※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

316 / 819
316 くすぐり修業

「ひっ、ひっ、ひいっ……ひゃは、ひゃはははは……あひっひひひひひひ……はははははっ……あははははは……も、もう駄目……お願い……ひゃははは……ははははっ……やめて……ひゃはははは……」

 

 拘束椅子に股を開いて座らせられている宝玄仙は狂ったように笑いながら暴れ喚いた。

 しかし、どんなに暴れても、宝玄仙の美しい肌に傷がつくようなことはない。

 両腕を頭上に掲げ、膝を曲げて大きく開脚して座らせられている宝玄仙を拘束する拘束椅子は、縄やベルトではなく、粘性の物質で宝玄仙のすべての関節を包んでいるのだ。

 多目怪(たもくかい)のくすぐり調教用の自慢の道具だ。

 

 宝玄仙がこの寝椅子に全裸で拘束されて、一日以上の時間がすぎている。

 この調教椅子に座り、宝玄仙は多目怪の自慢のくすぐり奴隷になるための調教を確実にこなしていた。

 

 くすぐりにも段階がある。

 ただ悶え苦しむ程度の笑いから、それこそ死の一歩手前のくすぐりまでさまざまな強さがあるのだが、少しずつ馴らしていかなければ、あっという間に呼吸困難で窒息死してしまうことになる。

 多目怪は自らが設定したくすぐりの強度を十段階に区分していたが、宝玄仙はたった一日のくすぐり調教で、短い時間とはいえ、すでに十段階目に耐えられるほどになっていた。

 

 余程に身体に与えられる刺激を自分で抑制する耐性が鍛えられているのだと思った。

 多目怪は、ついに手に入れたくすぐり奴隷の逸材に興奮していた。

 

「あはははは……ひひひゃははは……も、もう駄目……死ぬ……死ぬう……ひゃははは……あはははは……」

 

 宝玄仙が悶え泣いている。

 全身からはおびただしい汗が流れては椅子の下に滴り落ちているが、拘束椅子の腰掛から背凭れ部分の真ん中がくり抜かれていてなにもなく、そのため、全身から流れる汗も股間から洩らす排泄物も椅子を汚すことなく、床に落ちるしかけになっている。

 宝玄仙は、すでに四回の失禁と二回の脱糞をしているがそのすべては椅子を汚すことなく下に落ち、さらに排泄物については、多目怪の道術によって床に落ちる前に屋敷の外に跳躍させている。

 いまは、出したくても洩らす小便も大便も残っていない状態だろう。

 

「宝玄仙、くすぐりが死ぬほど好きと言え。そうすれば、少しだけ休憩させてやるぞ」

 

 多目怪は拘束椅子で暴れ笑っている宝玄仙と向かい合うように位置する座椅子に座って、宝玄仙の痴態を眺めながら言った。

 宝玄仙を責めているのは、拘束椅子そのものから無数に発生している細い触手の蔓だ。

 多目怪は、こういう触手を自分の上半身からも出せるが、自分の身体以外からも好きな場所からも出すことができる。

 だから、それを自在に動かすことで、あらゆるものをくすぐり責めの拷問具に変化させることができるのだ。

 

 いま、宝玄仙を責めている拘束椅子から生えている触手は、宝玄仙の脇から足の裏までのすべてのくすぐりの急所を責めたてている。

 常人であれば、すでに発狂している段階だ。

 しかし、宝玄仙は泣き狂うだけで、はっきりと意識を保っているし、それどころか、正気さえ維持ししているのだ。

 

 この女であれば、多目怪が夢にみた真のくすぐり奴隷まで仕立てあげられるのではないかと思ってきた。

 しかも、半日前では、くすぐりだけではまったく動かなかった尻の尾が、いまでは大きく反応するようになっている。

 神経と繋げるような糸の道術は多目怪には遣うことはできず、これは七雌妖の道術により施したものだが、なかなかの優れものだ。

 これを見れば、宝玄仙の受けている快感をしっかりと視界で確認しながらくすぐり調教を進めることができるのだ。

 

 すなわち、宝玄仙が欲情をすると、その程度に応じて尾が左右に動き、絶頂状態に近づくと真っ白な色が赤色に変化する。

 これさえあれば、どんなに宝玄仙が隠しても、宝玄仙の欲情は丸わかりだし、くすぐり調教が進むにつれて、宝玄仙がくすぐりを苦痛のみではなく、快感として受け取りはじめていることがわかる。

 

