289 被虐に濡れる股間
「こ、これって、なんですか、ご主人様──?」
沙那は、城郭から戻った宝玄仙と朱姫が、その城郭で買い求めてきた品物を一瞥して思わず声をあげた。
朱紫国北部の
そこでたまたま人家から離れた廃小屋を見つけて入り込んだのだが、この廃小屋から安丘の城郭まではすぐそこだ。
それで、一度、どの程度に宝玄仙の手配が厳しいのか試してみようということになった。
城郭には、朱姫と宝玄仙だけで行かせた。
朱姫が一緒であれば、『移動術』ですぐに逃げられるし、孫空女や沙那に比べれば、朱姫は目立たない部分がある。
だから、沙那と孫空女は、この廃屋でふたりの帰りを待つことにした。
手配されているとすれば、女四人の一行として情報が伝わっているはずだ。
四人一緒に動かないのは念のためだ。
これまで人里を避けて道なき道を進んできたが、かなり国都から離れたことでもあるし、そろそろ、街道を進む旅に戻りたい。
ついでに、手配の度合いを探るのに合わせて、城郭に向かう宝玄仙と朱姫に買い物を頼んだ。
最低限の衣類や毛布と路銀は別れ際に陳達から貰っていたが、何分にも色々と不足しているし、幾つか買い足したかった。
とりあえず、料理用の塩や胡椒、それから、物々交換用の女物の小物などを頼んだ。
これらのものはかさばらないし、女物の小物は、城郭から離れた山村などで悦ばれて、野菜や穀物などに物々交換してくれる。
さらに、そのついでに、路銀の範囲内で性具を買うことも許した。
道術が遣えなくなった宝玄仙は、夜の営みのために、霊具として扱える性具を欲しがっていた。
あくまでも、ついでであり、振動する張形を一個か二個購うものだと思っていた。
それなのに、宝玄仙と朱姫が購って戻ったのは、おびただしい数の性具の数々だ。
しかし、沙那が頼んだ物はどこにも見当たらない。
沙那は呆れてしまった。
もっとも、宝玄仙に城郭に行かせたのは、宝玄仙の息抜きという側面もあった。
人目を避けて山中を歩き、山の獣や木の実を食料にする生活では、宝玄仙の鬱憤が爆発する。
時折は、きちんと屋根があり、寝台があり、調理された食料を食べさせる生活をさせないと、この我が儘な女主人はすぐに機嫌が悪くなる。
それに、このところ、宝玄仙はなんだか元気がなかった。
以前にもあったが、宝玄仙は激しい嗜虐を受けると、しばらく大人しくなるのだ。
宝玄仙の嗜虐が控えめになって、夜の営みが落ち着いたものになるのは大歓迎なのだが、やはり少し心配だ。
それで、城郭に行って道術の代わりになる性具を購うことを勧めたのだ。
久しぶりに張り切った様子の宝玄仙が朱姫と出掛けたのは、昼過ぎのことだった。
そして、戻ってきたのが夕方であり、持って戻ったのは、大量の性具や妖しげな塗り薬に拘束具だ。
その代わり、塩や胡椒どころか、物々交換の交換用の髪飾りひとつない。
「見りゃあわかるだろう、沙那。例えば、これは霊具の張形だよ。道術を失ったわたしでも扱えるもので、自在に振動させたることができるんだ。こっちは尻用で、他には、拘束するための縄や手錠……。掻痒剤に催淫剤……。それに……」
「も、もういいです、ご主人様―――。わ、わたしにも、これがどんな用途のものかはわかります。でも、路銀も少ないはずなのに、こんなにいっぱい……。まさか、路銀の全部をこれに使ったわけじゃないですよね?」
「だ、だって、結構したんですよ、沙那姉さん。なんとか、所持金分にまけてもらったんです」
朱姫が言った。
「つ、つまり、路銀の全部をこんなものに使ってきたの? 路銀はあれだけしかないのに? それで、わたしが頼んだ物はどこですか?」
