※この作品はR-18です。

嗜虐西遊記【完結】   作:ドン・ドナシアン

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33  家畜と雌犬

「お、お蘭……、お、お前、いい加減に……」

 

 沙那(さな)が宝玄仙(ほうげんせん)の前に、張形と小壺を持ったまま近づくと、宝玄仙がわなわなと震え始めた。

 恐怖ではない。

 どうやら、あまりの怒りのためのようだ。

 全身が真っ赤になり、顔は憤怒そのものになっている。

 沙那は、ここまで激怒した宝玄仙に接したことがない。

 さすがに恐怖に竦んでしまった。

 

「なんじゃ? なにか言いたいことがあるのか、お宝? それっ」

 

 だが、その宝玄仙の身体が、沙那の目の前でがに股になった。

 しかも、両手の指を自分自身の性器に入れて、横に大きく拡げたのだ。

 宝玄仙の性器が膣の奥まで露わになる。

 さっき、聞いていた話によれば、宝玄仙の手足は、この烏巣禅(うそうぜん)こと、お蘭に操られているということだろう。

 これは、お蘭がやっているに違いない。

 

「早うせんか、沙那──。どんどんと塗れ。家畜と犬でそのひと瓶を使い切るのだぞ。よく考えて使え。その掻痒剤は強烈だからな。お前が気に入らん方にたくさん塗ってやるがいい」

 

 お蘭が笑った。

 いやな物言いをする。

 そんなことを言われれば、沙那はどちらにも油剤を塗りにくい。

 だが、ここで哀願したところで、お蘭が許すとも思えない。

 

「ひぎいっ」

 

 そのとき、突如として服の下のお尻に、針で刺されたような激痛が襲いかかった。

 思わず、手で押さえると、その手にも針の激痛が走る。

 

 さらに、二の腕──。

 乳房──。

 股間──。

 脇の下──。

 ありとあらゆる場所が、次々に痛くなる。

 

「あああっ、いやああっ、や、やめええっ、んぎいいっ」

 

 沙那は自分の身体を抱き締めるようにして、声を張りあげた。

 

「お前がもたもたしているからだ。やりたくなければ、いつまでもこれを続けるぞ。見えない針で刺す速度をもっとあげて欲しいか?」

 

 お蘭の冷酷な声に、沙那に心の底からの怯えが走る。

 

「さ、沙那──。いいから、薬を塗るんだ。こいつの結界ではなにもできん。殺されてしまうよ」

 

 宝玄仙が声をあげる。

 

「は、はい……」

 

 沙那はとりあえず、油剤を指ですくうと、宝玄仙の乳房にたっぷりと塗り込んだ。

 股間に塗るよりは、こっちがましだろう。

 すると、やっと痛みもとまる。

 

「手をとめるんじゃないよ、沙那──。手を休めたら針地獄だ。いいね」

 

 お蘭の声が飛ぶ。

 沙那は手を動かし続けた。

 何度も乳房に重ね塗りしていく。

 とりあえず、小壺の半分ほどを乳房に使った。

 

「……いい加減にしな、沙那。宝玄仙が自分で大きく股間を拡げて晒しているじゃないか。そこに詰め込まないか」

 

 お蘭の苦笑交じりの声がした。

 どうやら、沙那の思惑はばれていたようだ。

 仕方なく、股間に指を向かわせようとしち。

 

 そして、はっとした。

 たったいままで、半分ほどに減っていたと思って油剤が、すっかりと元の量に戻っているのだ。

 

「こ、これは──」

 

 沙那はびっくりした。

 すると、お蘭の大笑いの声がした。

 

「誰が乳房に塗っていいと言ったんだい。わしはその家畜の股に塗れと言ったんだ。余計なことをして少なくなった分は足しておく。わかったら、つまらない小細工は諦めて、その家畜の股に塗りたくるんだ。こいつが泣いて悲鳴をあげるくらいにな」

 

 お蘭が高笑いを続ける。

 沙那は唖然とした。

 

「い、いいから、遠慮するんじゃないよ……。い、いつも、お前たちを苦しめているわたしじゃないかい……。腹癒せのつもりで塗るといい……」

 

 宝玄仙が歯をがちがちを震わせながら言った。

 今度は怒りの震えじゃない。

 たったいままで乳房に塗り続けた薬剤の効果が早くも効果を発揮し始めたのだ。

 宝玄仙は相変わらずのがに股姿を強要されたまま、一方で苦しそうに胸を左右に動かしだした。

 

「家畜、どうした? まだ始まってもおらんぞ……。苦しければ、さっさと屈服して、わしの奴隷になると誓え。この家畜生活が死ぬまで待っておるけどな」

 

 お蘭が愉しそうに言った。

 とにかく、沙那は覚悟を決めた。

 宝玄仙の股間に油剤を塗り始める。

 

 しかし、この半分を使い切るのも容易ではない。

 沙那は宝玄仙の股間からお尻の穴にかけての部位に、少なくとも十回は重ね塗りをしなければならなかった。塗るというよりは載せるという作業に近い。

 さらにお蘭に厳しく命じられて、肉芽の内側にも塗ったし、膣そのものやお尻の穴にはこれでもかというほどに油剤を挿入した。

 最後に、二本の張形を宝玄仙の股間とお尻に挿す。

 

