「ほら、いくよ、沙那──」
「ああ、や、やめて、ゆ、許して……」
沙那は声をあげた。
そして、卓に上半身をうつ伏せに拘束され、両脚を大きく開かせられている沙那と孫空女を麗芳と綺芳に後ろから犯すように指示したのだ。
沙那は、いま自分がどういう状態にあるかよくわかっている。
自分は異常に快感に弱い。
麗芳の張形を受け入れればたちまちに絶頂に達するのではないかと思っていた。
沙那が快感に人並みに耐えられるのは最初に達するまでのことだ。
最初に達するまでだったら、おそらく朱姫はともかく、孫空女よりは長く耐えられる。
しかし、一度達した後は、堰が切れたようにいき狂いになるのだ。
なぜ、自分がそんな反応をするようになってしまったのかよくわからないが、宝玄仙によってそんな身体にされてしまったのだ。
「言いつけを守るのよ。前、後、回す、斜め、そして、感じた振りをしながら喘ぎ声を出して、ちょっとだけ締める。そして、前……。その繰り返しよ」
さっきまでやらされていた性交訓練により、沙那の女陰はまだ十分に濡れている。
麗芳が沙那のお尻に腰を押しつけるようにして張形を挿入してくる。
沙那の濡れた股はそれを簡単に受け入れる。
「ああっ、はっ、はっ、ああっ……」
樹脂を固めて作ったという生身の男根にそっくりの張形が沙那の肉穴を引き裂いて侵入してくる。
圧迫感はある……。
しかし、苦痛はない……。
せめて、身を引き裂かれるような苦痛があって欲しい……。
だが、実際には、宝玄仙の三年以上にもわたる調教を受け続けてきた沙那の女陰は、やってきた張形を包み込むように受け入れ、それを締めあげて勝手に快楽を絞ってしまう。
「ほら、動くのよ、沙那」
奥まで入った張形が意地悪く沙那の子宮口を軽く突いた。
「んんあああっ──、んぐうっ、ひうううっ」
あっという間に快感が押し寄せた。
愉悦が全身を覆いつくし、股間から突き抜けたものが頭を真っ白にする。
「だ、だめええっ──」
沙那は絶叫した。
そして、懸命に口をつぐむ。
それこそ革紐で縛られた手で卓上に爪をたて、力の限り唇を噛みしめた。
なんとか、ぎりぎりのところで踏みとどまる……。
沙那は自分の荒い息がこれ以上ないくらいに大きくなっていることに気がついた。
自分の唾液に血の味が混じっている……。
「ほう……。血が流れるくらいに口を噛んで、いくのを耐えたのかい。見上げた根性と言いたいけど、お客さんはそんなのは悦ばないよ。今度口を噛みしめたら、宝玄仙に罰だからね」
春嬌が言った。
歯を噛みしめることさえ禁じられたことに沙那は絶望的な気持ちになった。
「ほら、なにをぼさっとしているの、沙那。腰を動かすのよ」
麗芳が沙那の横尻をぴしゃりと叩いた。
すでにさっき達しかけている沙那は、このうえに自分が腰を動かすということが恐怖だった。
必ずいってしまう……。
でも、やるしかない。
宝玄仙の苦しみを少しでも癒すためには、いまは少しでも長く沙那が快感に耐えるしかない。
ゆっくりと腰を動かす。
前に……後ろに……そして、回す……。
「それで腰を動かしているつもりなの? もっと速くよ──」
麗芳が怒鳴った。
「沙那、真面目にやらないと、宝玄仙をもっと痛めつけるよ」
春嬌の大声もした。
そして、次の瞬間、宝玄仙の泣き叫ぶ悲鳴がとどろいた。
顔をあげると宝玄仙が載らされている三角木馬が大きく揺れている。
おそらく、春嬌が台下の部分を蹴ったのだ。
宝玄仙が跨らせられている三角木馬は、自在に上下に動かすことができるとともに、下の部分がばねのようなものに乗っているような構造のようだ。
だから、少しでも下の部分を揺らせば、その振動で頂上部が大きく動くことになる。
すると、錘状の頂点に食い込んでいる女陰に全体重がかかっている宝玄仙は激痛に泣き叫ばなければならなくなるのだ。
「や、やめて──や、やります。やりますから……」
沙那は懸命に言った。
そして、覚悟を決めて自ら腰を動かす。
「あ、ああっ」
たちまちに強い衝撃が襲う。内肉を貫いている張形の先が膣襞を強く擦りあげる。
沙那の愛液が張形にまみれてびちゃびちゃと音をたてる。
もの凄い快感が全身を走る。
子宮全体が熱い……。
あまりにも敏感で繊細な沙那の女陰は、ほんの少しの張形の刺激でも、甘く大きくて強い痺れを全身に発する。
それが連続で襲いかかる……。
「あ、あはああぁぁ──だ、だめっ……いやぁぁあ」
大きな愉悦が背骨を駆け抜けた。沙那は首を横に振った。
拘束されている手で握り拳を作る。
わざと爪を立てるように握りしめる。
指の爪を懸命に手の肌に喰い込ませた。
痛みが走る。
