「あははははっ……ひゃはひゃははは……そ、そこっ……いひいいいっ──」
涎を垂れ流しながら笑い続ける宝玄仙と、十数本の触手の先の蔓でその宝玄仙の全身をくすぐり続ける
「はははは……ひいいいぃぃぃぃ──ひゃははは……た、助けて……あははは……な、なんでもする……ひゃははは……なんでもするから……も、もう……ひゃはは……やめて……あははは……」
宝玄仙の顔は涙と涎と鼻水で凄いことになっている。
床には股間から垂れ流した小便の水たまりができているが、それでも多目怪は宝玄仙へのくすぐり責めをやめようとしない。
五日間、ここで七雌妖は宝玄仙への調教を続けてきたが、今夜については、宝玄仙の裸身を思う存分いたぶるという愉しみを客である多目怪に奪われていた。
だから、七雌妖は、多目怪が八本の腕で宝玄仙の四肢をがっしりと空中に拘束し、さらに多目怪自身の上半身から出現させた十数本の触手で宝玄仙の脇や横腹や太腿をくすぐり続けるのを所在無く眺めるしかなかった。
「そうか……なんでもしてくれるか……。だったら、わしのくすぐり奴隷になってくれるか、宝玄仙? わしの大好物はくすぐりに悶え苦しむ美女なんじゃが、なかなか耐えてくれる女はおらんでなあ──。すぐに潰れてしまうのだ。お前はなかなか、くすぐり甲斐のある綺麗な身体をしておるし、笑い悶える顔もまた格別じゃ。わしのくすぐり奴隷になれ。毎日、笑って暮らせるぞ。死ぬまでな……ほれっ、ほれっ、今度は足の裏をくすぐってみようか……そんなに暴れるな──ほら、ほら、もっと逃げんか、もっと暴れんか……ほら」
多目怪の身体からさらに十本ほどの触手が生えて、そのすべてが宙吊りの宝玄仙の足の裏に向かう。
宝玄仙は全身の筋肉を使って、それから逃れようとしているが、八尺(約二メートル半)を超す巨漢の多目怪の八本の腕の二本ずつで四肢を握られて宙に抱きあげられている宝玄仙にはなすすべもない。
地獄のような多目怪の触手指のくすぐりを足の裏にも追加された宝玄仙は、笑い続けながらおかしな痙攣をしはじめた。
「……ひゃははは……あはははっ……い、いっそ……こ、殺して……ひゃははは……お……願い……こ、殺して……はははは……ゆ、許して……お願いします……ひゃははは……」
笑い声の中から宝玄仙の必死の哀願が続く。
「ほうほう、殺してくれときたか……。なら、望みをかなえてやるぞ、宝玄仙。たっぷりと笑って、そのまま笑い死ね……。お前のくすぐったい場所もわかってきたからな。息ができないように笑わせ続ければ、時間はかかるが死ねるぞ。死ねば、この苦しみからは解放される。ほら、ここはどうじゃ? そうか、そんなに愉しいか。存分に笑って死ね。ほれ、ほれ」
多目怪が相好を崩して宝玄仙を責め続ける。
七雌妖は大きな音を立てて床を踏み鳴らした。
「じょ、冗談じゃないわよ、おじき。その宝玄仙はあたしの雌犬奴隷なのよ。殺してしまっては困るわよ」
七雌妖は声をあげた。
多目怪がやってきたのは数刻前のことだ。
宝玄仙を連れて、久しぶりに人間の集まる町の居酒屋に行った。
目的は調教だ。
衆人の視線のある場所で宝玄仙をいたぶり、羞恥と恥辱に宝玄仙が苛まれる様を愉しむためだ。
しかし、そこで、孫空女と朱姫に偶然に出遭った。
記憶を消滅させて追い払った三人が、まだ、あの宿屋にいたのは驚いたが、もっと驚いたのは、記憶を失ったままの孫空女が、それでも七雌妖と宝玄仙の姿に反応して絡んできたことだ。
道術を遣えない相手だが、孫空女の凄まじい武術の腕は肌で知っている。
慌てて逃げるように居酒屋から戻ってきたが、濯垢泉の七雌妖の家に戻ると、この多目怪が待っていたのだ。
どうやら、『移動術』でふらりとやってきたようだ。
多目怪が棲んでいるのは、ここから少し北の妖魔の地だが、多目怪もまた温泉好きで定期的にやってくる。
宝玄仙をひと目見た多目怪は、すっかりと彼女を気に入ってしまい、宝玄仙を貸してくれと頼まれた。
育ての親である多目怪の頼みでは断れない。
