※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 第42話  女侠客無惨【青おろち】
263 襲いかかる筆[一日目]


「眼が覚めたか、李春(りしゅん)?」

 

 気がつくと李春は、素っ裸に剝かれて、四肢を大きく開いた姿でどこかの部屋の床の真ん中に拘束されていた。

 どうして、こんなことになったのかまったくわからない。

 

「男を屁とも思わねえような跳ね返りだが、こうやって眺めると、しっかりと女の股をしているんだな。俺は、絶対にお前の股には、珍棒が生えていると思ったぞ」

 

「お、お前──」

 

 李春は叫んだ。「青おろち」という綽名の駝濫(だらん)一家の頭領が、好色な顔で李春の裸身を見下ろしている。

 本名は駝濫大太坊(だらんおおたぼう)といい、岩のように大きな身体が特徴だ。

 それがなぜかここにいるのか?

 ほかにも大勢の子分たちが、李春の裸身を囲っている。

 

 その青おろちが、李春の顔の前の床に胡坐をかいて座った。

 それを合図のように、ほかの男たちも李春の裸身に群がるように囲んで座る。

 その後ろにも男たちがいる。

 

「こ、これは、どういうことなんだい……?」

 

 李春は心臓も止まるようなこの恥辱に、懸命に四肢を振りほどこうとするが、固く戒められた手首を足首はまったく動かない。

 それに、なにかおかしい。

 さっきから、身体の中から込みあがるような熱いものが湧いている。

 それがどうにも李春をおかしな気持ちにして、身体を悶えるような気だるい感じにさせている。

 

「ほう、薬も効いてきたようだな。なんにもしないのに、股ぐらが泣きだしてきたじゃねえか。こうして見ると、掲陽鎮の暴れ女も、なかなかにいい女だな」

 

 青おろちが下品な笑い声をあげた。周りの男たちが一斉に笑い転げた。

 

「あ、青おろち、これは、どういうことだい。説明しな──。こ、こんなことして、ただで済むと思っているのかい?」

 

 李春は叫んだ。

 なにが起こったかわからないが、軍営に連れていかれる途中で、なんらかの理由により、自分は、この駝濫一家に浚われたに違いない。

 そして、連中の息のかかったどこかの場所に連れ込まれた。そうとしか考えられない。

 しかし、どう考えてもわからない。

 自分は屋敷にやってきた役人と兵と一緒に軍営に向かう途中だったのだ。

 李家の頭領である李保(りほ)の仲介により、簡単な訊問ですぐに釈放するという取引きをした。

 城郭政府は、掲陽鎮(けいようちん)を三分する大侠客である李家には逆らわない。

 だから、李春もそれを信用して、大人しく檻車に入った。

 そういえば、あのとき、真っ暗闇の檻車から得体のしれない煙が出ている気配を感じた。

 その煙を吸い込んだ時に、急激に眠くなったのだ。

 

「そんな格好で、威勢のいい啖呵を切れるのは、女ながら見あげた根性だが、そんなんだから、身内に嵌められて、この青おろちに身柄を売られる羽目になるんだ。二度と男に立てつこうというような気持ちにならないように、たっぷりと調教してやるぞ、李春。とりあえず、しばらくは、お前たちが痛めつけたこの俺の弟がお前の調教係だ」

 

 青おろちが言った。

 身内に売られた?

 戸惑いが李春を襲う。もしかしたら、これはなにかの罠だったのか?

 しかし、どういう罠だかわからずに、李春の頭は混乱した。

 

「ひ、ひゃあぁ──」

 

 しかし、その李春の思考は、突然襲われた股間の激しい刺激に一気に吹き飛んだ。

 なにをされたのかわからなかったが、李春の横に座っている男が、李春が曝け出している肉芽をほんのちょっと押したのだということがわかった。

 それで恐ろしいほどの官能に襲われて、李春は大きな声をあげてしまったのだ。

 それにしても、おかしな疼きに襲われている身体は、いくらなんでも異常だ。いったい、どうしてしまったのだろう。

 

「この前は世話になったな、李春。お前たちに痛めつけられたときには、悔しくて眠れなかったが、こんなにも早く鬱憤を晴らせる機会が来るなんてありがたいぜ。お前らと一緒にいたのは、宝玄仙とかいう賞金付のお尋ね者だったんだな。連中を逃がしてしまったのは残念だが、その分はお前がその身体で詫びることだ」