 いま、宝玄仙の尾は左右に激しく揺れている。

 色はほんのりと薄桃色の程度ではあるが、快感を与える刺激なしに、単純なくすぐりのみでこれだけの快感を受けることができるというのも、宝玄仙が逸材であると多目怪が考える要素のひとつだ。

 

 この人間の女を仕上げる。

 これまで何度挑戦しても、多目怪が求める真のくすぐり奴隷は作ることができなかった。

 何十人かを捕らえて調教したが、すべて身体が壊れてしまうか、死ぬかだった。

 あるいは、くすぐりをどうしても快感に結びつけられず、精神に異常をきたした人形になってしまうかだ。

 

 しかし、この宝玄仙ならばくすぐりを最大の快感として覚える身体に仕立てあげることができる。

 多目怪は確信していた。

 

「ひゃはははは……くすぐりが……ひゃはははは……好き……くす……あははは…大す、好き……や、やめて……ひゃはははは……はははは……や、やめ……」

 

 宝玄仙の呼吸が不規則でおかしなものになり始めた。

 そろそろ限界のようだ。

 この見極めが重要なのだ。

 ついつい夢中になると、女が笑い悶える姿に見とれてしまう。

 そうすると、不意に心臓が止まる程に激しく痙攣してあっという間に死んでしまうことになる。

 

 このときには、もう多目怪にはどうしようもない。

 七雌妖のように、『治療術』が遣えれば、瀕死の状態から回復することができるのかもしれないが、多目怪は『治療術』は遣えない。 

 そうやって獲物を殺してしまって、なんども我に返ったことがある。

 

 多目怪がくすぐり奴隷として欲情するのは、なぜか雌妖ではなく、人間の女に限られていた。

 この妖魔の地では人間の女を手に入れるのは難しいので、多目怪が虐げる獲物の女を七雌妖から得ることも多かった。

 

 だが、人間の女は雌妖に比べてあまりにも身体が弱い。

 七雌妖が大事にしていた性奴隷をあっという間に数回くすぐり殺してしまい、そのことについて七雌妖が激しく怒ったので、最近では、七雌妖のところの性奴隷を貰い請けるということはなくなっていた。

 この宝玄仙もひと晩の約束で触ることを許してもらっただけだ。

 

 しかし、不意に現れた棒を持った女に襲いかかられて、つい、そのまま連れてきてしまった。

 だが、成り行きで持ってきてしまった七雌妖の性奴隷だが、これこそ、多目怪が長年探し求めてきた逸材だ。

 この宝玄仙こそ、多目怪の性癖を満足させてくれる唯一の存在に間違いない。

 

「ちゃんと言わんと終わらんぞ、宝玄仙──。くすぐりが好き……。くすぐり奴隷にしてください……。わしが満足するまで繰り返せ──」

 

 そうしないとくすぐりは中止しない。

 たった一日だが、それは宝玄仙の骨身に染みわたらせている。

 だから、宝玄仙は、自らくすぐり奴隷にしてくれと喚くことになる。

 もちろん、今の段階ではそれは本心ではないことはわかっている。

 

 しかし、人間の精神というのは不思議なもので、たとえ、出鱈目だと思っていることでも、何度も口に出していると、それが本当だと思い込むようになるのだ。

 それを洗脳と呼ぶこともあるが、その習性を利用して、人間の女にくすぐり奴隷にして欲しいと叫ばせる。

 するといつか、宝玄仙も心からそれを望むようになる……。

 

「くすぐり奴隷にし……ひゃははは……あははははは……くすぐり奴隷にしてください……あっはは……ひゃあっ……ひゃっ……ひゃ、ひゃ、ひうっ──ひ、ひ、ひぅ──」

 

 おかしな痙攣をしはじめた。宝玄仙の眼が白目を剥きはじめる。

 多目怪は宝玄仙の全身をくすぐっていた触手を消滅させた。

 宝玄仙の身体ががっくりと脱力するとともに、激しく動いていた尾が床にだらりと垂れ落ちた。

 気を失ったのだ。

 

「お前は最高のくすぐり奴隷になれるぞ。七雌妖には悪いが、わしはお前を貰い請けることにする。ここで完全なくすぐり奴隷としてしあげてやるからな、宝玄仙……」

 

 多目怪は、椅子から立ちあがると完全に意識を失っている宝玄仙に近づき、その涙と汗と涎で汚れた頬を愛おしく撫ぜた。

 

 

 *

 

 

 夢を見ていた。

 悪夢だった。

 魔蛭の池で溺れている夢だ。

 

 魔蛭とは毒液で発狂するような痒みを加える生物であり、それが無数にいる池に宝玄仙は身動きできないように縛られて放り込まれていた。

 もがいても、もがいても池の水面にあがれない。

 やがて全身を刺されて怖ろしい痒みが襲ってきた。

 

