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「ああ、もう、我慢できない──」
孫空女がそう叫んだかと思ったら、上衣を脱いで胸当てだけの姿になった。
胸当てに包まれた汗びっしょりの孫空女の乳房が歩みの振動で揺れはじめる。
「み、みっともないわよ、孫女」
最後尾から歩いている沙那は、大きな声でたしなめの言葉を叫んだ。
道とは言えないような山道を抜けて、道は人の手が加わったような路盤になっていた。
つまり、とりあえず目指している辺境最北の地である
事前に沙那が得た情報によれば、翠雲よりも北には人里はない。
即ち、そこが人界と妖魔の里の境なのだ。
朱紫国北域の妖魔の土地を支配する
だから、その境界は、自然の要害によって阻まれているというが、詳しいことは、ひとつ前の部落ではわからなかった。
とにかく、翠雲はこれまでの辺境にあった人間のどの部落からもずっと北に離れた場所にあり、実際に翠雲に行ったことのある人間も結局のところは見つけることができなかった。
沙那が得た情報についても、すべて噂の範疇を超えるものではない。
その翠雲の部落も、もう間もなくのはずだ。
だが、その翠雲が近づくにつれて、とてつもない熱風が一行を襲ってきたのだ。
熱風は北からだったが、それが怖ろしく熱い。
しばらくは我慢していたが、だんだんと耐えがたいものになってきた。
すると先頭を歩いていた孫空女が、ついに上衣を脱いだのだ。
「なんとでも言ってよ、沙那。あたしには耐えられないよ。まあ、これでいくらかはましになったよ。沙那も我慢していないで、脱いだらどうなのさ。どうせ、乳房と乳房の間は汗びっしょりなんだろう?」
「じゃあ、胸当ても外しな、孫空女──。とめはしないよ」
宝玄仙が笑って言った。
「あ、あたしも……」
上下が別の服を着ていた朱姫も上衣を脱いで、胸当てだけの姿になる。
「まったく、あんたたちは……」
沙那は胸当て姿だけになったふたりに嘆息した。
「わたしはやめとくよ。育ちが邪魔をするんでね」
宝玄仙は上半身が半裸になったふたりに苦笑して言った。
しかし、そういう宝玄仙は、ほとんど汗をかいていない。
沙那は不思議に思った。
「ご主人様は、どうして汗をかいていないんですか?」
「そりゃあ、道術を遣っているからだよ。『治療術』の応用だけど、体温の上昇を道術で押さえて発汗を防いでいるのさ」
「いいなあ、ご主人様──。それ、あたしらにもやってよ」
前を歩く孫空女が歩きながら言った。
「贅沢を言うんじゃないよ。暑けりゃ、全部脱いで素っ裸で歩きな。わたしは、指一本だって邪魔しやしないよ」
宝玄仙が笑った。
やがて、下っていた山道の両脇の林がなくなってきた。
すると、眼の前に拡がる山の麓に百軒ほどの人家が見えてきた。
さらにその集落の向こうには深い谷の下を流れる大きな河も見える。
その向こうは、谷川を挟んで拡がる山壁があった。
「あれが、麒麟山かい。なんだい、あれは……?」
宝玄仙が呆れたような声をあげた。
沙那もびっくりして、視界の先に拡がる山壁を見た。
山一面が真っ赤だ。
季節外れの紅葉なのかと思えば、山の森林のすべてが燃えていたのだ。
「あ、あれが麒麟山……」
沙那も思わず声をあげた。
「あれは、ただの山火事じゃないよ。煙が不自然だもの。山一面に道術がかけられているようだよ」
孫空女も叫ぶように言った。
孫空女の言うとおり、山一面が燃えているにしては煙がほとんど出ていない。
樹木は炎をあげて燃えているのだが、煙は炎が拡がっている山一面にうっすらと覆う程度で、空にあがらずにそのまま消滅しているのだ。
