕はまったく動かない。
朱姫の道術だと悟って胸元を覗いたら、開襟しかけた胸に黒い物が映っている。
朱姫の『影手』だ。
いつの間にか身体に朱姫の『影手』が張りついている。
それが宝玉の乳首を捩じったのだ。
それにしても、自分の身体に道術が加わったことにまったく気がつかなかった。
「違いますよ、宝玉様。今夜は、朱姫は宝玉様のご主人様です。そういう約束ですよ」
背中側で朱姫が寝台に腰を降ろしたのがわかった。
不意に宝玉の身体が勝手に動いて、座っている朱姫の前に移動した。
朱姫は、微笑みながらこっちを満足気に眺めている。
「お、驚いたわ……。どうやって、わたしの身体を動かしたの?」
宝玉は言った。
いま、自分の身体はまったく宝玉の意思とは切り離されて、朱姫によって動かされた。
『縛心術』とは違う気がする。
いまのはなんの道術なのか……。
「ひぐうっ」
また、激痛──。
「……ご、ご主人様」
宝玉は慌てて付け足した。
今夜は、宝玉が朱姫の嗜虐を受けると約束をした日なのだ。
あの十八公の夢魔から逃れるにあたって朱姫の半妖としての性質が役に立った。
それで一行の全員が朱姫の嗜虐を一日ずつ受け入れると約束をしたのだ。
初日が沙那、二日目が孫空女、そして、今日の三日目が宝玉だ。
明日が宝玄仙の順番で一応は、それで終わるはずだ。
ただ、沙那と孫空女は、さらに一日の延長に応じた気配がある。
すると全部で六日ということになるのだろうか。
それにしても、宝玉はともかく、宝玄仙まで朱姫の申し出に合意したのは、宝玉も驚いた。
しかし、理解もできる。
宝玄仙も宝玉ももともとは同じ身体だからわかるのだが、宝玄仙は嗜虐癖の持ち主だが、反面、自分の力を圧倒する存在に屈服することから快感を導くという被虐癖も持っている。
それは闘勝仙のように卑劣な罠に陥るというかたちではなく、正面からの実力で、圧倒されるというかたちでだ。
しかし、宝玄仙を罠にかけて無力化する者はいても、道術遣いとしての純粋な道術で、宝玄仙を圧倒する者はいない。
だから、宝玄仙は極端な嗜虐で性癖を発散させる。
だが、もしも自分を屈服させる道術遣いがいれば、宝玄仙はその相手から受ける被虐に心も身体も震わせることを愉しむかもしれない。
朱姫の道術遣いとしての実力が、現時点で宝玄仙を上回るとは思えないが、もしかしたら、いずれはそうなるのではないかという潜在能力は朱姫から感じることができる。
宝玄仙もそれを想像して愉しんでいるのではないか……。
朱姫がくすくすと笑った。
「宝玉様がそれを訊ねるなんておかしいですよ。いまのは、ご主人様に教えてもらった『分身』の道術の応用です。宝玉様の身体をあたしの分身にして操っているんです」
「へえ……」
宝玉は感心した。
見事な道術だと思ったからだ。
『分身』の道術は、宝玉は遣ったことがない。
『分身術』とは生物であれ、地物であれ、霊気の備わるものを道術遣いの意のままに自由に動かすという技だ。
宝玉の記憶では、これはもともと、宝玄仙の術ではない。
「お蘭の里」と宝玄仙が呼んだ東方帝国の隠し村で、異父妹の蘭玉と関わったとき、その蘭玉の道術を一時的に宝玄仙が奪ったときに覚えた道術だ。
宝玉自身は遣ったことがなかったので、それが自分に遣われてもどういう道術かわからなかったのだ。
それにしても、さっきから朱姫の道術を感じることができないのはなぜだろう。
闘勝仙たちに調教された影響をいまだに残している宝玉は、宝玄仙とは異なり、攻撃道術が遣えず、また、他人の道術を防ぐ術を持っていない。
しかし、それは、道術遣いとしての霊気が低いのではなく、道術契約が有効になっているために宝玉の身体が、他人の道術に対して解放状態にしてしまうためである。
