※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 本エピソード『【前日談】女巫女羞恥調教』は、仙士時代の若き宝玄が最初に御影の罠に嵌まった半月のうちの第一日目の出来事を描いています。


 *


295 羞恥廊下

 御影が部屋を出ていくのを呆然と見送った宝玄だったが、すぐに自分の置かれた状況を思い出して我に返った。

 ここにやって来るときに身に着けていた物は、たったいま御影が箱に抱えて、すべて持っていった。

 そして、宝玄は素っ裸だ。

 

 また、この部屋の外は御影の部下の執務室であり、御影が待っていると言った天教本部の門には、その執務室を通り抜けてから廊下を進み、階段を降り、大勢の人間の集まる待合室にもなっている入口の大広間を出て、前庭をしばらく進んでから、やっと辿りつくのだ。

 

 天教の敷地内は、『移動術』で移動することは禁止されているし、それを封じる結界が敷かれており、通常は道術では移動できない。

 ただし、大した結界ではないので、宝玄仙は禁忌など気にせずに、道術で移動したりもする。

 

 だが、いまは、その道術も首につけられた首飾りのために遣うことができない。

 つまりは、御影の指示に従って、天教本部の門に向かうためには、歩いていくしかなく、そのためには、御影に指示された衣服を身に着ける以外ないということだ。

 とにかく、いまは御影が言い残した机の引き出しの中の服という代物を着るしかない。

 

 宝玄は、御影の指示があった机の一番下の引き出しを開いた。

 そこには、真っ黒い服が畳んで入っていた。

 宝玄は一瞬、躊躇した。

 

 これまでの経緯を考えると、碌でもない服のような気がする……。

 しかし、宝玄の手足は、あの御影の道術に操られている。

 いまは、一時的に解放されているが、この瞬間にも御影が道術で操れば、宝玄の手足は勝手に動き出すのだ。

 

 とりあえず、なんでもいいから服を身につけなければ、素っ裸で天教本部を闊歩させられる羽目になるかもしれない……。

 そんなことになれば、天教の若き女仙士の宝玄は破滅だ。

 

 この服を着るしかない──。

 宝玄は覚悟を決めて、その黒い服を身に着けた。

 

「な、なんだい、これ──?」

 

 黒い服は真っ黒い貫頭衣だったが、宝玄は思わず声をあげてしまった。

 びっくりしたのは、あまりにも短い丈だ。

 いや、これは下袍とはいえないのかもしれない。

 

 なにしろ貫頭衣の裾で隠れる丈の裾の部分よりも、露わになった太腿が遥かに長いのだ。

 下袍というよりは、ちょっと裾丈のある上衣だけを身に着けているという感じだ。つまり、その貫頭衣の下袍が隠しているのは、宝玄の太腿の付け根のぎりぎりのところまでなのだ。

 

 しかし、その下袍の下にはくべき下着の類いは、その引き出しに入っていない。

 嫌がらせは、下袍の丈だけではない。

 

 貫頭衣の前はボタンで留めるようになっているのだが、上から三個のボタンがあらかじめ引き千切られている。

 そのため、宝玄の豊かな裾野は乳首の近くまで露出してしまっている。

 しかも、布地は薄く、全体的に服が小さいのだ。

 従って、宝玄の丸く豊かな乳房のかたちばかりではなく、乳首までうっすらと透けて見える気がする。

 

「あ、あいつ……」

 

 御影の仕打ちに腹が煮える。

 こんなみっともない服を着て、天教本部内を歩けるわけがない。

 宝玄は、ほかの引き出しも開けてみた。せめて短すぎる下袍の部分を補う布でもないかと思ったのだ。

 すると一箇所の引き出しに、小さな女物の白い股布の下着があった。

 なんでこんなところにも思ったが、考える暇はない。こんな短い下袍では、裾が歩くだけでめくりあがりそうだ。

 せめて、下着くらい身につけたい。

 宝玄は下着をはいた。

 

「くっ」

 