しかも、燃えている樹木は、燃え倒れる様子もなく炎をあげ続けている。
まさに、火の葉っぱだ。
「人間を避ける道術の要害による境界というわけだね。いずれにしても、この途方もない熱風の原因はあれというわけだ」
宝玄仙が言った。
山一面に道術をかけるなど、それだけで凄まじい霊気だ。
あれが賽太歳という妖魔王の力なのだろうか。
「いずれにしても、あの炎の山を越えた場所に、
沙那はそう言った。そして、正面の炎に包まれる山に向かっていまの山道を下った。
しばらく進むと、部落の入口にやってきた。
侵入者を拒む関や垣根のようなものはない。
これまで訪れた北の辺境地帯の部落には、侵入者を阻む自警団のようなものが、部落への人の出入りを監視しているところが多かった。
門だけではなく、砦や見張り台のようなものが作られている場所もあった。
それに比べれば、翠雲という名のこの部落は完全に無防備だった。
山から歩いて来れば、自然に人家のある地域に到着する。
そんな感じだ。
人家の両側には畠も見える。働いている者も多い。
そこには男もいれば、女もいた。
「なるほど、あれは、理にかなっているさ」
孫空女が遠くの視界に映った女たちを見て笑った。
男も女も沙那たちのように身体を覆うような服を着ている者はひとりもいない。
大抵は、半ずぼんのサンダル履きで、それは男も女も同じだった。
男は上半身が裸身の場合が多く、女はすべて、胸紐だけで乳房にはなにも覆っていない。
胸紐は乳房を隠すのではなく、持ちあげて風通しを良くするのが役割であり、どの女も乳房も乳首もそのまま剝き出しになっている。
「お前たち、余所者かい。そんなに服を着こんでいたら、一日ともちはしないよ」
さらに集落を進むと、平屋の家の前に座っている肥った中年の女に声をかけられた。
その中年の女の隣には、比較的若いふたりの女もいた。
三人の女は、家の前で椅子に座って世間話をしていたようだ。
三人とも胸を剝き出しにしていて、陽に焼けた肌をしていた。
「ここは、翠雲の部落ですか?」
沙那が応じた。
「そう呼ばれているね」
中年の女が言った。
「冥土の入口の地ともいうね」
「いや、すでに人の世とは別世界だよ」
隣の女たちも口を出して笑った。
三人が囲んでいる小さな卓には酒瓶があった。
どうやら酒を飲んでいたらしい。
「あんたらのような別嬪が来る場所じゃないよ、ここは。あっという間に犯されて殺されるかもしれない。なにせ、ここは、世の中の悪事をやり尽くしたような連中が集まる場所だからね」
中年の女が沙那たち四人を値踏みするように眺めながら笑った。
「わたしは沙那と言います。こっちは、女主人の宝玄仙。そして、孫空女と朱姫です」
沙那は紹介した。
すると、女たちもそれぞれに名乗った。
中年の女は
残りのふたりは、その友人だということだった。
璃子は、この翠雲で暮らす女の束ねのようなことをしているということもわかった。
最初に遭ったのが、そういう人間だったことに、沙那は幸運を感じた。
沙那は、荷にぶらさげていた兎の肉を一匹丸ごと璃子に差し出した。
土産にしようと思って、途中で捕まえたものであり、全部で三羽分ある。そのうちの一羽を渡したのだ。
「向かいに見える山の反対側に進む方法を知りたいのです。それができなければ、この部落に滞在するための宿屋はありませんか?」
沙那は言った。
兎一羽の土産に、璃子は目を丸くするとともに、大袈裟なほどに喜んだ。
三人の態度も一変し、沙那たちを歓迎するような口調に変わった。
「麒麟山に行くのかい? あそこは妖魔王の土地だよ」
璃子の右隣の女が声をあげた。