 

 一昨夜、山街道で宝玄仙たちと一緒に懲らしめてやった青おろちの弟の小太坊(こたぼう)だ。

 さっき、股間を刺激したのは、この小太坊のようだ。

 

「お、お願いだよ。一体全体なにが起こったか教えておくれよ」

 

 李春は狼狽して叫んだ。

 

「なにが知りたいんだ、李春? お前がさっきから、無意識のうちに腰をもじもじと動かしているわけか? そりゃあ、お前が眠っているうちに、たっぷりと催淫剤を俺たちが口移しで呑ませてやったからだ。どうやら、余程、強力な媚薬のようだな。お前の股倉は、真っ赤な花みたいに熟れきって、さっきからだらだらと涎を垂らしているぞ──ほらっ」

 

 小太坊は、また、李春の無防備な股間に指を伸ばすと、肉芽を再びひと擦りした。

 李春は、それだけでまたあられのない身悶えと声をあげてしまった。

 その李春の姿に、周囲の男たちが声を揃えて哄笑する。

 自分がやっつけた男の手によって、裸身をいたぶられるという恥辱が全身を貫く。

 

「ち、違う。どうして、わたしがここにいるのか教えて……」

 

 李春は、なにもしなくても、まるで火に炙られているかのようにどんどん熱くなっていく身体を悶えさせながら叫んだ。

 とにかく、この異常な身体の火照りが媚薬のせいだということはわかった。

 しかも、眠っているあいだに、口を凌辱されたのだ。

 こうやって、素裸にされて四肢を伸ばして戸板に拘束されるまでに、さんざんに連中にこの身体を眺めらたり、触られたりしたに違いない。

 そう思うとおぞましさに全身に怖気が走る。

 しかし、それよりも、いまの状況の理由を知りたい。

 

「それとも、服か? お前の着ていたものは、ここでの生活費の代わりとして、古着屋に叩き売った。大した金にはならなかったがな、不足する分は、ちゃんと、ここで身体で稼ぐんだな。その身体で、ここにいる連中の肉棒をすすり、股倉で精を受けろ。駝濫一家専用の肉人形として飼ってやるよ」

 

 小太坊が笑った。

 

「くっ」

 

 李春は歯ぎしりした。

 

「お、お前のようなろくでなしになぶられはしないよ」

 

 頭に血がのぼった李春は、精一杯の啖呵を切った。

 

「ろくでなしとは恐れ入ったぜ。腰をいやらしく振りながら啖呵を切られたのは初めてだぜ」 

 

 だが、どっと沸き起こった笑い声とともの揶揄されただけだ。

 李春はかっとなった。

 

「さっさとこれを解きなよ。承知しないよ」 

 

 拘束された四肢を限界まで振り動かす。

 縄さえ解ければ、たとえ素手でもこいつらには負けはしないのだ。

 しかし、しっかりと拘束された手首を足首は、ほんの少しの緩みさえ生まれない。

 畜生……。

 縄さえ解ければ……。

 

「だから、いまのお前がどう承知しないんだ? ええ、李春?」

 

 小太坊が李春の脇から横腹にかけて、すっと指を撫ぜ下ろした。

 

「ひいっ──」

 

 李春は、身体を反対側に逸らせて悲鳴をあげた。

 

「まあ、待て、待て、小太坊──。李春としても、なにが自分に起きたのかがわからなければ、諦めて屈服しようにもできねえだろう。しっかりと、引導を渡すためにも、こいつがどうしてここにいるかを教えてやることにしようじゃねえか」

 

 青おろちが言った。

 そして、李春の顔に酒臭い顔を近づけた。

 

「いいか、李春、よく聞け──。お前は屋敷にやってきた役人と兵が、掲陽鎮の地方府から派遣されたと思っていたかもしれないが、あれは、俺の息のかかった役人と大部分は兵の軍装をした俺の部下だ。お前は、騙されて、うっかりと俺たちの準備した檻車に載っちまったんだ」

 

「騙された?」

 

 李春は呆気にとられた。

 