「うはああっ──。だ、だめええっ」

 

 さすがに宝玄仙が大きな悲鳴をあげて、全身を仰け反らせた。

 挿入した白い張形は、沙那が先端を挿すと、あとはまるで生きているかのように、勝手に奥まで入り込んで固定されてしまった。

 

「ああっ、はああっ」

 

 宝玄仙が膝をがくがくと揺する。

 それともとに、白い張形の脇からどっと熱い蜜が噴き出した。

 ふと気がつくと、白い張形は宝玄仙の前後の穴の中でぶるぶると淫らな振動とうねりを続けているようだ。

 しかも、かなりの激しさだ。

 そして、それに対する宝玄仙の反応も常軌を逸した感じだ。

 沙那はあまりの宝玄仙の反応に、たじろぎさえ覚えた。

 

「どうやら、前よりも尻穴の張形が効果があるようじゃな。遠慮はいらん。一度達しておけ……。まあ、その油剤は痒いだけじゃないからのう。その油剤をそれだけ塗れば、さすがのお宝も狂ったように身体を悶えさせるしかないということじゃな」

 

 お蘭が満足そうに言った。

 一方で、宝玄仙は、沙那の目の前で激しく身体を震わせて絶頂してしまった。

 すると、ずっとがに股状態だった宝玄仙の脚が脱力して、宝玄仙がその場に膝をついた。

 

「脚の操りを一時的に返しておこう。さっきも言ったが、井戸は里の入口だ。水を汲みに行って来い、お宝」

 

 お蘭が言った。

 

「くっ」

 

 跪いたままの宝玄仙が険しい表情でお蘭を睨む。

 だが、今度は悪態をつかなかった。

 覚悟を決めたように、無言のまま木桶に向かう。

 だが、木桶の前ではっとしたように、お蘭に顔を向けた。

 

「な、なにしているんだい、お蘭。手を自由にしておくれよ。木桶が持てないじゃないかい」

 

 宝玄仙が言った。

 だが、お蘭はそれを嘲笑で返した。

 しかし、それはともかく宝玄仙はすごい汗だ。身体も一時もじっとしていられないくらいに、小刻みに動いている。

 本当にあんな状態まで追い詰めている宝玄仙をお蘭は外にいかせるのだろうか……?

 

「なぜ、わしが家畜の仕事を手伝わねばならんのだ。お前の両腕は、わしのものじゃぞ。足を返してやっただけでも、ありがたいと思え──。口じゃ口──。口を使わんか、この家畜」

 

 お蘭が言った。

 宝玄仙の口惜しそうな歯ぎしりがここまで聞こえてくる。

 

 本当に姉妹か……?

 どう見ても、憎しみ合っているとしか思えない。

 いや、宝玄仙の実の妹だから、このお蘭なのだろう。

 とにかく、呆れてしまうほどのお蘭の残酷さだ。

 宝玄仙が盛大に舌打ちしてから、口で木桶の取っ手の部分を噛んで、立ちあがった。

 屋敷の外に向かう。

 

「そうじゃ、忘れておった。里の者がお前が何者がわからんといかんからな」

 

 お蘭がその場に座ったまま、宙に文字でも書くように指を動かす。

 

「んぎいいいっ」

 

 すると、宝玄仙が突如として悲鳴をあげて、その場に仰向けにひっくり返る。木桶は口から離れて、床に転がっていく。

 

「ご、ご主人様──」

 

 沙那は叫んだ。

 

「ご主人様、どうしたのさ?」

 

 ずっと見守っているかたちだった孫空女も声をあげた。

 

「や、やめええっ、あがああっ、んぎいいっ」

 

 宝玄仙の絶叫が続く。

 そして、沙那は見た。

 お蘭の手の動きをなぞるように、それに応じて、宝玄仙の腹に真っ赤な蚯蚓腫れの線が浮かんでいる。

 それはだんだんと文字のかたちになり、やがて、乳房の下から下腹部の手前にかけての場所に大きな文字となった。

 

 “家畜的宝(家畜の宝)”──。

 

 最後には、それは蚯蚓腫れの文字でそうなった。

 沙那は眼を見張った。 

 

「じゃあ、行って来い、家畜──」

 

 お蘭がまたもや大笑いした。

 宝玄仙は荒い息をしながら、なんとか立ちあがって、再び木桶を口で持つと、外に向かう。

 歩くあいだも、股間の媚薬と張形が苦しいのか、足はおぼつかなくよろけ、腰を引いたようにみっともない格好をしていた。

 

「ついでだ。手持ちぶさたの両手で乳房を揉み続けてやる。井戸まで行って戻るまでに、何回達したか覚えて報告するんじゃぞ、家畜。ちゃんと見張っておる。間違えたら、やり直しにする」

 

「んんっ、ん、んぐっ」

 