七雌妖は、仕方なく、宝玄仙を多目怪の性癖の相手として貸した。
だが、いま、多目怪は、宝玄仙をくすぐりで責めながら、笑い殺してやろうとうそぶいた。
冗談じゃなかった。
宝玄仙は一生、七雌妖の性の相手として飼い殺すつもりだし、ましてや、殺すなどとんでもない。
「心配ないわい。ちゃんと加減をしておる、七雌妖──。だが、こんな美しい人間の女を本当に笑い死にさせてみたいというのは本当じゃ……。ほれ、ほれ、そんなに足の裏が愉しいか? なら、もっと増やしてやろう。すべての足の指の間を同時にくすぐってやるぞ。これは効くぞう」
多目怪の上半身は裸身だ。そこからまた触手が数十本出現した。
すべての触手の先には短い蔓のようなものがあり、それが宝玄仙の足の指の一本一本に巻きついて押し広げた。
そして、拡がった指の間に数本ずつの触手の蔓が這い回りだす。
足の裏も触手が責めているし、宝玄仙の足は、ほとんど見えないくらいに多目怪の触手に包まれている。
全身を責める触手群もそのままだ。
宝玄仙が激しい痙攣とともに、おかしな奇声を出し始めた。
七雌妖は、宝玄仙に夢中になっている多目怪を眺める態勢に戻り、大きく諦めの嘆息をした。
ああなったら、しばらくは多目怪は宝玄仙を手放そうとはしないだろう。
新しい玩具を与えられた子供のような表情をしている多目怪を横目で見ながら、七雌妖は身体を温めるために、屋敷の裏の濯垢泉の温泉に浸かることにした。
「少し湯に入って来るわ。お願いだから、本当に殺さないでよ。それはあたしが見つけた大事な性の相手なんだからね、おじき」
七雌妖は言った。
「おう、ゆっくり浸かってこい、七雌妖──。もっと、お前のくすぐったい場所を探してやるぞ、宝玄仙……。ここはどうだ? それとも、ここか?」
多目怪は七雌妖に返事をしながら一瞬も宝玄仙から眼を離そうとはしない。
すっかりと夢中のようだ。
七雌妖は、本当に宝玄仙をくすぐり奴隷として多目怪に連れていかれるのではないかと。少しだけ心配になった。
七雌妖はちらりと多目怪の下袴の股間に視線を送った。
下袴の中で勃起している怒張が多目怪の股間に大きな膨らみを作っている。
美女をくすぐり責めにして苦しめるのがなによりの好物だという多目怪が性的な興奮をしているのはわかる。
しかし、この多目怪は、自分が責める女を犯すという行為には興味はないのだ。
多目怪が好きなのは、宝玄仙にいまやっているように、多目怪の八本の腕で女を押さえつけて、さらに全身から好きなだけ出現させることができる触手の指で、人間の女の身体をくすぐり続けるという責めだ。
実際、ああやって女が眼の前で悶え苦しむのを眺めながら、男根に触れることなく射精してしまうのだ。
七雌妖は、多目怪がくすぐり責めを与えながら、勃起した自分の男根の先から精を宙に噴き出す光景を何度も見たことがある。
「今夜だけよ。今夜だけ、おじき」
「わかっておる。それより、まだ、そこにいたのか、七雌妖……。早う、行け」
多目怪が七雌妖を見ずに言った。
ちらりと宝玄仙に視線を送る。全身が脂汗みまみれて笑い続けている宝玄仙は、すでに絶息寸前のようにも見える。
しかし、これだけ釘を刺せば、まさか笑い死にさせたりはしないだろう。
いくら夢中になったとしても、それくらいの分別を期待してもいいはずだ。
七雌妖は深く嘆息すると、部屋を出て、外の濯垢泉に向かった。
そして、湯場の横の寝椅子に脱いだ着物を置き、七雌妖は夜の闇に浮かぶ温泉の湯に裸身を沈めた。
静かな闇の中に、かすかに宝玄仙の笑い声が響く。
七雌妖は湯の中で全身を伸ばして力を抜いた。
いい気持ちだ……。
温泉の湯に身体を沈めて、心身ともにゆったりとする。
この時間は七雌妖の一番好きな時間だ。
この場所があるから孤独を我慢して北辺と呼ばれる人間の地に棲み処を持っている。
もしも、この濯垢泉のような場所が北側の妖魔の地にもあれば、七雌妖は、妖魔の仲間の多い北の地に戻るだろう。
しかし、その孤独を補って余りある幸福が、この湯に浸かるという至福の時間にある。
