「これは、大変な別嬪ですな」
妓楼屋の主人という男がほんの少し相好を崩した。
沙那は、それをぼんやりと見ていた。
昨夜は、かなり遅い時間まで、この
覚えているのは、最初の数刻までで、それから先は気を失っていたのか、それとも起きていたのかわからない。
いまとなってはほとんど記憶がないのだ。
とにかく、気がついたら、明るい陽射しが沙那を照らしていて、沙那は全身を精液まみれにして、全裸で道場の床に横たわっていた。
背中の縄尻は相変わらずで、その縄尻は天井から伸びる鎖にしっかりと繋げられていた。
両方の足首にも最初のときと同じように、天井の滑車と繋がった鎖付きの足枷が嵌められている。
そして、道場には、見張り役なのか四人ほどの男が沙那の周りに寝ていたが、黒倫をはじめとする他の者たちの姿はなかった。
やがて、
まだ全身が重い沙那は千歳が沙那の身体を綺麗に拭きあげるのに任せた。
もう、なにも千歳に話しかける気にもなれず、千歳が嫌味を言っても、ただ聞き流していた。
身体を拭かれて、乱れた沙那の髪を整えると、千歳は一度、道場を出ていった。
しばらくして、千歳は黒倫とともに道場に戻ってきた。
ふたりと一緒にやってきたのが、妓楼屋の亭主というこの眼の前の男だ。
小太りの恰幅のいい男で、歳は五十くらいだろうか。
名は
楊林は荷を持たせた手代のような若い男を連れていた。
沙那の裸身の周りに、黒倫と千歳、楊林とその手代、そして、最初からいた黒倫の四人の門弟が集まった。
沙那は背中の腕に繋がった鎖で引き揚げられて、楊林の前に立たされた。
楊林は、沙那の裸身をじろじろと見回して、そして満足気に頷いた。
「顔も身体も一級品ですね。ところで、この女が
楊林は言った。
「これよ」
千歳が楊林の前に、沙那と黒倫が賭け試合をここでやったという偽の証文を示した。
楊林は、それを受け取ると、しっかりと頷いた。
「結構です。では、値段の話になりますな。この証文によれば、金三枚の賭け金の代わりに、この女が見売りをして掛け金を支払うということになっているのですね、黒師範様。では、それでいかがですか?」
楊林は言った。
「証文は確かに金三枚だが、それは試合の賭け金の話だ。この沙那の値段ではない。金十枚。年季は十年でいい。それくらいの値打ちはある」
黒倫は言った。
「じょ、冗談じゃないわよ。その証文は偽物よ。わたしは、ここに昨日浚われて連れてこられたのよ。どこに連れて行かれても、そうやって喚き散らしてやるわ。わたしを売り買いはできないわよ」
沙那は怒鳴った。
楊林は、表情を変えないまま、片方の眉だけをぴくりと動かした。
「……そう言っているようですが、どうなのです、黒師範様?」
「この女は、売られたくないから、出鱈目を言っているのよ。この証文が証拠よ。それに証人も大勢いるわ。この道場の門弟の全員が証人よ」
千歳が横から口を挟んだ。
「証文がありさえすれば、売り買いに問題はありませんが、この女が納得済みでないのであれば、当方としても躾が終わるまで、店には出せないことになります。いまの感じでは、その躾にも時間がかかりそうですねえ。その分は値から引かねばなりません」
楊林が黒倫を見た。
「足元を見おって……。仕方あるまい──。金八枚だ。それでいい」
「どうせ、元手はかかっておらぬのでしょう、黒師範様。五枚──。五枚出しましょう。それに、この女の身元なども調べてはおらぬのでは? こちらもそれなりの危険や手間を負担せねばならんのです。五枚で手をお打ちください」
「わたしの話を聞くのよ、あんた。わたしは、卑怯な手段でここに連れ込まれて犯されたのよ。わたしを娼婦にしようなんてできないわよ。そんなことをしたら、客という客の手足の骨を叩き折って、店なんて続けられないような騒ぎを起こしてやるわ」
沙那は声をあげた。
