※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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285 褌行進と裸はりつけ[五日目・処刑前日]

「眠れたか、宝玄仙?」

 

 軍営を出る門の前で、改めて金属の手枷によって両手首を背中側で拘束され直した宝玄仙の前に有来有去(ゆうらいゆうきょ)が現れた。

 

「有来有去……」

 

 現われた有来有去を睨んだ。

 宝玄仙が、意識を取り戻したのは昨夜だ。

 

 そのとき、宝玄仙は独房の中にいた。

 ずっと宝玄仙に付きっきりで訊問に当たっていたはずの有来有去は、意識が戻って以来一度も独房には顔を出さなかった。

 有来有去の顔を見るのは数刻ぶりであり、宝玄仙が意識を取り戻して初めてだ。

 しかし、この男が宝玉になにかをしたに違いないのだ……。

 

 独房の中には食事が準備されていたが、意識が戻った宝玄仙は、死にそうになるくらいの睡魔を感じた。

 これは、それまでの宝玉が味わっていた疲労と睡魔だろう。

 宝玄仙は、そのまま、再び眠りに落ちた。

 そして、朝を迎えた。

 

 宝玄仙が起きたのは、係兵だという声が独房の外からあり、二刻(約二時間)後に出発だと告げたときだ。

 出発というのは処刑のために城郭の広場に行き、磔にされて晒されるのだという。

 

 宝玉と交替する前に、有来有去は、宝玄仙に処刑は五日後だと言っていた。

 今日一日晒されて、明日の朝、そのまま広場で処刑と言われたのを思い出すと、宝玉と意識を交替してから四日経っているということだろうか。

 

 なにしろ、これまでは、宝玉から宝玄仙に意識が交替するときには、意識体の中でなんらかの意思と情報の交換があったのだ。

 今回はそれがなかった。

 いつもの深層意識の中に宝玉は出現しなかった。

 深い闇の部分で宝玉の意識を感じたような気がしたが、それは底なし沼を感じさせるような深層意識の奥にあり、宝玄仙の届くところにはなかった。

 

 なにが起こったのかわからない。

 ただ、わかっているのは、いまの宝玉は意識を完全に閉ざしているということだ。

 それが一時的なものなのか、闘勝仙を殺した直後のときのように、しばらく続くことなのか宝玄仙には判断がつかない。

 いつもと違う宝玉の様子が宝玄仙には心配だった。

 

 とにかく、有来有去に追い詰められた宝玉は、自ら選んで心を閉ざし、外界との接触を断った。

 そう思うしかない。

 現段階において、宝玄仙は、宝玉にまったく触れることができないでいた。

 

 独房で目を覚ました宝玄仙は、まだ、疲労はとれていなかったが、それでも、昨夜からそのままだった食事と飲み物を少し口にした。

 下着は履いていなかったが服は身に着けていた。

 隠れ処を襲撃されたときに、宝玄仙が身に着けていたものだ。おかしな霊具も装着されていない。

 

 しばらくすると、独房の戸が開き、前手に縄で拘束された。

 そして、十人ほどの男たちに囲まれて、軍営を出るこの門の前までやって来た。

 そして、ここで待っていた一隊に引き渡された。

 

 引き渡されたときに、前手の縄は解かれて、金度は金属の手枷で拘束されなおした。

 足首にも、歩くことに支障がない程度の鎖が繋がった足枷が嵌められる。

 そして、十人ほどの魔導師を連れた有来有去がやってきた。

 

 道術師と呼ばれるこの国の宮廷道術遣いは、くるぶしまでの紫色の長い外衣を身に着けていてすぐわかる。

 彼らは、分散してここで待っていた兵と合流した。

 おそらく、これは明日の朝に執行するはずの宝玄仙の処刑が終わるまで離れることはないのだろう。

 これから城郭の広場に晒され、翌朝早くに絞首刑により刑が執行されるということは、独房を出たときに教えられた。

 

 沙那と孫空女と朱姫は、宝玄仙を救出するために動いているのだろうか……。

 