それで、少しだけ快感が小さくなる。
腰を止めてはならない……。
それも忘れていない。
回して……斜め……締めて……前……。
心の中で言いきかせながらその通りに動かす。
「じゃあ、動かすよ」
麗芳が言った。女陰を貫いている張形が前後に動き出した。
「ま、まって、ひ、卑怯よ──。動かすなんて」
いまでさえ快感を堰き止めるのに必死なのだ。
これに麗芳側からも動かされれば……。
「当たり前でしょう。突き挿したまま、じっとしてくれる客などいるわけないでしょう」
麗芳が大笑いした。
そして容赦なく張形の律動が始まる。
張形が沙那の女陰を出入りする。
腰を動かさざるを得ないから沙那も腰を動かす。受け入れなければならない快楽が三倍にも、四倍にもなる。
「ひおおお……ほお……ほお……あはあ……」
もう言葉を喋ることもできない。
快感の限界はそこまで来ている。
いまそれを支えるのは気力だけだ。
だめ……耐えなきゃ……沙那。耐えるのよ……。
心の中で自分に叱咤する。
股間から迸って発散する痺れは全身を支配している。沙那の最後の理性まで飲み込む。
それを耐える……。
飲み込まれたら達してしまう。
「なかなか、よくなったわね。そうそう、腰を動かすのをやめないのよ。やればできるんじゃない、沙那」
麗芳が嬉しそうに言った。そう言いながらも、麗芳は沙那の股間を容赦なく突きたてる。
そして、沙那の上に覆いかぶさるように寝そべると手を伸ばして、卓に押し潰されている乳房の下に手を差し込んだ。
女陰を突きながら乳房も揉まれ始める。
しかも、背筋に舌が……。
その舌が胸の後ろからゆっくりとお尻の亀裂に向かって流れる……。
「いひゃあああぁぁぁ」
快感が膨れあがった。
十倍……。
いや、二十倍にも……。
麗芳の腰の動きがさらに速くなった。
「いやぁぁぁぁっぁ──」
沙那は絶叫した。
脳まで達した痺れがついにすべてを支配する。
焼けつくような衝撃波が全身を駆け巡った。一瞬だけだが、なにもかもわからなくなる……。
自分がなにを耐えているかも……。
真っ白いものが頭の中で弾けた。
激しい稲妻が背骨を駆け巡る。
気がつくと沙那は背中をこれ以上ないという程反り返らせていた。
「あはあああぁぁぁ」
なにかが突き抜けた。
全身が震えて、次の瞬間、身体から力という力が抜けた。
沙那はぐったりと卓に崩れ落ちるように突っ伏した。
それではっとした。
達してしまえば宝玄仙が……。
女陰から張形が引き抜かれた。
それで、やっぱり自分は達してしまったのだと悟った。
絶望が全身を包む。
「もう少しは頑張るかと思ったけど、お前のご主人様を思う気持ちはそれくらいかい。見な──。孫空女はまだ頑張っているよ」
春嬌が言った。
沙那は首を横にして孫空女を見た。
「あはあ、あはあ、はあ、はあぁあ」
孫空女は半狂乱だった。
艶めかしい声を出して、なんともいえない色香を発散しながら顔を振って髪を振り乱し、それでも必死に快感に耐えて戦っている。
孫空女が貫かれているのはお尻だ。
孫空女が弱い肛門を律動され、綺芳に胸を揉まれ、背後から舌で背中を舐められている。
全身は真っ赤に上気し、おびただしい脂汗が流れている。
孫空女もぎりぎり限界なのは見ていてわかる。
それでも孫空女は必死になって快感と戦っていた……。
最後のところでまだ踏みとどまっている……。
「情けないねえ、沙那──。お前に比べれば、孫空女はまだ増しさ。なんでもしますなんて、口先だけじゃないか。宝玄仙のために少しでも快感を我慢するくらいできないのかい」
春嬌が馬鹿にしたような声をあげた。
「そ、そんな……」
沙那は絶句した。
「とにかく、さっき、言った通り、宝玄仙に罰を受けてもらうよ──。ほら、雌豚、情けない供の罰をお前が受けな」
春嬌はそう言うと、三角木馬に跨っている孫空女の肉芽に繋がっている鎖を思い切り引っ張った。
「ひぎいいいぃぃぃ」
宝玄仙が全身を反りかえして絶叫した。
大きく眼を見開き、限界まで開いた口から、泡のような唾液とともにけたたましい悲鳴が迸っていた。
春嬌が右手に細長いへらのような板を持っている。
驚いたことに、春嬌は、鎖で引っ張ることで限界まで伸びた宝玄仙の肉芽にへらを思い切り打ちつけたのだ。
「ほがああぁぁ」
宝玄仙が獣のような声で吠えた。
次の瞬間、宝玄仙の声が不意に途切れた。
全身から力が抜け、首輪に繋げられた鎖が伸び切り、首ががくりと前に倒れる。
気を失ったのだ。
「雌豚、勝手に気絶するんじゃないよ──」
春嬌がもう一度、宝玄仙の肉芽にへらを叩きつける。
宝玄仙の身体が跳ねあがり、絶叫が再開された。
