「調教の調子はどう、
想像以上のやかましさに春嬌は驚いた。
「まだ、この調子です」
春嬌に気がついて、綺芳が苦笑して首をすくめる。
「お前にしては、随分と手こずっているじゃない」
「こんな、じゃじゃ馬は初めてです。申し訳ありません、春嬌様」
綺芳が言った。
「お、お前が春嬌かい──。さっさとこれを解くんだよ。それとご主人様はどこだい? 沙那と朱姫はどうしたんだい?」
孫空女は春嬌を認めると、四肢をがちっりと縛られた拘束椅子を倒さんばかりに揺すった。
もっとも、拘束椅子はしっかりと床に固定されているので、どんなに孫空女が馬鹿力であろうとも倒れることはない。
それよりも、春嬌はこれが三日も調教を受け続けた女の姿であることに感嘆する思いだった。
屈服するどころか、ますます扱いにくくなっている気がする。
初日に眺めたときには、綺芳の色責めで息も絶え絶えになっていて、もうやめてくれと哀れに泣きべそをかいていた。
これなら、調教は早々に終わるだろうと思ったが、綺芳に言わせれば、そんな態度は責めている間だけで、責めが終わって体力が戻れば、あっという間に反抗的な態度に戻るらしい。
「股ぐらを曝け出しながら、随分と勇ましいじゃないかい、孫空女」
春嬌は孫空女の正面に綺芳が準備した椅子に腰掛けた。
孫空女は背凭れがやや後ろに下がった椅子に全裸で深々と座らせられている。
両手は首と肘と二の腕がしっかりと革紐で手摺に固定され、さらに両脚を手摺の前にある足置きに載せられて足首と膝を縛られて、膝を曲げて大きく左右に開脚した状態にされている。
さらに太腿や腰や胸の前後、首と頭までがっちりと固定している。
全身をくまなく固定されて、孫空女は身体をよじらせるどころか、首を動かすこともできない。
なにせ、二日前に同じ拘束椅子に固定した時には、頭を固定していなかったので、思い切り綺芳に頭突きを喰らわせてきたのだ。
綺芳は額を割り、大変な騒動になった。
孫空女には、それこそ半死半生の目に遭わせたのだが、そのまま死なせてしまうのはもったいないので、麗芳の『治療術』で治療を一日かけて施した。
すると、体力の回復とともに気力も回復し、元の反抗的な態度に戻ってしまった。
春嬌もさまざまな奴隷を手掛けたが、こんなに手間がかかる女は初めてだ。
孫空女に比べれば、女主人の宝玄仙は、もう堕ちたようなものだ。
「女陰も肛門もよく見えるよ。相変わらず、淫らな身体じゃないかい。まだ、なにもしていないのに、下の口がひくひくいっているじゃないかい」
春嬌がからかうと孫空女が顔を赤くして悔しそうな顔をした。
この女が見かけによらず、被虐体質であることはもうわかっている。
恥ずかしい恰好にさせるだけで、しっかりと濡れてしまう女陰は、眺めるだけでも面白い。
「そ、そんなことよりにさっさと言いな。ご主人様はどこだい? 沙那と朱姫はどこだ――?」
孫空女は喚き立てた。
三日前に春嬌の新しい奴隷に仕立て上げるために捕らえた四人の人間の女は、まだ一度もそれぞれ会わせていない。
女戦士たちはしっかりと拘束し、道術遣いたちは
とはいえ、四人とも、百戦錬磨の強者とは耳にしている。
お互いにばらばらにして、監禁して調教しているのは、仲間がどういう状況なのかわからないようにして、思い切った行動にも出られないようにするためだ。
それが功を奏しているのか、いまのところ逃亡を企てようという気配はない。
まあ、その隙も与えていないというのが本当なのだが……。
「じゃあ、この間と同じ条件で賭けをするかい? 一刻(約一時間)ほど筆責めをして、いくのを三回以内に我慢したら、お前の会いたいご主人様に会わせてやるよ、孫空女。宝玄仙は、いま治療をして身体を回復させている最中だよ。ちょっとばかり責めすぎたんでね。その間は暇だから、お前の様子を見にきたのさ……」
「回復──。ご、ご主人様になにしたんだい──?」