「檻車の中には、昏睡剤の香がたっぷりとたちこめるようにしてやった。それを準備したのは、お前が耳を削ぎ落とした七絶だ。いま、七絶はこっちに向かっている──。わかったか。駝濫一家に立てつくような生意気をするから、こんなことになるんだ」

 

 青おろちが言った。

 

「えっ?」

 

 思わず叫んだ。

 あれが本物の兵と役人ではないなどと思いもよらなかった。

 自分の迂闊さに歯噛みする。

 

「助けなんか来ねえぞ。お前を慕っている漁師どもは、みんな城郭の軍営にお前が連れていかれたと思ってるんだ。ところが、そんなところにはお前はいないし、地方府もわからねえと答えるだけだ。お前は、誰にもわからねえように浚われたんだ。わかったら、観念しろ」

 

 李春は青おろしの言葉に愕然とした。

 だが、同時に、まだ望みがあることも悟った。

 あのとき、偶然にも李保がその場にいた。

 漁師たちには無理だが、李保だったら、地方府にも顔が効く。

 軍営との取引を仲介してくれた李保だ。

 李春が軍営に囚われていないとわかれば、周囲の状況を総合して、この駝濫一家に必ず辿り着いてくれる。

 

「……だ、だったら、わたしをすぐに開放するのね。あのとき、偶然にも李家の頭領の李保殿がいたのよ。いくら、あんたらでも、李一家と全面的な喧嘩は避けたいでしょう? わたしになんかしたら、李家が黙っていないわよ」

 

 李春は声をあげた。

 しかし、それを聞いて、青おろちは驚くどころか、大笑いした。

 

「お前はなんにもわかっていないようだな、李春。李保は、あの場に偶然いたわけじゃねえぞ。あいつは、お前が暴れて、役人に従わないなんてことがないように、お前をなだめるためにそこにいたんだ。どうやら、あそこも内部でいざこざがあって、お前の存在が煙たくなったらしいな。それで、李家と争っている利権について、俺が多少の譲歩するのと引き換えに、お前を俺に売り渡したんだ」

 

 あまりのことに李春は言葉を発することができなかった。

 しかし、そう考えれば辻褄は合う。

 これまで立ち寄ったこともなかった李保が、突然李春を訪問したことや、李保が居合わせるときに丁度やってきた偽の役人と兵のこと考えると、偶然というにはあまりにも都合がよすぎる。

 屋敷に兵がやって来る直前に、胸倉掴んで罵倒した李春を、あんな風に身体を張って庇うなんて、あまりにも李春の知っている李保とはかけ離れている。

 すべてが仕組まれた罠だったのだ。

 李春は唇を固く閉じ合せて、眼を閉じた。

 

「とこかく、お前については、完全に俺に屈服するまで、徹底的になぶり抜いてやるから、覚悟しな、李春」

 

「よし、小太坊、じゃあ、しばらくお前に預けるから、さっきみたいな口がきけないように徹底してなぶり抜け」

 

 青おろちが大きな声で笑った。

 

「わかったよ、兄貴。しかし、こうやって、あっさりと李春を捕えることができたんなら、張天女(ちょうてんじょ)についても簡単なんじゃねえか。ついでに、浚っちまおうぜ。駝濫一家に立てついたのは、この李春だけじゃなくて、張天女もそうだったんだ」

 

 小太坊が青おろちの方を見て言った。

 

「おいおい、女ふたりまで、お前がひとり占めするつもりか。まあ、浚ってくるのは面倒はなさそうだが、こいつらに煮え湯を飲まされたのは、お前だけじゃないんだぞ。調教係の希望は大勢いるさ」

 

 青おろちが苦笑したような声で応じた。

 

「お、お穣さんをどうするつもりよ。彼女に手を出したら承知しないよ」

 

 張天女は、李春の“猫”だが、外面的にはそれを隠して、李春は人前では、張天女のことをお嬢さんと呼んでいた。

 

「うるせえ、李春。女の分際で駝濫一家に逆らった酬いだ。お前のついでに、張天目の娘も浚って、お前の隣に素っ裸で並べてやる。お前のときのように面倒な仕掛けはいらないだろう。釈放するから、身柄を引き取りに来いと使者を出すだけで、あいつはやってくるさ。油断したところを見計らって、薬で眠らせてここに連れてくる。明日には、ふたり揃って素っ裸で対面させてやるから待っていな、李春。ふたり揃ったら、この青おろち自ら、お前らの奥の院の味比べをしてやる」

