脚を踏み出すたびに激しい快感が揺さぶられる。
自分の歩みで身体が揺れる振動が、絶頂寸前の宝玉の身体を刺激するのだ。
一歩進むたびに甘い息と声を出させられる。
やっと終わった……。
拷問部屋における責めが終わり、牢に連れて行かれるというのだ。
安堵の気持ちはない。
あるのは絶頂寸前の甘い疼きだけだ。
責められて、責められて、責められ続けて一度も達しさせてもらえなかった。
首に嵌められた霊具のせいだ。
宝玉は、冷たい石畳を感じながら薄暗い営牢の廊下を後手縛りのまま歩かされていた。
両脇を
このふたりに対する恨みのような感情もある。
有来有去に責められている最中にやってきて、口で奉仕すれば少しだけ首輪を外してやると言ってきたのだ。
疼く身体に耐えきれなくて奉仕した。
しかし、ふたりとも宝玉の行為を嘲笑いながらそのまま立ち去った。
そのふたりに両脇を抱えられている。
どこをどう歩いたかわからない。
軍営の地下だと思われるここは、薄暗くて道が迷路のように入り組んでいた。
幾つかの階段を上がったり、下りたりしながら宝玉はどこかに連れて行かれた。
「ああ……、も、もう……」
宝玉は知らず呻いた。絶頂直前の快感が全身を渦巻いている。
こんなこと耐えられない……。
息をするだけで達しそうだ。
しかし、いけない。
いけそうでいけないのだ。
この責めで、闘勝仙のときも完全にその軍門に下った。
すべてを投げ捨て、あらゆる道術契約に合意して、完全な奴隷になることを誓わされた。
いや、自ら望んで誓った……。
ただ一度の絶頂のために、なんでも甘んじた。
それがどういうことになるかなどどうでもよかった。
焦らし責めから解放させてもらうために、永遠の奴隷になることを求め泣いたのだ。
すべてを諦めたときのあのときの感情はよく覚えている。
他人に完全に支配される。
その向こうの大きな快美感も知っている。
もしも、宝玄仙という人格が出現して、闘勝仙たちを殺さなかったら、自分はいまでも、あの帝都で奴隷以下の生活を送っていたに違いない。
「堪え性がない雌だな。もうすぐ、お前に相応しい特別な営舎に着くぞ」
ふたりのうちのひとりが言った。
「あ、ああ……」
そんなことを言われても、理性ではどうにもならない快感の疼きに襲われている。
永遠に続くかと思われるような霊具による尻責めだった。
霊具の張形が繰り返し、繰り返し、肛門の中で直腸の限界まで突くように伸びたかと思うと、それが肛門の入口部分まで存在を失くすように縮んでいく。
その間に、振動と回転とうねりの運動を繰り返す。
宝玉が構えることができないように、常にその動きは変化する。
さらに運動を続ける時間についても不規則だ。
停止したかと思えば、動き出したり、それが突然にまた停止したりする。
あるいは、一刻(約一時間)も停止することなく動き続けたりもした。
どのくらいの時間続けられたのか宝玉にはまったくわからなかった。
宝玉にとっては、数日間かと思われるような長い時間であったことは確かだ。
だが、実際には半日にも満たない時間にすぎなかったようだ。
朝に始まった責めが、陽が落ちることで終わった。それくらいの時間だったらしい。
いきなり、周囲から爆発するような歓声があがった。
びっくりした宝玉は顔をあげて、愕然とした。
両側には多くの男囚を詰め込んだ牢が迫っていた。
廊下に面する壁は石壁ではなく、鉄の格子で閉ざされただけの牢だ。
それぞれの牢には十数人の男の囚人が入れられている。
その牢舎が十棟ほど並んだ場所に連れてこられたのだ。
一斉にあがった歓声は、その男囚ばかりが集められた牢舎を通る廊下を素裸で後手に拘束された宝玄仙が連れてこられたからだ。
「こ、ここは……?」
嫌な予感がした。
通り抜けるために連れてこられたわけではないはずだ。
