「気が済んだかい? 俺たちに道術は効かないよ。俺たちは淫魔さ。ただお前たちを犯して、絶頂のときに発生する淫気を貰うだけだ。実害はないはずだ。大人しくしな」
宝玄仙は驚いた。
この家は、朱姫が完全に結界で囲んでいる。
外からは侵入できないはずだ。
その結界の中に、この四つ子は易々と侵入を成功させた。
「さて、じゃあ、や、やらせてもらうぜ……。誰が相手してくれるんだ?」
宝玄仙の喉に爪の剣を押しつけている羅刹が言った。
「誰……? ひとりずつやるのかい?」
なんとなく訊ねた。
ここには四人の女がいて、四つ子のような妖魔が四匹だ。
一匹がひとりの女ならわかるが、なぜ、ひとりが相手をするのだろう?
いずれにしても、眼の前にいる妖魔は
淫魔というのは、淫気を食料の代わりにする妖魔だ。
人間が性交のときに発する淫気を身体に吸収して力を得るのだ。
淫気というのが本当に存在するのかどうかよくわからないが、実際にそれを食料にする妖魔が多くいるのだから、人間は性交のときにかなりの精力を発散しているのだろう。
それはそうとして、淫魔であるとすれば、確かに実害はない。
幼い頃に、宝玄仙の母親は自分の屋敷に淫魔を引き入れて情事の相手や手伝いなどをさせていたが、連中は淫気さえ与えれば満足し、憑りつく相手を殺したり、弱らせたりすることはない。
むしろ、よい淫気を与えてくれる人間は貴重なので、積極的に守ったりもする。
羅刹たちも素直に淫気を与えれば、大人しく退散するはずだ。
「ひ、ひとりだよ。ひとりだ──。だ、誰が俺に抱かれるんだよ。早く、決めろ」
羅刹が喚いた。
「ひとりでいいのかい? ここには四人の女がいるんだけど、よりどりみどりだ。好きにしなよ、羅刹」
「す、好きにしていいのか? 淫魔だぞ。嫌じゃないのか?」
好きにしろと言うと、目の前の羅刹の表情と口調が急に余裕のないものに変わった。
なんなのだろう、こいつは?
「好きにしていいと言ってるだろう。だけど、そのひとりは、お前ら四匹を相手しないといけないのかい?」
宝玄仙は不思議に思って訊ねた。
「ご、ご主人様、ちょっといいですか……」
黙って羅刹と宝玄仙の会話を見守っていた沙那が、切なそうな表情をこちらに向けた。
全身に汗をかき、顔は完全に上気して前髪が額に貼りついている。
責めの最中だったから、まだ、欲情しているのだ。
全身に汗をかき、裸身を赤く染めているその姿は、妙に艶めかしい。
女の宝玄仙から見ても、ぞくぞくするような色気を感じる。
「なんだい、沙那?」
「お、おう、凄い淫気だ。お、お前、凄いな……。沙那というのか──。凄い、凄い、凄い。こんなに濃い淫気は初めてだ。しかも、おいしいぜ。そっちの赤毛もいいな。淫気が凄い」
羅刹が沙那に視線を向けて、唾を飲み込んだ。
どうやら、こうしている間にも沙那や孫空女から淫気というものを吸収しているようだ。
沙那と孫空女には、さっき肛門に玉を飲み込ませて、まだ、尻の中に入れたままだ。
だから、欲情した身体が淫靡な気を発し続けているのだろう。
しゃがんでいる沙那が力を入れたのがわかった。臀部が小刻みに震えはじめる。
「おっ、なんだ?」
羅刹の視線が沙那に集中している。
沙那は見られていることに、ほんの少しの恥じらいを含ませた表情で、眼を閉じた顔をいくらか俯き加減にして、りきんでいる。
「……み、見せてくれよ」
羅刹が唾を飲んだ音がした気がした。
沙那の股間の下の床が突然に鏡面に変化した。
燭台の灯りが鏡面に沙那の股間を映す。
「う、うわっ──。な、なによ、これ?」
足元の床が鏡面に変わったことで、沙那が悲鳴をあげた。
沙那が何気なく見下ろした鏡面に、自分の恥ずかしい部分がはっきりと映ったからだろう。
宝玄仙にも、一個目の玉が少しだけ顔を出している肛門が鏡面を通して見える。
肛門だけでなく、真っ赤に充血して愛液でぐっしょりと光る沙那の熟れきった女陰だってよく見える。
「いいから、続けろよ」
羅刹が息を飲んだ。
それにしても、さっきから喋っているのは羅刹だけだ。
沙那たちに爪の剣を向けているほかの淫魔は喋らないどころか、名前すら名乗らない。
