「や、やめておくれ、黄眉──。服を脱ぐよ。服を脱ぐから朱姫を殺さないでおくれ」
宝玄仙は恐怖で絶叫した。
朱姫が死ぬ。
沙那がいなくなり、いま朱姫が失われようとしている……。
宝玄仙の心を圧倒的に支配したのは純粋な恐怖だった。
「ほう……」
黄眉の口から興味が湧いたような声が漏れた。
朱姫の入れられている筒に新しい風のようなものが混ざった。
生気を失いかけていた朱姫の顔にほんの少しだけ赤みが戻る。
「がっ……はっ……あっ……」
朱姫が咳込んだ。
とりあえず停止していた呼吸が戻った。
宝玄仙は少しだけほっとした。
そして、自分の身体がびっしょりと汗をかいているということがわかった。
それほどまでに、朱姫が殺されると思った一瞬に走った恐怖は大きかった。
「だ、大丈夫かい、朱姫……?」
宝玄仙は声をかけた。
だが、朱姫はまだ苦しそうだ。
喉に手をやったまましゃがんだままでいる。
まだ、顔は真っ蒼で顔には大量の汗が浮かんでいる。口がきけるような感じではない。
「とりあえず、解毒の気体を抽入してやったが、ほんの少しだけだ……。即死を免れたというだけで、同じものをもっと大量に摂取できなければ、朱姫はいずれ死ぬ。あるいは、もう一度毒気を送り込めば、簡単に死ぬがな……。だが、お前の反応が愉快だから、少しだけ生かしておいてもいい」
黄眉は言った。
「な、なんでも従うと言っているだろう……。さ、さっさと朱姫を元に戻すんだよ──」
宝玄仙は怒鳴った。
「だったら、やることがあるのではないか、宝玄仙? 三つ数えた後にまだ、服を一枚でもまとっていたら、朱姫のいる筒に毒気を入れ直すぞ……。ほら、……ひとつ……」
考えている暇はない。
宝玄仙は引き破るように身に着けているものを脱ぎ捨てていく。
「ふたつ……」
ぼたんと紐の多い服がまどろっこしい。
やっと下着だけの姿になった。
胸当てを剥ぎ棄て、下着も放り投げる。
「三つ……」
黄眉の愉しそうな声が響く。
「ぬ、脱いだよ」
「そうかな? 足元を見ろ」
黄眉が言った。
気がついて、慌てて足に履いている靴を脱ぎ棄てた。
「残念だったな、宝玄仙──。死ね、朱姫……」
黄眉の帯びている霊気が動くのがわかった。
「ま、待ちな……。待って──。待っておくれ──。お願いだよ──。お願い──」
宝玄仙はその場にひれ伏して土下座をした。
もう、誰も失いたくない。
その一心だった。
「ご主人様」
孫空女の驚嘆するような声が聞こえた。
だが、宝玄仙の意識には、死にかけている朱姫のことしかなかった。
「ほう……。それほど、仲間が大事か?」
黄眉が感心したような声をあげた。
「なんでもする……。なんでもするから、この通りだよ。朱姫を助けておくれ」
宝玄仙は床に額を擦りつけた。
「ならば、もう一度だけ、機会をやろう……。自ら恥を晒してみろ。しゃがんで腰を大きく股を開くのだ。そして、自分の指で股間を拡げてみせろ」
「なっ……」
思わず絶句した宝玄仙だったが、苦しそうにうずくまっている朱姫の姿が視界に入り、ぐっと唇を噛んだ。
そして、筒の中でしゃがむと大きく黄眉に向けて股間を開いた。
「こ、こうでいいのかい……」
両手で女陰に手をやって両側に拡げる。
「なかなか、恥ずべき格好だな……。どれどれ……」
「ひうっ」
股間を舌で舐められる感覚が襲ってきた。
「少しでも股を閉じたり指を離したりしたら、朱姫を殺すからな」
黄眉が愉しそうに言った。
そして、また舌の感触が宝玄仙に来る。
「はっ」
思わず大きな声をあげた。
また股間に来るのかと思えば、今度は乳房を舐めてきたのだ。
しかし、次の瞬間には太腿に舌の感触が這い回り、そして、肉芽を弾かれて、指で拡げる女陰の中に舌を入れられて回すように舐められた。
「あふうっ」
宝玄仙が思わず声をあげて、姿勢を崩そうになり慌てて脚を踏ん張る。
