※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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274 淫女の優等生

「い、いい子だから……お、大人しく──しな……。き、気持ちよくしてやるよ」

 

 孫空女が言いながら、家の中心にある柱に、素っ裸のまま立ち縛りで拘束されている長女金(ちょうじょきん)の太腿あたりを優しく撫ぜた。

 

「なに、たどたどしい言い回しをしてるんだよ、孫空女──。長女金の陰毛をまさぐってやりな。甘い声のひとつも出させてやらなきゃ可哀そうだろうが」

 

 宝玄仙は、苦笑しながら叱咤した。

 

「そうですよ、孫姉さん。たっぷりと女陰を濡らせてあげないと卵なんて咥えられませんよ」

 

「う、うるさいよ、朱姫──。お、お前まで一緒に言うんじゃないよ」

 

 腰を覆う下着姿だけの孫空女が真っ赤な顔をして朱姫を睨んだ。

 孫空女がやっているのは、長女金に対する調教だ。

 

 長女金を結界牢から救出したのはいいが、問題はこれからどうするかだ。

 当然、朱紫(しゅし)国の城郭軍は逃亡した長女金を探すだろうし、襲撃をした宝玄仙たち四人の行方も追うだろう。

 孫空女はあっという間に詰所の兵は倒したから、連中はなにも見ていないはずだというが、その辺りを確認する必要がある。

 

 それで、あらかじめ見つけておいた国都郊外の貸し家だが、二日前にしばらく借りるという手続きは終わっている。

 幸いにも李春から貰った路銀がたっぷりある。

 古い家を一軒を借りるくらいの金は十分にあって、三箇月の契約の前渡しで大家に支払いを済ませている。

 三箇月も逗留する予定はないが、余分な金は口封じのためだ。

 

 もっともそういうことを宝玄仙自身が考えたわけではない。

 すべて沙那が事前に手配した。

 ここに当面の食料と寝具などを準備したのも沙那だ。

 その沙那は、いまは、もう一度、あの宿町に戻って、結界牢を逃亡した囚人を追う軍の動きを探っている。

 宝玄仙は、孫空女と朱姫とともに長女金を連れて準備してあるこの家にやってきて結界を張っただけだ。

 

 そして、ただ、待つのも退屈なので、孫空女に命じて長女金を責めさせている。

 しかし、嗜虐など馴れていない孫空女は、あまりにたどたどしく、調教者としては酷いものだった。

 それで、罰として下着一枚にさせた。

 孫空女は乳房を剝き出しにして、汗びっしょりになり長女金を責めている。

 それはそれで面白い見世物だ。

 

「ああ、いや、いやよ……やめて──」

 

 孫空女の手が長女金の股間を探ると、長女金が狂気したように腰を揺さぶった。

 川で磨き立てた長女金は、今朝まで動物のように結界牢でうごめいていたとは信じられないくらいに美しく艶めかしい身体をしていた。

 それとも、二年間の男囚との性交続きの生活が長女金の身体を淫靡でいやらしいものに変えたのだろうか。

 

「そ、そんなに固くなるんじゃないよ──、長女金……。ええっと……た、たっぷりと潮を噴き出すんだよ。そ、そうでないと卵が入らないよ」

 

 孫空女の手は長女金の股間を撫でさすり、揉みほぐすように動いている。長女金が首を激しく振って悲鳴をあげた。

 その身体は真っ赤だ。

 

 長女金は、ああやってこの家の真ん中の柱に立ち縛りで拘束されてから、孫空女に責められ始める前に、宝玄仙と朱姫の手管による刺激をしばらく受けている。

 すでにすっかりと身体は燃えあがっているはずだ。

 

「く、悔しい──。こ、こんなことされるなんて」

 

 長女金は身悶えしながら絶叫した。

 孫空女が驚いたように手を引っ込めた。

 

「えっ? そ、そんなに嫌なの、長女金?」

 

 孫空女は動揺した表情でおろおろした。

 すると縛られている長女金がぷっと噴き出す。

 

