*
「じゃあ、一番口は俺がいただくぜ」
宝玄の眼の前にいた肥った男が嬉しそうに声をあげると、いきなり下袴を脱いで怒張を露わにした。
「おおおっ?」
口を閉じられないように開口具を装着されている宝玄は、鼻先に迫ってきた男の男根に言葉にならない声を迸らせた。
男の怒張は信じられないくらいの悪臭だ。
しかし、その男根が容赦なく、宝玄のぶざまに開いた口の中に押し入れられる。
しかも宝玄が顔を動かせないように首輪をぐいと掴まれる。
「おごごおっ、ほごおっ──」
宝玄は声を放つとともに、手錠をかけられた両手で、首輪を掴んでいる男の手を外して、口に入れられた怒張を口の外に出そうと思った。
しかし、いつの間にか眼の前の男の足は、宝玄の手錠のあいだの鎖の上にある。
宝玄の力では、それをどかすことはできない。
すると、肉芽に嵌められた霊具の輪が、宝玄の股間に激痛を与えた。
「ほごおおっ」
宝玄は泣き声をあげた。
「抵抗するんじゃないよ、雌豚──。大人しく口を開いてじっとしていればいいんだ──。お客さんたちも、あまり抵抗するようなら、鼻鉤でも引っ張ってやりな。大人しくなるから」
演台側から影女の声がした。
すると面白がって、目の前の男以外の何人か手が宝玄の鼻鉤に伸びた。
上にあげられている鼻の穴をさらに引っ張りあげられて、宝玄はその痛みに声をあげた。
こんなこと許さないよ──。
宝玄は叫びたかったが、群がる男たちの前に、宝玄にはどうすることもできない。
少しでも抵抗を気配を見せれば、演台にいる影女が道術で宝玄の股間に激痛を与えるし、周りの男が宝玄の鼻をぐいぐいと引っ張る。
宝玄は大人しく眼の前の男の悪臭の漂う怒張を受け入れるしかなかった。
男の一物はかなり大きなものだった。
そして、かなり長い。それが固定された宝玄の口の中を蹂躙して、上顎や頬や喉元に擦られる。
「おげっ、おげっ」
宝玄は怒張の先が喉の奥に当たるたびに、苦しくて嗚咽をあげ続けた。
男は、宝玄の口を自慰の道具のようにして、一物を抽送して宝玄の口中の好きな場所に擦って刺激を得ている。
それは宝玄にとって、途方もない恥辱だった。
舌の技だって、性に百戦錬磨の宝玄は自信もあるし、こんな男など数瞬でいかせてしまうことは可能だ。
宝玄の舌技を味わいたくて、何人もの貴族男が宝玄に貢物を持ってやってきたりもする。
それが眼の前の粗野な男は、この宝玄の口をただの物であるかのように、自分の一物を擦る道具として扱うのだ。
それは、裸身にされて四つん這いで男たちの座る場所を這い回されたことよりも、恥辱的で侮辱的だった。
だからといって、宝玄の口を蹂躙している男に、自慢の舌技を味わわせてやる気にはなれない。
「おお、いいぜ、こいつの口は温かくって、柔らかくって最高だ──」
眼の前の男が男根の出し入れを続けながら吠えるような声をあげた。
そして、三十回くらいになった頃だろうか……。
突然、男は宝玄の口から怒張を引き抜くと、その先端から男の精を宝玄の吊りあげられた鼻の穴めがけてかけたのだ。
「ほごおっ」
宝玄は涎を撒き散らしながら、その気持ち悪さと臭気に抗議の声をあげた。
だが、周りの男たちは、宝玄の惨めな表情に、余計に盛りあがって歓声をあげた。
「そら、次だよ──。次もしっかりと咥えるんだよ──。さあ、次は誰にしようかねえ……」
演台の影女が声をあげた。
すると、首輪がぐいと宝玄を引っ張った。宝玄は慌てて、四つん這いの手足を前に進めた。
なんという惨めな姿だろうか……。
宝玄は、改めて自分の姿に愕然とする。