七雌妖が産まれたのは、ここからずっと北の地の妖魔の地だ。
この朱紫国の辺境の妖魔の地と呼ばれる場所よりもさらに北だ。
父親はいない。
七雌妖の一族は、種族同士で家族を持たないのだ。
繁殖期を迎えた雌妖と雄妖は、お互いに気に入った相手を見つけて生殖のための交尾をする。
子供は一度に十人ほど。
約十年で成熟して母親から離れる。
子育ての終わった母親は、子供を省みることはない。
それが七雌妖の種族だ。
ただ、七雌妖の母親の雌妖は、七雌妖たちを成熟させる前に、七雌妖たちの前から姿を消した。
母親がなぜ消えたのかはいまでもわからない。
ただ、一緒にいた幼い兄弟姉妹たちと途方に暮れたことだけは事実だ。
それから、兄弟姉妹とも散り散りとなり、それぞれに生存の道を探った。
兄弟姉妹たちがそれからどうなったかは知らない。
七雌妖も生まれた地を離れて、生き残るための術を探した。
成熟する前の幼体では、まだ道術が遣えない。
道術が遣えない存在が、北の地で生き残ることは難しかった。
七雌妖は南に安全な場所を求めて旅に出た。
そして、行き倒れになったところを救ってくれたのが、あの多目怪だ。
多目怪は朱紫国の辺境に巣食う妖魔で、どんな気紛れか知らないが、七雌妖を拾い、成熟するまでの面倒を看てくれた。
だから、いまでも多目怪には頭があがらない。
多目怪には恩がある。
それは五十年以上経ったいまでも変わらぬ七雌妖の気持ちだ。
しかし、そのことと、七雌妖が性の相手をさせるために拾った奴隷をくすぐり殺されることとは別だ。
あの多目怪は、人間の女をくすぐり責めにするというのがなによりも好きな変態であり、しばしばやってきては、七雌妖が拾った雌犬奴隷をその責めの相手として貸すことを求めるのだ。
八本もある大きな腕で、人間の女を拘束して、全身から出現させることができる無数の触手の指でくすぐり続ける。
そして、女が鼻水と涎と汗を撒き散らしながら失禁して苦しみ笑うのを眺めながら射精するのだ。
自分の嗜虐趣味も十分に変態の域にあるとは思うのだが、あの多目怪にはかなわない。
七雌妖は湯に浸かりながら苦笑した。
笑い声は続いている。
少なくともまだ、宝玄仙は生きているということだ。
七雌妖は受けたことはないが、多目怪のくすぐりは、およそに人間の耐えられる限界を遥かに超えるものであるらしい。
だから多目怪は相手を観察し、死ぬ一歩手前のところを漂わせて遊ぶのだが、夢中になると我を忘れて、笑い殺してしまう。
短いときには、あの多目怪は、たった半刻(約三十分)で笑い殺したこともあるのだ。
最初にこの濯垢泉にやってきたときのことだ。
十年前であり、死んだのは七雌妖の最初の奴隷だ。
人間の男たちに強姦されて自殺しようとしていたのを拾って性奴隷にした女だった。
最近こそ、手加減ができるようになったようだが、以前は夢中になってやりすぎて窒息死させてしまうこともしばしばだった。
これまでに見つけた最高の雌犬奴隷である宝玄仙をくすぐり死にされては堪らない。
そのとき、湯の外でなにかの気配がしたような気がした。
なんだろうと思って、気配を感じた方向に視線をやったが、闇の中でよくわからなかった。
「さっきは挨拶もなしに悪かったね。すっかりと忘れていたんだよ」
違う方向から声がした。
驚いて声の方向に視線をやった。
闇の中に人影がある。
「お、お前は──」
七雌妖が服を脱いだ椅子に、棒を構えている孫空女が座っている。
微笑んで力を抜いているように見えるが、少しも油断なくこちらに身体を向けているのがわかった。
「立つんじゃないわよ。大人しく座ってなさい」
今度は、反対側からも声がした。
すぐ近くだ。
孫空女のいる場所とは、七雌妖を挟んで反対側の岸になる。
そこに沙那がいた。
隣には朱姫だ。
沙那の手には小弓が握られていて、引き絞った矢が真っ直ぐにこっちを向いている。
仕方なく七雌妖は、沙那のいる場所に視線を向けた。
自然と孫空女に背を向けることになる。
しかし、孫空女が持っているのは、あの伸縮自在の霊具の棒だろう。
