仲間と別れてしまった沙那の受難のエピソードです。
*
382 監禁された女
この香りをもういちど嗅いでください。いつもの桔梗の花の香りですよ。
この香りを感じると心が軽くなります……。
そう……。仲間がいるのですか? わかっていますよ。
何度も聞きましたから……。
でも、忘れるんです。心が軽くなります。
どうしても、帰らなければいけないのですか?
どうやら、桔梗の花が効いているみたいですね。いまの状況をまた忘れてたんですね。
まあ、いいです。
じゃあ、もう一度、説明しますね、沙那さん──。
でも、あなたはは怪我をしているんですよ。崖から落ちたみたいです。
それで治療をしました。
ここは薬師の家です。
城郭じゃありません。
山の家です。
沙那さんは、崖から落ちて、この家の近くの谷に倒れていたんです。
はっきり言って、死にかけていましたよ。
怪我よりも衰弱で……。
起きるっていっても、身体が動かないんじゃないですか?
いまは、薬も効いていますから……。
とにかく、よほど疲労していたみたいですから、衰弱していた身体を回復させる薬草を飲んでもらいました。しばらく、動けないと思いますけど。
とにかく、いまは寝ることです。
これを嗅いで──。
じゃあ、お休みなさい──。
*
気がつきましたか?
かなり、回復しましたね……。
あなたが、どうしたかですか?
怪我をしたんです。
どうやら、崖を踏み外したみたいですよ。
いいえ、昨日のことです。
いまは、翌日の朝です。
ええ、お姉ちゃんが崖の下に倒れているあなたを見つけて、ここまで運んできたんですよ。
余程、疲れていたみたいですね。
多分、歩きながら眠ったか、意識がなくなったりして、それで崖に落ちたんじゃないかって、お姉ちゃんは言ってました。
宝玄仙……?
その人に連絡をして欲しいのですか?
傷が治る?
大丈夫ですよ。
ここで傷を癒せばいいですよ。
兄もそうして欲しいみたいです。あなたがお気に入りみたいですよ。
兄ですか?
ふふふ……。
十日ほど前に、城郭の宿屋であなた方を見たんです。
あなたって、とてもお綺麗ですものね。
ひと目見たら忘れませんよ。
あなたの名前は、沙那さんですよね。
兄は、綺麗な女の人が好きですから……。
それに、あんなに大騒動だったんですから。
あれから、どうなったんですか?
あの黒髪の綺麗な女の人の命令したとおり、あの大きな男の人と乱交しちゃったんですか……?
びっくりしました?
だって、その場にあたしもいたんですよ。
兄と一緒に食事をしていたんです。
覚えていませんか?
あの宿屋の一階の食堂の隅に、十三歳の女の子を連れた三十くらいの男がいたのを……。
そうです。そうです。
その男があたしの兄で、女の子があたしです。
とにかく、だから、お姉ちゃんが、傷を負ったあなたを運び込んできたときには、びっくりしましたよ。
あたしと兄も、たまたま、あの宿屋に泊っていたんです。
それで、食事をしていて、偶然、あなた方を見たんです。
あの朝に起きた宿屋の騒動はよく覚えていますよ。
ひいきの店に薬草を納めた帰りだったんですけど、どうしても夜になってしまったんで、宿屋に泊ったんです。
夜は城門が閉まって出られないじゃないですか。
とにかく、あたしもあの場にいたんです。
宝玄仙って、お綺麗だけど、あの変な女主人の方のことですよね?
ひどいご主人様じゃないですか。
あなたが嫌だって言うのに無理矢理に男に引き渡しましたよね。
その首輪の霊具を無理矢理につけたじゃないですか?
とにかく、傷の手当のついでに、金具で外しちゃいましたから。
確か、これを付けていると、言葉に逆らえないとか……。
首も怪我していたし、治療の邪魔だったから……。
壊した首輪ですか?
ありますよ。これです──。
とにかく、もう、あたしは出掛けます。
姉が戻りますから、そうすれば、沙那さんの看病を交替して、あたしは兄と城郭に行きます。
宝玄仙という人と会って来ますね……。
落ち着いて──。
いまは、なにも考えないで……。
じゃあ、この桔梗を嗅いでください。
また、眠くなって、なにもかも忘れるはずです。
効いてきましたね。
じゃあ、お休みなさい。
*
お姉ちゃん、ただいま。
どう、沙那の具合は?
ああ、眠っているみたいね。
意識が混濁?
いいのよ。
明日の午くらいまで、こうしておくつもりよ。
そうすれば、桔梗の香りの毒がすっかりと身体に入ってしまって、この香りがある場所では、身体が動かなくなるはずよ。
そうすれば逃げられないわ。
もう少し待ってね、お兄ちゃん──。
愉しみ?