沙那は声をあげた。そして、宝玄仙と朱姫の表情から、本当に性具しか買ってこなかったということを悟り、大きな嘆息をした。
「まあ、ちょっと、代金が不足したんでね。こっちを優先させてもらったよ」
宝玄仙はあっけらかんと言った。
「わたしは、頼んだ物を購って、それでも余裕があれば、性具でもどうですかとお勧めしたんです。旅で必要な物よりも性具を優先するなんて信じられません。わたしたち、これで、また無一文になったんですよ」
すると、壁にもたれて黙ったままだった孫空女が大声で笑い出した。
「な、なにがおかしいのよ、孫女―――?」
愉快そうに笑う孫空女に、なんだか腹が立って沙那は孫空女を睨む。
「そりゃあそうだよ。どっちにしたって、まあ、これは、沙那が悪いさ」
孫空女はまだ笑っている。
「なんで、わたしが悪いのよ」
「だって、ご主人様と朱姫だけに、城郭に買い物に行かせれば、こうなることくらい予想しなきゃ」
「なっ」
孫空女の指摘に、思わず絶句した。
「まあ、路銀のことは、また、考えようよ、沙那。とりあえず、使ってしまったものはどうしようもないさ。他の物とは違って、これは他の物に交換もできそうもないし、買い戻してもくれないさ。それにしたって、よく、こんなもの売っていたねえ。そういえば、女人国では、普通に商家の軒先で扱っていたけど、この城郭もそんな感じなの?」
孫空女があっけらかんと言った。
「まさか……。ご主人様とふたりで一生懸命に探したんです。妓楼街の裏に小さな店があってですね、そこで扱ってたんですよ、孫姉さん。運がよかったです。ああいう性具を扱う店なんて、そうはないですものね」
「ふうん、それで、城郭で尾行されたり、手配書が貼られている様子はなかった、朱姫?」
「それは皆無でした。あれでしたら、こんな廃小屋ではなく、宿屋に泊っても問題ないと思います」
「でも、泊ろうにも路銀がないわ。すべて、性具に代わったんだから」
沙那は嫌味を言った。
とりあえず、食事ということになった。
ふたりが戻ったのは夕方だったので、そろそろ陽が落ちてきた。
朱姫が小屋の中に、道術で灯をともす。天井がうっすらと光って、小屋が明るさに包まれる。
沙那と孫空女は食事の支度だ。
昨日、山で捕らえた兎の肉がまだあるので、孫空女がその肉を石で割って作った石包丁で器用にさばいた。
沙那は細剣で野草を細かく切る。
それにわずかに残る米を足して、一刻(約一時間)程煮込むと雑炊ができあがった。
「塩を足したいところだけどね」
沙那は宝玄仙と朱姫に聞こえるように言った。塩はふたりが買ってくるはずだったのだ。
「大丈夫だよ」
孫空女が笑いながら、小さな袋に集めておいたらしい山椒の実を取り出して、やはり石で潰して鍋に足して混ぜた。
孫空女が味付けしたものを味見すると、意外においしかった。
なんだか悔しく感じる。
食事のときには、宝玄仙も朱姫も上機嫌だった。
性具を手に入れたことで、毎夜の情事に拡がりができるというのだ。
聞こえよがしに、こんな責めはどうか、それともこうやってやったら愉しめるなどとひそひそ話している。
求めてきた性具を使って責めようとしているのは、もちろん、沙那と孫空女のことだ。
だんだんとふつふつと肚に煮えるものが生まれてくる。
沙那が一所懸命に先のことを考えて悩んでいるのに、このふたりは、眼の前の淫行のことしか考えていないのだ。
しかも、このふたりは、自分たちの嗜虐心を満足させるために、沙那たちを相手にしようと決めてかかっている。
実に面白くない―――。
食事が終わる頃には、完全な夜になった。
