※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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267 壮絶・陰毛むしり[二日目]

 全裸の穆公(ぼくこう)は、六十にしてはなかなかにいい身体だったし、股間の持ち物も立派なものだ。

 

「ほら、速度が落ちたよ、穆公」

 

 その穆公は、四つん這いになり、背中に宝玄仙を載せて部屋を歩き回っている。

 すでに汗みどろだ。

 

 ここは、この男の性癖を発散させるための部屋だという地下室だ。

 この部屋で宝玄仙とふたりきりになった穆公は、もう半日以上も同じような仕打ちを宝玄仙から受け続けている。

 この四つん這い歩きは、もう、どのくらいの時間させているだろうか。

 もしかしたら、すでに二刻(約二時間)は経ったかもしれない。

 

 穆公は、年齢の割にはなかなかいい身体をしてたから、宝玄仙程度の体重の女を背中に載せて歩くのは、それほど無理ではないかもしれない。

 しかし、さすがにこれだけの長時間ともなれば、体力も限界のようだ。

 さっきから、歩く速度はがくりと落ちているし、手足の筋肉が震えて、宝玄仙を載せた裸身がふらふらと揺れている。

 

「しっかりおし、穆公」

 

 宝玄仙は手綱代わりにしている穆公の股間に喰い込んだ紐をぐいと引いた。

 

「うほうっ」

 

 穆公は大きな呻き声をあげた。

 穆公の性器には、宝玄仙が施した紐がしっかりと緊縛されている。

 つまり、睾丸の根元には、紐が喰い込んで睾丸が強く絞りあげられているし、さらに同じ紐が肉棒の付け根を厳重に縛っている。

 

 その紐掛けも宝玄仙の技だ。

 この宝玄仙の紐掛けによって、ぱんぱんに腫れあがった穆公の肉棒は、萎えることも、精を出すこともできないようになっている。

 そして、性器に繋がった紐を引っ張ると、穆公の性器に怖ろしいほどの激痛が走る仕掛けになっているのだ。

 宝玄仙は、その紐を容赦なく引っ張り続けては、穆公をこうやっていたぶり続けている。

 穆公は涙をこぼして悲鳴をあげた。

 

「もう、お許しください、ご主人様」

 

「なにが、ご主人様だい、なにひとつできない碌でなしのくせに──。わたしの言う通りに地方政府を動かす気になったかい? 悪党は駝濫(だらん)一家の頭領の青おろちだ──。罪のない女を襲っては奴隷にして売り飛ばしているんだ。証拠も証人もその気になればたっぷりと準備できる。そのくらい、わかっているんだろう、この蛆虫」

 

 宝玄仙は力いっぱい紐を引き絞った。

 穆公は吠えるような悲鳴をあげて、四つん這いの姿勢を崩れさせた。

 床に振り落とされるかたちになった宝玄仙は、立ちあがると、憐れみを乞いている穆公の顔を素足で踏みつける。

 

「なにすんだい──。なんもできない蛆虫のくせに、女ひとり背中に載せて、満足に歩くことすらできないのかい」

 

 穆公の顔をぐいぐいと踏みつける。穆公の端正な顔が苦痛に歪む。

 それとともに、穆公の怒張がさらに逞しさを増していることに宝玄仙は気がついた。

 

「そ、お許しを……お許しを……」

 

「なにがお許しだよ。お前の道具はますます大きくなっているじゃないか……。まあいいよ。いくらでも大きくおし。大きくしたって、締めつけている紐が食い込んで苦痛が増すだけだからね。蛆虫には相応しいさ──。それとも、わたしの命令に従って、地方政府に駝濫の悪党どもを捕縛するように掛け合う気になったかい」

 

 宝玄仙は、体重をかけて穆公の顔を踏みながら怒鳴った。

 

「そ、それは……」

 

 穆公は言い淀んだ。

 さすがに、性癖のことと、穆家の頭領としてのこととは別のことなのだろう。

 まあいい。こんな男を屈服させて言いなりにするなんて大した仕事ではない。

 

「ほら、跪いて背中を向けな。そして、手を背中に回すんだ」

 

 宝玄仙は、足を穆公の顔の上からどける。

 穆公は、酔ったような表情のまま裸身を起こして跪くと、宝玄仙に背中を見せた。

 宝玄仙は、背中に回された穆公の両手首に、準備しておいた手錠をかける。

 さらに、足首にも鎖の繋がった足枷を嵌めた。

 