向かっている廊下の先は突き当りになっていて、そこまでの牢舎のすべてには男囚が収容されていて、空いている牢舎はひとつもなかった。
「どの牢がいい? 選ばせてやってもいいぞ、宝玄仙」
宝玉を捕えている男がくすくすと笑った。
「ま、まさか……」
宝玉は息を飲んだ。男の囚人のいる牢舎に放り込もうというのか……。
「そんな心配そうな顔をするな、宝玄仙。その首輪は、道術師でなければ外せない特別性だ。男の囚人と遊んでも、いつまでも快楽を溜めることができるぞ」
「ひ、酷いじゃないの。わたしを男囚のいる牢舎に放り込もうと言うの──」
宝玉は喚いた。
「これも女囚の儀式のようなものだ。諦めろ、宝玄仙」
そして、適当に選んだような牢舎が開けられた。
その営舎には二十人ほどの男囚がいた。
その男たちの雄叫びのような声とほかの営舎からの失望の声が入り混じった。
「入れ」
「そ、そんな」
宝玉は悲鳴をあげた。
すでに男囚たちは、下袴を脱いで股間を晒している。
宝玉は容赦なく、男たちが待つ営舎に放り入れられた。
「いいか、お前たち、この女を眠らせずに犯し続けろ」
「言われなくても、そうしますよ」
男囚たちが一斉に笑った。
営舎の扉が無情に閉じられて、外から鍵が閉められる。
その直後に、宝玉は男たちに床に押し倒された。
「順番だ。順番を決めるぞ」
どの男もそれなりにがっしりとした体系だった。
年齢は三十から五十とまちまちだったが、髭もじゃで恐ろしく異臭がするということは共通していた。
「た、助けて──」
宝玉は叫んだ。しかし、ただでさえ非力の宝玉の身体だ。
そのうえに後手縛りに拘束されていてはどうしようもなかった。
たちまちに床に押し倒されて、身体を押さえつけられる。
犯されることは恐怖ではない。
しかし、この状態でさらに身体に快楽を受けることが恐怖だった。
「見ろよ、この女、すでに股ぐらが濡れているぜ」
「都合がいいぜ、始めようぜ」
左右から身体を固定され、左右の脚を別々の男が両手で抱えた。
そして、脚を開脚させて膝で折り曲げるように脚を腹側にあげられ、股間を大きく曝け出した状態にされる。
その股間に男囚のひとりが怒張を近づける。
「も、もう、やめて──」
宝玉は悲鳴をあげた。
順番決めで最初に宝玉を犯す権利を手に入れた男が、太い男根をしごきながら、最初から真っ赤に熟れきっている宝玉の女陰の割れ目に押し入れてくる。
「くあああっ──」
宝玉は仰け反った。
男の怒張は宝玉の股間に包まれることにより、さらに緊張して太さを増していく。
それが肉襞を擦る。
快感が込みあがる。
燃えあがるだけ燃えあがり、出口のない淫情を溜めている宝玉の身体は、あっという間に絶頂に向かう快感で宝玉の身体を突きあげた。
「ひいいっ──いぐうっ──」
宝玉は仰け反った。
しかし、左右から抑える男たちは、宝玉の身悶えさえも許さない。ほとんど動けないくらいに身体を固定される。
快楽の矢が宝玉を貫く。
しかし、その快感は、宝玉は達しようとする寸前に消える。
宝玉は泣き悶えた。
「どうしたんだ、これは?」
宝玉を犯している男が宝玉の反応のおかしさに首を傾げた。
「どうでもいいよ。早くしろよ」
「わかったよ。もう少しだ。それにしても、この女の股はいい気持ちだぜ」
「むぐうっ……」
宝玉は達することのできないこの身体で輪姦される恐怖に欲情しながらも顔が蒼ざめるのを感じた。
股間に入っている肉棒からは、もの凄い欲情を感じていた。
催淫剤で感度を上げられているうえに、一日かけた焦らし責めに宝玉の身体は、あり得ないほどに欲情していた。
もう理性などなにもない。
あるのは、絶頂に対する激しい渇望感だけだ。
「おお、締りがいい──硬くないし、柔らかい。それで、ぎゅうぎゅう絞りあげてくるぞ。こんなに気持ちのいい女陰は初めてだ──」