明日からはなんでもできるわよ。
好きなように弄ればいいわ。
でも、この沙那って、やっぱり、余程強いみたいね。
それで、あの宝玄仙という人の護衛だったのね。
だから、桔梗の香りが全身に浸透するまで待った方がいいわ。
身体の方も大丈夫と思うわ。
でも、丈夫な人よね。
お姉ちゃんの話によれば、随分と高いところから落ちたみたいだけど、かすり傷程度で終わるなんてね。
だけど、傑作だったわ──。
あたしの書いた偽の手紙で、朱姫って人なんて泣きじゃくっていたじゃない。
あたし、噴き出しそうで困ったわ。
とにかく、明日よ、お兄ちゃん。
明日になれば、沙那はここから逃げられないわ。
ところで、お姉ちゃん、今日の薬草の収穫はどうだったの?
えっ?
これっぽっち?
決められた量の半分もないじゃないの?
なんですって?
看病を交替するために、早戻りしたからこれだけって言うの?
そんなの言い訳でしょう。
罰よね、お兄ちゃん。
えっ、あたしが罰を与えていいの?
ふうん……。
じゃあ、鞭を持ってきなさい、お姉ちゃん。
馬の鞭よ。
早く、しなさい。
ぐずぐず、するんじゃないわよ。
お兄ちゃん、見た?
お姉ちゃん、顔を赤くしてたわ。きっと、欲情したのよ……。
見ててね。
戻って来たわ。
早く、鞭をちょうだい。
じゃあ、服を脱ぐのよ。
そして、四つん這いになりなさい。
ほら、脚を開くのよ、お姉ちゃん──。
見て、お兄ちゃん。やっぱり、蜜を洩らしているわ。
こんなに股がどろどろ……。
もう、恥ずかしいったらないわ。こんな淫乱と血が繋がっているなんてね。
じゃあ、いくわよ。
全部で五発よ。
一発目──。
悲鳴をあげるんじゃないの。数をかぞえるんでしょう、お姉ちゃん。
本当にいつまで経っても、奴隷の躾が身につかないわねえ。
じゃあ、もう一発目からよ。
悲鳴をあげたら、やり直しだからね。
一発──。
二発──。
三発──。
へえ、やるわね。悲鳴をあげないのね……。
じゃあ、これは……?
ははは、おかしな声をあげるんじゃないわよ。
肉芽をちょっと揺すられたくらいで──。
とにかく、声をあげたからやり直しね。
そうだ。お兄ちゃんは、お姉ちゃんの身体を触ってよ。
あたしは、その合間に鞭を打つわ。
お兄ちゃんのお触りで声をあげてもやり直し。
もちろん、あたしの鞭で悲鳴をあげてもやり直し……。
それでいきましょうよ。
じゃあ、始めるわよ。
お姉ちゃん、鞭で悲鳴をあげても、いやらしい声をあげても、鞭は最初からやり直しだからね。
言っているそばから、お兄ちゃんの愛撫で声をあげちゃあ、駄目じゃないの……。
本当に淫乱な雌犬ね。
お尻を出して。
これは追加の罰だから、数には入らないわよ。
それっ──。
ちゃんと耐えたわね……。
じゃあ、お兄ちゃん、触っていいわよ。
ほらほら、我慢しなさいよ……。
それと、鞭はいつくるかわからないわよ……。
お兄ちゃんの手ばかり気にしていたら、鞭が来るからね、お姉ちゃん……。
ほらっ──。
あははは……。
悲鳴をあげちゃだめと言ったじゃないの。
へえ、身体をいじくられていたら、備えられないの?
そんなの知らないわよ。
お姉ちゃんの身体が淫乱だからいけないんでしょう?
あらっ、お兄ちゃん、前が大きくなったわ。
もう、入れる?
そう……。
じゃあ、どっちにするの?
あたし?
それとも、お姉ちゃん?
ふうん……。
じゃあ、今夜はお姉ちゃんだって──。
よかったわね、お姉ちゃん。
じゃあ、お兄ちゃん──。
お兄ちゃんがお姉ちゃんを犯している間、あたしは、お姉ちゃんのお尻を指で苛めるわ。いいでしょう?
じゃあ、決まりね。
ほら、お姉ちゃん、なにをしているの──。
お兄ちゃんのズボンを脱がすのよ。
本当に愚図なんだから……。
奴隷なら、奴隷らしく、さっさと動くのよ……。
*
お早う、沙那さん──。
どう、具合は?
首輪?
届けて来たわ。
宝玄仙という人にも会ってきた。
昨日ね──。
いまは、翌朝よ。
宝玄仙という人がどうしたかってですか?
まあ、いいじゃないですか。
ところで、あなたって奴隷なんですか?
供ですか?
でも、あの状況は、奴隷にしか見えませんでしたけどね……。
まあいいです。
とにかく、治るまでずっとここにいればいいです。
兄もそうして欲しがっていますし、あんなひどい女主人のところに戻すわけにはいきませんから……。
あたしが面倒を看ますよ。
駄目です──。
どこにも行かせません。
兄の命令です。
なにをそんなに怒っているんですか?
そんなに、興奮すると傷に触りますよ。
じゃあ、本当のことを言いますね。
多分、あなたのお仲間は、もういないと思いますよ。
あなたは、宝玄仙という人に嫌気がさして、どこかに逃げちゃった……。
そういうことになっていますから。
どういうことかってですか?