孫空女が喚いた。
「単なる躾だよ。それよりも、どうだい、やるかい? 一刻(約一時間)わたしがお前を責める。お前は四回以上いかないように我慢する。三回ならお前の勝ちだ。ひと晩、宝玄仙を同じ檻に入れてやるよ」
「さ、三回って……」
「……その代わり、負けたら宝玄仙に鞭打ちだ。まだ治療の途中だけど、天井から吊りあげて全身に百発あいつに数えさせながら鞭打ちする。お前には、その悲鳴だけ聞かせるよ」
春嬌がそう言うと、孫空女が悔しそうに歯噛みした。
二日前に同じ条件で賭けをした。
一刻(約一時間)どころか、四半刻(約十五分)も持たずに四回絶頂してしまい、春嬌は、『伝声具』の霊具で、鞭打たれる宝玄仙の悲鳴をここに流して孫空女に聞かせたのだ。
この女には直接身体を痛めつけるよりも、仲間の身体を痛めつけると脅した方が効果がありそうだからだ。
実際、その通りであり、逆らえば仲間を傷つけると言えば、孫空女はかなり大人しくなる。
「な、なんで、ご主人様なんだよ。あ、あたしを鞭打ちな──」
孫空女は椅子を揺らしながら叫んだ。
「いいや、お前は鞭打たない。お前の代わりに宝玄仙を打つ。覚えておきな」
「くっ」
孫空女が春嬌を睨んだ。
「それで、どうするんだい? 賭けをするのかい、しないのかい?」
「し、しないよ……」
孫空女は小さな声で答えた。
春嬌は声をあげて笑った。
「まあ、いずれにしても数日後には会うことになるさ。晩餐会の日取りが決まったからね。わたしは、そのときにお前たちをわたしの新しい奴隷をして披露するつもりさ。そのときには、一同に会することになるだろうよ」
「な、なんだよ、晩餐会って……」
「お愉しみだよ、孫空女」
春嬌は笑った。
「奴隷披露の披露会が決まったのですね。いつですか、春嬌様?」
綺芳だ。
「三日後だよ」
「まあ、それでは、もう何日もないわ。どうしましょう。孫空女がこんな状態では、とても客の前で芸などできないし……。申し訳ありません、春嬌様。一日で調教が終わるなどと言ったのに、三日も経ったのにこんな状況で……」
綺芳が頭を下げた。
「いや、こいつだけじゃないよ。沙那と朱姫を仕上げようとしている麗芳も同じようなものだし、わたしがやっている宝玄仙もそんなには変わりないよ。でも心配ないさ。まあ、今回はいつもとは違う趣向でいくつもりなんだよ。公開調教さ。調教を終えた奴隷を舞台に出すんじゃなくて、その舞台で実際に調教をするのさ」
「なるほど。それはいいですね」
綺芳が破顔した。
「な、なに、勝手なことを言ってんだよ。公開調教ってなんだい。ふざけるんじゃないよ、春嬌」
孫空女が怒りを顔に浮かべて声をあげた。
「お前たちはなんにも気にすることはないよ。その日になれば、勝手に客の前に出されて調教を受けるだけさ。まあ、なにをするかこれから考えるけどね……。それよりも、その晩餐会で奴隷披露が終わったら、この屋敷の女奴隷は客の妖魔に身体で奉仕する決まりなんだ。お前も同じだ。だから、客に出せるちゃんとした道具かどうか調べさせてもらうよ」
春嬌は綺芳に手で合図をした。
綺芳が孫空女を拘束している椅子の下側にある操作舵を回しだす。
孫空女の脚が開いてある足置きがさらに上にあがり、左右にさらに開いていく。
「なっ、あっ、あっ……」
孫空女が顔を赤らめて戸惑った態度になった。
威勢のいい啖呵を切りまくっていた女が、大股開きにされて羞恥に頬を染めるのは、なんともいえない味わいがある。
孫空女もわかっていてやっているわけじゃないだろうが、人形のように諦めきった態度でも面白くないし、まったく恥ずかしがらずに股ぐらを曝け出しても平然としているのも愉しくない。
この孫空女のように新鮮に恥ずかしがってくれるのが一番いいのだ。
ただの思いつきだったが、晩餐会の公開調教も、もしかしたら期待以上にいい見世物になるかもしれない。