 宝玄仙が桶を噛んだまま悲鳴をあげた。

 両手が本当に胸を淫らに揉み始めたのだ。

 だが、宝玄仙はそのまま、外に出ていった。

 沙那は唖然としてしまった。

 

「ほら、呆けるでないわ、沙那──。犬にも薬を塗らんか。ぼうっとしているから、増えたぞ」

 

 お蘭の声──。

 そして、またもや、唖然とした。

 小壺の媚薬は、再びほとんど満杯になっている。

 

「んぎいいっ、あがあああ──」

 

 そして、今度は孫空女が絶叫をはじめた。

 孫空女の手足は、お蘭の道術によって、二の腕の半分から先と、太腿の半分から先が完全に消失している。

 だから、孫空女は四つん這いになるしかないのだが、その孫空女の背中に、さっきの宝玄仙のように蚯蚓腫れの文字が浮かでいる。

 

「そ、孫女──」

 

 沙那は声をあげて、孫空女に駆けよった。

 

「し、しっかり──」

 

 沙那が孫空女のところに辿り着いたときには、孫空女の白い背中には、“我是一個女的狗(私はただの雌犬)”という大きな文字ができあがっていた。

 

「こ、このう、な、なにすんだよ、くそったれがあっ──」

 

 孫空女がお蘭に噛みつかんばかりの罵倒を浴びせた。

 

「だ、だめよ、孫女」

 

 慌てて、孫空女を抱えて、口を塞ぐ。

 しかし、お蘭がにやりと微笑んだ。

 

「十分に元気そうじゃないか、犬。ご褒美じゃ。それっ」

 

 お蘭の手に人の頭ほどの液体の球体が浮かんだと思った。

 しかし、それはあっという間に消えてしまう。

 

「うわあっ」

 

 だが、次の瞬間、孫空女は悲鳴をあげた。

 沙那は孫空女を抱いたまま驚いた。

 

「な、なんてことを……」

 

 孫空女の顔がみるみる真っ白になる。

 沙那は呆然としてしまった。

 

「糞垂れはお前だ。大量の浣腸液を一気に尻の中に送られた気分はどうじゃ? 犬の厠は裏庭にある。沙那に薬剤を塗ってもらったら、行って来い。ただし、ここで洩らせば、一滴残らず、お前でなく沙那に口で掃除させる。それがいやなら、必死で尻に力を入れることじゃ」

 

 お蘭は酷薄に笑った。

 

「……なにをしておる、沙那? お前がそれを犬の股に塗り終わるまで、犬は動けんのだぞ。早く塗ってやらんか。それとも、犬を苦しめたくて、そんなにぼやぼやしておるのか」

 

 お蘭が言った。

 沙那ははっとした。

 

「そ、孫女、ごめん」

 

 沙那は一言声をかけると、今度は大急ぎで油剤を孫空女の股間に塗り始める。

 

「う、うううっ」

 

 手足が短くなっている孫空女が、沙那の指の刺激に反応して、ぶるぶると身体を振るわせだす。

 

「尻に塗るときは気をつけるのだぞ、沙那。あまり、刺激をすると、呆気なく垂れ流すかもしれん。その犬に送り込んだのは、かなりの強烈な排便剤でなあ」

 

 お蘭が笑った。

 そのあいだも、沙那は必死で薬を塗っていく。

 さっきの宝玄仙の比ではない。倍以上の薬剤を塗り込めたかたちになった。

 やがて、なんとか油剤がほぼ空になる。

 

「ああっ、こ、こんなの……。か、痒いっ……」

 

 孫空女が大きな声をあげた。

 余程に痒いのだろう。

 孫空女のお尻が左右に激しく動き続けている。

 

「じゃあ、裏庭じゃ、行って来い。鎖を引っ張ってつれていけよ、沙那」

 

 お蘭が手を振った。

 次の瞬間、孫空女には、いつもの赤い首輪とともに、さっき装着した犬の首輪に繋いだ鎖がついていた。

 

「……と、とにかく、行こう、孫女」

 

 孫空女は苦しそうだ。

 滝のような脂汗に加えて、あまりの苦痛に目に涙まで溜めている孫空女のために、沙那は鎖を引っ張った。

 さっき宝玄仙が出ていったのとは反対側の裏口に向かう。

 

「そうじゃ、言い忘れておった。そこで、今日の当番の男がふたりが待っておるからな。必ず、その者たちの前で粗相をせいよ。あちこちで垂れ流すではないぞ──。よいな、犬。どこでしようとも、その者たちの前がお前の厠だ。そこ以外ですれば、沙那はお前の糞を食わねばならんのだ。気をつけるのじゃぞ」

 

 裏口の前まで辿りつたとき、お蘭の声がした。

 

「な、なんだって──」

「そんなあ」

 

 孫空女だけでなく、沙那も悲鳴をあげた。

 あまりの仕打ちである。

 誰が待っているのか知らないが、孫空女に見知らぬ男たちの前で排便しろというのだ。

 

「いやなら、いつまでもそこにおれ。だが、いつまで我慢できるかのう。ぼやぼやしておると、液剤を追加するぞ」

 