「お前、馬鹿かい、孫空女──。長女金が演技してくれているのがわからないのかい。さっきから、何回同じことを繰り返せば済むんだよ──。長女金がわたしらに身体を許すのも、弄くらせるのも納得済みだ」

 

「ぷっ」

 

 すると、たったいままで、悲痛な表情をしていた長女金が耐えきれなくなったように吹き出す。

 それを見て、孫空女ますます顔を赤くした。

 

「だけど、それじゃあ、面白くないから、嫌々いたぶられている演技をしろとわたしが言ったからそうしているんだよ。眼の前でそうやって、わたしと話しながら、長女金が、朱姫に柱に身体を縛らせたのをお前も見てたんだろうが」

 

 宝玄仙は座ったまま怒鳴った。横で朱姫が大笑いしている。

 

「ご、ごめんよ、ご主人様──。で、でも、あたしはこんなことを馴れてないんだよ」

 

「ぐずぐず言うんじゃない、孫空女。さっさと続きをやりな」

 

 宝玄仙はわざと怒りを込めた表情で大きな声をあげた。

 だが、内心は笑いをこらえるので必死だ。

 これでは、長女金をいたぶっているはずの孫空女が嗜虐されているようなものだ。

 孫空女は顔に汗をいっぱいにかいて、苦しそうな表情までしている。

 

「そうですよ、孫空女さん。さっきも言いましたけど、こんな汚れた身体でよければ、いくらでも苛めて遊んでください。わたしを救いだしてくれたお礼です」

 

 長女金が笑顔のまま、孫空女に話しかけた。

 

「長女金さんの身体は、汚れてなんかいませんよ。とても素敵な身体です」

 

 朱姫が言った。

 

「ありがとう、朱姫さん。とにかく、孫空女さん、どうかいくらでもわたしを責めてください。なんの心配もいりません」

 

「う、うん」

 

 孫空女が頷く。

 

「待ちな、孫空女──。罰だよ。その一枚残っているのも脱ぎな」

 

 宝玄仙は言った。

 

「そ、そんな……。これは許してよ、ご主人様。これ脱いだら、あたし嗜虐しているのか、されているのかわかんないじゃないか」

 

 孫空女が抗議した。

 

「だったらましな責めをして見せな、孫空女。ちゃんとしたご主人様の演技ができたら下着を返してやるよ」

 

 宝玄仙の言葉で渋々孫空女が股間に履いている下着を脱ぐ。

 すると、朱姫がこっそりと孫空女に寄って、背後からさっと孫空女から下着を奪った。

 

「あっ──。な、なにすんだよ、朱姫」

 

 孫空女がますます真っ赤な顔をして叫んだ。

 

「やっぱり……。孫姉さん、少し興奮していたんですよ。見てください、お股のところがぐっしょり──」

 

 朱姫が孫空女から取りあげた下着をはぐって宝玄仙に見せにきた。

 

「か、返せ、朱姫──」

 

 孫空女が朱姫に掴みかかるようにして下着を奪い返そうとした。

 それを朱姫がさっと避ける。

 

 孫空女の動きであれば、本来は朱姫が身体をかわせるわけはないのだが、余程に興奮していたのだろう。

 孫空女の手は空を切った。

 その孫空女の裸身の横腹を朱姫がとんと突いた。

 

「ひんっ」

 

 孫空女が突然股間を抑えてしゃがみ込んだ。

 そして、そのまま股間を押さえてうずくまった。

 

「や、やめなよ、朱姫──ひいっ……ひぐうっ──」

 

 股間を押さえたまま孫空女が悲鳴をあげた。

 よく見ると孫空女の股間の前後に朱姫の『影手』が五、六枚張りついている。

 その手が孫空女の股間を責めたてているようだ。

 

「まだ、やりますか、孫姉さん?」

 

 朱姫が少し離れた場所で孫空女をからかうように言った。

 

「も、もうやらないよ──。わ、わかったから、やめてぇ──」

 

