誰かが話をしているのが聞こえた気がした……。
男の声……。
そして、女の声……。
なにかの言い合いを続けている。
やがて、聞き覚えのある鈴の音がした。
宝玄仙ははっとした。
この鈴の音を聞いて眼が覚めたとき、道術力が奪われていたのだ。
慌てて起きようとした。
しかし、身体が動かない。
全身が綿にでもなったかのように力が入らないのだ。
すぐに誰かが宝玄仙の身体に触れて、首になにかを嵌めた。
自分の着衣が誰かによって脱がされていく気配も感じる。
だが、それで終わりだった。
宝玄仙の意識は再び闇の中に吸い込まれた……。
意識が戻ったとき、宝玄仙は自分がまったくの全裸であることに気がついた。
首が重い。
首輪……?
触ろうとしたらじゃらりと音がした。
ふと見ると自分の両手に革の枷が嵌められ留め具で束ねられている。
その束ねられた手首に長い鎖が繋がっているのだ。
その音が鳴ったのだとわかった。
ぎょっとした。
やっと自分の四肢が拘束されていることを悟った。
両足首にも革の枷がある。
足首は束ねられていないが、その代わりに両方の足首にも長い鎖が繋がっていた。
「やっと眼が覚めたかい、宝玄仙?」
女の声がした。
顔をあげた。
そこには女がひとりいた。
身体の線がはっきりとわかる黒い布の上衣と下袴を履いている。
その女は背凭れに体重を預けて、脚を組んで宝玄仙を見ていた。
知らない女だ。
部屋にいるのは宝玄仙と眼の前の女だけだった。
微笑んでいる女の口元から、その女の気の強さが滲み出ていた。
宝玄仙がいるのは、窓のないどこかの地下室のような広い部屋だ。
なんとなく宝玄仙は、ここが玄関から『結界罠』で跳ばされることになったあの屋敷の地下室でなはいかと思った。
一緒にいたはずの供たちの姿はない。
部屋の壁際にはたくさんの拷問具が所狭しと並べられていて、一見してここがどこかの拷問部屋だとわかる。
かなり広い部屋で何人もの犠牲者がここで同時に拷問を受けれそうだが、いまは宝玄仙が部屋の真ん中にいるだけだ。
「他の者はどこで、お前は誰だい──?」
宝玄仙は叫んだ。
返事の代わりに、がらがらと手首に繋がった鎖が動き出した。
「な、なんだい?」
思わず声をあげた。
しかし、手首の鎖はあっという間に宝玄仙を宙に吊りあげて両脚が完全に浮かぶまで引き揚げられた。
足首の枷に繋がった鎖は床の留め具に繋がっていて、宝玄仙の脚を左右に固定されていた。
宝玄仙の身体が宙に浮くに連れて、左右に分かれて床に繋がっている鎖が宝玄仙の股を大きく開く。
宝玄仙は天井から鎖で吊りあげられて、左右に大きく脚を拡げた格好で宙に固定されてしまった。
「なかなか、いい身体じゃないか、宝玄仙。わたしも数多くの奴隷を扱ったけど、お前のように素敵な身体をした奴隷は初めてだよ。その堂々と張り出した胸もいいし、後ろに突き出した尻の形もいい。身体には染みも傷もひとつないし、どこもかしこも柔らかそうで、男でも女でも、思わず触ってみたくなるような身体だよね。その身体を傷だらけできるかと思うとぞくぞくするよ」
女が立ちあがって、部屋の真ん中に鎖で宙吊りになっている宝玄仙に近づいた。
宝玄仙はそのとき、その女が腰の後ろに乗馬鞭をつけていることに気がついた。
その女がすっと宝玄仙の括れた腰から脇腹にかけて軽く撫ぜあげた。
「はうっ」
強烈な刺激が走った。
宝玄仙は戸惑った。
眼の前の女はただ触っただけだ。
それなのにいまの感触はなんなのだ。
そして気がついた。
全身がこれ以上ないというくらいに火照っている。
なにもしないのに、身体から汗が滲み出てくる。
おそらく強い媚薬を飲まされている……。
「反応もいいねえ……。よがり顔が可愛い女奴隷は貴重だよねえ。お前の場合は、崩した顔でさえも美しさを損なわないんだねえ。それだけの美貌に果てしなくも強い道術……。お前みたいな人間の道術遣いは苦労なんてしたことないだろう? だが、今日からお前は、わたしの女奴隷だ」
「ど、奴隷……?」
この頭のおかしそうな女は、なにを言っているのだ……?