 その下着で腰を包んだとき、はく前にはわからなかったたくさんの突起物が股間に当たったのだ。

 しかも、その股布で股間を包んだ瞬間に霊気の高まりを感じた。

 さらに下着の股間部分になにかが塗られているようでぬるりとしている。

 それが気持ち悪い。

 

 これは、霊具だ……。

 とっさに思った。

 慌てて脱ごうとした。

 しかし、布はぴたりと腰に密着して肌と一体化したように動かない。

 

 罠だった……。

 宝玄は心の中で舌打ちした。

 

 御影は、丈の短い服を指示した引き出しの中に置いておけば、おそらく、その丈の短さに驚いた宝玄が、ほかの引き出しも探すと予想していたに違いない。

 そして、宝玄は、その通りに行動し、別の引き出しに入っていた下着に不自然さを感じるよりも早く、その得体の知れない股布を自ら身に着けてしまった。

 

「あっ……」

 

 急に宝玄の脚が勝手に動き出した。

 御影の道術だ──。

 

 宝玄には抵抗のしようもない。

 あとは、どこに連れていかれても、そこに向かうしかないのだ。

 宝玄の足は、扉に近い戸棚の前でぴたりと静止した。

 ふと見ると、やたらに踵の高い歩き難そうな女物の靴がある。

 

 いま、宝玄は素足だ。

 履けということだろう。仕方なくその靴を履いた。

 すると、また足が動きだし、部屋の外に出る扉の前でぴたりと歩みを止めた。

 つまりは、扉を開いて、外に出て行けということだろうか……。

 ためしに後ろに進もうとしてみた。だが、足はぴくりとも動かない。

 

「ど、どこかで見ているのかい、御影──。陰気な真似はやめて、堂々と姿を見せな」

 

 宝玄は叫んだ。

 宝玄が服を身に着けたのを見計らったように足が扉に移動して、宝玄を部屋の外に促すような動きをした。

 天教本部の門で待っていると言っていたが、御影はなんらかの手段で、宝玄を観察しているとしるのだろうか……?

 

 しかし、もちろん返事はない。

 宝玄は、またもう一度、部屋の中を観察しようと思い、もう一度なんとかして部屋に戻ろうとしてみた。

 

 だが、やっぱり扉の前から離れられない。

 手は自由なのに、後退する場合に限り、脚が金縛りになったかのように動かなくなるのだ。

 

 宝玄は意を決して、扉を開いた。

 すると、脚の自由が戻った。

 こうなったら、この恥ずべき格好で、御影のいるところまで行くしかない。

 だが、査察卿である御影の執務室の外は、五、六名の若い教団員の男が仕事をしていた。

 その視線が一斉に宝玄に向く。

 

 一気に通り過ぎようと思ったが、さすがの宝玄でも脚が竦んだ。こんなぎりぎりの丈で人前に立つ恥ずかしさは、眩暈を覚えるほどだ。

 宝玄は横を向いて、顔を部員たちから背けるようにして、彼らの座る机の真ん中の通路を進んだ。

 部員たちが、好奇の視線を向けているのは、顔をそっちに向けていなくてもわかった。

 しかも、踵が高すぎて歩き難い。

 かつかつと床を叩く音が響くような作りにもなっていて、それが宝玄に注目を集める気がして、羞恥を誘う。

 

「おや、宝玄仙士殿、お帰りですか?」

 

 一番廊下側に座っていた部員が声をかけて立ちあがった。

 髪の色も年恰好も御影と同じくらいだろうか。

 だが、雰囲気は異なる。

 両耳に大きくて目立つ白い石のぶらさがった耳飾りをつけていた。

 

「そ、そうだよ……」

 

 声をかけられて、緊張で心臓が爆発しそうになった。

 なんとか、それを顔に出さずにすんだ。

 そのまま、逃げ去ろうと思った。

 しかし、その男が宝玄の通り抜けようとする通路の真ん中にとおせんぼをするように移動した。

 

「邪魔だよ」

 

 宝玄は、そう言いながら、横をすり抜けようとした。だが、また男がそれを邪魔するように身体を動かす。

 宝玄は行く手を阻まれてしまった。

 

「な、なんだい、お前──?」

 

 かっとして怒鳴った。

 