 お蘭が言った。

 

「ち、畜生……。ううっ」

 

 孫空女が四つん這いで歩き出す。

 沙那は慌てて、鎖を持ったままついていく。

 そして、裏庭に着いた。

 

「おう、来たな──。こっちは、まずは赤毛がお蘭様の遊びの相手か」

「厠はここだ。準備しておいたから、跨ってやってくれ」

 

 裏庭に着くと、本当に村人の男がふたり待っていた。

 里を歩いているときにはわからなかったが、ふたりの首には「奴隷の首輪」が嵌まっている。以前、沙那が宝玄仙に嵌められていた「服従の首輪」とは違うが、本当の奴隷に装着するものだ。

 これを嵌めると、主人の命令に逆らったときに苦痛が生じるだけでなく、逃亡や主人への攻撃もできなくなるというもののはずだ。

 ここは、お蘭の里なので、おそらく、ここにいる全員がこうやって、お蘭の奴隷にされているに違いない。

 それにしても、お蘭は、本当に実の姉の宝玄仙を本物の奴隷にしたいのだろうか……?

 

 そして、ふたりが示した地面には大きな穴が開いている。

 嫌味なことに、かなり広く作ってある。

 いまの孫空女には、ここに跨るためには、限界まで脚を拡げないとならないだろう。

 また、そのそばには、木桶に入った水も準備されている。

 しかも、すぐ横には井戸まであった。

 お蘭は宝玄仙に里の入り口まで、わざわざ水汲みを強要したが、なんてことはない。ここにもあったのだ。

 

「お、お願いよ。よそを向いていて。後生よ」

 

 とにかく、沙那は頼んだ。

 一方で、孫空女はもう言葉を喋ることもできないのか、呻き声のような声を出すだけで、なにも言わずに穴に跨ろうとしている。

 

「そうはいってもなあ……。お蘭様にしっかりと、犬の排便を見るように命令されているしな。そのあとは、尻を洗うことも命令されている」

 

「……もっとも、あんたが俺たちに悪戯でもさせてくれるなら、そのあいだ、眼をそむけるかもしれねえぞ。俺たちだって、いくら美人とはいえ、大便を垂れ流すのを見たいわけじゃねえ」

 

 男たちがげらげらと笑った。

 

「い、いいわ……。じゃあ、こっちに来て……。その代わり、彼女のお尻はわたしが洗うわ……」

 

「いいぜ」

 

 男たちが頷く。

 沙那は穴から少し離れた場所に男二人を導いた。

 男たちが沙那の身体を触り始める。

 気色の悪い感覚に、沙那は歯を食い縛った。

 

「なんだ、これ? 随分と股が濡れているじゃねえか」

 

 卑猥な表情をしている男のひとりが沙那の下袴に手を入れながら首を傾げた。

 もうひとりは、沙那の上衣に下から手を入れて、乳房を無遠慮に揉んでいる。

 

「う、うるさいわねえ、おしっこよ」

 

 沙那は怒鳴った。

 そのとき、孫空女の泣くような小さな声とともに、水便のようなものが激しく噴き出す音が耳に入ってきた。

 

「尻を出しな」

 

 男たちが沙那の下袴をおろして、股布をほどいて取り去った。

 すぐに、お尻の下に男根が挿し込まれて、女陰に深々と入ってくる。

 

「んっ、んんっ」

 

 思わず声が漏れた。

 律動が始まったのだ。

 

「随分と感じやすい穴だぜ」

 

 沙那を犯している男が嬉しそうに言った。

 

 

 *

 

 

「う、ううっ、んふうう」

 

 沙那はまたもや気をやってしまった。

 お蘭の卑劣な意地悪から、少しでも孫空女を楽にしてやろうと、半ばやけになって、裏庭で待っていた男たちの相手を引き受けたが、沙那は改めて、自分の身体が宝玄仙から与えられる調教によって、すっかりと淫らな身体になってしまっていることを悟った。

 

 あまりにも呆気なく気持ちよくなりすぎるのだ。

 おそらく、乳首と肉芽の根元に喰い込んでいる『女淫輪』という淫具のせいだと思う。この淫具は女を常に発情状態にする怖ろしい霊具であり、沙那はこれを付けっ放しにされている。

 普段はなんとか普通にしていられるが、それは沙那が武術の鍛錬のおかげで気を操ることができるので、それでなんとか抑えているのだ。

 しかし、ひとたび発情すると、その気が暴発したようになり、いまのように馬鹿みたいに身体が敏感になる。

 そのためだと思う。

 

 とにかく、ちょっと前後から刺激されて、たて続けに三回くらい絶頂をしてしまうと、あとは全身が官能の火がついたようになってしまった。それからは、沙那はただただ、なにもできずに狂態を示してしまうだけだ。

 

