眼の前には岩肌に開いた洞窟があるのだが、洞窟の入口部分は大木の根と岩が入り組んでいて完全に隠れている。
それに細工をして洞窟を完全に外からではわからないようにしているのだ。
なにかがあったときに、張須陀たち三人が逃げ込んで隠れるために用意している場所であり、中には三人が一箇月は過ごせるほどの食料と水が準備してある。
中は結構奥行きがあり広いので、三人が四人になっても問題はない。
ここで四人が一箇月間隠れる……。
『道術紙』をここで燃やせば、霊気の流れは途切れるので、どんな道術遣いでも霊気の流れを追ってくるのは不可能なはずだ。
それに、万が一この山まで追って来られても、洞窟の中ならまず発見はできない。
ここで一箇月も閉じこもっていれば、沙那を奪い返そうとするのは諦めるだろう。
「
張須陀は言った。
「本当に燃やすんですか、兄貴? 『道術紙』なんて、二度と手に入りませんよ」
項延が不満そうに言った。
「いいから燃やせ。残しておけば、あの魔女がこいつを取り返そうと追ってくるんだ」
「へいへい」
項延は、
「そんなに大事なものなら、残した方がいいんじゃないの? なにをしても無駄よ。ご主人様の霊気から逃げられるわけがないわ。それよりも、わたしを浚おうなんて諦めて宿屋に戻りなさいよ。わたしたち四人とあんたらで乱交することになっていたのに、それを捨てて、わたしだけを浚うなんて価値があるの?」
沙那が呆れたような口調で言った。
もっとも、その沙那は地面に手足を真っ直ぐに伸ばした状態で横たわったままだ。
宝玄仙の施した首輪の効果で、沙那の手足は張須陀が持っている筒に話しかけられた言葉に逆らえない。
宿屋から逃げる前に、沙那には「手足を動かすな」という命令を与えている。
だから、筒を指で弾いて命令を解除しない限り、沙那は手足を動かすことができない。
この沙那と初めて会ったのは四年前だ。
その頃、張須陀は愛陽という城郭で大きな武術道場を開いていて、軍の将卒を相手に師範さえもしていたのだ。
それが、この女に出遭うことですべてが一変した。万座の前で武術の腕を辱められ、その腹いせに闇討ちで襲って女として最大の辱めをしてやろうと思ったが失敗し、しかも、それが仇となり城郭を追放となった。
それからは悲惨だった。
友と思っていた者には見捨てられ、武術の仲間と思っていた者からは嘲笑された。
なにもかも失い、生きる屍のように様々な土地を流れたのだ。
すべてこの女のせいだ。
この女がいなければ、いまでもあの羽振りのいい生活をしていたはずだ。
色々な国の場末の貧民街で乞食のような生活をしながら、あの女のことを思わぬ日々はなかった。
いつしか、いまの惨めな境遇のすべてが、あの沙那のせいだと考えるようになった。どう考えてもそうなのだ。
沙那があのとき、万座で張須陀を打ち据えたりしなければ、こんな場所でけちな盗賊などしているような生き方をしているわけがない。
いつか残酷に復讐をしてやろうと思っていた。
あの勝気で生意気な顔を恥辱で歪めさせることを妄想することで、心の平静を保った。
惨めな思いをするたびに、あの沙那を犯し尽くすことを空想して心を慰めた。
そんな機会など訪れるはずのないことを知りながら……。
しかし、その復讐の機会が突然に訪れた。
たまたま出遭った宿屋で意気投合した頭のおかしな美女が連れている供にあの沙那が含まれていて、わざわざ宝玄仙というその女主人は、沙那を霊具で無力な状態にして張須陀の前に引き渡したのだ。
沙那を浚って凌辱する──。
実現不可能な妄想でしかなかったものが、現実のものとして眼の前に不意にやってきた。
躊躇はなかった。
ここからかっさらって復讐してやる。
あのときやるはずだった凌辱をするのだ。
宝玄仙という馬鹿女を言い含めて、沙那だけ自室に連れてくると、持っていた霊具でここまで連れてきた。
あの淫乱魔女がどれだけの魔女かは知らないが、ここが見つかるわけがない。
その沙那は、さっきまで興奮していたが、いまは冷静な態度になっている。