「こっちを向きな、蛆虫」

 

 すると、穆公が跪いたまま、身体を宝玄仙に向けた。

 根元を絞りあげられて赤黒くなった怒張がその股間にそそり勃っている。

 宝玄仙は、陶酔した視線を向ける穆公に見せつけるように、着ているものをゆっくりと脱ぎ捨てた。

 脱いだものは床に投げ捨てる。

 穆公が眼を見開いて宝玄仙の身体を凝視している。

 そして、最後の一枚を宝玄仙が脱ぎ棄てたとき、息をするのも忘れたかのように、穆公は宝玄仙の裸身に見入っていた。

 

「どうだい、この身体は?」

 

 宝玄仙は裸身を穆公に晒しながら言った。

 

「す、素晴らしい……。美しい……。こ、こんな身体……。い、いや、女神だ。お、俺の女神だ」

 

 穆公が呻くように言った。

 

「この身体に奉仕させてやろうか。もしも、蛆虫が蛆虫なりの仕事をすると言ったら、ご褒美に抱かせてやるよ」

 

「し、しかし……」

 

「しかし、じゃないよ。まだ、奴隷根性が足りないようだね。お前は、まだわたしの命令に従わないつもりかい──」

 

 宝玄仙は、床に落ちている穆公の性器を縛っている紐を手に取った。

 引き紐を短くして、大股で歩きはじめる。

 

「ひいっ、ひいっ、ひいっ、お許しを──」

 

 慌てて立ちあがった穆公が哀れな悲鳴をあげた。

 穆公の足首には、短い鎖で繋がれた足枷が嵌っている。

 だから、満足歩けないのに、宝玄仙が容赦なく歩いて、性器を引っ張るので激痛が走っているのだ。

 

 引っ張りながら、宝玄仙はしっかりと穆公を観察している。

 そうやって、歩く速度を、穆公が歩ける限界の速度に合わせているのだ。

 穆公の怒張は、痛めつければ痛めつけるほど、大きさを増すようだ。

 いま穆公の怒張は、これ以上ないというくらいに膨張している。

 しかし、睾丸と肉棒の根元を絞めつけられていることで、紐が喰い込む痛さと、精を出せないつらさが重なって、穆公の顔は苦痛に歪んでいる。

 

「ご主人様の命令に従えないような奴隷は、いつまでもこのままだよ」

 

「ひいっ──ひいっ──」

 

 穆公に結んだ性器は、独特の紐の縛り方で大きな苦痛を穆公に与えている。

 それを引っ張り回される穆公は、もう半狂乱の状態だ。

 本来なら、こうやって歩いて刺激を与えられるだけで、すでに床に精をぶちまけているはずだ。

 それをしないのは紐がしっかりと根元に喰い込んでいるからだ。

 

「命令に従うね、穆公」

 

 宝玄仙は歩きながら言った。

 

「しかし、お、俺の力では──」

 

 穆公が泣き声をあげた。

 

「蛆虫のお前に大きな仕事をやれなんて言ってないよ。お前は、ただ、政府軍を動かせるような政府の高官をここに連れて来るだけだ。連中の悪事の証拠は揃っているし、前からわかっていて、知らぬ存ぜぬを決め込んでいただけなんだろう。苦虫を噛んでいる男もいるはずだ。そういうのをここに連れてくんだよ」

 

「つ、連れてくる……?」

 

「そうだ――。後はわたしがやる。人間を操り人形のようにする手段は、履いて捨てるほどあるんだ。駝濫一家に軍を向けることに反対しそうな男も連れてきな。まとめて、道術をかけてやるよ」

 

「そ、それくらいなら……」

 

 穆公が言った。

 

「やるんだね」

 

「や、やります、ご主人様……」

 

 穆公は哀れな声を出した。

 宝玄仙はやっと穆公の性器を引っ張り回すのをやめた。

 そして、この部屋で宝玄仙が穆公を責め始めて以来、ずっと性器に締め続けていた紐を外してやった。

 

 穆公がその場に崩れるように跪く。

 宝玄仙は部屋の隅にあった椅子を部屋の真ん中に持ってきた。

 その上に座って脚を組む。

 