孫空女が座っている位置からでも、七雌妖の背に棒を打ちつけることができるはずだ。
「この矢の先には猛毒が塗ってあるわよ。そして、あんたの大きな身体を向いているわ。糸が飛んできたりしたら、手が離れて矢が跳んでいってしまうから、間違って道術を遣ったりしないように気をつけてね」
確かに沙那が構えている小弓は七雌妖の裸身に向かっている。
この距離なら絶対に外しようもない。
糸の気配を感じた瞬間に、沙那は躊躇なく矢を放つだろう。
沙那からははっきりとした殺気を感じる。
「あ、あんたら、記憶が……?」
「おかげさまでね。しっかりと思い出したよ、七雌妖」
背中側にいる孫空女だ。
「振り返るんじゃない、七雌妖──。今度、首を動かしたら矢を射るわよ。しっかりと、こっちを見て、朱姫の眼を凝視しなさい。いいというまで眼を離すんじゃない」
沙那の大声が七雌妖を貫く。
「闇の中でも十分に見えるでしょう。妖魔の眼ですものね」
沙那の横の朱姫が微笑んだ。
その朱姫の身体で霊気が膨れあがった。
そして、『縛心術』が自分の中に流れ込んできた。
七雌妖の身体に注ぎ込まれる朱姫の霊気──。
いままで七雌妖が接したことのないくらいに強い道術だ。
少女のような朱姫が、これほどの霊気を持っていたということに驚いた。
七雌妖の霊気を遥かに凌ぐ朱姫の霊気だ。
この霊気ならば、七雌妖の施した『縛心術』などあっという間に無効にできたに違いない。
記憶操作に気がつなかった間だけ宝玄仙と七雌妖のことを忘れていたのかもしれないが、いったん、自分たちに『縛心術』が掛けられているという事実に気がつけば、この朱姫ならばそれを解除するのに造作はなかったろう。
七雌妖は、この朱姫を侮り、これ見よがしに宝玄仙をこの三人が泊っているかもしれない宿屋に連れて行ったことを後悔した。
あるいは、さっき、あの宿屋の一階の居酒屋で、まだ記憶操作をされたままだった孫空女と朱姫に出遭ったことが、なんらかの示唆となり、道術の解除に繋がったのかもしれない。
まさか、こんなにあっさりと七雌妖の『縛心術』が破れるくらいに、朱姫と七雌妖に霊気の力の差があるとは夢にも思わなかった。
やはり、半妖というのは、普段、霊気を隠しているだけに侮ってはならない。
そのことを改めて知った思いだ。
「七雌妖、立ちなさい──。そして、霊気を全解放するのよ」
朱姫の言葉が告げられると、それがまるで自分の意思であるかのように七雌妖の身体は朱姫の命令に従い立ちあがった。
そして、勝手に身体に溜まった霊気が解放される。
「……もう大丈夫です、沙那姉さん。この七雌妖の霊気を放出させました。次に道術が遣えないように、七雌妖の中の道術を遣う力を弛緩させます……。さあ、あたしを見なさい」
愕然とした。
道術を遣う能力が本当に弛緩されているのがわかった。
朱姫の言葉に逆らえない……。
七雌妖の身体に生まれて初めてかもしれない本当の恐怖が走る。
「へえ、道術を遣えなくするなんて、そんなことができるの、朱姫?」
小弓をおろした沙那が朱姫に言った。
「できます。身体の筋肉を『縛心術』で弛緩させるのも、道術を弛緩させるのも、原理はまったく同じですから」
朱姫が七雌妖に道術を注ぎ込みながら沙那に応じた。
朱姫の霊気がどんどん、七雌妖の霊気と入れ替わるように入り込んでいる。
身体のすべてが朱姫に支配されているのがわかる。
「だったら、ご主人様の道術をお前の『縛心術』で復活できないのかい?」
背後から孫空女の声がした。
孫空女が身じろぎした気配がないので、まだ、孫空女は七雌妖の服の上に座っているのかもしれない。
「ご主人様は、道術を封じられたのではなく、奪われたと言ってました。おそらく、なにかの暗示でご主人様は、いままで遣ってきた道術を遣う力を留められているのだと思うんですけど、それは、
「だから、ご主人様の元々の道術じゃなくて、こいつの道術を移すのさ。前にご主人様が道術の誓約で、そんなことをやり合ったのに接したことがあってね」