つまり、そういうことですよ……。
だから、首輪を届けたって言ったじゃないですか。
沙那さんから外した首輪を城郭にいるあの女主人のところに届けたんです。
別れの言葉を添えて……。
手紙とはなにかですか?
あなたが書いたことになっている別れの言葉です。
そりゃあ、そうです。覚えてないですよ。
本当はあたしが書いたんですから。
でも、信じたみたいですよ。
首輪を包んで別れの言葉──。
いかにもっていう感じでしょう。
あなたの仲間の方々は信じたみたいですよ。
あの朱姫という人なんて、泣きじゃくってましたし……。
ああ、面白い……。
あたしの書いた手紙を真に受けちゃって……。
疑いもしないんですから……。
ばれたときの言い訳も考えていたんですけど、ちっとも疑いませんでしたよ。
だから、もういませんよ。
えっ?
いまですか?
三日は経っていますよ。
昨日もあたしと何度もお話ししましよ。
覚えていないですか?
まあ、桔梗の花の香りのせいですけどね。
毒が回っている間は、記憶が麻痺するんです。
副作用ですね。
もう、これ以上は、記憶の混濁は起きないから大丈夫と思いますよ。
その代わり、身体が動かなくなるはずですけど……。
なんのことかわからないですか?
つまり、沙那さんはここに監禁されているんです。
三日前から……。
傷を負って倒れていたのは本当ですけどね。
でも、兄があなたを覚えていて、この家に置いておきたくなったんです。
玩具として……。
ふふふ……。
怒鳴っても駄目ですよ。
もう、どうしようもなくなっていますから……。
つまり、沙那さんは、この三日間、こうやって起きたり、眠ったりしていたんです。眠っているときの方が多かったかな。
最初の一日目なんて、ほとんど目を覚まさないから、もしかしたら、このまま死ぬんじゃないかと思ったくらいですよ。
本当に身体が衰弱していたんですよ。
だから、沙那さんが崖に倒れていたのをお姉ちゃんが見つけたのは、三日前の夕方です。
それで、あたしが兄の命令で、あなたの女主人の宝玄仙という人に、壊した首輪と偽の手紙を添えて持っていったのが昨日です。
あたしは、昨夜戻ってきたところで、今日は三日目の朝です。
沙那さんは、もう、何度も、あたしにも、兄にも、お姉ちゃんにも会っていますよ。
覚えてないですか……?
お世話したんですよ。
三人で──。
裸も見ましたよ。
素敵な身体でした。
兄も愉しみにしていますよ。
意識のないあなたを抱くのは興味ないから、元気ができるまで待つって言っていましたから、意識が戻ったのを報せたら悦ぶと思います。
傷も薬草が効いて、ほとんど回復しています。
もう一度、寝て起きれば、もう、大丈夫だと思います。
じゃあ、この桔梗の香りを吸ってください。気分が落ち着くでしょう?
……効いてきましたね。
じゃあ、次はこれを飲んでください。眠くなりますから。
嫌なんですか?
無駄ですよ。
こうやって鼻を摘まめば口を開けるしかないでしょう。
手足は動かないはずですから。
強い痺れ薬も使っていますからね。
桔梗の真毒が全身に回りきるまでは念のために……。
ほらっ、開いた。
じゃあ、飲んで──。
これで、夕方まで、また目が覚めないはずです……。
効いてきたみたいですね……。
じゃあ、お休みなさい。
沙那さん……。
えっ?
なんのためにこんなことするかって?
沙那さんって、本当に面白いですね。
同じことばかり訊いて……。
ええ、同じ質問を何度もしてます。
ただ、覚えてないみたいですね。
その桔梗の香りのせいかもしれません。
そのただの桔梗じゃないんです。
身体を麻痺させる魔草でもありますから……。
ただ、身体が完全に桔梗の真毒で犯されるまでは、記憶の混濁が起きるんです。
ここには、そういう薬草だけはいくらでもあるんです。
薬師の家ですから……。
とにかく、これまでのことを覚えていないのはそのせいです。
二日目に逃げようとしたんですよ。
それで痺れ薬も使ったんです。
でも、もう終わりです。
この桔梗の香りが暗示になって、身体が麻痺するんです。
ただの桔梗じゃないんです。
魔草の桔梗ですから……。
逃げようとしたことも覚えていないですよね?
そういう魔草なんです。
その魔草の毒を三日間、沙那さんは吸い続けたんです。
だから、もう逃げられません。
それと、もう、寝るだけの時間は終わりです。
お愉しみの時間の開始です。
兄もそろそろ、沙那さんで遊びたがっていますから……。
だから、今度、眼が覚めたときには、この会話のことは記憶に残っていると思います。
怒鳴らないでくださいよ。
薬が効いているのに、よく怒鳴れますね。
だから、さっきから言っているじゃないですか。
兄があなたを気に入ったんです。
だから、ここで飼うことにしたんです。
奴隷二号として……。
それとも、玩具一号かな?
眠ったんですね、沙那さん……。
じゃあ、お休みなさい。
眼が覚めたら、躾の開始ですよ……。
ふふふ……。