「ご褒美だよ、蛆虫。この脚を舐めさせてやるよ。うまく奉仕できたら股にも奉仕させてやる。今日のこの宝玄仙は、お前の女だ。蛆虫が蛆虫の仕事をすると誓ったご褒美だ──」

 

 宝玄仙は組んでいる脚を穆公に向かって突き出した。

 穆公が膝立ちで這い寄り、顔を伸ばして宝玄仙の足の指を舐めはじめた。

 女の足の指を舐めさせられて、不快な顔をするどころか、この男は恍惚とした表情をして、眼が興奮に大きく開いている。

 

「どうだい、宝玄仙の足は美味しいかい?」

 

 宝玄仙は言った。

 返事をするために穆公が口を開く。

 それに合わせて、宝玄仙は思い切り足の指を前に出した。

 

「うげぇぇぇぇ──」

 

 喉の奥に迫った宝玄仙の足指に穆公は嗚咽を込みあげさせた。

 それでも口の中の舌は懸命に動いている。

 

 組んでいる足の指を舐めさせた後は、床についている側の足にも奉仕させた。

 床についている足指を舐めるためには、土下座をするように身体を屈めなければならない。

 すると腹部で怒張を圧迫してしまうので苦しそうだった。

 それでも、この男は喜々として宝玄仙の足指に舌を這わせ続ける。

 

「もういい、合格だよ、蛆虫。そこに仰向けに寝そべるんだ」

 

 穆公は言われるまま身体を横たわらせた。

 怒張はこれ以上ないというくらいにそそり勃っている。

 

 宝玄仙は、穆公の性器の根元に、精の放出をとめる小さな革帯を改めて巻いた。

 寝そべっている穆公が吠えるような声をあげた。

 

「賢いわたしの奴隷に、ご褒美だよ」

 

 宝玄仙は、そそり勃つ肉棒に跨ると静かに自分の女陰を埋めはじめた。

 穆公の興奮が頂点に達する。

 根元までしっかりと穆公の肉棒を女陰で咥えると、宝玄仙は、膣の筋肉で穆公の怒張を揉みあげるように絞り始めた。

 

「うおおぉぉぉ──」

 

 穆公が吠えた。

 おそらくあっという間に精を発するだけの快感を得たのだろう。

 しかし、根元を締めつけている霊具がそれを阻止する。

 穆公の顔が快感に興奮する顔から、激しい苦痛の表情に変わった。

 

「ううっ……、き、きつい……気持ちいい……い、いや……あはあぁぁぁ──」

 

 穆公は女のような声をあげて、寝そべっている身体を震わせた。

 

「蛆虫、ちゃんと仕事をすると誓うね?」

 

 宝玄仙は股間で穆公の肉棒を刺激しながら言った。

 

「……し、します。政府軍を動かせる高官を屋敷に招待します。それと連中の息がかかっていて、軍の出動を邪魔しそうな要人も……」

 

 穆公が恍惚と苦悩の入り混じったような呆けた顔で言った。

 本来であれば、すでに三回は精を放っている。

 しかし、怒張の霊具によってとめられている。

 発散できなかった快感は、そのまま穆公の性器に残り続ける。

 そして、穆公は、快感を溜められたまま、次の快感を与えられるのだ。

 

 それは、途方もない快感であり、激しい苦痛でもある。

 最高の快感と最高の苦痛の両方を同時に与えられ続けて、穆公は狂乱の一歩手前の状態だ。

 

「蛆虫、もう一度誓いな。明日には、政府軍を動かせる要人をここに連れて来るね?」

 

 宝玄仙はさらに怒張を締めつけた。

 

「ふごおおぉ──。誓います。なんでも命令に従います」

 

 穆公は叫んだ。

 宝玄仙は、その答えに満足して、女陰を穆公の性器から抜いた。

 今度は、穆公の顔の上に股間に押し付けるように座る。

 

「お前の肉棒が入っていた股だ。舌で奉仕するんだよ」

 

 宝玄仙が言った。

 穆公が圧迫された鼻と口を動かして宝玄仙の性器を舐めはじめた。

 宝玄仙の身体に快感が襲う。

 