 孫空女が股間とお尻を手で押さえたみっともない恰好のまま、身体を横倒しにして悶えた。

 

「み、皆さん、本当に仲がいいですねえ……」

 

 柱に拘束されている長女金が感心したような声をあげた。

 

「ほら、孫空女、持ち場に戻りな。長女金が退屈しているじゃないか」

 

 宝玄仙は苦笑して孫空女に声をかけた。

 すると孫空女が脱力したように身体の緊張を解いた。

 どうやら、朱姫の『影手』が消滅したようだ。

 

「やり方を変えるよ、孫空女。じゃあ、わたしの命令の通りに動きな──。まずは、口づけだ。長女金の口に奉仕するように舌で責めるんだ」

 

 宝玄仙の命令で孫空女は立ちあがる。

 孫空女の口が長女金の唇に上から重なる。

 

 舌で口中を奉仕するやり方は、孫空女に教え込んでいる。

 長女金の肌から汗がみるみる滲み出て、肌が赤くなる。

 そして、鼻を鳴らすような声も出しはじめた。

 重なった唇の隙間から孫空女と長女金の唾液が流れて、長女金の裸身に垂れる。

 

「口づけを続けたまま、片手で胸を揉むんだよ。もうひとつの手は股間だ、孫空女」

 

 孫空女の片方の手のひらが長女金の胸をまさぐり、もう一方の手が股間に伸ばされた。

 だんだんと身体が溶けてきた様子の長女金の身体は、演技ではない興奮状態を示し始める。

 責められている口から切なげな甘い声が激しく漏れだす。

 

「もういいだろう……。股に卵を咥えさせな、孫空女」

 

「うん」

 

 孫空女がうっとりとした表情で長女金から口を離した。

 お互いに口をむさぼったことで、長女金だけじゃなく、孫空女も熟れきってしまったようだ。

 見なくても孫空女の股間が愛液でびっしょりと濡れているのが匂いでわかる。

 

 孫空女が長女金の足元の籠に入っている卵を手に取る。

 横に小さな容器があり、卵の表面に塗る油が入っている。

 長女金が結界牢の中にいる間に覚えた技だという卵を割る芸をさせるのだ。

 長女金は、一緒にいた男囚を悦ばせるために、一箇月に一度くらいの周期で与えられる卵で、膣で卵を割る技を覚えたというのだ。

 

 あの環境で男囚たちに蔑まれるのではなく、慕われていたというのだから驚きだ。

 だが、確かに結界牢を襲ったとき、一緒にいた男囚たちは長女金と別れるのが悲しそうな表情をしていた。

 二年の間、長女金と一緒にいた死刑囚の男囚は、ほとんどそのまま国都の広場で処刑されているようだ。

 

 だが、その死んだ彼らが短い期間、生活と肌を共にした長女金の優しさと素晴らしさを最期の最後に吹聴した。

 そして、それを処刑場に詰めかけて群衆に混じっていた遺された家族や仲間が耳にした。

 そうやっているうちに、賊徒の世界で長女金の名は、半ば伝説的な不思議なものになっていったようだ。

 

「い、いくよ、長女金」

 

「は、はい、孫空女さん」

 

 立ち縛りに拘束されている長女金が股間を突きだした。

 孫空女がその股間に卵をあてがう。

 

「も、もっと、強く押して……」

 

 長女金がじれったそうに言った。

 孫空女がこわごわとした仕草で卵を長女金の股間に押し入れていく。

 長女金は、さらに股間を前に出して、女陰の口をぱっくりと開いて卵を吸い込んだ。

 

「す、凄い……」

 

 横の朱姫も驚嘆した声をあげた。

 三人の供には、卵や玉を飲み込む技を教えてはいるが、あんなにあっという間には吸い込むことはできない。

 自分たちもやらされているだけに、長女金の膣の動きが普通でないということがわかるのだ。

 

「わ、割ります──」

 