まだ雑炊の汁が残っているので、明日の朝食の出し汁に使うことにして、屋外の焚火の上から外して、部屋の隅に置いて板で蓋をした。
三人で寝床の準備をする。
この小屋は、なんに使われていたかはわからないが、一応は板張りだ。
このところ、地面に直接に横になることが多かっただけに、それだけで随分と楽だ。
以前は、宝玄仙の寝床だけは、厚地の敷布などを使って作っていたのだが、朱紫国の国都を脱出してから、沙那たちが持っている毛布は二枚だけだ。
一枚を宝玄仙が使い、残りの一枚を三人で使っている。あっという間に終わる。
「じゃ、じゃあ、そろそろ……」
朱姫が期待のこもった表情で沙那と孫空女に視線を向ける。
「今夜は、どんな風に縛るんだい、朱姫?」
「そうですね。じゃあ、
「蟹?」
「はい、左右の膝と肘、足首と手首を離れないように固定するんです。蟹みたいに、脚を拡げて閉じられないようにもしますから、動くときには、蟹みたいに動くしかないんです。だから、蟹なんです」
「そりゃあ、いいね。面白いよ、朱姫―――。じゃあ、沙那も孫空女も早く服を脱ぎな。今夜は、お前らは蟹だそうだよ、蟹―――」
宝玄仙が笑った。
朱姫は、大量に揃った性具入れとして一緒に購ってきた背負い紐付きの箱から数束の縄を取り出してくる。
しかし、沙那にはさっきから気になることがあった。
それは、このところ感じていることと共通していることだが、宝玄仙がどことなく、嗜虐に積極的でないように思えることだ。
考えてみれば、あれだけの性具を大量に買ってきたのだ。
いつもだったら、新しい嗜虐の種を見つけた宝玄仙は、なによりも、自分の嗜虐癖を優先して絶対に食事など後回しにする。
そういえば、あの磔の晒し刑からの救出以来、どことなく宝玄仙は大人しい。
嗜虐も激しくはないし、むしろ、お互いに愛し合うというような情事しか求めてこない気がする。
道術を失った……。
もしかしたら、それが宝玄仙の心に影を落とし、宝玄仙から自信のようなものを奪っているのではないか―――。
「そういうわけですから、沙那姉さん、孫姉さん……」
朱姫が破顔させながら、縄を持ってこっちに近寄ってきた。
この娘の調子の良さもなにか気に障る。
だいたい、なんで、自分は嗜虐側だと決めてかかっているのだろう。本来は、沙那と孫空女側の立ち位置にいるべきなのに……。
孫空女はそういうことに気にかける様子もなく、ふうと一度溜息をすると、着衣に手をかけた。
しかし、沙那はそれをとめさせた。
「そうね、確かに、そろそろね……」
沙那は朱姫と孫空女にぐいと拳を差し出した。
沙那の手には、さっき作った四本のこよりが握られている。
「なんですか、それは、沙那姉さん?」
朱姫がきょとんとした表情をした。
「もちろん、今夜の責められ役を決める籤よ、朱姫―――。さあ、ご主人様も含めて、一本ずつこよりを引いてください。文句なしの恨みっこなしです。公平にしましょう―――。だいたい、なんで、わたしと孫空女なんですか。四本の中に一本だけ短いこよりがあります。それを引いた人が残り三人の嗜虐を受けることにしましょう。籤で決まれば、わたしも諦めます。なにをされてもいいです」
沙那の険しい表情に、朱姫が困ったように宝玄仙に振り返った。宝玄仙は、首をすくめた。
「まあいいさ、たまにはね。今夜は籤で決めるさ」
これで今夜の犠牲者は籤でということになった。
沙那はほくそ笑んだ。
同時に、やっぱり、あっさりと沙那の申し出を応諾したことについて、少しばかり気になる。
手の中にあるこよりは、沙那の拳の中でどうにでもなる。
いま、四本とも同じ長さだが、沙那が決めた一本を拳の中で切断できるのだ。