「あ、ああ……き、気持ちいいよ、蛆虫──。わたしの命令に従うと言ったから、宝玄仙の身体を舐めさてやるよ……。好きなところを舐めていい……どこでも舐めな……。その代わり、必ず命令に従って、政府の要人を連れて来るんだよ」

 

 穆公が宝玄仙の股間に奉仕をしながら頷いた。

 鼻が肉芽に当たって、一瞬強い快感が宝玄仙にも襲った。

 こうやって快感と苦痛を与えながら、命令を頭に擦り込むのだ。

 そして、地方政府を動かすことを承知させる。

 この男は指示に従うだろう。

 朱姫がいつもやるような縛心と同じだ。

 宝玄仙には、朱姫がやるほどには『縛心術』はうまく操れないが、この男にはこれで十分だ。

 

 性器を舐めさせた後は、また、精を出せない怒張を女陰で咥えて快楽を溜めさせる。

 こいつが精を出せない苦痛で泣きはじめたら、また、身体を舐めさせる。

 今度は、尻や乳首を舐めさせて宝玄仙だけ達してもいいかもしれない。

 そして、また快楽を溜める……。

 

 この男は、その頃には完全に狂乱しているだろう。

 そのとき、また命令を擦り込む。

 命令を承知させてから、次には怒張の霊具を外して、十数回分を溜め込んだ快楽を宝玄仙の女陰に発散させるつもりだ。

 

「あ、ああん……。う、蛆虫、お前は男だから……き、気を失う程の快楽という経験は……ないだろう……。今夜は……それを……やるよ。それだけじゃない。明日、ちゃんと……命令に従えたら、また、同じ快楽をやる」

 

 宝玄仙の声が聞こえているのか、聞こえていないのか、穆公は興奮しきった表情で苦しそうに宝玄仙の股間への奉仕を続けている。

 宝玄仙もまた、舌で与えられる快感に酔い始めている自分に気がついていた。

 

 

 *

 

 

「よし、今日の責めはこれで終わりにしてやる」

 

 小太坊が満悦の声でそう言ったのを李春は朦朧とした頭でかろうじて認識した。

 やがて、一日中吊られていた足の縄がやっと解かれ始めた。

 

 李春は、それを霞のかかった眼でぼんやりと見ていた。

 朝から尻を気を失うまで責め続けられては休み、そして、覚醒すると尻を責められるということを続けられた。

 覚醒するたびに、李春は、繰り返し妖しげな薬を肛門に塗り足された。どんなに泣き叫んでも、どんなに哀願しても許されなかった。

 それを昼過ぎまで続けられたのだ。

 

 昼過ぎからは、新たな油剤の追加だけは許してもらった。

 その代償は、小太坊たちの性器を李春の口で奉仕することだ。

 李春は、求められるままにそれをやった。

 あの痒み責めの前では、李春の理性など簡単に崩壊した。

 痒み剤をさらに塗るぞと脅されて、李春は男たちの男根をしゃぶり、そして、精を飲むことを受け入れた。

 

 李春は女の弱さというものを改めて知った思いだった。

 あのまま、痒みを与える薬を一日中塗り足されたら、自分は間違いなく発狂していただろう。

 それとも、自分はもう狂ってしまったのだろうか……。

 

 あの小太坊や取り巻きの子分たちの肉棒を口で舐めて、出される精のすべてを飲み込んだのだ。

 だが、それほどの抵抗はなかった。

 それよりも、あの痒み責めの方が怖ろしかった。

 

 縄が解かれてやっと開脚縛りから解放されても、李春にはもう立ちあがってどこかに逃げるという気力も体力も残っていなかった。

 ほとんど一日中縛られて吊られていた脚は、自分の脚ではないかのように力が入らなかった。

 

 今日一日だけで、自分は何十回快楽の頂点に達したのだろう。

 しかも、その絶頂をすべてお尻で受ける快楽で達したのである。

 

 おそらく、これまでの人生で達した回数を遥かに超える数をお尻で達しただろう。

 まるで、自分が淫獣にでもなったような気がして、いまだに官能の痺れに震える身体に李春は、まだ愕然としていた。

 

「穴倉の中に、木桶一杯の水と飯が置いてある。それと身体を拭くための布もな。それで身体の手入れをしたら休んでいい。それと、お前が調教を受けている間に、穴倉の隅に排便のための穴を掘らせておいた。今朝のような失敗はするなよ。必ず、用便は済ませておけ。いいな、李春」