 そうであるとすれば、この重警備を破るのは容易ではないと思った。

 有来有去も沙那たちが宝玄仙を奪回しにくるのは予想しているために、それを逆に捕らえるために準備しているのは間違いない。

 だが、これだけの重警備では、その沙那たちが危ないだろう。

 

 あの三人は、なんとしても宝玄仙を救おうとするに違いない。

 宝玄仙は、自分のことよりも、沙那たちが心配になった。

 

 それにしても、有来有去は宝玉にどんな仕打ちをしたのだろう。

 心を閉ざした宝玉──。

 あれは尋常ではない。

 

「お前、宝玉になにをしたんだい?」

 

 有来有去に向かって宝玄仙は言った。

 

「やはり、宝玉とは違うのだな。本当は、お前のような気の強い女を堕としたかったのだがな……。残念ながら時間切れだ。その代わり、趣向を考えているから、せいぜい、明日の朝まで愉しんでくれ」

 

 有来有去が顎で合図をすると、数名の兵が取り囲み、小刀で宝玄仙の服を切り裂いて、宝玄仙を素っ裸にした。

 周りの兵から卑猥などよめきが起きる。

 さすがにこれだけの男に囲まれて全裸にされるのは羞恥が走る。

 宝玄仙は股を閉じ合せて、兵たちの露骨な視線から裸身を守ろうとした。

 

「お前のような性の遍歴の女でも、さすがに大勢の兵の前で全裸になるのは、恥ずかしいのか、宝玄仙? これから城郭中を裸で引き回された挙句に、国都でももっとも賑やかな広場で、素っ裸で磔になるのだぞ。いま、そんなに恥ずかしがったら身が持たんぞ」

 

 有来有去が笑い声をあげた。

 

「くっ」

 

 宝玄仙は歯噛みした。

 それにしても宝玉はどんな目に遭い、どうして心を閉ざしたのだろう。

 宝玄仙から宝玉に意識を交替するときに、有来有去の責めは交替で受けると決めたはずだ。

 それなのに、宝玉は一度も宝玄仙に意識も渡さなかった。

 有来有去が宝玉に与えた責め苦は、そんなにも激しいものだったということか……?

 

「まあ、俺としても、俺を愉しませてくれたその身体を惨めに民衆に晒すのも気の毒とも思う。だから、せめてもの情けに、これを股間に身につけさせてやることにした。全裸よりもましだろう」

 

 有来有去が後ろの部下に持たせていた物を受けとり、手のひらでひらひらさせた。

 宝玄仙は、それを見てさっと血の気が引いた。

 これから大勢の民衆の前に裸身を晒そうという宝玄仙に有来有去がなにを身につけさせようとしているのかわかったのだ。

 有来有去が持っていたのは、真っ白い細長い布がついているものに同じ色の紐がついた小さな布だ。

 宝玄仙は、これを帝都時代に履かされて辱められた経験がある。

 

「おっ、どうやら、これを知っているようだな。宝玄仙、言ってみろ、これはなんだ?」

 

 有来有去が愉しそうに笑った。

 

「ふ、褌(ふんどし)だよ……」

 

 東方帝国の東側の島国の風習の下着だ。

 本来は男が身につけるもので女が使用するものではないということも知っている。

 こんなものを身につけるなら、まだ裸の方がましなくらいだ。

 どこまで馬鹿にすれば気が済むのだ。この男は……。

 

「ほら、脚を開け」

 

 有来有去が言うと、数名の兵が宝玄仙の身体を押さえつける。

 身を捩る宝玄仙の両腿が無理矢理に開かせられて、宝玄仙に褌の腰紐を結び、布の部分を捩じりあげていく。

 もう、宝玄仙は諦めて大人しくすることにした。

 

 なんでも勝手にやればいいのだ。

 どうやっても、ここは抵抗できない。

 相変わらず、道術を遣うことができない。

 霊気はあるのだが、それを動かす道術の技が抜き取られたかのように、身体から失われている。

 

「そうだ。大人しくしていれば、すぐに終わる」

 

 有来有去が捩じりあげた布を一気に宝玄仙の股間に喰い込ませた。

 

