首輪に繋がった鎖を曳かれながら、孫空女はさらに地下に向かう石段を沙那と一緒に下りた。
両腕は革枷で背中で拘束されており、両脚は肩幅ほどの鎖で繋がれた足枷が嵌められている。
抵抗は不可能だ。
それに、逆らえば宝玄仙や朱姫に危害を加えると言われているので、大人しく従うしかないと思っている。
孫空女たちがこれまで調教されていた部屋は地下一階にあり、監禁されている場所はさらに下の地下だ。
地下二階には石畳の階段を降りた鉄格子の門の向こうにあり、その奥に壁をくり抜いた檻が十棟ほど並んでいた。
そのひとつに、孫空女は調教を受けるとき以外は監禁されていた。
ただ、ずっと十棟の檻には孫空女だけしかおらず、沙那も朱姫も宝玄仙もここに連れられる気配がなかったので、もしかしたら、この屋敷にはほかにも監禁する場所があるのかもしれない。
いずれにしても、沙那も一緒に連れてこられたところをみると、今夜は沙那もここに一緒に監禁されるのだろうか……。
「明日の晩餐会で、お前たちは女ふたりで愛し合う見世物を演じるそうね。だったら、できるだけ息の合った芸ができるように今夜は一緒の檻に入れてあげるわ。どんな芸をやるのかふたりでよく話し合いなさい」
鎖をかけた場所は壁の随分と上側にある鉤だ。
両手を後手に手枷をかけられたままで、足首の枷を外されて、膝に肩幅ぼどの棒に挟まれた膝枷をつけられた。
つまり、孫空女は石壁に向かって、脚を拡げて手を後ろにして立った状態にされたということだ。
沙那も孫空女の隣に同じような姿勢で固定されている。
「な、なにするつもりよ?」
沙那が不安そうな声をあげた。
「明日は忙しいからね。あたしたちも春嬌様も、夕方から始まる晩餐会までお前たちに構っている暇がないのよ。だから、お前たちが客が悦ぶような濃厚な舞台が演じられるように手伝ってあげようと思ってね……」
背後に立っている
いやな言い方だ。不吉な予感が孫空女の心をよぎる。
「ひいっ、い、嫌っ──、ま、待って……」
突然、沙那の悲鳴が響いた。
はっとして横を見ると、麗芳と綺芳のふたりが沙那の股間に黒い縄をかけている。
腰にふた巻きほどされた縄が沙那の股間をくぐり、雌妖たちの手により双臀に力一杯たぐられている。
沙那の股間を抉る縄には大小の結び瘤が作られている気配もある。
それが沙那の股間に喰い込んでいる。
沙那は腰を振って嫌がっているが、脚を開いて拘束されている沙那には、抵抗の手段がない。
あっという間に沙那のお尻側の腰紐に連結されて縄止めされた。
「あっ……」
沙那が切なそうな息を吐いて腰を悶えさせた。
つらいのだろう。股縄は沙那の股間に限界まで喰い込んでいる。
「これを着るのよ」
綺芳が革布のようなものを出してきた。
胸当てのようだ。
ちょうど胸の部分の胴を覆うくらいの細さと長さで、沙那の乳房側に布を差し入れて背中側で両端を合わせた。
すると革の胸当てがすっと縮んで沙那の胸を締めて肌にぴったりと張り付いたようになった。
霊具だ───。
孫空女は思った。
おそらく、道術でなければ胸当てがとれないようになっているはずだ。
だが、ここに監禁されてからずっと全裸にされていた。
霊具とはいえ、いまさら着る物を与えるというのは随分と奇妙な感じがした。
沙那は股縄をされた股間にも革の下着を装着されている。
足首から通さなくても、股間側から当てて腰の左右で前後からやってくる革布の細い部分を合わせれば勝手に密着するようになっているようだ。
胸当てと同じように、布を合わせると霊具の道術が動き、革の下着が合わさって革の下着となって沙那の腰に密着した。
「できたわ。次は孫空女ね……」
綺芳と麗芳が孫空女側にやってきた。
沙那と同じように股間に縄掛けをされる。
「ひうっ」
孫空女は思わず声をあげた。
股間に通された縄瘤が孫空女の肉芽を押し潰し、女陰を抉り、肛門に喰い込んだのだ。
それが後ろ側からぐいぐいと引っ張られてさらに強く締めあがっていく。
あっという間に大きな疼きが股間から沸き起こり、なんともいえない恍惚とした気持ちにさせられてしまう。
孫空女はいつの間にか腰を小さく振っている自分に気がついた。
「そんなに気持ちいいの? あんたたち、噂によるとひとりで十人でも二十人でも相手にするような女戦士だそうじゃないの。それがそんな風に縄一本でよがりだすなんて恥ずかしくないの?」
麗芳が揶揄する。
しかし、少しでも身動きすれば、股間を締めあげている股縄が刺激を与えて悦虐の痺れを与えてくる。