 

 小太坊が言った。

 

「は、はい……」

 

 李春は、もう口答えをする気力もなく、ただそう頷いた。

 頭にあったのは、やっと今日は休めるのだという嬉しさだった。

 それに身体を拭くことを許されたというのが心の底からありがたかった。

 それに食事と水も……。

 李春は込みあがる悦びに涙が滲む気がした。

 

「その代わり、わかっているな、李春」

 

 小太坊が言った。

 

「わ、わかっています……。明日、頭領がここに戻って来られたら、わたしから肉棒に奉仕させてくれと言います」

 

 自分の口が喋っているのだが、それはまるで他人が喋っている言葉のような気がした。

 そんなことを自分が口にするとは信じられない思いだ。

 

 だが、李春はそれを承知したのだ。

 夕方近くになり、男たちの肉棒を口で抵抗なく受け入れるようになったときには、青おろちはもう屋敷に戻った後だった。

 それで、調教の成果を青おろちに示すことと引き換えに、身体を拭くための水と布、そして排便を穴倉ですることを許されたのだ。

 青おろちの肉棒を口で受け入れることなど、もはや、大した代償ではない。

 

 両側から後手縛りの縄を取られて立ちあがらされた。

 李春を取り囲むように、部屋を出る戸に向かわされる。よろめく身体を懸命に踏ん張って足を出す。

 そのとき、戸が反対側から開き、頭に布を巻いた男と鉢合わせした。

 

「あっ、李春」

 

 はっとした。

 眼の前にいたのは、あの七絶(ななぜつ)だ。

 山街道の峠で毒薬を使った奴隷狩りをやっていた酬いに、李春が両耳を剣で切り落としてやった男だ。

 また、痛々しげに頭に布を巻いている。

 

 七絶は、李春の顔を見るなり、いきなり平手で李春を張り飛ばした。

 顔をはたかれた李春は、そのまま後手の身体を床に飛ばされた。

 その身体に七絶が馬乗りになった。

 

「この女、よくも、殺してやる」

 

 七絶がふりあげた右手には、短刀が握られている。

 李春はぎょっとなった。

 

「待て、待て、七絶。勝手なことをするな」

 

 その七絶が、小太坊たちによって李春から引き離される。

 

「だ、だって、この耳を見てくださいよ、小太坊様──。こいつが斬り飛ばしやがったんですぜ。俺だって、この女の耳くらい削がなきゃ気が済みませんよ」

 

 李春から身体を離された七絶が泣き喚いた。

 

「まあ、気持ちはわかるがな」

 

 李春と七絶の間に入った小太坊が苦笑交じりの口調で言った。

 

「小太坊様、お願いです。この俺に、この李春の身柄を下げ渡してください」

 

 七絶は逆上しているようだった。

 そう言えば、この男については、耳を削ぎ落としただけじゃなく、男性の性器の根元を紐で結んで、木の枝に繋いで放置するということもやった。

 やったのは宝玄仙だが、耳を斬られるだけでなく、男としての尊厳を奪われるようなあのときの仕打ちに、怒り心頭にきているに違いない。

 

「そうはいかん、七絶。この李春は俺たち駝濫一家に立てついた罰として、仕置きの真っ最中だ。それが終わった後の行き先も決まっている。お前に渡すわけにはいかんな」

 

「じゃ、じゃあ、せめて耳を斬らせてください、小太坊様。その代わり、奴隷十人……いや、二十人を揃えてみせます」

 

「駄目だ、駄目だ、駄目だ。耳がなくなれば見てくれが落ちる。奴隷としての価値が下がるじゃねえか。女奴隷の耳を舐めるのが好きな男だっているんだ。こいつには、女の穴や尻穴だけじゃなく、あらゆる身体の場所を敏感な性感帯に仕込んで最高級の性奴隷にするつもりなんだ」

 

「だったら眼はどうです。眼の玉がなくたって、性奴隷の価値に変わりねえ。それどころか、眼の見えない性奴隷は、肌が敏感だから値打ちがあがるはずだ」

 

 小太坊は肩をすくめた。

 そして、まだ床に倒れたままの李春に視線を向ける。

 