「あんなに犯し尽くされたのに、なんでそんなに元気なのよ。とにかく、もう、黙りなさい、沙那──」
千歳が声を張りあげた。
「……五枚ですな。店に出すまでに時間がかかる。調教をしなければ売りものになりません」
楊林は腕組みをした。
「いや、これはすぐに大人しくなるのだ──。おい、両脚を引き揚げろ」
黒倫が言った。
門弟が壁に走る。
天井に繋がる滑車に繋がった鎖を操作する。沙那の両脚の鎖が同時に引き揚がっていく。
「な、なによ……。きゃあ──」
沙那は悲鳴をあげた。両方の足首が上に引き揚がって、沙那の両脚が宙に浮く。沙那の後手縛りは、胸の上下を巻くように固定されなおしてあり、両足首が宙に浮くことで、沙那の身体は後方に倒れて、後手と繋がっている鎖で支えられるような態勢になった。
そして、左右に開きながら、さらに足首が上に揚がる。
「や、やだあっ」
沙那の両足首は、沙那の身体の横で腰ほどの高さに引き揚がった。沙那は足首と背中の腕の三点で天井から吊りあげられ、股間を下にして宙に浮かぶ恰好にされた。
沙那は脚に力を入れて、無理矢理に全開にされた股を少しでも閉じようとするが、両脚は完全に外側に引っぱられて、股間を隠すことができない。
「試してみてくれ、楊林」
黒倫が言った、
楊林の指が沙那の女陰の亀裂に伸びた。
「ひうっ」
指先の刺激を感じてしまい、沙那は思わず声をあげてしまう。
楊林の指が女陰から肉芽にかけて繰り返し擦られる。
あっという間に股間が熱くなった。楊林の指は、ほとんど沙那に触れるか触れないかの柔らかいものだった。
それが沙那の身体を溶かすように燃えあがらせて、沙那は身悶えを耐えることができなくなった。
「なるほど、これは……。とても、敏感な身体をしているようだ」
楊林が値踏みをするように沙那の股間を責め続ける。
沙那は襲ってくる快感の波に我慢できずに全身を震わせて喘いだ。沙那を吊っている三本の鎖ががちゃがちゃと音をたてる。
「かなり乱れが激しいな。さっきの気の強そうな啖呵が嘘のようだ。あっという間に淫らな女の顔になった」
「実際に指を入れてみろ、楊林。この女の本当の値打ちがわかるぞ」
黒倫が言った。
楊林の指が無造作に沙那の女陰に入ってくる。
さらなる快感が襲った。沙那は宙吊りの身体を仰け反らせる。
「おう、これは凄い」
楊林が驚いたような声をあげた。
そして、その楊林の指が沙那の女陰の中を抉るように動き回る。
沙那に快感を与えたり、あるいは、快感に酔う沙那の嬌態を愉しむというような触り方ではない。
純粋に沙那の身体を調べるだけというような冷たい仕草だ。
それなのに、沙那はこの楊林の指でどうしようもなく感じてしまい激しい反応を示してしまう。それが途方もなく悔しい。
「あ、ああ……あっ」
「ううむ……。締めつける……。指を絞りあげる内襞の感触もいい。しかも、この反応……。これは調教済みの女の身体だ。この女をどうやって見つけたのです?」
楊林が呻いて感嘆の声をあげる。
「偶然に拾った女がたまたま、そういう女だったのだ。だが、一級品であることには変わるまい。この女に相応しい値をつけてくれなければ困るぞ、楊林」
黒倫は言った。
しかし、沙那はそれどころじゃなかった。
楊林の指は、沙那の膣の具合を確かめるようにあちこちを刺激している。
情けないほどに沙那は快感を酔わされ続ける。
そして、楊林の指は膣内の天井部分を突きあげるように刺激した。
その瞬間、もの凄い快感が一気に噴きあがった。
「ああ、それだめっ──あああっ、いぎいっ──」
稲妻に打たれたかのような衝撃が沙那の全身を貫き、女陰の奥が一気に痺れた。膣の奥からなにかが噴きあがる。
「もっと、締めつけられるか?」
楊林がさらに激しく女陰の天井を擦りあげる。
「はがああっ──」
快感が完全に沙那の理性を圧倒した。
激しい甘美感が襲う。白いものが視界を覆っていく。沙那は全身を大きく揺り動かした。