ただ、表情は写したように全員が同じだ。
「わ、わかったわよ……。み、見たきゃ、見なさいよ……」
沙那が呟いた。
そして、再びいきむ態勢になる。
鏡面に映った肛門の蕾がさらに綻ぶように拡がり、白い陶器の玉の表面がだんだん大きくなる。
そして、ぼとんと床に落ちた。
羅刹の道術で鏡面になっていても、表面は板張りの床なのだろう。
沙那の肛門から落ちた玉が板張りの床にぶつかった音かして、てらてら光る玉がころころと床を転がる。
続いて二個──。
沙那が肛門に含んでいた三個の拳大の玉が全部床に落ちた。
「おお、凄い、凄い──。手が塞がってなければ拍手したいぜ」
宝玄仙の前にいる羅刹が、爪の剣を宝玄仙に向けたまま感嘆の声をあげた。
「勝手に、ほざいていなさい……」
その沙那がいきなり立ちあがった。
沙那の喉にも淫魔の爪が伸びているのだが、完全に無視だ。
咄嗟のことで反応できなかったのか、沙那に向いていた妖魔は静止したままだ。
沙那は後手縛りのまま、なにもない壁に突進した。
呆気にとられている宝玄仙の眼の前で、沙那が壁に激突した。
いや、壁に激突したのかと思ったが、肉の塊りのようなものに強くぶつかる音と、若い男の悲鳴が部屋に響き渡った。
「うごわっ──」
沙那が激突した壁の部分から不意に羅刹と同じ姿の妖魔が出現して床に倒れた。
同時に、最初からいた四匹の妖魔の姿が消滅する。
「ご主人様、そっちの四匹はただの幻影です。こっちが本体です」
沙那が叫んだ。
沙那の足は、すでに床に倒れている淫魔の首を力いっぱい踏んづけて、その身体を押さえている。
「そういうことかい」
種を知ればどうということはない仕掛けだ。
ただ本体を隠して、幻影で脅していただけのことだ。
幻影だから宝玄仙や朱姫の攻撃道術は通用しなかったのだ。
すぐに気がつかなかった自分が迂闊だと思った。
沙那は霊力ではなく、気を読むことができる。沙那は、この部屋に四匹の妖魔の気配を感じず、姿を消して隠れていた本体の気配を悟っていたに違いない。
宝玄仙は道術で糸を飛ばす。今度は素通りすることなく、床に倒れている淫魔の手や足に糸が絡みつく。
「『影手』──」
朱姫の道術も発動した。
淫魔の首に黒い手がふたつかかった。
淫魔の表情がぎょっとしたものになる。
「ひいっ、ゆ、許してよ。許して──」
身動きできなくなった羅刹が悲鳴をあげている。
淫魔は最初から一匹だったのだ。
宝玄仙は朱姫とともに、床に倒れている淫魔を囲んだ。
沙那が淫魔から足を外す。
「ご、ご主人様──。あ、あたしも出していい?」
いきなり背後から孫空女の声が響き渡った。
なにかと思えば、孫空女は顔を真っ赤にしてしゃがんだ格好のままでいる。
そう言えば、肛門に玉を飲み込ませて、そのままでいろと命令したままだった。
孫空女は健気にそれを続けていたようだ。
「出しな」
宝玄仙が言うと、ぼとぼとと続けざまに小さな玉が床にこぼれ落ちた。
「ほふええぇぇ……」
羅刹がそれを見ながら感嘆の声をあげた。
*
「なるほど、お前は濃い淫気を結界代わりにして、『移動術』で入って来られるということかい」
宝玄仙は納得した。
糸で手首を背中側で縛り、足首も縛った淫魔を四人で囲んで訊問していた。
それでわかったことは、羅刹というのは、この淫魔の本当の名であり、まだ、生まれてから十七年の若い淫魔だということだ。
本来は、
そして、淫気の気配を頼りに、人間の世界を彷徨っていたのだが、たまたま、麒麟山の眼と鼻の先のこの翠雲の部落で濃い淫気を感じて、その淫気を『移動術』の出口の結界として、ここに出現したというわけだ。
通常、『移動術』を行うには、出口側にあらかじめ、そのための結界を刻まなければならない。
しかし、この羅刹は濃い淫気を『移動術』の結界代わりにして、そこに跳躍するという特殊能力を持っているようだ。
その能力で朱姫の結界を越えて、この家の中に浸入を果たし、そして、本体は姿を消して、四匹の分身の幻影を出して、宝玄仙たちを脅したということだ。
結局、沙那に見破られて、呆気なく拘束されたわけではあるが……。