「言っておくが、勝手に絶頂してはいかんぞ、宝玄仙……。絶頂すれば朱姫を殺すからな。ほら、ここはどうだ? いつまでもつかのう……」
黄眉が言った。
そして、黄眉の口の中が動き出す。
するとまた、宝玄仙の身体に舌が這う感触が襲ってくる。
宝玄仙は全身のあちこちを翻弄されるように舌で這いまわられて、たちまちに追い詰められていった。
こんな妖魔にいいようになぶられるのは屈辱だ。
だが、沸騰するようなその恥辱感に混じって、胸が締め付けられるような情感も身体の芯の部分に込みあがるのがわかった。
宝玄仙は焦った。
自分の中の被虐的な部分が、こんな妖魔にいいように抵抗できずになぶられていることに反応をしだしたのだ。
だが、このまま込みあがる快美感に身を任せれば、この妖魔は朱姫を本当に殺すかもしれない。
宝玄仙は慌てて、甘い快楽を振り払おうと、顔を左右に揺さぶった。
「へへへ、この女主人の股ぐらは、もうかなりの洪水というところですよ、黄眉様……。それよりも、ほかのふたりにも服を脱ぐように命じてくれませんかねえ」
後天袋が黄眉にへつらうように言った。
すでに宝玄仙が投げるように捨てた衣類は回収している。
「そうだったな……。孫空女、朱姫、お前たちも着ているものを脱げ。孫空女はその棒の霊具もだ。愚図愚図するな」
黄眉が言った。
孫空女が舌打ちをして、最初に『如意棒』を放り投げた。
透明の膜は、そこになにもないかのように『如意棒』を通り抜けさせた。
孫空女は続いて服を脱ぎ始め、着ていた物を膜の外に投げて捨てていく。
朱姫はうずくまったまま服に手をかけているがうまく指が動かないようだ。
その朱姫の筒に後天袋が手を伸ばして入れた。
後天袋の両手が朱姫の服にかかり、服を脱がしていく。
本当に外からは自在に手も入れられるのだと思った。
朱姫は意識はあるようだが、やはり、苦しいのか、もう後天袋にされるままにしている。
「仲間に気を取られる余裕はないぞ、宝玄仙」
見えない舌がまた宝玄仙の股間をぺろぺろと舐めだす。
もう、宝玄仙は力が抜けてしまい大きな声をあげて身体を悶えさせるだけだった。
「どうした、宝玄仙? もう、終わりか? いけば殺すからな。そういえば、尻なんてどうなんだ?」
「そ、そこはやめておくれ──」
宝玄仙は悲鳴をあげた。
だが、容赦のない舌の感触が宝玄仙の肛門に襲いかかった。
宝玄仙は思わず腰を浮かせて悲鳴をあげた。
「お、お前、いい加減にしなよ。もう、あたしらは逆らわないよ。だから、朱姫をいい加減に助けておくれよ──。それに、責めるんならご主人様じゃなくてあたしにしな」
孫空女の怒声が聞こえた、
すると、宝玄仙に集中していた黄眉が顔をあげて孫空女に視線を向けた。
「うるさいぞ、赤毛女──。お前は、後天袋とでも遊んでおれ……。股を拡げて手を頭の後ろで組め。逆らったら、朱姫を殺すぞ……」
黄眉が孫空女に言った。
宝玄仙を責めていた舌の感触がとりあえずとまった。
「おお、そうだ、その姿勢だ。その姿勢を崩すなよ……。後天袋、そこに鳥の羽根が先についた棒がある。それでくすぐってやれ」
「へへ、いいんですかい、旦那……。俺までお愉しみのおすそ分けをさせてもらって……」
「構わん。なにしろ、わしはひとりしかおらんでな……。じゃあ、その鳥の羽根で、その孫空女の全身をくすぐるのだ。こいつが姿勢を崩したら、すぐ言え。朱姫に毒気を送り込み直す……。おい、赤毛女、お前が後天袋の羽根責めに最後まで耐えて、そのままの姿勢でおったら、朱姫の筒に解毒の空気を少しだけ足してやろう」
黄眉が言った。
「くっ……さ、最後までっていつだよ──」
孫空女が足を拡げて腕を頭の後ろで組んだ姿勢で叫んだ。