「くうっ……ひっ……」

 

 敏感な部分に布が喰い込み、宝玄仙は身体を前に曲げて折りそうになった。

 その身体を兵たちが無理矢理に真っ直ぐにする。

 有来有去は、そんな宝玄仙の肢体を愉しむかのように、さらに布を左右に揺すりながらどんどん股間の亀裂深くに布を締める。

 

「ちょ、ちょっと……お、お前……い、いい加減にしないか……」

 

 宝玄仙は思わぬ刺激に、腰を左右にくねらせて訴えた。

 それでも容赦なく布が食い込む。

 やっと有来有去が絞めあげた布を腰の後ろで結んだときには、宝玄仙は激しい淫情に、その場に座り込みそうになった。

 

「まだ、あるぞ」

 

 有来有去は、さらになにかを小さなものを取り出した。

 そして、剝き出しの宝玄仙の乳首にそれを伸ばす。

 

「な、なんだよ?」

 

 宝玄仙は得体の知れないものが、敏感な乳首に装着されようとする恐怖に思わず後ずさった。

 しかし、それを兵たちの身体が拒む。

 

「ひいいっ──」

 

 宝玄仙は思わず大きな悲鳴をあげた。宝玄仙の両方の乳首が輪のようなものできゅっと締められたのだ。

 大きな快感が全身を駆け巡る。

 

「ああ……」

 

 強い刺激に宝玄仙が身体をくねらすと、乳首に付けられたものがちりんちりんと鳴った。

 宝玄仙の乳首に身につけられたのは、小さな金属の輪だった。

 どうやら霊具のようだが、それが宝玄仙の乳首の根元に喰い込んでいる。

 そして、その輪には細い金属の紐が垂れ下がっていて小さな鈴が繋がっている。それが、宝玄仙が身悶えすることで、音を鳴らしたのだ。

 

「お、お前……」

 

 抗議をしても外すことはないと思うが、有来有去に悪態だけはついておこうと、宝玄仙は口を開いた。

 しかし、その瞬間、突然、その乳首の輪がぶるぶると強い振動をした。

 

「くわあああっ──」

 

 宝玄仙は今度こそ、へなへなとその場に跪いた。

 ちりんちりんと鈴が鳴る。

 乳首が揺れることで、脳天を貫くような快感が駆け巡ったのだ。

 

「気をつけろよ、宝玄仙──。その乳首の輪は、お前がなにか意味のあることを喋ろうとすれば、振動することになっている。いやらしく感じたくなければ、口をつぐんでいることだ」

 

 なんてことを……。

 

 外を歩く宝玄仙に口を開かせたくはないのだろう。

 それで、宝玄仙が喋ると乳首に強い振動が走るというような霊具を装着させたのだ……。

 

 宝玄仙はふらつく足を踏ん張りながら、ゆっくりと立った。

 せめてもの抵抗として、有来有去を激しい視線で睨みつける。

 

「それから、もうひとつ言っておくぞ、宝玄仙──。お前の股間に締めた布は、いまは真っ白だが、お前が愛液で股間を濡らせば、青い色に変色するようになっている。恥ずかしい思いをしないように、気をつけるのだな──。おやっ? なんだか、前側の部分がうっすらと青くなったような気がするが、気のせいか?」

 

 有来有去が大笑いした。まわりの兵もどっと哄笑した。

 宝玄仙は恥辱に歯を食いしばった。

 

「出発──」

 

 笑いの渦が収まったとき、有来有去が大声で叫んだ。

 軍営の門が左右に大きく開いた。

 宝玄仙の視界に、国都の街並みと悪意に満ちた大勢の住民の視線が飛び込んできた。

 

 

 *

 

 

 前後を武器をもって警戒している隊が挟んでいる。

 それぞれの隊は五十人ほどであり、つまり百人の兵に前後を挟まれて宝玄仙は歩いている。

 前後の隊の中にふたりずつの紫色の長衣がちらちらと見え隠れしているのがわかる。

 道術師と呼ばれるこの国の道術遣いだ。

 道術を失った宝玄仙にも、前後の道術師からなにかの道術が流れて、真ん中を歩く宝玄仙を包んでいるのが感じられる。

 