 長女金が上気した顔をあげた。

 歯を食い縛るようにしかめる。

 そして、狂ったように腰を前後に振った。

 やがて、小さな音が長女金の股間から聞こえた。

 

「しゅ、朱姫が舐めとりますね」

 

 すっかりと長女金にのまれた様子の朱姫がよろめくように立ちあがった。

 長女金の股間に口をつける。

 そして、流れ落ちる卵の中身をすすりはじめる。

 

「ああ……朱姫さん……そ、そんなにしないで──。か、感じちゃう……」

 

 長女金が甘い声を出して身体をくねらせはじめる。

 朱姫の口が、長女金の股間から流れ落ちる卵の中身をすすりあげる音がした。

 

「ちょ、ちょっと待って、朱姫さん……。か、殻を……殻を出すから……」

 

 長女金のこの言葉で、朱姫が長女金の股間から口を離した。

 宝玄仙も長女金に近寄って長女金の股間を見守る。

 

「手を……手を下に……」

 

 長女金が悶えながら言った。

 朱姫が長女金の開いた股間に手を入れると、愛液に混じった卵の殻がどっと外に流れ出た。

 これには宝玄仙も驚いた。

 

「ほ、本当に結界牢で憶えた技かい? お前、国軍の女将校だったというのは嘘で、その道の玄人だったんじゃないのかい?」

 

 宝玄仙は本気で言った。

 

「まさか……」

 

 長女金が笑った。

 

「じゃあ、朱姫がきれいにしますね」

 

 再び朱姫が長女金の股間に舌を伸ばした。

 舌で長女金の肉芽と女陰の中に舌で責めたてる。

 

「ひぐっ」

 

 たちまち長女金が悲鳴のような声をあげた。

 やがて、身体がぶるぶると震えだす。

 

 そして、ひと際大きな嬌声をあげて身体をくねらせた。

 軽くいったようだ。

 

「可愛いですね、長女金さん」

 

 悪戯っ子のような表情を浮かべた朱姫が、やっと長女金の股間から口を離して言った。

 そのとき、廃屋の入口に誰かがやってくる気配がした。

 

 声がかけられて、それが外に情報を集めにいっていた沙那だとわかった。

 宝玄仙は結界を緩めて沙那を廃屋の中に通した。

 

「な、な、なにをしているんですか、みんな──。長女金さんを縛ったりして──」

 

 沙那がつんざくような大声で叫んだ。

 沙那が出ていくとき、長女金は、まだ与えた服を普通に着ていて食事をしていたところであり、こんな風に裸で柱に拘束されたりはしていなかった。

 礼をさせて欲しいという長女金に、だったら宝玄仙の嗜虐の相手をしろと言い、長女金があっさりと承諾をしたのは、沙那が出ていってからだ。

 

「お帰りなさい、沙那さん……。沙那さんにもお見せしましょうか? 長女金の卵芸ですけど」

 

 長女金がからかうような口調で沙那に向かって言った。

 沙那が眼を白黒した。

 

「さっさと報告しな、沙那。これからどうするんだい? すぐに逃げなきゃいけないのかい? それとも、ここでしばらく隠れていた方がいいのかい?」

 

「し、しばらく隠れていればほとぼりは覚めると思います、ご主人様。多分、三日もあれば……。詳しく申し上げますと……」

 

「詳しくなんていらないよ。それだけ聞けば十分だ。お前も服を脱ぎな。それと朱姫、長女金の縄を解くんだ。珍しいものを見せてくれたお礼に、沙那と孫空女を長女金に責めさせてやるよ」

 

 宝玄仙はそう言いながら自分の服を脱ぎだす。

 

「えっ──。ど、どういうことですか、ご主人様?」

 

 沙那が狼狽えた声をあげた。

 

 

 *

 

 

「ひゃ、ひゃあ……ひゃあああ──」

 

 沙那は、胡坐縛りで拘束されている不自由な身体を床の上でのたうたせた。

 

「相変わらず感じやすい身体ですね、沙那さん」

 