意識的にやっているわけじゃない。
あまりの大きな快感にじっとしていられないのだ。
三本の鎖で吊られる沙那の身体が揺れると、それに合わせて楊林が沙那の女陰を押し動かすようにした。
「だ、だめえっ」
大きな快感の波に沙那は自然と唯一繋がっている楊林の指を締めつけていた。
自分の股間から液体の塊りが迸る。
楊林が沙那の股間から指を抜いた。
さらに噴水のような液体が沙那の股間から噴き出すのがわかった。
痙攣のような震えが収まるまで少しの時間がかかった。
「潮を吹くほどの絶頂もできるのか……。生まれつき淫らな体質なのか、それとも、快楽から逃げられないように調教されているのか……。いずれにしても、こんな反応は馴れた娼婦でもできる演技ではない。なるほど、金六枚……。いや、八枚を出しましょう。確かにその値打ちはある」
楊林が言った。
興奮していた沙那の身体が収まって、だんだんと冷静さを取り戻していく。
指一本で激しく絶頂する姿をこの男たちの前で晒してしまった屈辱が沙那を襲う。
「それでいい」
黒倫は言った。
「感謝しますわ、楊林様」
千歳も嬉しそうに笑った。
「おい」
楊林が声をかけた。
楊林の手代が持っていた包みを解き、両手で楊林に差し出す。
沙那の眼の前で、楊林が薄い金の板を数えてから、そのうちの八枚を黒倫に渡した。
それを黒倫は受け取って千歳に渡す。
千歳は金の板を別の布に包み直してから、畳んでいた証文を楊林に差し出した。
「これで取引きは終了ですな。ところで、この女を妓楼に運ぶのに手を貸していただきたい。妓楼には、檻があるのですが、そこにこの女を閉じ込めます。檻に入れるまでを手伝ってもらえれば、そこから先の躾は当方でできます」
楊林が言った。
「わかった、門弟を十人ほど貸そう」
黒倫が満足気に頷く。
そのとき、なにかの騒ぎが道場の外で起こっている気配がした。
「……なんだ?」
黒倫が訝しげな声を出すのと、道場に門弟のひとりが駆け込んでくるのが同時だった。
「せ、先生、大変です──」
その門弟が叫んだ。
「どうした?」
「それが──」
しかし、門弟は最後まで言い終わることができなかった。
道場の入口が壊されるかのように開かれて、三人ほどの門弟が転がり入ってきた。
そして、それに続いて、『如意棒』を持った孫空女がやってきたのだ。
開け放たれた道場の扉の向こうには、完全に打ちのめされたこの道場の門弟たちが地面に倒れている姿も見えた。
外から転がり入れられた門弟は一度立ちあがったが、それぞれ、孫空女の『如意棒』を腹に受けて、完全に動かなくなった。
「沙那、助けに来たよ」
孫空女が沙那を認めて声をあげた。
「孫女」
沙那も叫んだ。
「お前たちはなんだ?」
黒倫が驚いて叫んだ。
「道場破りだよ。沙那を返してもらいに来たのさ」
孫空女はそう言うと、孫空女が叩きのめして倒れている門弟の身体を『如意棒』の先に引っ掛けて、道場の外に放り出すように投げ捨て始めた。
ひとり、ふたりと門弟が道場の外に放り捨てられる。
そして、孫空女がずかずかと、道場に入ってくる。
孫空女の後ろから宝玄仙と朱姫もやってきた。
最初から道場の中にいた黒倫の四人の弟子が、剣を抜いて孫空女に襲いかかった。
しかし、彼らもただの数振りで全員が床に叩きのめされる。
黒倫と千歳はいきなりの出来事に顔を真っ蒼にして身体を硬直させている。
楊林に至ってはあまりの驚きでその場にしゃがみ込んでしまっていた。
「いい恰好じゃないかい、沙那」
天井から股を拡げて吊りあげられている沙那の前に立った宝玄仙が、沙那の姿を眺めて微笑んだ。
「ご、ご主人様、助けてください──」
沙那は込みあがったものに耐えられなかった。
自分の眼からどっと涙が溢れるのがわかった。