いま、宝玉を犯している男が感極まったように叫んだ。
「くああっ」
しかし、宝玉はそれどころではない。
男が擦りあげるたびに大きな快感が襲う。宝玉は悶え、そして、絶対に達することのできない残酷な欲情をさせられる。
宝玉は呻きのような悲痛な嬌声をあげた。
身体は与えられる欲情を貪欲にむさぼり尽くそうとする。しかし、理性は、それがやってはいけない行為だと叫んでいた。
激しい快楽の高まりの後には、突然に中断される残酷な霊具による仕打ちが待っているだけだ。
それでも宝玉の身体は、与えられない絶頂に向けて、快楽を集めるだけ集めようとする。
その宝玉の口をひとりの男が覆いかぶさり、唇を張りつけた。
むっとする悪臭が宝玉の鼻を攻撃した。臭い息が宝玉の口の中に入れられる。
嫌悪感しかない舌が宝玉の口を這い回ってくる。
しかし、どっぷりと官能漬けのような身体にさせられている宝玉には、それを払いのける気力がなかった。
「んんんん──」
宝玉は身体を激しく暴れさせた。両側からまったく別の手がそれぞれの乳房を揉みあげて来たのだ。
宝玉の乳首は、触られるだけで潮を噴きあげて絶頂するような快感の逆鱗だ。
しかし、絶頂を止められているいまの宝玉には、苦しさしか与えない喜悦の器官だ。
もう、なにがなんだかわからない。
あるのは動物的な官能だけだ。
達したい──。
たった一度でいい──。
この苦しみから解放されたい。
そのために払う代償ならどんなことでもできる。
宝玉は顔を振り、顔を覆っている男の口を払いのけた。
嫌悪感からそうしたのではない。
心の底から声を出したかった。
けだもののように快感のまま嬌声を吐きだしたかったのだ。
「うほっ」
男が声をあげながら精を放った。
そして、腰がぶるぶると震えた。
「あああ、ひいいっ──」
自分でも意識しないうちに、淫らな絶叫が口から迸る。宝玉はなにもかも忘れて、自分で腰を振った。最後の快感を集めるために──。
頭の中が白くなる……。
もうすぐ……。
次の瞬間、全身を覆っていた快感が一瞬にして消失した。
またもや、宝玉は絶頂寸前の状態に引き戻された。
すでに男の肉棒は宝玉の股間から離れている。宝玉は泣き叫んだ。
「さっきから、反応がおかしいなあ」
周りの男たちが首を傾げているのがわかった。
しかし、順番を待っていた男が、精を放った男を押しのけるように宝玉に怒張を突きつけた。
「も、もっと……」
宝玉は言っていた。
達することのできない絶望の快楽でもいい。
快楽をむさぼり続けなければ頭がおかしくなりそうだ。
しかし、こうやって絶頂できない淫行を続けても、間違いなく自分はおかしくなるだろう。
それでも、快楽を与えられずに放置されるの怖い。
壊れてもいい。
壊れてもいから、快楽が欲しい。
「やりがいのある女だな。じゃあ、いくぞ」
次の男の肉棒が入ってくる。
「そうよ、そこ……そこっ──そこを突いて──」
もうどうでもいい。
なにもかも、忘れて快感を……。
だが、宝玉の欲しいものは一度も与えられない。
でも、それでもいい。
絶頂できないのであれば、それに突き進んでいる状態に浸るだけでいい。
「もっと……もっとよ、もっと──」
「もっとか──こうか、もっと、深くか──?」
「ああ、いいわっ……もっと、もっとちょうだい」
「凄いな……本気になったな……これは堪らんぞ……。い、いってしまいそうだ……。そ、そんなに絞るな……うおうっ──」
男が宝玉の膣に精を放った。
「だめ、もっと、もっとよ──」
宝玉は叫んだ。
次の男が入ってきた。
宝玉は新しい男からも快感を絞りだそうとした。
強く肉棒を絞り、腰を振り立てて、宝玉自身が積極的に快感を集めようとした。
すると、またしても中に入っている男が自爆するかのように精を放った。
