※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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310 女主人の絶体絶命

「……起きな」

 

 腹を軽く蹴られたのがわかった。

 宝玄仙は、自分がぼろ布にでもなった気がしていた。

 全身が弛緩してどこにも力が入らない。

 

 どうやら仰向けで床に寝ていたようだ。

 まだ、意識は朦朧としている。

 夢の中にでもいるようにぼんやりとしてなにも考えられない。

 

「……な、七芽かい?」

 

 宝玄仙は自分を見下ろしている女を見上げた。

 七芽だ──。

 この女と意気投合して、ひと晩の情事をした。軽い気持ちで始めた女同士の性交だったが、七芽は宝玄仙がたじろぐほどの性巧者だった。

 その性の手管に翻弄されて、宝玄仙は信じられないくらいに激しくいき狂った。

 おそらく、ひと晩で数十回も絶頂させられただろう。

 しかも、ひとつひとつが深くて充実した絶頂だった。それを立て続けにさせられたのだ。

 

 性交の途中で完全に気を失い、そのまま朝を迎えたようだ。

 いまだに宝玄仙は半分夢の中にいる。

 七芽は床の真ん中に椅子を移動させて、そこに腰掛けて脚を組んで腰掛けていた。

 いつの間に着替えたのか、きちんと髪を整えて服を着ている。

 肌に密着するような薄物の着物は相変わらずで、それを腰帯で締めている。

 

「ひがああっ──」

 

 突然、股間の中に鞭打ちされたような衝撃が走り、宝玄仙は全身をのたうたせた。

 電撃のようなものが股間に加わったということを知覚したのは、股間の衝撃が止まって自分の発狂したような悲鳴が収まってからだ。

 

 一瞬にして脂汗が全身から吹き出し、朦朧としていた意識が一気に覚醒した。

 宝玄仙は、汗まみれの身体を起こした。

 そのとき、宝玄仙は首に不可思議な圧迫感があることに気がついた。

 

 手をやると首輪のようなものが嵌っている。

 取ろうとしたが、皮膚そのものに張り付いているかのように隙間なく肌に密着している。

 留め金のようなものも見つからない。

 

「い、いま、わたしになにをしたんだい──? お、お前の仕業かい、七芽」

 

 宝玄仙は声をあげて、七芽を睨んだ。

 

「ひぎゃああっ」

 

 再び股間に電撃が走る。宝玄仙は床にひっくり返った。

 

「口のききかたに気をつけるんだよ、宝玄仙。今日から、お前はあたしの飼う雌犬になったんだからね。あたしのことはご主人様と呼びな。まずは、ご主人様を認識するための躾だよ。あたしの足の指を舐めるんだ。あたしの足の味を覚えるまでやるんだよ。そのうち、試験をするからね。他人の足とあたしの足の見分けが舌だけでつかなかったら、またそのときは、その股間の糸で電撃を加えるよ」

 

 七芽は言った。

 

「糸?」

 

 宝玄仙は自分の股間を慌てて見た。

 ほとんど見分けがつかないが、透明の細い糸が肉芽に巻きつき、そこから女陰に向かって数十本の糸が入り込んでいる。

 そのうちの数本は、さらに後ろの肛門に向かって伸びているような気がする。

 

 そう考えると肛門と女陰に違和感がある。

 なにかが入っているような奇妙な感覚だ。

 この肉芽の根元に巻かれ、股間や肛門に入り込んでいる糸が原因だと思った。

 そっとその糸に手を伸ばす。

 そして、宝玄仙がその糸が巻きついているのではなく、肌の表皮のほんの内側を通っているということに気がついた。

 どういうことなのか理解できないが、もの凄く細い糸のようなものが宝玄仙の股間の皮膚の内側に走り、それが女陰と肛門の中に伸びている。

 

「な、なんだい、これ──?」

 

 宝玄仙は肌を擦るように糸を取ろうとした。

 しかし、糸は宝玄仙の身体の一部であるかのように、完全に肌の下側にある。

 皮膚を破らない限り、取ることができない。

 

「その糸は、お前の股間の内側を伝わって、直接に神経と繋がっているのだよ。あたしの念ひとつで、いまのように電撃が加えられるんだ。まずは、言うことをきかなかったり、粗相をしたら罰があるということを覚えな。それが雌犬奴隷の第一歩だよ」

 

「め、雌犬奴隷──。ば、馬鹿なことを言うんじゃないよ、七芽」

 

 宝玄仙は叫んだ。

 思わずかっとなり飛びかかろうとした。

 