 長女金がからかうように言いながら持っている操作具となっている板を触った。

 股間に埋められている張形の振動がとまり、沙那は脱力して顔をうな垂らせた。

 

 沙那は股間に革帯をつけられて、腕を背中で組まされてそれを縄でしっかりと拘束されている。

 脚は胡坐だ。

 その胡坐縛りの姿勢を崩すことができないように縄で縛られているのだ。

 

 そんな格好の沙那を責めたてているのは長女金だ。

 長女金がもっている小さな板は宝玄仙が作った霊具であり、その板は、沙那が股間と肛門に挿入されている張形に連動しているのだ。

 そして、さっきから長女金が、その板を使って沙那の体内に押し込められている張形を動かしたり、とめたりして、沙那を責めているのだ。

 

 ここに居ついてから二日が経っている。

 

 沙那は、毎日のように外に行っては、結界罠が破られて脱走した囚人の取り締まりの様子を探っていた。

 宿町だけでなく、国都でも王宮道術師の施した結界牢が破られたことは大きな話題になっているようだった。

 あれほどひっそりしていた宿町の結界罠の周辺も、長女金が脱走したという話を聞きつけた多くの野次馬が集まっていた。

 

 軍もいた。

 ただ、結界罠がどうして破られたかということに捜査は終始していて、逃亡囚人そのものを深く追いかけようという様子はない。

 おざなりに主要な道路の要所に検問が作られたが、丁寧に調べようという気配はなく、多少の賂であっさりと通過できる。

 手配されているのは長女金とふたりの男囚だけで、沙那たち四人は捜査の対象にはなっていない。

 やはり、孫空女が言った通り、孫空女が打ち倒した見張りの兵は、沙那たちの顔を見ていなかった。

 そういうことは、うろうろしている兵や役人にそれとなく訊いていてわかった。

 

 とにかく、ほとぼりさえ晴れれば、すぐに忘れ去ってくれそうな雰囲気だった。

 兵にしても、宿町の市民たちと同じように長女金の境遇は気の毒に考えていた者が多く、万が一、長女金を見つけた者がいても、真面目に届けようとする者もいそうにない。

 第一、今回の事件には賞金が出ていない。

 朱紫国の当局がこの事件を大して重く考えていない証拠だ。

 あるいは、結界牢が破られたという事実を大きくしたくないということか……。

 

 長女金は、二年もあんな状況で晒し刑になっていたにしては、明るく知的な女性だった。

 自分の境遇を受け入れ、狂うことも荒むこともなく生きてきた。

 そして、男囚たちに身体を進んで提供することで、彼らの心に自分の存在を植え付けた。

 不思議な女性だ。

 

 いまも、宝玄仙が求めればいくらでも情事の相手をする。

 宝玄仙の変態的な性癖に対しても、少しも嫌そうな仕草はない。

 むしろ喜々としているようにも見える。

 長女金は、相手が喜ぶことをしてあげるのが好きだという本質的な優しさがあるようだ。

 

 被虐の相手になれと言われれば、哀れな声で泣き叫ぶ演技をして宝玄仙を悦ばせるし、嗜虐をしろと言われれば、陰湿な調教師のふりをして容赦なく沙那や孫空女を責めたてて、それもまた、宝玄仙を嬉しがらせる。

 いまは、孫空女と朱姫が夕食の支度をするあいだ、宝玄仙の命令によって、長女金が沙那を責めているのだ。

 

「沙那、うな垂れていないでなんとか言いな」

 

 宝玄仙だ。

 宝玄仙はそばの椅子に座り、そんな沙那と長女金を見物しているのだ。

 長女金は、その宝玄仙を満足させるために、調教師の演技をして沙那を責めているというわけだ。

 沙那にとっては堪らないことではあるが……。

 

「沙那は、本当のところ前が好きなのかな? それとも後ろかな?」

 

 長女金が沙那の顔を覗き込むような仕草をしながら、持っている板に触れた。

 しばらくとまっていた股間の霊具が動きはじめる。

 膣だけじゃなく肉芽にも振動が伝わるようになっている。

 それがだんだんと強くなっていく。

 

