255 男のような女
男に生まれればよかったと思ったことは、一度や二度ではない。
父親の李龍は常に屋敷に大勢の子分を抱えて世話をしているような男で、なかなかに羽振りが良かった。
正妻はおらず妾が三人ほどいたが、子種には恵まれなかったらしい。
李龍が五十のときに妾が子を産んだ。それが李春である。
残念ながら李龍が望んだ男の子ではなかったが、李龍はそれでも喜んだ。
見た目麗しく、また賢く成長する李春に対して、李龍は望むもののすべてを与えてくれたと思う。
子供時代について、李春はおよそ苦労というものを知らずに過ごした。
遠方から高名な家庭教師をあてがってくれたし、李春が女の子ながら武芸をやりたがると、腕のいい武芸者をいくらでも連れてきてくれた。
玩具が欲しいと言えばくれたし、書物が好きだということになれば、自分が読むわけでもない書物をどこからか手に入れて李春に与えてくれたりした。
お陰で李春は、才に溢れ、武芸に秀いでた女の子に育っていった。
しかし、男ではなかった。
李龍は幼い頃に、李龍が李春を抱きながらいつもそれを惜しむように口にしていたのをなんとなく覚えている。
李龍は、明らかに他人の子よりも、賢く、強く育っていく李春を見て、この子は、度胸もあるし、人を魅了する天賦の才を持っており、必ずひとかどの人物になると宣言して、本気で李春を男として育て始めた。
李春が七歳のときだ。
だが、残念ながら男となるには、李春は美人であり過ぎた。
十五、六になると、ますます女として見た目が輝きはじめる李春に、もはや李龍は李春を男であると他人に称することを諦めた。
女であれば、男の子分はついてこない。一家の跡目は継げないのだ。
李龍自身は、それでも李春を自分の後継者にと考えたようだが、主立つ子分が反対した。
結局、李一家の縄張りは、
李春が「男」として、李家を継ぐということはなくなった。
だが、すでに、李春は「男」として生活した十年の月日がある。
いまさら女には戻れない。
十人いれば、十人とも、李春の美貌に嘆息して、李春を賞賛する。
しかし、李春は、女としての美しさなど望んでいなかった。
それよりも、男として生まれたかった。
李春が男であったら、父親はどんなに満足しただろうか。
李春が二十歳のときに、父の李龍は死んだ。
もしも、お前が男だったら……。
李春の手を握って死んだ李龍の最期の言葉がそれだった。
もしも、自分が男だったら……。
その言葉は、李春の心に刻み込まれた。
それから、八年──。
李家は、あの費保が、名を李保と改めて一家を継いでいる。
李龍が押さえていた掲陽鎮の一帯の縄張りは、李龍の死後、やや勢力を失い、新興の
だが、もはや、そんな侠客同士の勢力争いについては、李春には縁はない。
いま、李春は一家とは離れて、海で商売をする漁民の頭領のような仕事をしていた。
掲陽鎮は海に接する城郭だ。
多くの漁民が掲陽鎮の海辺で生活をしている。その漁場の仕切りや漁民の面倒を看るのが頭領の役割だ。
時には市に出すものを統制することもあるし、不漁のときには生活のための金を貸すこともある。
船が壊れたときの修繕費や稼ぎ手が海で死んだときの家族の面倒──。
そういうもの全ての世話をするのが頭領の仕事だ。
荒くれ男が多い漁師を束ねるのは簡単なことではないが、それでも李春はうまくやっていた。
暴れ者を叩きのめすだけの武芸はあるし、女とは思わせないだけの貫録を示すこともできる。
そして、なによりも李春のいまの地位を支えているのは、李春の頭領としての実績だ。
李春が頭領の仕事をするようになって、市場に出す収穫の量や種類を李春に漁師全員が従うことで、漁師全体の儲けは信じられないくらいに増えた。
彼らの生活も安定したものになり楽になっている。
李春の仕切りにより、漁民たちのいざこざは一切なくなったし、ばらばらだった掲陽鎮の漁民は、いまや、李春を中心としたひとつの組織となり、大きな影響力を城郭政府に持つに至っている。
そこまでに、わずか五年である。