美貌の天才霊具作りの才女として、多くの人間の畏怖と尊敬を集めさえする自分が、こんな場末の見世物小屋で、男たちの性器で口を犯されるために、四つん這いになって這い回らされているのだ。
こんなことは、想像もできない恥辱だ。
なによりも情けないのは、吊りあげられることで鼻の奥まで曝け出されている無様な顔と、口が閉じられないために垂れ続ける涎だった。
宝玄は、あまりの屈辱で気が遠くなるような気さえしながら、再び男たちの身体の隙間を縫って、見世物小屋の中を進み続ける、
次に停止したのは、まだ十代と思うような若い男の前だった。
なにをされるかわかった宝玄は、今度はそれほどの抵抗はしなかった。
すぐに若い男の怒張が、宝玄が開いている口の中に入ってきた。
口の中に占領してきた一物が、宝玄の口腔を犯し始める。
宝玄は鼻の穴で必死に呼吸をしながら、このいまいましい儀式に耐えた。
その若い男は、おそらく三十回はもたなかったように思う。
うっと声をあげて、慌てたように宝玄の口から勃起した男根を抜くと、宝玄の口の周りに、精を放った。
そして、また、首輪が引っ張られ始める。
今度は比較的すぐに停止した。
相手は初老の男だった。
だが、一物は逞しかった。
その初老の男は宝玄にぴったりと三十回の抽送を繰り返してから、余裕たっぷりに、宝玄の鼻の穴めがけて精を放った。
「ほごっ、ごっ、おごっ」
鼻の穴を精で塞がれたかたちになり、宝玄は必死になって顔を左右に振って精を鼻から取り払った。
その宝玄の苦しそうな仕草に、観客たちが拍手喝采した。
そして、また首輪で歩きはじめる。
同じように、四人、五人と口を犯され、顔に精をかけ続けられた。
やがて、不意に眼の前に、椅子に座るの男の革靴が映った。
見物席の壁端を通過していたときのことであり、宝玄の身体は首輪に引っ張られて、左から右に動いてたところを、今度は右から左に方向変換しようとしていた。
「お愉しみのようね、宝玄ちゃん」
その瞬間、宝玄の血が憤怒で沸騰しそうになった。
それは御影の声だった。
宝玄をこんな目に遭わせ、その無様な様子を壁際の椅子に座って、笑って見物をしていた卑劣漢の声だ。
「ねえ、影法師、あんたも舐めてもらったらどうなの? この帝都でも一、二を争うなかなかの舌技を持っている女よ」
御影が隣に座っている影法師と名乗る男に話しかけた。
宝玄を引っ張っている首輪の鎖がまたとまる。
考えてみれば、今日のこの恥辱の一日は、このふたりから始まったのだ。
まずは、御影に、掻痒剤を股間に塗られたうえに、道術錠付きの貞操帯を装着させられた。
そのきっかけは、この御影と昨夜行きずりの性交を愉しんだことであり、朝、目が覚めると、この男は宝玄をそういう状態にしていたのだ。
それでも宝玄の道術なら、御影程度の道術錠などすぐに無効にするのは可能だった。
だが、御影は、宝玄の母親に関する弱みを握っていて、それで脅して、宝玄に言いなりになるように要求したのだ。
御影の脅迫と股間の痒みに屈伏した宝玄は、御影から『道術封じの首飾り』を首に巻かれ、驚くほど裾の短い下袍の下に、痒み剤を塗った下着を身につけさせて、天教本部の外に連れ出されたのだ。
破廉恥な恰好と痒みの苦痛に襲われる宝玄を天教本部内で連れ歩いたのは、御影の知り合いだという影法師と名乗るこの男だった。
そして、天教本部の門からこの見世物小屋まで宝玄を誘導してきたのは、いま、宝玄をここで公開調教している影女だ。
すべてが、この御影が糸を引いていることに間違いない。
そう思うと口惜しさに涙が出てくる。
「ええっ? 嫌ですよ、御影様──。こんな汚い顔をした女に性器を舐められるなんて──」
影法師が笑った。
なんだと──?