 

 青おろちがそう言って、部下たちを笑わせた。

 

「お前という女に、張天目の娘、そして、童姉妹──。それだけ捕えれば、お前の抑えている漁師部落は終わりだ。あの一帯は、俺たちにとっても李家にとっても、不干渉の場所だったがそれも今日までだ。漁師どもから取りあげるみかじめ料の権利も漁場の入漁料もこの駝濫でいただく。お前の商売が随分と羽振りがいいのは知っているがそれも俺がもらう。つまり、お前の島だった場所は、すべてぶんどってやるから覚悟しな。だいたい、女のくせに一人前の侠客気取りだったのが気に入らねえ。女は女らしく、男の珍棒を咥えて腰を振っていろ」

 

「青おろしの兄貴、もう、すでに李春は一生懸命に腰を振ってるぜ」

 

 小太坊が言った。李春は慌てて、いつの間にか動かしていた腰を止めた。

 しかし、身体の芯からただれるような官能の痺れは、すぐに油断すると李俊を怖ろしい官能の地獄へ連れていく。

 だが、李春は最後の頼みの綱をまだ持っていることに気がついた。

 

「あ、あの場所は、穆公殿の庇護を受けているんだよ。手を出したら、穆家が黙っていないよ」

 

 李春は声をあげた。

 

「馬鹿か、お前。あの名前だけの家になにができる。お前が穆家の看板欲しさに、あの爺いに腰を振りに行ったことはわかっている。だが、あの穆家の爺いも馬鹿じゃねえ。あいつが、穆家の看板を貸したのは、お前が事実上、あの漁師部落を抑えていたからだ。お前がいなくなりゃあ、あの爺いは手のひら返すようにお前を見捨てるさ。お前は、穆家がお前を助けるために、指の一本でも動かすと思っているのか?」

 

 小太坊が言った。

 李春は唇を噛んだ。

 小太坊の言うとおりだ。

 

 李春が事実上の支配をしていたから、穆公は名を貸したし、明確にあの場所は穆家の地だと宣言することを約束したのだ。

 だが、李春が駝濫の手に捕らえられたことにより、状況は変わった。あそこを青おろちが手に入れれば、穆公は駝濫家の支配を認めるだろう。

 実際、あの漁師部落から銅貨一枚でも穆家に流れたわけでもない。

 穆家との繋がりを作るために、個人的な関係を李春があの穆公との間に作っただけだ。

 

「わかったよ。こうなったら、覚悟はできているわ。ひと思いに心臓を突き刺して殺しな」

 

 李春はきっぱりと言った。

 女ひとりで突っ張って生きて来たのだ。

 こんな日がいつか来るという覚悟はあった。

 

「誰が殺すと言った。殺しやしねえよ。お前は、いつまでも生かしておいて、ここで駝羅一家の嬲り者にすると言ったろう。お前と張天目の娘、童姉妹──四人揃って、ここで飼いならして、お前の仲間は、最後には全員、奴隷にして売り飛ばす。観念するんだな」

 

「わ、わかったよ……。あんたらの嬲り者になるよ。だから、せめて、張天女たちに手を出すのはやめておくれ」

 

 李春は言った。もう、李春には彼女たちしかいない。せめて、彼女たちだけでも護りたい。

 

「いい覚悟だ。だが、勝手に自殺なんかしてみろ。すぐに張天女をここに連れてきて、お前と同じ目に遭わせるぞ」

 

 青おろちが言った。

 

「や、約束だよ」

 

 李春は呻いた。

 自殺もできない……。

 逆らうこともできない……。

 李春は突然やってきた自分の運命に感情が昂ぶり、いつの間にか涙をひとつ、ふたつと落としてしまった。

 一度流れ出すと、もうとまらない。

 涙は、ぼろぼろと李春の眼から滴り落ちていく。

 

「さあ、兄貴、そろそろ、この李春を料理にかけたいと思うがいいかい?」

 

 小太坊が李春の太腿に手を置く。

 李春は、はっとして、身を竦ませた。

 