その冷静さが苛つく。
これから、その小生意気な顔を泣き顔に変えてやる。
張須陀は四年前の恨みを晴らせる機会の訪れに興奮していた。
「本当に燃やしますよ、兄貴?」
項延が最後の確認のために張須陀に顔を向けた。
『道術紙』は大きくなった炎に放り投げられる直前だ。
「戻るのよ、張須陀──。もう一度言うわよ。なんためにわたしを浚うのよ? 犯したければ犯せばいいじゃないのよ。わたしのご主人様は、あの宿屋の部屋で、わたしだけじゃなくて、あそこにいた四人の女とあんたらと乱交をするつもりでいたのよ」
沙那が言った。
「兄貴、それは本当ですか?」
「四人って、あの大美人だけじゃなくて、一緒にいた美女の供もですか。それをあっしらも?」
項延と李保が目を丸くしている。
「いいから早く炎に入れろ──。どうせ、『道術紙』には一方通行の一回きりの道術しか刻まれてないんだ。もう、あそこに戻る方法はねえよ」
張須陀は声をあげた。
「くそうっ──。だったら、俺たちもこの女で少しはいい思いをさせてくださいよね、兄貴」
項延が悔しそうな口調で『道術紙』を炎に放り込んだ。
『道術紙』はあっという間に火に包まれて小さな塊りとなり、そして、灰になった。
「相変わらず間抜けな男なのね……」
炎に消えた『道術紙』を眺めて沙那が言った。
その余裕のある態度が気に入らない。
「いい気になるなよ、沙那。立て──」
張須陀は筒に向かって言った。
沙那が立ちあがる。その顔に緊張が走っている。
余裕のあるような表情に焦りの色が混じりだす。
「どうした? 怖いか、沙那? これがあれば、お前は俺の操り人形だぜ」
張須陀は手に持っている中指ほどの小さな筒を沙那の眼の前で振ってみせた。
「下種男……」
沙那が凄い形相で睨みつけた。
「兄貴、それはなんです?」
李保が不思議そうな表情をした。
張須陀は李保と項延に沙那がしている霊具について簡単に説明した。
「ひゃっほう──」
「それはすげえ──。早く、使ってくださいよ、兄貴」
ふたりが興奮した口調で叫んだ。
「わかった。じゃあ、まずは服を脱いでもらおうかな……」
張須陀は込みあがる愉悦が堪えられず、思わず笑い声をあげた。
「ま、待って……。待ちなさい──。か、考え直すのよ。ほ、ほら、わたしの首輪よ。これは、ご主人様……、いえ、宝玄仙が作ったのよ。『道術紙』を燃やしても、この首輪は宝玄仙自身の霊気に結びついているよ。それを追ってくるわ。わたしになにかしてご覧なさい。仲間は全員が一騎当千の猛者よ。八つ裂きにされるわよ。仲間はすぐにここを探し出すに決まってるわ」
「そうかい……。まあ、教えてくれてありがとうよ。ただ、心配するな。洞窟に入ればわかる……。それよりも、服を脱げ」
最後の言葉は筒を通して言った。
沙那の顔から血の気が引いたのがわかった。
沙那の食いしばった歯から呻きのような音がした。
沙那の手が前開きの上衣のぼたんを外し始める。
指が小刻みに震えている。
沙那の中で、沙那自身の意思とあの魔女の道術が激しく戦っているからなのかもしれない。
あるいは、震えるほどに悔しいのか……。
いずれにしても、自分の意思に反して女が自ら服を脱ぐというのはいい風景だ。
それが、かつて張須陀を辱めた沙那だと思うとなおさらだ。
すぐに上衣はとられ、上半身の肌が露わになった。
胸当てに包まれているふたつの乳房はなかなかにかたちがよく、肌は真っ白で傷ひとつない。
女ながら武芸者として、東帝国からここまで渡り歩いたはずだから、数々の修羅場を潜っているはずだ。
それなのに、これだけの身体の美しさを保っていることに驚きもあった。
「服を焚火に入れろ」
張須陀は言った。
「な、なんですって──?」
沙那がきっと睨んだ。
だが、張須陀の言葉は例の筒を使って喋っている。
逆らうことのできない沙那の手は、脱いだばかりの上衣を焚火に放り込んだ。
張須陀の指示で、李保が焚火に油を足す。
ぱっと大きくなった炎が沙那の上衣を完全に包んだ。