「俺が飽きるまでだよ、孫空女──。ねえ、旦那、どうせだったら、目隠しをしてやったらどうでしょう。目隠しをされて、全身をくすぐられちゃあ、どんな女でも耐えられるわけありませんよ。半刻(約三十分)もしないうちに、仲間を見捨てて、姿勢を崩すと思いますがね」
「なるほど、面白い。お前に任せるぞ、後天袋」
黄眉が笑った。
「そういうわけだから、お前、これを頭に被りな……。逆らうなよ。逆らえば、黄眉様に言うからな。そうすれば、お前の仲間は死ぬぜ」
後天袋はそう言って、さっき孫空女が脱いだ服の中から腰に履く下着だけをとって、孫空女の筒に放り入れ直した。
「なっ、これ?」
それを手に取った孫空女が顔を真っ赤にしている。
「それは、お前がはいていた下着だ。あまりにもびしょびしょに淫液で汚しているから、そればかりは売り物になりそうもないから、お前に返すよ」
「くっ」
孫空女は顔を真っ赤にして、あまりの激昂に身体をぶるぶると震わせているようだった。
だが、一度目をつぶって、大きく息をしたかと思うと、その下着を顔に被った。
「こ、こうでいいのかよ……」
下着の下から孫空女のくぐもった声がした。
「ああ、それでいい……。じゃあ、さっきの姿勢に戻りな」
後天袋が孫空女の筒の中に鳥の羽根がついた棒を差し入れて、孫空女の無防備な脇を繰り始める。
孫空女は悲鳴とも嬌声とも取れるような声をあげて身体をくねらだした。
「ほれっ、ほれっ、右の脇はどうだ……。じゃあ、左だ……。……と見せかけて股だ……。おっ、がっくりと膝を折ったな……。そのまましゃがみ込んでしまえ、仲間が死ぬがな……。ほう、持ち堪えたかい……。じゃあ、尻はどうだ? ははは、尻は特別弱そうじゃねえか。これじゃあ、尻だけ責めていれば、あっという間に終わりそうだな……。まあいい、それじゃあ、また脇だ……。ほうほう、面白いほどに激しく反応するなあ……。居酒屋で踊っているのを見ている限りじゃあ、お前、恥ずかしかったり、苛められたりすると感じてしまう変態だろ? 油断するなよ、ここはどうだ? 胸も駄目か……、ははは……。じゃあ、また尻だな……」
後天袋は羽根を構えたまま、くるくると孫空女の回りを歩き、前面をくすぐったかと思うと、急に背後に回って孫空女の双臀の切れ目に羽根を這わせ、そうかと思えば、奥に伸ばして、背後から孫空女の肉芽から女陰にかけて執拗に羽根を動かしたりする。
孫空女は姿勢を崩さないまでも、身体をくねらせ悲鳴をあげているが、だんだんと孫空女の膝も腰も力が抜けていくようになっていくのが宝玄仙にもわかる。全身が感じやすい孫空女だ。あんな羽根責めは堪えるだろう。
「……気はやってもいいのだぞ、赤毛女。姿勢を崩さなければな……。だが、お前は駄目だぞ、宝玄仙。お前がいけば、朱姫は殺す。さっき言ったとおりだ」
孫空女の痴態を愉しんでいた黄眉が、視線を宝玄仙に戻して言った。
「お、お前ら、ふざけるんじゃないよ。遊ぶのもいい加減にしな。朱姫を助けるんだよ」
宝玄仙は指で女陰を拡げた姿勢のまま声をあげた。
指には自分の女陰から溢れた淫液でぬるぬるとしていた。
こんな姿勢で悪態をつくなど本当に情けない。
「やかましいわい、宝玄仙。それよりも、お前は、この小瓶に入った薬剤を全部、自分の局部に塗れ。全部だぞ。肉芽、女陰、尻の穴──。塗っていいのはそれだけだ。塗り終わったら、朱姫を少しだけ楽にしてやる。どうやら、朱姫を人質にすれば、お前たちはいいなりになるようだから、その仲間愛がどれだけ続くかを確かめるのも一興だ。数日も責めたてれば、もうその小娘など、どうでもよくなると思うがな……。その時になったら、初めて殺してもいい──。ほれっ、これだ。これを塗りたくれ。もう、手は離していい。ただし、股はそうやって拡げておれ、宝玄仙」
「こ、この……」
血が沸騰するように血が昇ったが、いまはなにを言っても無駄だと思うしかなかった。
筒の中に放り入れられた小瓶を手に取る。