「おう、存分にやってやれ」

 

 青おろちは子分に、酒を手元に持ってくるように命じた。

 どうやら、これから小太坊が李春がなぶるのを、酒を飲みながら見物するつもりのようだ。

 李春は、あまりも恥虚に一瞬、眼の前が暗くなった。

 

「それにしても、裸に剥いてわかったが、肉付きといい色の白さといい、お前はこれほどまでの女だったんだな。この李春は、女奴隷になっても稼いでくれることは間違いないぜ、兄貴」

 

 小太坊がからかった。

 

「そうしたいところだがな、小太坊。こいつの引き取り先だけは決まっている。李保との約束だ。李保は、そいつが腑抜けのようになったら、身柄だけは引き取ると言っていた。あいつのところの内部騒動が鎮まるにはそれが必要なんだそうだ」

 

 青おろちだ。

 そう言えば、あのとき、そんなことを言っていた。

 どうやら、李保が李春を売ったというのは本当だと思うしかない。

 口惜しさに李春は歯を噛みしめた。

 

「へっ、あんな意気地なしに義理立てする必要はねえぜ」

 

 小太坊が悪態をついた。

 

「そう言うな、小太坊。まあ、期限はないんだし、半年ほど駝羅一家で回し続けて、完全に頭が壊れてしまったら、あいつに下げるとするさ」

 

 青おろちが言った。

 

「さてと、じゃあ、始めるか、李春。嬲り者になる覚悟はいいな」

 

「す、好きにしなよ。どうせ、わたしがなにを言おうと関係ないんだだろう?」

 

「そう言うことだな」

 

 小太坊は声をあげて笑った。

 

「じゃあ、お前と、お前──それにお前もだ……。お前も一昨夜、こいつらにやられたな? じゃあ、参加しろ」

 

 どうやら、小太坊は、子分の中からあの山街道で李春たちがやっつけた部下たちから五人を指名したようだ。

 指名された男たちが、李春の周りを囲み始める。

 

「さて、男嫌いだという噂だが、そのお前を男なしでいられない身体にしてやるぜ」

「し、死んだって、屈服なんてしないよ。あんたらの調教を受けてもいいけど、それはお嬢さんのためよ。たとえ、悶え泣いているように見えても、それは精一杯の演技だからね」

 

 李春は悔し紛れに叫んだ。

 眠っている間に飲まされた可笑しな媚薬のせいで、すでに李春の身体はのっぴきならないところまで追い込まれていた。

 この身体で責められれば、すぐに気をやるだろう。

 だから、そうでも言っておかないと、悔しくて、それだけで昏倒死しそうだ。

 

「なら、いいぜ。これからたっぷりとお前を責め抜くが、一度も気をやらなければ、それで無罪放免で解放してやるぞ」

 

「ち、畜生──。そ、その言葉に二言はないね」

 

 李春は叫んだ。

 

「じゃあ、お前とお前は身体の上半分だ。俺とお前は身体の下半分といこうか。それとそっちのふたりで、李春の足の指を口でなぶってやれ。さあ、六人がかりだ。耐えられるもんなら、耐えてみろ、李春」

 

 小太坊が笑った。

 李春は返事をしなかった。

 ただ、口が開かないように必死に唇を閉じ合せた。

 

 始まった──。

 そして、一斉に六人の手と舌が李春の身体に襲いかかった。

 両側から太腿の内側をくすぐるように手で撫で始められ、乳房には別々の手が左右から伸びて揉み始める。

 そして、脚の指には舌だ。足の指と指の間が手で開かれて、そこに舌が這う。

 

 李春はその虫酸がはしるような感触を必死に耐えた。

 必死になって歯を噛みしめる。

 こいつらなんかに屈服して堪るか──。

 血を吐くような墳辱に拳を固く握りしめた。

 

「そんなに固くなるな、李春。こうなったら。たっぷりと愉しむ気持ちになっちゃあ、どうだ?」

 

 小太坊が次第に股間の付け根に手を近づけながら言った。

 

「あ、ああっ、あああっ」

 

 全身を襲う溶けるような快感に李春はだんだんと身体の震えがとめられなくなった。

 

「これじゃあ、あっという間にいきそうだな」

 