「御影様に指示をされておりまして……。お送りしますよ」

 

 男がにっこりと笑った。

 

「間に合っているよ。どきな──」

 

 宝玄は男の身体を押しのけようと、その男の肩に手を伸ばした。

 そのとき、腰布の突起が突然に動き出した。

 

「あっ」

 

 思わず声を洩らして、宝玄はその場に転びそうになった。

 股間の敏感な場所に当たる突起の存在は気になっていたが、まさか、それが動き出すとは思わなかったのだ。

 

 しかも、こんな場所で……。

 不安定な踵の高い靴のせいもあり、宝玄はその場に崩れそうになる。

 

「大丈夫ですか、宝玄仙士殿? そんな短い丈の服で転ばれると、下着が丸出しになりますよ」

 

 姿勢を崩しかけた宝玄の腕を眼の前の男が抱えた。

 宝玄は男の腕に抱えられるようなかたちになったが、股間の振動が停止したために、すぐに男の手を振りほどいて姿勢を戻した。

 しかし、そのとき、その男から違和感を覚えた。

 

 男の体臭だ。

 昨日抱かれた御影と同じ臭いだったのだ。

 

「お、お前、誰だい……?」

 

 改めて宝玄は男を見た。

 御影には顔は似ていない。

 しかし、おかしな感じだ。どことなく、御影に共通の雰囲気を感じる。

 

「誰でもいいじゃないですか……。でも、どうしても、名前を呼びたければ、“影法師”でいいですよ」

 

「影法師? それが名かい?」

 

「御影様の指示を受けて、あなたのお世話をするように命じられた影法師ですよ。さあ、行きましょう」

 

 影法師と名乗った不気味な男は、宝玄の前を開けた。

 ふと気がつくと、この部屋の全員の視線が宝玄に向いている。

 宝玄は舌打ちをして、男の横をすり抜けて、逃げるように扉の外に出た。

 影法師が自分を追ってくるのがわかった。

 

 外は廊下だ。

 幸いにも誰もいない。

 

「じゃあ、下袍をまくってもらいましょうか。階段までで許してあげましょう。両手で下袍をめくったまま歩いてください、宝玄仙士殿」

 

 影法師が背後から声をかけた。

 

「な、なんだって──」

 宝玄はかっとなり、後ろを振り向いて声をあげた。

 しかし、次の瞬間、股間の下着の突起がまた突然に動き出した。

 

「くっ」

 

 膝ががくりとおちるのをかろうじて耐えた。

 顔をあげると、影法師が耳にしていた白い飾りを手に持ってにやにやと笑っている。どうやら、あの耳飾りが宝玄の股間の突起を動かす霊具になっているようだ。

 

「言うことを聞かないからですよ、宝玄仙士殿」

 

 突起の振動が停止した。

 宝玄は姿勢を直して立ちあがった。

 

 それにしてもおかしい。

 敏感な場所を刺激されているとはいえ、あまりにも感じすぎる。

 自分の身体が鈍感というわけではないが、性については百戦錬磨の宝玄は、ある程度の自分は性感を制御できるつもりだった。

 それが、こんな下着程度の振動でどうしようもなく翻弄されている。

 

 それに股間の疼きが異常だ。

 しかも、なんだかむず痒いような感じが……。

 

「おっ、その表情はやっと気がついてくれたようですね。宝玄仙士殿が身に着けている下着には、たっぷりと媚薬が塗ってあったんですよ。股が熱いんじゃないですか。あんなにたっぷりと塗っておきましたしね」

 

 影法師がくすくすと笑った。

 御影の笑いにそっくりの嫌な声だ。

 

「こ、この卑怯者──。なんてものをはかせるんだい──。さ、さっさと取っておくれ──」

 

「これは心外ですね。まるで無理矢理にはかせたような口ぶりじゃないですか。それは理由があって、俺が、御影殿の机の中に置いておいたものですよ。それを勝手にはいたのではないのですか? 誰もはけと命令したわけではないはずですがね」

 

「なっ──」

 

 宝玄は絶句してしまった。

 そのとおりだからだ。

 御影に身に着けるように命じられたのは、黒い貫頭衣だけで、別の引き出し見つけたこの下着を勝手にはいたのは宝玄だ。

 