 いまは、沙那は壁に両手をつけて、お尻を背後に突き出すような恰好で、後ろから男に犯されている。ずっと、この状態で男たちの相手をさせられているのだ。

 服はその辺に散らばっている。

 最初は下だけ脱いで相手をしていたが、最初の男が交代して、相手を変わったときに、全部脱がされた。

 そうやって、交代で沙那を犯しているのだが、実際にはどちらの男も一度も達していない。

 沙那の反応がよすぎて、その暇がないらしい。

 とにかく、いまはちょうど一巡したところだ。

 

「こいつ、ちょっとばかり擦っただけで、あっという間にいっちまうのな。実に愉しい玩具だぜ」

 

 後ろから沙那の股間を貫かせているその男が、沙那の股間を律動しながら笑った。

 沙那は、なんでこんなに感じてしまうのだろうと思いながら、発作のような苦しさが収まるのを待とうとした。だが、男がそんな余裕を沙那に与えてくれない。

 さらに、助走をつけるように襲いかかってくる。

 またもや、沙那は頂上に向かって押しあげられていった。

 

「ま、待って、ちょ、ちょっとだけ、待って」

 

 さすがに沙那は音をあげた。

 しかし、男は沙那が息をするのを邪魔するように、胸を揉み、腰を動かし、舌で首筋を刺激する。

 沙那は狂乱した。

 

「ほらほら、それで俺たちを満足させられんのか?」

 

 すると、もうひとりの男が近寄ってきて、背後から貫かれている沙那の肉芽を前側から指で揉むように刺激した。

 

「ひいっ──」

 

 沙那は身体を仰け反らせて悲鳴をあげた。

 だが、その動きがまたもや、沙那に快感を与えてくる。

 沙那は苦悶の声をあげ続けた。

 

「おいおい、くすぐってぇぜ」

 

 沙那を犯している男が苦笑まじりに言った。

 だが、沙那はそれどころではない。

 

「ああっ、ああんっ、そ、それは、だめえっ」

 

 がくがくと腰を震わせて、またもや気をやってしまう。

 もう情けなくて仕方がない。

 

「ちょ、ちょっとだけ休ませて、お願いよう──」

 

 沙那はついに悲鳴をあげた。

 

「ははは、どうした? 俺たちをすっきりとさせてくれるんじゃないのかい。さっさと終わらねえと、相棒が手持無沙汰で待ってんじゃねえかよ」

 

 前から気紛れのように沙那を責めた男が離れてくれた。

 安堵したが、すぐにはっとした。

 その男が孫空女の方に向かったのだ。

 

 糞便を穴にさせられた孫空女は、お蘭の道術により手足を短くされてしまって、自分で始末をすることもできないでいる。しかも、そのお蘭の命令で掻痒剤の媚薬をたっぷりと股間なお尻に塗り込んでいるので、いまでも苦しそうだ。

 穴の横で汗みどろになって泣きそうな顔で呻き声をあげている。

 

「心配するなよ。俺が始末しておいてやるぜ。ほら、赤毛、こっちに来な」

 

 沙那の相手をしていなかった側の男が木桶に入れた水を持って孫空女に近づくのが見えた。

 孫空女がぎょっとして竦んでいる。

 

「ま、待って、約束が違うわ──」

 

「なにが約束だ。お前がふたりの男を相手してやるからと言ったから見逃してやったんだ。それなのに、自分ばかり達しやがって、ひとり分だって終わらねえじゃないか」

 

 後ろの男が股間を突きながら笑った。

 沙那はほとんど脱力している最後の力を振り絞って、男の股間を引き抜いた。

 

「おっ?」

 

 男が意外そうな表情で目を見開いたときには、沙那の拳が男の腹に喰い込んでいる。

 呻き声さえもあげずに、その男は失神してその場に崩れ落ちた。

 

「うわっ、なんだ?」

 

 もうひとりの男がぎょっとして身を竦めている。

 だが、沙那は飛びかかって、その男の首にも手刀を叩きつけた。

 糸を切断した操り人形のように、そいつも崩れる。

 

「そ、孫女、大丈夫……。ごめん」

 

 沙那は木桶で短くなっている孫空女の股間を洗い出す。

 ついでに、塗りたくった媚薬を洗い落とすようにした。

 

「う、ううっ、さ、沙那、あ、ありがとう……。で、でも、もう……もうちょっと……ゆ、ゆっくり」

 

 孫空女も沙那の指で感じてしまうのか、沙那の指が触れると、とても色っぽく悶え始めた。

 たじろいだが、その孫空女の緊張感のなさが、沙那を不思議にほっとさせる。

 沙那は、ちょっと孫空女に悪戯したくなった。

 

「我慢しなさいよ、孫女……。だって、きれいに洗い落とさないと、大変なことになるのはわかっているでしょう」

 

 沙那はわざと孫空女のお尻の穴に指を挿し込んで二、三回続けて素早く指を出し入れしてあげた。

 

「んひいっ、さ、沙那──。わ、わざとやっているよね。ぜ、絶対だよ──」

 

 孫空女がびくびくと快感を込みあげた感じになって、全身を震わせる。

 沙那もなんだかおかしな気分になる。 

 ただ、実際のところ、こうしているあいだにも、烏巣禅(うそうぜん)、すなわち、お蘭がやって来るかもしれないのはわかっている。

 実は、そんなに悠長なことをしている状況でもない。

 沙那は、遊ぶのやめて、必死になって、孫空女の痒み剤を洗い落としていった。

 やがて、孫空女もやっと落ち着きを取り戻した感じになった。

 