 いや、痒みと思ったのだが、やってきたのは狂うようなくすぐったさだ。

 しかも、魔蛭が身体中の孔という孔から入ってくる。

 女陰や肛門はもちろん、口の中や耳からも入ってくる。魔蛭に全身が食い尽くされる。

 そして、両方の鼻の孔も魔蛭で塞がれた。

 息ができず、だんだんと意識が朦朧とする。

 

 死ぬ……。

 そう思った……。

 さらに意識がなくなる……。

 

 眼が覚めた。

 ぼんやりとした視界が戻ってきた。

 

 ここがどこだかすぐにはわからなかったが、やがて、あの多目怪といかいう変態妖魔の棲み処の屋敷だとわかった。

 宝玄仙がここに連れ込まれてからまだ一日程度に違いない。

 しかし、すでに一年以上の時間をここですごした気がする。

 

 眼の前にぬっと上半身が裸身の多目怪が現れた。

 宝玄仙は心からの恐怖の悲鳴をあげた。

 多目怪は笑っている。

 女の身体に興味を抱かず、笑い苦しむことだけを愉しむ変態妖魔が、悦に入った表情で宝玄仙を見ていた。

 

 宝玄仙は叫んでいた。

 ただ叫んだ。

 

 童女のように──。

 ただ、眼の前の妖魔が怖くて泣き叫んだ。

 

 助けて……。

 誰か助けて……。

 沙那……孫空女……朱姫……。

 

 助けて───。

 その顔が頭に浮かぶ。

 

「次の段階に移るぞ、宝玄仙──。今度は、快楽をくすぐりに擦りかえる調教だ」

 

 多目怪が笑った。

 宝玄仙は自分の顔が引きつるのがわかった。

 

「も、もう、いい加減に勘弁しておくれよ──。そ、そうだ。口で奉仕させておくれ。それとも、女陰でもいいよ。なんでもやるよ。満足させてみせるから」

 

 宝玄仙は必死で訴えた。

 どんな妖魔であろうと、あるいは、人間の男であろうと、男というのは最終的には、射精をして欲望を満足せるものだと思っていた。

 その射精の場所が口であったり、女陰であったり、肛門であったりという性癖の違いはあるが、女の身体を使って精を放って終わりということに違いはなかった。

 

 しかし、この多目怪という妖魔は違う。

 宝玄仙がこの多目怪という八本腕の妖魔に責められてから一日以上経つが、この妖魔は一度も精を放っていない。

 ただ、ひたすら宝玄仙の身体をくすぐって、宝玄仙が笑い苦しむのを眺めるだけだ。

 宝玄仙の知識では、完全に常軌を逸している。

 

 男、あるいは雄としての欲望がないわけではない。

 それは宝玄仙が笑い苦しむのを眺めながら下袴の股間の部分が大きく膨らんでいることから知れる。

 しかし、この多目怪は、その溜まった精を放とうとはしないのだ。

 ただ永々と宝玄仙がくすぐったい場所を探してくすぐるだけだ。

 

 気を失っても、大小便を垂れ流すような醜態をしても同じだ。

 気を失えば覚醒され、大小便を流せば、それを道術で掃除をして、くすぐりを繰り返す。

 道術も遣えなければ、一切の身動きができないように拘束されている宝玄仙には、それに抵抗する手段がない。

 ただただ、発狂するようなくすぐりを受け続けることだけしかできない。

 

「くすぐりは嫌か、宝玄仙?」

 

 大きく開いている宝玄仙の股の間に立った多目怪が八本の腕を身体の前で組んで言った。

 

「い、嫌だよ。わ、わたしの身体の道具は逸品だよ。絶対に、お前を満足させてみせるから……後生だから、もうくすぐりをやめておくれ」

 

 宝玄仙は訴えた。

 この妖魔がなにを考えているかさっぱりわからない。

 くすぐり奴隷になれとひたすら繰り返すが、正直、それがなんなのか理解できない。

 これ以上、くすぐりで苦しめられるよりは、眼の前の八本腕の妖魔に性奴隷としてかしずくことを選ぶ。

 口でも膣でも尻でも満足させてみせる。

 

「お前の尻に尾がついているのを知っているな?」

 

「ああ……」

 

 頷いた。

 あの七雌妖という雌妖がつけたものだ。

 宝玄仙を雌犬奴隷にするとか言って装着させたもので、宝玄仙が欲情するとそれ反応して、左右に動いたり、色が変わったりするらしい。

 宝玄仙の欲情が隠せないようにする仕掛けであり、羞恥責めの材料にするために、あの雌妖が宝玄仙の身体に施したのだ。

 