宝玄は煮えかえるような思いを吠え声で吐き出した。
「じゃあ、足なんてどう。足の指をしゃぶってもらいなさいよ」
御影が笑いながら言った。
「そうですね……」
すると影法師が履いていた片方の革靴を脱ぎ始めた。
「ごおっ、ごっ」
宝玄は抗議の声をあげた。
しかし、その瞬間、また股間に針が刺した痛みが迸った。
「ほごおおっ」
宝玄は、その激痛に身体を仰け反らして泣き声をあげた。
「なにを嫌がっているのよ、宝玄──。この雌豚──。ちゃんと奉仕しないと折檻よ──。まったく、いつになったら覚えるのかしらね。本当に物覚えの悪い雌豚よねえ──」
演台の影女がわざとらしい呆れ声を発した。
「おおっ?」
そのとき、突然、宝玄の両手ががくりと曲がって四つん這いの姿勢から、腕を折って頭を床までさげた体勢になった。
御影の道術だ。
宝玄は、御影の道術を受け入れて、手足が御影の意思の自由に動さされる操り術にかけられている。
その術によって、御影が、宝玄の手を畳ませて宝玄の顔を床までさげさせたのだ。
「じゃあ、お願いしますか……」
影法師が靴を脱いだ足先を宝玄の鼻孔の下と口に押しつけてきた。影法師は足に薄い布を履いていたが、その布越しに影法師の体臭が強制的に漂ってくる。
男の臭気の漂う足先を舐めさせられる……。
その屈辱に耐えながら、宝玄は口の中に入り込んできた足先に自分の舌を這わせた。
しかし、舌を動かしながら、宝玄はあることに気がついた。
それは影女にも感じたものであり、このふたりが宝玄と密着するたびに感じるものでもあった。
匂いだ……。
昨夜、御影と抱き合ったときに嗅いだ体臭……。
そして、影女……。
いま口の中にある影法師の臭い……。
この三人の体臭は全く同じだ。
宝玄は漠然とした疑念を覚えながら、口の中にある影法師の爪先を一身に舌を這わせた。
「なかなかの舌技ですよ、宝玄殿」
影法師が笑いながら言った。
その言葉で、宝玄は思念から醒めた。
気がつくと、宝玄は考え事に捉われて、無意識のうちに一生懸命に影法師の爪先を舐め続けていたようだ。
こんな場末の見世物小屋で、顔を床に這わせて、男の足先を舐める……。
それは、途方もない屈辱であるはずだが、なぜか自分の心がざわめくのを宝玄は感じた。
「ご苦労様でした」
やがて、影法師が宝玄の口から足の指を抜いた。
足先とともに大量の涎が口から出ていった。
同時に動かなかった腕が自由になる。
すると、また首輪に繋げられた鎖が動き出して、宝玄を前に導いた。
観客たちが、また、歓声をあげた。
*
結局、宝玄は見世物小屋を全部で三往復させられた。
そのあいだに、口を肉棒で犯された人数は二十人以上には達したと思う。
やっと首輪の鎖が影女の待つ台上に戻されたときには、もう手足が疲労で痺れて動かなくなりかけていた。
とりあえず鼻鉤と口枷と首輪の鎖は外されたが、その代わりに、また演台の中央に拘束され、宝玄は両腕を上方にあげて、脚を拡げた状態にして立たされた。
影女は、今度は、宝玄の両手首にかけた手錠を天井から垂らした鎖に繋げ、宝玄の両足首を長い鉄棒の端と端に革紐で縛らせたのだ。
宝玄をその状態にすると、影女は観客に向かって、余分な料金を払えば、砂時計の砂が落ち切るあいだ、宝玄の身体を触り放題にすると口上で述べた。
「い、いい加減にしろ──」
宝玄は怒鳴ったが、それすらも、まるで演出の一部であるかのように、観客の男たちは、宝玄の反応に悦びの声をあげる。
そして、本番はなしだが、どこを触ってもいいという条件に対して、あっという間に大勢の男が手をあげた。
結局、四人ひと組ということになり、最初の四人が演台にあがってきた。
「わっ、ああっ」
さっそく、その四人が宝玄の身体に手を伸ばしてきた。
左右の胸を別々の男に揉みあげられ、股間にたくさんの手が伸びる。女陰と菊座に無遠慮に男たちの指が代わる代わる入ってくる。
「あはあっ、ちょ、ちょっと、それはだめぇ──」
粗野でぎこちない愛撫だが、媚薬に火照りきっている裸身には十分な刺激だった。
宝玄は、四人同時の愛撫に、自分でもびっくりするような激しい反応を示してしまった。
考えてみれば、熱く燃えたぎっていた身体は、四つん這いで歩かされながら、口中で奉仕するだけであり、ずっと放置されている状態だった。