「友人が妖魔に浚われたのです。なんとしても連れ戻したいんです」
沙那は適当な嘘を言った。
「やめときな。妖魔に浚われたなら諦めることだ。連中の中には食料として人間を食べるものもいる。連れて行かれたなら、すでに死んでいるのは間違いない。こんなところまで追いかけて来るなら、余程に大事な人なのかもしれないが無駄なことだったね」
璃子が肩を竦めた。
「死んでいるならそれでも構いません。でも、納得するためにも行きたいのです。わたしたちのうちのふたりは道術遣いです。そして、わたしと孫空女は遣い手で腕が立ちます」
「そのようだね。まあ、麒麟山を越える方法を知っていれば教えるけど、そんな方法は知らない。その必要もないんでね」
璃子は言った。
「だったら、どこかに宿屋はありませんか?」
「宿屋? そんなものがあるわけないだろう。こんなところに来る旅人もいないからね。ここは人里の終着地だ。ここを通り過ぎる者はない。ここに来るのは、世間にあぶれて、人間の土地どころか、ここよりも南の辺境の部落でも住む場所のいなくなった者ばかりだからね──」
「じゃあ、どこかに寝る場所を貸してくれるところはないでしょうか?」
沙那はさらに言った。
「まあ、寝る場所くらいなら、あたしの顔で紹介してやれるよ。住む者がいなくなった家ならいくらでもある。兎の肉をもう一羽くれたら、その中の一軒に住めるように手配してやるよ」
璃子が、沙那が荷にぶらさげている残りの兎の肉を眺めながら目ざとく言った。
沙那は、地面に降ろしている荷からさらにもう一羽の兎の肉を卓に置く。
「ついてきな」
璃子は歩き出した。沙那たちはそれを追って歩いた。
部落にはちらほらと人の姿もある。
じろじろと沙那たちを見ていたが、声をかけてくるものはいなかった。
ただ、物珍しそうに眺めている者が多い。
「……あたしと一緒のときに襲ってくる者はいないよ。だけど、あたしから離れたら気をつけな。ここに法はない。自分の身は自分で護るだけだ」
璃子が歩きながら言った。
彼女は手に長い棒を持っている。璃子もまた遣い手であることは、その歩き方でわかった。
「あたしらは大丈夫だよ。襲ってくる男なんていたら、こてんぱんにのしてやるよ」
孫空女が笑って応じた。
「そんな感じだね。まあ、こんなところまでやって来れるぐらいだから、女ながらも腕があるんだろうね」
璃子が言った。
やがて、部落外れの一軒の家の前に着いた。
ほかの家とは少し離れていて、ここよりも先に建物はない。
麒麟山と翠雲の部落を隔てる谷川は目と鼻の先だ。
「……ここを使っていい。もう、空き家なんだ。その先に、谷川に降りる道がある。集落には井戸水もあるが、面倒な掟もあるから新入りの間は、面倒でも必要な水は谷川まで汲みに行った方がいい。水汲みの道具は家の中にあると思う。もう、ここに住んでいた者はいないから自由にしていい──。なんで、住む者がいなくなったかは訊かないでおくれ。確か、殺されたと思うけど、どれがどれだか、いちいち覚えていないんだ」
璃子が白い歯を見せた。
「この部落には店のようなものはあるかい?」
宝玄仙が言った。
「十日に一度、物々交換のための小さな市が集落の広場で開かれる。市といっても、ただ人が集まって物を交換するだけの会合だけどね。次の市は五日後だ。そのときに、あんたらを正式に紹介してやるよ──。もっとも、それだけの別嬪さんの集まりだ。紹介するまでもなく、すでに部落中に広まっているだろうけどね……。夜は気をつけな。本当にね。夜だけじゃないけど、本当にここは物騒な場所なんだ。常識は通用しない」
「道術で結界をしてしまうから大丈夫さ」
宝玄仙が笑った。