 あの七雌妖も宝玄仙を自分の雌犬奴隷にするとか称して、宝玄仙に調教という名の嗜虐をしていた。

 多目怪には、その七雌妖から宝玄仙を横取りするかたちで、ここに連れてこられたのだ。

 ここは多目怪の屋敷で、黄花観(おうかかん)という名の建物のようだ。

 七雌妖に囚われていた北辺からは、ずっと北の地にある妖魔の土地にあるらしい。

 もっとも、実際には、宝玄仙は『移動術』で連れて来られてから、一歩も、この部屋から出されていないので、この近辺がどういう場所なのかを知りうる術はない。

 

 そう言えば、ここに連れて来られる直前に、孫空女を見た気がした。

 沙那、孫空女、朱姫の三人の供は、七雌妖の道術によって、宝玄仙に関する記憶を失わせられて追い払われた。

 実際、北辺の町の宿屋の一階の居酒屋に首輪を曳かれて七雌妖に連れてこられたときにも、眼の前の孫空女と朱姫は、宝玄仙の存在を完全に記憶から失っていた。

 

 だが、その数刻後、七雌妖の屋敷で、宝玄仙がこの多目怪のくすぐり責めに遭っている最中に孫空女が飛び込んできた気がするのだ。

 そして、助けるから待っていてくれと言ってくれた……。

 

 あれは幻だったのだろうか……。

 多目怪がずいと前に出て、さらに宝玄仙に近づいた。

 

「ひいっ」

 

 思わず悲鳴をあげた。

 宝玄仙の身体に恐怖が走り、無意識に宝玄仙は拘束された全身を跳ねさせた。

 しかし、両腕を頭の上に伸ばし、膝を曲げて股間を拡げる態勢で裸身を寝そべらせている宝玄仙の全身の関節は、粘性の物質によって固定されていて、ほとんど動くことはない。

 

「その尾は、わしが装着したものではないが、それを見ればお前の欲情の度合いはわかる。いまからやるのは、拘束椅子から出現した触手によって、お前の身体を欲情させるように責めたてることじゃ。くすぐりが嫌なら欲情しないように耐えることじゃな。刺激に負けていきそうになれば、触手の動きは、またくすぐりに切り替わる。だから、耐えてみせよ」

 

 多目怪がいやらしい笑いをした。

 

「そ、そんな……、ま、待って……」

 

 それ以上抵抗の言葉を口にすることはできなかった。

 すぐに多目怪が言った責めが開始されたのだ。

 拘束椅子の両側から長い触手が四本ほど伸びてきた。

 それが宝玄仙の胸の裾に近づいた。そして、膨らみの裾をなぞりあげる。

 

「ううっ」

 

 宝玄仙はびくりと胸元を弾ませた。感じたら駄目だという思いが、宝玄仙を恐怖させる。

 触手によって快感に耽る醜態を晒すことついては、もはやどうということはない。

 それよりも、多目怪が言及した快感を溜めていきそうになったら、くすぐりが再開されるということが怖ろしい。

 これ以上、くすぐりでなぶられたら、本当におかしくなる。

 

 しかし、感じまいとすればするほど、さざ波のような快感が襲ってくる。

 宝玄仙は知らず、はしたない声をあげていた。

 

「胸くらいで感じていては、くすぐりが再開するのは早そうだな」

 

 多目怪が笑った。

 胸に続いて、別の触手が股間の頂きを繰り返し撫ぜあげる。

 

「ひううっ」

 

 全身を拘束されているのに関わらず、宝玄仙の股間は触手に向かって跳ねあがった。

 

「どんどんいくぞ」

 

 宝玄仙の前に立っている多目怪が笑った。

 乳房を這い回る二本の触手は、だんだんと宝玄仙の敏感な乳輪に向かって近づいてくる。

 股間にも二本の触手が這い回る。

 まだ、宝玄仙を追い詰める責めではなく、むしろ焦らすような動きだ。

 それだけに、多目怪の執拗さとしつこさを感じる。

 そして、その執拗さとしつこさがすべてくすぐりに変化するに違いない。

 宝玄仙は抵抗のしようのない快感の競りあがりに恐怖した。

 

「さっそく、尾が反応してきたな、宝玄仙──。くすぐりが嫌なら、あまり感じない方がいいのう……。それとも、早くくすぐり責めを受けたいか?」

 

 さらに四本ほどの触手が現れた。

 二本が耳に──二本は身体の側面に伸びる。

 