口惜しいがこうやって立っているだけで股間がびっしょりと濡れてくるのがわかる。
ひんやりとしたものが胸に当たった。
革の胸当てだ。
革が孫空女の後ろに回ったかと思ったら、革布が縮んで革が密着した。
続いて腰に革の下着も装着される。
「終わりよ。じゃあ、入るのよ」
横の檻のひとつが開けられた。
檻の高さは低い。
腰を屈めなければならないくらいの高さだ。ただし奥行きはあるので、奥まで入れば身体を横にすることはできるし、人間ふたりが入る十分な幅もある。。
孫空女は不自由な足を交互に出して腰を屈めて進む。
「ひうっ」
腰を曲げて動かすと股間の縄が孫空女を抉る。
「早くしなさい。後がつかえているのよ」
後ろから尻を蹴られて押し込められた。
はずみで転倒した孫空女は、股間を抉った強い刺激ですぐに起きることができなかった。
するとその上に、沙那の身体が降ってきた。沙那もまた蹴り入れられたようだ。
「そうやって、仲間同士ですごせるなんて嬉しいでしょう? なんだかんだ言っても、お前たちは頑張ったからね。ご褒美よ」
檻の扉が閉まり、外から鍵がかかる音がした。
綺芳と麗芳が腰を屈めてこっちを覗きこんでいる。
「じゃあ、綺芳、あたしは行くわね。あの感じじゃあ、宝玄仙はまた『治療術』が必要と思うから……」
「あたしもすぐにあがるわ」
綺芳が応じると、麗芳が立ち去る気配がした。
さっきまで宝玄仙は、孫空女と沙那の眼の前で三角木馬に跨らせられて、孫空女と沙那が張形責めにより絶頂するたびに肉芽をへらで打ちつけられるという責め苦を受けていた。
最後には宝玄仙の股間の皮膚が破けて血を流し始めた。
それでやっと、今日の調教が終わり、宝玄仙を含めた全員が解放された。
そして、宝玄仙が血を垂らしながら春嬌によってどこかに連れ出された後、孫空女は沙那とともに、宝玄仙の血で汚れた床を舌で掃除しながら途中まで進まされたのだ。
残った綺芳が鉄格子の向こうからこっちを覗いている。
「忙しいからあなたたちの様子は、頻繁には見に来れないわ。あんたらが履いているのは特殊な下着で、おむつとしての効果もあるのよ。大便は無理だけど、尿ぐらいだったら道術で吸収してくれるから、もよおしたらそのまま垂れ流しなさい。悪いけど晩餐会までは、あんたらの餌を持ってくる以外の相手はできないと思うわ。とにかく、明日の夕方までそのままよ」
「ま、待って、綺芳……ご主人様はどうなったの? それに朱姫は?」
沙那だ。沙那が窮屈な檻の中でやっと上体を起こして綺芳に向かって声をあげた。
「宝玄仙は春嬌様がまだ調教を続けていると思うわ。本当に、春嬌様は、宝玄仙を壊すのがお気に入りのようね。寝る暇も惜しんで宝玄仙を痛めつけるものだから、麗芳の『治療術』で快復させる暇がないのよ」
檻の外の綺芳が肩をすくめた。
『治療術』と言っても、麗芳の道術は高くはないのだろう。
宝玄仙の全身の鞭痕が残ったままだったということからそれがわかる。
治療のための道術をかけても、宝玄仙のように瞬時に治療が終わるということはなく、回復のためには安静したいくらかの時間が必要のようだ。
「とにかく、ゆっくりと休みなさい……。もっとも、休めたらのことだけど」
嫌な言い方だ。
「や、休めたらって、どういうことよ、綺芳?」
沙那が言った。
「あんたらの股間に喰い込ませたのは、
そう言って綺芳は笑って立ち去った。
「け、結局、どこにご主人様や朱姫がいるのか教えなかったわね……」
綺芳が完全にいなくなる気配がすると沙那が口を開いた。
沙那も孫空女も狭い檻の壁に背を預けるようにお互いに向き合っている。
ふたりとも腕は背中で、膝枷のために開いている脚を前に投げ出した格好だ。
「と、とにかく、機会を待つしかないけど、ご主人様のあの様子だと、長く時間をかけるわけにはいかないよね……」
孫空女も言った。
春嬌の言葉によれば、宝玄仙は媚薬漬けにされているようだ。
そのためか、なんだか意識が朦朧としているような状態だった。
全身は傷だらけで、春嬌の遊びのために舌まで切断されたりもしていた。宝玄仙は体力も気力も強い方ではない。
宝玄仙が取り返しつかないくらいに壊れてしまわないかどうか心配だった。
「わ、わかっているけど……」
沙那は顔をしかめた。
そして、急に綺麗な顔の眉に皺を作って、腰を動かし始める。
「こ、これは……」
沙那が悲鳴のような声をあげた。
「さ、沙那……」
孫空女も思わず叫んだ。