「ああ、お前がこれまで味わったことがないような屈辱と恥辱を与えてやるよ……。もっとも、いつまでもつかわからないけどね。これまでのわたしの奴隷の最高記録は半年だ。半年以上精神を持ち堪えた奴隷はいなかったよ。大抵は正気を失ってしまうのさ。そうなればもう終わりだ。殺して食料として払い下げるだけだ」
「食料?」
「そうだ──。お前が殺されないためには、一生懸命に正気を維持することだ。覚えておきな。狂っちまったら、わたしは容赦なく処分するからね」
女が宝玄仙の右の乳首に指を伸ばして、下から弾くように小刻みに動かした。
さらにもう一方の手が宝玄仙の無毛の股間に指を這わせる。
「あふっ……くっ……あ、ああっ」
堪えようと思うが襲いかかる官能が強すぎる。
どんな媚薬を飲ませたかはわからないが、なんでもない指遣いが、宝玄仙の全身の官能を呼び覚ましどんどん花芯に蜜を溢れさせていく。
「気持ちがいいのかい、奴隷? どうやら、乳首が弱いようだねえ。だったら、いいものがあるよ」
女が一度宝玄仙から離れて部屋の隅に向かった。
そして、すぐに戻ってくる。
手になにかを持っている。
「な、なにするんだい?」
嫌な予感がして宝玄仙は思わず声をあげた。
女は薄笑いを頬に浮かべて、宝玄仙の右の乳首になにかを装着しようとしている。
宝玄仙は身体を捻って避けようとするが、それは空しい抵抗だった。
きゅっと乳首になにかが嵌った。
同時に繊毛がさわさわと宝玄仙の乳首をくすぐった。
「はうっ──」
宝玄仙は拘束された身体を大きくのけ反らせた。
「ひいっ」
だが、その動きでまた乳首がくすぐられる。
乳首が弱い宝玄仙は、それでまた反応してしまい、身体が揺れて乳首に柔らかい繊毛の刺激が襲いかかる。
「ああっ、あふうっ」
宝玄仙は堪えきれずに嬌声をあげた。
右の乳首に付けられたのは指輪のような金属の輪っかだ。
それが乳首に根元に嵌められている。
しかも、その輪っかには短い繊毛が生えていて、宝玄仙の乳首を包み込むように先端が伸びている。
それが宝玄仙が身動きするたびに刺激をするのだ。
「片方じゃあ、釣り合わないからね。もうひとつにもつけてやるよ」
左の乳首にも手が伸びた。
「ひいっ」
今度は強く捻られたような痛みに近い刺激があった。
眼を落とすと左の乳首には、蒼い透明の粘性の物質で包むようなものをつけられている。
右に装着されたくすぐるような刺激ではなく、強くねじるようにそれが動く。
どうやら、右の繊毛の動きに連動して左の乳首にねじるような刺激を与えるようになっているようだ。
つまり、宝玄仙が小さな動きをするたびに、左右別々の刺激を同時に乳首に加える淫具らしい。
「お、お前……」
宝玄仙は荒い息をしながら女を睨んだ。
「それは、お前がわたしの奴隷になったお祝いにお前にやるよ。死ぬまでそれを装着してな。大した刺激じゃないはずだけど、四六時中、乳首に刺激を受けながら生きるというのも悪いものじゃないさ。おそらく、お前がこの屋敷で生きている間は、起きていようが眠っていようが、その乳首の勃起が収まることはないだろうね」
「ふ、ふざけるんじゃ……あああっ」
怒鳴りあげようと思ったが、大きく息を吸っただけで、左右の乳首から蕩けるような刺激が走り、宝玄仙は喘ぎ声をあげてしまった。
女が大笑いした。
「まあ、早く馴れることさ。それに、それはわたしの優しい気持ちの表れなんだよ、宝玄仙。そういうものを装着していないと、お前たちはとんでもないことになるんだよ」