「うーん、誓約ですか……。だったら、できるかもしれません。限定的ですけど。だけど、やっぱり、ご主人様の道術を完全復活するには、賽太歳という妖魔に、暗示を解除させないとならないと思す」
「ふうん、まあいいや。とりあえず、ご主人様を救出してからだ。もう、七雌妖には、お前の『縛心術』はかかっているのかい、朱姫?」
孫空女の声が背中からした。
「完全にかかっています──。好きなことをさせられますよ、孫姉さん……。七雌妖、一番感じるやり方で自慰をしなさい」
朱姫の声がした。
すると、自分の指が二本、操られるように陰毛をまさぐって、七雌妖の女陰に滑り込んできた。
「へえ、いきなり、女陰なんだね、意外……」
朱姫が笑った。
「あんた、大概にしなさいよ」
沙那が苦笑している。
しかし、止める気はないようだ。
まるで他人の手であるかのように七雌妖の意思から離れた指が、七雌妖の膣の上側のもっとも敏感な部分を擦りあげる。
「はああっ」
露わな声とともに、股間から愛液が溢れ出たのを感じた。
自分の身体をどうすれば追い詰められるかは七雌妖自身がわかりきっている。
人間の宿屋で適当な性の相手を見つけられないことも多い。
そういうときには、こんな風に手で七雌妖自身を慰めるのだ。
強制されている自慰による快感で七雌妖の身体は、切なげにくねりだしてしまった。
「あうっ……はあああっ」
快感が込みあがる。
七雌妖はすっかりと上気してきた顔を左右に振りたてた。
七雌妖ともあろうものが、奴隷にしている宝玄仙の奴隷たちに逆に操られて、はしたなくも自慰で果てるなど、恥辱以外のなにものでもない。
「じゃあ、ご主人様を助けに行ってくるよ」
後ろ側で孫空女が立ちあがった気配がした。
絶頂の予感のようなものが、七雌妖の身体を駆けあがっていった。
*
七雌妖の屋敷に入って最初に見たのは、宝玄仙の裸身を八本の腕で抱えている巨漢の妖魔だ。
てっきり、屋敷には宝玄仙しかいないと思っていただけに、孫空女は驚いた。
巨漢の妖魔は、背の高い孫空女よりも遥かに大きく、しっかりと宝玄仙の四肢を掴んでいる。
裸身の上半身の表面からは無数の触手のようなものが出ていて、それが宝玄仙の全身を包んでいた。
また、宝玄仙の尻には白い房毛の束がついている。
あれはなんだろうか。
そして、宝玄仙の身体の下には、おびただしい尿のようなものが撒き散らされてもいた。
宝玄仙は完全に気を失っている状態であり、孫空女が目の当たりにしたのは、妖魔が気を失った宝玄仙の顔を触手で振り動かして、覚醒させようとしている光景だった。
「お、お前は誰だい?」
慌てて孫空女は『如意棒』を構えなおすと、宝玄仙を抱えている腕の半分にその『如意棒』を振り下ろした。
宝玄仙を掴んでいる肘から先の半分が『如意棒』で切断されて、巨漢の妖魔の二の腕から離れる。
「おおっ──。びっくりしたのう」
妖魔は痛がる気配もなく、腕が千切れたまま、残りの四本で宝玄仙の身体を掴み、後方に跳躍した。
跳躍する間に切断したはずの肘から先がくっついて元に戻る。
孫空女は驚いた。
「物騒な女じゃな。わしでなければ、死んでおるぞ──」
巨漢の妖魔が呑気そうな声をあげた。
「うるさい、ご主人様を離すんだよ。今度は、首を引き千切るよ」
孫空女は『如意棒』を構えた。
飛びかかろうにも、妖魔が宝玄仙を盾にするように動かしたので、打ちかかることができない。
「……そ、孫空女かい……」
その時、薄っすらと宝玄仙の眼が開いた。
「ご主人様、いま、助けるから──」
孫空女は叫んだ。
宝玄仙の苦痛に歪んだ顔がほんの少し微笑んだ気がした。
「首を千切られては、さすがに堪らんな。仕方がないから、退散することにするわい。七雌妖によろしく伝えてくれ」
妖魔が言った。
次の瞬間、宝玄仙を抱えたまま妖魔が消滅した。
『移動術』だと気がついたのは、完全にふたりが消滅してからだ。
「し、しまった──」
孫空女はたった今まで、宝玄仙と妖魔がいた空間に飛び込んだ。
しかし、もう、なにも起こらない。