だが、宝玉は離さなかった。
次第に逞しさを失いかけている肉棒を女陰で挟んでさらに絞りたてた。
快感が昇ってきた。
「いくううっ──」
宝玉は身体を仰け反らせた。
そして、ぷっつりと快感が中断された。
宝玉は絶望の叫びをした。
*
「うう……も、もう、いやあぁ……。さ、触らないで……」
脇を舐められ、敏感な乳房をいじくられ、女陰だけじゃなく、肛門も含めて身体のあらゆる部分を責められている。
心も身体も完全に溶けている。
しかし、絶頂だけが与えられないでいる。もう狂ってしまいそうだ。
絶頂したい……。
どんなことでもいい……。
身体に渦巻いている快感を発散させるためならなんでもやる……。
「あんたの身体を知ったら、もう、ほかの女は抱けないよ」
「確かに、これだけの綺麗な顔と身体に、こんなにすけべな反応、そして、なによりも最高なのはあんたの道具だ。本当に絶品だ」
「本当だよ」
男囚たちがげらげら笑い合う中、宝玉はひたすら、愛撫され、抱かれ、輪姦された。
昼夜の感覚はないが、完全に一日以上の時間が過ぎていた。
それは運ばれてきた食事の数でわかった。
一日中快感の中にいるのに、絶頂の恍惚感だけが与えられず、絶頂寸前のもどかしい状態だけがひたすら続いていた。
性の地獄だ。
しかも、眠らせてももらえない。うとうとすれば、頬を引っぱたかれて覚醒させられる。
それでなくても、これだけ発散できない淫情が暴れている状態で寝ることなどできるわけがない。
どんなに快感があがっても、絶頂できなければ失神もすることはない。
男たちの中には眠る者もいたが、宝玉だけはひたすら犯され続けた。
宝玉をここに放り込んだ有来有去の部下は、時折、顔を見せては男囚たちにいたぶられる宝玉の哀れな姿を覗いては去っていく。
宝玉が助けを求めてもまるで聞こえていないかのように無反応に去って行く。
部下たちが男囚たちに繰り返し言うのは、宝玉を眠らせるなということだ。
宝玉は、部下が牢舎の外にやってくるたびに、首輪を外してくれと泣き叫んだ。
この牢舎には二十人の男がいた。その男たちから宝玉は繰り返し強姦された。女陰も肛門も口も……あらゆる部分を使われる。
永遠に続くかと思うような長い輪姦だ。
女陰に肉棒が入っていないときも、宝玉が男たちから離されることはない。
常にふたり以上の男がまとわりつき、宝玉の身体をむさぼって愛撫をする。
食事は運ばれるが、宝玉の女陰に肉棒を挿したまま食事をする者もいたし、宝玉が口で皿の上のものを犬のように食べる間も、誰かが乳首を弄り、肉芽を刺激し、あるいは女陰か肛門に性器を挿入した。
宝玉が食事をする間も愛撫が続く。あるいは犯される。
そして、絶頂しかけては不意に中断され、引き戻され、また、燃えあがり、引き戻される。
もうなにがなんだかわからなかった。
望むことはだたひとつだ。
この溜まった快感を絶頂により発散させたい。
全身は男たちの醜悪な精液にまみれ、唾液を浴びたように全身に塗りたくられた。自分が汚物そのものになったかのような感覚だ。
もう、なにもいらない。
絶頂したい──。
疲労のようなものが全身を覆っている。
果てしない寸止め地獄が宝玉の思考を奪っている。
あるのは焦燥感──。
消えていくのがわかっていて快楽をむさぼろうとする狂った自分……。
これが現実なのか、夢の中なのか区別がつかない……。
前からも後ろからも、あるいは全身を舐められては達する──。
しかし、偽物の絶頂だ。
だが、それでもいい。
快感が昇り続けている間は気持ちいい。焦燥感がほんの少し解消される……。
いっそ、このまま狂いたい──。
宝玉は心の底から思った。
「眠るな──。お前が寝たら、終わりだと言われているんだ」
強く頬を叩かれた。
しかし、もう限界だった。宝玉は睡魔に引きずり込まれていった。