 おそらく結界だ。

 前後に道術師を配置して、城郭を歩かされている宝玄仙を結界に包んでいる。

 野次馬に紛れ込んでいる道術遣いによるなんらかの関与を防ぐために違いない。

 

 その道術師を包むように武器を持った兵が警護している。

 兵たちは、道術師を護っているだけじゃない。前後左右を警戒して、宝玄仙を奪回するための襲撃に備えている。

 宝玄仙の眼から見ても一部の隙もない。

 

 それにしても……。

 

 これだけの大勢の民衆の前で、素裸を晒しながら拘束された身体で歩くなど、気の遠くなるような恥辱だ。

 たったひとりの女囚を晒し場に連行するだけとは思えない重警戒だが、宝玄仙の前後の隊は、宝玄仙とは距離を開くように進んでいて、宝玄仙の直接の周りには数名の兵しかいない。

 宝玄仙を完全に囲んでしまえば、裸で歩く宝玄仙の姿を民衆に晒せない。

 だから、あえて、宝玄仙の前後を開けているのだ。

 そのため、宝玄仙の裸身は見物のために集まった民衆から丸見えだ。

 練り歩かされる宝玄仙を大勢の民衆が見物して、嘲笑しているのがわかる。

 蔑みと卑猥な視線でいっぱいだ。

 

 なによりも、激しい敵意──。

 それが向けられる理由がわからなかったが、民衆の野次により、宝玄仙は自分が長女金(ちょうじょきん)を殺したということになっているということを知った。

 長女金は晒し刑になっているとはいえ、民衆ではかなりの同情されていた存在らしい。

 宝玄仙は、それを惨たらしく殺したということにされているのだ。

 それで、宝玄仙がこんな惨めな姿で歩いても、自業自得というような冷たい眼でしか彼らは見ないのだ。

 

 だが、それを否定することは宝玄仙にはできない。

 乳首の根元に霊具が装着されている。

 その霊具は、宝玄仙がなにかを喋ろうとすると、激しく振動して、宝玄仙に官能の矢を突き刺すのだ。

 これだけの大勢の人間の前で、はしたなく淫情するなど、さすがに嫌だ。

 だから、宝玄仙はしかりと口をつぐんでいた。

 

 宝玄仙が進み道は、どこもぎっしりと左右に人が溢れていた。

 これだけの人間に、世にも惨めな姿を晒しているかと思うと、宝玄仙は羞恥に気が遠くなりそうだった。

 宝玄仙が身に着けているのは、乳首の根元に喰い込んだ鈴付きの霊具、後手に回した手首と足首に嵌った金属の枷、そして、股間に喰い込んだ“褌”だ。

 

「それにしても、いい乳房だな。さんざんに弄んだ身体だがこうやって太陽の下で見るのも格別だな」

 

 有来有去がからかう。

 この男は全裸に近い恰好で城郭を引きまわされる宝玄仙のすぐ横を歩いていた。

 この男が宝玄仙よりも、宝玄仙を奪回に来るに違いない沙那たちに気を配っているというのはわかる。

 さっきから執拗に、嫌がらせをするのは、どこかで宝玄仙の痴態をみているかもしれない沙那たちを挑発するためのようだ。

 

 この男が、宝玄仙と宝玉をこの五日間責め続け、宝玉の心を閉ざさせた。

 宝玄仙を辱めるために、褌を股間に喰い込ませたものこの男だ。

 いつか、機会があれば絶対に同じ目に遭わせてやろうと思った。

 

「それにしても、この乳首はちっとも勃起をやめないな。そんなに気持ちがいいか、その霊具は?」

 

 有来有去がただでさえ霊具に締めつけられて鋭敏になっている乳首に手を伸ばした。

 気の危険を感じた宝玄仙は思わず身体を捻る。

 

「や、やめ……」

 

 思わず抗議しようとして、しまったと思った。

 口を開けば、この霊具はそれに反応して淫らな振動をするのだ。

 