「ぎぎゃあああ──」

 

 再び電撃──。

 しかも、さっきとは比べものにならないくらいに強い電撃だ。

 宝玄仙は床に身体をのたうち回らせた。

 

「……口だけでいいんだよ。ご主人様と言いな、宝玄仙」

 

 七芽が冷たい視線を送りながら言った。

 股間の電撃は続いている。

 しかも、次第に強さがあがっていく……。

 

「わ、わかった。わかったよ。ご、ご主人様──ご主人様──。も、もう、やめてぇ───。はぎゃあああぁ──」

 

 電撃が止まった。

 宝玄仙はがっくりと脱力させた。

 

「な、なんだ……?」

 

 全身に恐怖が走っている。

 上半身をゆっくりと起こして七芽を見る。

 七芽が宝玄仙を眺めている。

 顔は笑っているが、悪趣味な冗談をやっている雰囲気はない。

 つまり、宝玄仙を奴隷にするというのは本気なのだ。

 

 宝玄の全身に緊張がみなぎる。

 下手に逆らえば、さっきの電撃に襲われるということは悟った。

 その怖さは、たった数回で宝玄仙の記憶に染み込んだ。

 

 それにしても、一体全体、どうしてこんなことになったのか……。

 それに、この糸はなんなのだ。

 なぜ、七芽がこんなことをしているのか……。

 

 さっぱり訳がわからない。

 その時、宝玄仙は、七芽から発するかすかな霊気の流れを感じた。

 

 賽太歳(さいたいさい)という妖魔から道術を奪われたため、はっきりと知覚することはできないが、眼の前の七芽から、人間ではない妖魔独特の霊気が噴き出しているのを感じるのだ。

 

「お、お前、妖魔だったのかい……」

 

 質問ではなく確認だ。

 

 昨日はまったく気がつかなかったが、眼の前の七芽は人間ではない。

 妖魔だ。

 間違いない。

 

 すると、七芽の身体から発していた霊気の気が消滅した。

 霊気の気を隠す術だと悟った。

 昨日は、これを遣っていたから、七芽の正体がわからなかったのだ。

 

「本当の名は、七雌妖(ななめよう)……。それがあたしの名さ。とにかく、これから、お前は“ご主人様”とあたしのことをお呼び。それはけじめだからね」

 

「け、けじめってどういうことだよ? お前が妖魔だろうが、人間だろうがどうでもいいよ。どうして、わたしが、お前をご主人様と呼ばなけりゃならないんだよ──?」

 

「もちろん、あたしがそう決めたからだよ。あたしは、お前のことが気に入ったんだよ。それで、あたしの奴隷として飼うことに決めた。雌犬奴隷さ。しっかりと犬として躾けてあげるよ、宝玄仙。逆らうことは許さないよ……。まあいいよ。納得がいこうが、いくまいがどうでもいいんだ。自分があたしの奴隷になったことは、躾を受けながら身に染みればいい。まずは、あたしの足の指を舐めるんだ。いいというまでね」

 

 七芽というのは仮の姿で、本当に七雌妖という妖魔であることはわかった。

 妖魔だったのだ……。

 そして、その妖魔に捕らわれた……。

 

 おかしな妖魔の道術で股間の神経を自儘にされる仕掛けを施されている。

 だんだんと状況を理解してきた宝玄仙の背に冷たい汗が流れる。

 その時、激しく廊下側の扉が叩かれた。

 

「ご主人様──。ご主人様──。いまの悲鳴はなんですか? 大丈夫ですか──?」

 

 沙那の声だ。

 沙那が扉を激しく反対側から叩いている。

 それだけじゃなく、扉を開けようとがちゃがちゃと戸を動かしている。

 

「沙那──」

 

 宝玄仙は叫んだ。

 

「ご主人様、いるんだね──。妖魔がいるんじゃないのかい、そこに? 七芽さんは大丈夫なのかい?」

 

 孫空女だ。

 

「お前たち、助けておくれ──」

 

 宝玄仙は叫んだ。

 すると、扉の反対側が一瞬だけ静かになった。

 そして、いきなり、戸がこちら側に吹っ飛んだ。

 

 孫空女が『如意棒』を構えて入ってくる。

 その横に細剣を抜いた沙那。背後には朱姫もいる。

 

「ご主人様、大丈夫ですか?」

 

 沙那が駆け寄ってくる。

 しかし、その沙那が途中でつんのめった。

 ばたりと跪く。

 

「あ、脚が……?」

 