「なかなかに綺麗な道具じゃないかい。乱暴に扱われて裂傷がいっぱいなのかと思えば、傷ひとつないようだね。宝玄仙もお前をかなり大事に扱っていたようだねえ……」
春嬌は孫空女の股間を覗きこみながら言った。
「み、見るんなじゃないよ」
恥じらいを噛み殺したような低い声が孫空女から漏れた。
「確かに、綺麗な身体ですよね……。傷をつけてみたくなりますか、春嬌様?」
綺芳がからかうよう言った。
春嬌は苦笑した。
春嬌は虐待好きであり、獲物に傷つけたり、血を流させたりすることで性的興奮をする。
そのため、春嬌が調教する場合は、大抵は相手が大変なことになる。
実際、春嬌が調教している宝玄仙は、春嬌が嗜虐酔いに任せて痛めつけるものだから、麗芳が『治療術』を施しても追いつかず、全身のあちこちが損傷しているし、身体中が鞭の痕や火傷で覆われてしまった。
今日は、ついに治療のために調教をすることができなくなって、麗芳に命じて治療させるとともに、宝玄仙を身体の回復に専念させなければならなくなったくらいだ。
「孫空女たちについては、奉仕用として傷はつけないでおくよ……。とりあえず、晩餐会が終わるまでは、わたしは直接には手を出さないようにするよ、綺芳」
「そうですか」
綺芳が小さく笑った。そして、孫空女の女陰に手を伸ばす。
「ひんっ」
孫空女が身体をびくりとさせて可愛らしい声をあげる。
「あらあら、もう、感じてきたの、孫空女? あっという間にお汁が溢れてきたわよ」
「う、うるさいよ、綺芳……」
綺芳の責めが始まった。
女陰の刺激を受け始めた孫空女が顔を真っ赤にした。
気は強いが、身体はどうしようもなく感じやすいようにされているのだろう。
もう綺芳の指に翻弄されて感じてはじめているようだ。
それでも、一生懸命に口をつぐんで、声を出すまいとしているのか可愛らしい。
さっきまで悪態をついていた女が、あっという間に少女のように悶えはじめる。
その違いに春嬌は思わず吹き出しそうになる。
綺芳がやっているのは、孫空女の無毛の女陰に無造作に手を伸ばして割れ目を左右にくつろがせるという行為だ。
綺芳が女陰の外襞を拡げて内側を指で繰り返しなぞっていると面白いくらいに割れ目から愛液が溢れ出てくる。
そして、ついて孫空女が、小さく身体を震わせて喰い縛った口から声をあげだした。
「あ、ああ、ああっ……」
孫空女の口が開き、全身が小刻みに震えだす。
宝玄仙の三人の供たちは、誰もが驚くほどに淫乱な身体をしている。
胸でも股間でもお尻でもちょっと触っただけであっという間に、身体を淫らに反応する。
「じゃあ、さっそくいく?」
綺芳が孫空女の肉芽の皮を剥いてすっと指でくすぐった。
「ひゃ、ひゃ、ひゃあああぁぁぁ──」
孫空女は大きな反応をして達しそうになる。
呆気ないものだ。
しかし、綺芳は簡単には孫空女に思いを遂げさせる気はないようだ。
孫空女の反応を見ながらぎりぎりのところで責めを緩める。
そうやって、孫空女をからかうような指責めを二度三度と綺芳は繰り返した。
綺芳の指に翻弄される孫空女が怒りに任せて喚き散らした。
しかし、気の強そうな口調とは逆に曝け出している女の股間は、物細そうに収縮を繰り返している。
「中も見てみますか、春嬌様?」
やがて、完全に孫空女から手を離した綺芳が春嬌に視線を向けた。
「中って?」
「
「あれかい……」
膣鏡とは綺芳がよく最近嵌っている調教用の器具だ。
春嬌の調教には使ったことはないが、綺芳は羞恥責めの一環としてよく使うと言っていた。
本来は淫具ではない。
医師が女の性器を検診するときに使うもので、水鳥のくちばしに似た形状をした金属の器具であり、女陰に挿して二枚のくちばしを上下に拡げるのだ。
すると、膣が拡張されて奥まで覗けるようになる。
「これよ、孫空女。これでお前の女陰を大きく拡げてあげるわね。これを使うと、いかに女の道具が自由自在になるかということがわかるわよ」