「だ、だけど、これ、どうするの?」

 

 孫空女が顔を向けた、

 その視線の先は、完全に白目を剥いて気を失っているふたりの男だ。

 お蘭が見れば、烈火のごとく怒るのは目に見えている。

 沙那としても、かっとして思わず手が出てしまったが、冷静に判断すれば、こんなことをすれば、お蘭がなにをするかわからない。

 それを免れるための妙案などあるわけない。 

 

「さて、どうしようか? いっそのこと、逃げちゃう?」

 

 沙那はお道化て言った。

 

「逃げるってなにさ? お蘭のところから? まさか、ご主人様のところから?」

 

「両方よ──。逃げて、どっかでふたりで暮らそうよ。あんたが髪を短く切って、旦那さんということでどう? それとも逆がいい? 髪でも染めて、名前も変えて、夫婦ってことにでもしとけば、案外にわかんないじゃない。わたしをお嫁さんにしない? 結構、尽くすよ」

 

 沙那は笑って言った。

 それで孫空女も、沙那が軽口を言っているのがわかったようだ。

 孫空女の顔がふっと緩んだようになった。

 つまりは、沙那としても、これはどうしようもないと言っているのだ。

 考える限り絶望的な状況だし、もはや、お蘭がこれを見てどうするかなど、怖ろしすぎて考えたくもない。

 孫空女もわかってくれたようだ。

 彼女もぷっと噴き出した。

 

 だが、一方で沙那の心にちょっとしたことがよぎった。

 宝玄仙など見捨てて、孫空女とふたりで逃げてしまおうというのは冗談ではあるものの、口に出してみると随分と魅力的な考えのようにも思えたのだ。

 孫空女と夫婦のふりをして、どこかで静かに暮らす……。

 まったくいい案だ。

 本当に……。

 それができるなら……。

 

「それはいいけど、これはどうするのさ。お蘭に戻してもらわないと、あたしの手足はずっとないままだよ」

 

 孫空女は完全に短くなっている四肢を動かした。

 沙那は首を傾げた。

 

「だったら、わたしが飼い主、あんたは人犬。大切にしてあげるから」

 

「やだよ、そんなの──」

 

 孫空女が笑った。

 そのとき、大きな音がした。

 憤怒の形相をした烏巣禅が立っていた。

 いや、老人に変身しているお蘭か……。

 

「お前の仕業じゃな、沙那?」

 

 お蘭が言った。

 沙那は観念して、「そうだ」と言おうとした。

 しかし、急に、お蘭に遮られた。

 沙那は怪訝に思った。

 お蘭がにやりと笑う。

 

「……いや、やはり違うな。これは犬の仕業じゃ。間違いない──。犬、この罰は重いぞ。庭の樹に首に縄をかけて吊るしてやろう。心配せんでも、わしの結界で、死にかけたら蘇生して回復術で治してやるようにする。つまりは、死の苦しみを何度も何度も繰り返し味わうというわけじゃ。死にはせんというのに、人というのは、死の感覚を何度も味わうと狂ってしまうのじゃ。刻限は明日の朝までじゃ。そこれまでに狂うことがなかったら、次の刑罰を与えてやる」

 

 お蘭が言った。

 沙那はびっくりした。

 

「なにを言っているのよ、お蘭……様……」

 

 呼び捨てになりかけて、慌てて“様”を付け加える。

 

「……わたしがやりました。孫女にできるわけがないじゃないですか」

 

 お蘭がなぜ、孫空女の仕業だと口にしたのかわからない。

 沙那がやったのは明らかなのに……。

 

「んぎいいいいっ」

 

 その瞬間だった。

 凄まじい電撃が沙那に襲い掛かってきた。

 沙那は素っ裸のまま、ひっくり返ってのたうち回る。

 孫空女の悲鳴のような叫びが聞こえた気がしたが、自分の悲鳴でよく聞こえない。とにかく沙那は暴れ続けた。

 すると、視界が一瞬にして消滅した。

 気がつくと、広間の中に戻っている。

 道術か──?

 

 それでも、電撃は止まらない。

 やがて絶叫で声が枯れ、手足が麻痺して動かなくなる。

 しばらくすると、すっと視界が消えていった。

 そのとき、やっと電撃が止まった。

 

「ひっ、ひっ、ひっ……」

 

 沙那はこれ以上ないというほどに目を剥き出しにして、ぶるぶると身体を震わせていた。

 身体がそんな反応をして止まらないのだ。

 これまでに経験したことがないような電撃だった。

 これに比べれば、宝玄仙が「調教」で与える電撃は優しいのだと思った。

 痛みなんてもんじゃない。

 一瞬で沙那を恐怖に突き落とすほどのものすごい死の苦しみだった。

 

「孫空女がやったという事実を白状する気になったか、沙那?」

 