漁師たちの誰もが、李春の実力と頭領としての才覚を認めていた。
李春は、李家という親の跡目を継ぐということで顔役になるのではなく、李春という女ひとりの力として、掲陽鎮の新たな顔役のひとりと認められるだけの地位を得たのだ。
だが、李春はここでも女であることの壁を感じていた。
事実上の頭領でありながら、実は、李春は頭領ではない。
名目上の頭領は、掲陽鎮の漁民の世話人を任されている張家の家長である
張天目は、もう十年近くも病に臥せっていて、頭領としての仕事はなにもできない。
事実上、頭領の仕事を仕切るのはこの李春という二十八歳の女だ。
だが、名目上は、あくまでも張天目が漁師の束ねなのだ。
張天目がいて、李春がいる。
それで漁師たちは安心して、李春に従っている。
李春が、名目上の頭領になることはない──。
それは李春も悟っている。
張天目が死んで跡目が必要になれば、またどこからかやってきた親族が跡目を継ぐのかもしれないし、ほかに適当な人間に世話役を任せることになるのかもしれない。
張天目のときまでは、世話役というのは単なる漁民の代表にすぎなかったが、李春が仕切るようになって、その役割は変わっている。
世話役は、数千いる漁民とその家族のすべてを束ねる頭領であるのだ。
張天目が死んだ場合の世話役の跡目をどうするかということについて、漁民たちはもめてはいるが、まだ彼らの結論は出ていない。
ただ、決まっているのは、誰が跡目になろうとも、李春が事実上の頭領であるということだ。
張天目が長い病に臥せっていることは、すべての漁民が知っているので、彼らは口々に、張家の代が変わっても李春に番頭を務めて欲しいと言ってくる。
張家の頭領は、名目上の頭領であり続けて、実権は李春が持てというのだ。おそらく、そうなるのだろう。
だが、漁民たちの誰ひとりも、李春に頭領になれとは言わない。
それは望まない。
李家のような侠客の一家と違い、頭領の跡目を継ぐのが、張家の家長と定まっているわけでもない。
実際、張天目の前の世話人は、別の家であったし、世話人などその都度定めるのが習わしだ。
だから、事実上頭領をしている李春が、次の頭領になってもまったく問題はないはずなのだ。
だが、漁民たちからすれば、李春を頭領にするということを誰かが言えば、仰天するだろう。
その理由は、李春が男ではないからだ。
ここでも女であるということで、李春はなにかを阻まれていた。
李春は、いつものように、屋敷で漁場に関する報告を受け、必要な指示をすると、遅い昼食をとるために街道沿いの飯屋に向かった。
店をやっているのは、張天目のひとり娘で
張天女は、歳は李春より五歳下でなかなかの気量良しであり、縁談も引く手あまたあったが、すべてを断って、いまでも独り身でいる。
二年前にこの料理屋を開き、わずかの間に、この店を流行りの店にした。
もともと商才もあったのだろう。
うまい魚の料理を出す店として、城郭からもわざわざ食べにくる客もいるくらいだ。
この張天女も女であることで、なにかを阻まれた者のひとりだ──ということになっている。
張天女は、本当は、父親の張天目の後を継ぎたかったのだ。
張天女には才もあり、その意欲もあった。
気が強い性格も女としてよりは、男として人を率いることに向いていた。
しかし、張天女に求められたのは、李春が頭領としての地位に格上げした張家の後継者の妻になることだ。
張天女は、なんの能力もない自分の夫が、漁民を仕切る立場になることを拒否し、すべての縁談を断った。
そして、漁民の仕事から手を引き、女ひとりで暮らしを成り立たせるために、飯屋を開いた。
表向きはそうなっている。
しかし、実体は違う。
張天女は、最初から父親を継ぐことなど思いもしていなかった。
自分が頭領にならないのであれば、夫は持たないといつも発言していたのも、張家の家業から身を引くように料理屋を開いたのも、密かに李春が指示したことだ。
張天女がここで商売をするための資金を、病に伏せている張天目が出せるわけもなく、そのすべての李春が準備した。