綺芳が孫空女の顔の前にその器具をかざして、その使い方を丁寧に説明している、
使われる器具の非情さを印象づけることで、孫空女を精神的に責めているのだ。
ああいう心に訴えるような責めは春嬌は不得手だ。
どうしても、身体を痛めつけるような責めになってしまうからだ。
「か、勝手にしなよ」
孫空女が吐き捨てるように言った。
しかし、明らかに孫空女は、綺芳の見せた器具に恐怖を感じているようだ。
それは、孫空女の顔が蒼くなり、引きつったように強張っていることからわかる。
「じゃあ、勝手にさせてもらうわ」
綺芳が孫空女の女陰に膣鏡を無造作に突っ込んだ。
「んんんんっ」
冷たい金属の先端を感じた孫空女が鋭い悲鳴をあげて全身をびくりとさせた。
綺芳の持っていた膣鏡はいっきに奥まで達したようだ。
そして、二度、三度位置を直すように抉るような動きをみせたあと、すぐにじわじわと開き始めた。
「や、やめ……」
孫空女の腰が震え、秘肉の周辺の筋肉が痙攣しはじめた。
膣を強引に拡げられようとすれば、女の身体は当然、それにあがらって抵抗しようとする。
だが、非常な器具はそれを許さず、いやおうなしに膣を大きく拡張する。
「勝手にしろと大口を叩いたくせに、なんにもしないうちに音をあげているのかい、孫空女」
春嬌は声をあげた。
すると孫空女が悔しそうに顔をしかめた。
春嬌は孫空女の正面が見える位置に座っている。
膣鏡に拡げられた孫空女の女陰では、はっきりと子宮口が見えた。
外気の刺激を受けたその子宮口は縮みあがるようにうねっている。
「膣鏡で責めるというやり方は聞いていたけど、使うのは初めて見るわね」
春嬌は言った。
「く、苦しい……」
白い腹を波打たせながらついに孫空女が訴えた。
顔を覗くと、その表情は悲痛だ。
余程痛いのだろう。
確かにこれ以上開かないというくらいに膣鏡は上下に開いている。
だが、綺芳はにやりと微笑むと、その状態からさらにぐいと上下に器具を開いた。
「あぎいいぃぃぃ……や、破けるっ……」
孫空女が大きな悲鳴あげた。
綺芳は膣鏡のねじを回して、その状態で膣鏡を固定する。
孫空女が苦悶の声をあげた。
「覗いてみますか、春嬌様?」
綺芳が言った。
春嬌は椅子から腰をあげて、孫空女の女陰の中を見た。
想像していた以上に醜悪だ。
生々しくて、妖魔の国ではよくみかける生物になり損ねた奇形の粘性体をようだ。
「わたしの身体にも同じものがあるかと思うとがっかりするわね」
春嬌は思った通りのことを言った。
綺芳が声をあげて笑った。
「じゃあ、さっそく、感度をお見せしますね」
綺芳は横に置いてある作業台から一本の小筆を取り出した。
それを大きく開いた膣内に差し込んで、くるくると動かして壁面を刺激し始めた。
春嬌はまた孫空女の正面に腰掛けて、綺芳の責めを鑑賞する位置に戻った。
「あはあああっ」
孫空女の拘束された身体が跳ねた。
綺芳の筆の動きはまるで耳かきで耳を優しく掻いている感じだった。
孫空女は大きな声をあげて革紐を引き千切らんばかりに激しく反応し続けた。
「凄い反応ね」
春嬌は思わず呟いた。
すでに膣の中はたっぷりとした淫液で溢れている。
綺芳の筆の動きに合わせて呼吸をするように膣内が収縮と緊縮を繰り返す。
「ひぐうううっ」
孫空女の声がひと際大きくなった。
「どうします、春嬌様? このまま、潮を吹かせるほどに連続でいかせることもできますけど……」
綺芳が筆を奥に突っ込んだまま子宮口を刺激しながら春嬌に顔を向けた。
「とりあえずいいわ。あんまり、いい気持ちにさせることはないわね。それじゃあ、調教にならないし……」
「わかりました」
春嬌がさっと小筆を女陰から抜いた。
孫空女は絶頂寸前の仕草から、がっくりと力が抜けたようになった。
すでに脂汗でびっしょりの身体で激しく息をしている。
