「やっぱり、変態雌犬だねえ……。尻尾を振りまくって可愛いじゃないか、宝玄仙。拘束してやっただけで、尻尾を振りだすなんて、お前の身体はどうなっているんだい?」
「い、言わないでおくれ……」
宝玄仙は、糸で磔にされた身体を身悶えさせた。
七雌妖のいう雌犬調教という名の嗜虐が五日目を迎えていた。
宝玄仙は、七雌妖の屋敷で、いつもの部屋の真ん中に両手両足を大きく拡げて立位で拘束されていた。
手首と足首に七雌妖の道術による幾重かの糸が絡みついて四肢を拡げて引っ張られているのだ。
この姿勢にされると、宝玄仙は朱紫国の国都における磔刑の恥辱を思い出してしまうのだが、それを知られてから七雌妖は好んでこの格好に拘束して宝玄仙をいたぶるようになった。
また、縛られた方が、宝玄仙が被虐の快感を呼び起こすとわかると、宝玄仙を愛するときには、得意の糸の道術で必ず縛るようにもなった。
そういうことについて、七雌妖は、宝玄仙の心を皮を一枚一枚めくるように露わにしていった。
宝玄仙の尻につけた尻尾を使ってだ。
宝玄仙の腰の後ろには、白い房毛の尾が肛門の上側に植え付けられている。
七雌妖の糸の道術で作られたもので、宝玄仙が興奮したり欲情したりすると、この尾が反応して動いたり変化したりするのだ。
この尾を観察することで、七雌妖は宝玄仙の隠れた欲望を暴いていった。
つまり、性的な欲情を感じると宝玄仙の意思と関係なく、尾は左右に大きく振られる。
気をやりそうになるまで淫情が溜まれば、普通は真っ白い尾の色が桃色に変化するようになっている。
七雌妖は、この尾を観察しながら宝玄仙を責めて、実は、宝玄仙が縛られて苛められることでどうしようもなく淫情してしまうという隠れた性癖を暴いたのだ。
「三人の奴隷を飼っていたほどのお前が、本当に被虐されると欲情する雌犬だとわかったときは驚いたものさ──。ほらっ、これが感じるんだろう」
七雌妖の平手が宝玄仙の無防備な尻たぶに打ちつけられた。
「ひうっ──じゅ、十一……」
十一というのは数のことだ。
宝玄仙は半刻(約三十分)間、七雌妖の愛撫に耐えて気をやらないという命令に従うことができず、尻打ちの罰を受けているところなのだ。
回数は二十回。
打たれるたびに数をかぞえる。
しかし、尻を打たれることで、尾を振って欲情していると七雌妖に指摘されて、また宝玄仙は羞恥におののかなければならなかった。
尻打ちの痛みなどどうということはない。
しかし、隠れている心を暴かれるというのは、どうしようもなく宝玄仙を追い詰める。
この雌妖に屈服しようとしている自分を感じてしまう。
七雌妖の調教を待ち望んでいるもうひとつの自分の心に精神を支配されそうになる。
七雌妖に支配される……。
それは悦びであり、恐怖でもある。
「だったら、尾を振り立てるのを止めてみな、宝玄仙──。普通の女は痛くされて、欲情したりしないよ。それなのに、お前は尻を叩かれて淫情しているのかい。これじゃあ、罰だか、ご褒美だかわからないじゃないか……」
七雌妖の手が宝玄仙の尻を撫ぜながら、耳元でささやく。
「も、もう、言わないで……」
宝玄仙はうつむいたまま左右に首を振った。
つらい……。
自分の中の被虐心を暴かれるのは、心を読まれるようでつらいのだ。
宝玄仙を落ち着かなくさせ、宝玄仙の心をどこまでも責めたてる。
自分が自分でなくなる恐怖……。
怖い……。
しかし、それが欲しい……。
「ほれっ」
「ひうっ──十二──」
宝玄仙の怯えた尻を優しくいつまでも撫ぜていたかと思えば、急に横殴りに打擲される。
それが繰り返されていた。