「李春、いらっしゃい。店の者は一度帰したわ。夕刻まで三刻(約三時間)は誰も来ないわ」
店の前で待っていた張天女が言った。
李春は、張天女の顔がほんの少し欲情しているのがわかった。
これからふたりきりで始めることについて期待しているのだ。
可愛い女だ。
李春は自分の頬が綻ぶのを感じた。
「幾つか報告があるわ、李春」
「わかった。食事をしながら聞くわ、張天女」
李春は、張天女に先導させて店の中に入った。
張天女の店は、昼食のときに開き、昼飯時が終わると一度店を閉めて、夜になると酒を飲む漁師たちを目当てにまた開く。
それが張天女の飯屋だ。
張天女は、店の仕切りのために娘を三人と若い男衆を二人雇っているが、数日置きに定まっている李春が訪問のときには、その一度閉める時間、全員を帰してしまう。
李春もそれを知っている。
だから、店が閉まるであろう時間を見計らってやってくるのだ。
「粉を買いたいという商人が来たわ、李春」
すでに閉めている店の中に李春を引き入れると、すぐに張天女は言った。
李春のための食事はすでに準備されていた。
魚の肉を練ったものが入った饅頭であり、生臭さを取るために、魚は一度湯に湯に通し、さらに魚肉に小さく切った野菜と香草が入っている。
この店の自慢料理のひとつで、この饅頭ひとつを食べるために大勢の客がやってくる。
その饅頭ひとつを載せた皿を張天女は、卓の上に置いた。
ここにやってきた目的は、食事をするためではない。それは張天女も知っている。
だから、一番簡単に食事が済ませられるものを張天女も出しているのだ。
「それより、張天女、服を脱ぎなさい。この前は、急いで処置しなければならないことがあったから、なにもしないで帰ったから、身体が火照ったままでつらかったでしょう? 今日は、たっぷりと可愛がってあげるからね」
李春は言った。
すると、張天女の顔がすっと被虐酔いの色に染まった。
小さな驚きの吐息とともに、端正な張天女の顔があっという間に火照って真っ赤になり、李春に救いを求めるような眼差しをした。
「二度も言わせないで欲しいわね。いま、ここで素っ裸になるのよ。それとも、わたしの命令がきけないの?」
李春は、饅頭を口にしながら、強い口調で言った。
張天女の顔がますます憂いを含んだものになる。
張天女が、李春の理不尽な命令に抗議をしたいのか、それとも、李春の手で張天女の身体を蹂躙することを願っているのかについて、張天女は口にはしないが、李春からすれば丸わかりだ。
張天女は、ここで服を脱いで仕事の報告をしろという李春の命令に、自分の中の黒い欲望を刺激させたようだ。
張天女は、李春を常に呼び捨てに呼ぶ。
逆に李春は、人がいるときには、張天女をお嬢さんと呼ぶ。
いまは、ふたりきりしかいないので、李春も呼び捨てだが、張家から独立したといはいえ、張天女は、李春が名目だけとはいえ、仕えている張天目の娘だ。
五歳の歳下とはいえ、本来であれば、張天女は、李春が敬意を抱いて接しなければならない存在だからだ。
しかし、ほとんどの者が知らないが、張天目の娘である張天女は、李春の“猫”だ。
五年前、張天目の仕事を李春が手伝うようになって、すぐにそうなった。
張天女がすべての縁談を断ったのも、李春という女主人の存在があったからだ。
李春と同じように「男まさり」と称される張天女であるが、李春の前では、張天女ははっきりと「女」だった。
張天女は、十八歳のときに、李春のものになったときから、李春の言いなりだ。
すべての縁談を断れと言われればそうしたし、張家には婿は取らないと発言しろと命じればそうした。
そして、李春の指示のまま、二年前に張家の家業から身を引いて、ここで料理屋をしている。
いまの張天女は、張家の仕事からも、漁民の世話人としての仕事にも一切関わっていない。
表向きは張天女自身の店である李春の店の女主人としての立場が、いまの唯一の表の顔だ。
だが、女同士の性愛の相手であるという理由だけで、李春も私費から、この店を出すだけの金を出したわけではない。