「と、とんでもないことってなんだい?」
思わず宝玄仙は訊き返した。
すると女がいきなり、腰の鞭を抜くと、柄の部分をいきなり宝玄仙の女陰に突き挿した。
「はうううっ──」
宝玄仙は身体を跳ねあげた。
両方の乳首の淫具がその動きで責めを開始する。
堪らず宝玄仙は身体を左右に悶えさせてしまう。
すると、その動きで乳首の淫具が宝玄仙を責め、また新しい刺激を与えてくる。
宝玄仙が身悶えさせてしまうので、宝玄仙はどうしても女陰に突き挿された鞭の柄を喰い締めて腰を振るように動いてしまう。
その刺激がまた身体を反応させてか快感を呼び、また乳首が責められる……。
これは、堪らない。
身体の力が抜ける……。
しかも、女が意地悪く女陰に挿した鞭の柄を小刻みに動かすのだ。
媚薬の影響のためか、宝玄仙は激しい淫情に泣くような刺激を受け続けた。
そうやって宝玄仙は、しばらく止められない悪循環に陥ってしまい宙吊りの身体を踊らせ続けた。
「いやらしい身体をしているからだよ……。まあ、いいさ。いずれにしても覚えておきな。この春嬌の屋敷奴隷は、いつ女陰になにかを挿入されてもいいように、常に股間を濡らしておかなければならない。それが掟だ」
「お、掟って……ああ、ああ、はうう──」
「とにかく、四六時中股ぐらを濡らしておく──。それが決まりだ。淫具でもつけておかなければ、常に発情したままというのはなかなかできるものじゃないからね。乾いた女陰だって、容赦なくなんでも突き挿すけど、それで壊れてしまった女奴隷も多かったんだ。お前の場合は、わたしの情けだよ。淫具を装着させてやる。そんなことで壊れてしまったらもったいないからねえ」
宝玄仙が責めの悪循環に陥って激しく身悶えするあいだ、女はそんなことを喋り続けた。
しかも、女陰に喰い込ませた柄を巧みに動かして、宝玄仙を追い詰めるようにしている。
妖しい峻烈な甘美感が五体を駆け巡る。
女は宝玄仙に「屋敷奴隷の掟」なるものを話し続けている。
しかし、話の半分も宝玄仙には頭に入らない。
それよりも、乳首からの刺激が強烈だ。
その刺激で女陰に喰い込んだ鞭の柄から自慰でもするかのように快感を搾り取ってしまう。
宝玄仙の身体に噴きあげる愉悦は、苛烈な快感となって宝玄仙に襲いかかる。
「なんだい、もういきそうなのかい」
女が馬鹿にしたような笑いをして、柄を引っこ抜いた。
それで、なんとか宝玄仙は女の前で醜態を晒すことを逃れることができた。
やっと身体を静かにすることに成功した宝玄仙は女に向き直った。
「さ、さっきから奴隷、奴隷となに言ってるんだよ。それと沙那たちはどこだい?」
宝玄仙は怒鳴った。
「ほうほう、勇ましいねえ。そうじゃないと責め甲斐がないからねえ。この館の屋敷奴隷に相応しいさ」
「や、屋敷奴隷……?」
「ああ、そうさ。お前のような人間の女を奴隷にして責め殺すのが、わたしのなによりの趣味なのさ。のこのこと妖魔の土地に来たのが悪いんだよ。わたしの奴隷はなかなか長生きをしないんだけど、まあ、頑張っておくれ。一応、お前たちは
「わ、わたしたちは……」
「ああ、いい──。言い訳無用だ。いや、どうでもいいんだ。お前たちが本当はそんなものではなくて、朱紫国王とはなんの関係もないことは知っている。だから、誤解を解こうと努力する必要はない。お前たちは、大きな理由はないけど、たまたまやってきたんで、わたしの趣味を満足させるための屋敷奴隷として捕まり、ここで死ぬまでの短い間、この