「ひい……ああ……ああっ──あ、あ、ああっ」

 

 自然と声が出る。沙那は身体を震わせた。

 

「ねえ、教えてよ、沙那。どっちが感じるの? 前?」

 

「うくっ……」

 

 身体をよじらせるようにしながら沙那は、胡坐縛りで拘束されている身体をくねらせる。

 股間の張形が淫らな官能の波をかきたてる。

 

「それとも後ろ?」

 

 振動が切り替わり、肛門深くにねじ込まれている張形が振動しはじめる。

 

「いやあっ」

 

 身体が自然にがくんと仰け反った。

 肛門から恐ろしいほどの快感が拡がる。

 身体が震えが激しくなる。

 

 もう、少しも耐えられない。

 達しそうだ……。

 

「やっぱり、両方ね」

 

 前後の張形が同時に激しく動き出した。

 

「いくうっ──」

 

 激しい快感の波が沙那を襲い沙那は絶頂して果てた。

 大きく身体を仰向けに仰け反らせた反動で、ひっくり返りそうになった身体を長女金の手が支える。

 

「呆れた淫乱ぶりね、沙那」

 

 長女金が嘲笑うような声で言った。

 演技だとわかっていても、さすがに沙那は恥ずかしくなり、思わず長金女から顔を隠す。

 

「長女金、お前は本当になんでもできるねえ。気にいったよ」

 

 部屋の隅でずっと見守っていた宝玄仙が拍手をして笑った。

 

「じゃあ、もう、沙那さんの縄を解いてもいいですか、宝玄仙さん?」

 

「ああ、いいとも。そろそろ、食事の支度も終わったろうからね」

 

 宝玄仙が言った。

 

「大丈夫? わたしのことが憎たらしく思ったら仕返しをしてもいいわよ。今度は、わたしが縛られようか、沙那さん?」

 

 長女金が心配そうに言う。

 

「け、結構よ……」

 

 沙那は言った。

 すると宝玄仙がなぜかまた笑い出した。

 

 

 *

 

 

 長女金が出立するという朝がやってきた。

 宝玄仙は名残惜しそうだったが、長女金は決心した。

 

 沙那は、昨日で検問はなくなったから、おそらく大丈夫ではないかと言っていたし、長女金としては、これ以上、この廃屋に滞在する理由はなにもなかった。

 あるとすれば、この四人と離れがたい気分になっているということだったが、それは危険なことだと思った。

 沙那の口ぶりによれば、少なくとも手配されているのは長女金であり、あの結界牢を襲撃で四人は顔を見られてはおらず、軍がどんなに探そうにも宝玄仙たち四人を手配することはなさそうだった。

 だが、長女金と一緒でいるところを見つけられたら別だ。

 

 なぜ、四人が長女金を匿っているのかということになり、襲撃犯が彼女たちだと簡単に判明してしまうだろう。

 命の恩人とも言える四人をそんな目に遭わせるわけにはいない。

 

「このまま、国都から離れる方向に向かえば大丈夫よ。それは確認しているわ。間違っても、国都に向かっては駄目よ」

 

「わかったわ、沙那さん」

 

 長女金は言った。

 沙那にはいろいろと世話になった。

 手配されているので外に出られない長女金のために、何度も宿町や国都に足を運んで安全を確かめてくれもした。

 

 生真面目で優しいが性には弱い。

 宝玄仙に強要されて沙那を長女金が責めたときでも、つたない長女金の責めで、何度も泣きながら果て続けた。

 普段の知的な雰囲気と情事のときの乱れ方の差が激しく、不思議な魅力を持った女性だと長女金は思った。

 

 長女金は、傭兵風の身なりで顔に偽物の口髭をつけている。

 化粧も細工して知人が見ても長女金であることがわからないほどの出来栄えだった。

 手先の器用な朱姫と孫空女が、男に見せる化粧の仕方を教えてくれて、必要な道具を渡してくれたのだ。

 