「そう、触れ回っておくよ。それだけでちょっかいを出す与太男も減るだろうし──。それから、長く暮らすつもりはなさそうだから必要はないと思うけど、職が欲しければあたしに声をかけておくれ。それも世話をしてやれる。身体を売るのでも、あたしを通した方が無難だ。あたしを通さなくても問題はないんだけど、騒動のもとなんだ。身を売る女にもそれぞれに縄張りのようなものもあってね。それを仕切るのもあたしの役割さ」
「必要なときには相談しに来ます」
沙那は言った。
「他になにかあるかい? 旅をしてきたようだから足りているかもしれないが、寝具や食器のようなものは必要かい?」
当面の必要なものは間にあうと思うし、不便があれば相談しに行くと言うと璃子は戻っていった。
家の中は広めの部屋がふたつの間取りだった。
小さな台所もあり、かまどもある。
埃が溜まっている様子はなく、つい最近まで誰かが住んでいたという感じだ。
家具もそれなりにある。
ただ、衣類を含めて価値のあるようなものはない。
「……さて、どうするかね」
家には卓や椅子のようなものはない。
宝玄仙は床に直接座り込んだ。
朱姫はさっそく、家のまわりに結界の防護を巡らせにいった。
孫空女も一緒に外に出て周辺の安全を確かめにいったようだ。
「璃子さんが隠している様子もなかったので、本当に麒麟山を越える方法は知れ渡っていないのだと思います。とりあえず、明日くらいから三人でいろいろと探ってみます。なんとか、妖魔の土地側に入る方法を見つけます」
「頼むよ」
宝玄仙が頷いた。
*
「ふたりとも、もっと、しゃがみな、床に大便をするような感じでね」
壁側に座っている宝玄仙がこっちを眺めながら命令した。
孫空女は後手に縛られた裸身を沈めると、宝玄仙にお尻を向けるような向きでしゃがんだ。
隣では沙那も同じような姿勢をとっている。
「はいはい……。沙那姉さんも、孫姉さんも、準備はいいですね。じゃあ、孫姉さんからいきますか」
孫空女と沙那がしゃがんだのを確認した朱姫が満足気に言った。
孫空女と沙那の股間の下の床にはたくさんの小さな金属の玉がある。
ひとつひとつの大きさは、親指の先程だ。
それが数十個ばらまいてあるのだ。
この翠雲という朱紫国の最北の部落までやってきて最初の夜だ。
朱紫国といっても、すでに朱紫国の法が及ばなくなって久しい。
人の地図では、朱紫国に属するように国境が書いてあるというだけのことで、朱紫国の掟の及ばぬ人外地だ。
四人の旅の当面の目的地は、この翠雲の北の麒麟山にある獬豸洞という妖魔城だ。
そこに賽太歳という妖魔王がいる。
宝玄仙から道術を奪った妖魔であり、その妖魔王と対決して、宝玄仙の道術を取り戻す。
それが目的だ。
妖魔城は麒麟山の反対側の斜面のはずであり、そのためには、まずは麒麟山に入らなければならないが、行く手が深い谷川に阻まれているだけではなく、道術によって山一面が炎に包まれて、人の侵入を防いでいる。
いまのところ、麒麟山に入る方法も、越える方法も見つからない。
宝玄仙や朱姫の『移動術』は、行ったことのある場所で、さらに、移動先に『移動術』の結界がなければ跳躍できないので遣えない。
とにかく、明日からは、麒麟山の反対側に行く方法を探索する日々になるだろう。
とりあえずは今夜だ。
いつものように宝玄仙の供に対する嗜虐が始まった。
今夜、縛られることを命じられたのは孫空女と沙那だ。
それを宝玄仙と朱姫が嗜虐する。
このところ、もっとも多いかたちだ。
孫空女と沙那は、全裸になり縄で背中に組んだ腕を後手縛りにされている。
床には、たくさんの小さな金属の玉があり、これを肛門で飲み込めと言われているのだ。