女が馬鹿笑いをした。
どうやら、とんでもな狂女の罠に陥ったということのようだ。
宝玄仙は歯噛みした。
「お、お前は春嬌というのかい……?」
宝玄仙は言った。
春嬌という名に聞き覚えがある気がしたが、それが誰であるのかすぐには思い出せないでいた。
「いかにも春嬌だね。お前は初めてわたしと会ったと思うけど、わたしは
春嬌が笑った。
宝玄仙は、自分の道術が再び封印されているという事実にはもう気がついていた。
この女の責めを受けるあいだ、何度か道術を動かそうとしたが、まるでそれが存在しないかのように道術を探ることができなかった。
朱姫の『縛心術』と多目怪の光のお陰で幾らか回復した道術力だったが、いまはそれがもう再封印されているようだ。
意識を失っている間に、微かに聞いたあの鈴の音……。
それが宝玄仙の道術をまた封印したに違いなかった。
「春嬌……。もしかしたら、長女金が言っていた金聖姫の護衛の道術師かい?」
宝玄仙の中で記憶が繋がった。
そう言えば、長女金が金聖姫を賽太歳という妖魔に浚われるのを許したとき、春嬌という護衛の全体指揮をする女魔導師がいたと言っていた。
そもそも、その女上司が粗末な対応をしたから金聖姫をみすみす妖魔に浚われる羽目になったと、長女金が話していたような記憶がある。
「まあ、そうだね。長女金から、わたしのことを少しは聞いていたようだね」
春嬌は笑った。
「そ、それで、あいつらはどこだい、春嬌?」
「あいつらというのは、沙那と孫空女と朱姫のことかい、宝玄仙? まだ、生きてはいるよ」
「生きている? どこにいるんだい? 答えるんだよ、春嬌──。苛つかせるような喋り方をするんじゃないよ」
宝玄仙は怒鳴った。怒鳴ると乳首が微かに刺激され、思わず宝玄仙は顔をしかめてしまった。
ただでさえ弱い乳首だ。
それが左右別々の刺激をされるのは堪らない。
でも、刺激があるとわかれば備えることもできないわけではない。
宝玄仙はなんとか、身体の火照りを落ち着かせる。
「道術を封印されたうえに、なにをされても抵抗もできないように拘束されているのに、そうやって空威張りできるだけでも見あげた根性だよ。そういうのは嫌いじゃないねえ……。待ってな。もっといい思いをさせてやるから」
そう言うと再び部屋の壁の戸棚に向かった春嬌は、細長い陶器の瓶を持って戻ってきた。
そこから白い濁った液体を取り出すといきなり股間にそれを塗りたくり始めた。
「な、なにすんだい──?」
ひんやりとした得体の知れない感触に、宝玄仙は全身を硬くした。
おかしな媚薬であることは間違いない。
宝玄仙ははっとして叫んだ。
するといきなり頬に火の出るような衝撃が走った。
春嬌が思い切り宝玄仙の頬を張ったのだ。
一瞬で気が遠くなるような猛烈な痛みだ。口の中に血の味が拡がった。
しかし、その振動で乳首に快感が走るのだ。
激痛が快感に変化する。
宝玄仙はもうおかしくなりそうだ。
「甘やかしていれば、調子に乗るんじゃないよ、宝玄仙──。それが奴隷の口のきき方かい」
反対側からも頬を張られる。
春嬌はさらに尻の亀裂に指を伸ばしてどんどん白い液体を塗り込んでくる。
そして、指を肛門に挿し入れて詰め込むように液体を孔に入れた。
同じように女陰や肉芽にもたっぷりと塗り込められる。
宝玄仙はその指に反応してしまい、乳首の淫具に責めたてられたことによる刺激と合わせて、荒い息とともに、何度も何度も甘い嬌声をあげさせられた。