「ふふふ、可愛いねえ、宝玄仙……。お前の真っ赤な尻が次の打擲に怯えて、左右に微かに動く様子は、哀れというよりは淫らだよ……。それにしても、ますます、尾は激しく動くねえ。あたしも、いままでに何人かの女に遭ったけど、こんなに苛め甲斐のある女は初めてさ―― 一生、飼い殺してやるよ」
尻たぶに平手が弾けた。
痛みが身体の芯を刺す。
同時に激しい淫情が身体を貫く──。
「はうっ、十……三……」
隠せない……。
自分の心を隠せない。
やはり、自分には大きな被虐の心が染み抜いている。母親から十二になるまでさまざまな性的な責めで虐待された。
それが宝玄仙の性癖の原点だ。
女を嗜虐して悦に耽る性癖はそこに上塗りされたものだ。いまでは、嗜虐こそが宝玄仙を激しく淫情させる性交の手段になっているが、そのさらに内側には、母親の躾により擦り込まれてしまった被虐の性癖がある。
あの嫌悪感しかなかった少女時代に戻される……。
嫌だ……。
もう、あんな時間をすごすのは嫌だ……。
「ふ、ふ、こわいのかい……。自分の正体を自分が知るのが……?」
七雌妖が笑いながら、宝玄仙の乳房に手を伸ばした。
「あうっ」
宝玄仙は全身を大きく身震いした。
七雌妖の宝玄仙の乳首の周りをくるくると動かしている。大きな快感が全身に襲いかかってくる。
「尾もそうだけど、お前、さっきから乳首を勃起させすぎだよ。被虐の性癖を隠したいなら、道術で植え付けられた尾はともかく、乳首の勃起くらい耐えなきゃ駄目じゃないかい……」
「そ、そんなこと言われても……」
宝玄仙は、乳房を這い回る指を避けようと身体を左右に悶えさせる。
しかし、拘束されている身体では、七雌妖の淫らな刺激から逃げることは不可能だ。
そして、逃げることができないということが、宝玄仙をさらに欲情させる。
「口に出してみな、宝玄仙──。お前の本当の欲望を認めるんだよ。お前は苛められて歓ぶ雌犬だ。それを口にするんだ」
七雌妖が耳をくすぐるように宝玄仙にささやく。
そして、完全に興奮で勃起している乳首のぎりぎりのところを刺激し続ける。
「ち、違う──」
宝玄仙は叫んだ。
認める……。
それは屈服だ。
その一線を越えれば、もう、戻れない。
宝玄仙は確信していた。
この七雌妖から逃げたくなくなる自分がやってくる。
七雌妖の嗜虐と愛欲──。
これにどうしようもなく心を犯される宝玄仙が、宝玄仙の精神を支配する……。
「そらっ」
尻に激痛──。
「十……よ、四──」
宝玄仙は叫んだ。
だが、尻を打たれるたびに腰が溶ける。
股間から愛液が滲み出る。どうしようもなくいたたまれない感じに駆りたてられる。
もっと、欲しい……。
もっと、激しいものが欲しい……。
「口に出さなくても、尾を見ればわかるんだよ。尾は左右に動いているし、いまの尾の色はうっすらと薄桃色さ。隠しても仕方がないし、無駄なことなんだよ、宝玄仙。すでに見破られていることを口にするだけじゃないか……。なにがそんなに抵抗あるんだい……?」
「あひいいっ──」
宝玄仙が追い詰められそうな被虐の酔いと戦っている最中に、ぎりぎりのところを漂っていた七雌妖の指が不意に乳首の頂点を押した。
「あ、ああ……や、やめて……や、やああっ──」
「そうやって、欲情しているお前は本当に可愛いよ。末永く突き合おうよねえ」
背後に立っていた七雌妖が宝玄仙の前に回ったかと思ったらいきなり、七雌妖は宝玄仙の唇に口づけをしてきた。
七雌妖の舌が宝玄仙の口の中に入ってくる。
宝玄仙は欲望のまま、自分の口に入ってきた七雌妖の舌に吸いついた。
口を犯される……。
そのことに興奮している……。
それはわかっていた。
だが、そこから逃げられない……。
逃げたくもない……。
七雌妖の舌──。
甘美で……。
切なくて……。
愛おしくて……。
「んんんん──」