孫空女にしても沙那にしても、半刻(約三十分)以上、朱姫のねちねちとした身体への愛撫を受けている。
すでに全身は上気して、股間でも肛門でもなにかを受け入れる態勢はできている。
沙那に至っては、すでに二度気をやっていて、なんだがぐったりしている。
「いきますよ、孫姉さん……」
孫空女のそばに座った朱姫が床から無造作に玉を拾って、孫空女の肛門にひとつ押し入れてきた。
「くっ……」
朱姫が肛門に入口に小さな玉を押しあてがう。
肛門を拡げて吸いこむように収縮させると、玉がすっと肛門の奥に入り込むのがわかった。
「あひっ……」
冷たい金属の玉が肛門の内側を流れていく感触に妖しい疼きが全身に走る。
思わず身体に震えが走る。
突然、尻に激痛が走った。
「い、いたっ──」
尻の横面がぴしゃりと朱姫によって叩かれたのだ。
「な、なにすんだい、朱姫──」
孫空女は怒鳴った。
「なにするじゃないですよ。よがってないで、数をかぞえなければ駄目じゃないですか、孫姉さん──。そんなことじゃあ、いい奴隷になれませんよ」
朱姫がふたつ目の玉を肛門に押し込みながら笑った。
「お、お前、ま、また、調子に乗って──。く、くそっ……、に、二……」
肛門にぞわぞわした快感が走る。
三、四、五と肛門に玉が入ってくのがわかる。
次々に肛門深くに小さな玉が入っていく。
そのたびに、孫空女は声を我慢しながら数をかぞえ続けた。
「……十……五……、ああっ……ああひぃ──あ、ああああぁぁ……」
十五個目でついに孫空女は、軽く気をやった。
身体を小さく震わせて思わず甘い息を吐いた。
「あらあら、孫姉さんもいったんですか?」
朱姫がからかいの言葉をかけた。
「う、うん」
孫空女は仕方なく、こくりとうなずく。
まだ、妖しい快感が止まらない。
身体の疼きは堪えようのないものに変わっている。
「ふふふ、なかなかにいい飲みっぷりですよ、孫姉さん……。ご褒美にここを触ってあげます」
朱姫の指が股間の前側の肉芽に伸びた。
すでに勃起している肉芽の皮をつるりと剥いて柔らかい指先で軽く振動させる。
「や、やめて……ひ、ひいっ……あ、ああ、あああっ……そ、それは……だ、だめええぇ」
孫空女は思わず拘束された背中を仰け反らせて悲鳴をあげた。
「それくらいでいいだろう、朱姫。次は、沙那にしな」
宝玄仙の命令が飛ぶ。
「はい、ご主人様」
朱姫の手が離れる。
いいように弄ばれた孫空女は、やっと解放された身体を脱力させる。
「命令があるまで、そのままだ。いいね、孫空女」
「わ、わかったよ、ご主人様」
孫空女は上気した身体を荒い呼吸で上下させながら言った。
横では沙那に対する朱姫の責めが始まっている。
「……そろそろ、落ち着きましたか、沙那姉さん? 沙那姉さんの番ですよ……。さあ、数をかぞえるんですよ。ちゃんとやらないとお尻を叩きますからね。お返事は?」
「ちょ、ちょっと──ひうっ」
沙那が横で、悲鳴とともにしゃがませた身体を伸びあがらせた。
どうやら、面白がった朱姫が指で沙那の肛門を刺激したようだ。
沙那が険しい顔で朱姫を睨みつけている。
「あ、あんた、ちょ、調子に乗ったら後で酷いわよ……」
沙那が朱姫に言った。
「へえ、元気になりましたね。じゃあ、沙那姉さんは、これにしてあげますね。きっと、小さな玉じゃあ物足りないでしょうしね」
「なっ──」
朱姫が沙那にかざした玉を見て、沙那が絶句している。朱姫が沙那に見せたのは、孫空女に入れた親指の先大の小さな玉ではなく、拳ほどもある大きな玉だ。
金属ではなく陶器の丸い玉のようだ。
いつの間にそんなものも準備していたのか孫空女にはわからなかった。それを沙那の顔の前にかざしている。