この張天女の店は、李春のもうひとつの商売をするための中継所でもあるのだ。
そのための役に立たせるための店の開業であり、張天女の独立なのだ。
張天女が恥じらいながら、服を脱いで横の空いた椅子の背もたれにかけた。
躊躇いのそぶりを見せる張天女から李春は、容赦なく下着も取り去ることを命じた。
張天女が顔を火照らせたまま、下着を取り去り全裸になった。
「手を横にしなさい」
両手で乳房と股間を隠していた張天女に李春は言った。
苛められれば苛めるほど、淫らに欲情するのが張天女の身体だ。
この娘を李春の“猫”にしてから、李春がそうしてやった。
大切な報告を素っ裸ですることを余儀なくされたことで、張天女はすっかり欲情して、興奮しているようだ。
張天女の股間は、すでに十分に淫蜜を滴らせているのがわかり、その股間から醸しだす女の匂いが饅頭を口にする李春の鼻を刺激した。
「ねえ、さじを二本持ってきて、張天女」
李春は言った。
李春の皿のうえの饅頭はすでに半分になっている。
饅頭を食べるのに箸もさじも不要だ。
張天女は、一応は箸を準備してくれていたが、李春は使っていない。
「あっ、ごめんさない。持ってくるわ」
張天女は、裸身のまま厨房に一度戻り、すぐに木のさじを二本持って戻って来た。おそらく、饅頭を食べるために、李春がさじを要求したと思ったに違いない。
「後ろを向けて、こっちにお尻を向けなさい」
さじを受け取ると、李春は張天女をそばに立たせて言った。
張天女は、理由を訊ねることなく、白い裸身を回転させて身体を反対側に向けた。
李春は、双臀の割れ目にさじの柄を向けると、張天女の菊門に無造作にさじの柄を突っ込んだ。
「ひいっ──」
張天女が突然の仕打ちに、悲鳴をあげて身体を仰け反らせた。
「動くんじゃないよ、張天女」
逃げかけた張天女の身体が、李春の強い口調で硬直したようにとまった。
李春はそのまま、さじの柄が見えなくなるまで、張天女の肛門にさじを突き入れた。
「ひっ、ひん……」
肛門の内側の粘膜をさじが抉る刺激に張天女が身体を小さく震わせながら、甘い吐息を洩らす。
「絶対に落としては駄目よ。もしも、落としたりしたら、この椅子に大股開きで縛りつけて放っておくわよ。夜の仕事のための戻ってきた店の者は驚くでしょうねえ。店に入ったら、いきなりあんたの大股開きの股間が曝け出されているんだから。さあ、こっちを向き直りなさい、張天女」
「ひ、ひいっ……。そ、そんな酷いことしないで、李春」
張天女がお尻にさじを挿したままこっちを向く。
李春が喋っていることはいつもの言葉遊びだ。
しかし、それにより、張天女は、すっかりと被虐の炎を身体に燃えあげさせてしまったようだ。
張天女の眼には、うっすらと涙が浮かんでいて、悲しそうな色が浮かんでいる。
しかし、その奥には、李春の与え続けてきた嗜虐ですっかりと馴らされてしまって、そこから与えられる恥辱から生まれる快感に期待する心がはっきりと映っていた。
「脚を開くのよ」
李春は言った。
「ああ、許して……」
張天女は否定するように、小さく首を横に振った。
しかし、その脚は李春の命令に従って、肩幅程度に開かれる。
「命令するまで脚を閉じては駄目よ、張天女。そのままにしておくのよ、もしも、二本のさじのどちらかでも落としてしまったら、素っ裸で晒し者よ。いいわね」
「そ、そんなこと……」
張天女が否定とも肯定ともとれるような曖昧な口調で、顔を下に向けた。
そんな張天女の仕草が可愛くて、しっかりと嗜虐酔いしはじめていている自分を自覚しながら、李春は張天女の股間に、掬う側を先端にして、さじを入れていった。
張天女の股間には、一本の恥毛も生えていない。
最初に張天女が、李春に抱かれたときから、常につるつるにするように命じているからだ。
この五年、張天女の股間には、一度も毛が生えたことはないはずだ。
十分に粘液の滴っている女陰に、李春はゆっくりとさじを埋めていった。