「ひゃああ──」

 

 乳首がぶるぶると震えた。

 雷に打たれたかのような衝撃に、宝玄仙はその場にうずくまった。周囲の兵たちが乱暴に宝玄仙を引き起こす。

 

「どうした、宝玄仙? 股間に締めている布の色が真っ青になったぞ。色が変わるから感じるなと言っただろう」

 

 有来有去がわざとらしく大声で言った。

 宝玄仙が股間に喰い込まされている布は、宝玄仙がいやらしく愛液で股間を濡らすと、それに反応して真っ白い布が青くなるのだ。

 宝玄仙はちらりと自分の股間に喰い込んだ布を見た。

 全体が白いのに、股間の部分だけが青くなっている。

 

 有来有去の声が道の両端で見物している民衆に聞こえたらしい。ざわざわと話す声が大きくなり、やがて、はっきり宝玄仙の股間の布を指さすようになった。

 宝玄仙はあまりもの恥辱に下を向く。

 

「ほら、歩くのが遅くなったぞ。もっと速く歩かないか」

 

 有来有去が手を振りあげてぴしゃりと宝玄仙の剝き出しの尻を叩いた。

 痛さよりも、公衆の面前で尻をはたかれるという屈辱に気が遠くなった。

 そして、それだけじゃなく、尻を叩かれたことにより、身体が大きく揺れて、鈴をぶらさげた乳首がちりんちりんと鳴りながら振動で揺れた。

 

「ううっ、あっ」

 

 大きな衝撃が走り、股間に官能の痺れが走る。

 宝玄仙は身体が砕けそうになるのを耐えた。

 

 軍営から広場までの道のりが果てしなく遠く感じる。

 太陽の高さから考えて、いまは昼過ぎのようだ。

 しかし、この城郭中の人間が、仕事の手を休めて宝玄仙が全裸で歩くのを見物にきたのかと錯覚するくらいの人手だ。

 大勢の民衆の野次と侮蔑の言葉と卑猥な視線の中を宝玄仙は歩き続けた。

 そして、乳房を揺らて股間に布を喰い込ませただけの裸身を晒して歩くうちに、宝玄仙にもうひとつの別のものが悩みが発生した。

 

「んんっ」

 

 宝玄仙は知らず、甘い息を吐いた。

 特殊な締め方をしているのか、歩くうちに、股間の布が緩むどころか、どんどん奥に奥にと喰い込んでくるのだ。

 あまりにも締められて、いまでは一歩進むたび肉芽や肛門の入口が刺激されてしまう。

 

「その様子だと布がいよいよ、本領を発揮したようだな。その布はお前が感じれば変色するだけじゃなく、濡れると縮み出すようになっているのだ。お前の身体が淫らな反応をしなければなんともないはずなのだが、どうやら効いてきたのだな」

 

 宝玄仙は恥辱に歯を食いしばった。

 この男は、どこまで宝玄仙を辱めたいのだ──。

 

「それにしても、女主人のお前がこんな目に遭っているというのに、お前の供は、ちっとも救出する素振りもないな。どうやら、供にも見捨てられたか?」

 

 有来有去が言った。

 しかし、有来有去の注意は宝玄仙よりも、周囲に向けられているようだ。

 宝玄仙は沙那たちを誘う囮だ。公衆に裸身を晒させたり、嫌がらせを継続するのは、そうやって、この重警備の隊の前に沙那たち供が出てくるのを待っているのだ。

 

 羞恥の行進は続いた。

 その間も股間の布は、民衆の淫らな視線を練り歩く宝玄仙を責め続ける。

 歩けば自然と乳房が揺れて、乳首を締めつける霊具から快感を覚えてしまう。

 そして、股間を濡らして、さらに布が食い込む。

 それが強い刺激になって宝玄仙を襲う。

 布の前側は、もう真っ青だ。

 それが肉芽や陰唇や菊門をこすって、全身に淫らな痺れが襲い続ける。

 