七雌妖の指が宝玄仙の尻の亀裂に這ってきた。
そして、亀裂に指を添わせながら、宝玄仙の裸身を自分に押しつけるようにしてきた。
宝玄仙は七雌妖の身体に汗まみれの身体をすり寄せながら、唇を奪われていた。
息が……。
息が苦しい……。
長い口づけに宝玄仙の息が苦しくなる。
だが、自分から七雌妖の唇を離す気にはなれない。その代わり、宝玄仙は懸命に小鼻を拡げて息を吸った。
呼吸を求めながら、一方で七雌妖の愛撫を一身に受けとめようともしていた。
宝玄仙の拡げた股間に七雌妖の太腿が押しつけられる。
そして、ぐりぐりと擦られる。
「んぐうっ」
一度刺激されると、もはや、逃げることは不可能だった。
宝玄仙は、自分から股間を七雌妖の太腿に擦りつけている自分を知覚していた。
だが、わかっていても止められないのだ。
気持ちいい──。
全身の血が沸騰しそうなくらいに燃えている。
この燃えたぎった淫情を発散させてくれるなら、もうほかのことはどうでもいい。
一生、奴隷と言われてこの雌妖にかしずく恥辱さえ甘受できるような気がした……。
「口に出しな、宝玄仙……。本当のお前は、苛められて歓ぶ奴隷だ。それを口にするんだ」
宝玄仙の口から唇を離した七雌妖が言った。
その言葉で我に返った。いま、自分はこの七雌妖に屈服してもいいと思わなかったか……?
一瞬だが確かにそう思った。
宝玄仙は愕然とした。
「……ふ、ふざけるんじゃないよ……」
宝玄仙は歯を食いしばって七雌妖を睨んだ。
口に出したら終わりだ……。
そこ思いだけが宝玄仙を支えている。
宝玄仙に残された最後の一線を守らせている。
「……いいさ。だったら、調教を続けるだけだ……。まだ、今日は長い。明日もある。その翌日もある。その次の日もある。お前の身も心も完全にこの七雌妖に屈服するまで調教は続く……。何日目でお前は堕ちるのかねえ……」
「や、やめな──」
「ははは、頑張っておくれ。もちろん、お前が屈服しても、たっぷりと苛めてやるからね。お前を愉しませるために……。お前を歓ばすために、この七雌妖は嗜虐という名の奉仕をお前に続けるよ──。一生、一緒だ、宝玄仙……。一生、あたしはお前を可愛がるよ」
七雌妖の顔が優しい笑みで包まれた。
宝玄仙の心臓がなぜか激しい鼓動を始める。
その七雌妖が再び宝玄仙の背後に回った。
尻たぶが思い切り打擲される。
「じゅ、十五──」
宝玄仙は声をあげた。
*
「二十」
宝玄仙は苦痛に顔を歪めながら叫んだ。
叩かれた後の甘いささやきと愛撫──。
責めたてられて欲情を覚えると尻に打擲の苦痛──。
これを繰り返されて、宝玄仙は、もう身体も心もどろどろに溶けたような感じになっていた。
「頑張ったね、宝玄仙」
痛みで熱い宝玄仙の尻にそっと七雌妖の手のひらが被さった。
同時に宝玄仙の唇に七雌妖の唇が重なる。
「んふう……」
七雌妖の舌と唾液を吸いながら、『治療術』で自分の尻が癒される気持ちよさを味わっていた。
二十回の尻叩きで宝玄仙の尻は、真っ赤に腫れあがっていたはずだ。
それが治療される……。
「ご褒美だよ、宝玄仙……。ここが気持ちいいんだろう?」
七雌妖の左手の指が背筋から尻の窪みをまさぐり、尻たぶの中に滑り込んでくる。
「はううっ、そ、そこは……」
思わず顔を背けて、七雌妖の唇から口を離して宝玄仙は叫んだ。
七雌妖の指が宝玄仙の肛門深くに挿入されていく。
宝玄仙は全身を硬直された。
溶ける……。
全身が溶ける。
あっという間に包まれる浮遊感──。
怖い──。
この快感に酔うのが怖い……。
「尻の弱い宝玄仙──。お前がよがる顔はいつ見ても可愛いよ」
七雌妖が声をあげて笑った。
そして、今度は右手で宝玄仙の股間を前側からまさぐる。