「お願いだからいかせてと言えば、綺芳に最後まで責めるように命令してあげるわよ、孫空女」
春嬌はわずか一回目の寸止めでもう息も絶え絶えになっている孫空女をからかった。
「ふ、ふざけるなよ……」
孫空女が春嬌を睨みつけた。
この女はまだこんな目ができるのだ。
春嬌は感心した。
思わず孫空女が血だらけになるまで鞭打ちをした衝動が湧き起こり、春嬌は懸命に自重した。
「じゃあ、根をあげるまで、焦らすだけ焦らしておやり、綺芳」
春嬌は椅子に座ったまま言った。
「わかりました、春嬌様」
綺芳はうなずくと、すっと再び筆を孫空女の女陰に這わせ始めた。
孫空女が絶頂寸前の女の反応をはじめるのに、大した時間はかからなかった。
大きな喘ぎ声を出して、全身を痙攣させる。
しかし、綺芳はすっと筆を引きあげる。
「ああ、そ、そんな。どう、どうして……」
孫空女は狼狽した声をあげた。
そして、思わず口走ってしまった自分の言葉にしまったというような表情をした。
春嬌は綺芳とともに大笑いしてしまった。
「どうしてはないだろう、孫空女……。早く、お願いだから、いかせてくれと言いな。そうしたらいい気持ちにさせてやるかもしれないよ」
春嬌は笑いながら言った。
孫空女は羞恥に染めた顔で歯を食いしばっている。
孫空女の頭は首と額を革紐で固定しているから、どんなに悔しくても孫空女は、顔をうつむけたり、下を向けたりすることはできない。
孫空女の屈辱に歪んだ顔がよく見える。
孫空女の表情と身体が落ち着かないうちに、また春嬌が大きく拡大した女陰に筆を挿し入れた。
そして、また孫空女が絶頂しかけるところで中断して筆を引っ込めた。
「物欲しそうに女陰をうねらせないでおくれよ、孫空女。気持ち悪いよ」
春嬌は言った。
「う、うるさい──」
孫空女は喚いた。
綺芳は孫空女の女陰を、責めてはやめ、やめては責めるということを繰り返した。
寸止めを十回近く続けると、孫空女の反応が眼に見えておかしくなった。
「ああっ……ひぐううっ……あうううっ──」
孫空女が奇声のような悲鳴をあげた。
全身が脂汗でまみれている。
引きあげては下ろされ、下ろされては引きあげられる快感の波にもう孫空女は半狂乱だ。
孫空女の身体は、もう燃えあがるだけ燃えあがっている。
それなのに、何度も何度もめくるめく悦惚の中でひたすら快感の絶頂へ息をきらせていたところを、あと一歩というところで急に夢から現実に引き戻されているのだ。
麗芳や綺芳に言わせれば、焦らし止めは色責めの基本なのだそうだ。
これを繰り返せば、堕ちない女はいないらしい。
そして、さすがの孫空女もついに耐えられる限界をすぎたようだ。
綺芳が十五回目の寸止めをやったとき、孫空女はやっと屈服の言葉を口にした。
「い、いかせて……」
小さな声だったが確かに孫空女はそう言った。
春嬌の心に勝利の悦びが湧き起こる。
「聞こえなかったね、孫空女……。綺芳、まだまだ続けてやりな」
「わかりました」
綺芳がくすくすと笑いながら小筆を這わせだす。
「わあっ……わっ、わっ──いかせて……いかせてください。お、お願いします──。く、くそう、これでいいのかい──」
孫空女が悲痛な表情で叫んだ。
ふと見ると孫空女の眼が潤んでいる。
本当に悔しいて仕方がないに違いない。
春麗も女だ。
女の生理はよくわかっている。
一度反応してしまうとすぐには平常には戻らない。燃えあがった官能の炎は途中で消されてもぶすぶすとくすぶり続ける。
その状態を繰り返されて音をあげてしまい、性の拷問をしている相手にいかせてくれと頼むなどというのは、孫空女のような気の強い女にとっては、気も狂うような恥辱に違いない。
「どうしたの、孫空女? これがもっと欲しいの?」
綺芳は再び筆を這わせた。
しかし、今度は膣の中ではなく内腿だ。
微妙に性器とは離れた場所であり、そこに筆を這わせ、ぎりぎりまで性器に近づきながら、けっして肝心な部分には触れないということを始め出した。