「こりゃあ、李春。お前も余程、恨みを持たれたものだな。あちこちで、男を相手に喧嘩を売るからこんなことになるんだ──。まあ、俺としても、この李春にしてやられた者のひとりだ。この女に悔しい思いをしたのはわかる。じゃあ、どうだ、七絶。一級品の奴隷三人で手を打とうじゃねえか。恨みを晴らさせてやろう──」

 

 小太坊がなにか企んだ表情をしながら、李春と七絶に交互に視線を向ける。

 李春は、もうなにを言われても感情を動かすことはやめようと心を定めて、黙ったままでいた。

 

「ほ、本当ですか、小太坊様」

 

 七絶が喜色を迸らせたような声をあげた。

 

「まあな……。ただし、耳を削ぐだの、眼の玉をくり抜くだのの身体を傷つけるのは駄目だ。この女については、女奴隷として売り飛ばす可能性もある。だから、そういう商品価値が落ちるのは承知できねえ。しかし、こいつの陰毛ならいい。どうせ、奴隷にするときは、剃りあげたうえに、二度と毛が生えないように処置するからな。それでどうだ、七絶? 奴隷三人で、李春の陰毛を剃り放題だ」

 

「……奴隷五人出します。その代わり、こいつの股間の陰毛を一本残らず全部毟らせてください、小太坊様」

 

「決まりだな」

 

 小太坊がにやりと笑った。

 李春は、自分を前にして行われる残酷な話し合いに血の気が引く思いだった。

 無表情を装って感情が表に出ないように激情を耐えていたが、どうしても、頬が引きつったように強張るのを感じる。

 

「じゃあ、李春を部屋の中に戻せ。今度は柱に縛りつけろ」

 

 李春は再び部屋の真ん中に連れ戻された。部屋にはさっきまで調教を受けていた広間に連れ戻された。

 一日かけて、淫靡な責めを受け続けて、身も心も木端微塵に打ち砕かれている李春には、もう逆らいの態度どころか、口答えひとつする気力もない。

 

 部屋の中には、さまざまな調教のための設備があったが、大きな丸い柱もそのひとつのようだ。

 李春は、その太い柱に背中を押しつけられて厳しく縛りつけられた。

 さらに両脚が閉じられないように柱を挟むように繋ぎとめられる。

 再び手も足も動かないように身体を緊縛された李春は、唇を噛みしめて、これから行われる残酷な責めを覚悟した。

 

「こんなことになるのも、すべてお前の日頃の行いが悪いからだ。これからは、心を入れ替えて従順な女になるんだな」

 

 小太坊はせせら笑って、李春の太腿の内側を手のひらで擦った。

 そして、七絶に向かって頷く。

 すると小太坊に代わって、七絶が李春の正面に立った。

 その周りを小太坊を含めた男たちが取り囲む。

 

「さて、じゃあ、李春、どうか股間の陰毛をむしり取ってくれと俺に言いな」

 

 その七絶が勝ち誇ったような口調で言った。

 李春はそれには応じずに顔を俯かせたままでいた。

 すると、その李春の顎を掴んだ七絶が、無理矢理に顔を自分に向けさせた。

 

「ほら、李春、なんとか言えよ。陰毛を毟ってくれと言わねえか」

 

 李春は歯を食い縛ってこの仕打ちに耐え、強い視線で七絶を睨んだ。

 それが残酷無残な責めを拘束した女に繰り返すという卑怯な連中に対する李春の唯一残された反抗のようなものだった。

 

「なにも喋らねえつもりか、李春?」

 

 七絶が、なにかを企んでいるような余裕の表情を李春に向ける。

 

「……ねえ、小太坊様、李春の調教のために、俺が渡したあの油剤はまだ残っていますかねえ?」

 

 七絶が小太坊に視線を向けた。

 

「おお、残っているぜ。あの油剤の痒さは、さすがの李春も骨身に染みたらしいな。今日の午後からは、あの油剤を塗り足されるのがいいか、それとも、俺たちの珍棒をしゃぶるのがいいかと訊ねたら、お願いだから珍棒をしゃぶらせてくれと泣いて頼みやがったんだ。だから、予定よりも減っていないはずだ。まだ、随分残っているぜ」

 

