※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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 第49話  雌犬になった女主人【七雌妖(ななめよう)】
308 女調教師と女主人


 宿屋の一階は賑わっていた。

 空いている卓はひとつだけで、宝玄仙は三人の供とともに、その席を占領した。

 女連れは珍しいのか多くの酔客がこの四人に注目するのを感じた。

 まあ、いつものことであり、宝玄仙は無視している。

 

 朱紫国の北辺の宿町である。

 賽太歳(さいたいさい)という妖魔に奪われた道術力を取り戻すため、その賽太歳を探すための旅だ。

 この辺りは朱紫国に住む人間の感覚からすれば、辺境といえる地域のようだ。

 ここから先は妖魔が多く棲む地域とされ、あまり人の手は入っていないということだった。

 その辺境開発民が多く住むのがこの地域だ。

 

 居酒屋にもなっているこの宿に集まるのも、辺境開発のためにやってきた荒くれ男が多いようだった。

 その中で美女四人の一行である。

 どうしても人目を引くのは免れないのかもしれない。

 

 給仕の少年がやってきたので、四人前の肉料理を注文した。

 ほかに果実割りの水と蒸留酒を頼む。

 沙那、孫空女、朱姫の三人は酒は飲まないので、蒸留酒は宝玄仙用だ。

 こういうところにくると、水よりは酒の方が腹を下す可能性が少なく安全だ。

 『治療術』が封印されているので、そういうことにも気を使わねばならない。

 

 だが、供の三人については、酒を飲めばそのまま引っくり返ってしまう。

 旅慣れていて、男を凌ぐような武術や道術があるくせに、酒だけは飲もうとしない。

 酒を飲むと感覚が鈍るので嫌ならしいが、元々酒は受け付けない体質でもあるようだ。

 一度、酒を浣腸剤にして尻から入れてやったことがあるが、泥酔しただけではなく、翌日も二日酔いのようになって吐きまくって大変だった。

 それ以来、この三人に酒を強要しようと思ったことはない。

 

「……この宿町の北に百ほどの小さな沼地が集まる湿地帯があるそうです。一応、それを越えれば、妖魔の地といえる地域になるようです。もっとも、実際には人の住んでいる部落もまだまだ点在します。妖魔に近い場所で、国の支配から逃れて暮らす人の部落というところでしょうか」

 

 沙那が説明した。沙那はこの宿屋に部屋を取ると、さっそく朱姫を連れて、いろいろと情報集めに行っていた。

 明日には、さらに北に入り、本格的な辺境地帯に入る。

 そのための必要な物の調達もこのふたりはやってきていた。

 

「街道はあるのかい?」

 

「整備された道はありません、ご主人様。ただ、行商隊などは行き交いますので道はあります」

 

 沙那が言った。

 そのとき、さっきの給仕の少年が、料理を持ってきた。

 羊の肉を香草で煮たものが大皿に載っている。

 温かい湯気からいい香りが漂う。

 それぞれの前に飲み物も置かれた。

 

「治安はどうなのさ、沙那?」

 

 孫空女が手を伸ばして、四人に料理を取り分けながら訊ねた。

 

「最悪ね。人里については、それぞれで自警しているけど、一歩離れれば、盗賊が横行しているそうよ。もちろん、妖魔の危険も多いわ。朱紫国の軍も出動はしない場所だから仕方ないんだけどね。いずれにしても、生活には不便な場所ね。もちろん、旅も──」

 

「そんなところで暮らす者は、そこでなにしているんだい?」

 

「あらっ、ご主人様、そういう国の支配の外で暮らしたがる者はたくさんいますよ」

 

 朱姫が口を挟んだ。

 

「なんでだい?」

 

「なによりも税を払わなくていいんです。それに手配されている犯罪者が逃げ込むということもあります。人が住めば子も産まれます。その土地で産まれた者にとっては、どんな場所でも故郷です」

 

「なるほどねえ」

 

 宝玄仙は苦笑した。

 手配といえば、宝玄仙もそうだ。

 国都で処刑寸前のところを三人の供に救出されて逃亡してきた。

 手配されていることはわかっているが、追手が厳しくないということがわかってからは、気にしてはいなかった。

 

 そのとき、卓に影が差した。

 見上げると、四十歳前後と思われる身体のふくよかな女性が酒を手にして立っていた。

 