「お前が黒倫とかいう道場主だね。お前は、余程に悪名が高いんだねえ。沙那になにがあったのか調べようと思ったら、大して歩き回らなくても、すぐにお前の仕業だとわかったよ。沙那が昨日やった辻試合のことは、みんな覚えていたし、その沙那が行方不明だと訊ねまわったら、お前がその賭け試合のときに卑怯なことをやって、沙那に叩きのされたことも、すぐに教えくれたよ。みんな、お前だったら、沙那に叩きのめされた腹癒せに沙那を浚うくらいやりそうだと口々に言っていたね。案の定、ここにいるじゃないか。その沙那は、わたしの奴隷だよ。返してもらうよ」
宝玄仙が言った。
「奴隷?」
黒倫が目を丸くしている。
「そうだよ。ところで、他の者は誰だい? おや、その女が持っている包みに入っているのは金板のようだね」
宝玄仙が黒倫とともにいた千歳と楊林と楊林の手代に視線を動かしながら言った。
「そ、それは、わたしを黒倫が売った代金です。その楊林は妓楼の主人で、黒倫と千歳がわたしを売ったんです」
沙那は言った。
「へえ、お前を売った代金ねえ。いくらだい?」
「……金八枚だそうです」
「金八枚かい。まあ、それが高いのか、安いのか、相場もわからないけどねえ」
宝玄仙が笑った。
「あ、あのう、ご主人様……。ところで、一度、下ろしていただけませんか?」
沙那は言った。
ほっとしたら猛烈な羞恥が沸き起こってきた。
いくらなんでも、まともに話をするには、この格好は恥ずかしすぎる。
素裸で股を一番下にして両足首と背中の腕で吊られ、その股を開いた格好で宙に引き揚げられているのだ。
「罰だよ。そのまま説明しな、沙那──。元はといえば、この騒動はお前が悪いんだろう。わたしらに説明もなしに、城郭で野試合のような真似をしたことから、この騒動が始まったんだろう? この黒倫が、この城郭では有名な悪党で、しかも、少しもこっそりと物事を進めようとしないような阿呆だったから、あっという間に見つかったけど、そうでなければ、お前を探し当てるのに骨が折れたところだったんだ」
「そ、そんなあ、ご主人様」
「つべこべ言うんじゃないよ──。ねえ、孫空女、昨日は置いてきぼりにされて、寂しかったろう?」
「そうだね……。おいてけぼりは、酷いじゃないか。随分と酷い目に遭ったんだよ、沙那」
孫空女が苦笑した。
二日前の夜に、沙那は孫空女は朱姫とともに、久しぶりに宝玄仙を相手に激しい嗜虐をした。
ときには、そんな日も必要なのだが、いつも、その翌日には、嗜虐を受けた反動で、激しい責めが沙那と孫空女に与えられるのだ。
それが予想されたので、沙那は、路銀を作るという名目で、ひとりで逃げるように、孫空女を生贄に残して城郭にやってきたのだ。
それで、この騒動を引き起こした。
「まったくですよ、沙那姉さん。孫姉さんは大変だったんですよ。それこそ、昨日の夜まで、たったひとりでご主人様の調教を受け続けたんですから」
「お前が言うんじゃないよ、朱姫──。お前の仕打ちが一番酷かったんだよ」
孫空女が朱姫に文句を言った。
「さて、お前ら、そこに並ぶんだ。今度の始末をどうつけるか決めてやるから、一列になって座りな。孫空女、少しでも抵抗したら、どいつもこいつも、遠慮はいらないよ。脚の骨の一本でも叩き折ってやりな」
「わかったよ、ご主人様」
孫空女が『如意棒』を振り回して脅しながら、道場にいた人間を並ばせた。沙那の前に黒倫、千歳、楊林、そして、楊林の手代が座らせられる。孫空女に斬りかかって倒された黒倫の門弟は、道場のあちこちでまだ倒れたまま動かない。
孫空女の武辺に度肝を抜かれたのか、黒倫を始め、誰も抵抗しなかった。
全員が心なしか顔を蒼くしている。
「じゃあ、沙那、説明を始めていいよ」
仕方なく沙那は、天井から股を開いて吊られるというみっともない姿のまま、今回の顛末を説明した。
宝玄仙は黙って、沙那の説明を聞いていた。
そして、沙那の説明が終わると、まずは楊林に視線を向けた。