「ねえ、助けてよ。なにもしなかったじゃないか。淫魔は、ただ、人間の情事のときの淫気を吸うだけだよ。実害がないというのは本当だよ」
羅刹が情けなさそうな声で哀願した。
「ねえ、ご主人様、わたしたちは、いつまで縛られてなければいけないのですか?」
沙那だ。
「そ、そうだよ。いい加減に、縄を解いてよ」
孫空女も声をあげた。
沙那と孫空女は後手縛りにして嗜虐の真っ最中だった。
情事は中断して羅刹の訊問をしていたが、このふたりの後手縛りは、そのままにしている。
「うるさいよ、お前ら。後手縛りでも話はできるし、聞こえるだろう? ちょっと、考えていることがあるんだ。そのままでいな」
「か、考えていることって、なんですか、ご主人様──?」
沙那が抗議の声をあげた。
それを無視して、羅刹に向きなおる。
「ところで、羅刹、お前はさっき、本来は麒麟山の向こうの妖魔だと言ったねえ?」
「そ、そうだよ。修行のために、人間の世界に出されたんだ。どうやら、淫魔に詳しいみたいだけど、淫魔は人間の情事のときの淫気を食料にするのさ。麒麟山には、人間は数える程しかいない。だから、修行はこっちでしかできない。それで、人間の土地に行くことを命じられたんだ」
「誰に?」
「おふくろだよ」
「淫魔にも一人前に母親がいるのかい」
「いるさ」
羅刹はむっとしたように答えた。
「それで、ここに来たのは、なにが目的だったんだい? わたしらを分身で脅してどうしたかったんだい、羅刹?」
宝玄仙は訊ねた。
「だから、修行だよ。おふくろに、修行のためにできるだけ多くの人間の女と情を結んで、色修行をして来いと命じられているんだ」
「色修業?」
「うん。淫気を吸収する方法もいろいろあって、さっきみたいに、情事をしている現場に姿を消して入り込んで、そっと淫気を吸収するというやり方もあるけど、人間の女と相手を直接に性行為をして、淫気を引き出すというやり方もあるからね。俺は、姿を消す術には長けているけど、性交術が苦手なんだ。それで、とにかく、数多くの人間の女と性交して、性交術を磨かなければならないんだ」
「なるほどねえ」
宝玄仙は頷いた。
「ねえ、ご主人様、どうして、こいつと話しこんでいるんですか? さっさと追い払えばいいじゃないですか」
沙那が叫んだ。
「そうだよ、それに、あたしらの縄を解いてったら──」
孫空女もその隣で喚いた。
「ちょっと、お前らうるさいよ」
宝玄仙は後手縛りのまま文句を言い続けている孫空女と沙那の乳首に道術の糸を飛ばして、向かい合うお互いの乳首と乳首を結んで、身体を密着させた。
ついでに、肉芽と肉芽も結んでしまう。
三本の糸で急所を結びつけられた沙那と孫空女が、乳房と股間をくっつけ合って悲鳴をあげた。
「ひううっ、ご主人様、ひ、ひどいです──」
「あふうっ、さ、沙那、動かないで……。ご、ご主人様、勘忍して──」
沙那と孫空女が泣き声をあげた。
「朱姫、ちょっと、見張ってな。騒ぐようなら、肩でも揺すってやるんだ」
「わかりました、ご主人様」
朱姫が嬉しそうに返事をした。
「……あっ、ごめんなさい。手が当たっちゃいました」
朱姫がわざとらしく、身体をくっつけ合っている沙那と孫空女の身体を軽く押した。
その振動で、両方の乳首と肉芽に激しい刺激を受けたふたりが同時に泣き喚いた。
その様子を羅刹が呆然と見守っている。その羅刹の視線を宝玄仙に戻させる。
「じゃあ、望みをかなえてやろうじゃないか、羅刹。色修行とやらをさせてやるよ。わたしでも、こいつらでも、好きなだけ抱いていきな」
「ほ、本当?」
羅刹が眼を大きくした。
「な、なに言っているんですか、ご主人様──。淫魔なんかに抱かれたら、憑りつかれて殺されてしまいますよ」
沙那が叫んだ。
「駄目ですよ、沙那姉さん、ご主人様の許可なく喋ったら」
朱姫が笑いながら沙那の身体を軽く左右に動かした。
「きゃああぁぁぁ──、ひぎいいっ──」
「あぎいいっ──」
沙那と孫空女が激痛に悲鳴をあげる。
「馬鹿なことを言うんじゃないよ、沙那。この羅刹が言ったことは本当だよ。こいつら淫魔は淫気を吸うだけだ。相手を殺せば、淫気は吸えなくなるじゃないか。だから、そんなことをしたりするものか」