「よかったら相席頼めるかしら? ほかに席はないし、女性連れの一行はこの席だけだし」

 

 女は言った。

 宝玄仙が座っている卓は六人用の卓だ。

 空いている椅子はふたつある。

 

「どうぞ」

 

 沙那が席を移動して隅を空けた。

 女はそこに腰掛けた。

 ひと目見れば、忘れられないような女だと宝玄仙は思った。

 背は孫空女と同じくらいに高いだろうが、孫空女よりも遥かに豊満だ。

 迫力のある乳房の線がはっきりした薄地の着物を着ている。

 容姿は並というところだろう。

 だが、なぜか人を惹きつける不思議な雰囲気がある。

 そして、なによりも、人を圧倒するような迫力を感じる。

 

「あたしは、七芽(ななめ)という者よ」

 

 七芽と名乗ったその女は言った。

 

「この辺りの人間かい?」

 

 宝玄仙は訊ねた。

 

「どうして、そう思うんだい?」

 

「とても旅をするような格好じゃないからさ。近所に住んでいて、ふらりと飲みに来た。そんな感じだからだよ」

 

 宝玄仙は言った。

 すると七芽は破顔した。

 笑うと思わず引き込まれるような笑顔だ。

 初めて会ったのに懐かしいものを感じる。

 表現するとすれば、そんな感じだ。

 宝玄仙は、この女に興味を持ち始めている自分を感じていた。

 

「まあ、そういうことだね。ここから少し離れた濯垢泉(たくこうせん)という温泉のそばに住んでいる。ここにはたまにやってくるのさ。家のそばには、他に人家もないから人に接することがないからね。ここに来れば、時折、面白い出遭いにぶつかることがある。今夜みたいにね」

 

 七芽は言った。

 

「温泉ってなにさ」

 

 孫空女だ。

 

「温泉というのは、大きな湯船のようなものですよ、孫姉さん。地面からお湯が自然に沸いているんですよ」

 

「へえ、湯が沸くのかい。入れるの?」

 

「もちろん、入れるよ。あたしなんか、日に三度は入るね。濯垢泉は、うちの庭みたいなものさ……。というよりも、濯垢泉という大きな温泉の池があって、その真ん中に陸続きの島があるのさ。あたしの屋敷は、そこに建っているのだよ」

 

 七芽が言った。

 

「ほう」

 

 宝玄仙は声をあげた。

 この旅が始まって三年以上になる。

 さまざまなことがあったし、色々なものに接した。

 その中で宝玄仙がよかったと思うのは、湯に裸身を浸けるという習慣に出遭ったことだ。

 東方帝国では湯で身体を洗ったりすることはあっても、湯そのものに浸かるという発想はなかった。

 湯の中でゆっくりと身体を休めるというのは、素敵な時間だ。

 もちろん、その湯の中で供をいたぶるのも宝玄仙のなによりの好物だ。

 

「肉を貰ってもいいかい? よければ、家に招待するよ、宝玄仙」

 

 七芽が言った。

 反応したのは沙那だ。

 その視線が厳しいものになる。

 宝玄仙は、沙那の手が卓の下に移動するのを見た。

 卓の下には、沙那の細剣が立てかけてあるのだ。

 

「そんなに怖い顔をしなくてもいいじゃないの。あなたは、沙那ね」

 

 七芽が微笑んだ。

 

「肉はどうぞ……。でも、どうして、わたしたちのことを知っているか教えてもらえますか?」

 

 沙那が卓の上の肉の入った大皿を七芽に寄せた。

 七芽は微笑んだまま、大皿の肉をそのまま箸でつまんで口に入れる。

 

「わたしだけじゃないと思うわよ、沙那。少なくとも、この店には、三人はあんたらに気がついた者がいるわよ。もしかしたら、もっと多いかもね。国都で騒ぎを起こしたんでしょう?」

 

「えっ?」

 

 沙那が驚いた表情になる。

 七芽と名乗った女がにやりと微笑んだ。

 

「ふふ、手配書が回っているわ。他の場所と違って、ここは政府に手配されて行き場を失くした者が集まってくるような場所でもあるのよ。ここから北に行けば、政府の支配から逃れられるわ。だからよ。そして、その手配犯を捕えようとする賞金稼ぎも集まるわ」