それが今度は四人ががりの愛撫を受けるのだ。
宝玄の性感は一気に暴発した。
「天教の天才巫女の別の顔は、女調教師と聞いていたけど、お前の本質は責めじゃないね……。お前の本質は、被虐癖だよ。ひと目見て、すぐにわかったけどね……」
四人の男に全身を刺激されてよがり狂う宝玄に、影女が近づいてきて、耳元でささやいた。
「じょ、冗談じゃ……はっ、はあっ、ああっ──な、ない……いやあっ、はああっ……」
「なに、否定しようとしているんだい……。あたしも、この道は長いんだよ。お前は責められれば欲情する豚さ」
影女がそう言って離れていく。
否定の言葉と悪態を返したいが、激しい快感で息をするのもやっとの宝玄にはそれができない。
それに、影女の言葉が、実は宝玄のもうひとつの姿を的確に射抜いていることを宝玄自身が知っていたのだ。
影女の言葉を宝玄自身が完全には否定できない……。
隠そうとしている性癖……。
それが、今日一日で強引にさらけ出された……。
一日中続いた羞恥責めで神経を削り取られ……。
考えたこともないような恥辱的な行為を強要され……。
屈辱に震え、羞恥に翻弄されながら与えられる快感は、確かに究極の快楽といえるくらいに、宝玄を興奮させた。
それは、心の奥に隠していた宝玄のもうひとつの性癖をどんどん抉り出されるような体験だった。
宝玄は、自分が気の強い女を調教して、その女が屈辱に顔を歪めるのを眺めることに愉悦を覚えるのと同じくらいに、宝玄自身が辱しめられて望まぬ快感を与えられることに、途方もなく欲情することを知っていた。
多淫であり、幾人もの若い女の性奴隷を持つ嗜虐癖の宝玄のもうひとつの顔……。
惨めであればあるほど、愉悦を覚える被虐の性癖……。
幼い頃に、母から身体に浸みつけられた性癖であり、それこそ、宝玄の狂ったような淫情の原点……。
それがこの一日で解放された……。
そんな気さえする……。
とにかく、もう、宝玄は、いまこの場については、自分の痴態を隠したり、快感を抑制しようという気はなくなっていた。
隠されている被虐の欲望を今夜は思う存分さらけ出す……。
もう、そう決めた。
男たちの四人がかりの愛撫が続いている。
いまは、性感帯を内側から責めたてる疼きが出口を求めて、淫情の暴流を起こしている。
それを解放する。
あられもない痴態を我慢できないし、したくない……。
全身の性感帯が同時に、しかも大きな快美感に埋め尽くされる。
宝玄は伸ばされた四肢を振り立てて、やってくる激情に声をあげた。
「随分とのぼせあがっているじゃない、雌豚」
影女が揶揄するように声をかけてくる。
しかし、快感が強すぎて、それに応じることができない。
宝玄は全身を動き回る男たちの手の刺激にひたすらに酔い続けた。
「交替だよ」
やがて、影女が声をかけた。
すると、突然に宝玄を襲っていた愛撫が終わり、四人の男たちの手が離れた。
愛撫の時間は、長いものではない。
むしろ短すぎる。
媚薬にただれる身体を八本の手で刺激される快楽は大きいのだが、あまりにも短いために、それが突然に中断された感じだ。
宝玄の身体は、中途半端に燃えあげられたもどかしさが、ふつふつととろ火の状態でくすぶっていた。
すぐに、次の四人があがってきた。
宝玄は再び始まった快感の暴流に、また我を忘れて身体を震わせはじめた。
繰り返す淫情に頭が朦朧としてきた宝玄は、いまの四人の次に、また次の四人……。その後ろにも、また四人が待っていることを辛うじて知覚した。
まだまだ長い夜は続きそうだ……。
快感の声をあげながら、宝玄は思った。
*
「起きなさい」
声がした。
「いい加減に起きなさいよ」
宝玄は眼を開けた。
「み、御影……」
宝玄が顔を向けた方向に御影が立っていた。
その後ろに、影法師と影女もいる。
影法師と影女がいる場所には、卓があり、御影を含めた三人は食事をしていたようだ。
部屋の中には窓からの陽の光が射し込んでいる。
どうやら、朝のようだ。
だが、なぜか、宝玄がいる場所は薄暗い。
鉄の棒……?
三人の立っている場所と宝玄が横になっている場所のあいだに、鉄の細い棒のようなものが幾つかがある。
これはなんだろう……?