「さて、じゃあ、後は待つだけだ。道術のこもった媚薬じゃないから、効果が現われるには少し時間がかかるだろうね……」
春嬌は、今度は瓶を傾けて、残った液の全部を宝玄仙の身体にかけはじめる。宝玄仙の全身が白い液体に包まれて、足先から床に滴り落ちていく。
「な、なんだい、これ?」
宝玄仙は悲鳴をあげた。
白い液体が触れた部分が次第に熱くなる気がする。
特に女陰と肛門が酷い。
この感覚は何度も経験している。
おそらく、間違いない……。
これは痒み剤だ。
宝玄仙は愕然とした。
やがて、この熱さが別のものに変わるのだ。
そのとき、宝玄仙は我を忘れて泣き叫び、目の前の変態女に慈悲を乞うことになるに違いない。
宝玄仙は、自分の身体にこれからやってくるかもしれないことに対して恐怖した。
「なんでもいいじゃないかい、宝玄仙。塗ったのは、お前が心の底から自分が奴隷だと感じることができるようにするための液体だよ。麒麟山の西に分布しているある樹木の液を魔蛭の体液と混ぜて発酵させたものさ」
春嬌が笑いながら、その樹木の名を言った。
宝玄仙は歯噛みした。
やはりそうだった。
春嬌がいま言った樹木の液であれば、まもなく、怖ろしい痒みが襲ってくるはずだ。
宝玄仙は春嬌を睨みつけた。
「……それよりも、供のことをさっき訊ねたよねえ、宝玄仙。さっきも言ったけど、まだ生きているよ。わたしの部下の
春嬌が酷薄な笑みを浮かべた。春嬌の喋ったことは単なる脅しではない。
宝玄仙は直感した。
人間を殺すことになんの躊躇もない……。
宝玄仙がこれまでに出会ったそういう連中と同じ眼を春嬌はしていた。
春嬌が最初に座っていた椅子に戻った。
待つ姿勢になった春嬌を宝玄仙は精一杯の強気の視線を送る。
「……ここに案内したあの長女金は、お前だね」
質問ではなく確認だ。
羅刹と交替で道案内をするためにやってきた長女金は、実はこの春嬌か、あるいは、その部下が道術で化けていたのだろう。
おそらく、
この春嬌は、それだけの影響力を持った存在であるのに違いない。
「そうだね。お前はいい霊具を持っているじゃないかい。あの指輪の霊具は、変身霊具だとはわかったけど、体液をすすることで変身するという使い方まではなかなかわからなかったよ。いずれにしても、いい霊具さ。これからも色々と使わせてもらうよ。有来有去もそう言っていたよ」
春嬌が笑った。
有来有去……。春嬌……。賽太歳……。
そして、道術を奪う鈴の音……。
宝玄仙は懸命に頭を整理しようとした。
指輪というのは、『変化の指輪』のことだろう。
確かに体液をすすることで、その相手に変身をすることができる。
供の連中には、唾液か淫液だと説明しているが、実は体液ならなんでもいい。
まとまった量を飲めば、その体液の持ち主に変身する……。
だが、あの荷物は、朱紫国の軍の捕縛を受けたときに軍に没収されたはずだ。
それを春嬌が持っていたということは、
それは、国都の軍営で捕らえられていた宝玄仙の姿を春嬌が見ていたというようなことを言ったことからもわかる。
そして、その春嬌と有来有去の両者とも、賽太歳に関わりがある。
朱紫国のときも、いまも同じ鈴の音がして道術が奪われた。
あの鈴の音が賽太歳という妖魔王の道術に関わる音であることには間違いない。
妖魔王の賽太歳という若い妖魔と、有来有去と春嬌……。
この三人の関係は……?