 

 沙那が注意深く、辺りを見回す。

 確かに、この宿屋の一階の居酒屋で多くの視線を感じてはいた。

 ただ、男の酔客が集まる場所にやってくれば、それはいつものことだった。

 だから、気にも留めてはいなかったが……。

 

「大丈夫よ。あんたらに手を出そうとする者はいないわ。今は安全よ」

 

 七芽が言った。

 

「どうして安全なのですか、七芽さん? あなたは、少なくとも三人は、わたしたちが手配犯であることに気がついたとおっしゃいましたよ」

 

「あたしと一緒だからよ」

 

 七芽が白い歯を見せた。

 そして、豪快に酒を呷った。

 

「そんなに強いようには見えないけどね」

 

 孫空女だ。

 

「あたしは強くないわ。だけど、あたしには、守り人がいるのよ」

 

「守り人?」

 

 孫空女が首を傾げた。

 

「あたしを護っている存在よ。いまもいるわ。誰かがあたしに手を出そうとすれば、そいつは死ぬことになる」

 

 七芽は意味ありげに微笑む。

 

「さっぱりわからないね」

 

「そのうち、わかるかもね。すぐに知りたければ、手を出してみるといいわ、孫空女」

 

「あたしの名も知っているのかい?」

 

「一緒に手配されたわね。全員に賞金も出ているわ。そんなに大した額でもないけどね。そっちのお嬢さんも一応手配書に並んでいたわ。朱姫というのでしょう?」

 

 七芽が言った。

 朱姫も唖然としている。

 七芽が、宝玄仙に視線を向け直す。

 

「随分と可哀そうな仕打ちを受けたんでしょう。あんたがどんな目に遭ったかという噂も耳にしたことがあるわね。国都では、女の死刑囚を辱めてから処刑するという悪習があるからね。でも、安心したわ。もっと、心が潰されて可哀そうな女なのかと思った。気が強くて、元気そう」

 

「……もしかしたら、わたしを見ているこの店の連中にも、あれを知っている者がいるということかい?」

 

「あれというのは、あんたが国都の広場で全裸磔になったことかい。もの凄い美人が、汚いものを垂れ流したという話は、面白おかしく、こっちまで聞こえてくるよ。もっとも、その実物に会えるとはあたしも思わなかったけどね」

 

 七芽は笑った。

 

「じょ、冗談じゃないよ……」

 

 宝玄仙は口の中で悪態をついた。

 あの国都の磔刑の恥辱ことはいまでも忘れることはできない。

 国都の市民の中を全裸に近い恰好で行進させられて、全裸で磔にされたあげく、見世物のように市民の前で小便と大便をさせられたのだ。

 思い出すと、あの有来有去(ゆうらいゆうきょ)に対する怒りで肚が煮える。

 宝玄仙は急激に湧いてきた羞恥を振り払おうと、眼の前の蒸留酒をぐいと飲んだ。

 

「さっきも言ったけど、あたしと一緒の間は安心よ。手を出す者はいないわ。だけど、部屋に戻ってからは用心するのね。賞金稼ぎはあんたらを狙うと思うわ──。もっとも、見た感じ供の方々も強そうだし、あたしが心配するようなことじゃなさそうだけど」

 

 七芽がまた、肉をつまんで酒を呷った。

 

「お前の客にしてくれないかい、七芽? ここは引き払うことにするよ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「あたしの家に来るということ? もちろん、構わないわよ」

 

「じゃあ、そうさせてもらうさ」

 

 宝玄仙は言った。

 

「ご、ご主人様──」

 

 沙那が声をあげた。

 

「なんだい、文句があるのかい、沙那?」

 

「文句っていうわけでも……。でも、わたしたちは、この方のことを知らないし……。いきなり、知り合ったばかりの方のお世話になるなど迷惑だろうし……」

 

 沙那がちらちらと七芽に視線を送りながら、言い難そうにたしなめの言葉を口にした。

 

「わたしの決めたことに文句を言うんじゃないよ、奴隷のくせに」

 

 宝玄仙はぴしゃりと言う。

 沙那が吐息をして、諦めたような表情になった。

 

「奴隷?」

 

 七芽が驚いたような表情になった。

 