赤ん坊の拳ほどの大きさだが、かなりの量が入っている。
どうせ、得体の知れない薬剤に違いないが……。
「な、なんの薬だい、黄眉──?」
宝玄仙はそれを指に載せて、自分の局部に塗りながら言った。
「大したものじゃない。それを塗れば、塗った場所が痒くなり、発狂するほどになる。それだけの薬だ。ただの痒み剤だ」
「な、なんだと──」
宝玄仙は大笑いし始めた黄眉を睨みつけた。
「嫌なら塗らんことだ……。小瓶をこっちに放りかえせ。その代わり、朱姫は死ぬだけだ」
黄眉が愉悦に浸った表情を向けた。
人間の女の精神をとことんいたぶって愉しむことがこの妖魔……亜人の性癖なのだろう。
黄眉の顔は、宝玄仙を追い詰めることで酔っているのか、心からの満足に包まれている。
「ぬ、塗るよ……。塗ればいいんだろう。その代わり、全部塗ったら、朱姫を楽にするんだよ」
宝玄仙は叫んだ。朱姫はまだ筒の中で苦しんでいる。
顔は真っ蒼だ。
なんとか助けてやりたい……。
宝玄仙は小瓶の薬剤を大量に女陰にすくい入れた。
こんなものを塗りたくれば、自分の身体がどうなるかわかりきっている。
しかし、いまは、逆らうこともできない。
「……女陰ばかりでないぞ。肉芽にもたっぷりと塗れ。しっかりと皮を剥いて内側にな……。ただし、指で擦り過ぎていってしまわんように気をつけるのだぞ。いけば、朱姫を殺すというのは続いておるからな」
宝玄仙は言い返す気力もなかった。
言われるまま肉芽全体に薬剤を擦り込む。
大きく開いた股の正面に黄眉がいるのだ。手を抜くこともできない。
「よし、残りは全部、尻の穴だ」
黄眉が言う。
「なっ……」
思わず抗議しそうになり、慌てて口を閉じる。
だが、最初に塗った女陰からはもう焼けるような熱い疼きが襲いかかってきている。
おそらく、もうしばらくすれば、この熱さが猛烈な痒みに変化するに違いない。
これに耐えられるだろうか……。
しかも、残りの薬剤もかなりある。
これを弱い尻に塗ったりしたら……。
「どうした、手がとまったぞ。そんなに尻穴にそれを塗るのが怖いのか? だったら、小瓶を返せ。それだけの話だ。仲間が先に死ぬ。どうせ、全員がわしの蒐集品として剥製になるのだから、遅いか、早いかの違いだ……」
「ぬ、塗るよ──。その代わり、約束を破るんじゃないよ」
宝玄仙は声をあげた。
孫空女の悲鳴のような泣き声は続いている。
汗びっしょりになって、苦しそうに笑いながら、それでも孫空女はまだ耐えている。
宝玄仙も捨て鉢になり、残った大量の小瓶の薬剤を次々に尻孔に埋めるように塗っていく。
「お、終わったよ……」
やがて、やっと小瓶が空になった。
宝玄仙は空になった小瓶を黄眉に投げ返した。
「ほうほう、本当に全部、塗ったな……。感心、感心」
「そ、そんなことより、約束を──」
宝玄仙は叫んだ。苦しんでいる朱姫をちらりと見る。
「慌てるな、宝玄仙。上を見ろ」
黄眉が言った。
宝玄仙が見あげると、いつの間にか筒の上からふたつの握り手が浮かんでいる。
ちょうど、立って手を伸ばして掴むような位置だ。
それが空中にふたつ浮かんでいるのだ。
「なんだい、あれは?」
「それをそれぞれに、両手で握れ。そうすれば、朱姫の筒に解毒の気体が流れ込む」
黄眉は言った。
宝玄仙は慌てて、手を伸ばしてふたつの取っ手を握った。
すると朱姫の筒に風が流れ込む音がした。
苦しそうだった朱姫の呼吸が楽になっていっているのがわかった。
解毒の気体が流れたのだ。
宝玄仙はほっとした。
「ほっとするのは早いぞ。その取っ手のどちらかでも離すと、朱姫の筒だけじゃなく、孫空女の筒にも毒気が大量に流れ込むようになっておるからな」
黄眉が哄笑した。
「な、なんだって──」
宝玄仙は叫んだ。
つまり、この手をもう離すことはできないということだ。
だが、いまのこの状況は……。