「て、鉄格子──? 檻──?」
宝玄はびっくりして起きあがった。
「いたっ」
するとなにかがごつんと頭に当たった。
上も鉄格子だ。
それでやっと気がついた。
宝玄は大型の獣を入れるような鉄格子の檻の中に寝かされていたようだ。
手足の自由を妨げる枷はないが、その代わり素裸で鉄格子の檻に入れられている。
檻の大きさは宝玄がうずくまって寝るくらいの大きさはあるが、上半身を起こすには低すぎる。
だから、宝玄は身体を起こそうとして、上側の鉄格子に頭をぶつけたのだ。
「あらあら、気をつけてね、宝玄ちゃん……。それよりも、洗顔用の水と朝食よ」
眼の前の鉄格子の下側に小さな蓋がついていた。腕が一本通るくらいの大きさであり、人が通り抜けられるような大きさではない。
出入りをする鉄の扉は、その上にあったが、しっかりと錠がかかっていた。
はっとして、首に手をやった。
やはり、『道術封じの首輪』がつけられたままだ。
身体には、まったく霊気がない状態になっている。
「ちっ」
宝玄は思わず舌打ちした。
すると、鉄格子の下の小さな蓋が開けられて、御影がふたつの皿を差し入れてきた。
ひとつには水は半分ほど入っている丸い桶状の皿だ。
もうひとつは、汁で米を煮たものが野菜くずと混ぜられているものだ。
食事というよりは、犬の餌という感じだ。
匙のようなものはない。
そして、鉄格子の隙間から小さな布も入れられた。
「ど、どういうことだい、これは──? 御影、説明するんだよ──。これはなんだい──?」
宝玄は怒鳴った。
檻に入れられた自分──。
まるで犬に対する仕打ちのような餌のような朝食──。
「どういうことって、どういうことなの? 昨日、見世物がはけた後、ここで言ったはずよ、宝玄ちゃん。あなたは、やっぱり、ここで五日間、調教を受けるのよ。手間取ったけど、協力してくれる人がいてね。あんたは、昨日を含めて六日間の休暇よ──。そのあいだ、たっぷりとあなたの被虐の性癖を剝き出しにしてあげるわよ。まあ、昨夜の最後の方には、満更でもなかったようだし……。なんだかんだで、結構愉しかったでしょう、宝玄ちゃん?」
相変わらずの女のような喋り方の御影が笑いながら、影女と影法師のいる卓に戻っていく。
どうやら、三人は朝食の途中だったようだ。
それでやっと、思い出した。
ここは、昨日、影女に連れてこられた見世物小屋の奥の部屋だ。
結局、昨日は、影女によって、この見世物小屋で公開調教の見世物に出演させられた。
そこで逆さ吊りにされ……。
四つん這いで這わされ……。
観客たちの肉棒で口を犯され……。
そして、大勢の客の愛撫を長時間にわたって受け続けた。
宝玄は、その刺激に負けて、想像を絶する欲情に襲われ続けた。
最後には意識を保つことができなくなるくらいに興奮した。
その興奮状態はあまりにも長く続いたので、最後にどうなったのか思い出すことができないほどだ。
もしかしたら、失神したのかもしれない。
その後、見世物が終わってから、また、奥の部屋に連れ込まれて、今度は御影、影法師、影女の三人に繰り返し責められた。
再び大量の媚薬を全身に塗られて、敏感になった身体を三人に交代で犯され続けたのだ。
そのとき、影女は腰に男根の張形を革帯で装着して宝玄を犯していた。
興奮状態が続いていた宝玄は、三人の責めに簡単に絶頂を繰り返し、最後には完全に意識を失ったと思う。
そして、いま、眼が覚めると、その部屋で朝を迎えていて、しかも、裸で動物のように檻に入れられたのだ。
「御影、いい加減にしなよ──。もう、遊びは終わりだよ。わたしを解放するんだよ──」
「まあまあ、そんなに、かっかしないでくださいよ、宝玄殿──。俺と御影様は、仕事があるから、朝食が終われば出発しますが、今日も影女が、あなたに素敵な経験をさせてくれるそうですよ。俺たちは、また、夕方からの見世物には姿を見せますから、今日一日で、またさらに被虐に染まったあなたを見せてください」
卓で食事をとっていた影法師が笑いながら言った。
「まあ、そういうことだね、宝玄……。今日から本格的な調教に入るからね。一日中感じまくらせて、性のこと以外考えられないようにしてやるよ」