「気にしなくてもいいよ、七芽さん。うちのご主人様は、あたしらのことをそう呼ぶんだよ」

 

 孫空女が笑った。

 

「奴隷ねえ……」

 

 七芽がなにかを含むような表情になった。

 

 

 *

 

 

 女がひとりで暮らす家というから、もっと小さな庵のようなものを予想していた。

 しかし、七芽の家は、家というよりは屋敷だった。

 客室だけでも幾つもあり、宝玄仙はその中の一室をあてがわれた。

 三人の供は、まとめて別の寝室だ。

 

 沙那が安全を理由に同じ部屋で四人全員で寝ることにこだわったが、逆に宝玄仙は今夜はひとりで休むことにこだわった。

 ひとつの予感があったからだ。

 

 その予感は的中した。

 宝玄仙が寝台に横たわってすぐだった。

 寝室の扉が開いて、七芽が入ってきた。

 

「邪魔かい?」

 

「邪魔じゃないさ、七芽」

 

 宝玄仙は寝台に七芽を迎える態勢になった。

 さっきよりも、もっと薄物で、ほとんど乳首が透けているような布を羽織っている七芽が、横になっている宝玄仙のそばに腰掛けた。

 

「あたしが来ると思っていたかい、宝玄仙?」

 

 七芽が微笑んだ。部屋の隅には小さな燭台がある。

 その燭台の灯りが七芽と宝玄仙を照らしている。

 

「お前には、わたしと同じ匂いを感じたからね、七芽」

 

 宝玄仙は横になったまま、七芽を見つめながら言った。

 

「匂い?」

 

「欲情した雌の匂いだよ。いい女を見れば抱きたくなる。裸に剥いて、よがり狂わせたくなる。そんな困った性癖の匂いさ──。お前は、わたしを性愛の相手と思って見ていたろう?」

 

 宝玄仙がそう言うと、七芽が声をあげて笑った。

 

「だったら話が早いよ。まどっろこしい誘い合いはやめようじゃないか、宝玄仙。あたしは、根がふしだらな女でね。あの居酒屋には、時折、男を物色に来るのだよ。一箇月に一度は男を抱かなければどうしようもなくなる性分なのさ」

 

「つまり、男あさりかい」

 

「まあね。あそこで抱きたくなるような男を見つけて口説くんだよ。大抵は金を払って男を買うんだけどね。あそこには、賞金稼ぎだけじゃない。男妾だってたくさんいるのだよ。だけど、今夜はお前を見つけた。抱かしてもらえるかい? 天国に連れて行ってやるよ」

 

「わたしは、女だけどね」

 

「女も好物だよ。特に、綺麗な女はね……」

 

 七芽が薄物を脱いで、床に放り投げた。

 宝玄仙も上半身を起こして寝巻の紐を解く。

 寝巻にしていた合わせの着物の下には、なにもつけていない。

 まったくの裸身がそこにある。

 宝玄仙は着物を寝台の横の椅子にかけた。

 

「どちらが“ねこ”になることにする? わたしかい? それともお前?」

 

 宝玄仙は言った。

 

「あたしは“ねこ”には馴れていなくてね。よければあたしが、“たち”でいいかい? 後で交替してもいいけど……」

 

「いいよ。わたしは、どちらでもいける方さ。“ねこ”でも“たち”でも、男でもね……」

 

 宝玄仙が寝台に再び横になった。

 七芽が覆い被さり、横たわる宝玄仙の裸身を抱きしめた。

 

「今夜はとても運がよかった。お前のような美女を見つけた……。こんな幸運な夜は滅多にないさ。性器があるだけの価値しかないような男を今日も抱かなければならないのかと思っていたよ」

 

 七芽が宝玄仙の耳元でささやき、息を吹きかけた。七芽の息が耳の奥に吹き込んでくると、ぞくぞくとして腰の力が抜ける気がした。

 

「あ、ああ……」

 

 くすぐったさに思わず声が出た。

 顔の上の七芽の口元が微笑んだ気がした。

 

「薄闇の中でも、お前の肌の白さと素晴らしさがわかるわ、宝玄仙。とても、素敵な身体をしているのだね」

 

 七芽がささやく。

 そして、宝玄仙の乳房に自分の大きな乳房を押しつけるようにしてきた。

 七芽の豊満な乳房に密着した宝玄仙の乳房が変形して潰される。

 