不意に身体が両側から担ぎあげられた。
「な、なに……?」
狼狽えた。
なにが起きたか理解できなかったが、宝玉があまりもの疲労で眠ろうとした瞬間に、有来有去の部下がやってきて、宝玉を牢舎から引きずり出したのだ。
「歩け」
宝玉は後手縛りのまま、廊下で背中を押された。
足元がふらつく。立ったまま意識が遠くなる……。
「これを吸うといい」
鼻に布のようなものをかざされた。その瞬間、つんとする刺激臭がして、宝玉の意識は急にはっきりとした。
暴発するような大声が耳をつんざく。
混沌としていた意識が晴れてくると、どうやら、有来有去の部下たちに男囚のいる牢舎の廊下を歩かされているのだとわかった。
両側からの怒声のような雄叫びは、宝玉を自分たちの牢に入れろという騒ぎだ。
宝玉はほかの牢に放り込まれることを覚悟したが、そうではないようだ。
そのまま、牢舎の続く廊下を離れて、迷路のような廊下を歩かされて、幾つもの階段を上に下にと進む。
両側にふたりに挟まれたまま、やがて、大きな部屋に入らされた。
そこがどこだかわかったのは、両手を大きく開いた状態で、天井から吊られる鎖で両手首を拘束されてからだ。
最初に霊具による肛門責めに遭った部屋だった。
宝玉はまたあれをされるのかと思って恐怖した。
部下たちが、もう一度、鼻に布を当てて、宝玉の意識を覚醒させた。
宝玉を襲っていた睡魔がどこかに逃げた。
部下たちと入れ替わるようにやってきたのは有来有去だった。
「どれが一番堪えた、宝玉? 霊具による尻責めか? それとも、男囚たちからの輪姦か?」
有来有去は両手を上に開いて立たされている宝玉の背後に回った。
「く、首輪よ……。外して、お願いだから……」
宝玉は泣き叫んだ。
「外してもいいぞ……」
束の間の沈黙の後で有来有去は言った。
そして、背中から手が宝玉の首に伸びる気配があった。
床になにが捨てられた。
首輪だった。
あれだけ宝玉を苦しみ続けた首輪がなくなった。宝玉の全身から力が抜けた気がした。
「いきたいか、宝玉?」
有来有去が後ろから両手で宝玉の腰を掴んだ。
「い、いきたい……。いかせてください──」
宝玉は叫んでいた。
「尻を出せ」
宝玉は拘束された身体で懸命に腰を後ろに突き出す姿勢になった。
「おほうっ」
思わず声が出た。
宝玉の肛門を有来有去の怒張が挿し貫いてきた。
「ああ、いい──」
宝玉は吠えるような声をあげた。
宝玉は快楽を求めて狂ったように腰を動かそうとした。
しかし、腰をわし掴みした有来有去の両手がそれを阻む。
求め臨んだ快楽の絶頂はすぐそばにある。
しかし、それを有来有去の手が阻止している。
宝玉は泣き震えた。
突然、視界が変化した。
石壁だった正面の壁が巨大な姿見に変わったのだ。後ろから尻を貫かれている自分の姿が姿見に映った。
「その姿見から眼を離すな。一瞬でも眼を離せば、肉棒を抜くぞ。首輪も付け直す」
「は、離さない──。眼を離さないわ」
宝玉は叫んだ。
始まった。
宝玉は姿見を凝視した。
眼を離してはならない。
考えていたのはそれだけだ。
逞しい肉の杭が宝玉の肛門を律動する。
ゆっくりと……突きあげ──。
そして、抜かれ……また、突きあがる。
宝玉は吠えた。
溜まりに溜まった快感の塊りが一気に噴出しようとする。
宝玉は、全身の官能という官能を煮えたぎらせて有来有去を受け入れた。
この快感──。
これがあれば、もうなんにもいらない。
有来有去がなにかの合図をした気配があった。
不意に両手を吊っていた鎖が緩んで下にさがった。
宝玉の腰はさらに後ろに突き出すことが可能になり、ぐいと肉棒が肛門の奥に打ちこまれた。
「ほごおおおぉぉぉ──」
宝玉は雄叫びをあげた。
待ちに待ったものがきた。
それは快感と呼ぶには、あまりにも激しいものだった。