張天女が気持ちよさそうに眼を細める。柄の半分まで挿し入れ終わると、李春は指先で女陰の上側の小さな突起を乱暴に捻り動かした。
「ひっ……くうっ……あ、あはああっ……」
張天女は淫らな声を店の中に響かせる。
しかし、すっかりと妖しい官能に身体を火照らせている張天女から、李春はすぐに手を引いた。張天女が物足りなさそうな身悶えをした。
「物欲しそうな顔をするんじゃないよ、張天女。報告を聞くわ」
李春は意地悪く言った。残っていた饅頭の半分にかぶりつく。
「こ、このまま、報告するの、李春?」
張天女が哀願するように身体をくねらせた。張天女の股間には、前後にさじが深々を挿さっている。こんな状況で、真面目な話をするのは嫌なのだろう。
しかし、李春が強い視線で促したので、諦めたように吐息をすると口を開く。
「粉をふた袋欲しいそうよ」
全身を高揚させた張天女が、肩幅に開いた股間の前後に二本のさじを挿したままという破廉恥な姿で、身体をくねらせながらそう言った。
「誰?」
李春は股間から出ているさじの柄を四、五回激しく動かした。
「ひくうっ……あ、ああ……あああ……あ、ああっ……」
張天女が甘い声をあげて、腰を落としかけた。
しかし、慌てたように身体をたて直して姿勢を戻す。
「ぼ、
張天女は言った。
“粉”と言っているが、実は粉ではない。張天女が言った“粉”というのは、闇塩のことであり、この店でやっているのは、李春のもうひとつの商売である闇塩の取引きの仲介なのだ。
古来、人は塩なしでは生きていけない。
しかし、その塩は岩塩を除けば、海でしかできない。
だから、海岸で作って内陸に運ぶ。だが、塩は政府の専売であり、官の許可なしに製作することも、売買することも禁止されていた。
塩は帝国政府のものであり、決められた価格で取引をすることが法で定められている。
法を犯せば死罪である。だが、その価格には高価だった。
特に、この南州では各地方政府のかける税もさらに上乗せされていて、庶民には手が出しにくいものになっていた。
だから、闇塩が横行する。
李春の裏の仕事は、その闇塩だった。
表向きは、張天目の名代として漁民の仕切りをしながら、自らも船を使った商いをしている李春だったが、裏の顔は、その闇塩の元締めだ。
南の海を出て一日のところに、人の住む島があり、李春は、
だが、実は島から持ち返る品物のうち、一番大事なものが島で生産した塩だ。
もちろん、政府の許可のない塩だ。それを運んでいることも、ましてや売っていることが発覚しても死罪だ。
だが、高価な官塩だけでは、庶民は生活できないし、なによりも、闇塩は莫大な利益を生んだ。
李春のような若い女が、一人前の顔役として掲陽鎮で大きな顔をしていられるのも、その闇塩が産む富のお陰だ。
しかし、李春が闇塩をしているということは、ほとんど誰にも知られていない。
闇塩の商いについて、李春は注意深く、表に出ることを避けていた。
その島に塩を買い付けに行くのは、童姉妹という妹分だし、売り買いの仲介をするのは、眼の前で裸身を悶えさせている張天女だ。
張天女のこの店は、塩を買いたい者が取引きを申し込むためにやって来る場所であり、張天女は商売をしながら、そういう者が本当に信用できる相手かどうかを慎重に見極める。
最初は、闇塩のことを持ち出されても知らない顔をする。
闇塩を取り締まる役人が客人に成りすませて接触することもあるからだ。
そして、信用できる相手だと見極めると、李春に紹介する。
人を見極める能力について、李春は張天女を完全に信用している。
こんな風に淫らな声をあげて甘えるのは、李春の前だけのことであって、張天女は法の厳しい闇塩の売人として、確固たる地位を持つに至っている李春のもっとも信用する仲間だ。
この張天女と童姉妹──。
李春がこの世で本当に信用するのは、この三人だけであり、ほかの者は誰ひとりとして、心を許した者はいない。
「房陽の商人とは、いままでに取引をしたことはなかったわね」
饅頭を口に詰め込んだ李春は、手を伸ばして張天目の肛門に挿さっているさじを持ってゆっくりと動かし出す。