 七芽の乳首はすでに勃起していた。

 その乳首が宝玄仙の乳首に擦れて刺激が加わった。

 

「くあっ──」

 

 宝玄仙は思わず身体を仰け反らせた。

 乳首は以前、千代婆という老女から受けた仕打ちで、宝玄仙の強い性感帯になっている。

 おそらく肉芽と同じか、それ以上に感じる場所になっている。

 

「ふふふ、随分、敏感なんだね、宝玄仙」

 

 身体の上の七芽が、宝玄仙の乳首に自分の乳首を擦りつけるように動かす。

 込みあがる愉悦に宝玄仙はあっという間に全身が熱くなる。

 

「そ、そこだけは弱くて……」

 

 性については百戦錬磨のつもりだ。こんな田舎女に翻弄されるような宝玄仙ではないのだ。

 言い訳めいた言葉をつい口にしてしまう。

 

「そうかい……。あたしも全身が熱くなってきたよ」

 

 七芽が乳首で乳首を刺激しながら、宝玄仙の耳に舌を這わせてきた。

 巧みな舌遣いだ。

 宝玄仙は思わず腰を浮かせて身体をよじった。

 

「あうっ」

 

 思わず声をあげた。宝玄仙の身体の悶えを利用して、七芽の両脚が宝玄仙の両脚を割るように置かれた。

 宝玄仙は大きく股を開いた態勢になり、七芽の両脚が邪魔で閉じることができない。

 つまり、七芽の責めに無防備な態勢になったということだ。

 

 しかも七芽は、身体の横に添わせた宝玄仙の両手をしっかりと両手で包んでいる。

 それで、ほぼ完全に宝玄仙は抵抗できないかたちになった。

 

 宝玄仙をその態勢にして、七芽は唇で耳を、両手で全身を、そして、乳房で乳首を愛撫してくる。

 宝玄仙をすぐに追い詰めるというような愛撫ではない。

 根気よく、急がず、ゆっくりと少しずつ宝玄仙の抵抗力を奪っていこうとするような愛撫だ。

 宝玄仙は、この七芽から宝玄仙を凌駕するような性の技巧を感じ始めてきた。

 

「あ、ああ……あっ、あっ……」

 

 七芽の両手が宝玄仙の背中に回る。

 全身に疼きのような快感が走る。

 宝玄仙は戸惑っていた。

 自分の背中がこんなにも感じる場所だとは、いまのいままで知らなかったのだ。

 

 いや、そうではないだろう……。

 この七芽がうまいのだ。

 

 宝玄仙の性感帯を知り尽くしているかのように、巧みに宝玄仙の敏感な場所を当ててそこを責めてくる。

 同じ背中でも、ある場所は撫ぜるように優しく、ある場所は指を喰い込ませるかのように強く刺激し、変化をつけながら宝玄仙の性感を探っている。

 まるで感じる場所を掘り起こされるような七芽の愛撫に、宝玄仙は次第に悶え、そして、乱れ始めた。

 自然と身体が震えて、声が迸る。

 

「可愛いねえ、宝玄仙……。可愛いと言われたことはあるかい?」

 

「そ、そんなことは……」

 

 可愛いなど……。

 

 いまは封じられているが、道術では幼いころから人を恐れおののかせるほどの力を持っていた宝玄仙だ。

 宝玄仙を畏怖する者はいても、可愛いなどと称する者はいなかっただろう。

 

「可愛いよ、宝玄仙」

 

 七芽がまた宝玄仙の耳を舐める。

 

「くっ……。こ、これ以上は耳は……」

 

「どうしたのさ、耳が感じるのかい、宝玄仙?」

 

 七芽が喉の奥で笑うような音をさせながら、執拗に耳を舌で擦りあげる。

 宝玄仙は、もうどっぷりと濡れている自分の股間を感じていた。

 

「あふうっ」

 

 宝玄仙は身体を跳ねあげて、悲鳴のような嬌声をあげた。

 七芽が片手を伸ばして、宝玄仙の片方の内腿を擦ったのだ。

 長い愛撫で熟れたように熱くなっていた性器の近くを刺激されたことで、宝玄仙は全身に快楽の矢が一気に貫いたような感じになった。

 無意識のうちに、宝玄仙の両脚は閉じようと動いていた。

 しかし、七芽の両脚に阻まれて、脚を閉じることはできない。しかも、七芽は身体を密着させることで、宝玄仙の両手を自分の身体の下にして動きを封じている。

 宝玄仙はされるがままになるしかない。

 