全身を浮遊させるような昂揚感──。
昇天する……。
「宝玉、覚えているか。俺は、お前を最初に見たとき、お前を俺の奴隷にしたいと言ったな……」
信じられないほどの絶頂感だ。
その宝玉の耳元で有来有去がささやきはじめた。
宝玉は、それを快感に吠えながら聞いていた。
「告白する……。俺は、最初にお前を見つけたときから、俺はお前の美しさにひかれた。男囚たちに抱かせて、それを壊そうと思ったが駄目だった。俺はお前を愛している。俺のものになれ……」
有来有去のささやきが続く。
「はあああぁ──ひいいぃぃぃ──」
長い絶頂がまだ続いている。宝玉は全身を振り乱しながら快楽によって飛翔していた。
しかし、眼だけはしっかりと開き、背後から肛門を犯される自分と宝玉を抱く有来有去の姿を見続ける。
そして、宝玉を求める有来有去の言葉──。
それが脳に刻まれる。
肛門を犯す有来有去の肉棒の律動は続いている。
絶頂は一度で終わらない。
次から次に、新しい波がやってくる。信じられないくらいに長く、果てしない快感だ──。
波のように快感が襲い続ける。
いつまでも終わらない。
気の遠くなるような快感だが、意識だけははっきりとしている。
宝玉は鎖を鳴らし、嬌声を迸しらせた。
「愛しているぞ、宝玉……」
有来有去が宝玉を犯しながら囁き続ける。
この途方もない快楽と一体となって、有来有去の言葉が宝玉に入ってくる。
愛している……。
自分を愛すと……。
そんなことは宝玉を堕とすための偽りだとはわかっている。
しかし、その言葉の甘美さに宝玉は抵抗できそうになかった。
宝玉が求め止められないでいた言葉だ。
宝玉の身体を求めた者は幾らでもいた。
しかし、愛していると言ってくれたものはいなかった。
途方もない霊気を持つ宝玉を誰もが忌み怖れた。
母親は……。
いや、母親は自分を愛してはいなかった……。
宝玉のことは性の対象……あるいは、道具のように考えていただけだ。
蘭玉──。
姉妹として愛し合うためには、幼いころから肉欲の対象でありすぎた。
最初の男の
調教した女たち……。
さまざまな顔が浮かんでは消えた。
彼、あるいは、彼女たちの誰も宝玉を愛するとは言わなかったのではないか──。
有来有去の両手が乳房を掴んだ。
乳房と乳首を揉まれながら、肛門深くに肉棒が突き刺さる。
尻の内襞を男根の幹が擦る。
激しい快感──。
宝玉は吠えた──。
自分を愛すると言ってくれた者として三人の女の顔が浮かんだ気がした。
沙那、孫空女、朱姫……。
しかし、それはすぐに消えた。
あれは、宝玄仙を愛する女たちだ。
宝玄仙が見つけた宝玄仙の供だ。
宝玄仙を心から愛して、そして、信奉している。
宝玉はそれを羨んだ。
宝玉を愛すると言ってくれた者などいなかった──。
「愛している、宝玉……」
有来有去の声がした。
最大のものがやってきた。
快感の大きな矢が宝玉の全身を貫く。
全身ががくんがくんと激しく震えた。
「愛している……」
その言葉に刻まれながら宝玉は恍惚の真っ白な世界に飛翔した。
*
宝玉の思考が有来有去の愛の言葉で満たされるのがわかった。
もちろん、宝玉は有来有去の愛の言葉など信じていない。
だが、心の底にそうであればいいと望んでいる宝玉を見つけた。
それを拡大してやればいい。
愛に飢えている宝玉は、それで勝手に堕ちる。
宝玉、あるいは、宝玄仙の激しい性欲は、さらに激しい愛情の渇望の裏返しだ。それは心を読むことでわかった。
愛している──。
それは有来有去の心が発する言葉ではない。
宝玉が望んでいるだけの言葉だ。
有来有去は、それを口にしているにすぎない。
「愛している」
有来有去は宝玉の肛門に包まれる怒張を律動しながらささやいた。
激しい宝玉の快感が、激しい愛情にすり替わっていくのを感じていた。