しばらく動かしたら、その手を前側のさじに移す。
それをむしゃむしゃと饅頭を食べながらやる。
そうやって、前後のさじを交互に動かすと、張天目は、顔を真っ赤にして、全身を震わせはじめた。
「あ、ああっ……し、信用……ああっ……できると……お、思う……わ……。だ、駄目……これがうまくいけば……と、取引きを……か、拡大したいと……。あ、商いの規模を……ひ、拡げられる……き、機会……」
張天女の言葉には、嬌声が混じる。もう真っ直ぐに立っていられないのか、張天女はいまにも腰が崩れそうな身体を懸命に踏ん張っている。
李春は、そんな張天女の気力を削ぐように、二本のさじで、張天女が一番感じる部分を探って、肛門と女陰の中を抉る。
「ああ……、も、もう我慢でいない……。ま、まともに考えられない……」
張天女が泣き声のような声をあげて、背中を仰け反らせた。
「なに言ってんのよ、恥知らずな助平女のくせに──。ちゃんというべきこと言わないと、また、これでお預けにするわよ。こんな細いものじゃあ、物足りなくて泣きそうなんでしょう? お前の女陰はぐしょぐしょだよ」
李春の調教で信じられないくらいに感じやすくなっている張天女の女陰は、たったこれだけの刺激とは思えないくらいに、大量の淫液が垂れ流れ出ていた。
そして、そこから匂い生臭い匂いが、李春の官能を刺激する。
李春もまた、張天女の淫靡な仕草と匂いにあてられて、甘美な陶酔に陥りかけていた。
「だ、だって……こんなの……」
さじで前後の孔をいじくられながらも、まだ、淫情に酔うことを許されない張天女は、李春に訴えるような苦悶の表情を見せた。
その顔が李春の被虐心をさらに助長する。
李春は、前の孔を責める手をさじではなく、張天女の股間で充血してしっかりと勃起している肉の突起に変えた。
そこを柔らかく揉み始めると張天女は、悲鳴のような嬌声をあげた。
「房陽の商人との取引は進めていいわ。取引きはいつものように船ね。そこで品を渡すと伝えなさい。
童威子と童猛子というのが童姉妹の名だ。
大きな漁師の家の娘だったが、五年前、ふたりの父親は騙されて多額の借金を作って自殺をした。
童姉妹は、その父親の遺した借金の代わりに奴隷として売られかけていたが、李春の持っていた財で、借金を肩代わりしてふたりを引き取った。
それ以来、童姉妹は李春を姉貴として心服し、いまでは張天女と並ぶ李春の片腕たちだ。
李春は張天女に肉芽を潰すように乱暴に押した。
「ひくううっ──」
敏感な肉の頂点を刺激された張天女は、はっきりと欲情の声をあげて、腰を沈めた。
李春は、前側のさじの先を持つと、張天女の下がる腰をそれで支えるように下から思い切り突いた。
「ひぎいぃぃぃぃ──」
女陰をさじで抉られる忌まわしい激痛に、張天女が悲鳴をあげて腰をあげる。
「早く、報告を続けるのよ。言うことが聞けないなら、本当に椅子に縛りつけて置き去りにするわよ」
そして、乱暴にさじを上下に乱暴に動かす。
「あくうっ……ご、ごめんなさい……。ゆ、許して、李春……。ちゃんと言う──。言うから……。や、役人が人相書きを──ひいっ──」
張天女が女陰を乱暴に突き挿される苦痛に顔を曲げる。
しかし、その痛みの苦痛が、張天女に甘美な官能の痺れを与えていることも李春は知っている。
李春の前以外では、毅然とした美しさを保つ張天女の顔が、欲情に呆けた雌の顔に変わる。
しかし、人相書きと聞いて、李春は気になるものを感じて、張天女をいたぶる手を止めた。
張天女がほっとしながらも、ほんの少し残念であるかのような複雑な顔をする。
「持っておいで」
李春は命じた。
張天女が前後にさじを挿したまま、腰をくねらせながら奥に行き、そして、戻って来た。
人相書きは四枚であり、いずれも美しい女の顔が描かれていた。
四枚のうち、二枚には名がなく、残りの二枚には、宝玄仙と朱姫という名がある。
罪は、人殺しと叛乱と書かれていた。役人が張天女の店まで人相書きを配るのは重罪人のときだ。
「宝玄仙?」
李春は驚きの声をあげた。