 再び部屋の奥側に胡坐で座っているお蘭が酷薄な口調で言った。

 沙那は、やっとお蘭の陰湿な責めの意図を理解した。

 

 お蘭は、里の男ふたりに暴力をふるったのが沙那だと承知しておいて、沙那に無理矢理に「孫空女の仕業だ」と口にさせようとしているのだ。

 それを理由に、孫空女を折檻する。

 ただ、責めるだけじゃなく、そうやって沙那と孫空女の関係を潰してやろうとしているのだろう。

 なんという意地悪だろう。

 沙那は、死んでも、そんなことをいうかと心に決めた。

 

「まだ、孫空女を庇っているのか? でも、無駄じゃ」

 

 再び電撃が全身を襲った。

 今度はさっきよりも強かった。

 沙那の心身からすべての余力と気力のすべてが奪い去られた。

 床の上で、陸に落とされた魚のように、沙那は暴れ続けた。

 そして、電撃がとまる。

 

「孫空女です……。ただ、それだけを言えばよい……。そうすれば、お前には楽な役割を与えてやろう。家畜と犬をわしと一緒に調教する役目じゃ」

 

 お蘭が言った。

 もはや、なんのためにお蘭がそんなことを言っているのかわからなかった。

 ただ、考えられるのは、お蘭は、宝玄仙と沙那と孫空女の関係をぐちゃぐちゃにしたいと思っているということだ。

 ずっとやっているの責めの内容で、そんなお蘭の意図が見え隠れしている気がする。

 

「わ、わたしよ──。くだらないこと言うんじゃないわよ、くそったれ」

 

 さすがに沙那にも、もう計算や駆け引きなどない。

 ただの意地だ。

 耐えることに何の意味があるのかもわからないが、絶対に屈服してはならないという決意だけはある。もしも、ここで沙那が孫空女のせいだと口にしてしまえば、沙那は自分を二度と許せない気がした。

 

「うぎゃあああ──」

 

 またもや電撃──。

 悲鳴が自分の口から迸った。

 そして、長い──。

 いつまでも終わらないような電撃がひたすら続く。

 もっとも、実際には沙那がそう感じているだけで、そんなに長時間ではないのだろう。

 継続する苦痛には、人は慣れてしまう。

 慣れさせないためには、断続的な苦痛こそがもっとも効果的なのだ。

 沙那の一部の、まだ冷静な部分が沙那にそれを教えていた。

 電撃与えて、それを切る。

 しかし、間髪入れずに今度は再開する。

 沙那なら、相手の心を折るためにそうする。

 

 そして、がくりと突然脱力する。

 沙那は電撃が一時的に止まったことを知った。

 しかし、すかさず電撃が襲いかかる。

 思ったとおりだ。

 沙那はちょっとだけほくそ笑んだ。

 絶叫しながらそれを思った。

 しばらくすると電撃がとまる。

 だが、またすぐに始まるだろう。

 

 案の定、息を吸う時間だけ挟むと、また始まった。

 沙那は吠えた。

 

「まだ、やるか、沙那? 孫空女の仕業じゃな? そう言え」

 

 お蘭が愉しそうに笑った。

 電撃がとまった沙那は、床に倒れたまま歯噛みした。

 

「さ、沙那──。ち、畜生──。あたしがやったよ。そういうことにしたいんだろう──」

 

 すると、孫空女の叫び声がした。

 裏庭から四つ足のままやってきたようだ。

 さっき、転送術でこっちに沙那が送られたときには、孫空女は置いてけぼりにされたのだろう。だが、沙那とお蘭の会話は聞こえていたみたいだ。

 

「なんじゃ、その手足でよく戸が開けられたのう」

 

 お蘭が笑った。

 しかし、孫空女は一目散に、獣のようにお蘭に突進していく。

 なにをするつもりだ──?

 沙那はびっくりした。

 

「ふん」

 

 お蘭が不快そうに鼻を鳴らすのは聞こえた。

 次の瞬間、孫空女の首から下が消滅し、首から上の生首だけになった。

 沙那は眼を見開いた。

 

「わわあっ、わっ、な、なに?」

 

 勢いのままころころと床を転がる孫空女の首から、驚愕と恐怖の声が出る。

 

「感謝せいよ。糞尿をしなくてよい身体になったんじゃ。その辺に転がっておれ。ほら、お前の身体はここじゃ」

 

 お蘭の手に真っ白い人形があった。

 ほんの手の平くらいののっぺらぼうの人形だ。ただ、首の上の頭に当たる部分がない。沙那はぎょっとした。

 すると、お蘭が自分の前に小さな壺を出現させた。

 蓋を開いて、どぼんと人形を中に浸ける。中には液体が入っていたようだ。その壺にすぐに蓋をした。

 

「んふうっ、んふうう、うわああ──」

 

 首だけの孫空女が絶叫した。

 

「ひやっ、ああっ、はああっ、あああああっ」

 