 それほど速い歩みではないが、もう宝玄仙は汗びっしょりだ。

 痛みのような疼きが股間と乳首から発生して、全身を襲う。もう、脚に力が入らない。

 

「おっ、ついに、腰を振りだしたな。そんなに民衆に見せつけたいのか?」

 

 有来有去が笑った。

 快感と戦うのに必死で気がつかなかったが、どうやら宝玄仙は喰い込む布に耐えられなくて、身体を震わせていたようだ。

 そう思うと、股間と乳首の刺激に耐えられなくて、身体が痺れてしまって、内腿までも震えはじめている。

 

「おい、あの女囚の脚を見ろよ」

「濡れているんじゃないか……」

「顔が赤いぜ」

「堪らない美人がああやって淫らに欲情するのはそそるなあ」

 

 全身が緊張に包まれる。

 そのために神経が研ぎ澄まされて、見物する市民の揶揄の声が聞こえる。

 心を抉るような罵声だ。

 耐えがたい屈辱で気が遠くなる。

 宝玄仙は、全身から沸き起こる淫情と戦いながら、素足を懸命に前に出して、民衆の視線に裸身を晒しながら歩き続けた。

 

 

 *

 

 

 やっと広場に到着したときには、股間と乳首の霊具による刺激が限界を超えて、ほとんど歩くのもままならなくなっていた。

 また、広場には、大勢の見物人が集まっていて、その中心に兵たちによる警備の輪が作られていた。

 その中心に宝玄仙は連れていかれた。

 宝玄仙の晒し刑を身に集まっている市民の数は、数百にもなるだろう。

 これだけの人間の前で、磔(はりつけ)にされて晒されると思うと気が遠くなりそうだ。

 

 広場の中心には、兵が取り囲む空間ができていて、その中心に二本の太い柱が立っていて、それが上側で一本の横材が繋がっている。

 その横材の中心に丸い縄の輪がぶら下がっている。

 二本の縦材の間隔は、人間の手足を大きく拡げた程度だ。

 縦材は、かなりの高さがあり、大人が手を伸ばしたよりもさらに上側に、足を載せるような小さな台がある。

 もっと上の方には革紐が取り付けられているから、それぞ二本の縦材に、両手両脚を拡げて拘束されるということだろう。

 宝玄仙をその縦材に拘束するための階段つきの車もそばにある。

 これから、その縦材に拘束されて、人の頭の上くらいの場所で、手足を拡げて磔にされるのだ。

 全裸行進に引き続いて、そんな屈辱を晒さなければならないということにさすがに宝玄仙も鼻白んだ。

 

「結局、お前の供は救出には来なかったな。重警備とはいえ、お前の仲間がお前を救いだそうとすれば、この広場に移動中のときしかなかったのだ。この広場には、道術師が結界を張り巡らせる。しかも、警備に当たる城郭兵は一個大隊だ。道術でも武器でも突破はできんぞ。これは、どうやら、お前の予想とは違って見捨てられたか?」

 

 有来有去が笑って、乳首にぶらさがった鈴を無造作に手で払った。

 

「ああ、ひいっ──」

 

 乳首から激情が走って、身体に凄まじい衝撃が駆け抜けた。

 宝玄仙は大きな悲鳴をあげて、身体を弓なりにして仰け反ってしまった。

 すると周囲を遠巻きに囲んでいる市民がどっと沸いた。

 

「や、やめないか……ひいいいいいっ──」

 

 思わず抗議をしようとして、口を開いたことにより乳首の根元を締めている霊具が強い振動で震えた。

 その刺激で宝玄仙は、腰が抜けてしまい、その場にうずくまった。

 

「もう、これは必要ないな」

 

 身体を崩してしゃがんだ宝玄仙から有来有去が、股間に喰い込んだ布を引き抜いた。

 

「ひうううっ」

 

 喰い込んだ股間からいきなり布を引き抜かれて、布が肉芽や女陰を擦りあげたので、また激流が全身を駆け抜けた。

 宝玄仙はまたしても四肢を硬直して、悲鳴をあげた。

 

「また、はしたなく感じてきたのか。お前の思考が読めるようになってきたぞ」

 