「あ、あああっ……はうっ……」

 

 股間から蜜が溢れるのがわかる。

 ゆっくりだが全身を動き回る触手は確実に宝玄仙の背感を高めていく。性感が燃えあがる。

 感じてはならない……。

 そう思うと余計に感じる。

 

「ひぅううっ──」

 

 全身を仰け反らせた。

 さらに増えた触手が肉芽の周囲辺りを徹底的に責めだしたのだ。

 宝玄仙はあられのない声をあげながら悲鳴をあげた。

 

「……そろそろいきそうか、宝玄仙?」

 

 多目怪が笑った。

 

「そ、そんなことない……そんなことないよ」

 

 宝玄仙は叫んだ。

 

「だが、尻尾は正直だな。もう、真っ赤になってきた。そろそろいきそうなのはわかるぞ」

 

 多目怪の言葉に宝玄仙は歯噛みした。

 一日以上のくすぐり責めで、宝玄仙の身体の神経はおかしくなっている。

 普段ならばどうということはない小さな刺激が、子宮にずんずんと響く性感に繋がる。

 

「……そろそろ、本格的にいくぞ。耐えてみせよ」

 

「はあああああ……」

 

 宝玄仙は長く激しい嬌声を絞りあげた。

 これまで数本だった触手が一斉に数倍に増えた。

 乳首と股間と肛門を同時に刺激され、さらに全身の性感帯を撫ぜあげた。

 あっという間に宝玄仙は絶頂寸前の状態まで駆けあげさせられた。

 

「あひいいっ──だめえっ──」

 

 五体を貫くような峻烈な快美感に宝玄仙は眼を見開いて全身を仰け反らせた。

 次の瞬間、触手が同時に宝玄仙の性感帯から離れた。

 そして、無数の別の短い触手が発生する。

 再び脇や横腹や足の裏をくすぐり始める。

 

「ひひゃあああ……あははははは……ひぎいいいいい……あはははははは……はっはははは……やっ……やっ……やあはあああ、あはははは……」

 

 込みあがったくすぐったさに快感が飛んだ。

 無理矢理に笑わされて宝玄仙はのたうち回った。

 

「いきそうになるなと言ったであろう」

 

 多目怪が哄笑した。

 その多目怪の言葉ももう頭に入らない。

 全身を苛むくすぐりに宝玄仙はのたうち回った。

 

 やがて、宝玄仙の尾がほぼ停止したと言って、くすぐりが中止され、再び触手が宝玄仙を快楽責めにする動きに変化した。

 

 それからは、もうなにがどうなったのかわからない。

 触手による刺激でいきそうになると、それがくすぐりに交替し、絶頂寸前の快感が引き下げられてくすぐりの苦しみに代わる。

 くすぐりによる無理矢理の笑いで息ができなくなって失神しそうになると、くすぐりが止まって再び性感帯を責める動きになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どのくらい続けられたのか。

 数刻なのか、それとも、半刻なのか……。

 あるいは丸一日か……。

 

 全身の体液という体液を撒き散らした。

 繰り返されるくすぐりと快楽責め──。

 

 いきそうになると快楽は寸止めされ、くすぐりの苦しさに変わる。

 くすぐりの苦しさに気を失いそうになると、今度は性感帯への愛撫───。

 

 やがて、くすぐりと愛撫の境目がわからなくなる。

 くすぐりと性感帯への刺激が宝玄仙の中で混ざっていく。

 

 宝玄仙は半狂乱だった。

 

「くすぐりだけで尾の振りが止まらなくなった──。ついに、くすぐりを快感として身体が覚えた。やった。ついにやった。やったぞ」

 

 多目怪が嬉しそうになにかを叫んでいるでいる。

 しかし、もうそれがなにか理解できない。

 宝玄仙はただ笑い悶えて泣くだけだ。

 おぼろげな視界に多目怪が下袴を下ろすのが見えた気がした。

 

「……あはははは……やめて……ひゃははは……やめて……あははは……ゆ、る……し、て、……ひいっ、あははは、くだ、さ、い……、ははっはは……」

 

 自分の笑い声が遠くのもののように聞こえる。

 笑い暴れる宝玄仙の身体に多目怪の怒張から飛び出した精が飛んできたのがわかった。

 

「刷り込んでやるぞ、宝玄仙。くすぐりでしかいけない身体にしてやる……。いや、そうなりかけている。くすぐりでしか絶頂できないくすぐり奴隷にもうすぐなれるぞ」

 

 宝玄仙の笑いに、多目怪の狂気じみた笑いが重なった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。