だから、超一級の道術遣いとして、宝玉も本来は他人の霊気の動きを瞬時に察知できるはずだ。
しかし、さっきから朱姫の道術に対しては、いつ道術をかけられているのかわからないほどの完全な無防備状態になっている。
「宝玉様が、あたしの道術に対応できないのが不思議なんですか?」
宝玄仙の戸惑いの表情を察知したのか、朱姫がそう言った。
「そ、そうね、しゅ……じゃない、ご主人様」
朱姫と言いかけたとき、乳首に強い圧迫感を感じた。
一瞬にして恐怖が走り、慌てて言い直した。
そして、朱姫の道術に本能的な怖さを感じてしまった自分自身についても宝玉は驚いてしまった。
「それは簡単ですよ。宝玉様は、『縛心術』にかかっているんです。最初に言ったじゃないですか、あたしの許可なく、なにも感じないって……。だから、宝玉様は、道術を感じることができなくなったんです。ほら、道術が入ってもわからないですよね? じゃあ、いっぱい感じてください」
すると身体がなにかに包まれたような気がした。
それが、『影手』だと悟ったのは、身体全体から誰かの手で触られているような感触が沸き起こってからだ。
愛撫という感じではないが、手のひらであちこちの肌をさすったり、指で軽く揉んだりするのだ。
それが宝玉の服の下をするすると動いて、羽毛のような柔らかさで身体全体をさすりまわる。
『縛心術』で霊気を感じることもとめられているという説明にはびっくりした。
朱姫はそんなこともできるようになったのかと感嘆した。
「あ……あっ……」
それにしても上手な愛撫だ。
いや、まだ愛撫の一歩手前という感じで、性感帯を避けて身体全体で『影手』が動きまわっている。
だが、すでに宝玉は翻弄されていた。
だんだんと身体全体から熱くなり、快感が疼きだす。
「もう、感じているんですか、宝玉様? でも、許可なくいけませんよ。ちゃんといく前には、そう教えるんですよ。ご主人様が、あたしたちにそう躾けているみたいに……」
朱姫がささやくように言った。
「わ、わかったわ……朱姫ご主人様……」
宝玉は甘い吐息とともに、朱姫をご主人様と呼んだ。
“ご主人様”……。
改めてそんな言葉を使うと、なんだか身体がじんと疼くような気がする。
他人をそう呼んだのはいつ以来だろうか……。
闘勝仙たちでさえ、そんな風には呼んではいなかったし……。
「じゃあ、少し、胸を強く揉みますよ、宝玉様」
「だ、駄目よ、そこは──」
宝玉は思わず叫んだ。
宝玉と宝玄仙が交替で受けた祭賽国の国都における千代婆からの仕打ちで、この身体の乳首は、怖ろしいほどに敏感にされてしまったのだ。
宝玄仙と宝玉の『治療術』を駆使してなんとか日常生活には支障のない程度にまで回復はしているが、愛撫という刺激を受けてしまうと、そこが乳首だと思えないほどの快感を覚えてしまう。
おそらく、いまの宝玉と宝玄仙の乳首は、肉芽の数十倍は感じるのではないだろうか。
「ああ……あひいっ──」
両方の乳首が指で挟まれる感触がやってきて、それがくるくると輪を描くように根元をつまみあげられた。
全身は弛緩していまだに動けないが、その身体がびくびくと震える。
激しい快感が宝玉に襲いかかってきた。
「下袍をたくしあげてください」
朱姫の声で宝玄仙の両手が勝手動いて、下袍を捲りあげる。
宝玉の下袍は臍のところまでまくりあがった。
乳首がいたぶられる。小刻みな振動かと思ったら、大胆に強い刺激になり、そうかと思えばまた、触れるか触れないかというような静かな愛撫に変化する。
官能の波はどんどん大きくなる。