「じゃあ、三人で選んでください。“せえの”で引きましょう」
沙那は言った。
「ご主人様から選んでいいよ」
孫空女が言い、宝玄仙が一本を掴んだ。残り三本から朱姫と孫空女がそれぞれこよりを摘まむ。
沙那は最後の一本を反対の手で掴む。
誰に当たりくじを引かせようかと考えたが、宝玄仙に決めた。
朱姫でもいいが、元気のない宝玄仙に気合を入れるのは、逆に苛めてあげるのが一番いいのだ。
激しい恥辱に遭った後で、急に元気がなくなったように大人しくなる宝玄仙……。
こんなことは何度もあった。
こんなときの対処法はいつも決まっている。
逆療法だ。
宝玄仙を苛める。
苛めると宝玄仙は、次の日に元気を取り戻す。宝玄仙の被虐性が満足し、本来の嗜虐癖が復活するのだ。
だから、今夜は宝玄仙―――。
そう考えた瞬間、沙那の心の中に黒い淫情が湧いた気がした。
道術を失った宝玄仙……。
その宝玄仙をしつこく嗜虐する……。
想像しただけでぞくぞくする。考えてみれば、たまにはいいのではないか。
それに、沙那には思うことがあった。
あまり口には出さないが、宝玄仙は、自分の心に潜むもうひとつの人格である宝玉がすっかりと表にも意識の中にも出てこないことを心配していた。
宝玄仙に言わせれば、おそらく、有来有去に屈服してしまったことが、宝玉の存在意義のなにかに触れてしまい隠れることを余儀なくされたのではないかと言っていた。
実際のところは宝玄仙にもわからないようだ。だが、間違いないのは、こうしている間にも宝玉は、宝玄仙を通じてすべてを感じているということだ。
宝玄仙はそれだけは間違いないと言っていた。
宝玄仙を刺激すれば、宝玉をなんらかのかたちで刺激することにもなる。
沙那は決めた。
今夜は宝玄仙を嗜虐する―――。
宝玄仙に当たりくじを引かせることなど簡単にできる。
沙那の手の中で宝玄仙が握るこよりだけが短く千切れる。
「せえの―――」
四人で言いながら沙那の手の中からこよりを引いた。
「やったああっ―――。ご主人様ですよ。ご主人様―――」
明るく叫んだのは朱姫だ。
嬉しそうに握り拳をつくって、歓びを身体で表している。
「しょうがないねえ……」
宝玄仙が肩をすくめた。
ふと気がつくと、孫空女が沙那を見ていた。
その表情には苦笑が滲んでいた。
どうやら沙那の細工には気がついたようだ。
沙那も孫空女に口元だけの笑みで返す。
そして、拳に残っているこよりの切れ端を丸めて、自分の服の中に隠した。
「さあ、ご主人様ですよ、ご主人様―――。今夜は、寝かせませんよ」
朱姫がさっそく宝玄仙にとりつき、宝玄仙の服を脱がせかかる。
宝玄仙も特に抵抗はしない。
あっという間に、宝玄仙は生まれたままの姿になった。
「じゃあ、始めますよ、ご主人様……。ご主人様は、たった今からわたしたちの奴隷です」
沙那は言った。
すると、一糸まとわぬ宝玄仙の身体がぶると震えた。
そして、急に落ち着かない表情になり、宝玄仙の両手が自分の裸身を隠すように、そっと乳房と股間に動く。
沙那は驚いた。
奴隷という言葉に宝玄仙が過激に反応したことだ。
こんなことはいつもの戯れに決まっている。
お互いの情事のときにはいつもそう言い合うし、滅多にないが宝玄仙をこうやって三人で嗜虐するときにだって言葉責めとして使う。
自信家で気の強い宝玄仙は、すぐに馬鹿にするなと罵り返すか、それとも、笑って受け流す。
それなにの、こんな風に怯えた子供のような反応をするなんて……。
やっぱり、道術を失ったというのは、宝玄仙にとっては、かなりの自信を失わせるような大きなことなのであろう。
