眼が覚めた。
そして、朱姫は自分が大きな台の上に、四つん這いの状態で拘束されていることに気がついた。
手首と肘、そして、膝と足首を台に革紐で拘束されている。
しかも全裸だ。
いや、股間になにかが嵌っている。
女陰と肛門に違和感がある。
なにかが挿さっているようだ。
「やっと気がついたかい、朱姫?」
声がした。
顔をあげると台の横に、
顔に満面の嗜虐の笑みを浮かべている。
窓のない小さな部屋だ。
ここがどこだろうと考えて、朱姫はやっと自分が孫空女とともに、
多目怪に連れていかれた宝玄仙を助け出すために、孫空女とともに黄花観に浸入していたのだ。
黄花観という建物の内部は、迷路のような複雑な構造をしているだけでなく、多くの罠が仕掛けられていた。
それをいま眼の前にいる七雌妖から事前に訊き出した情報に基づいて、罠を回避しながら進んだ。
やがて、隠し部屋になっていた調教部屋に監禁されていた宝玄仙を見つけることができた。
それから、外に出ようとやってきた経路を戻ろうとすると、前を歩く孫空女が不意に立ちどまったのだ。
朱姫は孫空女のすぐ後ろから宝玄仙を背負って歩いていたが、強い道術を感じ、次の瞬間、金色の光に突然包まれた。
それからなにがあったかわからない。
光を浴びた途端に、身体が痺れて意識を失った。
おそらく、罠にかかったのだと思う。
七雌妖が教えた経路は、往路専用だったに違いない。
帰路は別の経路から進まなければならなかったのだろう。
うっかりと、元来た道を戻ったことで、罠を作動させてしまったのだ。
孫空女や宝玄仙はどこだろう?
そして、沙那は?
目の前にいる七雌妖は、沙那と一緒だったはずだ。
その七雌妖がここにいて、朱姫が拘束されているということは大きな事態の変化があったのだろう。
七雌妖は、沙那とともに多目怪に会いに行ったのだ。
沙那は、孫空女と朱姫が宝玄仙を救出する時間を稼ぐために、多目怪を引きつけておく役目だった。
七雌妖は、その沙那に同行した。
自分たちが多目怪の罠に嵌って捕えられたということは予想がつくが、ここに七雌妖がいるということは、沙那も捕えられたのだろうか。
七雌妖は、宝玄仙を雌犬奴隷にしようとしたことを後悔するようなことを言っていたが、やはり、口だけのことだったに違いない。
七雌妖は、隠し部屋から戻る経路が、往路とは異なることを知っていたはずだ。
それなのに教えなかった。
最初から多目怪の罠に朱姫たちを捕らえさせるつもりだったのだろう。
「責める者と責められる者……。これが逆転するなんて、こんな面白いことはないと思わないかい、朱姫」
七雌妖が勝ち誇った笑い声をあげた。
「そ、孫姉さんはどこです? ご主人様は? それから、沙那姉さんは?」
朱姫は四つん這いの姿勢で顔だけをあげた態勢で七雌妖を睨んだ。
「連中は、おじき……多目怪が引き取ったわ。宝玄仙については、どうしてもおじきが執着していて、あたしには返せないそうよ。それで、お前をもらうことにしたの。おじきは、人間の女にしか興味がないから、半妖のお前はいらないそうよ」
七雌妖の言葉でやはり全員が捕まったということを悟った。
朱姫の心に絶望が広がる。
「……でも、あたしは大いに興味あるわね。後にも先にも、この七雌妖にあんな仕打ちをしたのはお前だけだしね。それに、お前は半妖だからね。ちょっとやそっとの拷問じゃあ、死にはしない……。そうだろう? たっぷりと仕返しをしてあげるよ。そう言ったろう、朱姫?」
七雌妖がぞっとするような酷薄の笑みを浮かべた。
この二日間、朱姫はさんざんに、この七雌妖を嗜虐していたぶった。
『縛心術』をかけて言いなりにして、道中で嗜虐をしながらここまで連れて来たのだ。
朱姫が責めるたびに、抵抗のできない七雌妖は、確かに悔しそうにいつか仕返しをしてやるとうそぶいていた気がする。
「そ、孫姉さんと沙那姉さんはどこなんですか。無事なんですか?」