影女も言った。
宝玄は、檻の外で宝玄を嘲笑するように食事を平然と続けるその態度にかっとなった。
「喋りかけもしないのに、口を開くんじゃないよ、この出来損ないども──」
「出来損ない?」
声をあげたのは影法師だ。
「そうだよ。いつまでもわたしが気がつかないのかと思ったのかい、出来損ない──。お前と影女──。お前らは、御影の道術の出来損ないだろう──? それがお前の得意の道術なのかい、御影。さしずめ、『分身の術』というところかい? 天教の教団本部の幹部のお前が、こんな場末の見世物小屋を経営するための姿が影女なんだろう? どうせ、その影法師という男も、お前がくだらない悪さをするための影なんだろう──? とにかく、そいつらは引っ込めておくれ。苛つくんだよ」
宝玄は怒鳴りたてた。
すると、御影がにやりと笑った。
影女と影法師の身体が、すっと滑るように移動して御影の身体にすいこまれるようにして消えた。
「どうしてわかったの、宝玄ちゃん? あたしの『分身の術』なんて、それを遣っているあたしでさえ、忘れるくらいの完璧な分身の人格なのよ。それを見破ったのは、あなたが初めてよ、宝玄ちゃん」
御影が言った。
「匂いだよ──。三人とも同じ体臭をしているじゃないか──。それと、わたしを犯したときの癖だよ。お前と影法師、そして、張形で責めた影女でさえ、お前そっくりの犯し方だったよ」
宝玄は言った。
御影、影法師、影女……。この三人は同じ人間の体臭をしていた。
だから、わかったのだ。
この三人にはなにかあると……。
最初は、御影がほかのふたりに道術で変身をしているのかと思ったが、それは同じ場所にこの三人が現れることで否定されてしまった。
しかし、体臭が似ているということはあり得るかもしれないが、まるっきりと同じように性行為をするなどあり得ない。
男が女を犯すときは、どうしても欲望が剝き出しになる。
剝き出しになったときの人格は隠せない。
宝玄は、昨夜、三人に同時に犯されることで、この三人が同一人物であることがわかったのだ。
しかし、それは『変身の術』ではない……。
だったら、結論はひとつしかない。
考えてみれば、御影は分身術の大家だ。
昨日から悩まされてきた宝玄の手足を操る技も、元はといえば、これも分身術の応用だ。他人の手足を御影の分身として操る技なのだ。
「なるほどね……。今度から気をなくちゃね」
御影が宝玄を見た。
「三人の人間に分身できる……。それがお前の道術なんだろう、御影? お前がその術をどんな風に活用しているかなんて予想がつくよ。お前の悪事の隠れ蓑だろう──。わたしの予想だけど、お前、わたしのような貴族女を誘拐して、見世物に出したのは、これが最初じゃないだろう? 査閲官の仕事をしていて、それで手に入れた誰かの弱みを利用して脅迫する手口も、わたしが最初じゃないね? そういう裏の悪事をするのが、影女であり、影法師の役割なんじゃないのかい? そういえば、わたしの脅し方なんて、随分と手慣れた感じだったね」
宝玄は言った。
すると、御影が笑い出した。
「これはびっくりね──。あたしの裏の仕事まで見抜かれるとは思わなかったわ……。じゃあ、ついでに言っておくけど、昨日、影女のあたしが、お前のことを天教の宝玄だとばらしたけど、そんなのを信じたのは昨日の客にはいないわ。公爵夫人、伯爵嬢、美人武官……。たくさんの偽者をここで出演させたからね。それがこの見世物小屋の名物なのよ。まあ、その中には、あたしが弱みを握って、調教している本物の貴族女も混じっているかもしれないわね……。お前みたいにね、宝玄」
「だったら、さっさとわたしを出しな……。お前がどんな悪事をしているか知らないけど、そんなのはその気になって調べれば、すぐに証拠とともに揃えられるさ……。だけど、ここでわたしを解放すれば、そんなことは知っちゃこっちゃない。お前が三人の姿になれることを利用して、悪さをしているなんて誰にも言いやしないよ」
宝玄は言った。
すると、御影が眼を大きく見開いた。