「ひううううっ──。か、勘忍……。勘忍しておくれ、七雌妖──」
七雌妖の指が女陰に挿入された。
左手で宝玄仙の肛門、右手で宝玄仙の女陰──。
前後から挟むように両面攻撃だ。逃げる場所はない。
ただ受けるだけだ。
錯乱し、悶え、泣き、そして、屈服して果てるだけだ。
いや、いつ果てるか……。
それさえも支配されている。
なにもかもすべての欲情を七雌妖に委ねている。
「あたしの支配に屈するんだ、宝玄仙」
前後の指が激しく動く。両方の孔に入っている指先が薄い内幕を通して、擦りつけるように揉み動かされる。
「あ、ああ、あああ……わ、わたしは……ほ、宝玄仙だよ……ああ、あっ、あっ──く、屈服……するわけが……ない……あああっ──」
全身を仰け反らせて叫んだ。
前後の穴に喰い込んだ指で腰を回転させるように動かされる。
大きな官能の波が襲ってきた。
「尾がくすぐったいよ、宝玄仙。そんなに動かさないでおくれよ。しかも、尾の色も真っ赤にしちゃって……。もう、いくのかい? いきそうなんだね? 可愛いよ。本当に可愛いよ。嘘じゃないよ。あたしはお前が好きだ。愛しているんだ。可愛いよ。お願いだよ。あたしの雌犬奴隷になるって言っておくれよ……」
七雌妖が宝玄仙を責めながら言う。
奴隷になってやってもいい……。
喉までそれがきている。
しかし、冗談じゃない──。
そんなことができるわけがない。
宝玄仙のもうひとつの心がそれを止める。
だが、その抵抗感を削ぐように、七雌妖の愛撫が加えられる。
気持ちいい……。
「……いまは、このままいかせてやるよ、宝玄仙。お前の可愛いらしいいき顔を見たいからね。でも次は、雌犬奴隷になりますって口にするんだよ、いいね」
「そ、そんなことが……あ、ああ、ああっ」
宝玄仙は身体を仰け反らせた。
もう、そこまできている。
快感の頂点がほんの少しの場所まであがってきた。
「抵抗は無意味なんだよ、宝玄仙……。お前はすでにあたしの雌犬奴隷さ。それを言葉にするだけのことさ……。まあいい。明日もある。明後日もある。一箇月でも……半年でも……一年も……何年もあたしはこれを続ける……。お前が完全に堕ちるまでね……。ほら、いきな、宝玄仙」
前後の指の動きがさらに激しくなる。
気だるさと疼き──。
それらのすべてが快感に変わる。
宝玄仙の身体と心の中の一切が官能の爆発と一体になる。
誰にどんな格好で責められているのかということが宝玄仙から消える。
全身ががくがくと震えた。
「いくうっ──」
宝玄仙は絶叫した。
汗まみれの全身が二度、三度と弾けた。
「大した、いきっぷりさ、宝玄仙──。あたしの可愛い雌犬奴隷……」
七雌妖の優しげな声が聞こえた気がした。
しかし、それ以上のことを宝玄仙は知覚できなかった。
だんだんと遠くなる意識の中で、七雌妖が宝玄仙の裸身をぎゅっと抱きしめるような感覚をかろうじて認識した。
*
「散歩だよ、宝玄仙──」
首輪がぐいと引っ張られて宝玄仙は眼を覚ました。
宝玄仙は、いつの間にか、宝玄仙があてがわれている物置のような部屋の寝台で、自分が寝かされていたのだということがわかった。
その宝玄仙の首に嵌められている首輪に鎖を装着した七雌妖が思い切り宝玄仙を引っ張ったのだ。
宝玄仙は寝台から床に落とされた。
「い、痛い──。わ、わかったよ。わかったから乱暴にするんじゃないよ、七雌妖」
宝玄仙は床に打ち据えてしまった腰を擦りながら七雌妖に恨みを込めた視線を送った。
特に拘束はされていない。
ただ裸身に首輪だけをされている。
しかし、それだけで宝玄仙は、逃亡することができないでいた。
逃亡しようと思っても、どこからか飛んでくる糸で全身を拘束される。