「さあね。おじきが引き取ったけど、宝玄仙以外は殺すとか言っていたわね。どうなったか知らないね」
七雌妖は答えた。
「お、殺す──? そんなことをさせませんよ。冗談じゃないわ」
朱姫は四肢を台に拘束している革紐を引き千切ろうとした。
しかし、朱姫の力ではどうしようもない。
『獣人』の道術……。
身体の半分に流れる妖魔の血の力で脱出するしかない。
そう思い当たった。
だが、そう考えて、朱姫は自分の身体の霊気がほとんどないことに気がついた。
霊気が発散させられている。
しかも、身体が霊気を吸収できないように、なにかの道術がかけられている。
道術が遣えない……。
そのことに愕然とした。
いきなり髪を掴まれて、顎を台の上に叩きつけられた。
「あぐっ」
「そんなことお前が心配する必要はないわ、朱姫。それよりも、自分のことを心配しな──。この七雌妖の本格的な調教は、少しばかりきついわよ。半日で、お前からあたしに対する反抗心を消してやるからね。覚悟しな」
「痛たた……。い、痛いって……」
ものすごい力で、ぐりぐりと台に顔を押しつけられる。
「人間の女には無理だけど、半妖のお前なら多少の拷問では死なないだろうしね──。ほら、口開けな」
「ぐうっ──。身に沁みてひたぶるにうら悲し……鐘の音に胸ふたぎ、色変えて身に沁みてひたぶるにうら悲し……」
朱姫は顔を台に押さえつけられながら七雌妖に言った。
これは七雌妖にかけてある『縛心術』を作動させるための合言葉だ。
この言葉を聞くと、七雌妖は朱姫の言葉に逆らえなくなるはずだ。
『縛心術』は一度かけてしまえば、ある程度は道術がなくても言葉だけで相手を操れる。
それが朱姫の『縛心術』だ。
しかし、それを耳にした七雌妖は、朱姫の顔を押さえたまま哄笑した。
「残念だったね、朱姫──。あたしにかけたお前の『縛心術』は、おじきが解除してしまったよ。あたしの霊気がお前の霊気よりも下であることは認めるけど、そのお前もおじきの多目怪の霊気にはかなわなかったらしいね」
朱姫は歯噛みした。
そういうことだったのだ。
多目怪にはまだ遭ってはいないが、一瞬で光を浴びた者を卒倒させるような道術の罠を仕掛けられるなど、かなりの強力な霊気を持った妖魔であるということが予想できる。
その多目怪の道術で、七雌妖に仕掛けた道術を帳消しにされた。
そして、朱姫の道術も封じられた。
もう抵抗の手段がない……。
沙那……孫空女……。そして、宝玄仙──。
朱姫は心の中でその名を呼んだ。
「口を開けるんだよ、朱姫」
片手で乱暴に朱姫の頭を台に押しつけたまま、七雌妖は、もう一方の手で朱姫の鼻をつまんだ。
なにをする気かわからないが、朱姫は懸命に口を閉じた。
鼻を摘まんでいる七雌妖の手を払い除けようともがく。
しかし、七雌妖の強い力で押さえられている顔はほとんど動かない。
息が詰まる……。
やがて、朱姫は思わず口を開いた。
「ぷはあっ──。」
息を吸う。突然、なにかが口の中で起きた。
「はがあああああああ──」
朱姫は咆哮した。
激痛がした。
舌の先になにかが突き刺さったのだ。
それが七雌妖の糸の道術によるものだとわかったのは一瞬後だ。
刺さっているのは七雌妖の道術の糸のようだが、糸は糸でも、多くの糸が捩れて太くなり、しかも針金のように硬度を増したものだ。
それが朱姫の舌先に二本突き刺さっている。
その刺された舌先から血がだらだらと流れるのがわかった。
「えげええっ……へぎいいっ……」
朱姫は泣き叫んだ。
しかし、針金のように硬くなった糸の塊りは、完全に朱姫の舌先に突き刺さって抜けない。
さらに七雌妖は、糸の針を摘まんで朱姫の舌を口から引っ張り、糸の下の部分を台に突き刺した。
朱姫は舌を糸の針で台に打ちつけられて、顔を上げられない状態にされた。
それほど多くはないが、舌の先から流れる血が台の上を流れ落ちていく。
不意に舌先が温かいもので包まれた。
『治療術』だと思った。