「これは、驚いたわねえ……。あんた、そんな状態で、このあたしを脅そうとしているの? 自分の姿がわかっている? 素裸で、しかも、首には、このあたしの『道術封じの首輪』を装着されて、さらに檻の中に監禁されているのよ……。まあ、馬鹿なことは忘れて、五日の調教を受けなさい……。ところで、お前はやっぱり、あたしが見込んだ通りの女だったわ。お前の本質は嗜虐じゃないわ。被虐よ……。女を調教して、性奴隷を囲い、いっぱしの調教師を気取るのは、本当のお前じゃないわ。嗜虐され、その恥辱の愉悦に震える被虐の血……。それがお前の本質よ、宝玄ちゃん──。あたしは、影女の姿で責めながら、それを確信したわ」
「や、やかましい……。わかったことを言うんじゃないよ──。この男女──。わたしを解放しろと言っているだろう──」
宝玄は鉄格子を掴んで怒鳴った。
御影が宝玄の本質が被虐だといったとき、大きな動揺が心に走るのを感じた。
宝玄はその動揺に恐怖した。
それが宝玄を激しい大声をあげさせた。
そのとき、宝玄は興奮のあまり、差し入れられた皿に膝をぶつけてしまった。
檻の中で汁の入った皿がひっくり返った。
「あらあら、これは罰を与えないとならないわね……。じゃあ、あたしはもう行くわ……。御影の姿のあたしという意味だけど……。それと、今日は趣向があるのよ。あんたのよく知っている女を影女の助手として、置いていこうと思うの。あたしが声をかけたら、それはそれは悦んでくれたわ。隣の部屋で待機しているから呼んでくるわね」
御影がそう言って立ちあがった。
「わたしが知っている女……? 誰だい──?」
宝玄は声をあげたが、御影はそれに答えることなく、部屋の外に出て行った。
やがて、すぐに戻ってきた。
戻ってきたとき、御影の姿から、すでに影女の姿になっていた。
そして、御影が言及していた“助手の女”というのが、影女の後ろからついてきた。
「宝玄様、まあ、いいお姿にお成りですねえ──。よろしくお願いしますね……。それから、休暇の手続きはご心配には及びません。これから、五日間、宝玄様が行方不明になっても、誰も怪しまないように手続きをしてきました。なんだったら、さらに伸ばすことも可能ですよ、宝玄様」
その女が愉しそうに言った。
「
宝玄はその女の名を思わず呟いた。
自分の顔がひきつるのを感じる。
紅麗は、この一年、ことあるごとに苛め抜いてきた中年の部下の巫女だ。
それが、檻の外で愉悦を満面に浮かべて、宝玄を眺めている。
「影女様、この雌豚の身体をもっとよく見たいですわ。檻の中を照らす蝋燭を立てていいですか?」
紅麗が影女に振り向いた。
「もちろん、好きなようにしていいわよ」
影女がにこにこしながら答えた。
すると、紅麗はあらかじめ準備をしていたらしい箱を部屋の隅から持ってくると、その中にあった蝋燭に火を着けた。
そして、蝋を垂して宝玄が閉じ込められている檻の上に、蝋で密着させて置く。
「熱っ」
宝玄は上から垂れてきた蝋の熱さに思わず悲鳴をあげて身体を避けさせた。
「な、なにするんだよ、紅麗──。熱いじゃないか」
宝玄は怒鳴った。
「逃げても無駄よ、宝玄。蝋燭はたくさんあるわ。隙間なく檻の上に置いてあげるわね」
紅麗は笑いながら、二本目の蝋燭に火を着けて、宝玄が避けた場所の上にその蝋燭を置いた。
檻の上からぽたぽたと熱い蝋が落ちてくる。
「あ、熱い──。や、やめないか、紅麗」
宝玄は慌てて、垂蝋を避けるために身体を縮めた。
しかし、すでに紅麗が、三本目と四本目の蝋燭を手にしている。
その後ろで、影女が笑っていた。
第二日目が始まったのだ……。
(第47話「【前日談】女巫女羞恥調教」終わり)
*
第二日目は、宝玄が日頃虐げている女からの復讐調教となります。
いまのところ、当面、この続きを書く予定はありませんが、結局、宝玄は半月にわたって、御影の調教を受けさせられます。
その後、御影は宝玄の仕返しで罠にかけられて、皇女に手を出してしまいます。
それが明るみになり、御影は捕らえられて処刑されます。
しかし、御影は密かに『魂の欠片』を隠しており、それで復活をします。
そして、報復として宝玄仙を付け狙うようになります。
宝玄仙と御影の確執の始まりです。