 床に倒れた沙那の足首に床から伸びた糸が絡みついているのがわかった。

 剣でそれを斬ろうとした沙那の右手首にも糸が走る。

 

 それだけじゃない──。

 部屋の四方八方から沙那に向かって糸が伸びる。

 沙那の手足や首に巻きついていく。

 

「ひうっ」

 

 首に糸がかかったとき、沙那が苦しそうに眼を剥いた。

 

「さ、沙那──」

 

「沙那姉さん──」

 

 孫空女と朱姫が叫んだ。

 しかし、そのふたりにも糸が襲いかかっている。

 あっという間に三人の全身に糸が巻きついた。

 

「な、なんだ、これ──」

 

「糸?」

 

 孫空女と朱姫も全身に巻きついた糸で身動きができなくなって悲鳴をあげた。

 三人の身体に巻きついた糸は、この部屋の床、天井、壁のあらゆる方向から伸びている。

 そして、三人の全身に巻きついて、身体を固定している。

 

「動くんじゃないよ。首がもげるよ。あたしがほんの一瞬、念を送っただけで首に巻きついた糸がお前たちの首をねじ取るからね」

 

 椅子に座ったままの七雌妖が余裕ありげに言った。

 

「く、くそう……。これが、お前が言っていた守り人かい」

 

 孫空女が呻いた。

 最初に居酒屋で出逢ったとき、そう言えば、七雌妖は、自分には守り人がいるから、危険はないというようなことを言っていた。

 それは、この糸の道術のことだったのだ。

 

「お、お前は妖魔ね」

 

 朱姫が叫んだ。

 

「そうだよ。七雌妖というのが本当の名だよ。あたしは昨日ひと晩、こいつと情交をして、すっかりと気に入ってしまったのさ。だから、雌犬奴隷にすることにしたんだ。お前たちは、この宝玄仙に囚われて、奴隷のような生活を強いられていたようだけど、それは今日で終わりにしてやるよ。行っていい。今日からお前たちは自由だ」

 

 七雌妖は言った。

 

「ふ、ふざけるんじゃないよ、お前──。ご主人様を返すんだよ」

 

 孫空女が声をあげた。

 そのとき、宝玄仙は、孫空女の右手がかすかに動いて握っている『如意棒』の先が七雌妖に向けられたことに気づいた。

 

「わからず屋だねえ。なにも、あたしはお前たちをどうかしようという気はないんだよ。奴隷の身分から解放してやると言っているのさ。どうせ、理不尽な手段で、こいつに従わせられていたんだろうけど、もう、好きにしなよ。こいつは、ここであたしが奴隷にして一生飼い潰す。お前たちを追いかけてくることはないよ。安心しな」

 

「な、なにが狙いなのよ……? ご、ご主人様をどうしたいのよ、お前……?」

 

 沙那が苦しそうに言った。

 その首には強く糸が喰い込んでいるのだ。

 すると七雌妖がかすかに指を動かした。

 沙那がほっとしたように息を吐いた。

 首を絞めていた糸がほんの少し緩んで、まともに呼吸ができるようになったようだ。

 

「あたしの目的は、宝玄仙を雌犬奴隷にすることよ。心配しなくても殺しはしないよ。ただ、あまりにも抱き心地のよかったこいつを手放したくないだけさ」

 

 七雌妖は言った。

 沙那が嘆息した。

 

「ま、また、面倒なことに……。ご主人様、言ったじゃないですか……。知らない人に不用意についていくのは不安だって。寝るときだって、四人一瞬に休みましょうとも……」

 

 沙那が恨みのこもった口調とともに、呆れたような視線を宝玄仙に向ける。

 確かに、昨夜、宿屋の一階の居酒屋で、七芽と名乗った七雌妖が宝玄仙たちに自分の家にこないかと誘ったとき、沙那は気が進まないようなことを言った。

 宝玄仙と離されて三人の供が寝るということになったときには、はっきりと危険だと主張して、四人一緒に休もうと言った。

 沙那の警告を無視して、七芽との情交を選んだのは、宝玄仙だ。

 七芽が宝玄仙と情事をしたがっている。それは七芽の醸しだす雰囲気で明らかだったのだ。

 だから敢えてひとりで休み、ここで七芽と情事をした。

 しかし結局、七芽は七雌妖という妖魔であり、朝になって宝玄仙は妖魔の術で捕らわれている自分を発見したということだ。

 

「た、助けてくれたら、今度は、お前の忠告に逆らわないよ、沙那」

 

「約束ですよ、ご主人様……」

 

 沙那が言った。

 