 小太坊が部下に命じて、油剤の入った甕を李春の前に持ってこさせた。

 李春ははっとした。

 この二日間、李春を痒み責めの地獄に追い込んだ悪魔の油剤だ。

 この油剤を身体に塗られたら最後、発狂したような痒みが襲う。

 李春は、その痒みを癒してもらうために、女の尊厳も羞恥もなにもかも捨てて、身の毛もよだつような男たちに媚び続けた。あの薬は七絶の調合したものだったのだ。

 

 七絶は、その甕を手に持って、中に入っていた刷毛で、その油剤をすくって李春の眼の前にかざした。

 この油剤だけは嫌だ──。

 李春の全身に恐怖が走る。

 

「ど、どうか、り、李春の股間の陰毛を剃りあげてください」

 

 李春は慌てて言った。

 

「剃りあげてじゃねえよ。むしり取ってくれだろうが。ちゃんと言わねえと、これを残り全部塗りまくるぞ」

 

 七絶が怒鳴った。

 

「──り、李春の毛を……むしってください……」

 

 李春は血を吐くような気持ちで言った。

 そして、耐えきれなくなって、込みあがった感情のままに裸身を震わせて泣いた。

 しかし、そんな李春の哀れな様子が愉しいのか、七絶だけでなく、周囲の男たちが一斉に笑い声をあげた。

 

「そんなにこれが嫌か、李春?」

 

 七絶が腕に持った甕の油剤をもう一度李春の顔の前にかざした。

 

「そ、それだけは……」

 

 李春の身体は本当に震えていた。

 これだけは本当に怖い。

 体が引き裂かれるようなあの痒みから逃れるためなら、もう李春はどんなことでもできた。

 自分を苛む男たちの肉棒を口で奉仕する屈辱など、この油剤で与えられる痒みに比べればどうということはなかった。

 

「じゃあ、たっぷりと塗ってやるぜ」

 

「ひいいっ」

 

 七絶は笑いながらたっぷりと油剤を吸い込んだ刷毛を李春の無防備な股間に塗りつけた。

 

「そ、そんなあ──ああっ……い、嫌……だ、誰か……誰か助けて──ひいっ──」

 

 李春は股間にあの悪魔の薬剤が塗られる感触に悲鳴をあげた。

 周囲の男たちがまた一斉に哄笑する。

 

「まあ、痒みくらいないと、陰毛をむしり取られる痛みには耐えられないと思うぜ。なにしろ、ここの毛をむしられるのは、相当に痛いらしいからな。李春、これから、お前は、何刻もかけて、それを一本残らず抜き取られるんだぜ」

 

 七絶が言った。

 そして、李春の股間を七絶の手が這い回り始めた。

 李春は歯を食い縛って、その感触に耐えた。

 

 さっき塗られたばかりの媚薬は、もう効果を及ぼし始めている。

 しかし、いまの疼きのような刺激はまだまだ序の口だ。

 これがもうすぐ発狂するような痒みになる。

 そうなれば、李春に残された理性は消滅する。

 もう、そこまで来ている。

 李春は、すでに塗られてしまった新たな油剤によって陥るであろう自分の痴態に怯えた。

 七絶の指が李春の陰毛を強く掴んだのがわかった。

 

「はがあっ」

 

 股間に激痛が走る。

 刃物で刺されるような激痛だ。

 あまりの痛さに顔が歪み、涙が顔を伝い落ちる。

 七絶がこれみよがしに、手のひらを李春にかざした。

 その指に李春の陰毛が数本挟まっている。

 

「もう一度だ」

 

 李春の股間に七絶の手が伸びる。

 

「あぎいっ」

 

 李春は今度も悲鳴をあげた。

 七絶が心から嬉しそうな顔をして、縮れ毛を再び李春の前にかざす。

 

「しかし、こりゃあ、さすがに俺ひとりじゃあ骨が折れる仕事だ。よかったら周りの皆さんも手伝ってくれませんか?」

 

 七絶が笑いながら言った。

 

「そうだな。じゃあ、お前たち、よってたかって李春の股間から毛を引き抜け。一本残らずな」

 

 小太坊が声をあげた。

 周囲の男たちが一斉に柱を背にして縛られている李春の股間に伸びる。

 李春は悲鳴をあげた。

 

 次から次に男たちの手が伸びて、李春の股間から陰毛が引き抜かれる。

 李春は、あまりの苦痛に恥も外聞もなく泣き喚いた。

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