 長女金は、家を出てからの見送りは断固して固辞した。

 この家の外に出るときは必ずひとりでと決めていた。

 どこに役人の眼があるかわからないのだ。

 

 宝玄仙は、長女金に対して、路銀だと言って金粒の入った袋を渡してくれた。

 長女金はこれ以上の恩を受けるわけにはいかないと思って一度断ったが、強引に渡された。

 それに、路銀はこれから故郷に向かって旅をしようと考えている長女金には必要なものだった。

 無一文で旅をするなら、物を盗むか、人を傷つけながら旅をすることになるかもしれない。

 路銀があればそれが避けられるのだ。

 

「なにからなにまでありがとうございます、皆さん」

 

 長女金は頭を下げた。

 

「まあ、気にしないことだよ、長女金。これは、あたしらのご主人様の気紛れさ」

 

 孫空女だ。

 素手で十名近くの軍兵を一瞬で気絶させるほどの武芸の持ち主でありながら、正直者で少しも偉ぶったところがない。

 宝玄仙に命じられても少しも嗜虐者の演技ができずにたじたじになる様子は、背の高い孫空女が本当に可愛らしく感じた。

 そして、やっぱり快楽に弱く、特に被虐的な責めには激しく淫情を弾けさせた。

 

「しばらくあたしたちと一緒に旅をすればいいじゃないですか、長女金さん」

 

 朱姫が言った。

 

「そうはいかないわよ、朱姫さん。お世話になったわね」

 

 無邪気で大人ませした少女のように見える朱姫だが、実は道術の影響でそう見えるだけで、もう大人であるらしい。

 姉さんと呼んでいる沙那や孫空女を激しく陰湿に責めたてるのは驚くほどだが、それでいて、しっかりとふたりの妹分として普段は振る舞っている。

 宝玄仙を責めるという場面もこの四日で数度あったが、沙那と孫空女が宝玄仙を責めることを遠慮するのに比べて、朱姫は激しく冷酷に宝玄仙を嗜虐的に責めたりもしていた。

 

 長女金は、この一行における朱姫の立場というのがいまだによくわからない。

 そして、もうひとつ驚くべきことは、この無邪気な少女のような朱姫が、実は、かなりの上級の道術師であることだ。

 宮廷道術師と接することが多かった長女金も見たことのないような道術を簡単に使いこなしている。

 

「それではいきます。恩を返すことなど不可能でしょうから、遠慮なく恩をお受けします。わたしがここにこうしているのは、宝玄仙さんをはじめ皆さんのお陰です」

 

 長女金はもう一度深く宝玄仙に向かって頭を下げた。

 

「孫空女の言う通りさ。これはわたしの気紛れであり、お前は、この宝玄仙の気紛れに巻き込まれただけさ。じゃあ元気でね」

 

 宝玄仙が白い歯を見せた。

 

 外に出た──。

 自由だ……。

 

 二年──。

 

 二年もあそこに晒し者になって閉じ込められていた。

 もう、ここを出ることなどないと思っていた。

 出るときは、処刑のために連れ出されるときだけだと……。

 

 行き交う人々も長女金のことを気にする者はいない。

 長女金は自由を噛みしめながら数日間過ごした国都郊外の家から、街道に向かう道を歩いた。

 

 しばらく路地を進むと国都とも結ぶ街道に出た。

 右に進むと国都、左に進めば郊外を抜けて地方に向かう街道に繋がる。

 そこから北に向かう道を選べば故郷だ。

 

 長女金は立ちどまった。

 沙那には真っ直ぐに国境に向かうのは危険だろうとも言われている。

 だから、しばらく旅をするのだ。

 

 最終的な目的地は決めている。故郷だ──。

 二年前まで長女金は、国都の国軍の女人隊に属する将来を嘱望された軍人だった。

 それが、初めてもいえる重要な任務で、警護対象の金聖姫(きんせいき)が妖魔の賽太歳(さいたいさい)に浚われるのを許し、責任を追及されて、怒り狂った国王自ら死刑を言い渡された。