寝台に腰掛けたままの朱姫の両手が、宝玉の下着の前に伸びて、すっと左右に分かれた。するとそれを追いかけるように、宝玉の両腿が開く。
「ちょ、ちょっと駄目よ……、あ、ああっ……は、話を……くうっ……いってしまわ──いくわっ……駄目ぇ──」
自分の喘ぎ声でうまく話せない。
気持ちがいい……。
でも、このままでは──。
「いっていいですよ、宝玉様」
「あうっ……あ、ああっ……わ、わたし……あん……ああっ……出る……出るのよ──ああっ──ひぎいいいい、いぐうううっ──」
いきなり速度をあげて強くこねまわされた乳首に、宝玉の身体は耐えられなかった。
身体全体が大きく震えて、官能の矢が突き抜けた。びっくりするほどに総身が揺れるとともに、宝玉は気をやった。
同時に股間から尿のようなものが吹き出て、下着をびっしょりと濡らした。
開かされた股間の下の部分の床に、宝玉が吹き出した液体がぽたぽたぽたと滴り落ちる。
「あら、行儀が悪いですね、宝玉様──。駄目じゃないですか」
朱姫がわざと呆れたような声を出す。
「ち、違うわ、これは──」
「わかっていますよ、宝玉様。おしっこを洩らしたんじゃなくて、潮を噴いたんですよね」
朱姫がくすくすと笑った。
宝玉は自分の顔が赤らむのがわかった。
乳首でいくと激しく絶頂するだけじゃなく、潮を噴くという癖をつけられてしまったのだ。
「でも、床を汚した罰は罰です。じゃあ、宝玉様、その恰好のまま、お股を擦って自慰をしてください」
朱姫が言った。
すると宝玉の右手が、びしょびしょの下着に伸びる。
そして、いやらしく肉芽を布の上から摘まんだり、擦ったりする。
「くううっ……あ、ああっ……こ、こんなの酷いわ……こんな汚れた下着で……ああ、あひっ……」
朱姫は意地悪く、宝玉が潮で濡らした下着を脱がすことなく、身体を操って自慰をさせはじめた。
濡れた布地が、ぴちゃちゃと音をたてる。
おびただしい女の樹液で汚れた下着をそのまま股間に擦り付けながら自慰をするのは、もの凄く惨めな気持ちにさせる。
その汚辱感が、宝玉の心の中に激しい悔しさと情けなさを作って、それが酔いのようなものに変わっていく。
自分が浅ましく快感で呆ける姿が脳裏に浮かび、宝玉を狂おしい気分にさせる。
「恥ずかしいこと、いやらしいことが宝玉様は好きなんですよね。気持ちのいいものをいっぱい身体に溜めてください、宝玉様」
朱姫が込みあがった笑いを耐えるように、のどでくすくすと笑う。その笑いがなにか嘲笑を受けているような錯覚を産み、宝玉は喜悦の声をいっそうはっきりと漏らし出す。
あがってくる……。
熱いものが股間から身体全体に拡がる。
疼きが疼きでなくなり、燃えるような炎に変化していく。
自慰でいくというのも恥辱だ──。
その屈辱感が、なにがなんだかわからない気持ちになり、自虐的な快感にどっぷりと浸る気がした。
「もう、いく……いくわ、ご主人様」
宝玉は叫んだ。
身体全体に狂ったような快感が迸った。
絶頂がくる──。
自分の手でやっているのだが、それは操りによるものだ。
まるで他人に責められているようでもある。
それでいて、どこを触れば気持ちいいのかという知識もしっかりと持って、指は宝玉の肉芽を責めたてる。
痛烈な快美感が背骨まで貫く。
宝玉は身体を仰け反らせて、悲鳴のような嬌声をあげた。
いくっ──。
強烈な絶頂感が宝玉を襲った。
なに?
次の瞬間、信じられないことが宝玉の身体の中に起こった。
いま、まさに絶頂しようとしていた快感が、いきなりすっと消滅したのだ。
突然、空の上まで飛翔したところなのに、一瞬にして地上に立っていたという気分だ。
それでいて、身体はこれ以上ないというくらいに燃えている。
一体全体なにが起きたのか……?