糸の針が刺すことで開いた舌の穴が道術で治療されたようだ。
しかし、突き刺さった糸の針はそのままだ。
少しでも動けば、舌が千切れてしまうだろう。
「そら、見てごらん、朱姫」
七雌妖が台に舌先を打ちつけられている朱姫に見えるように着ていた着物を開いて、自分の股間を朱姫に晒した。
そこには、朱姫が嵌めた『責め環』がない。
きれいに外されていた。
『責め環』というのは淫具であり、ここにやって来る途中でに、朱姫が七雌妖に装着させたものだ。
小さな金属の輪で七雌妖の肉芽の根元を絞り、それを腰に鎖で取れないように固定する淫具だ。
“
そして、『道術錠』で宝玄仙の命令でなければ外せないようにしたのだ。
その淫具が外されているということは、宝玄仙が淫具を外すことを命じたということだ。
『道術錠』で刻んだ条件付は絶対だ。
どんなに偉大な道術遣いでも、一度『道術錠』を刻んでしまうと、その条件を満たす以外に、『道術錠』を解除することはできないはずだ。
「外した淫具をお前に装着させようかとも思ったけど、お前にはそんな生ぬるい仕返しじゃあ、気が済まないからね。もっと、いいものをつけてやったよ。だけど、あんまりよがるんじゃないよ。舌が千切れて死んでしまうからね」
七雌妖は哄笑した。
次の瞬間、股間でなにかが動き出した。
「あがああっ──」
朱姫は絶叫した。
いきなり強い振動で女陰に挿入させられていたらしい張形が動きはじめたのだ。
快感よりも痛みが強かった。
それが朱姫の女陰で暴れ回る。
朱姫はやっと腰の違和感の正体がわかった。
女陰に張形を挿入して、その上からを革帯のようなものを装着されて抜けないようにされているのだ。
そして、女陰で暴れ回る張形の感触で、さらに肛門にもなにかが挿入されていることも知った。
いまのところ、肛門の異物は動く気配はない。
それでも、内壁越しに肛門の異物に女陰の張形がぶつかり続け、朱姫に発狂するような快感を与える。
朱姫は思わず腰を揺さぶって甲高い悲鳴をあげた。
しかし、それ以上動けば、台に打ちつけられている舌が破れる。
朱姫は泣きながら、身体から突きあがる衝撃に耐えた。
「これで、まだ強さは半分くらいだよ。もっと強くするよ、朱姫。耐えな──」
朱姫は哀願の言葉を吐いた。
しかし、舌を動かせない朱姫の言葉は、悲鳴にしかならない。
朱姫の叫びを無視して、張形の運動がさらに強くなる。
「あがあっ、があっ、がががっ……」
朱姫は一生懸命に顎に力を入れて顔が揺れるのを防いだ。
股間に加わる刺激が強すぎる。
全身が激しく痙攣する。腰が卑猥な踊りをするのを止められない。
しかし、快感よりもいまは、舌が動くことで襲われる激痛による苦痛がまさる。
激しい快感だがいけない。
朱姫は悲鳴をあげ続けるしかなかった。
「もっと、踊りな、朱姫──。あたしを舐めた真似をしたことを後悔するんだ」
七雌妖が狂ったように大笑いした。
眼を開けると、乗馬鞭を手にしている。
それが朱姫の背中に振り下ろされた。
「ほがあああっ──」
背中が焼けたかと思うような激痛が走った。
「次だよ、朱姫」
また激痛──。
朱姫は吠えた。
どんなに痛くても、舌が台に打ちつけられていて身動きすることもできない。
逃げることはもちろん、鞭を避けることもできない。
そして、股間では朱姫の力をどんどん削ぐように張形が暴れ回る……。
朱姫はぼろぼろと涙をこぼして哀願の悲鳴をあげ続けた。
「どんどんいくよ──」
三発、四発、五発と鞭が背中に加えられる。
背中の皮膚が破けて、背中からも血が滴り落ちるのがわかった。
「思い知ったかい、朱姫」
うっすらと汗をかいている七雌妖が乗馬鞭を床に放り投げた。
「う、ぐ……、ぎ、げ……」
許して……。
そう言ったつもりだったが、まったく言葉にならない。
朱姫はひたすら涙をこぼした。
その朱姫の股間を張形が激しく責めたてる。
もう快感だが、苦痛なのかわからない。