とにかく、そういうことをなにもかも忘れさせてあげたい。
「それは、いいですねえ……。だったら、あたしが調教して差しあげますよ。昼間はご主人様で、夜はあたしたちの奴隷になるんです。奴隷主人のご主人様です。あたし、想像しただけで、ぐぐっときちゃいます」
朱姫が言った。
そして、宝玄仙が胸の前に置いている手を握って、身体を横に避けさせる。
「あっ……」
宝玄仙が小さな声をあげた。
「そうだね、ご主人様。奴隷というのも悪いものじゃないよ」
孫空女ももう一方の宝玄仙の手をぐいと引っ張って股間からどけさせた。
このふたりの力は強い。
道術のない宝玄仙には、もうこれだけで一切の抵抗はできないはずだ。
「お、お前たち、調子に乗るんじゃないよ―――。ゆ、許さないよ。今夜は特別に、宝玄仙に嗜虐するのを許しているんだ。わかっているんだろうねえ―――」
突然、宝玄仙が真っ赤な顔をして叫んだ。
いつものような余裕のある怒鳴り声じゃない。
必死の宝玄仙の叫び―――。
そんな感じだ。
「わ、わかっているよ、ご主人様……。そ、そんなにむきにならなくてもいいじゃないか」
「びっくりしました。いつも、もう少し、あたしたちに合わせてくれるのに、そんなに必死に言われたら、遊びじゃないみたいじゃないですか」
孫空女と朱姫が興醒めしたように言った。
宝玄仙も自分の声に戸惑ったような複雑な表情をしている。
沙那は、そんな宝玄仙たちを尻目に、二本の縄を天井の梁に引っかけて、それぞれに両端に距離を取って、梁に結んで二本の縄を垂らす。
「さあ、ご主人様、こっちに来てください。孫空女、朱姫、それぞれにご主人様の手首を繋いで頂戴」
沙那は言った。
「ま、待っておくれ。なにをするつもりなんだい」
「なにって……。心配しなくても痛いことはしないですよ、ご主人様。ここで、ご主人様に磔になってもらうだけです。国都のときと同じように……」
すると宝玄仙の表情に恐怖のようなものが映った。
「い、いやっ―――」
宝玄仙が首を激しく横に振って、腕を振り回して孫空女と朱姫の手を払った。
それだけではない。
はっきりとした怯えと身体の震え。
あの宝玄仙がまるで幼女のように反応して、追い詰められたかのように切羽詰った様子を見せた。
「えっ?」
「ご主人様?」
いつもと違う宝玄仙の様子に朱姫と孫空女が目を丸くした。
すると、宝玄仙もまた、自分の悲鳴に驚いたように呆然とした表情になった。
「い、いま、わたし……」
宝玄仙が自分の乳房を抱くような仕草でうろたえた声を出す。
孫空女が沙那の顔をちらりと見た。孫空女も宝玄仙の反応のおかしさが気になってきたようだ。
沙那は孫空女に頷く。
「大丈夫ですよ、ご主人様……。ご主人様は、きっと少し、敏感になり過ぎているんです。磔になると、国都で処刑されかけたときのことを思い出すんですよね」
沙那は、宝玄仙の前に立つと、優しく声をかけた。
「そ、そうかもしれないね……。悪いけど、磔は堪忍しておくれ、沙那。拘束してもいいから、いつものように普通に愛しておくれ」
「わかりました」
沙那は言った。
すると宝玄仙がほっとした表情になった。
「す、すまないねえ」
「いいえ、感謝の言葉には及びません、ご主人様」
沙那は、両手で胸を抱いている宝玄仙の両手首を掴んだ。
そのまま手を拡げて左右に無理矢理に拡げさせる。
「孫女、朱姫―――。さあ、我が儘を言うご主人様を縛ってしまいましょう」
「お、お前―――。覚えてなよ。い、いつか、道術が戻ったら、勘弁しないからね」
沙那に強引に手を拡げさせられた宝玄仙が真っ赤な顔をして叫んだ。