見ると朱姫が笑っている。
「こ、これは?」
宝玉は呆然として言った。
「……だって、あたし最初に言ったじゃないですか。あたしの許可なくいけないって」
宝玉は愕然とした。
いまのは『縛心術』によるものだったのだ。
そう言えば、最初のときに、朱姫はそう言っていた。
朱姫の許可なく感じることはできないし、いけないと……。
自慰をしていた宝玉の手は、いまはとまっている。
だんだんと熱い身体が平静を取り戻していくのを感じながら、宝玉は取りあげられた絶頂に、なにを言えばいいのかわからなかった。
絶頂寸前で静止した快感は、完全になくなるまでにはいかなかった。
それどころか、却って苦しいような中途半端なもどかしさのところで、ふつふつと湧くような官能が宝玉の身体に取り残されている。
「そ、そんな……じゃあ、許可してよ、朱姫──い、いえ、ご主人様」
宝玉は抗議した。快感を取り上げるなど、とんでもない仕打ちだ。宝玉が怒りのようなものが込みあがった。
「そろそろ、服を脱ぎましょうか、宝玉様──。裸になったら寝台にあがってください。手足を自由にします」
朱姫は、宝玉の抗議を無視してそう言った。
身体を覆っていたなにかの縛りのようなものが消滅した。
宝玉は怒りに似たものを感じながらも服を脱ぎだした。
その間、寝台を降りた朱姫は、まずは宝玉が汚した床を部屋の隅にあった汚れ布で拭いたり、窓のところにあった容器に水を注いで手を洗ったりしていた。
宝玉は全裸になって寝台にあがって座った。
「音を鳴らします。これが合図です。この音で宝玉様は人形ですよ」
朱姫が指をぱちんと鳴らした。
「あっ」
すると急に力が抜けた。
宝玉の身体は、寝台の上に崩れ落ちる。
朱姫もまた服を脱ぎ始めた。
近くにあった椅子の背に脱いだものを掛けはじめる。
朱姫の成熟し損なった裸身が現れる。
それは、少女のようでもあり、性を知りきった女のようでもある。
それが不思議な妖艶さとなって朱姫の魅力になっている。
しかし、朱姫の身体に植え付けられた獣化の寄生虫を無効にするためとはいえ、全身に刻んだ宝玄仙の道術紋の影響により成長をすることができなくなった朱姫は気の毒だといつも思う。
あのとき、白骨に捕らえられて寄生虫を植えられなければ、朱姫は、今頃、沙那や孫空女と同じように完全に成熟した若々しい大人の女性の身体を手に入れられただろう。
宝玉と宝玄仙の道術ではもうどうしようもない。
朱姫の霊気がさらにあがり、天教の八仙たちがやっていたように、見た目の姿を変えることができるようになれば、それも解決するのかもしれない。
朱姫が寝台にあがってきた。
股間に男根の張形が付いている革帯を締めている。
宝玉をこれで責めたてるつもりだと思った。
朱姫が宝玉の身体を寝台に真っ直ぐに仰向けに横たえた。
両手は体側に添った状態であり、両脚は軽く開いている。まるで他人の身体のように動かない。
「じゃあ、始めますよ、宝玉様──。とても、長い夜になると思いますよ」
朱姫が不気味なことを言った。
宝玉の唇に朱姫の唇が重なった。
宝玉はためらうことなく、朱姫の舌を受け入れた。
朱姫の舌が宝玉の口中を愛撫する。
宝玉は貪るように朱姫の舌を吸った。
朱姫がどろりとした唾液の塊りを入れてくる。宝玉はそれを喉の奥に流し込む。
口を離す。
ぼうっとするほどの快感が宝玉を襲う。
身体が弛緩して動かせないということも、宝玉の快感を増幅している気がする。
なにをどうされても抵抗できない──。
そうやって与えられる快感は、宝玉を恐ろしいほどの恍惚感に浸らせる。
「あひっ」
朱姫が股間に付けている張形が当たって、宝玉の股間を弾いたのだ。身体が熱くなる。
それから、朱姫の技が宝玉に襲いかかった。
舌技と手管では、あの百戦錬磨の宝玄仙さえもたじたじとなった朱姫の性技だ。