「だ、だったら、謝るよ……。でも、これを脱がしておくれ」

 

「駄目ですね。もう汚れてしまっているじゃないですか。あなたの淫汁の匂いがここまで漂っていますよ。いまのでしっかりと濡れたようじゃないですか──。勝手に他人のものを使って、しかも汚したんだから、そのまま返すんじゃなくて、洗濯くらいしてください。まあ、しばらく、はいていていいですよ……。それに、どうせ、いまのあなたには脱げませんよね。それを脱がすことができるのは、御影様だけです……。御影様に会ってから頼むんですね」

 

 影法師が、宝玄の首に手を伸ばして、道術封じの首飾りを指で弾いた。

 この男がなにものかわからないが、なにもかも御影から聞いていて、ぐるになっているようだ。

 ここは、諦めるしかない……。

 宝玄仙は歯噛みした。

 

「さあ、それよりも、ぼやぼやしていると人が来ますよ。誰も来ないうちに、終わらせた方がいいんじゃないですか? 下袍をまくって、階段のあるところまで進むんです。拒否すれば……」

 

「あっ」

 

 また股間に振動が発生する。

 宝玄は悲鳴をあげそうになるのをなんとか噛み殺した。股間に塗られていたらしい媚薬は、確かにもう宝玄の股間にただれるような欲情を引き起こしている。

それを突起の振動で刺激されるのはたまらない。

 

「お、お前、いい加減に……」

 

 宝玄は影法師を睨みつけた。いつまで経っても振動が止まらないのだ。

 

「早く、下袍をまくるんですよ……。それにしても、学習しない女だなあ……」

 

「な、なんだと……くっ──」

 

 宝玄が悪態をつこうとすると再び股間の振動が強くなり邪魔をする

 

「それとも、もっと強くしないと命令に従う気になりませんか?」

 

 すると突然にもの凄い振動が股間で起こった。

 これまでの振動とは比べものにならないような強い刺激だ。

 肉芽や女陰や肛門までもが一度に強く振動される。

 

「ほおおっ」

 

 宝玄は薬剤によって性感を溶かされている股間を手で押さえて、その場にしゃがみ込こんだ。

 とてもじゃないが立ってはいられない。

 

「おやおや、そんな下袍でしゃがみ込んだら駄目ですよ。尻が丸出しですよ」

 

 頭の上から影法師の笑い声がする。

 宝玄は慌てて、片手で下袍の裾を伸ばして、剝き出しになった尻を隠そうとするが、あまりにも短い下袍は、いくら布を引っ張っても、尻を隠してはくれない。

 

「わ、わかった、やる──。やるから……」

 

 宝玄は声をあげた。

 すると振動がやっと止まる。

 宝玄は、影法師を睨みつけたまま、なんとか立ちあがって、下袍の裾を伸ばした。

 

「さあ、めくって……」

 

 影法師は手に耳飾りの片方を持ってにやにやと笑っている。

 宝玄は唇を噛みながら、もう一度、さっと周囲に人影がほかにないのを確かめてから、貫頭衣の下袍の部分をたくしあげた。

 それほど捲らなくても、おかしな下着に包まれた宝玄の太腿の付け根が露わになる。

 

「いい恰好ですよ。じゃあ、これをあげますね」

 

 影法師は、まだ片耳に装着したままだったもうひとつの耳飾りを外すと、手を伸ばして宝玄の片耳に装着した。

 

「階段までそのまま進むんです。下袍をおろさずにね……。ふふ……」

 

 影法師がくすくすと笑った。

 階段の上……。

 宝玄は前を見た。

 

 ここから階段のある場所までは十間(約百メートル)程度だ。

 歩けばあっという間だが、この天教本部はかなり造りが複雑であり、そこに着くまでに二本の渡り廊下と交わっている。

 廊下には、いくつもの事務室の扉がある壁もある。

 いまは人影はないが、いつそこから誰かが現われるかわからない廊下を、下袍を自らめくった恰好で歩くとなれば、もの凄い緊張感だ。

 