「今度なんてないんだよ、宝玄仙──。そして、沙那。それより、もう行くんだ。お前たちは奴隷の身分から解放されたんだ。もっと喜びなよ」

 

 七雌妖が苛ついた口調で叫んだ。

 

「朱姫──」

 

 沙那が叫んだ。

 それで十分だったようだ。

 

 朱姫の道術が発した。

 『影手』だ。

 不意に、七雌妖の全身に十数個の朱姫の『影手』が襲いかかった。

 七雌妖の顔が驚愕するとともに、椅子に座ったまま背後に倒れていく。

 

「伸びろ──」

 

 ほとんど同時に孫空女の右手の『如意棒』も伸びて、その先端が七雌妖の腹を抉った。

 

「ぶほうっ」

 

 七雌妖の口から胃液のようなものが噴き出したのが見えた。

 床に倒れた七雌妖が動かなくなった。

 糸が緩んだのか、沙那が剣を振って自分の全身にまとわりついていた糸を断ち切った。

 次いで、孫空女と朱姫のところに飛んでいき、ふたりの身体に巻きついていた糸も切る。

 

「ご主人様、大丈夫ですか?」

 

 沙那がやってきて宝玄仙を抱き起こしてくれた。

 

「だ、大丈夫というか……。こいつ、わたしの股間に糸を装着して……」

 

 宝玄仙の股間に喰い込んでいる糸はまだ、そのままだ。

 沙那が宝玄仙の股間をじっと見て、やがて、顔をしかめた。

 宝玄仙を抱き起こして、七雌妖の前に連れて行く。

 

 すでに、七雌妖には、孫空女が『如意棒』を真っ直ぐ首に向けている。

 いまにも突き刺さんかのような構えだ。

 朱姫の『影手』は、七雌妖の手首と足首にまだ張り付いていて、七雌妖の自由を奪っているようだ。

 

「……お、お前、なんなのよ……。いきなり、道術を……。お前が道術遣いだったなんて……」

 

 七雌妖が意識を回復したようだ。呻きながら朱姫を睨んだ。

 

「あたしは半妖よ」

 

「半妖?」

 

 床に寝たままの七雌妖が眼を見開いている。

 

「そうよ」

 

 朱姫が言った。

 

「半妖なんて珍しいわね。だけど、そういうことだったのね……。半妖の霊気は感じとり難いのよねえ。そのくせ、賽太歳のように巨大な霊気を持っていたりするし……」

 

 七雌妖が口の中でぶつぶつ悪態をついた。

 

「いま、なんて言ったんだい──」

 

 孫空女が叫んだ。

 

「いま?」

 

 七雌妖が眉をひそめた。

 

「賽太歳と言ったろ?」

 

 孫空女が声をあげる。

 

「言ったけど」

 

「賽太歳を知っているんだね?」

 

 孫空女が喜色ばんだ。

 

「えっ、お前たちこそ、賽太歳を知っているのかい?」

 

 七雌妖が不思議そうに言った。

 

「……その話は後でいいわ、孫空女……。それよりも、七雌妖、ご主人様を解放しなさい。ご主人様の股間に刻んだ道術を解いて糸を解放するのよ」

 

 沙那が声をあげた。

 

「わからないわねえ……。あたしは、あんたらに危害を加えるつもりはなかったのよ。あたしが奴隷にしたいのは、この宝玄仙だけで、あんたらはこのまま解放すると言っているのよ。だいたい、あたしは、人間や妖魔同士でどちらかがどっちを支配したり、されたりというのは大嫌いなのよ。同じ人間同士や妖魔同士でもね。同じように生きているのに奴隷だなんて……」

 

「はあ?」

 

 武器を突きつけたままの孫空女が不満そうに声をあげた。

 しかし、七雌妖は不適に微笑んでいる。

 

「こいつは、あんたらを手酷い仕打ちで奴隷にしたんでしょう? こいつがそう言っていたわ。だから、あたしは、こいつを奴隷にして懲らしめてやるつもりよ。自分が奴隷になって、奴隷にされた者の気持ちを味わうといいのよ」

 

 七雌妖が三人の供を睨みながら言った。

 

「ご託はいいんだよ。さっさと、ご主人様の術を解くんだよ」

 

 孫空女が『如意棒』をさらにぐいと七雌妖の喉に突きつける。

 

「いいから、あたしの話を聞いてよ、三人とも──。あたしの眼を見てったら。嘘を言っていないのがわかるから……」

 

 七雌妖が言った。

 