「お前はもしかしたら賽太歳の姉かい?」
当てずっぽうだ。
しかし、口にしてみると、それは間違いないことだと思った。
ここに来るまでの辺境の旅で、賽太歳という妖魔王には姉がいるという噂を耳にしていた。
二十数年前の朱紫国軍の妖魔狩りの侵攻の際に生き残りの妖魔がいまの賽太歳という妖魔王であることは、人間の間でもかなり有名な話だった。
そして、赤子だったその妖魔王を妖魔狩りの人間の軍から守ったのが半妖の姉であることも……。
「ほう、わたしのことを知っているのかい?」
少しだけ春嬌が驚いた顔をした。
「だったら、長女金は賽太歳のところにいるんだね?」
そう考えるしかない。
春嬌が長女金に変化をしていたとしても、体液をすする必要があるのだ。
長女金が賽太歳という妖魔が連れて行ったのではないかというのは沙那の推測だった。
春嬌が賽太歳という妖魔王の姉だとすれば、変化をするためのに必要な長女金の体液を手に入れるのは簡単なことに違いない。
「長女金に会いたいのかい? まあ、そのうちだね。奴隷同士、顔を合わせることもあるかもしれないねえ。お前が生き延びられればね」
春嬌が声をあげてまた笑った。
長女金は奴隷……。
もしかしたら、お人好しの長女金がずっと気にしていた
しかし、宝玄仙が思念に耽られたのはここまでだった。
これまでに経験したことがないような掻痒感が宝玄仙に襲いかかってきた。
身体をじっとしていられない。それにより乳首の淫具に刺激が走るが、それは大したものではなかった。
それくらい全身にやってきた痒みが強烈だった。
「ああああああっ」
宝玄仙は絶叫した。
「どうしたんだい、宝玄仙?」
春嬌が愉しそうに言った。
「くうっ……。お、お前……」
宝玄仙は春嬌を睨んだ。耐えられるようなものじゃない。
痒い……。
痒い……。
なんという痒みだ──。
「どうしたんだいと訊ねているんだよ、宝玄仙?」
「う、うるさいよ……か、痒いんだよ……。ち、畜生……」
宝玄仙は呻いた。
「ほう、まだまだ、元気だねえ。じゃあ、しばらく、そうやって、踊っていておくれ。そうだねえ。一刻(約一時間)は我慢してもらうよ」
「ふ、ふざけるんじゃないよ」
宝玄仙は大きな声をあげて身体を揺すった。
発狂するような痒みだ。
ほんの少しも耐えられない。
「どうしても我慢できなくなったら言いな。わたしはねえ、お前の女陰の花びらに穴をあけて、銀の輪をつけようと思ってるんだ。肛門を塞ぐ肉にもね。それに糸を付けて、常にぱっくりと開いた状態になるように引っ張る下着をいま作らせてる」
「な、なにを……ああ、だめだああ──。痒いいいい──。痒いいいい」
宝玄仙はあまりの痒さに泣き叫んだ。
目の前の春嬌は、愉しそうに笑っている。
「だから、お前の敏感な場所に穴を開けたいのさ。痛みで痒みも癒えると思うから、遠慮なく言っておくれよ。もちろん、全身に鞭も浴びさせてやるよ。皮膚が破ける程ね。お前の痒みが少しでも癒せるように全力で協力するよ」
春嬌の酷薄な笑いが部屋に響き渡った。
全身にただれるような痒みが襲う。
このまま放っておかれれば、おそらく自分は、鞭であろうと、女陰に穴であろうなんでも受け入れてしまうだろう。
気の遠くなる痒みの中、かすかに残る理性で宝玄仙はそう思った。