「そ、そんな大きなもの」
沙那が顔を蒼くして、目を丸くしていた。
「なに言ってるんですか、沙那姉さん。大きさは、卵よりも少し大きいくらいですから大丈夫ですよ」
「い、嫌だって──。やめてっ、朱姫」
沙那が悲鳴をあげている。
しかし、宝玄仙と朱姫が許すわけがない。
沙那の抗議の声を聞きながら孫空女は思った。
やっぱり、無理矢理に沙那は、その大きな玉を肛門で飲み込まされている。
「……さあ、力を抜いてください、沙那姉さん」
朱姫が陶器の玉を沙那の尻に押し付けた。
「あ、ああ……。む、無理……」
沙那の苦しそうな声と吐息が聞こえる。
「息を吐くんだよ、沙那──」
宝玄仙の強い声が響きわたる。
「半分入りましたよ、沙那姉さん。ほらっ、頑張れ」
孫空女は横でいきんでいる沙那を見る。
沙那は、じっと眼をつぶり、激痛に耐えるような表情をしている。
顔は脂汗でびっしょりであり、その姿に、孫空女も思わず後手縛りの拳に力を入れてしまう。
「ふわっ……ああっ──」
沙那が達したかのような甘い声をあげた。
「入りましたよ、沙那姉さん」
朱姫が大きな声をあげた。
「ひ、ひいっ、入ってくる。勝手に奥に入ってくる」
沙那が悲鳴をあげている。
「勝手に入ってやしないよ。お前の尻が玉を受け入れているんだよ。すっかりと調教してあるからね。玉飲みについても、頭よりも身体が覚えているのさ」
宝玄仙が笑った。
「大きいから三個で勘忍してあげますね」
朱姫が言った。
沙那は悲鳴をあげているが、朱姫に身体を押さえつけられて、二個、三個と大きい玉を押し入れられた。
やがて、本当に三個の大玉が沙那の肛門に押し入れられた。
だが、よくもあんなに大きい玉をうけいれることができるものだ。
孫空女も横で感心した。
「さて、じゃあ、一個ずつ出してもらおうか。失敗すれば罰だよ。どんな罰かは愉しみにしてな」
宝玄仙だ。
「そ、そんな、ご主人様」
「ちゃんと、やっているじゃないか、罰なんて酷いよ」
沙那に次いで孫空女も文句を言った。
なにを言っても無駄なことはわかっているが、ちゃんと不満を口にしないと、このふたりはどこまでも調子に乗るから大変なことになるのだ。
「ひひひ、面白いことをやっているね」
突然、若い男の声がした。
「う、うわっ」
孫空女は驚いてひっくり返った。
沙那も隣で腰を抜かしたように、床にお尻をつけた。
ついでに、その衝撃であられもない嬌声をあげたのはおまけの痴態だ。
いつの間にやってきたのかわからない。
部屋の中には四人の若い男がいる。すべてが右手の中指の爪が剣のように伸びている。
その爪の剣が、孫空女、沙那、朱姫、宝玄仙の全身の喉に伸びていた。
四人の顔は四つ子であるかのように同じだ。
外見は十七、八の人間の若者と同じだが、切れあがった眼尻と、白目の部分が血のような真っ赤な色に染まっている。
若者たちが人間ではなく、妖魔であることは明らかだ。
「お、お前、どこから──?」
爪の剣を突きつけられている宝玄仙が目を丸くしている。
「俺たちに結界は通用しないよ。俺の名は、
羅刹と名乗った妖魔のひとりが言った。
「くっ、『影手』──」
朱姫が叫んだ。
しかし、その『影手』が妖魔を素通りした。
「き、効かない?」
朱姫が驚いている。
次いで、宝玄仙の道術による糸も飛んだ。
だが、その糸もやはり、妖魔の身体を通り抜ける。
宝玄仙も驚いている。
「気が済んだかい? 俺たちに道術は効かないよ? 俺たちは淫魔さ。ただお前たちを犯して、絶頂のときに発生する淫気を貰うだけだ。実害はないはずだ。大人しくしな」
羅刹と名乗った妖魔の顔に、勝ち誇った笑みが浮かんだ。