「下もだ。同じように燃やせ──。お前には、もう服なんて必要ねえ。素っ裸で生活をさせる。一箇月もすれば、お前の女主人も諦めるだろうから、それまでは、俺たち三人とこの隠れ処で裸で暮らすんだ。一箇月後には、奴隷商人に売り飛ばすと思うが、その時は素っ裸で山を下りるといいぜ」
張須陀はげらげら笑った。
「下種男……」
沙那が顔にはっきりとした憎悪を浮かべながら、脱いだ下袴を焚火に入れる。
「こりゃあ……」
「へへへ、いい脚じゃないですか、兄貴……」
項延と李保が曝け出した沙那の脚に浮かれた声をあげた。
張須陀も思ってもいなかった沙那の女体の悩ましさに、思わず舌なめずりをする。
確かにほれぼれするような曲線美だ。
大理石のように滑らかそうで透明感のある白い肌は、とても張須陀をこっぴどく打ちのめしてしまうような女猛者の身体とは考えられない。
「お前がこんなに女っぽい身体をしているとは思わなかったぜ、沙那。さっさと残りの下着も燃やしな。靴もなにもかも全部だ。すっぽんぽんになるんだ」
沙那は羞恥で真っ赤になってはいるが、もう観念したのか無言で残りの下着も脱いだ。
その下着も炎に消える。
足に履いていたものも含めて、身に着けているもののすべてを焚火に入れ終わった沙那は、さっと両手を胸と股間に交差させて、身体を縮こませた。
服を脱いだことで、「命令」が解除されたので、手の自由を得たのだ。
「左の手首を背中側で右手で握れ。絶対に放すな。それから足を拡げろ」
「くっ……」
沙那が真っ赤になってなにかを言おうとしたが、結局、沙那はなにも言わなかった。沙那の両手が後ろに回り、肢が肩幅に開く。
「もっと、拡げろ」
「な、なによ……。さっさと犯すんなら、犯せばいいじゃないのよ──。ねちねちと、いたぶってないで、男らしくやるならやりなさいよ」
沙那が真っ赤な顔で怒鳴った。
そして、あまりの悔しさのためか、ふと見ると、沙那の眼にまた涙が滲み始めた。
平静な素振りをしているが、実際には激しく感情が昂ぶっているのだろう。
「ねえ、兄貴、こいつもそう言ってるんだし……」
項延がごくりと唾を飲んだ音がした。
「そ、そうですよ、兄貴、おれっちも、我慢できねえ……」
李保も言った。
ふと見るとふたりの股間は大きく膨らんでいる。
「まあ、待てよ。いくら時間をかけても、これがある限り、こいつは逃げねえよ。それよりも、俺は四年前の恨みつらみがあるんだ。この女が恥辱で顔を歪める様をもっと見てえんだよ──。おい、沙那、もっと脚を真横に曲げてがに股になるんだ。いいというまで腰をさげろ」
「つ、つくづく、卑劣な破廉恥男ね……。こんな霊具を使わないと女も抱けないの?」
屈辱で全身を震わせている沙那の脚がゆっくりと横に開くとともに、沙那の腰が下がっていく。
やがて、膝がほぼ地面と水平になるまで開かれたところで、張須陀は静止を命じた。
「お前のがに股姿が、これほど色っぽいとは思わなかったぜ」
張須陀は冷やかしの言葉を告げた。
「う、うるさいわよ。い、いつまで、こんなことするのよ」
沙那が苦しそうに声をあげた。
女として耐えられない晒し者のような格好を強要される沙那はぶるぶると震えている。
この姿勢は羞恥の限界であるばかりでなく、肉体的にもかなり苦しいはずだ。
沙那の脚の震えが次第に大きくなる。
「おっ? 沙那、泣きだしたのか?」
沙那の真っ赤な顔から一気にぼろぼろと涙が流れたことに気がついて、張須陀はからかうように言った。
沙那は、悔し涙を張須陀たちに見られるのが嫌なのか、さっと首を横に捩じった。
「も、もう、嬲り者になるのは覚悟しているから、さっさとわたしを抱いたらいいじゃないのよ……。こ、こんな、嫌がらせの姿勢をとらせるなんて、時間の無駄よ──。もう、覚悟したから抱きなさいよ」
沙那の泣き顔を面白がった項延が横顔を覗きこもうとしたのを受けて、沙那がかっとしたように怒鳴った。
「だったら、お願いだから、あそこに肉棒を突っ込んでくれと言いな。そうしたら、お前の腐れ穴に、俺たちの一物を入れてやってもいいぜ」