 こんな情交は久しぶりだった。

 性愛では主導権をとることが多い宝玄仙だ。

 しかし、この七芽の性の技巧の前に、完全に主導権を握られて、ただ、されるがままになっている。

 しかし、それは屈辱ではない。

 むしろ果てしない甘美な快感でもある。

 支配されてどうしようもなく欲情させられて、一切の抵抗ができない……。

 それは、宝玄仙を果てしなく酔わせて淫情させる。

 

「はああっ……こ、こんなのは……ああっ」

 

「可愛い声で鳴くねえ。しかも、感じているお前の顔はどうしようもなく可愛いさ。もっと鳴いておくれ。もっと悶えておくれ、宝玄仙……。ここなんて気持ちいいんじゃないのかい」

 

 七芽の指が肛門のすぐ近くを撫ぜた。

 宝玄仙は全身を弓なりにして大きな声をあげた。

 

 七芽の愛撫は執拗だ。

 本当に気持ちのいい場所には触れずに、そのすぐそばを延々と責めたてるのだ。

 宝玄仙をあっという間に達しさせるような鋭敏な場所には触らずに、ぎりぎりの場所を責め続ける。

 宝玄仙の快感はどんどん蓄積されて膨れあがる。

 しかし、それは発散せずに、宝玄仙の身体に留まり続けている。

 満たしてもらえない快感は、いつまでも満たしてもらえず、それでいて、快感が爆発しそうに溜まり続ける。

 

 もう、どうなってもいい……。

 そんな思いが宝玄仙を支配していく。

 この快感を満たして欲しい──。

 

「どこか触って欲しい場所があるかい、宝玄仙?」

 

 七芽が言った。

 宝玄仙は眼を開いた。

 笑っている。

 勝ち誇ったような余裕のある笑みだ。

 それがなんだか気にいらない。

 この宝玄仙を相手に性愛でそんな表情をするなど許せない……。

 翻弄されていた心が冷静さを少しだけ取り戻す。

 

「そろそろ、その敏感な乳首を本格的に責めようかね」

 

 その瞬間、七芽がささやいて、これまでの静かな動きから一転して、激しく自分の乳首をかき回すように責めはじめた。

 

「ああっ……ひっ……七芽──」

 

 思わず叫んだ。強烈な快感が迸った。

 全身に強い欲情が駆け巡る。

 まともな思考力が消える……。

 

「ああ……あっ……」

 

 大きな声が部屋に響いた。

 宝玄仙の声ではない。七芽の声だ。

 七芽が切なそうな表情で喘いでいる。

 宝玄仙の乳首を擦るのは、七芽の乳首だ。

 当然、七芽も欲情しているはずだ。

 自分だけではなく、七芽も感じているのだ。

 そう思うと、急に安心したような気持ちになった。

 

 そして、快感が昂ぶっていく……。

 次第に絶頂感が宝玄仙を支配していく。

 もう、少しで……。

 

「い、いくよ──」

 

 宝玄仙は叫んでいた。

 激しい乳首への刺激で宝玄仙は狂おしい淫情を覚えた。

 乳首だけの刺激でも達するには十分な刺激だ。

 宝玄仙は爆発する自分の快感をはっきりと認識していた。

 

「可愛いねえ……」

 

 七芽が笑った気がした。

 次の瞬間、乳首を責めに責めていた七芽の乳首が宝玄仙の乳首からさっと離れた。

 

「えっ?」

 

 思わず声をあげてしまった。

 一気に高められた劣情が急激に下がっていく。

 

「こっちはどうだい、宝玄仙?」

 

 七芽が宝玄仙の肉芽に触れた。

 疼きに疼いていた肉芽にいきなり強い刺激が加えられた。

 宝玄仙は大きな声をあげて全身を仰け反らせた。

 

「まだだよ……」

 

 しかし、またもや、さっと七芽の指が肉芽から離れた。

 

「お願いだから、いかせて欲しいと言えたら、いかせてやるよ、宝玄仙……」

 

 七芽が愉快そうに笑った。

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