宝玄仙は、朱姫にふたりをいたぶるのをやめさせてから沙那に向かって言った。
「だ、だって、書物で読んだことがあります。淫魔は、人間の女に憑りついて生気を奪って殺すとか……」
「だから、書物しか知らないやつは駄目なんだよ。こいつらの唯一無二の目的は淫気を吸うことだと何度も言っているじゃないか。淫魔が人間を憑り殺すなんて迷信もいいところだよ」
「で、でも、人間の女に淫魔の子を宿させるために妊娠させるとも聞いたことがあります。実際に、淫魔の子を宿したという女の噂だって知ってます」
「なんで、淫魔の子を産ませるのに人間の女の腹を使うんだよ。それだと、半妖になってしまうだろう。淫魔の子を宿したなんていうのは、不義密通したふしだらな女が、亭主や父親への言い訳のために勝手に淫魔の存在を利用しているだけさ。淫魔はちゃんと、雌の淫魔と雄の淫魔が交尾によって子を宿すよ」
「で、でも……」
沙那はまだなにか言いたそうだ。
「もういい、話は終わりだ。揺すってやりな、朱姫」
「はい」
朱姫が孫空女と沙那を揺すりはじめる。
また、ふたりが悲鳴をあげる。
「よく、俺たち種族のことをご存知ですね」
羅刹が感心したように言った。
「子供のころ、淫魔と暮らしたことがあるのさ」
宝玄仙の母親は解放的な女だった。
性の追及には貪欲で、淫魔も母親の旺盛な性への感心のひとつだった。
淫魔だけではなく、性に放蕩なほかの妖魔を連れてきては性の相手をさせたりもした。
だから、妖魔の性全体に関しても宝玄仙はよく知っている。
彼らの性は、人間に思われているよりも、ずっと人間の性に近い。
異種族で性交を行うことは珍しいし、滅多にない。
例外は、この淫魔だろう。
ただ、それは淫気の発散と吸収が目的であり、子供を産ませたりするなどあり得ない。
「……と、ところで、俺の修行の相手をしてくれると、さっき言いましたよねえ」
羅刹が上目遣いに宝玄仙を見た。
「ああ、わたしの要求を聞き入れてくれたらね」
「要求?」
「難しい話じゃない。修行の相手でも、情事でもなんでもしてやるし、欲しければ、勝手に淫気でもなんでも吸えばいい。その代わりに、わたしらを麒麟山の向こう側に連れて行くんだ。お前は、麒麟山の向こうから来たんだろう。『移動術』を遣えるなら、一緒に連れて行くがいいさ」
「麒麟山の向こう? つまり、あの炎の城壁の内側ということ?」
羅刹の顔に驚きの色が映った。
朱姫も沙那と孫空女をいたぶるのをやめて、こっちの話を聞く態勢になった。
沙那もさすがに、これ以上口を開く愚を犯そうとはしない。
「そうだよ、羅刹」
「妖魔の地になんの用があるのさ?」
「お前に関係ないだろう。ただ、お前は、わたしらを連れて行けばいいだけだ」
宝玄仙は大きな声をあげた。
羅刹がびくりと身体を震わせる。
「……不服はないね?」
宝玄仙は詰め寄った。
「そ、それができれば、もちろん、承知するんですが……」
羅刹が困ったような表情になった。
「できないって言うのかい? だったら、ここで死にな──。朱姫、じわじわとこいつの首を絞めるんだ」
「はい」
朱姫のふたつの『影手』は、羅刹の首に張り付いたままだ。
それが、だんだんと首を絞めるように接近するのがわかった。
「うわっ、わあっ──。う、嘘じゃない。嘘じゃないです。修行が終わるまで、妖魔の地に戻るのは禁じられているんです。本当です──。ひいいっ──」
拘束されたままの姿で羅刹が悲鳴をあげた。
宝玄仙は、手で合図をして、朱姫が『影手』で羅刹の首を絞めるのをやめさせた。
「修行ってなんだい?」
「だ、だから、性交術が上達するまで戻れないんですよ」
羅刹が情けない声をあげた。
「愚図愚図、言うんじゃないよ。性交術なんて、数をこなせば勝手に上達するよ。つまりは、女をいかせるだけのことだ。いままでに、何人かの女をいかせたことくらいあるだろう。それと同じようにやればいいんだよ。性交術は上手下手じゃない。愛情をもって接しな──。これだけがこつだ。ほら、これで修行終わりだ。納得しな」