急に沙那が苦しみだしたものが、孫空女にも襲いかかってきたのだ。
下腹部から怖ろしい痒みがやってきたのだ。
「か、痒い──」
沙那は身体をばたつかせた。
「ち、畜生──。な、なんだよ、これ──」
孫空女も悲鳴をあげた。
強烈な痒みだ。そして、さっき綺芳が明日の夕方までこのままだと言っていたことを思い出した。
冗談じゃない───。
こんな痒みを放置したまま明日の夕方までなど耐えられるわけがない。
きっと発狂してしまう。
孫空女に襲いかかる股間の痒みはどうしようもないものになっていた。
沙那も全身を震わせて、痒い痒いとうわ言のように言い続けている。
沙那は大きな苦悶の様子を見せているが、孫空女にもどうしようもない。
彼女の身体は、ますます苦しげに裸身をよじらせて、全身からみるみると汗が噴き出させている。
それは孫空女も同じだ。
痒みを癒したくても、ふたりとも腕が背中だ。どうしようもない。
「そ、そうだ……そ、孫女……、足で……。お、お互いの足で……」
沙那が苦しそうな声をあげた。
最初は、沙那がなにを言っているかわからなかったが、沙那の恥ずかしそうな表情からやっとわかった。
腕が使えなければ、足を使って股間を慰め合って痒みを癒そうと言っているのだ。
沙那の足も孫空女の足も真っ直ぐに延ばしている。
それをお互いの股に延ばして刺激をし合おうということのようだ。
「わ、わかった……」
孫空女は身体を動かして、沙那の股間に足の裏がくるように伸ばした。
沙那の足も孫空女の股間に当たる。
ふたりでお互いの股間を踏み合う。
「あ、あれっ?」
「な、なんで?」
ふたり同時に声をあげてしまった。
確かに沙那の足は力を入れて、痒みでただれたように熱くなっている孫空女の股間を刺激したのだ。
だが、孫空女はまったく股間になにも感じなかった。
相変わらず痒みは収まらず、沙那の足などなにも触れていないようにしか感じない。
沙那も同じのようだ。
脂汗の浮かぶ顔を呆然とこちらに向けている。
「こ、この革の下着よ──。あ、あいつら──」
沙那がはっとしたように叫んだ。
孫空女にもわかった。
さっき股間と胸に装着された革の下着と胸当ては、おそらく外からの刺激を完全に遮断してしまう効果があるに違いない。
痒みに狂った孫空女と沙那が、ふたりで慰め合うことを十分に予想して、綺芳と麗芳が嫌がらせをしたのだ。
「ち、畜生……。だ、駄目なのかい──」
孫空女は力を入れてぐいぐいと沙那の股間を足の裏で動かした。
これだけやれば、痒みが癒されるどころか痛みさえも感じるはずだ。
だが、沙那は痒みに苦しそうな顔はしているが、孫空女の足からはなんの刺激も得ることができないようだ。
そして、孫空女やっぱりなにも感じない。
股間の痒みはだんだんと絶望的なものになっていく。
沙那が力を入れて孫空女を踏んでいる足の裏に、孫空女自身も力を入れてぎゅっと力を入れるのだが、まったくなにも感じてくれない。
癒されるはずの痒みが癒さないことで孫空女の頭が股間の耐え難い痒みだけでいっぱいになる。
「こ、こんな酷い……」
沙那が泣きそうな顔になった。
孫空女にもずきんずきんと下腹部から突きあげるような痒みが襲ってくる。
ふと見ると沙那の苦悶が激しいものになっている。
孫空女も同じだ。
こんな状態で明日の夕方まですごすなんて絶対に無理だ。
「あ、あたしの肩を噛みな、沙那。あ、あたしも肩を貸して──」
孫空女は身体を起こして、自分の肩を沙那の口に持ってきた。
沙那の肩も孫空女の口に当たる。
「い、いくよ」
孫空女は言った。
「や、やって……強く噛んで、孫女。皮膚が破けてもいいから……」
沙那が呻くように言った。
孫空女はこのもの凄い痒みに耐えられずに沙那の肩に歯を喰い込ませた。
沙那の歯も孫空女の肩に喰い込む。
痛みが走るが、それでほんの少しだが股間の痒みが小さくなる。
ほんの少しだが……。
「も、もっとよ、孫女。もっと、噛んで──。お、お願い──」
沙那が口を離して悲鳴のような声をあげた。
肩に喰い込む痛みで沙那は痒みを少しでも和らげようとしているのだ。
孫空女も沙那から与えられる痛みで、下腹部を苛む鋭い痒みを忘れようとしていた。
「もっと、噛んで──」
沙那が絶叫した。
その肩からはすでに血が流れている。
孫空女は噛んでいる沙那の肩から血の味を感じた。
「あ、あたしももっと強く──」
孫空女も一度口を離して叫んだ。
股間が痒い──。
その苦しみを忘れるために、孫空女は力の限り沙那の肩に歯を喰い込ませた。