「楊林、どうやらお前は、ただ、商売として沙那を買い取ろうとしただけのようだね。偽の証文と知っていながら女を買い取ろうとしたのは文句はあるけど、それは大目に見てやるよ。行っていい──」
「し、しかし、ここには証文もあるんだ。行政府に持っていけば通用する正式の書式のものだ。それに、もう売買も成立しているんだ。第一、すでに金を払っているし……」
楊林は顔を蒼くしたまま、それでも証文を片手に声をあげた。
だが、そのとき、その証文の真ん中に孫空女の『如意棒』が突き刺さって、『如意棒』の先端が楊林の顔の直前に突きつけられた。
楊林は奇声をあげて後ろにひっくり返った。
「証文というのは、これのことかい? あんた、折角、ご主人様が許してくれそうなんだ。さっさと逃げた方がいいんじゃないのかい。それとも、この黒倫と一緒に、あたしらの仕返しを受けるのかい」
孫空女が怒鳴った。
楊林は、おかしな悲鳴をあげながら、四つん這いでしばらく這い進むと、そのまま逃げていった。
手代の男も後を追って去って行く。
楊林たちがいなくなったのを確認すると、宝玄仙は千歳に視線を向けた。
「じゃあ、とりあえず、沙那を売ったという金板を出しな。それは、わたしらのものだろう」
宝玄仙が千歳に言った。
どういう理屈であれば、それが宝玄仙のものになるのかわからないが、とりあえず沙那は黙っていた。千歳は真っ蒼のまま、黙って横に持っていた金板を包んでいた包みを出す。朱姫がそれを取りあげた。
「お前たちが沙那を浚ったときに、沙那が持っていたはずの荷をここに持ってきな、お前。ついでに、沙那が着られる服を持っておいで。すぐに戻って来るんだ。そのまま逃げたら、こいつの首をへし折るからね」
宝玄仙は千歳に言った。
千歳が慌てふためいて出ていく。
「──じゃあ、次の始末は、お前だよ。覚悟はできているね、黒倫」
ただひとり残った黒倫に宝玄仙は視線を向けた。
「ど、どうするつもりなのだ……?」
黒倫は言った。
言葉こそまともだが、声は震えていて、完全に怯えているようだ。
仮にも武術家という片鱗もない。
情けない男だ。そんな男にいいように弄ばれたのかと思うと、自分が情けなくなる。
「そうだねえ、どうしてやろうかねえ……。まあ、命ばかりは奪いはしないよ。とにかく、少し恥をかくくらいで許してやろう。とりあえず、この場で服を脱いで素っ裸になりな、黒倫」
「な、なにを──」
黒倫が絶句した。ほんの少しだけだが、黒倫の顔に怒りのようなものが浮かんだ気がした。
次の瞬間、孫空女の平手が黒倫の頬に飛んだ。
もの凄い音がして、黒倫は横に吹っ飛び倒れた。口から赤いものが飛び出す。
「沙那をこんな目に遭わせて、一人前に人間の言葉を喋るんじゃないよ。さっさとご主人様の命令に従いな。言っておくけど、いまのはかなり手加減したからね。あたしが本気で殴れば、あんたの歯はなくなるよ」
孫空女が怒鳴りつけた。
黒倫は恐怖に包まれた表情をして、慌てて服を脱ぎ始める。
それを孫空女が仁王立ちで睨みつけている。
「じゃあ、最後にお前だよ、沙那。どんな罰がいいんだい? 優しいのがいいかい? それとも、厳しいのがいいかい?」
宝玄仙が沙那に向き直った。
「わ、わたしも罰なんですか? だって……」
「当たり前だろう。こんな騒動を起こしておいて、反省がないのかい」
宝玄仙は、いきなり沙那の女陰にずぶずぶと指を突っ込んだ。
「ひぐうっ」
沙那は悲鳴をあげて、吊られている身体を弓なりに反った。
「どうせ、お前のことだよ。昨日の晩はここでこいつらの玩具にされて、よがり狂っていたんだろう、沙那。どんな淫乱ぶりを晒したんだい。説明しな──」
宝玄仙の指が沙那の女陰を抉る。どこをどう弄くれば、沙那が淫乱に狂うのか知り抜いている宝玄仙の指だ。
たちまに、大きな快感が沙那をまた襲ってくる。
「ひいっ──ゆ、許して……許してください、ご主人様──あひいっ」