おそらく、『移動術』の結界を封鎖された。
連れて行かれた……。
孫空女の身体に悔悟の汗が流れる。
「いまの音はなに、孫女──?」
沙那が飛び込んできた。
「ご免──。もう一匹、巨漢の妖魔がいたんだ。そいつが、『移動術』でご主人様を抱えたまま消えたんだ」
孫空女は沙那に顔を向けた。
もしかしたら、自分は泣きそうな表情になっているのかもしれない。
孫空女は思った。
沙那の眼は大きく開かれている。
しかし、すぐに大声で朱姫を呼んだ。
しばらくしてから、全裸の七雌妖とともに、朱姫が現れた。
「朱姫、ご主人様が別の妖魔に『移動術』で連れて行かれたのよ。後を追える?」
沙那の言葉に、七雌妖に対する悪戯で悦に入ったような表情だった朱姫の顔が真顔になる。
「……駄目です。完全に閉じられています。道術では追えません」
やがて朱姫が意気消沈した様子で言った。
「七雌妖、さっきの妖魔は誰だい? あいつは、どこにご主人様を連れて行ったんだよ」
孫空女は朱姫の後ろから連れてこられた七雌妖に詰め寄った。
「……正直に言いなさい。一切の隠し事をあなたはできないわ」
朱姫が七雌妖の顔を覗きこみながら言った。
「た、多目怪よ。あたしのおじき……、つまり、育ての親よ」
七雌妖が答えた。
「その多目怪がどこにいるか知っているわね、七雌妖。朱姫が道術を返すわ。その場所とここを『移動術』で結びなさい」
沙那が口を挟んだ。
「む、無理よ。あたしは、『移動術』を遣えないのよ」
七雌妖の返事に沙那が舌打ちした。
そして、朱姫に視線を向ける。
「行ったことのある場所でなければ、あたしも『移動術』の結界を結ぶことはできません」
朱姫が首を横に振った。
「七雌妖、その多目怪の棲み処はどこよ?」
沙那が叫んで、七雌妖に詰め寄った。
「
「北に二日……。仕方がないわね。わたしは、一度宿に戻って荷を取って来る。それまで朱姫と孫女は、七雌妖を見張っていて──。多目怪という妖魔のいる場所まで道案内をさせるわ」
沙那が言った。
「ねえ、沙那姉さん、それまで、この七雌妖で遊んでいていいですか?」
朱姫が言った。
この期に及んで朱姫は、七雌妖に嗜虐の相手をさせようというのだ。
孫空女は内心で呆れてしまった。
沙那は少しだけ戸惑った表情をしていたが、やがて、酷薄な笑みを顔に浮かべた。
「存分にするといいいわ。たっぷりと、遊んでやりなさい」
沙那は言った。
(第49話『雌犬になった女主人』終わり、第50話『くすぐり奴隷への道』に続く)
*
【西遊記:71・72回、七匹の雌妖怪(蜘蛛の精)】
いつものように、斎(食べ物)を求めて、孫悟空が近傍の家に行こうとします。
しかし、玄奘(三蔵)は、今日は自分が行こうと主張します。
孫悟空は、それは供の役目だと諌めますが、意地になった玄奘は、ひとりで行くと言って受け入れません。
仕方なく、孫悟空たちは、斎集めを玄奘に任せて待つことにします。
玄奘が、一軒の家に斎を頼みに行くと、そこは女やもめ(独身の女)たちが七人集まって暮らしている家であり、玄奘は無理矢理に家に連れ込まれます。
七人の女たちは、玄奘を歓待し、人間の肉で作った肉饅頭を食べさせようとします。
驚いた玄奘は、それを拒否します。
すると、女たちは、三蔵を糸でぐるぐる巻きにして、天井からぶら下げて拘束します。
女たちの正体は、蜘蛛の精の化け物だったのです。
妖怪の気を感じた孫悟空は、玄奘に異変が起きたとこを悟ります。
孫悟空は虫に変身し、女やもめたちの家を見つけて潜入します。
そして、捕らえられている玄奘を発見します。
とりあえず、先に仲間に事情を教えに戻ることを決めた孫悟空は、女たちが
孫悟空は、仲間と一緒に女たちのところに戻ります。
猪八戒は、服を盗まれて温泉から出られない女たちを見つけると、魚(
へろへろになった女たちは、素っ裸で逃亡し、
とりあえず、孫悟空たちは玄奘の救出に成功します。
本エピソードは、西遊記のエピソードの中でも、かなりエロチックな話になっています。