同じ身体でありながら、性の攻撃に弱い宝玉が朱姫の責めに太刀打ちはできない。
あっという間に全身の火を燃えたたせられて、狂態をさせられた。
「ああああっ」
部屋につんざくような悲鳴をあげた。
両脚が持ちあげられて、いきなり肛門に朱姫の張形が突き挿さったのだ。
「いぐううっ──」
宝玉は喉をつきあげて全身を震わせた。
絶頂に向かう快感を覚えながら、宝玉はなぜか朱姫の笑みが残酷さを保ったままのようであるのが気になった。
次の瞬間、今度は絶望の悲鳴をあげた。
またもや、宝玉は絶頂寸前から、快感が消滅する感じを味わったのだ。
再び取り上げられた絶頂に宝玉は悔しさに歯噛みした。
「ひ、ひどいわよ、朱姫──。暗示を外してよ」
宝玉は声をあげた。
「あらっ、あたしは、ご主人様じゃないんですか、宝玉様?」
宝玉を見下ろしている朱姫がくすくすと笑った。
「そ、そんなこといいわよ。これ以上すると酷いわよ、朱姫」
「皆さん同じですね。沙那姉さんも孫姉さんも同じように文句を言いましたけど、最後にはなんにも言いませんでしたよ」
朱姫がまた宝玉の身体を責め始める。
「あ、ああ……暗示……外して……ああっ……」
朱姫が肛門に挿したままだった張形を動かし出す。
そして、舌を指も使って宝玉の裸身を責めたてる。発作のような快感が襲う。
やがて、炎のような快感が宝玉を襲う。
しかし、この時には、もう朱姫の陰湿な覚めの趣向がわかってきた。宝玉から絶頂を取り上げた状態で、この身体を責めたてようとしているのだ。
そして絶頂──。
だが、またしても快感が寸前で消滅する。
それから宝玉は、頂上まで登りあげては一気に滑り落とされるということを繰り返された。
大声で悲鳴をあげては、発作のようなおこりとともに絶頂寸前の快感にあげられ、そして、下げられる。
しかし、あがりきった快楽は、ある一定ところから下にはさがらない。
そのまま中途半端な疼きとなって残される。
絶頂への渇望が宝玉を襲う。
快感の頂点寸前から奈落に解き落とされるということを何度繰り返しただろうか。
宝玉は息も絶え絶えの状態になった。
「どうしました、宝玉様、まだまだ、続きますよ」
朱姫がささやいた。
いま、張形は肛門ではなく、女陰を襲っている。
そのときには、宝玉は朱姫の責めに耐えられずに、泣きながら悲鳴をあげていた。
「ほらね、宝玉様、沙那姉さんも、孫姉さんもそうだったんですよ。最初は怒っていたけど、最後には泣きじゃくって許しを乞いたんですから……。じゃあ、溜まっていた分をお返ししますね」
朱姫が言った。
その朱姫が指を鳴らす。
宝玉の身体にとてつもないものが襲いかかった。
それが、これまでに取り上げられていた十数回分の絶頂だと気がついたのは、最初の快感の爆発が弾いてからだ。
そして、抗しきるのは不可能な快楽の津波が宝玉に次々に覆いかぶさった。
宝玉は自分の身体が、ばらばらになるのを感じた。
「宝玉様」
朱姫の声で目が覚めた。
どうやら、限界を超えた快感で気を失ったようだ。
「宝玉様、どうでした?」
「す、凄かったわ……、朱姫」
それだけを言った。
快楽を極め尽くした残り火で息も絶え絶えだった。
この世にこんなに凄いものがあるなんて信じられなかった。
「十数回分を一度にだなんて酷いわね」
宝玉は恨みっぽく朱姫に言った。
そして、身体を起こそうとした。
しかし、まだ、身体が弛緩して動かないということに気がついた。
「ねえ、朱姫、まだ身体が動かないわ」
「当然ですよ。まだまだじゃないですか」
「えっ?」
朱姫の手が宝玉の股間に伸びる。
「今度は二十回分くらいをまとめて味わいましょうよ」
朱姫がくすくすと笑った。
耳障りさえするような疲労の極地にある宝玉は、心からの悲鳴をあげた。