張須陀は沙那の悔しそうな格好にすっかりと気分が晴れてげらげらと笑った。
「あ、兄貴、もういいよ。抱かせてくれよ──」
「そうだぜ、兄貴は、昨夜はあんな大美人を一晩中いい思いをしたかもしれないけど、俺たちふたりは、部屋で置いてけぼりだったんだぜ」
項延と李保だ。
眼が血走っている。
沙那の色っぽい身体に、かなり興奮状態になっている。
「わかった。わかった……。こいつの神経を一枚一枚焼くようにいたぶってやろうかと思ったけど、昨夜は俺だけいい思いをしたのは事実だ。なら、ふたりで乳でも揉んでやりな。棒一本で、鍛えられた武芸自慢の十人の男を叩きのめすような女傑だからな。こんな珍しい女の乳なんてなかなか触れねえぞ──」
張須陀は言った。
「有難てえ──」
「こんないい女に触れるんなら、殺されてもいいや」
ふたりが沙那に飛びついた。
左右から沙那の無防備な乳房を触り始める。
「ひいっ……や、やめるのよ……あ、ああっ──や、やめて……」
項延と李保が沙那の乳房に張りついて、左右から揉み始めた。
すぐに沙那の両方の乳首は顕著な尖りを示した。
ふたりは、その勃起した乳首をしごいたり、唾液を滑らせてこねまわす。
すると沙那の身体はびっくりするくらいに真っ赤になり、さらに激しい反応を見せ始めた。
開いている両脚ががくがくと揺れて、切なそうに腰が悶えもはじめる。
「こ、こりゃあ……」
「へ、へへ……。す、すげえや。堪らねえなあ」
項延と李保が嬉しそうにしている。
張須陀も驚いた。
贔屓目に見ても項延や李保の愛撫は決して上手とは言えない。
だが、その大したことのないふたりの愛撫で、沙那はもう切羽詰った仕草をしている。
「兄貴、俺はこんなに反応の激しい女は初めてだぜ」
「まったくだ。ちょっと、吸ってみるか」
項延は右の乳房をぐにゃぐにゃに揉みながら、乳首を上下左右に激しく打つように捻っている。李保は左の乳首をちゅうちゅうと吸い始めた。
すると沙那の反応がおかしくなった。
これまでの余裕のようなものがすっかりとなくなり、あられのない声をあげだしたのだ。
がに股に脚を開くことで曝け出した股からは、まるで涎がこぼれるように愛液が滴りだす。
項延と李保は、ただ稚拙な愛撫で乳房を刺激しているだけだ。
それなのに沙那はすっかりと追い詰められたような状態になっている。
いま、沙那はまるで正体を失くしたかのように激しい反応を示している。
常識では考えられない沙那の反応に、張須陀はもしかしたら、沙那はなにかの企みのために、故意に感じたふりをしているのではないかと一瞬思った。
これだけの反応は不自然だ……。
「だ、駄目……。あ、ああっ……あ、あはあっ──。や、やめて……やめて……ああっ──あはあぁぁああっ……」
不意に、沙那の身体ががくがくと震えた。
そして、不安定な身体が大きく仰け反ったかと思うと、姿勢を保つことができなくなったのか、沙那は脚を開いた態勢のまま、がっくりと前に倒れかける。
沙那の乳首を吸っていた李保が慌てたように、前のめりに倒れかけた沙那の身体を支えた。
「ひやあっ──。兄貴、こいつ、胸だけでいってしまったぜ」
李保が笑いながら叫んだ。
「なるほど、すっかりとあの女道術遣いに調教されたというわけだ……。なあ、沙那、随分といやらしい身体になったんだな。それとも天性の淫乱女か?」
張須陀はからかいの言葉をかけた。
沙那が悔しそうな顔で張須陀をきっと睨んだ。
「答えろよ、沙那──。お前はあの女に調教されたんだろう? どんな調教されたか教えてくれよ」
「お、お前に関係ないでしょう、張須陀──」
沙那が叫んだ。
「まあいい、続きは隠れ処に入ってからだ……。じゃあ、ついてきな。お前の女主人がここを追いかけて来れない理由を教えてやるよ」
そう言って、張須陀は項延と李保に、沙那の衣類を灰にした焚火を消すように指示するとともに、筒の霊具を使用して、沙那を眼の前の洞窟の隠れ処に導いた。