股間には耐えられない痒さがもうやってきている……。
宝玄仙はやっと、この黄眉の陰湿ないたぶりの内容がわかった。
いずれ、宝玄仙は痒みに耐えられなくなり、手を離すに違いないと思っているのだ。
そして、手を離した瞬間に、朱姫と孫空女が死ぬ。
なんという陰湿で卑劣な仕掛けだろう。
宝玄仙はぐっと唇を噛んだ。
だんだんと痒みが大きくなる。
全身に大量の脂汗が流れ出す。
「右が孫空女の筒に連動させた取っ手で、左が朱姫だ。耐えられなくなったら好きな方を選んで殺せ。右が孫空女で、左が朱姫だ……。あれっ? 逆だったかな。まあいいわ。試してみればわかるだろうさ」
黄眉が笑いながら言った。
「お、お前……。あ、あ……。だ、駄目だ……。来、来た──。くうっ……か、痒い……」
黄眉の卑劣さに腹が煮えたが、それよりも股間を熱くしていたものが、猛烈な痒みになって宝玄仙に襲いかかってきた。
痒い……。
これは耐えられるようなものじゃない……。
痒い──。
宝玄仙は両腿を懸命に擦り合わせる。
もちろん、そんなことじゃあ、痒みがなくなるわけがない。
「そうやって、腰を振っておれ。夜までな」
黄眉が言った。
「夜まで──?」
思わず宝玄仙は叫んだ。
「おう、夜までだ──。わしは本来は夜行性でな。昼間寝て、夜は起きる。だから、わしはこれから寝るところだ。だから、とりあえず休憩だ。夜まで手を離さずに耐えられたら、次の責めに移ってやる。ふたりの供たちのどちらかでも死んでいれば、
「
「この透明の筒のことだ。それは本来は剥製製作具なのだ……。とにかく、わしは、夜まで耐えられずに、お前は手を離して自分の股間をいじくりまくっていると思うぞ。そのときは、少なくともどちらかが死んでいることになると思うけどな……。さて、いまはこれくらいにしようか……。後天袋、引き揚げだ。夜まで放っておく。今回はいい仕事をしてくれた。感謝するぞ」
黄眉が言った。
すると孫空女を責めたてていた後天袋が鳥の羽根を孫空女の筒から出す。孫空女ががくりと脱力したが、しっかりと姿勢だけは保った。
「ま、待って……」
突然、朱姫の声がした。
ふと見ると、朱姫はまだ苦しそうだが、意識ははっきりとしているまでに回復していた。
「なんじゃ?」
黄眉だ。
「沙那姉さんはどこ?」
「沙那?」
黄眉が首を傾げた。
「ああ、沙那というのはこいつらの仲間みたいなんですがね。その女をこいつらは探していたみたいなんですよ。それで、俺はこいつらに、その沙那がここにいると嘘をついて、ここまで連れてきたというわけで……」
「そういうことか……。朱姫だったかな、小娘。沙那とかいう女はここにはおらんな……。もっとも、たくさんの剥製のうち、もしかしたら、そういう名だった人形も混じっておるやもしれんがな。まあ、少なくとも、この数箇月以内にやってきた女はお前たちが最初だ。いまでは、わしの蒐集癖もすっかりと有名になってしまったでな」
「まったくですよ、旦那様……。そのお陰で、なかなか、女をこの屋敷に連れてくることもできませんでね……。この女たちも、噂話に接しないうちに、ここに騙して連れてこようと苦労しましたよ」
後天袋が言った。
「その苦労に見合うものは払っておるであろう?」
黄眉が言った。
「……さ、沙那姉さんはやっぱりいないのね……」
朱姫が呟くように言った。
見ると朱姫の両眼からぼろぼろと涙が流れ出した。
しかし、もう、宝玄仙には、朱姫のことを構う余裕がなくなってきていた。
猛烈な痒みが股間に襲いかかってきている。
「ああああっ──」
声をあげた。
声をあげることで少しでも痒みが紛れるか思ったのだ。
「せいぜい、耐えておれ、宝玄仙……。じゃあ、夜にな」
黄眉が言って、部屋から出て行く。荷を抱えた後天袋がそれを追った。
扉が閉まり、部屋はまったくの闇に包まれた。