 そして、死刑に先立つ晒し刑は三年とも告げられた──。

 

 男囚と同じ結界牢に放り込まれて、大勢の市民に囲まれる野外で男囚に犯されるのを見物される恥辱……。

 

 もはや人間であることすらなくなったと思っていたが、あの結界牢で長女金は、処刑されるためにやってくる男囚たちと正面から付き合うことで、再び人間を取り戻していった。

 考えてみれば、それは不思議な気持ちだ。

 

 いずれにしても、あの結界牢の日々は、すべてがつらいものではなかった。

 長女金は、あの動物のような扱いの中でしっかりと愉しさも見出したし、人の情も味わうことができた。

 そして、男囚たちと交わした快楽も悪いものではなかった……。

 

 右に行けば国都、左に行けば逆──。

 長女金は迷っていた。

 

 すっかりと未練のないはずの国都だが、ただひとつだけ、長女金には気になるものがあった。

 それは懐に隠していた手紙にあった。

 

 宝玄仙たちと過ごす数日の間にしたためた一通の手紙だ。

 署名はない。

 

 書いたのは、二年前に金聖姫が浚われたときのことだ。

 二年前には、国王の怒りが激しく、長女金はなんの釈明も許されないまま、結界牢に放り込まれた。

 だから、長女金が知っている事実を伝える機会がなかったのだ。

 あのときの長女金が見たもの──。

 

 二年間にわたる結界牢の生活の中で、長女金は嫡女を失った国王が心労の余り病に臥せっているとういう噂を外からやって来る男囚から聞いていた。

 国王とはいえひとりの父親だ。

 妖魔に娘を浚われた心の痛みは理解できる。

 

 そして、もしかしたら、浚われた金聖姫を探す手掛かりとして、長女金の知識が役に立つのではないかと思った。

 金聖姫を国都に戻すことができれば国王の心労は癒されるのだ。

 

 二年前──。

 

 金聖姫が妖魔の賽太歳に浚われる瞬間、そっと妖魔の賽太歳の手を握った。あのとき金聖姫の表情は間違いなく恋をする乙女のものだ。

 そして、侍女にして道術師の春嬌(しゅんきょう)──。

 

 あの日の春嬌の態度や命令は、常の春嬌からすれば不自然なものだらけだった。

 あれをどう考えればいいのか……。

 

 長女金は考え続けた。

 考える時間は幾らでもあった。

 

 それで到達した結論は、あの妖魔による誘拐というのが茶番であるということだ。

 理由はわからないが、あの日の妖魔の出現は、金聖姫と春嬌にとっては予期のものであったに違いない。

 つまり狂言なのだ。

 

 少なくとも春嬌は、妖魔が出現するのを知っていたし、むしろ、その出現に合わせてあの行軍をゆっくりと動かした。

 金聖姫も自分が浚われるのを承知して、それに協力した──。

 

 それが、長女金が達した結論だ。

 

 心労に倒れているという国王にそれを告げたい。

 役に立つ情報かどうかはわからないが、賽太歳という妖魔の棲む場所はいまだに不明であるらしい。

 それも男囚たちの話で知った。

 春嬌がいた周辺を探れば、なにかの手掛かりも見つかるかもしれない。

 それを記した手紙が懐に入っている。

 それをなんらかの方法で渡せれば……。

 

 しかし、一方で思う…。

 そこまでする義理があるだろうか……。

 

 心労で倒れているとはいえ、長女金をあんな結界牢に押しやることを決定し、衣類を引きはがして大勢の民衆が集まる街道を全裸で歩かせて長女金を辱め、すぐには殺さず男囚を同じ結界牢で晒すことで長女金の尊厳を貶めたのはその国王なのだ。

 

 長女金は迷っていた……。

 しかし、この変装であれば長女金であることなどばれようもないはずだ。

 

 迷った挙句に、長女金は街道を出て、歩みを進めた。

 

 右に──。

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