「お、俺が納得したって駄目なんですよ。修行の成果を試す試験があるんです。それに合格しなければ、戻れないんですよ」
羅刹が言った。
「試験?」
「はい……。修行が終わったと思ったら、おふくろの友人の淫魔の女を呼び出して、性交をするんです。俺が彼女を絶頂させることができたら、修行が終わりとみなされて、妖魔の里と人間界を自由に出入りできる霊具をくれることになっているんです。修行が終わって試験に合格しない限りは、俺にかけられた術が解けなくて、妖魔の里側に戻れないんです」
羅刹の言葉に宝玄仙は舌打ちした。
「だったら、さっさと、その試験官の雌妖の淫魔を呼び出しな。なんていう妖魔だい?」
「
「いいから、呼ぶんだよ。雌妖も人間の女も同じだ。女陰に肉棒をしっかり入れて、一生懸命に接触している場所を押し揉むようにしてれば、いつかは気をやるよ。雌も女もそういう身体の作りになっているんだ。相手が達する前に、お前が達しないように我慢すればいいだけだ」
「で、でも、自信がないんです──」
羅刹が叫んだ。
宝玄仙は嘆息した。
「いままでに、女をいかせたことは?」
何気なく宝玄仙は訊ねた。
「それが……」
羅刹が俯いて小さな声で言った。
「もしかして、まだ、女を絶頂させたことがないのかい?」
「は、はい……」
羅刹の返事はますます小さな声になった。
「修行していたと言わなかったかい、お前?」
「そ、それが、やっぱり、いざとなれば勇気がなくて……。今夜こそ、やってやろうと度胸を決めて、ここにやって来たんですが……」
羅刹の残りの言葉は、羅刹の口の中から外には出ずに消えてしまった。
「修行を初めてどのくらいだよ、お前?」
「三箇月です」
「淫魔のくせに、三箇月も女に手を出さなかったのかい──?」
「だって、いざとなれば相手も嫌がるし──。それに、淫魔のくせに下手糞だと馬鹿にされると思って……」
羅刹は情けなさそうな口調でぶつぶつと言った。
「ちょ、ちょっと、待ちな。お前、雌妖でも人間の女でもいいけど、これまでに何人くらいと経験があるんだい?」
「ま、まだ……」
羅刹の声は聞こえるか聞こえないかのぎりぎりの声だった。
宝玄仙はしばらく絶句してしまった。
羅刹の顔は俯いたままだ。
宝玄仙は呆れてしまった。
これまでに数多くの淫魔と遭ったが、どいつもこいつも性の達人のような連中ばかりだった。
性に不慣れどころか、性経験のない淫魔など初めてだ。
いずれにしても、この根性なしの淫魔見習いをなんとかしなければならない。
要は、この意気地なしの淫魔が、修行の成果の試験官である鉄扇仙という雌淫魔を性行為で絶頂させればいいのだ。
そうすれば、この羅刹は麒麟山との行き来が自由になり、宝玄仙たちを麒麟山の向こうに連れて行くこともできるようになるだろう。
「わかったよ、面倒を看てやる」
宝玄仙は言った。
「えっ?」
羅刹が顔をあげた。
「鉄扇仙という雌妖は、いつでも呼び出せるのかい?」
「そ、それは、術を込めて呪文を唱えれば、向こうに伝わり、いつでも応じてくれることになっていますけど……」
「だったら、ここでわたしが実地で講義してやる。わたしたち四人がお前の相手だ。女のいかせ方を手取り足取り教えてやるよ。さっそく始めるから来な──」
宝玄仙はそう言って、羅刹を拘束していた糸を消滅させた。
「講義の場所は隣の部屋だ。行って服を脱ぎな、羅刹──。それから、まずは沙那だ。一緒においで。孫空女はとりあえず、服を着ていい。朱姫に縄を解いてもらうんだ。ただし、孫空女についても、朱姫についても、順番にこいつに抱かれてもらうからね」
宝玄仙は、孫空女と沙那を繋いでいた糸を消滅させた。
「な、なにするんですか、ご主人様?」
沙那が狼狽えた声をあげた。
「宝玄仙の特別講義だよ。お前は、女の身体の説明の教材だ。沙那は普通の性行為の練習相手としては感度が良すぎて不向きだけど、女の性感帯を教える人形としては、反応が大袈裟だから丁度いい。来るんだ」
「そ、そんなあ」
沙那は不満そうな声をあげた。
しかし、宝玄仙はそれには構わず、沙那の後手の縄を掴むと、ぐいぐいと隣の部屋に引っ張っていった。