ときには、その糸が宝玄仙の敏感な部位に喰い込んで激痛や淫らな疼きを与えたりする。
それに、宝玄仙の股間には、宝玄仙の神経と直接結びついた糸が肌の下を通っている。
七雌妖は、それを使って、欲情でも苦痛でも思いのままに宝玄仙の股間の感覚を操れるのだ。
「ひううっ」
宝玄仙は思わず股間を両手で押さえた。
不意に肉芽の根元が締めつけられてかすかな振動を始めたのだ。
いや、実際には本当は、肉芽は動いていないのかもしれない。
そんな感覚を与えられているだけなのだろう。
しかし、そういう感覚を与えられている宝玄仙にとっては同じことだ。
「大した振動じゃないよ。お前だったら耐えられるだろう? さあ、立つんだ」
七雌妖は言った。
仕方なく宝玄仙は股間を押さえたまま立ちあがる。
こんな風に肉芽を締めつけられて振動されると、宝玄仙の全身からは完全に抵抗心がなくなってしまう。
七雌妖の快感の虜になってしまうのだ。
そんな状態の宝玄仙に、七雌妖はサンダルを履くように命じた。
どうやら外出というのは、表の温泉の池のことではなさそうだ。
七雌妖の屋敷は、天然の温泉の池の真ん中の中洲に建っている。
裏庭がそのまま温泉の池であり、宝玄仙は日に何度もそこに連れて行かされているが、裸身のまま移動すれば十分であり、靴を履くことはなかった。
どこに行くのかわからないが、もしかしたら、全裸のまま人目のある場所まで連れて行かれるのだろうか。
宝玄仙の心を恐怖が包む。
「これを着な」
サンダルを履き終えた宝玄仙に一枚の毛皮の外套が渡された。
裸を晒さなくて済みそうであることに、宝玄仙はほっとした。
両袖を通して、前側のぼたんを留めると、七雌妖が外套に指を伸ばした。
外套が縮み、宝玄仙の肌に張り付くように外套の内側が宝玄仙の身体に密着する。
「こ、これは……ひいっ」
宝玄仙は全身の毛孔から一気に汗が噴き出すのがわかった。
外套の内側には柔らかい繊毛のようなものでびっしりと覆われていたようだ。
その繊毛が、宝玄仙が身じろぎするたびに、宝玄仙の全身をくすぐるのだ。
「ひいっ、いやあああ」
宝玄仙は悲鳴をあげた。
しかも、さっきの道術で外套の合わせ目は消滅している。
肌に密着している毛皮の外套は、もう七雌妖の道術がなければ脱ぐことができない。
「……少しばかりくすぐりに馴れてもらわないと困ることになったんだよ、宝玄仙」
全身を外套の内側の繊毛にくすぐられる宝玄仙の苦しい身悶えに満足した表情の七雌妖が言った。
「こ、困ることって、な、なんだよ……?」
宝玄仙は自分の身体を抱くようにしながら言った。
いま、こうしていてもくすぐったい。息をするたびに全身に軽いくすぐったさが襲いかかる。
「あたしのおじきが遊びに来るのさ。ただ、困った性癖があってね……。それで少しは耐性を作ってやろうと思うのさ。この外套を着て、町を一周すれば、少しはくすぐりにも我慢ができようになるというものさ」
「くすぐり……? それに、おじきとはなんだい、七雌妖?」
宝玄仙は呻いた。
「おじきというのは、あたしの育ての親でね。
七雌妖がそう言うと、いきなり、どこからか糸が飛んできて、宝玄仙の両手首を背中で拘束した。
それだけじゃない。
口の中で舌が動かないように糸が宝玄仙の舌を口の中で固定し、上下の唇の内部に発生した糸のようなものが、宝玄仙の口が開かないように上下の唇を縫い付けてしまった。
「お出掛けだよ、宝玄仙。とにかく、酒でも飲みに行こうよ」
七雌妖が宝玄仙の首輪を鎖で曳いた。
全身の肌、とりわけ、尖った乳首の先が外套の内側の毛先にくすぐられて、宝玄仙はがっくりと膝を割りそうになった。
その宝玄仙の首輪を容赦のない七雌妖の力が強く引っ張った。