 そして、すぐに嬌声そのものの声が迸る。

 その顔は真っ赤だ。

 だが、孫空女はどうすることもできずに、ただただ欲情に追い詰められたような悲鳴をあげるだけだ。

 お蘭が立ちあがって、その孫空女の生首の髪の毛を掴んで持ちあげた。

 天井に縄を吊るして、孫空女の髪を縄で結んでしまう。

 

「や、やああ、やめて、ああ、あああ、ああああっ、はひいいい」

 

 天井からぶらさげられた孫空女の口が悲鳴を絶叫し続ける。

 

「壺の中に、このお蘭特性の強烈な媚薬が入っていて、しかも、人形の表面を壺に詰め込んだ魔蛭が肌を舐めまわしておるのだ。ひと刺し、ひと刺し、人形の身体に媚薬の毒液で感度を上昇させながらな……。犬──、いや、首か……。首、人形ではとまる心臓もないから、気絶もできなければ、死ぬこともできん。狂うまで、そこで千回でも、一万回でも絶頂しておれ」

 

 お蘭は嘲笑った。

 沙那は唖然とした。

 

「待たせたな、沙那──」

 

 お蘭が沙那を見た。

 ぎょっとした。

 だが、そのお蘭の顔が曇った。

 

「ちと、うるさいのう、首──。黙っておれ」

 

 部屋の中に孫空女の悲鳴が迸り続けていたのだ。

 しかも、ひたすら哀願を乞う言葉も洩れていた。

 あの孫空女があれほどに必死で泣き叫ぶなど、余程につらい責めを小壺の中で受けているに違いない。

 限度を超えた快感というのは、限度を超えた苦痛に等しいというのは沙那も知っている。

 そして、お蘭が手をひと振りした。

 孫空女の声が消失した。

 だが、苦悶の孫空女の顔の表情は変わらない。

 こうやって、視線を向けているあいだにも、二度、三度と絶頂をしている様子なのがわかる。

 

「うがあああ──」

 

 だが直後に、全身を引き千切るかと思うような電撃の苦痛が沙那に襲いかかってきた。

 電撃が消えるまでのあいだ、沙那は声をあげ続けた。

 悲鳴を出し続けていないと、頭がどうかなりそうだったのだ。

 そして、また止まる。

 だが、間髪入れずに、すぐに電撃をかけられる。

 

 それが十回……。

 

 そして、十五回と続く……。

 

「も、もういやああ──」

 

 沙那はついに泣き出してしまった。

 ぼろぼろと涙が落ちる。

 あまりに苦しさに、いっそ殺してくれとさえ思った。

 

 そのときだった。

 蹴られるような大きな戸の音がして、誰かが入ってきた。

 沙那は涙で滲む視線を向けた。

 木桶を口で咥える宝玄仙だ。

 しかし、驚いた。

 宝玄仙の身体は、びっくりするくらいの精液でいっぱいだったのだ。

 全身だけじゃなく、黒い髪が顔にもたくさん精液がかけられている。

 

「な、なんだい、これは──?」

 

 宝玄仙が木桶をその場に置くと、孫空女と沙那の姿を見て唖然としたような声ををあげた。

 

「もどったか、家畜──。ほう、いい姿じゃのう。全身を精液まみれにして。どうやら、わしのところの住民は、お前を可愛がってくれたようじゃな」

 

「ふん──。どいつもこいつも、ど変態どもだよ。わたしの姿を見ると、争って犯そうとしやがる。だけど、張形に阻まれてできないとわかれば、身体を弄って邪魔をするは……。精液をかけるは……。さんざんだったよ。それよりも、この状況はなんなんだい──。答えるんだよ、お蘭──」

 

「あまり遅かったからな──ちょっとばかり、お前の供を責め殺そうとしただけじゃ……。まあ、正確には責め狂わすかな。さすがのお前でも狂った人間を元には戻せまい?」

 

 お蘭がけらけらと笑った。

 

「ふ、ふざけるんじゃないよ──。こいつらに手を出すんじゃない。お前の目的はわたしだろう──」

 

 宝玄仙が激怒して叫んだ。

 

「わしの里でわしがなにをしようが勝手じゃ。お前はわしに慈悲を乞うことしかできないんだ。それを自覚せい」

 

 お蘭が言った。

 宝玄仙の顔が屈辱で歪んだ気がした。

 しかし、その顔が真っ白になる。

 沙那はどきりとした。

 あれは、感情が限界まで昂ぶったときの宝玄仙の顔だ。

 なにかするつもりだ……。

 沙那は思った。

 

「じゃ、じゃあ、お前に慈悲を乞えば……。こ、こいつらには手を出さないね」

 

 宝玄仙が静かに言った。

 

「なに?」

 

 お蘭はきょとんとした。

 宝玄仙の口走った言葉の意味が理解できなかった感じだ。

 しかし、宝玄仙がその場に両ひざをついた。

 そのまま床に正座をする。

 

「このふたりを殺さないでおくれ。こ、このとおりだよ──」

 

 宝玄仙が床に頭をつけて土下座をした。

 正確には、両手はだらりと両脇に垂れたままだったので、頭だけを床に擦りつけたのだが、とにかく、沙那は驚愕した。

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