 見物側の男の誰かが言った。

 こんな連中の前で絶対に醜態を晒したくない……。

 李春は全身が石になったのだと思おうとした。

 

 しかし、さすがに六人もの男の一斉に愛撫に李春は追いつめられた。

 しかも、昨日痛めつけた連中に、よってたかって身体を責めあげられる悔しさは、これほどの恥辱がこの世にあったのかと思うほどだ。

 周りの人間がくすくすと笑い始める。

 李春の悶えが激しくなり、身体の震えが強くなったことでもうすぐ昇天するのだと思っているのだろう……。

 

 絶対にいかない──。

 絶対に──。

 李春は必死で耐える。

 

「柔らかいおっぱいだなあ。昨夜拳骨で殴られたときは痛かったが、あの李春の乳房がこんなに溶けるような感触とは思っていなかったぞ」

 

 胸を愛撫している男が感嘆したように言った。

 だが、じあじわと強い波が襲ってくる。

 必死になってそれを防ごうとするが、官能の暴風がどんどんと李春の身体の芯を貫く。

 貫かれた場所が新しい火種となって、熱い波を李春の身体を拡げていく……。

 

「そろそろ、いいようだな。じゃあ、引導を渡してやるか」

 

 小太坊がそう言って、股間の付け根を這いまわしていた指を股間側の刺激の頂点に移動した。

 

「くああっ……くっ……あああっ……」

 

 ついて、耐えていた口が開き、李春の口から大きな嬌声が迸った。

 一斉に周りから哄笑が起きる。

 李春は口を閉じようとするが、全身を苛む快感の嵐に開いた口がどうしても閉じられない。

 次から次へと自分の口から甘い息と声が出てしまう。

 

「随分と鼻息が荒くなったな、李春。もういきそうか?」

 

 青おろちが笑いながら言った。

 

「い、いかないよっ──。いくもんかあっ」

 

 李春は襲われる淫情の矢を追い払うために絶叫した。

 しかし、小太坊の指が股間の頂点を執拗に刺激する。

 そして、女陰の淵にも指が触れられる。

 

 ふたつの乳房……。

 足の指……。

 さらに、脇腹や太腿や、とにかく全身を襲っている淫情がひとつにまとまってくる。

 

「あああ……ひぎいぃぃぃぃ──」

 

 李春は拘束された身体を限界まで仰け反らせた。

 ついに、いった……。

 李春の眼から悔し涙が、ぼろぼろと大量に流れ落ちた。

 

「いったな、李春?」

 

 小太坊がささやいた。

 

「い、いってない。いってないよっ」

 

 李春は悔しくて叫んだ。

 すると大きな咆哮のような笑い声が部屋を包んだ。

 

「そうかい。さっきのはいってなかったのか。じゃあ、小太坊、もっと責めたてろ。この李春が確かにいったと諦めるまでな」

 

 青おろちが大声で笑いながら言った。

 

「もちろん、そうするぜ、兄貴……。じゃあ、次はこれだ、李春」

 

 小太坊が李春の顔の前にひとつの道具をかざした。

 李春は愕然とするとともに恐怖した。

 小太坊が見せたのは数十本の小筆の束だった。

 それが周囲を男たちに配られる。

 李春を取り囲む六人の男たちが両方の手に小筆を持ち、それをこれ見よがしに李春に示した。

 男たちは、それぞれの新しい位置に移動する。

 

「や、やめてぇ──」

 

 李春は叫んだ。

 今度は合計十二本の小筆が李春の裸身に襲いかかった。

 柔らかい小筆の感触が股間に四本、太腿に四本、乳首に二本と、耳や顔の周りにも二本──。

 

 もう、李春はなにがなんだかわからないようになり、狂ったように身体を跳ねあげ、悶え、そして、顔を左右に振りたてて悲鳴をあげた。

 そして、やってきた二度目の絶頂に、全身をおこりのように震わせて咆哮した。

 

「今度はいったな、李春?」

 

 小太坊が言った。絶頂したばかりの身体をまだ小筆が襲い続ける。

 

「い、いってない──ひいっ」

 

 李春は泣きながら叫んだ。

 

「よし、さらに四人加われ──」

 

 小太坊が言った。

 李春は絶望の悲鳴をあげた。

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