 有来有去が言った。有来有去は、女が快楽に狂うとその思考を読めるようになる。

 宝玄仙は、さんざんに翻弄されて息も絶え絶えの身体を懸命に鎮めようとした。

 

「ほら、見てみろ、宝玄仙。随分といやらしく感じたのだな。もしかしたら、露出狂か?」

 

 有来有去が見せつけるように宝玄仙の顔の前に、さっきまで宝玄仙の股間に喰い込んでいた布を見せつける。

 白かった布は完全に青く染まり、その部分に付着していたべっとりとした粘性の液体には、たっぷり糸を引いていた。

 宝玄仙は有来有去を睨みつけた。

 口がきけないと思って、言いたい放題だ。

 

「そんなに悔しいか、宝玄仙──。そうか、俺を殺したいか……。だったら、急いだ方がいいぞ。明日の朝には、ここで首を吊られるのだからな」

 

 宝玄仙の心を読んだ有来有去がからかった。

 

「磔にしろ──」

 

 有来有去が叫んだ。

 五、六名の兵が集まって、宝玄仙を引き起こす。

 車輪のついた大きな階段が寄せられて、二本の縦材の中心に寄せられる。

 兵たちに前後に挟まれて階段を昇らされた宝玄仙の首に、横材から垂れ下がった首の輪がかけられる。

 縄尻が絞られて宝玄仙の首に圧迫された。

 そして、二本の縦材にある小さな台の脚を載せさせられる。

 これ以上ないというくらいに、お股開きになった宝玄仙の足首が革紐で固定された。

 さらに、両手を頭上側に拡げて、それも縦材についた革紐で拘束された。

 

 脚の下に大勢の兵や市民が見える。

 これだけ集まった人間のすべてに股倉を晒しているのかと思うと、羞恥で気が遠くなりそうだ。

 

「なにか、言い残すことはないか、宝玄仙?」

 

 二本の縦材に手足を拡げて拘束された宝玄仙のそばまで、有来有去が階段をあがってやってきた。

 この男は最後までなぶりたいらしい。

 乳首を締める霊具はそのままだ。

 喋ると振動で衝撃を受けるために、宝玄仙は口を開けない。

 わかっていて、何度も嫌味を言う有来有去の陰湿さに腹が立つ。

 

「死に水には早いが、まあ、水でも飲んでおけ」

 

 強引に宝玄仙の口に小さな水筒が突っ込まれた。

 確かに喉は乾いていた。

 口の中に水を注がれると、勝手に身体がそれを受けつける。

 だが、その水は少し甘いような気がした。

 ただの水ではない……。

 

 宝玄仙は嫌な予感がした。

 有来有去が階段を降りていく。

 続いて兵たちも降りて、大きな階段が宝玄仙の下から離れていった。

 

 あいつ……。

 しばらくして、さっき有来有去が飲ませた水の正体がわかって宝玄仙は愕然とした。

 猛烈な尿意が宝玄仙に沸き起こったのだ。

 こんなところで……。

 

 足の下には、大勢の民衆が、好奇の眼で宝玄仙に全裸を仰ぎ見ている。

 いま、ここで尿をすれば、これだけの民衆の前で大股開きで尿をするのを見られることになる。

 限界まで宝玄仙を嬲ろうという有来有去の仕打ちに、頭に沸騰するような怒りが湧く。

 しかし、すでに猛烈な尿意が起きている。

 処刑は明日の朝だ。

 それまで我慢できるわけがない。

 

「くうっ──」

 

 宝玄仙はあまりの悔しさに歯噛みした。

 しかし、尿意はもうそこまできている。

 下からは、有来有去がにやにやと笑いながら宝玄仙を見あげている。

 

 それでも宝玄仙は、半刻(約三十分)耐えた。

 だが、崩壊が訪れる。

 ついに、宝玄仙は磔のまま、じょろじょろと地面に向かって小便を放った。

 

 爆発するような歓声と野次が起こった。

 その罵声を耳にしながら、宝玄仙は止まらない尿を大きく開いた脚の間から流し続けた。

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