「沙那、もう一度だ。今度は孫空女のやっているようにお尻でやりな。終わったら、次は前──。ある程度の腰の動きができるようになるまで続けるよ」
春嬌が冷たく言った。
「ほら、集中しな──」
お尻が叩かれ、麗芳が今度は沙那のお尻に張形を突き入れた。
激しい快感がまた沙那を襲った。
それから宝玄仙を人質とした沙那と孫空女の性交訓練が続いた。
どのくらい続いたのだろうか……。
かなりの長い時間だったような気もするが、実際にはそれほどの時間ではなかったのかもしれない。
結局のところ、沙那がお尻で二度目の絶頂をするのに、長い時間はかからなかった。
それどころか、孫空女が一回目を耐える前に、沙那は二回目に達してしまって春嬌を呆れさせた。
宝玄仙は沙那のために、また肉芽打ちをやられて、再び悶絶した。
その次についに孫空女が果てた。
宝玄仙は続けざまに肉芽を打たれた。
このとき、三角木馬の頂点からおびただしい液体が滴り落ちた。
宝玄仙の失禁だ。
それからしばらくは、同じことをやらされた。
犯されて達するたびに宝玄仙が痛めつけられて、それを見させられるのだ。
宝玄仙は何度も気を失い、そのたびにまた肉芽を打たれて激痛で覚醒させられていた。
そして、肉芽打ちをされて悶絶する。
するとそれを肉芽を痛めつけて意識を戻される……。
その繰り返しだ。
あまりもの惨い仕打ちに、途中から沙那は嗚咽がとまらなくなった。
泣きながらも快感だけは激しく感じていた。
沙那がいくことで宝玄仙は苦しみ、沙那は繰り返す自分の絶頂を呪った。
やがて、やっと終わりだと制限されて、宝玄仙が外に連れ出された。
三角木馬から降ろされたとき、宝玄仙はまったく動くことができなかったが、そんな宝玄仙を春嬌は容赦なく肉芽の鎖を引っ張って腰をあげさせて強引に連れ出した。
そのとき初めて、沙那は宝玄仙が女陰だけでなく、肛門も肌に孔を開けられて輪っかを通され、それを使って皮膚を引っ張られて肛門の中が見えるように剝き出しにされて尻孔も拡張させられているということに気がついた。
また、三角木馬をおろされた宝玄仙は股間から血を流していた。
股間と肉芽の部分が裂けて、ぽたぽたと血が落ち、それがぽつりぽつりと床を汚していた。
沙那と孫空女は、卓に拘束されていた手首の革紐を外されて、手枷で背中に拘束され直した。膝の間に金属棒の挟まった膝枷がつけられてやっと足首が解放される。
そして、首輪に鎖をつけられた。
「ほらっ、今日の調教は終わりにしてやるよ。明日は晩餐会だからね。しっかりと体調を整えておくのよ」
卓から解放されてぐったりと座り込んでいた沙那と孫空女にそう言ったのは綺芳だ。
結局のところ、沙那はもう十数回は達している。
孫空女も同じだろう。
もう、まるで腰が動かない。
「いくよ──。それと、戻りながら宝玄仙が汚した床を掃除しな。這いながら進むのよ」
麗芳が沙那の首輪の鎖をぐいと引っ張る。
両手を背中で拘束されている沙那は、這えと言われれば膝と肩で歩くしかない。
その姿勢で、ところどころに落ちている宝玄仙の血の滴のひとつに近づく。
床に落ちている宝玄仙の血を舌で舐めとる。
ふと見ると、すぐそばで孫空女も別の場所で同じように舌で床を掃除していた。
「ね、ねえ、孫女、あ、あのとき……、つまり、春嬌が丸薬を毒だと思って出したとき、本当は毒じゃないとわかったの?」
沙那は小声で言った。
「いいや、なにも考えなかったよ」
孫空女も小声だがあっけらかんと言った。
「だったら、どうして……。わ、わたしは飲めなかった。毒と言われたらためらった。春嬌の言う通りだった。わたしに覚悟がなかったのよ。あのとき、わたしは一瞬だけ死ぬのが怖いと思った。死んでもご主人様を救えないとか、春嬌がご主人様を解放すると言ったのは嘘かもしれないから死んではならないとか理屈を考えたのは後のことよ。わたしは、単純に死ぬのが怖かったの。あなたにある覚悟がわたしにはなかったのよ」
沙那はささやいた。
「沙那は色々と考えているだけさ。それに比べればあたしは馬鹿だからね」
孫空女が沙那に振り向いて白い歯を見せた。
「お前ら、ぺちゃくちゃ喋るんじゃないよ」
綺芳がぐいと孫空女の首輪を引っ張り、孫空女は顔から床に崩れた。
しかし、すぐに身体を起こして床を舌で掃除する態勢に戻った。
それからは、沙那と孫空女は、無言のまま、ひたすら舌で血の痕を拭き取りながら檻に向かって這い進んだ。
──あのとき、孫空女がためらわなかったことを自分はできなかった……。
沙那は、舌を動かしながら、そのことばかりをずっと考え続けていた。