沙那は押し寄せる官能の波に歯を食いしばった。
宝玄仙は容赦なく沙那の女陰の敏感な部分を責めたてる。
閃光のような快感が沙那を襲う。
沙那は吊られている身体を左右に振って宝玄仙の責めから逃れようとした。
「ほらっ、淫乱女。ここで、みっともなくよがり狂って腰でも振ったかい? わたしの供ともあろう者が恥を晒したんだろう。どうなんだい? 後で孫空女がのばした門弟にも質問するからね。嘘をつくんじゃないよ──」
「も、申し訳ありません、ご主人様──。お許しを……ひいいっ──ゆ、許してください──」
激しい宝玄仙の指責めに沙那は泣き喚いた。
乱暴なようだが的確に宝玄仙は沙那から大きな快感を引き摺り出している。
それでいて、あと一歩のところで止めている。
その状態にして、沙那の中で暴れる快感が絶頂側に進もうとすると、乱暴に膣を動かして痛みで引き戻し、そして、快感がなくなりそうになるとまた快楽を押しだす。
それをしているのだ。
これをやられると沙那は絶頂できないのに、快楽だけが引き揚げられる状態になる。
沙那は泣き狂った。
「淫乱女のお前に相応しい罰を与えてやるよ。このまま、“わたしは淫乱女です”って、百回言いな。途中で止まったら最初からやり直しだ。ほら、始め──」
「あ、ああ……そ、そんな、ご主人様──」
宝玄仙の指は律動を続けている。自分の股間から淫らな音がたち始めたのがわかる。
今度は、絶頂側に快楽を動かされて、あっという間に大きな絶頂感が襲ってきた。
「早く、始めないか、沙那──」
宝玄仙の叱咤が飛ぶ。
「あ、ああ……わ、わたしは淫乱女……で、す……。わたしは──あぐうっ──い、いきますうっ──」
沙那は背中をしならせると、大きな声をあげて気をやってしまった。
落雷にでも遭ったような衝撃が襲う。
頭の中が真っ白になり、一瞬だけ痴呆になったかのようになにも考えられなくなった。
「──やり直しだよ。いちいち、いくんじゃないよ。百回だと言っただろう」
宝玄仙が沙那の女陰を責めながら大きな声を張りあげた。
「……わ、わたしは淫乱女──あ、ああ──わ、わたしは、おおおっ、んんっ、い、いん──も、もう、許して……ください──あひいっ──」
宝玄仙の指で与えられる快感が激し過ぎる。こんな風に責められながら、喋ることなんてできない。
「埒もないねえ。朱姫、お前は尻だよ。沙那の尻を指で責めな。百回言い終わるまで、降ろしてなどやらないからね、沙那」
「ふふふ、じゃあ、沙那姉さん、お尻をいきますよ」
朱姫がくすくすと笑いながら、沙那の背後にやってきた。
「ゆ、許して──ご、ご主人様──あはうっ──」
沙那は悲鳴をあげた。宝玄仙の指だけで、こんなに翻弄されるのだ。
これで朱姫の指でお尻を責められながら、百回も言い終わるわけがない。
「許しを乞う暇があったら、さっさと“わたしは淫乱女です”と言わないか、沙那──」
宝玄仙が怒鳴った。
「……わ、わたしは淫乱──いぐうっ──」
その時、朱姫の指がつるりと沙那の肛門に入った。
たちまちに全身に狂おしい痙攣が走り、沙那はまた絶頂して腰を振り動かした。
「やり直し──」
宝玄仙の大きな声が沙那に浴びせられた。
「わ、わたしは──あぎいっ……い、淫乱……ご、ご主人様──んんああああっ」
前後に宝玄仙と朱姫の指の責めを受け、沙那は絶叫した。
股間からなにかが噴き出すのがわかった。
「せめて十回くらいも言えないのかい──」
宝玄仙の呆れたような声がどこか遠くから聞こえるかのように感じた。
次第に遠くなる意識の中で、沙那はしっかりと宝玄仙と朱姫の指の感触だけを感じていた。
「わ、わたしは……淫乱……お、女……あ、ああ、ああっ──で、です……。わ、わたしは──あ、ああっ、また、いきます──」
沙那はわけもわからず狂ったように叫んだ。
全身が弛緩して、完全に力が抜けてくるのがはっきりとわかった。