 そのとき、ふと背後で霊気が動いた気がした。

 はっとして振り返った。

 いつの間にか、影法師の姿が消滅している。

 

「なに?」

 

 宝玄は思わず声をあげた。

 

 “心配いりませんよ。俺の声は聞こえるでしょう? もっとも、話しかけるのはできませんがね。さあ、進んでください。本当に人が来ても知りませんよ……。到着したら、これを止めてあげますよ。さもないと、だんだんと強くなりますからね”

 

 耳飾りから声がした。しかも、耳障りな笑い声まで聞こえてくる。

 そして、また股間が振動した。

 今度は、洩れそうになった声をなんとか噛み殺した。

 しかたなく、両手で下袍をまくったまま、足早で歩き出す。

 

 宝玄はうつむきながら、股間に力を入れて歩いた。

 歩いている廊下の右側は、多くの事務室と接している。そこから不意に人が出てくるのではないかと緊張する。

 左側の二本の隣の棟と結んでいる渡り廊下から誰かがやってくるかもしれない。

 とにかく、誰かがやって来るまでに、歩き終わろうとだけ思った。

 しかし、股間の下着が振動を続けているだけに、嫌でも緊張感が高まる。

 

 宝玄は下袍をめくったまま足を進めた。

 どうせ、どこからか観察している。命令に従わなければ、なにをされるかわからない。

 道術を封じられているいまは、連中の言いなりになるしかない。

 だが、道術が復活すれば……。

 

 履いている靴がこつこつと音をたてる。静かな廊下にその音が響き、宝玄の心臓は緊張で破裂しそうだ。

 

 あと約三間(約三十メートル)……。

 二つ目の渡り廊下をすぎれば、そこが階段だ。

 そのとき、はっとした。

 

 渡り廊下に人の気配を感じたのだ。

 交点の手前で立ちどまって、おそるおそる直角に交わっている渡り廊下を覗き見た。ふたり連れの若い男がこっちに向かって歩いてくる。

 しかも、すぐ近くまで来ている。

 

 宝玄は慌てて、下袍をおろそうとした。

 

 あっ──。

 思わず声が出そうになり、かろうじて耐えた。

 下袍を捲りあげたままの手が動かないのだ。

 この状態で手を操られた……。

 すぐに身体を反転させて逃げようとしたが、今度は足も動かない。

 

「……か、影法師……、人が来るよ……」

 

 宝玄は廊下の真ん中で下袍を捲りあげたままという破廉恥な姿で、気が動顛してささやいた。

 しかし、さっき、影法師にこちらから言葉を伝える方法はないと言われたのを思い出した。

 

「ふっ……くっ──」

 

 思わず声が出た。

 股間の下着の突起の振動がだんだんと強くなってきたのだ。

 唇を噛んで、宝玄は身体を硬くした。

 しかも、下着の内側に塗られていたという妖しげな薬剤のせいか、股間からは甘美な疼きがどんどんと込みあがっている。

 

 もうすぐやってくる……。

 宝玄は気の遠くなるような羞恥の緊張に襲われた。

 だんだんと声が近づく……。

 激しい羞恥と緊張──。

 しかも、強くなる股間の振動に、身体は甘いうねりに揉みしだかれはじめている。

 

「おい──」

 

 別の声が渡り廊下の遠くから聞こえた。

 どうやら、こっちにやってくるふたりの若者を後ろから呼び止めた者がいたようだ。

 そのふたりが返事をして戻っていく。

 宝玄は安堵で膝が折れそうになった。

 

 “悪運が強いですね。進んでいいですよ……”

 

 影法師の声がした。

 足が自由になる感触が戻った。

 しかし、手は自由になった気配はない。

 両手で下袍の裾を掴んでまくりあげたままだ。

 宝玄は下袍を握りしめたまま、渡り廊下の交点を抜け去り、やっと階段の上に辿りついた。

 

“じゃあ、御影様の待っているところに向かっていいですよ”

 

 階段の上に到着すると、手が自由になった。

 太腿の付け根が、恥ずかしいくらいに濡れているのを宝玄は感じた。

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