「ああ、ああああっ、ああ──」
孫空女は、拘束された身体を跳ぴはねんばかりに痙攣させた。
だが、執拗な綺芳の筆責めは、いつまでも続く。
「お願いだよ──。も、もう、やめてよ──。いかせて──」
孫空女がついに我を忘れたような悲鳴をあげた。
「いいよ、いかせてやりな」
春嬌は綺芳に言った。
そして、孫空女にわからないように、小さく目配せをした。
綺芳にはそれで通じたはずだ。
綺芳も眼で頷くと、すっと孫空女の女陰に再び筆を挿入した。
開ききった膣の中の敏感な部分を擦りあげていく。
「はっ、はあっはっ、あ、ああっ、あっ、あっ、あっ」
孫空女の悶え声が小刻みなものになった。
ずっと見てきたからわかる。もういきそうなのだろう。
そして、今度こそいけるという期待に溢れているはずだ。孫空女の表情は、やっと訪れる絶頂の快感に向けてひた走っている。
孫空女は弱々しい小筆の刺激から絶頂に到達するだけの快感を搾り取ろうと動かない腰を懸命に振り立てている。
しかし、綺芳は残酷だった。
またもや、すっと筆を引いてしまったのだ。
あとは焦らすように内腿に軽く這わせるだけだ。
「ひいっ……ひどいよっ……。あ、あ、あんまりじゃないか──」
孫空女は今度は本当に泣いたような声をあげた。
「考えると言っただけさ、孫空女──」
春嬌はげらげらと笑い転げた。
それからも綺芳に孫空女に対する寸止め責めを続けさせた。
春嬌は直接的な痛みによる責めが好きなので、あまりやらない責めだが、思ったよりも面白い責めだと思った。
鞭や棒では孫空女は、これほどに悔しそうな顔はしないだろう。
女の官能を弄ぶような焦らし責めだからこそ、屈辱的な言葉を孫空女は口にしたのだ。
しかし、孫空女も屈辱的な言葉を口にしたことでやっと絶頂が許されると考えたに違いない。
その希望をぎりぎりのところでむしり取る。
そのときの孫空女の顔に浮かんだ絶望感には、なんともいえない愉悦を春嬌に与えた。
綺芳の焦らし責めがまた始まる……。
焦らし責めは、焦らされる女にとってはまさに性の地獄だ。
春嬌は、何度も何度も綺芳に寸止めを繰り返させた。
それこそ、今度こそ絶頂させてやると言って、大声で絶頂させてくれと孫空女に叫ばせた。
それをことごとく裏切り、ぎりぎりのところで快感を取りあげた。
ここまでやれば、絶頂などさせるつもりがないことがわかりそうなものだが、ここまでくれば、孫空女は恥辱的な哀願を叫ばすにはいられないようだ。
「お、お願いだよ……いかせて……」
孫空女がうわ言のように言った。
「わかったよ……。よく頑張ったね、孫空女……。今度は最後までやってあげるわ」
綺芳が今度は口調を変えて、優しげな声でそう言った。
孫空女の言葉はもうほとんど泣いているような感じだった。
綺芳が小筆を横の台に置いた。
そして、今度は指で孫空女の女陰を責め始めた。
綺芳が刺激しているのは、女陰のやや入口に近い奥の上側だ。
女陰の中に隠れている女の最大の性感帯のひとつだ。綺芳はそこを指で強めに擦っている。
これまで弱々しい筆による責めしか受けてこなかった孫空女は、一転した強い刺激に、大きな声をあげて激しく反応しだす。
孫空女はすでに反狂乱だ。全身がおぴただしい汗にまみれ、うねり、はね、そり返った。玉のような汗が飛び散った。
「い、いぐうううっ──」
孫空女の拘束された身体が限界まで仰け反った。
あとひと擦りで孫空女は達するに違いない。
春嬌はそう思った。
だが、やはり綺芳が指を孫空女の女陰からさっと抜いた。
またしても、ぎりぎりのところで、孫空女は寸前で快感を取りあげられた。
孫空女が狂ったように奇声をあげて全身を暴れさせた。
「女陰はもういいよ、綺芳……。今度は、後ろの穴の感度を見せておくれ」
春嬌は、孫空女がみっともなく泣き喚くのが愉しくて手を叩いて笑った。