「仕返しについては、道術が戻るまで待つに及びません、ご主人様。明日には、わたしたちが、ご主人様の調教を受け直します。それだけは約束します。だから、今夜は、わたしたちの責めを受けてください」
沙那は言った。
「やっぱり、そうだよね。もしかして、やめるのかと思ったよ、沙那」
「沙那姉さん、時々、本当に厳しくなりますよね」
孫空女と朱姫が宝玄仙の手首を掴む。
天井の梁から垂れる縄を手繰って、宝玄仙の左右の手首を結んでしまう。
宝玄仙は、左右の斜め上から伸びる縄に両手を引っ張られるかたちになった。
「孫女、『如意棒』出して」
「はいよ」
孫空女が、耳から『如意棒』を出して、長さを人の背丈ほどの長さにした。
「お、お前たち、いい加減にしないか―――」
三人がかりで宝玄仙の脚を掴む。
宝玄仙は、嫌がって脚をばたばたつかせるが、腕を左右から吊りあげている宝玄仙の脚を三人がかりで縛るのだ。
あっという間に、脚を大きく拡げさせて、『如意棒』に結んでしまった。
孫空女だから自在に振り回している『如意棒』だが、本来であれば、大の男が三人がかりでやっと動かせるくらいの重さだ。
宝玄仙の力では、絶対にぴくりとも動かせない。
小屋の真ん中に宝玄仙の磔ができあがった。
そのとき、沙那は、宝玄仙の露わになった股間に、ねっとりとした女の蜜が溢れていることに気がついた。
「あれっ? ご主人様、もしかして……」
朱姫も同じものを見つけたようだ。
抵抗のできない宝玄仙の股間に、朱姫が手を伸ばす。
「ひいっ―――。や、やめるんだよ、朱姫―――」
宝玄仙が全身を真っ赤にして声をあげた。
「沙那姉さん、孫姉さん、見てください。まだ、なんにもしないのに、ご主人様のお股がびっしょり……。ふ、ふ、ふ、ご主人様、もしかしたら、感じてられるんですね。だから、あんなに磔になるのを嫌がったんですね」
「ひい、ひんっ……あ、ああっ―――そ、そんな……ちょ、ちょっと、朱姫……」
朱姫は面白がって、そのまま身体を悶えさせる宝玄仙の股間を弄り続ける。
宝玄仙の身体が小刻みに痙攣したように震えだした。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか、ご主人様……。あたしだって、縛られたり、恥ずかしい恰好にされたら、なんだかわからないけど、お股がびしょびしょになるよ。同じだよ」
「お、お前と一緒に……あ、ああ……す、するんじゃ―――な、ない……ひうぅ―――」
孫空女が指をすっと宝玄仙の左脇から腰に向かって撫ぜ下ろす。宝玄仙があられのない声をあげて、右に身体を捻るのを、沙那が今度は右の脇から宝玄仙の身体の体側を擦る。
逃げ場のなくなった宝玄仙が身体を前後に動かすが、朱姫が前側からだけでなく、後ろ側からの手を伸ばして、宝玄仙の股間を責めている。
宝玄仙は、よがり声というよりは、獣の声のような声をあげて、身体を仰け反らせた。
大した刺激を与えているわけじゃない。その割には、異常に激しい宝玄仙の反応だ。
「可愛いですね、ご主人様……。そんなに気持ちいいですか」
三人がかりで前後左右から責められて、宝玄仙が我を忘れたように、身体を振りたてている。
「じゃあ、今夜は、ご主人様に、あのときの磔刑のときに、どんなことをされたのか、そして、どんな風に感じたのか白状してもらいましょうね」
沙那は、宝玄仙の乳首には触れずに、その周りの乳輪をくるくると指で刺激した。
宝玄仙が泣き叫ぶような悲鳴をあげて、身体を逆方向に捻る。
しかし、今度も逆側から孫空女が責めたてる。
一方で、宝玄仙が優美な身体をうねり舞わせるのを見て、沙那は自分の心に嗜虐的な情欲が灯るのを感じた。