全身が弛緩する。
「さあ、ここからが本番だよ」
視線を上に向けると、七雌妖の顔に酷薄なものがあった。
次に持ってきたのは、真っ赤な色をした液体だ。
朱姫はそれが唐辛子よりも遥かに辛いこの南域産の香辛汁だということを悟った。
その瓶の蓋が取られている。
引っ込めることができない朱姫の舌に、それが近づいてくる。
「この二日間、お世話になったお礼だよ。あたしの手料理を食べておくれ。まあ、料理といっても、ただの辛子汁だけどね」
刺激臭が近づく。
言葉を奪われている朱姫は許しを乞うことも許されていない。
香辛汁がどぼどぼと舌の上に落とされた。
「ぎげええええ──」
朱姫は絶叫した。
頭が揺れて新しい血が舌先から吹き出たのもわかった。
しかし、容赦なく瓶が口の中に挿入されて、残り全部を注ぎ入れられた。
全身から汗が噴き出す。
舌が焼ける。
自分の発狂したような悲鳴が部屋に轟く。
「そんなにおいしかったかい? お代わりは幾らでもあるよ」
七雌妖が笑いながら新しい瓶の蓋を開けた。
朱姫は絶望の悲鳴をあげた。
再び真っ赤な激辛汁が舌先に注がれる。
意識が飛ぶような刺激に朱姫はただ叫ぶしかできなかった。
「次だよ」
また次の瓶の蓋が開けられる。
今度は背中だ。
鞭で傷ができたはずの背に無造作に香辛汁が注ぎ落とされた。
「はがあああ──ががががががが──あががが──」
朱姫は背中が燃えあがったかと思うような衝撃に吠えた。
大量の血が口から流れていた。
いつの間にか朱姫は舌の糸針を引き千切っていたようだ。
七雌妖が朱姫の口から糸針を抜いた。
血はまだ流れ続いている。
『治療術』がかけられた。
「ゆ、ゆ……る……じ……て……」
舌が動くようになった朱姫はやっと言った。
「……お前の肛門には、肛門栓が挿入されているんだ。それを外さないと大便することはできないんだけど、浣腸液を挿入するための小さな穴もあって、そこを使えば浣腸液を注ぐこともできるのさ……。いまから、あたしが、お前の尻になにを入れようとしているかわかるかい?」
七雌妖が言った。
涙で霞んだ朱姫の眼に、七雌妖の手に握られている浣腸器が映った。
半透明の縦長の管には、真っ赤な液体が入っている。
まさか……。
あの浣腸器に入っている赤い液体は……。
朱姫の全身に新たな戦慄の汗が流れる。
「たっぷりと悲鳴を聞かせておくれ」
七雌妖が笑って、朱姫の背後に回ると、浣腸器を朱姫に近づける気配を感じた。
「いやあああ──」
もう悲鳴をあげることしかできなかった。
懸命に尻を揺すって暴れようとしたが、その腰を七雌妖の怪力が掴む。
肛門栓になにかを挿されるのがわかった。
液体が朱姫の肛門に流れ込んでくる。
「ががががががが──」
あまりにもの激痛に朱姫は一瞬、意識を失った気がした。
肛門の中に真っ赤な焼け串を入れられたような感じだ。
痛いというようなものではない──。
熱い──。
お尻が焼ける。
焼けただれる……。
朱姫は四つん這いの身体を可能な限り暴れさせた。
もはや、女陰の張形などなにも感じない。
それくらい肛門に入れられた香辛汁の浣腸は凄まじかった。
「もう一本だよ、朱姫」
新しい香辛汁をたっぷりと入れ直した浣腸器を手に持っている七雌妖が、冷酷な笑みを浮かべて朱姫に言った。
朱姫はこの世のものとは思えない苦痛に泣き喚くしかなかった。
二本目の香辛汁入りの浣腸液を注ぎ終わった七雌妖は、思い切り朱姫の尻を叩いた。
すると、肛門に挿入されていた栓が振動と回転を始める。
激辛の香辛汁を肛門のなかでかき回される衝撃は、苦痛とか激痛とかいう言葉では表現することはできない。
朱姫は拘束された全身をめちゃくちゃに暴れさせた。
「気絶なんて優しいことはさせてやらないよ、朱姫。この苦痛から逃れたければ早く発狂することだね。それまで七雌妖の責めは永々と続くよ」
七雌妖の甲高い笑い声が、絶叫し続ける朱姫の耳にかろうじて届いた。