「い、いけない──。沙那姉さん、孫姉さん、眼を見ては駄目です──。あたしたちに『縛心術』をかけようとしています」

 

 不意に朱姫が叫んだ。

 

「もう、遅いわ……。三人とも、身体を制止しなさい。朱姫は術を解くのよ」

 

 七雌妖が言った。

 三人の眼が虚ろになった。

 七雌妖の身体から、朱姫の『影手』が消滅する。

 七雌妖は、孫空女が突きだしている『如意棒』を押し外して、身体を起こした。

 

「びっくりしたわね。危ないところだったわ」

 

 七雌妖が立ちあがった。

 

「お、お前たち、沙那──孫空女──朱姫──。しっかりおし──」

 

 宝玄仙は大声をあげた。

 三人に駆け寄ろうとする。

 しかし、床から飛び出した糸が両方の足首にかかる。足が床から離れなくなった。

 思わず両手を床につくと、その手首にも糸がかかる。

 宝玄仙は、四つん這いの姿勢から動けなくなった。

 

「沙那──孫空女──朱姫──」

 

 宝玄仙は四つん這いのまま絶叫した。

 

「無理よ。もう、完全に術にかかっているわ。なにを言っても認識できないわ」

 

 七雌妖が勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

 

「そ、そいつらをどうするつもりなんだい?」

 

 宝玄仙は七雌妖を見あげて言った。

 

「どうもしないわ。お前に関する記憶を消して放逐するだけよ」

 

「記憶を?」

 

「そうよ。寝物語で言っていたじゃない。お前は、お前の母親からお前に関する記憶を消したんでしょう。いいことを教えてもらったわ。あたしも同じことをすることにするわ。いまは、興奮しているから、自由になったということがよくわからなかったかもしれないけど、奴隷だったという記憶を消してしまえば、彼女たちも冷静になると思う……」

 

「記憶を消しただとう――」

 

 宝玄仙は愕然とした。

 

「さあ、三人とも、いらっしゃい。屋敷の外まで案内するわ。それから、あの宿屋にでも行ったらいいじゃない。それから先、どうするのかは三人で話し合うのね……」

 

 七雌妖が歩き出した。

 それに促されるように、三人がついていく。

 

「ま、待つんだよ、お前たち──。行っちゃ駄目だ。わたしを……わたしを見捨てないでおくれよ、お前たち──」

 

 宝玄仙は叫んだ。

 そして、もがいた。しかし、手足首に巻きついた糸はどうしても外れない。

 

「……少し、待っていてね、宝玄仙。それまで、糸に遊んでもらうといいわ。その糸は、電撃を加えるだけじゃないのよ。神経に直接に繋がっているから、面白いこともできるわ」

 

 七雌妖が意味ありげに言いながら、部屋の外に消えた。

 操られた人形のようになった三人がその後ろをついて、部屋の外に出ていく。

 

「ま、待て──。あひいいいいっ」

 

 宝玄仙は絶叫して、身体を仰け反らせた。

 いきなり、股間と肛門に淫らな刺激が起こったのだ。

 肉芽と女陰と肛門が一斉に動き出している。

 

 いや、動き出したのではないのかもしれない……。

 しかし、肉芽がぶるぶると震えるとともに、女陰で張形が振動しながら暴れ回り、肛門でもさらに小刻みで激しく揺れる感覚が伝わって来たのだ。

 おそらく、神経に繋がっている糸が、宝玄仙の脳と身体にそういう感覚を送り込んでいるのだ。

 

 直接に神経に送られる快感には、宝玄仙もひとたまりもない。

 ただでさえ、ひと晩続いた情交により、宝玄仙の身体の感度はあがるだけあがりきっている。

 一瞬にして、宝玄仙は絶頂を迎えてしまった。

 

 しかし、それだけでは終わらない。

 相変わらず激しい錯覚の振動を股間や肛門の神経に送り続けられて、宝玄仙は二度目の絶頂に突き進んでいた。

 

「あがあああっ──。や、やめておくれえええ──」

 

 あまりにも激しい快感に宝玄仙は悲鳴をあげた。

 外から与えられる刺激による快感なら、まだ逆らったり耐えたりできるかもしれない。

 しかし、神経に繋がる糸で送り込まれる絶頂の信号は、全身の神経と脳に繋がり、宝玄仙に抵抗のしようのない激しい快感を引き起こす。

 

 宝玄仙は狂ったように叫んでいた。

 二度目の絶頂もあっという間に終わり、宝玄仙はすぐに三度目の絶頂を迎えようとしていた。

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